- 1モブスタッフ23/01/10(火) 15:49:39
- 2モブスタッフ23/01/10(火) 15:50:01
俺はトレーニング用コースの整備員として中央トレセン学園で働くモブなんだよ。
- 3二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 15:50:47
ネイチャに限らず全ウマ娘の幸せを祈ってくれ
- 4モブスタッフ23/01/10(火) 15:50:47
やってることは単純作業。
怪我させちゃいけないから整備自体はちゃんとやるけど、何かを主導したり責任取らされる立場ではないから精神的には楽勝してる。
朝早くて夜遅いって面があるから体力的にはちょっときついんだけども、個人的には大したことでは無いんだ。 - 5モブスタッフ23/01/10(火) 15:51:18
職責は果たす。でもそれだけ。
仕事に対する熱意はない。或いは最初はあったけど今は無くしてしまってる。
でも賃金はある程度しっかりしてるから満足してるような、そんなモブなんだ。俺は。 - 6モブスタッフ23/01/10(火) 15:51:38
世間に関心なく生きて来た。
だから中央のウマ娘がどうとか、有名バは誰とか、そんな事は一切知らなかったし知る気も無い。
ただ設備を整える日々。
そんな中、ネイチャとネイトレに出会うんだ。 - 7モブスタッフ23/01/10(火) 15:52:21
きっかけは落鉄したネイチャの蹄鉄を拾って渡した事。
朝の作業中に気づくんだ。
蹄鉄には「ナイスネイチャ」って刻まれてる。
名前が分かっても俺は全然ピンと来ないから、学生にやたら詳しい先輩おっさんに頼んで渡して貰おうとするんだよ。
でも先輩おっさんは「コースを使うウマ娘に興味を持て。お前が渡せ」って頼まれてくれないんだ。 - 8モブスタッフ23/01/10(火) 15:52:48
取り敢えず教えてもらった人相とか毛色とか特徴的なもふもふを頼りに探すんだ。
仕事の合間に。
もちろん見つからないからさっさと諦める。
作業服のポケットにしまって、しまったことさえ忘れるんだ。 - 9モブスタッフ23/01/10(火) 15:53:21
数日経ってから、先輩のおっさんに「そういえばお前あれ、この前の蹄鉄、返せたか?」
って聞かれて、俺はつい咄嗟に嘘を吐いてしまうんだ。
「ああ、まあ、はい」
「そうか。そりゃ良かったな。感謝してたろ、あの娘も」
「いや、トレーニング用蹄鉄くらいでンなこと無いっすよ」
「馬鹿やろお前ぇ。お前が拾った奴は安くねんだ。ネイチャちゃんは裕福なお嬢様じゃあないし、蹄鉄だって大切にしてんだから」
「はあ。てか何でそんなことまで知ってんスか」 - 10モブスタッフ23/01/10(火) 15:54:28
結局、「お前が興味なさすぎなだけだ!もっと関心を持て!」って怒られて終わるんだけど、その時の俺はお叱りなんか聞いてない。後悔するのに忙しいからだ。
もっと探せばよかった。
忘れなんかしなければ。
学生のウマ娘がどんだけ稼いでるのか知らないけど、デビュー前の中学生が大金を持ってるはずが無い。
おまけに実家も太くない。
それでも装備品に高い金かけてるってのは、それだけその子が、家族が、頑張れ負けるなって思ってるからだろう。
親なら子が。子なら自分が。
頑張れって。
この蹄鉄には願いが込められてる。
馬鹿な俺でも想像つくんだ。 - 11モブスタッフ23/01/10(火) 15:54:54
やっちまったな〜って思いながら、誰か適当な職員さん経由で渡して貰おうとするんだ。
でもどんな職の誰ならナイスネイチャなんてデビュー前のウマ娘を知ってるのか分からない。
ウマ娘同士だって全員がお互いを知ってる筈は無い。
地味な聞き込みで探すんだ。 - 12モブスタッフ23/01/10(火) 15:56:04
ナイスネイチャの特徴なんて「もふもふ」くらいしか覚えて無かったから、黒毛でもふもふでデカパイでマーベラスって叫んでる子をネイチャだと思って話しかけるんだ。
最終的に、本人は見つかった。
俺は蹄鉄を渡した。
それだけ。 - 13モブスタッフ23/01/10(火) 15:57:38
ただ不思議なことに、その後も何回かネイチャとは会うんだ。
ネイチャにトレーナーがついてからはトレーナーとも知り合った。
二人とは他愛も無い会話しかしなかったけど、初めて「自分の仕事が誰かの役に立ってる」ことを実感するんだ。 - 14モブスタッフ23/01/10(火) 15:57:57
俺は仕事で注意される事が減った。
「お前ぇ。何か変わったな」
「そうスか? 別に普通ですけど」
「いや変わったよ。良くなった」
「はぁ。……よく分かんねっス」 - 15モブスタッフ23/01/10(火) 15:58:17
おっさんは、うんうんと頻りに頷いていた。
俺はまた嘘を吐いていた。
本当は少し頑張っているんだ。
もし俺が整備不良でもして、ネイチャの邪魔なんかしちゃ申し訳ないって思うからだ。
