【閲覧注意】わ、私が!……マ、ママだよ〜……

  • 1二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 23:43:41

    アオイ、ネモ、ボタン、そして俺の四人でエリアゼロに行き、母ちゃんのAIを見送ってから数週間が経った。

    スパイス集めに時間を費やしたせいでいなくなった単位ちゃんたちは、この数週間で再び集まりつつあった。

    そして、今日。

    「……お……!!」

    「終わった……!!」

    最後の一問に赤丸をつけてもらい、俺はヘナヘナと床に膝をついた。学園のタイルが冷たく、外を見れば少し暗くなり始めていた。どおりで寒いちゃんだぜ!

    「はあい、花丸満点。ペパーくん、よおく頑張りましたねぇ」

    教壇越しに、ジニア先生が目を細めて微笑んでいる。この人も、待たせてしまった。

    「ああ、ジニア先生も遅くまでありがとちゃんだぜ!」

    「大丈夫ですよ、先生ですからあ」

    笑顔を崩さず、先生は頷いてくれた。ありがたい限りだ。

    「さて、ペパーくんはおサボりした分の単位は取り返したので、明日から補修にこなくていいですよお。2回目ですが、頑張りましたね。それじゃあ僕はこれで」

    もう暗いから早く戻ることを付け加えて、ジニア先生は教室を出て行った。俺は勉強道具を急いでカバンに詰め、寮へ歩みを進めた。

  • 2二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 23:47:39

    >>1

    「バウ」


    「うわっ……どうした、マフィティフ」


    自室前に着いた途端、ボールからマフィティフが飛び出した。視線を追ってみると……俺の部屋のドア?


    「なんだ……?」


    顔を近づけてみると、微かに音がした。誰か入り込んでるのか……? まさか、泥棒ちゃんか!?


    慌ててマフィティフの方を振り返り、よく見てみれば尻尾を振っていた。……悪い奴じゃないってことか?


    ひとまず鍵穴を覗き込んでみる。


    ドアの向かいに位置するのは、間取り的にキッチンだ。俺が、自分の部屋で一番自由にしている所。


    そいつは、そこで……


    「……踊り?」

  • 3二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 23:51:55

    >>2

    行ったり来たり、ひらりひらり。


    鍵穴に遮られた視界に、少し白く小さな足が2本。ステップを踏むように忙しなく動いていた。


    そして、それに追従するかのように一枚の布も踊っていた。


    「泥棒……じゃなさそうだな、マフィティフ」


    誰かがいる。敵意は感じない。多分そう言いたかったのであろうマフィティフは、ボールをかざせば素直に戻っていった。


    さて、どうするか。


    まぁ、遠慮してやる必要はないか。俺の部屋だし。


    「ただいまー」


    普段言わないそれを、わざと口にしながら鍵を開け、ドアを開く。


    そこにいたのは……


    エプロンを着た、アオイだった。


    「あ、え、えっと……おかえり?」


    「う、ああ、うん、ただいま」


    どういうことだよ!?

  • 4二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 00:01:23

    「え、えっとね! と、とりあえず疲れてるでしょ!」

    少しの硬直の後、アオイが少し大きな声を出した。

    普段制服姿しか見慣れていない女の子のエプロン姿、それもアオイのそれを見てしまった俺はには、それはマフィティフのふいうちのように効力を発揮した。

    つまり、ヤヤコマがタネマシンガンを食らったような心持ちだった。

    「……」

    「だ、だから! はい! 荷物とか、上着とか!」

    おそらく間抜けな表情をしてるであろう俺に気づかないほど、焦りで顔を真っ赤にしたアオイが、精一杯両手を広げる。

    ……預けろ、ということか?

