- 1二次元好きの匿名さん23/01/23(月) 17:20:09
- 2二次元好きの匿名さん23/01/23(月) 17:21:05
そこに無ければ無いですね〜
- 3二次元好きの匿名さん23/01/23(月) 17:22:07
悲しいのは抜けない
- 4二次元好きの匿名さん23/01/23(月) 17:22:20
- 5二次元好きの匿名さん23/01/23(月) 17:23:14
素晴らしい。良い概念だ。
- 6二次元好きの匿名さん23/01/23(月) 17:27:50
そういう所だぞたわけ…
- 7二次元好きの匿名さん23/01/23(月) 17:49:09
このレスは削除されています
- 8二次元好きの匿名さん23/01/23(月) 17:55:51
ふとしたときにこれは恋だったと思い出してわんわん泣いててほしい
- 9二次元好きの匿名さん23/01/23(月) 18:28:18
また友達として付き合えるようになるまでも書いてくれないと拗ねるぞ
- 10二次元好きの匿名さん23/01/23(月) 18:30:52
当店はセルフサービスと(ry
- 11二次元好きの匿名さん23/01/23(月) 19:54:42
ここで(何も聞かず無言で抱きしめてくれる)たずなをひとつまみ…w
- 12二次元好きの匿名さん23/01/23(月) 19:58:47
明るくて活発な女の子が失恋することでしか得ることの出来ない栄養素はある
それはそれとして当店では(ry - 13二次元好きの匿名さん23/01/23(月) 20:00:49
- 14二次元好きの匿名さん23/01/23(月) 20:03:24
もう少し教えていただければそこにあるかもしれませんね〜
- 15二次元好きの匿名さん23/01/23(月) 20:05:12
理事長という立場上、実年齢以上に大人であることを求められるから、若者の特権である大胆な恋をできないわけか
- 16二次元好きの匿名さん23/01/23(月) 20:16:42
最初は一緒に遊んでるとフワフワして楽しいな位だったのが周りのモブ娘ちゃん達がしてる会話で「それって恋じゃない?」「私の初恋はね〜」を偶々耳にしてしまいこれが恋だと合点がいくんだ。
初めての感情を制御出来ず最初こそたわけ殿、たわけ殿って誘うけど「理事長さんってまさか…」や、「理事長に取り入るにはたわけさんに〜」といった外野の声を聞いたせいで(これってよろしくないのでは…?)って立ち止まってしまうんだ
悲しいけど理事長は恋慕よりウマ娘達を選ぶんだ - 17二次元好きの匿名さん23/01/24(火) 07:30:42
あなたが気付かせた恋が
あなた無しで育っていく - 18二次元好きの匿名さん23/01/24(火) 07:33:01
見た目からは想像できないけど、教え子のJKに手を出すよりは理事長と恋愛してる方が世間体的には普通っていうね…そこに気づけば理事長にもワンチャンあるぞ(ない)
- 19二次元好きの匿名さん23/01/24(火) 07:35:33
- 20二次元好きの匿名さん23/01/24(火) 08:03:02
理事長見た目通りのロリだからJKよりヤバイが?
- 21二次元好きの匿名さん23/01/24(火) 08:23:28
- 22二次元好きの匿名さん23/01/24(火) 09:11:54
- 23二次元好きの匿名さん23/01/24(火) 09:19:08
- 24二次元好きの匿名さん23/01/24(火) 09:29:14
- 25二次元好きの匿名さん23/01/24(火) 09:50:13
心が二つある〜
- 26二次元好きの匿名さん23/01/24(火) 13:05:14
絶命している…
- 27二次元好きの匿名さん23/01/24(火) 17:23:02
このレスは削除されています
- 28二次元好きの匿名さん23/01/24(火) 17:23:23
特級概念の気配がするぞ
- 29二次元好きの匿名さん23/01/24(火) 17:24:34
たわけとエアグルの息子と遊んでてその息子に惚れられて…ってなる大人理事長概念はあり???
- 30二次元好きの匿名さん23/01/24(火) 17:28:57
ほろ苦い初恋と失恋の話だから特急呪物ってほどではない様な気もする
- 31二次元好きの匿名さん23/01/24(火) 17:44:48
ふとした瞬間ってのはURAファイナルズを駆け抜けた2人の祝勝会でエアグルーヴがたわけに向ける特別な視線の意味に気付いて堪えきれずに抜け出した帰り道とかか?
