- 1二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 22:01:34
「トレぴトレぴトレぴっぴ~! ウチ、お嬢と手繋ぎたいんだケドッ!」
「えっ?」
「何かガチでアゲぽよなプラン、なるはやでオナシャスッ! トレーナー☆」
「ええっ?」
ある日のトレーナー室。
仕事をしている最中、突如アゲアゲで、担当ウマ娘のダイタクヘリオスが乱入してきた。
状況は全く掴めないが、とりあえず必死なのは良くわかった。
俺は彼女をなんとなテンサゲさせて、詳細な事情を聞くことにする。
「あのな? 昨日の『LOVEだっち2nd』で――――」
架空の高校を舞台にした、ウマ娘たちの青春ドラマ『LOVEだっち』。
トレセン学園の生徒の間でも人気の番組で、良く話題にあがっていた。
現在はそれの続編をやっており、昨日の放送で、ウマ娘同士が両手で手を繋ぐシーンがあったらしい。
……何故か良く見る光景に感じるが、気のせいだろう。
それが以前の尻尾ハグのように学園内でムーブメントとなり、ヘリオスも意中のダイイチルビーとやりたい、ということらしい。
うん、まあ。
期待に目を輝かせる彼女に、俺は非情な現実を告げるしかなかった。
「……むりよりのむりじゃないかな」
「ぴえん!? とっ、トレぴいつものネバギバは!? バイブスは~~!?」
「いやあ、だって、なあ?」
「うう、ウチもわかっちゃうのがつらたん~……」
膝から崩れ落ちるヘリオス。
普段から塩対応なのに、手を繋ぐなんて出来るとは思えない。
仮に策を弄して手を繋げるように仕向けたとしても、より塩分濃度が濃くなるのが目に見えてる。
「こういうのはレースと一緒だよ、ヘリオス」 - 2二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 22:01:59
「レースと、おんなじ?」
「そっ、作戦を考えることだって大事だけど、まずは地道な積み重ねが必須なんだ」
下地となる知識や技術がなければフロアをアゲぽよさせることなど到底できない。
だから時間をかけて交流を結んでいけば、いつかワンチャンあったら良いよね。
そういうことを俺はヘリオスに伝えた。
その言葉に彼女は俯きながらプルプルと身体を震わせて、そして急に立ち上がった。
いつもの眩しい太陽のような笑顔。
「レースと同じってコトは、爆逃げ、いや爆攻めでキメ☆ ってことっしょー!?」
「ことっしょー、じゃないんだけど!?」
うん、全然伝わってない。
おかしいなあ、大事なところが全て抜けてるんだけど。
しかし瞳は燦々としており、その熱意をもはや冷ますことなどできそうにない。
いつも通りに身振り手振りでノりながら、ヘリオスは言う
「よっしゃあテンションポォンポィンって感じ! ウチ、お嬢とエンカしてくるっ!」
「えっ、今から行くの?」
「思い立ったら即フェスっしょー☆ トレぴ、あざまるウェーイ!」
「おっ、おう」
完全にテンアゲしたヘリオスはそのままトレーナー室を飛び出していく。
盛り上がったパリピを止める手段など俺は持っていなかった。
「大丈夫かなあ、いやどう考えても大丈夫じゃないだろうけど……」
急に静かになった部屋の中で先の展開のシミュレーションする。
……とりあえず、暖かい飲み物の用意でもしておこうかな。 - 3二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 22:02:18
「お嬢ーーッ! ウチと、手を繋いでくださいっ!」
「お断りします」 - 4二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 22:02:38
「トレぴよーー!! お嬢がガチソルティなんだけどー!!」
「こんなテンポ良く玉砕してくるのは想定外なんだけど」
まだお湯すら沸かせてない頃合いに、ヘリオスは涙目で戻ってきた。
彼女はそのまま長椅子に腰かけて、机の上の身体を投げ出す。
白いメンコに包まれた耳も弱々しくへたり込んでいた。
「うう……ガチで詰んだ……ウチの運命は終わったんだ……」
「キミの運命定期的に終わるね……」
「手が冷え冷えサゲサゲヘローサンパウロなんですけどぉ~……」
手をグーパーと握ったり開いたりを繰り返しながら、ヘリオスは嘆きの声を上げる。
正直、この展開は予想していた。
むしろ誰でも予想できるだろう、こんなの。
それだからこそ、暖かい飲み物の準備をしていたのだが、彼女の迅速果断さを甘く見ていたようだ。
「もうちょっとお湯も沸くと思うから、甘くて温かい飲み物でもご馳走するよ」
「マ? 神ぃ……あざまるぅ……あっ、トレぴ、ちょっと良さ気?」
「良いけど、どうかした?」
