【SS】フクキタルが口からおみくじ出した

  • 1二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 22:28:42

    口からおみくじ出てくる系の話が苦手な人はブラウザバック願います。

  • 2二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 22:29:13

    #1/5
     とあるレース前の控え室にて。
     「うぅ~。緊張しすぎて口からおみくじが出そうです!!」
     俺が担当しているウマ娘、マチカネフクキタルが緊張したときにしばしば言う台詞だ。いくらフクが占い好きで、実家が神社だからといって、口からおみくじが出るわけはない。これもフクなりの感情表現なのだと微笑ましく見守っていたところ――。
     とつぜんフクは口を押さえてうずくまり、えずきはじめた。    
     「う゛う……、う゛ぉえ゛っっ!!!」
     急に体調でも悪くなったのかと思い、慌てて駆け寄った俺に、フクは涙目になりながら、おずおずと何か紙きれを差し出してきた。
     「ト、トレーナーさぁん!何か口から出てきましたぁ~~!!」
     どう見ても唾液でべしゃべしゃだったので手に取るのは正直抵抗があったのだが、だからといって放置することもできない。
     濡れそぼった紙きれを手に取り、破らないように、折りたたまれた紙切れを開いてみる。
     色合いや書いてある文章から、おみくじであることがすぐに分かった。どうやら、フクは本当におみくじを出したようだ。そのおみくじには、でかでかと「大吉」と書かれており、その下には今日のレースに関する内容が事細かに、具体的に書かれていた。仕掛けるタイミングさえ書かれていた。一瞬、フクがおちょけて事前にそれっぽい文章を記して、口の中に仕込んでいたのかとも思ったが、フクは普段の様子はともかくレースに関しては真摯に、真面目に取り組むウマ娘だ。こんな、一歩間違えば出走が危ぶまれるイタズラをするなんて考えられない。つまり、このフクの体内からまろび出てきたおみくじは、なんと言うべきか「本物」だと考えるほかないのだ。
     おみくじを覗き込んでいたフクが言う。
     「な、なんと!これはまさにシラオキ様からのお告げ!!このおみくじに書かれている通り走れば勝利間違いなしですね!!」
     前々からフクの占い依存体質には危機感を感じていたし、部屋を埋め尽くすほどの大量の占いグッズを、適量になるまで処分させたりもした。だが、こう目の前で超常的な現象を見せられてはフクの言う「シラオキ様」なる存在を認めざるを得ない。
     そして、実際にレースはおみくじに書かれている通りに進行し、おみくじに書かれているタイミングで仕掛けたフクは――その日のウイニングライブでセンターを飾ったのだった。

  • 3二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 22:29:32

    #2/5
     フクが口からおみくじを出せること、そして、その内容が百発百中で的中するという噂は、あっという間にトレセン学園中に広まった。年頃の女の子というのは元から占いの類いを好むものであるし、ましてやトレセン学園のような競技成績を重視する学校の生徒なら、なおさらだ。前もってレース展開とか、競走相手の作戦とか、当日の芝状態なんかを知っておくことは、勝敗を左右するくらいでアドバンテージがある。気づいたころには、レース前にフクにおみくじ占いをしてもらうことは学園のトレンドになっていた。
     出るレース、出るレースで連戦連勝、学園に帰れば占いを求めるウマ娘が列をなしている。このまま行けば「年度代表ウマ娘」も夢ではないと先輩トレーナーに言われた。ついでに言えば、あまり成績がいいと言えなかったフクだが、学業の方も「開運コロコロ鉛筆」なるものが絶好調らしく、テストの成績は上位に食い込んでいるとのことだった。
     「う゛う……、う゛ぉえ゛っっ!!!」
     今日も学園のどこかで、おみくじを出すフクのえずく音が聞こえる。正直、望んだ形ではなかったが、これはこれで良かったのかもしれない。

  • 4二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 22:30:01

    #3/5
     そんなことを思っていたある日、フクが泣きべそをかきながら、けたましくトレーナー室に駆け込んできた。
     「トレーナーさぁん!スズカさんを占ったら怒らせちゃいました~!」
     フクの友人、サイレンスズカはいま絶好調のウマである。GⅠを含むレースを6連勝、レースのスタートからゴールまで圧倒的なスピードで突き放すという、誰もが一度は思いつくが誰にも実行できなかった「必勝法」を現実にし続けている。誰が呼んだか「異次元の逃亡者」という異名は言い得て妙だと思う。明日の天皇賞(秋)もまた後続を突き放して圧勝するだろうというのが、もっぱらの下バ表だ。  そんなサイレンススズカの助けになればと、お得意の口からおみくじ占いをしたら怒られたらしい。
     フク曰く――なだめすかしながら事情を聞くのに難儀したが――「おみくじを出すときに苦しそうだから見てられない」、「運勢がどうであれ私は私の走りをするだけ」、「レースの前に結果が分かったらつまらない」、「占いなんかなくてもフクは大事だ友だちだ」等々。制止にも構わず吐みくじしたが、受け取ってもらえないばかりか、走り去ってしまった、とのことだった。
     大舞台を明日に控えて、今から謝罪をしに行っても迷惑だろうということで、とりあえずレースが終わったあとにゆっくり話すのがいいんじゃないか、いくら百発百中とはいえ今後は占い相手と場所と時間を選んだ方がいいかも――いかにもありきたりだが、そんなアドバイスをしてなんとか泣き止ませた。
     「とりあえず、このおみくじはトレーナーさんに預けておきます。いらなければ捨ててください。」と言い残して、フクはふらふらと部屋を出て行った。
     まさかバチが当たるとも思えないが、おみくじを捨てるのも何だが嫌だったので、とりあえず財布に入れておくことにした。 