- 32二次元好きの匿名さん23/01/24(火) 20:14:08
- 33二次元好きの匿名さん23/01/25(水) 02:02:37
やよいちゃんにとってのハッピーエンドってそれつまりエアグルーヴにとってのバッドエンドなんだぜ…
- 34二次元好きの匿名さん23/01/25(水) 07:36:21
たづなさんやきうりはトレーナーNTRが似合うけど(偏見)理事長の甘酸っぱい初恋で終わりそう感はなんなんだろうな
- 35二次元好きの匿名さん23/01/25(水) 10:25:28
まだ子供だから…
- 36二次元好きの匿名さん23/01/25(水) 12:07:53
理事長は焦る時期じゃないしな、たづなさんは…
- 37名無し23/01/25(水) 17:53:09
- 38二次元好きの匿名さん23/01/25(水) 18:57:44
- 39二次元好きの匿名さん23/01/25(水) 19:00:03
ここで俺が赤面してる理事長に目線を合わせてあげながら「たわけでいいですよ」って言ってくれるたわけを付け加える
- 40二次元好きの匿名さん23/01/25(水) 19:02:20
あにまんのたわけはたわけすぎてたわけ以外の呼び名を忘れられているから…
- 41二次元好きの匿名さん23/01/25(水) 19:50:39
好き だから たわけどの呼びって訳か
- 42二次元好きの匿名さん23/01/25(水) 22:42:54
理事長を抱き上げて高い高いしてくれるたわけどのに惚れちゃうのが見たい…
それはそれとしてやよいちゃんかわいいんだよね… - 43二次元好きの匿名さん23/01/26(木) 00:13:43
多分付き合い長いたづなさんは理事長の気持ちに気づいてそう
- 44二次元好きの匿名さん23/01/26(木) 10:22:01
もちろんこのたわけは理事長を恋愛対象として見ていないんだよな
- 45二次元好きの匿名さん23/01/26(木) 10:48:03
歳の差もあるし女帝の杖だからね
- 46二次元好きの匿名さん23/01/26(木) 21:37:16
精神的にもまだ子どもなのに理事長を受け継いだせいで碌に遊び方も知らないうちから仕事尽くしの日々の中初めて全力で対等に遊んでくれる相手ができたら惚れるのも無理ない
- 47二次元好きの匿名さん23/01/26(木) 22:06:31
当のたわけ「お兄さまやマヤトレばかり…なんで俺はモテないんだ…」
- 48二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 08:30:16
たわけはたわけてるからその辺気にしないイメージ
- 49二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 08:31:38
おらっ!早く理事長メインシナリオ出せサイゲ!
- 50二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 19:56:53
我ながらわたしは歪な存在だと思う。子供でありながら学園の理事長。先代から引き継いだ役職。非難とはいわずとも不安を表情に浮かばれたことは数知れない。
秘書のたづなにサポートをしてもらいつつ、学園を盛り上げようと奔走している。まあ、彼女に文字通り手綱を握られることもしばしばではあるが。
そんな日々を送っているが、周囲からは一歩距離を置かれていると感じてしまう。それは当然のことだ。生徒やトレーナーからすれば殿上人。退学や退職もサインひとつで事足りる。
勿論、そんな強権を身勝手に振るうつもりはない。しかし、それが可能ということを知っており、ましてやその存在が子供であれば扱いは慎重になるというもの。
これはわたしの思い込みで、そんなことはないのかもしれない。ただ、良かれと思ってした行動を見た周囲が浮かべる表情を見て邪推してしまう。
また理事長が、あの理事長が、やっぱり理事長が。立場が故に許される暴挙。結果的にうまくいったとしても暴走した過程による代物。
わたし個人というものが見られることはなく、わたしに付いて回る理事長という殻を皆が見る。その立場を散々利用しておきながら恨めしくも思う。
わたしを見てくれる誰かを。歪でありながらそんなわがままを抱きつつ過ごしていた時、彼が現れた。 - 51二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 19:57:23
初めて会ったのはどんな場面だったか。いつものようにバカげたことをしていた時だったか。誰もついてくることはなく、ひとりでやっていたのだったか。彼がひょっこり現れて何をしているのか聞いてきたのだ。
あまりにも突然だったものだから、思わずたわけどの、と読んでしまった。彼はエアグルーヴという生徒を担当していたトレーナーだった。彼女が彼をそう叱り飛ばしていたのを聞いていた。口にしてしまった。
