- 1二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 09:31:39
- 2その一21/11/08(月) 09:31:56
何処ともつかない暗い港には輸送コンテナが積み上げられ、夜闇も相まって近寄りがたさを醸し出している。武器や薬物の違法な取引が行われているとの通報を受けたマスターアニマ率いる地球連邦警察警備局の部隊が消息を絶ったこの場に、正規軍の3人が踏み込んだ。
「うう、暗いねえ……ぼく、こういうとこ嫌いだよぅ」
一番最初に口を開いたのは最後尾に着く最年少のカノン・マスケット───────自信をガンキャノン量産型と信じてやまない少々変わった、正義感の強い、常人より遥かに強い怪力を持つただの少年である。
この件への介入の言い出しっぺでもある彼だが、やはり歳相応に暗所への忌避感があるようだ。
「お前が言い出したことだろう。私としては正直もっと楽しげな戦場へ向かいたかったものだが、まぁいいだろう。」
ここで戦功を挙げれば最前線への近道にもなるだろう。と言いたいところを飲み込んだ女性はエリーゼ・スピナー中尉。歩兵部隊で狙撃兵として活躍していた彼女だが、砲撃によって隻眼となり、エーススナイパーとしてのキャリアを絶たれた。
その後強化人間計画の一環として機械式の義眼を埋め込んだ彼女はカノンから助力を求められ、義眼の性能と自らの腕が未だ衰えていない事を示し、再び戦士として返り咲くことを目論んでいた。
2人のやり取りをよそに得物のツインビームスピアを懐中電灯代わりにして、くだんのブローカーを探すのはストライク・"ストライカー"・ストレイト大佐。見た目こそ人間とそう変わらないが、彼の正体はモビルスーツを人型サイズに落とし込みさらに量産性を高めるヒューマンビーイング計画の最先端として造られた人造人間である。
「お二人さんよ、おしゃべりも結構だが、そろそろ警備局のアホ共が消息を絶った場所の近くだぜ。」
スピアの電源を落としカノンとエリーゼを嗜めるストライカー。コンテナを一つ挟んだ向こう側では今まさに暗黒の違法取引が行われている。 - 3その221/11/08(月) 09:35:28
「よぅ……あのクソマヌケ共、まだオレたちには気づいてねぇみてぇだ」
声を潜めながらストライカーが慎重に様子を伺う。漏れ聞こえてくる会話の内容からすると、今日は人身売買を行っているようだ。
「OK……today's merchandiseは……」
「おお……いいね……ドム好みの……そこの紫髪の子は」
「Not for saleよ」
「そんな……」
「惨いぜ……あんな子供を……信じられねぇ」
歯を噛み締め表情に怒りをにじませるストライカー。しかし彼の長身は後続の視界を遮っているようで、後ろの2人から不満の声が上がる。
「おい、どうなっているストライカー。お前が邪魔くさくて全く見えんぞ。」
「そうだよ、ぼくなんてちっちゃいんだからさ、ちょっとくらいどいてくれても……」
「いーやダメだぜ。赤いガキ、お前は特に見ちゃならねぇ。いいかスピナー、武器は撃てるようにしといて欲しいが、俺が合図するまでぜってぇ動くんじゃないぞ。取引が終わって客が帰ってから行動───────「動くな!連邦軍だッ!」バカ!話聞いてたのかバカ!よくそれで狙撃手名乗ってたなバカ!」
「何を言う!この場で誰も逃さず捕まえておけば、次の被害を未然に抑えられる!悠長なことはやってられんのだぞ!」 - 4その321/11/08(月) 09:36:58
若さか若しくは焦り故か、迂闊な行動に出たスピナーを庇うようにコンテナから飛び出すストライカー。しかし既に包囲網は完成している。
「あー、こんばんはお嬢さん。俺ら港湾労働者組合のもんで……」
「あら、ワタシがそんなSimpleな嘘に騙されるようなIdiotに見えるかしら?─────ワタシはアニマ・ニジケイ、あなたたちが追っているMafiaのBossよ。」
「こいつは失敬、聡明なるアニマお嬢様よ。ま確かに俺のツレよりは賢そうだな。」
「なんだとコラ」「ぼくバカじゃないもん」
「黙ってろ!さてさて、賢明なお宅なら俺らが来た用事はわかってらっしゃるな?」
「ええ、銃口なんて向けられてるくらいだしPeacefulな解決は望めなさそうなこともね。」
「もとからその気は無いがな!」
「ねぇほんともう静かにしててスピナーちゃん」
「ドムもう帰っていい?」
「ダメだあんたにも用事がある」「ノーよ、ここにいる以上はAccompliceだわ!」
「ドム詰んだね。」
緊張が周囲を支配する中、エリーゼは少しづつ引き金を絞り、ストライカーはスピアを構え、カノンはストライカーの後ろに引っ付いている。
膠着を破ったのはニジケイの合図だった。
「カウガール!出番よ!」
「任せなさい!」
後ろで控えていた西部時代保安官の衣装に身を包んだ少女が素早くホルスターから銃を抜く。
「なんだァ!」
エリーゼも負けじと狙いをカウガールに定めるが───────
ZAP ZAP ZAP!!