  • 5二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 22:30:23

    #4/5
     秋の天皇賞から一週間が経った。
     約3時間に渡る「レース中の事故防止に効果的な指導」と題された臨時の研修は、ほとんど学生時代に学んだ「もう知っているよ」というような内容だったが、出席者の誰もが神妙な面持ちで受けていた。”あんなこと”があった後だから当然だろう。
     トレーニングは休みにしていたので、そのまま帰宅しようかとも思ったが、フクの練習用シューズなど足回り一式が買い換え時だったことを思いだした。少々急だったが、フクにLANEを送ってみる。間もなく「ちょうど暇していたところでした!」とスタンプ付きで返信がきた。
     気持ちが塞がっているかと思ったが、思ったより元気そうだ。そういう風に振る舞っているだけかもしれないが。校門の前で待ち合わせて、ショッピングモールへと向かった。
     新しいシューズと蹄鉄、それにトレーニング教本など一通りの買い物はスムーズに終わった。いつもなら、ラッキーカラーがどうとか、開運グッズがなんたらとかフクが講釈を垂れるところなのだが……。

     せっかくなので軽く食事でもしようかと、最上階にあるレストランに向かっている途中、雑貨屋の前を通りかかったとき、フクが何かを見つけたようにピタリと足を止めた。今日のラッキーグッズでも発見したのだろうか?
     「トレーナーさん!あのヘアピン、スズカさんに似合いそうじゃないですか?」
     フクの指さす方を見ると、白を基調とした、かわいらしいヘアピンが陳列されていた。 
     「そう……かもな。」
     女性のアクセサリーのことはよく分からないのが、確かにサイレンススズカのイメージカラーとマッチするかもしれない。
     「いや~スズカさんったら急に連絡もなしにアメリカに行っちゃうんですから。この前のことを謝ろうと思っても連絡つきませんし。やっぱりまだ怒ってるのかもしれませんね。帰国がいつになるのかも分かりませんが、何かお詫びの品を買っておこうと思うんですよ。やっぱり占いのことで怒られたので、占いとかラッキーカラーとか関係なく、スズカさんに似合いそうなものを贈ろうと思うんです。って、帰ってくるころには私のことなんて忘れちゃってるかもしれませんけど!なんて……。トレーナーさんはどう思いますか?トレーナーさん?急に黙ってどうしたんです?私のセンス、微妙でした?」

  • 6二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 22:30:45

    #5/5
     コップに水を入れすぎると溢れるように、風船に空気を入れすぎると破裂するように、心にも容量があるのではないか?心は辛いことや悲しいことを無制限に受け入れられるわけではなく、あまりにも大きな悲しみを注ぎ込まれれば、いびつに歪んでしまったり、壊れたりしてしまうのではないだろうか?先ほど起きたことをそのように説明するとすれば、フクが現実を受け入れられる日は来るのだろうか?
     フクと別れたあと、そんなことを考えながらどこへ向かうともなく歩き続けた。じっとしているのは無理だった。
     気がつくと俺はトレセン学園最寄りの神社にいた。フクの担当になってからというもの、幾度となく、ことあるごとに神社に来ていたから脚が覚えていたのだろう。長い石段を登り切ると、街頭が灯り始めた街が一望できた。
     ふと、フクから預かったままになっているおみくじの存在を思い出した。財布からおみくじを取り出し、広げてみる。でかでかと真っ赤な文字で「大大吉」と書かれていた。
     「~~~~~っ!!」
     無性に腹が立った。神様とやらに弄ばれている気持ちになったからだ。怒りにまかせておみくじをビリビリに破いて境内にばらまくと、風があっという間にどこかへと運んでいった。 

  • 7二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 22:31:13

    終わりです

  • 8二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 22:41:42

    1で笑ってからのシリアスの温度差で風邪ひきそう

  • 9二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 22:54:42

    結局なんで口からおみくじが出たんだよ!

  • 10二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 23:21:09

    苦手もなにも口からおみくじ出てくる系の話は初めてだよ

  • 11二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 23:22:05

    テメー口からおみくじよりもブラバさせるべき要素あるじゃねーか!!

  • 12二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 23:22:37

    口から旗を出す系かと思ったら痰と同類の出方で笑う

  • 13二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 23:23:49

    >>9

    実家が神社だからです。

  • 14二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 23:29:44

    口からおみくじってどういう状況?って思ったら結構描いてる人いた






    邪魔だったら消して

  • 15二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 23:35:40

    >>14

    なんであんのさって思ったけど、キャラストでそんなの言ってたのか

  • 16二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 23:46:43

    これは良いSS
    あとなんか分からんけど懐かしい気持ちになった

  • 17二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 01:38:36

    >>16

    ありがとうございます

    励みになります

  • 18二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 01:42:46

    スズカさん大丈夫?

  • 19二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 02:01:53

    これ系の話かと思ったのに

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