すぐに彼に謝ったが、彼は怒った様子もなく、たわけです、とおどけてみせた。そしてわたしの手伝いをし始めたのだ。
意図が読めずに○○トレーナー? と呼び掛けると、たわけでいいですよ、と言った。バカをやってるんです、たわけで構いません、とも。
言葉を額面通り受け取れば罵られているといっていいかもしれなかった。しかし、わたしはそう感じなかった。わたしにとって真剣で、本気のバカを認めてくれた。嬉しかった。
それから幾度も……たわけどの、はわたしと一緒にバカをやった。誰にもばれずにやり切った時は二人でほくそ笑み、たづなにばれて捕まった時も二人で苦笑いした。
彼の子供っぽい面は子供のわたしと波長が合っていた。だからといって子供ではなく、たわけどのは大人だった。歪である子供の理事長としてではなく、わたしと一緒に過ごしてくれる。
怪我や破損が起こりそうであればさりげなくわたしの方向を誘導し、別の楽しさを見つけてくれる。わたしを名前で呼んでほしいと言えば、はい理事長、と軽く流してしまう。
その子供じみた不満も微笑んで受け止めてくれた。本当に、たわけどのといる時間は楽しくて、好きで、彼に会うことを焦がれていた。いつの間にか、気付いた時には既に。
この想いを彼に打ち明けるつもりはなかった。学園の理事長とトレーナー。あまりにも違い過ぎる。あれ程立場に不満を抱いておきながら頭は冷静にそう判断していた。
でも、もしかしたら。きっと、いつの日か。そんな淡い感情は冷えた頭でも凍らせることは出来なかった。ほのかな想いを秘めて数年、ある光景から冷や水を浴びせられるまでは。 - 52二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 19:57:55
何てことはないある日だった。理事長室の窓からいつものように景色を、生徒たちを見ていた。通り過ぎる人影の中に彼の姿を見つけた。担当のエアグルーヴと一緒に。
それで何を思うということはそれまでなかった。二人は契約している、何ら不思議ではない。しかし、隣にいる彼女の表情が目に入り、わたしは戸惑った。
何度か目にしていた筈の彼女が、彼に特別な視線を向けていた。角度が変わり、彼の顔も見える。彼も、彼女と同じ視線だった。
二人して今まで何かが違っていることには気付いた。でも、その正体が何なのかが分からなかった。友情か、恋か、愛か、それとも別のものか。
自身の淡い想いと比べても、理解が出来ない。理事長として多くのヒト、ウマ娘を見てきても生きてきた年数が短いせいなのか。
分かったのは、二人がかけがえのない絆を結び、深めていたということだけだった。二人は気付くことなく通り過ぎ、彼は、たわけどのは去っていった。
自分以外誰もいない部屋で、しばらくわたしはその場で立ち尽くしていた。もう記憶もあやふやだが、雨が降っていたように思う。温かい雨だった。 - 53二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 19:58:16
それから更に時は過ぎていった。子供だった私は大人になり、周りの生徒は変わり、昔大人だった人々は変わらなかった。
いつもの日常、たづなに支えてもらい一仕事を終え、窓から外を眺める。ひとりの男性が歩いていた。
昔より歳は取りつつも変わらない彼。彼女が卒業し担当する生徒が変わっても、時折訪ねてくる彼女に変わらない視線を向ける彼。もうあの頃のように、バカを一緒にすることもない。
ふと視線を感じた。それは見下ろす彼ではなく、同じ部屋のたづなからであった。気遣わしげに彼女はこちらを見やる。何年も彼女とも一緒に過ごしてきたのだ、とうの昔に分かっていることだろう。
今更口にする必要もない。口にするつもりはなかった。ただ、あの頃の時間があっという間に通り過ぎていき、一言だけが漏れていく。
「たわけた日々で、あったな……」 - 5450-5323/01/27(金) 19:58:56
書いてみました。キャラが違っていたらすみません。
- 55二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 20:01:28
逆にたわけと理事長がなんやかんやくっついて曇るギャルも見たいんです
- 56二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 20:10:10
このレスは削除されています
- 57二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 20:11:35
- 58二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 20:14:56
甘酸っぺぇ、甘酸っぺぇよ