だから毎日、追加で少しだけ頑張るんだ。
俺はそんなモブスタッフなんだ。 - 16モブスタッフ23/01/10(火) 15:58:52
それからもネイチャとネイトレとは話した。
ネイトレへの態度でネイチャが好意を寄せてるって事は分かった。
俺は二人に幸せになってほしいと思うんだ。 - 17モブスタッフ23/01/10(火) 16:00:04
でも、それだけの理由でトレセン学園に居続けるつもりは無かった。
俺には俺の人生がある。
だからある時期、実家の林業を手伝う為にトレセンを辞めて田舎に帰る訳だよ。
田舎って言っても電波はもちろん届くから、ネイチャの活躍は分かる。
ネイチャに対する世間の評判だって届く。
一昨年の有馬は3着で、去年も3着だったから、今年こそは1着だろ、みたいなやつ。 - 18二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 16:00:30
応援
- 19モブスタッフ23/01/10(火) 16:01:02
でも俺が本当に知りたいのはそこじゃない。ネイチャが、あの自己肯定感が低くて頑張り屋で優しいあの娘が、幸せになれるかどうかってことなんだ。
でも田舎に居てはそんな情報知り得ない。 - 20モブスタッフ23/01/10(火) 16:01:47
俺は整備員で向こうは学生とトレーナー。
学園の中でふとすれ違って、短い世間話をして、それぞれの場所へ行く。
それだけの関係なんだ。
決して連絡先を交換するような仲ではないんだよ。 - 21モブスタッフ23/01/10(火) 16:02:57
俺が森の中で木を切ってる間に、世の中は目まぐるしく変わって、いつの間にかネイチャはトレセン学園を卒業してるんだ。
ニュースでも、ネットでもネイチャの足取りは追えなくなってしまう。
そうなってしまうともう出来ることは何も無い。
俺はただ自分の仕事に打ち込みながら、時折昔のことを懐かしんではネイチャとネイトレが今どうしてるのか考えるんだ。
願わくば、幸せに。
そんだけ。 - 22モブスタッフ23/01/10(火) 16:03:43
また、更に月日は流れて、俺は木工細工を売るようになるんだ。
その日は、自分の作ったインテリアが府中のレストランに納入されるから、現場確認がてら昔馴染みの街でも見物しようと久しぶりに府中に出るんだ。 - 23モブスタッフ23/01/10(火) 16:04:11
無事に納入も終わって夕方になったから、どっかで飯でも食おうと思って大通りを歩くんだけど、俺が余所見をしてたせいで人とぶつかってしまうんだ。
都会のスピード感をすっかり忘れてた俺は、申し訳ねーって感じで謝るんだけど、向こうは俺のことをジロジロ見てくるんだよね。 - 24モブスタッフ23/01/10(火) 16:04:44
何だろう、絡まれるのかな〜って考えてたら突然向こうが「思い出した! 昔トレセンに居た〇〇さんですよね!」って言ってくる。その拍子に俺も相手がネイトレだって分かるんだよ。
名前を知らないから「ネイトレさん」なんて呼び方しか出来ないんだけどね。 - 25モブスタッフ23/01/10(火) 16:05:09
ネイトレさんは相変わらず優しい人でさ。
好青年が捻くれず、曲がらず、そのまま真っ直ぐ成長したような人になってるんだ。
流石にもう、青年って呼べるような歳じゃあないけどね。
変わってるのはそこだけ。
本当に、優しい顔立ちのまま。 - 26モブスタッフ23/01/10(火) 16:06:33
それから俺たちは通りに立ったまま適当に雑談をするんだけど、ふとネクタイを緩めたネイトレさんの左手に指輪が嵌まってるのに気づくんだよね。
「あ、結婚されたんですね」
「ああ、はい。もうだいぶ前なんですが、ええ」
「はぁ〜、おめでとうございます。因みにお相手とはどちらで?」
「トレセン学園で。……というか、あの〜…………あなたもご存じの、ネイチャです」
「ええ〜〜!!」 - 27モブスタッフ23/01/10(火) 16:07:17
みたいな感じでネイチャの結婚が発覚するんだ。
その後も俺とネイトレはまた少しだけ雑談をするけど、直ぐ「それでは」って言って別れるんだよ。
あの頃すれ違ったみたいに、それぞれが行く方へ。
ただ、あの頃と明確に違うのは、多分俺は二度とネイトレさんに会うことは無いし、何ならネイチャとも会うことはないんだ。 - 28モブスタッフ23/01/10(火) 16:08:03
でも心は満たされてるんだ。
あのネイチャが、実は自信が無くて、生きるのに不器用で、ちょっと捻くれてて、でも健気で優しいあの娘が、好きな人と幸せになったことに。 - 29モブスタッフ23/01/10(火) 16:09:33
寒風が首をすり抜けるから、思わず首を縮ませる。
