- 1アクセス許可21/11/07(日) 18:34:22
- 2アクセス許可21/11/07(日) 18:35:00
最近、カフェの調子がおかしい。
ただ調子が悪いだけなら担当ウマ娘であり、かなり長いこと隣にいたゆえにすぐに分かる。
けども、彼女の今の状態は一線を期していた。
その中でも一番大きいのは、走っている時にまったくもってスタミナ配分が出来なくなっていたことだろう。こちら側がそれに類する指示を一切出してないというのに必ず逃げの作戦でレース進めていた。
まるで追いつかれたら死ぬ何か(君には真実が見えているはずだよ?)がいるようにただ無尽蔵のスタミナに任せて、血反吐を漏らすように逃げていた。
あんな走り方をしていたらいつか必ず足を壊すぞ、と声をかけても何かに怯えるように、彼女はその場からそそくさと立ち去ってしまうのみだった(聞こえているはずだろう?)。
また最近の彼女は、レース終わりのライブ前に何度も何度も、同じフレーズを繰り返していた。
『私は水中の死体に見覚えはありません』
そのフレーズが何を表すのか何なのかは一切分からなかった(彼らは長い間待っていたんだよ)。それにライブでの動きもどこかが気になるらしく、体が強ばって動きからキレがなくなっていた(彼はずっとそばにいる)。
よく彼女に絡んでいるアグネスタキオンに聞いても同じような態度らしいく、同室のユキノビジンに聞いたところによれば、私が見てるとき以上に過剰に怯えているという(彼らは君の友人だったじゃないか)。
特にユキノビジンから聞いた情報によると銘柄問わず、コーヒーをがぶ飲みしてなるべく寝ないようにしていたとか。
あまりにも彼女らしくなかった。
さすがに重症すぎる(君は助けに来てくれる、必ずね)。
そう思って、私はカフェをトレーナー室に呼び出した。その目もとには夜更かし気味を表すようにクマができていた。 - 3繧「繧ッ繧サ繧ケ險ア蜿ッ21/11/07(日) 18:36:15
「聞いたぞ、カフェ。寝てないんだろ?」
何か相応の理由があるはずだ、と続けて聞く。
彼女の言う"お友だち"は何かを起こしたとしても、それ自体には慣れているはずだし、ここまで怯えるような子ではないはずだった(俺たちは皆、無垢な子供だった、覚えてないのかい?)。
すると彼女は突如として泣き出し、私に抱きついてきた。
「あの……トレーナーさん……私が、ライブ前に言ってるフレーズ……それを繰り返してください……お願いします……。」
マンハッタンカフェとは長く過ごしてきたが、それでも今まで見た事のない表情をしてきた。
まるで今から殺されるとでも言われそうなほど怯えており、その目頭には涙が浮かんでいた。
「えっと、私は水中の死体に見覚えはありません……だったっけ?」
「はい……大丈夫です……。ありがとうございます……」
ひとつ深呼吸をしてから、彼女はその言葉を続けた(彼女の言うことは全て嘘なんだ、聡明な君はもう気付いてるかもしれないだろうけどね)。
「トレーナーさん……。私は……見てしまいました……湖のほとりを……。私は彼らと会ったことがないのに、見覚えがあるんです……。
それでまるで、私が……最後の一人であるかのように……囁いてくるんです。
あれは……私の"お友だち"が……可愛く見えるくらいに凶悪でした……正直に言いますと……は、初めて見たんです……。
あそこまで境界がボヤけた場所と、それを越えてやってきた意志を……。そして、私は……アレと目が合ってしまいました……。
"お友だち"のおかげでなんとか逃げたと……そう思ったのに、それから常に声が聞こえるんです……。
『帰ってこい』『思いだせ』『助けてくれ』……って。
それで……それで、眠ってしまったら……自分が自分じゃなくなるんじゃないかと……そう思ってしまって……」
そして彼女はそこで言葉を詰まらせてぎゅう、と私の服を握る。
今にも泣き崩れそうなマンハッタンカフェの背中をさする。どうやら『見える』体質が裏目に出たののと、いわゆる初見殺し(君は俺たちを知っている)を食らい呪われた──と言っていいのか分からないが(ただ寂しかったのさ)──らしかった。
とりあえずの精神面の不調という名目でトレセン学園に連絡をして、しばらくレースやトレーニング、学業を休ませることにした。 - 4繧「繧ッ繧サ繧ケ險ア蜿ッ21/11/07(日) 18:37:16
どうしたものか(湖にもどるんだ)。
今まで彼女には沢山助けられてきた。レースだけではなく、だから恩返しをしたいと思う(俺たちを思い出してもらいたいんだ)。
少し考えて、いわゆる霊感のない自分ならその場所に原因を探れるのでは? と思いついた。
そしてそれを行動に移すのは遅くなかった(君はすでに真実を知っている、だからただ思い出すだけでいい)。
危険
溺れる可能性があります。ここからは立ち入り禁止です。
さあ、下へ。 - 5検証中…………21/11/07(日) 18:38:15
──助けて、お願い
湖に戻って、水の中で彼らを見た。
あれは、私の友達、私のクラスメイトだ。
██年の秋に、一緒に校外学習に行った彼らのことを思い出した。
──あなたが必要なの。
私には彼らの声が聞こえていた。なぜ今まで分かっていなかったのだろうか。愚かだ、と自分を罵倒する。
──僕たちを覚えてないのかい?
これは私の過ちが引き起こしたことだ。そして彼だけが、いや彼と私だけが去った。
みんなはまだ湖の底で彼と私が戻ってきて、また一つになるのを待っていた。
──大丈夫、大丈夫よ
彼らは……私に思い出してもらいたかったんだ。
目が覚めた。私たちが卒業するはずだった██年の秋を完全に思い出した。
どうして忘れてしまっていたのだろう?
わすれる?
どうして彼らは俺たちにこんなことをしようと思ったんだ?
彼らはそんなことをしないはずなのに。
彼ら は俺たちをここに残したりはしない。
『君』は俺を、俺たちをここに残したりしないはずだ。
──忘れないでくれ - 6████のアクセス封鎖済21/11/07(日) 18:39:08
[ERROR Code:███]
[異常検出]
[██████からの干渉を封鎖……未完了]
閲覧者のCRVは許容範囲内にありません。閲覧者のCRVは活動状態の認識災害に影響を受けています。そのまま動かないでください、あなたの現在地へと医療スタッ[''///afe44/2が間もなく到着します。
──君も湖に戻るんだ。 - 7ライセンス表示21/11/07(日) 18:39:49
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SCP-2316 - "Field Trip(校外学習)"
本家URL
翻訳版URLSCP-2316 - SCP FoundationThe SCP Foundation's 'top-secret' archives, declassified for your enjoyment.www.scp-wiki.netSCP-2316 - SCP財団ja.scp-wiki.net著者:© djkaktus - 25 Jan 2016
翻訳:© C-Dives - 12 Mar 2016
- 8二次元好きの匿名さん21/11/07(日) 18:45:01
面白かった乙
- 9二次元好きの匿名さん21/11/07(日) 18:55:37
財団職員もトレーナーやる時代か