良いSSだ・・・ - 59二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 20:46:36
最後の一言切ねぇなぁ…
良いものを読ませてもらった - 60二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 22:29:45
たわけ×理事長の可能性を見た
- 61二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 23:32:49
理事長にとってたわけは父親のような、兄のような、素敵な大人の男性であった…
でもよぉ~~~~~~幸せになるやよいちゃんがみたいよなぁ~~~~~???? - 62二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 10:34:55
理事長の勘違いかもしれないとこが非常に良い…
- 6350-5323/01/28(土) 10:58:06
- 64二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 11:12:36
600字!?愛が溢れてるなぁスレ主に任せるけど俺は読みたい
- 65二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 19:24:04
気づいててもこればかりは何もできないたづなさん辛れぇな
- 66◆zrJQn9eU.SDR23/01/28(土) 21:24:27
- 67◆zrJQn9eU.SDR23/01/28(土) 21:25:08
子供のわたしとでも一緒に遊んでくれるたわけどの。時と共に彼は思い出を、心をくれた。幼いながらも誰かを恋い慕う心なのだと分かるほどには大きなものを。
幸せな筈なのに、彼からもらった大切なものなのに、それはわたしを苦しめた。たわけどのに伝えたい。わたしの想い人になってほしい。
しかし、それは叶わぬ願いだった。彼と数多くのバカをすることが出来たのも、そもそも彼と知り合うことが出来たのも、トレセン学園の理事長という立場。
それは同時に、理事長とトレーナーという立場が、異常な経歴とまっとうな経歴という違いが、困難どころか不可能に近い証左を示していた。
そのことに気付かぬよう、わたしは必死にたわけどのとバカをやった。でも、理事長としての自分が囁き続けた。これはいずれ終わる時間なのだと。
嫌だ、嫌だ、いやだ! 年端も行かぬ幼子のように泣き叫びたかった。一方で、努力してもそうはなれない役職が、わたしの殻が感情に蓋をする。
もしこの想いを表に出したらどうなる? 学園は? そこに所属する教職員、生徒は? たづなは? 何より、たわけどのは?
迷惑だけでは済まないことが容易に分かってしまうだけに、わたしは想いを隠すように殻を自らかぶるようになった。普段の帽子の上から、更に見えない、重い殻を。
それからは、たわけどのとバカを、いやバカそのものをやることを控えるようになった。時折、彼とすれ違うこともあった。わたしはいつも通り接した。わたしをいつも通り理事長として見る者達へと同じように。
彼はしばし驚いていたようだったが、わたしの思いに気付いてくれたのか彼らと同じように接してくれた。本当に、たわけどのは大人だった。
書類仕事などにも真面目に取り組むようになった。いつの間にか抜け出すわたしを毎回追いかけていたたづなは、最初はそれはもう喜んでいた。
しかし、時が経つにつれて喜びの表情に陰りが差していった。わたしは一層仕事に集中した。せめて、彼女の笑う顔だけは失いたくなかったのだ。
そんなある日、最早日常と化した静かな理事長室でそれは起こった。本当に前触れもなく、突然であった。 - 68◆zrJQn9eU.SDR23/01/28(土) 21:25:45
「理事長、お話があります」
たづながそう呼び掛けてきて、応接用のソファに座るよう示してきたのだ。業務にしろ何にしろ、用件があれば既に理事長としての椅子に座っているわたしに言えば済む話だった。
しかし、それを言わせないだけの妙な迫力が彼女にはあった。何かミスをしてしまったのだろうか。もう、バカはしていないのに。大人しくわたしは従った。
不安になりながらたづなを見つめると、しかし彼女はこちらを気遣うように表情を変化させた。
「あの人と、何があったのですか?」
心臓がどきりと跳ねた。まさかたづなが知っている筈がない。誰も知らない筈だ。トレーナーとバカをしていた理事長が真面目になった。それで皆納得していたではないか。
「ぎ、疑問。何のことか……」
「とぼけないでください。あの人とバカをやらなくなって、真面目になって。でもその顔は何ですか?」
顔? 何か付いているのだろうか。
「今にも、泣きそうですよ」