    「あー……重いぞ」

    「分かってるよ、任せてちゃんだよ!」

    必死に力をこめているらしいアオイの腕は、脚と同じ色をしていて、細く滑らかだった。

  • 5二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 00:04:53

    >>4

    「なんだよ、それ。俺のモノマネちゃんか?」


    「い、いいでしょ、今は! ホラどうぞ!」


    軽口を返せないほど焦っているらしい。おもしれー奴。


    「わかった。じゃあほら、頼むぜ」


    アオイにベストを渡してリュックをいつもの場所に置く。


    「あ、ちょっと!」


    「それ、ロッカーにしまっといてくれよ。疲れてるちゃんなのは、マジだからさ。頼むぜ」


    そのままベッドに寝転がれば、マフィティフが再び出てきて寄り添ってきた。いつものルーティンだ。


    「晩飯の時間までちょっと寝るから、アオイはいつまでいる?」


    「え、私? えっと……私は……」


    今日は、消灯まで。


    そう答えたアオイを見れなかったのは、瞼が重かったからだ。


    絶対に、そうに決まってる。

  • 6二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 00:14:21

    ほう?ほうほう?なるほど?

  • 7二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 00:14:44

    「…………」

    ふと気がつくと、隣で眠っていたはずのマフィティフがいない。瞼は開けなかったものの、温もりがなくなっていたのですぐ分かった。

    代わりに、なんだか後頭部が温かい。それと、頬も。

    浮上し始めた意識と感覚が、頬の温かな感触は現在進行形であると伝え始める。

    これは……撫でられてるのか? 誰が? なんで?

    いや待て。そういえばさっきアオイが……!

    「えと……」

    アオイの声だ。寝転がった俺の、顔の上から聞こえる。

    「まだ……寝てるよね」

    となると、この後頭部の温かみは……! まさか……!!

    「勝手に膝枕しちゃったけど……ペパー、怒んないよね」

    怒るわけ、ねーだろ。

    「最近頑張ってたもんね。勉強とか、マフィティフの怪我のためにーとか……」

  • 8二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 00:19:44

    >>7

    あと、お母さんのこととか。


    そっと呟いた声が、俺の顔に落ちた気がして、不思議に思えば。


    「ごめんね……! 私……なにも、できなくて……!」


    落ちたそれは、俺を覗き込む眼から落ちる涙だった。


    「ペパー……ペパーは、頑張ってる。すごいよ。だから……!」


    もっと、甘えてよ。


    一際大きな滴が、俺の頬に落ちた。


    「……もう、充分甘えさせてもらったよ」


    「…………」


    「ありがとな、アオイ」


    目を開けて笑いかける。マフィティフ直伝の、あくタイプテラスタルスマイル。


    「…………」


    その日アオイが出したばくおんぱは、左右上下の部屋を貫通し、のんびり屋のジニア先生に全力疾走させるほどの音量であったことは、こんらん状態の俺たちが知る由もなかった。

  • 9二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 00:22:59

    ア゜ア゜ア゜ア゜ア゜ア゜ア゜
    すき

  • 10二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 00:25:15

    こんな美味しいのを深夜の荒波に沈めるなんて各方面に失礼だよね

  • 11二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 00:26:10

    最高のペパアオすぎる もっとください…

  • 12二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 00:27:23

    威力140身代わり(寮の壁)貫通

  • 13二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 00:34:20

    ほっこりしてたらばくおんぱの流れで草

  • 14二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 00:38:01

    「びっくりしたな、ジニア先生意外と足速い」

    「ね、スリッパであんな速度出るなんてびっくり」

    各方面に散々頭を下げた後、俺たちは購買に寄って帰ってきた。

    今日のご飯は、アオイの奢りだ。筋としては当然だが、男としては納得しかねたが、アオイはこういうちゃんとしたところでは強情だ。

    テーブルを囲んでサンドイッチを食べながら、俺たちは雑談にくさテラスタルを咲かせていた。

    そう、なんと俺たちはどさくさに紛れて同じ部屋に帰って来ていた。

    「スリッパめっちゃ音鳴ってたよね、パタパタ〜っていうかパチーン! パチーン! って感じで!」

    「そうそう、楽器みたいだったよな!」

    ……俺もつくづく隠し事が上手くなったちゃんだぜ……クソッ、こんなとこでアイツの顔を思い出すなんて……!