カウガールの持っていた銃は昔のカートゥーンに出てくるような光線銃であったが、おもちゃのような見た目に反し銃口より眩い光を発した。
「ウギャアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」
「す、スピナーッ!!」
「エリーゼおねえちゃーん!!」
年齢にして20なりたてのうら若き乙女が上げてはならない断末魔とともに光に包まれるエリーゼ。
「残念だったわね、早撃ちなら私の方が上よ!」
服だけ残して消えてしまったエリーゼを尻目に勝ち誇ったように語りながら手癖のガンスピンを魅せつけるカウガール。しかし。
「っえーーい!!」
「あうっ!」
カノンがカウガールの額目掛け小石を投げつける。べちっ、という音の後に彼女は後ろへ倒れ込んだ。 - 5その421/11/08(月) 09:38:10
「……これでお互いマイナス1人だな」
「そうね。けれど数的Advantageはまだワタシ達にあるわよ?」
額を抑えて蹲るカウガールを助け起こしながらも余裕な態度を崩さないニジケイ。対しストライカーは目線だけでエリーゼの所在を確認しつつ、カノンを後ろに庇い後退しなければならない。あちらはニジケイの引き連れていた部下とドムのお付き、こちらは小僧ひとりと槍を振るう以外能の無いバカがひとり。余りにも不利な状況に、汗が額を降りていく。不意に、脚に柔らかな何かが絡みついた。
「ッ!なんだ!?」
「す、ストライカーにいちゃん……あの子って……」
カノンの言葉に嫌な予感を覚えつつ、足元に目線を落とす。
「すとらいかー……?」
青い長髪に翠色の両眼、半分になってしまった身長は今やストライカーの膝に頭が届く程度しかない。服は着ていないが、スポーツブラが肩にかかって辛うじて胸は隠れている。先程までの姿からは考えられないが、状況証拠だけで言えばもはや間違いなく───────
「スピナー、なのか……?」
「……?えりーはえりーだよ?」
エリーゼ・スピナーその人であった。 - 6その521/11/08(月) 09:39:08
アニマ・ニジケイ率いるアニマ・ファミリー。この組織が売り捌いていた武器とは、年齢操作ポワワ銃だったのだ!
「年齢操作ポワワ銃……なんと恐ろしい武器!」
「フフ……まだ若返らせることしかできないけどね!これはこれでいいものよ?アナタは知らないだろうけど世の中異常性癖で溢れかえっているわ!ショタコンロリコン調教好きに刷り込み教育!それと照射時間を調整すればアンチエイジングにも使えるのよ!この銃さえあれば色んな人を若返らせて自分の好みに染め上げたりできるわ!こうしてワタシもマスターアニマを……フヒヒ!」
「そうか!警備局のマスアニをやったのもお前か!」
「ええ!That's Right!その通りよ!だってこうでもしないと、あの人ワタシと付き合ってくれそうもないんだもの!」
「そりゃあお前さん犯罪者だしな!あいつにも立場ってもんがあるの、わかってたんだろ!?」
「わかってたし、だからどうするべきか考えたわ!そりゃもうじっくりと!だからこんなPlanを実行したんじゃない!」
エリーゼを片腕に抱きながらスピアを前に突き出し牽制するも、ニジケイは意に介する様子もない。 - 7その621/11/08(月) 09:39:44
「これでThe endね兵隊さん!あなたも可愛らしかった子供の頃に戻って、そこのドムに性的な目で見られるがいいわ!」
「クソ!子供になれるのはちょっと気になるがドムに売られるのは勘弁だぜ!」
「やだっ……えりーこわい!助けてすとらいかー!」
「わーん!ぼくたち三人そろって性犯罪者におかされるんだあ!」
「急に話飛んできたなぁ、ドムびっくり。まぁとりあえずチャチャッと緑のお兄ちゃん若返らせちゃって、ドム言い値で買うよ。女の子は別にいいや」
「さぁ、Anti Agingの時間よ!」
ZAPZAPZAP!再び光を放つ年齢操作ポワワ銃。しかし───────
「うおあああああああああ眩しい!!!」
「……What?」
「……あれ?ストライカーにいちゃん?」
「すとらいかー?」
ZAPZAPZAPZAPZAPZAP!!