思わず顔に手を当てる。泣いてはいなかった。当たり前だ。人前で泣くことだけはずっと避けてきたのだから。でも、それがたづなの言葉を肯定してしまっていた。
「何が、あったんです?」 - 69◆zrJQn9eU.SDR23/01/28(土) 21:26:17
彼女は再び問いかける。相変わらず気遣ってくれているのは分かった。初めて会った時から、何度もバカをやっても、彼女は理事長としての立場を諭しつつもわたしを見てくれていた。
そう、たわけどのよりずっと前から。そんな彼女が心配してくれている。少し説明した方がいいのではないか。そうだ、ほんの少しだけなら。
おずおずとわたしは口にし始めた。彼とバカをしていたけれど真面目になりました。ほんの一言で済む話をしようとした。
でも、一度口に出したら止まらなかった。彼との、たわけどのと過ごした時間が、記憶が、想いがあふれてあふれて零れていった。
誰にも聞かせるつもりはなかった。わたしが蓋をして、殻をかぶって表に出さないようにしてきた重いものが小さな空間を満たしていく。
ようやく語り終えた時、わたしはたづなの顔が見られなかった。どんな表情をしているのだろう。どんな言葉を掛けられるのだろう。普段の理事長としての諭し方からして、想像するのは容易だった。
しかし、彼女はそれをいとも簡単に壊して、想像もしなかった言葉を紡いでくれた。
「理事長……いえ、やよいさん。素敵な、想いですね」
それと共に彼女は頭を撫でてくれた。愛おしむように、慈しむように。
「な……何故だっ!? わた、わたしは理事長として有り得べからざる想いを抱いたのだ! こんな、こんなもの、捨てて」
「やよいさん」
戸惑うわたしをたづなはぴしゃりと遮った。今度は怒っているようだった。 - 70◆zrJQn9eU.SDR23/01/28(土) 21:27:21
「大切にしてらしたんでしょう? 貴女の想いを、貴女の心を。そんな大事なものを捨ててはいけません」
「だが、どうすればいいというのだ? わたしを苦しめる、いや、皆まで苦しめてしまうかもしれないこれを、どうすれば……!」
わたしは頭を抱えた。たづなはその上から更に被さるようにかき抱いてくれた。
「だったら、伝えてみましょう」
予想出来なかった答えが目の前に現れた。幾度も浮かび上がりながら自ら沈めてきた答えが。
「だれに?」
「あの人以外にいますか?」
万が一を考えて問うてみれば、予想出来た答えが返ってくる。不満を言おうと顔を上げれば、微笑むたづなの姿があった。
「お手紙を、書いてみませんか? きっと、伝わると思いますよ」
「て、手紙? でも、わたしは字があまり上手くは……」
日常的にするサイン程度ならば少しは自信があった。しかし、文章という点からみるとわたしの字は年相応だった。その下手さで、このような想いを伝えるなど。
非難めいた視線を微笑んで受け止め、彼女はわたしから目を外し、聞かせるつもりがあるのかないのか呟き始めた。 - 71◆zrJQn9eU.SDR23/01/28(土) 21:27:36
「記憶は、時間が経てば経つほど薄れてしまうものなんです。どんな記録を打ち立てようとも、いずれはそれだけが残って、それを成したのがどんな存在だったのか知る者は誰もいない」
「でも、記憶を、想いを少しでも残せたのなら、誰かがそれを知ってくれます。思い出してくれます。『幻の想い』ではなく、現に……生き続けることが出来るんです」
「あの人の記憶の、心の中で、生きてみたいとは思いませんか?」
たづなは穏やかにそう提案してくる。言葉は理解できたが、彼女がどのような想いでそれを話してくれたのかは十分に分かることは出来なかった。でも、わたしを大切に想ってくれているからこその言葉であると感じることが出来た。
「……分かった。たづな、手紙の書き方、教えて……?」
理事長として取り繕うことなく発したわたしに、たづなは喜んで、と笑ってくれた。 - 72◆zrJQn9eU.SDR23/01/28(土) 21:28:11
秋から冬へと移ろう季節の下、わたしはあの人を待っていた。少し肌寒くはあるが、待ち人のことを思えば気にもならなかった。
わたしは彼に、たわけどのに話しかけた。そう時間はおいていなかったけれど、久しくとっていなかった昔の態度で。たわけどの。
彼はやはり驚いたように止まっていたが、あの頃と変わらずに返事をしてくれた。はい、たわけです。
それだけで満ち足りてしまうような心持ちだったが、目的を思い出して再び話しかける。
伝えたいことがある。来てほしい。時間と場所も添えて、再度返事を待つ。
彼は戸惑っていたようだった。この寒空の下に呼び出されるなど一体どんな用件なのか。わたしが彼の立場であっても同じだろう。
来てはもらえないのだろうか。沈みかけていたわたしの頭は、彼の声で浮かび上がる。分かりました。
わたしは喜びでいっぱいになり、頭を下げた後は一目散に駆けだしていた。きちんとお礼を言っていなかったことに気付き、彼に声を掛けた。ありがとう!
