ファインモーション大学トレファイ学部純愛学科の卒業論文です

  • 1二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:32:17

    【キミはいつでも、私の心の傍に】

     すみれ色のセーラー服に細長い筒を小脇に携え、造花のコサージュを胸に添えて。祝福と涙と花びらの輪を抜け、人気のない校舎をひとり、歩いていく。

    「トレセーン! いっちにーさんしー!」
    「がんばれー! おー!!」

     聞こえてくる掛け声が、しんと静かな廊下に木霊する。外に目を向けると、数人のウマ娘たちが隊列を組んで、ランニングに励んでいる。
     学園の日常光景であり、普段なら――これまでなら気にも留めないもの。私もつい先日まで、その列に混じっていたのだから。しかし、今日となっては。その様子を見聞きして、何も思わないというわけにはいられなかった。
     トレーナー棟へと入り、階段を昇る。小窓から差し込んだ陽光が、スポットライトのように踊り場を照らしている。壁に入っているひび割れは、初めてここに来たときから変わらない大きさのままだった。

     手前から四部屋目、目的地のドアの前に立ち、一呼吸置いた。身だしなみを見直して、右手を伸ばす。軽く三度扉を叩き、返事を確認してからドアノブをひねった。

    「ごきげんよう、トレーナー」

     部屋に入り、丁寧にご挨拶。お辞儀をしてから、トレーナーの元へと歩み寄る。彼はデスクに向かい、資料に目を通しているところだった。

    「ファイン、いらっしゃい」

     顔を上げた彼に、見せびらかすように。手に持った筒を突き出してみた。本来、ここで私が手にするはずのなかったもの。

    「じゃーん! どうかしら?」
    「――卒業おめでとう、ファイン」
    「ふふっ、ありがとうございます♪」

     ――晴れて私は、トレセン学園の卒業を迎えることができた。それは同時に、自由な時間の終わりを意味している。寮は最低限の手荷物を残して、今朝引き払ったばかり。明日の朝のフライトで、私は青春に別れを告げる。

     わずかな期間のはずだった留学は、彼との出会いがきっかけで三年間に及んだ。直談判の末に、レースを走る許可を得ることもできた。お許しをくださったお父さまにも、全てを賭してでも私を後押ししてくれたトレーナーにも、模擬レースを走らせてくれた隊長にも。皆に感謝をしてもしきれないくらい、私は優しさに囲まれていた。

     定められた期間を終え、私は予定通り祖国へと帰国した。しかし、お父さまの計らいで親善大使に任命され、日本の地で務めを果たすことになった。

  • 2二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:32:47

     またレースを走ることのできる、素晴らしい三年間の続き。まさに夢のような時間だった。一度は手放したはずのきらめく日々が、再び手中にあったのだから。

     ――けれど、永遠の輝きなどというものは存在しない。

     覚えている。
     三度目になった夏合宿の、終わりを間近に控えていた頃。護衛から封筒を手渡され、ああ、と直感した。予想通り、来る三月に親善大使の任を解く旨、卒業を迎えたら国へ帰るようにと、お父さまの直筆で記されていた。

    「ここに来るのもこれが最後だな~……」

     合わせて四年の間、毎日のように通ったトレーナー室。デスクの上には、いくつかのファイルや専門書などが並べられている。一段と目を引くのは、かつて私が贈ったプリザーブドフラワー。当時から褪せないきらめきを保ったまま、特等席に飾られている。隣に立てられたフォトスタンドには、優勝レイを掲げた私たちのツーショット。輝かしい栄光が燦然と光を放っている。

    「そういえば、いまは何をなさっていたの?」
    「ああ、これのこと?」

     視線を手前に移した。彼が手にしている紙束を覗き込む。隅には番号が振られていて、表紙の一枚には「001」と記載されている。生徒の名前と顔写真に、模擬レースなどのデータをまとめた資料だった。

    「……そっか。次の担当さんを探さないといけないものね。誰かお眼鏡に叶う方はいたかしら」
    「朝から見てるんだけど、それがなかなか難しくてね」

     トレーナーはそう呟くと、眉を八の字にする。改めて彼の手元を見てみると、後ろのページの角は、ずれることなく揃ったままになっている。どんな声をかけようか迷っていると、彼は紙束をファイルに納め、デスクの中に片付けてしまった。

    「あー……寮の荷物はもう出した?」
    「護衛の方たちが手伝ってくださったからばっちりだよ」
    「ここに忘れ物は……もうないか」

     数々の賞状やトロフィーに飾られていた棚は、いまは寂れた様子になっている。トレーナー室は数日前に整理して、持ち帰るものは全て発送済み。思い出を詰め込んだ箱は、まるで宝石箱のようにきらめいていた。

     感傷に浸っていたけれど、そうもいっていられない。まだ、大切なものが残っている。キミが用意してくれた、最後のプレゼント。

  • 3二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:33:12

    「トレーナー。今日の“デート”、楽しみにしてるね」
    「……お任せを。とはいっても、どこに行くかはファインがよく知ってるよね」
    「知っているのはキミも同じでしょう?」

     “全てが始まったあの日を辿る”