    アイツも、ずっと隠してた。自分のやったこと、したかったこと、そして……

    その末に辿った結末まで……

    「……ペパー?」

    ふと気づけば、アオイがこちらを覗き込んでいた。サンドイッチは、お互いとっくに食べ終わっていた。

  • 15二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 00:43:21

    >>14

    「えっと、大丈夫? まだ耳キーンってする?」


    アオイがこちらに手を伸ばした。近づいてくる顔や瞳は、純粋な心配を纏っていて。


    なのに、俺は体温が顔に集まるのを感じている。


    「ああいや、大丈夫ちゃんだぜ、ペパーちゃんは大丈夫ちゃん。マジで健康優良ちゃんだから。特性も実はさいせいりょくだし」


    頭はアオイのことでいっぱいで、まともな思考なんてできない。熱に浮かされたような頭で、それだけが分かる。


    慌てる俺に対して、アオイは静かだ。しどろもどろになる目をなんとか向けて見れば、何故だか微笑んでいた。

  • 16二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 00:48:53

    >>15

    「ペパー……」


    「な、なに……」


    アオイ、手が、俺に。


    「いいんだよ……だいじょうぶだから……」


    ああ


    「だから……ね?」


    そうだ、俺は……


    「私に……甘えていいからね……」


    「あ……」


    トン、と音がして。俺の頭は、アオイに丸々抱き抱えられていた。


    心臓の鼓動が、ドクドクと鳴っている。さっき痛めつけられた鼓膜じゃなくて、触れ合った肌を通して音が伝わる……これどっちのだ?


    まぁ、いいか。だいじょうぶなんだし。だって、アオイがそういってたから……

  • 17二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 00:56:49

    >>16

    「わ……」


    ああ……


    「わ、私が! ……マ、ママだよ〜……」


    え……





    ママ、ははおや、かあちゃん。いえにかえってこないかあちゃん。みんなが「すごい人だ」って言う、母ちゃん。俺に何も言わずに、勝手にどこかに行って、もう帰ってこない……


    違う。

  • 18二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 00:57:05

    >>17

    「ぷっ……」


    「え……」


    「アハハハ!! アオイ、お前流石に無理があるちゃんだぜ!」


    腹から込み上げてくる笑いは、アオイの腕の温もりとは違う温度を持っていた。太陽のようにあったかい。


    そうだ、これはあの日の。


    コライドンと、いつもの四人で帰ったあの日の。


    あの日の光だ。


    「アハハ……! ……アオイ」


    「あ、はい、なんでしょう」


    あの日の光を浴びて、コライドンに背を押されて、俺は。


    「ありがとな」


    一歩、踏み出せたんだ。


    「もう、大丈夫ちゃんだ!」


    俺も もう 行かなくちゃ!

  • 19二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 01:36:30

    ンンンンスキィ

  • 20二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 01:47:33

    アオイママ最高やな。ペパー君は独り立ちしたのでアオイママはもう必要ないな。次がつかえてるからアオイママをこちらに渡してくれ

  • 21二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 02:17:50

    圧倒的光…
    眩しい…

  • 22二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 14:19:21

    良い…

  • 23二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 17:42:37

    最後「もう 行かなくちゃ!」で〆るの発想の天才がすぎませんか…?
    ポケモンの主人公が家を出る前にテレビの前で足を止めて、自分から冒険へ飛び出していく直前の発言じゃないすか…
    この場合のテレビはペパーにとっての親への執着や過去の寂しさでしょ?それから目をそらせずその場に留まるしかできなかったのに、アオイちゃんという光に照らされて、あるいは手を引かれることで、やっと広い空の下に飛び出したんですよ…素敵な話をありがとうございます…

  • 24二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 23:31:38

    ほし

  • 25二次元好きの匿名さん23/01/12(木) 00:38:58

    オレコレスキー!!

オススメ

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