彼の顔を見ることなく理事長室に戻り、たづなに伝えた。
「たづな、たづな! たわけどの、来てくれる!」
「まあ、それは良かったですね」
彼女は微笑みながら撫でてくれた。その日が来るのが待ち遠しかった。 - 73◆zrJQn9eU.SDR23/01/28(土) 21:28:54
新たに増えた思い出を噛み締めていると、遠くに人影が見えた。どんなに小さくとも見間違えることがない、待っていた人だった。
お待たせしました。彼はそう言うが、わたしはぶんぶんと首を横に振った。待ちきれずに来てしまっていたのはこちらの方だった。
いざたわけどのが来てくれたというのに、わたしは用件を言い出せずにいた。手紙を後ろ手に、断られたら、そもそも受け取ってもらえなかったらという不安で動けなかった。
彼はそんなわたしを急かすことなく、屈んで視線を合わせてくれた。
「大丈夫です。待ってますから」
その優しさにわたしは胸がいっぱいになり、あふれたものに突き動かされて手紙を前に差し出していた。
彼は、自分に? と問うてきた。何も言えないまま今度は縦に首を振り、震えながらそのままでいた。寒くはなかった筈なのに、今は妙に止まらない。
たわけどのは丁寧に受け取ってくれた。手紙を見つめたまま、彼は訊ねてくる。
「読んでもいいですか?」
今、ここで? そんな心の準備はしていなかった。でも、早く彼の気持ちが知りたくて、またも黙って頷いていた。彼は傷つけないように扱い、わたしの下手な字に目を通し始めた。
たづなに書き方から内容まで相談しながら書き上げたわたしの想い。ただ伝えるだけではなかった。立場もそうだが、年齢の差は如何ともし難い。
だから、待っててほしい。わたしが大人になるまで、待っててほしい。本当に身勝手でわがままな想いを記してしまった。 - 74◆zrJQn9eU.SDR23/01/28(土) 21:29:17
彼女に何度も確認した。これは彼に迷惑ではないのかと。あまりにも自分のことだけで、相手のことを蔑ろにしてはいないのかと。
たづなは笑んでそれを否定した。恋文とはそういうものです。乞い願う想いがあるからこそ文にするんです。そうでしょう? と。わたしより年上だが、その生きてきた長さによるものなのか納得してしまう何かを感じ、言われるがままに書いてしまった。
彼が手紙を読み終えた。短くも長かった時間が終わり、彼の言葉を待つ新たな時間が始まる。やはり顔は上げられなかった。こわかった。
「やよいさん」
わたしの名を呼ぶ声が聞こえる。たづなはいない。では誰が。声のほうに顔を上げれば、たわけどのだった。
「お手紙、ありがとうございます。今日一日かけて、返事を書こうと思います。明日、お時間もらえますか?」
彼はその場で返答はしなかった。手紙を書いてくれるという内容。それは待っていた返事ではなかったかもしれない。
しかし、今ここで断られなかったということは望みがあるのかもしれない。いや、先送りになっただけでごめんなさいという言葉が書かれるのかもしれない。希望と絶望が入り混じる中、わたしに出来るのは彼の言葉を肯定することだけだった。
微笑み、彼が去っていく後姿を見送っても、私はしばらくその場に立ち尽くしていた。寒い筈なのに、妙に汗が流れ、張り付いていた。 - 75◆zrJQn9eU.SDR23/01/28(土) 21:29:53
次の日。やっぱり耐えることが出来ずに早めに来てしまっていたわたしを、たわけどのは迎えてくれた。
彼の姿に、彼の手に添えられている便箋に目を奪われる。彼の目を見ることなくそれだけを注視してしまい、たわけどのは可笑しそうにくすくすと笑った。
かあっと頬を熱くさせていると、彼はいつも通り目線を合わせて笑みを残しつつ口を開いた。
「お返事、書いてきました。読んでもらえますか?」
「しょ、承知!」
食い気味に発言してしまい、更に顔が火照る。彼はそんなわたしを茶化すことなく、待ち焦がれたものを渡してくれた。
わたしはじれったく思いながらも、折り目すらつけないように慎重に封を切った。彼の字が目に入る。報告書などで何度も目にしている筈なのに、初めて見るわたしへの字。
手紙のお礼から始まり、このような手紙は初めてもらったこと、貴女からもらえて嬉しかったことが綴られていた。
続いて、貴女と自分では立場が違うこと、歳が離れていることといった深い溝についても触れている。