それでも負けじと足取り軽く口笛なんか吹いたり、「ふん。心は暖けえのさ。おめでとうネイチャ、ネイトレさん」って誰にも聞こえない祝福を呟いたりして、街の雑踏に消えていくんだ。 - 30二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 16:13:15
おめでとうネイチャ
- 31モブスタッフ23/01/10(火) 16:13:39
俺はそういうモブでら何者かには成れない。
でも誰かの幸せを祈る事はできる。
だから俺はトレセン学園のモブスタッフになってネイチャの幸せを祈りたい。 - 32二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 16:37:57
おめでとうネイチャ
- 33二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 18:08:41
こういうの すき
- 34二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 18:49:34
hs
- 35二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 19:07:10
おいおい、お上品なSSなんか書きやがって
書くなら投げ銭入れも用意したらどうだぁ?
この片手落ちがっ! - 36二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 19:10:51
トレセン学園モブ願望スレか、わかるよ俺もって開いたらとてもいいSSを読んでいた…これは一体!?
- 37二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 19:33:57
連休明けに効くSSだった
- 38二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 20:32:19
age
- 39二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 20:51:01
トレウマにもウマウマにも一切関わらないけど
その世界の中でしっかり生きてるモブ
いいよな - 40二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 00:00:27
ウマ娘世界で生きてる感が良かった
- 41二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 00:08:24
良いものを見れた
ありがとう - 42二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 06:53:46
わざわざモブにならんでも…と思いつつ見てみたらなんだこの解像度は
- 43二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 07:16:42
気に入った
保守してやる - 44123/01/11(水) 14:39:18
もしかしたら、林業をやっているモブスタッフ君はバ搬娘と結婚するかもしれない。
その子供は、地方トレセン学園に入学するかもしれない。
入学前に、父娘は府中へ蹄鉄を買いに行くかもしれない。
とある店は商店街の中にあるかもしれない。
ネイチャは商店街へ買い出しに来てるかもしれない。
ばったり出くわすかもしれない。
「あらら、もしかして?」「ん?」
親同士、子供の話で盛り上がるかもしれない。
「うちの子は〜」「うちの子も〜」
その横で子供はむくれてるかもしれない。
そんなどこにでもあるやり取りが、もしかしたらあるかもしれない。 - 45二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 17:02:18
マーベラスだね!
- 46二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 20:47:41
スレ主だけで完成してしまったスレは伸びない
- 47二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 20:56:05
冬の冷える朝、グラウンドの整備作業が一段落したところで、白い息を吐きながらスレ主モブスタッフさんたちと一緒に缶コーヒーを飲みながらバ鹿話をする仕事仲間になりたい
- 48二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 21:00:19
- 49二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 21:13:06
機器の整備、芝の栽培、植え付け、地面の均し等を一括で請け負う的な委託業者かな?
トレセンの内部に待機所があるのか、それとも外出て近くにあるのか