「ウアアアアアアアアアアアアアアアアア視覚が焼ける!!」
「お、おかしいわね。もうここまで照射したらfetusになってるはずよ!」
「そ、そうか……!」
「かのん?なにかわかったの?」 - 8その721/11/08(月) 09:41:24
「ストライカー兄ちゃん、そういえば純粋な人間じゃなかったんだ!」
そう、ストライク・"ストライカー"・ストレイトは人造人間───────いわばアンドロイドである。
「えっ何それ」
「まあ……そういうこった。残念だがな。」
「くっ……これしきのtroubleで諦めるもんですか!ワタシのアニアニイチャラブおねショタProjectはまだ終わってなんていないわ!」
「ウワーッ!名前からしてろくでもない計画!」
「やっちゃえストライカー兄ちゃん!スピナーねえちゃんの面倒はぼくがみてるからっ」
「えりーもおうえんする……!がんばれすとらいかー!」
「応援だけか!ハッ、いいぜ……かかって来やがれクソッタレ共がァ!」
「やっちゃいなさい、あんたたち!!」
ニジケイの号令とともに、アニマ・ファミリーの戦闘員がいっせいにストライカーへと飛びかかった! - 9その821/11/08(月) 09:44:25
やがて朝焼けが一帯を照らしだし、空が赤く染る。叩きのめされボロ雑巾のように転がるニジケイの部下やドムの一味の体を踏まないように避けつつ、ストライカーがニジケイへと歩を進める。
「ふっ……どうやらワタシのloseみたいね兵隊さん。煮るなり焼くなり好きにすればいいわ」
「物分りが良い奴は好きだぜ?さぁて、子供にされた連中をどうやって元に戻すのか教えてもらおうか」
「もう一度ポワワ銃のBeamを浴びせれば元に戻るわ……安心して、ポワワ銃を浴びたのはここに居る人達だけよ。」
「そうかい……」
ZAPZAPZAPZAPZAPZAP……縄に縛られていた警備局員だった子供達や行方不明になっていた人々に再び光線が当たると、みるみるうちに体が元の大きさに戻っていく。
「クッ……我は一体何を、というか何だこの縄!そもそもなぜ我素っ裸!?」
「よーぉマスアニくん……お前らの尻拭いに来てやったぜ」
「貴様は……ええい、面目ない所を見せてしまったな。これでは父上に合わせる顔もメンツもない……」
「お礼とかないの?……まぁいい。スピナー、お前で最後だ。ちょっと眩しいぞ」
エリーゼに向けてポワワ銃の引き金を引くストライカー。しかし……
「ん?お?あれ?おい、ビームでねぇぞ?どうなってんだ」
「す、ストライカー兄ちゃん?」
「……あー、これいわゆるアレね、Battery is dead……電池切れ」
「電池切れぇ!?じゃあなんだよ、どっかに予備のバッテリーとか」
「ないわ。Prototypeですもの。一度撃ち切ったらもうdisposeよ」
「マジかよ……」
「嘘でしょ……」
一連のやり取りを聞いていたエリーゼが不安そうに、ストライカーのズボンの裾を引く。
「すとらいかー……えりー、ずっとこのままなの?」
「いやわからん。まだどっかにもう一丁隠し持ってるとかあるかもしれん!」
別に戻らなくてもいいし素直な今のままでいいんじゃないか?と言いたいところをグッと抑え、ニジケイの方へ視線を向けるが、当の彼女は黙って首を横に振るだけである。
「……どうするんだこれ?」
死屍累々の港には、形容しがたい微妙な空気が流れていた。
「……まぁ、とりあえず一度……帰るか。なんか方法があるかも知れねぇしな……」
釈然としない雰囲気のまま、アニマ・ファミリーVS連邦三バカ小隊の戦いは幕を下ろした。 - 10二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 09:48:12
以上で終わりです
SSなんて片手で数えるくらいしか書いていないので読みにくい所とかカノンくんの可愛さ不足とか色々問題はあるけどこれからも精進して参ります
なんかすげぇ長くなってて笑っちゃうんすよね - 11二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 10:57:23
カウガールあっけなくてワロタwww