そして、今の自分が抱いている気持ちは、貴女が赤ちゃんから好かれている時に感じる気持ちと同じものだと。貴女を下に見ているのではなく、時間の差というものはどうしてもそう抱かせてしまうものなのだと。そう書かれていた。
じわり、と視界が滲む。ああ、分かっていたことではないか。たわけどのは、やはり大人であったのだ。わたしは、やっぱり子供だった。わかってた。
手紙が濡れてしまわぬように持ち上げて、袖で顔を拭こうとする。その時、まだ文字が続いていることに気付いた。慌てて目元を拭って、先を追いかける。 - 76◆zrJQn9eU.SDR23/01/28(土) 21:30:20
それでも、その差というものも時間が解決してくれることがある。貴女が大人になり、その時にまた自分に伝えてくれるのならば。今日と同じように、貴女に返事をします。
待っています。
もう涙を止めることは出来なかった。拭っても拭っても止めどなくあふれ、袖をあっという間に湿らせていく。自らが纏っている衣類とは別の感触が顔に当たる。
たわけどのがハンカチを取り出していた。眦を下げ、すまなそうに彼は呟く。すみません、と。
「ちがっ……ちがっ!」
そんなことはないと。彼は今の彼に出来る精一杯の返事をしてくれたのだ。わたしはそれが嬉しくて、これは悲しくて泣いているのではなくて。
言葉にしようとも口がわなないて上手く動かせない。代わりに伝えられる何かを探し、わたしは彼に抱きついていた。昨日と同じように屈んでくれていたたわけどのの首元に縋りつき、たどたどしい言葉ですらない欠片を一生懸命に囁く。
彼はそれをしばらく聞き、やがて分かっていると言わんばかりに私の背中を撫でてくれた。
ようやく落ち着いた時には、それまでとは違った意味でわたしは顔を上げられなかった。羞恥で全身に熱を持ち、秋風どころか雪でも降ってくれないものかとさえ思った。
たわけどのは相も変わらず微笑んでいて、落ち着きましたか、と声を掛けてくれる。
小さく、本当に小さく頷いてわたしは彼に返し、ひとつだけ、今の彼に提案する。 - 77◆zrJQn9eU.SDR23/01/28(土) 21:30:48
「……提案。指切りを、してほしい」
約束を。いつの日か、時間が解決してくれない今を解決してくれる未来を。その時に伝え、聞いてくれる願いを。
たわけどのは、喜んで、と指を差し出してくれる。わたしも同じように差し出す。何もかも違うお互いの指。
わたしは彼と指を絡ませる。体の大きさは違うけれど、同じ約束を心に秘めて。
「歓喜。うれしい……」
冬に向かう秋枯れの中、ここでは小さな芽が確かに花を咲かせていた。
いつのひか、どこかで
……ふふっ、懐かしいな。ん? いや、これをさっき見つけて……
……ええっ? 昔のように? し、仕方ないな……こほん!
け、傾聴! これは昔、きみがわたしに書いてくれた…… - 78◆zrJQn9eU.SDR23/01/28(土) 21:32:19
以上です。52より前に行動した理事長、ということで。長々と失礼しました。
- 79二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 22:03:55
良い…
- 80二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 22:31:43
良かった…脳が回復する…
- 81二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 09:12:54
このレスは削除されています
- 82二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 15:33:06
なんという…なんという良SSだ…
ありがとう
ただただありがとう - 83二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 20:07:58
保守
- 84二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 01:29:11
いいね最高だ
- 85二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 13:15:45
たわやよ
ええなぁ… - 86二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 18:52:56
真面目な時はとことんカッコいいのたわけらしいな