【SS・ウマウマ】捉えるモノは違えど

  • 1二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 15:01:08

    始まりは、あの日の掲示板でした。
    お恥ずかしながら、私は可愛いものに対し、常に強い感情を持ち合わせています。ですから、張り出されていた彼女の笑みに吸い寄せられてしまうのも、また当然のことでした。

    それは、今年の夏合宿の写真たち。数々の捉えられた笑みの中、一際輝き、私の目を奪って離さない、バンブーさんの写真。
    この身を貫く真剣な眼差し…それでも、楽しむように走っていて。強敵との競いを、心から楽しむような表情。
    「美しい…」
    溢れてしまった思いは、どうにか誰にも聞こえないよう呟いた。これでは駄目だ、この激情を溢れさせてはいけない。そう、早く、私の写真だけを確認して戻ろう。

    「あれ、ヤエノ!こんな所で何してるんスか?」
    「バンブーさん…!?」
    しまった。背後に気を回しきれていなかった。いや、それ程までにあの写真に惹かれていた…?どう言い訳したものかと焦る私を置いて、彼女は掲示板を眺める。
    「おー、みんないい顔っスね。今年も無事に、楽しく鍛えられたのなら何よりっスから!」
    あぁ、貴方は全体を見ているのですか。"みんな"を、共に切磋琢磨する戦士として、見守るというのですか。
    「そう…ですね。」
    先程までの邪念に塗れた私が、恥ずかしく思え、なんとも躊躇い気味の返事を返してしまう。

    こういう時、言葉の違和感に気づいてしまう。そんな妙に勘の鋭い貴方が、今だけは、少々憎らしい。
    「ヤエノ?どうしたんスか…?」
    「…いえ。良い顔をしている、と思いまして。」
    そう誤魔化すように、主語を隠して囁くと、貴方は普段と変わらず元気よく同意をした。
    醜い感情が、心臓の中を蠢いているのが分かる。先程の勘はどうしたのですか、ねぇ。居心地の悪さを勝手に感じてしまう自分が、いつかの、人を振り回していた頃の自身と重なる。もう、あの様にはならないと覚悟していたのに。

    どうにか話を変えたくて、私は、購入用の封を片手に尋ねる。祖父母に写真を送ろうという、ふと浮かんだ目的に意識を向けながら。
    「バンブーさんは、自身の写真を買われますか?」

  • 2二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 15:01:39

    「そうっスね、何枚か良い感じのを買うつもりっス!風紀委員としてのイゲンがありそうなのを選ぶっスよー!」
    彼女は、私のように封筒を手にすると、いくつかの番号を書き始める。そして何列分か歩いた頃。ふと、私の写真の前で止まると、はにかみながら、呟いた。
    「あの、ヤエノの写真、買っていい…っスか?」
    「私の写真…。良いですが…何故、私の写真を?」
    「上手く言えないんスけど、カッコイイ顔してて…。それに、負けてられないと思うほど、真剣な目で映ってるっスから!」
    撮られた物をよく見てみると、それは、私がトレーナー殿にご指導頂いている時のものだった。いずれ戦う彼の人達に追いつくため、必死になって居た時の…。
    ああ、そうか。目的は違えど、欲の為に相手を欲する。少なくとも、魅せられたのは私だけで無かった…という、事なのでしょう。それを私が否定する理由など、あるわけない。
    「はい、良いですよ。」
    「やった…!へへっ、ちゃんと大事にするっス!」
    あぁ、眩しい。第三者から見た際、私の貼り付いた微笑みが霞むほどに、彼女の存在感は、この笑みは強かっただろう。

    そうだ。彼女が買うのだから、私だって許されてしまうのでは。
    この聞き方は、対等交換に聞こえてしまうだろうか。そう感じてしまう自分が愚かなのか。気がつけば、一度消したはずの欲が、口から漏れていて。
    「私も、バンブーさんの写真を買っても宜しいでしょうか…?」
    言ってしまった。後悔しても、もう遅い。帰した水は戻らない。どうにか否定して欲しい。私に、許可を与えないで欲しい。そう願うも、貴方は、そうしない確信がここにあって。だって、貴方は、優しいから。

    「モチロンっス!校則に触れない範囲で好きにしていいっスよ!」
    「ありがとうございます、大切に飾らせて頂きます」
    その時の私は、嬉しそうな表情を、全くと言っていい程に堪えられていなかったはず。

    後日。届いた封筒の中には、私の写真が数枚と、一枚のバンブーさんの写真が入っていた。きっと今頃バンブーさんの手元には、数多くの強敵たちの画像が届いているのだろう。そして私は、その中の一人に過ぎない。
    でも、今はまだ、これでいい。これで、この中だけで満足しなければならない。
    私のあの目が、彼女の心を燃やすように。画像の中の、彼女の目が、私の心を掴んで離さないのだから。

  • 3二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 15:03:48

    〜余計なあとがき〜

    俺は通りすがりの駆け出し創作者、とあるss以降、書いては没を繰り返し、気がついたら年が明けていた。そしてある日無料ガチャでヤエノちゃんを入手した後…手元にはこれが出来ていたって訳なのだ。やはり深夜テンション、深夜テンションは字書きを解決する(?)

    このssは、後で同タイトルでどっかしらに再うp予定だから、見かけた人はそっちでも宜しくな。それじゃあ。

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    【SS】【ケイエスミラクル】白鳥は月夜に羽ばたく|あにまん掲示板夜、トレーナー室から帰宅している最中のこと。春と言えど、まだ冬の名残が残っているのか、夜はかなり冷え込むようで。一応、薄型の長袖に上着を重ねてはいたが、それでもほんの少し、体が震えるような寒さだった。…bbs.animanch.com
  • 4二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 16:38:53

    青春ですわね!良いですわよ!

  • 5二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 16:44:59

    ヤエノの供給最近なかったから助かる、ありがとう

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