- 12二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 12:06:58
乙乙
年齢操作ポワワ銃とかいうネーミング好き - 13二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 18:42:56
- 14二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 19:45:57
オリキャラ半分くらい知らなかったけど良かったです
セリフの割合が多いSSだとキャラ名をセリフにつけた方がわかりやすいと思います - 15二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 21:59:25
朝に読みたいので保守す
- 16二次元好きの匿名さん21/11/08(月) 22:03:26
- 17後日談21/11/09(火) 07:28:08
「あー……これは」
空色の短髪と顬から生えた二本の角が特徴的な美少年───────アニータが、眉間に皺を寄せてむむ、と唸る。年齢操作ポワワ銃の影響で9歳程度に若返ってしまったエリーゼ・スピナーの治療法を知っているかもしれないと踏んだストライカーの急な訪問を受けたのは、つい先刻の事だった。
「どうだっ、戻せそうか?」
「ハイハイ落ち着いて」
食い気味に尋ねるストライカーの額に人差し指を押し当て彼を退けるアニータ。
「そもそも原因自体が訳分からない以上、僕にできることはないかな……魔術とかそういう類だったら、解呪とかで対応できたかもしれないけどね。ていうか何年齢操作ポワワ銃って?」
眼鏡を外し深い溜息を吐きながら首を横に振るアニータに、青髪の幼女が縋り付く。
「うう、えりーずっとちっちゃいままなんてやだよぉ……」
「大丈夫だよ、きっと元に戻す方法は見つかるから。で、ストライカーさん?」
「おう」
「その年齢操作ポワワ銃とかいうやつだけど、結局なんなのかわかったの?」
「いや、それがだな───────」 - 18後日談21/11/09(火) 07:28:20
その後ニジケイ一味を引き渡すついでに例のクソ光線銃も本部の連中に寄越して解析してもらえねぇか頼んだんだが、そもそも解体自体が出来ねぇって話だ。ネジも継ぎ目も一切無し。さらにX線スキャンも通らないときた!ハナっからポワワ銃自体が『元よりそういうもの』として存在してたとしか思えない、本物のオーパーツってやつらしい。
「───────ってのが、奴らの結論。マスアニ達警備局の連中も血眼になって出処を探してるみたいだが、まるでしっぽを掴めていない」
「人知を超えたオーパーツか……まさかなぁ」
一瞬アニータの脳内に例のショタコン変態天使の姿が浮かぶが、一瞬で霧散した。そうだ、彼女は確かに下界での蛮行がバレて年単位の謹慎処分をくらっているはずだ。こんなものを作り出してニジケイ達に渡すほどの余裕なんて、あるはずがない。
「まさか、まさかね……」
「どうしたんだよ坊主?」
「なんでもないよ!……それで、スピナーさんなんだけど、どこか預ける宛はあるの?多分今のままだとまた一人暮らしは無理そうだし」
「あーそうか、一人で家に帰すわけにはいかねぇか……エリー、君はどこか泊まる宛てとかあるのかい?」
エリーゼに目線を合わせて優しい声色で問うストライカー。
「……すとらいかーのうちがいい」
「そうかぁ、俺の家かぁ……わかった。帰りに布団を買っていこうか」
「決まりみたいだね。またなにか分かったら連絡するよ。」
「おう、頼むぜ。」
親子のように手を繋いで帰途に着くストライカーとエリーゼを見送りながら、アニータはどこか、嫌な胸騒ぎを感じていた。
- 19二次元好きの匿名さん21/11/09(火) 15:48:07
- 20二次元好きの匿名さん21/11/09(火) 18:01:42
ポワワ銃の詳細ヤッター!
- 21二次元好きの匿名さん21/11/09(火) 18:06:42
グルーガンみたいな見た目しやがって!
- 22二次元好きの匿名さん21/11/10(水) 04:45:21
保守
- 23二次元好きの匿名さん21/11/10(水) 15:41:35
保守