「そっち座って、手のひらを両方前に出してくれん? ハイタッチ☆ みたいな?」
「……こんな感じか?」
言われるままに俺は机を挟んで、ヘリオスと向かい合って座り、手のひらを突き出す。
――――手のひらを太陽に、なんてフレーズが脳裏によぎる。
そんな俺の様子を見て、彼女は身体を起き上がらせて、にやりと口元を緩ませた。
「うぇい☆」
ヘリオスは、その白くて細い両指を、俺の両指に絡ませた。 - 5二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 22:03:01
「んな……!?」
突然の出来事に身体と思考が硬直する。
ヘリオスの手は柔らかくて、なめらかで、しっとりとしていて、今は少しだけ冷たい。
彼女はにぎにぎと優しく力を加えて、難しそうな顔で首を傾げながら言葉を紡ぐ。
「うーん、ウチの想像するお嬢の手とは全然違う系……」
「そりゃそうだよ」
俺、ダイイチルビーじゃないもん。
いくらなんでもその試みは無謀が過ぎる。
少しばかりぴえんな気分になりつつ苦笑して、俺は繋いだ手を解こうとする。
しかし、それは握る力を強めたヘリオスに阻止された。
「大きいし、固いし、ごつごつしてるし」
「……ヘリオス?」
「でも、あったかいよ、トレーナー」
そう言って、ヘリオスは少し照れたように微笑んだ。
珍しい彼女の表情に少しだけ心臓が跳ねる。
それを悟られないように、俺はわずかに視線を外して、言葉を返した。
「……お気に召したようなら、良かったよ」
「あはは、メンブレ案件だったけど、こうしてっとちょっとずつバイブスアガってくるからさ」
鼻歌混じりに握った両手を、踊るように左右に揺れ動かすヘリオス。
電気ケトルがお湯が沸いたのを伝えるが、手を離せるような雰囲気ではない。
彼女は、俺の外した視線に無理矢理目を合わせて、日なたのように優しく告げた。
「もう少しだけ、このままウチとおそろ、しよ?」 - 6二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 22:04:47
お わ り
ヘリオスガチャ爆死したので書きました
つきまして育成シナリオはまだ読んでいないので内容についてはご了承ください
↓のスレのお題SSとなっております
(ようやく分かったSSを書ける人は凄いのだ)6|あにまん掲示板「初めてSSを書いてみたら難しすぎて一作品完成させる事とすらできなかったのだ。スレでハートを50近く貰う人…pixivでランキングに乗る人は雲の上の存在なのだ」という初代>>1の嘆きに応え…bbs.animanch.com - 7二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 22:10:53
一転攻勢は良い...
- 8二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 22:10:56
おかしいな…太陽が湿気ってる…
良いSSありがとう - 9二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 22:13:15
心地よい湿度だぁ
- 10二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 22:15:54
テンポ好き
- 11二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 22:18:13
ヘリ語使いこなしててすごい。
- 12二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 22:27:28
うお、火力たっか...
- 13123/01/20(金) 23:18:08
- 14二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 23:22:26
よきSSに出会えたけど、これ育成シナリオ内で……ネタバレになるからやめとこ
- 15123/01/21(土) 06:28:51
- 16二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 07:24:06
トレーナー×ヘリオスかと思いきや、ルビー×ヘリオスとはやりますな
やっぱりトレーナー×ヘリオスじゃないか!(歓迎) - 17123/01/21(土) 13:27:25
ルビヘリも良いんですけどね……
- 18二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 21:19:51
見たいものが見れた...
- 19123/01/21(土) 22:15:42