     帰国を控えた最後の一日を一緒に過ごしたいと伝えたら、彼はこんなアイデアを出してくれた。『卒業式のあと、二人が出会った日をもう一度辿ろう』って。

    「素敵なエスコート、期待してるね」
    「満足できるよう努めるよ。お姫さま」
    「うむ。よい心がけであるぞ~!」

     肩を叩いてみると、彼の表情が少しだけほぐれたように見えた。

    「では、お友だちの皆さまにご挨拶をして、着替えてから参りますね」
    「正門で待ってるから、慌てないでおいで」

     廊下に出る前に、もう一度部屋の中を見渡した。ここのソファに腰かけて、オリジナルラーメンを作ったり、門限ギリギリまで作戦会議をしたり。猫が迷い込んで、推理ショーを繰り広げたこともあったよね。

    「……ファイン?」
    「ううん、なんでもない。またあとでね!」

     ひとつとして忘れることのない、どれもが大切な記憶。心の中で「お世話になりました」と感謝を述べてから、私は思い出の詰まった部屋を後にした。

  • 4二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:34:05

     学園の前に到着しても、待ち人の姿はまだなかった。新たな季節の訪れを予感させるように、天から日差しが降り注いでいた。

     桜並木の奥に見える校舎。手前の噴水には、桃色に彩られた三女神さまの像が鎮座なさっている。春を迎える度に祈りを捧げる伝統が、なんだか懐かしく思えた。
     門の柱に据え付けられた、学園の歴史を感じさせる銘板。そっと手を触れると、ひんやりとした感触が指に伝わる。“日本ウマ娘トレーニングセンター学園”の文字を、上からひとつずつなぞっていく。ファインモーションという存在を刻み付けるように。学園で過ごした日々を、私の心に刻み付けるように。

    「……あっ、トレーナー! こっちこっち~」

     最後の一画を書き終えたところで、駆け寄ってくる人影が目に入った。手を振って呼びかける。ジャケットを脱いで腕にかけた姿は、まさにあの日と同じ出で立ちだった。

    「待たせたかな」
    「ううん。本当はもっと遅くでよかったのに、早く来たのは私だから」

     身支度やご挨拶を済ませたあと、少し時間に余裕があったから、早めに来て彼を待つことにした。これまではトレーナーが先に待っていることがほとんどだったから、逆の立場を味わってみたかったんだもの。

    「三十分も前に来られたら流石にお手上げだよ……」
    「ゲートインは得意だからね! 普段はキミに勝たせてあげているのでした~」

     トレーニングの前後に公務が入っていて、細かいスケジュールを求められることもあった。けれど、一度たりとも遅刻することはなかった。限られた時間を最大限に使えるように、見えるところでも、見えないところでも、たくさんの下準備をしてくれていた。

    「……ありがとう」
    「ん? 何かしたかな」
    「いつも、私が来たらすぐに動けるようにしてくれてたなって」
    「トレーナーなら誰でもそういうものだと思うけど……まあ、ありがたく受け取っておくよ」

     彼は不思議そうにしたままだった。素直に心の底から、私のために尽くしてくれていたのかな。その温かさからも離れなければならないことが、どうしても寂しく思えてしまう。
     マイナスに振れた心の針をリセットするように。さあ、と催促するように目配せを送った。

    「えっと、改めて聞くけど忘れ物はないね?」
    「もう、トレーナーは心配性だなあ。大丈夫だよっ」

  • 5二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:34:51

     しっぽを揺らして、彼の脚を叩いてみる。もし、何かを置いて行ってしまったとしても、見つけたらすぐに送ってくれるだろうから。それに“忘れて”しまうことなんて、ひとつもないから大丈夫。

    「早く行きましょう? 遅くなってしまったら大変だもの!」
    「そんなに急がなくても……じゃ、行こうか」
     
     歩き始めたトレーナーを追って、十数歩進んだところ。ああ、と思い立って、足を止める。

     振り返れば、一度しかない青春を過ごした学び舎。眩しいくらいに、きらきらと輝いて見える。深々とお辞儀をしてから、彼の隣に駆け戻った。


    *


     昼下がりの雑踏を、トレーナーと肩を並べて歩いていく。指を伸ばせばすぐに届きそうな距離だけど、手は繋いでいない。一般の方に見えるところでは、あまりくっついているわけにもいかないもの。

    「トレーナーはどうしてあの日、ここを歩いていたの?」
    「確か午後に半休を取っていて、午前の仕事が終わったからなんとなく街に出てきたんだっけ」

     第一章が始まる前の、前日譚を明かすように。ゆったりとした足取りで、学園からの道を進んでいく。なるほど、お仕事のあとだったから、ワイシャツにスラックス姿だったんだね。

    「そのときは担当ウマ娘の方はいらっしゃらなかったの?」
    「そうだね。教官や他のチームの手伝いをしてたよ」

     と、トレーナーが何かに気づいたように首の向きを変えた。視線の先には、見覚えのある電器店。店頭に展示されたテレビからは、ニュースの音が漏れ聞こえてくる。ということは、すぐ近くにお目当ての場所があるわけで。

    「最初の目的地にとうちゃ~く!」

     ひとつ挟んだその隣。看板も、外観も、店内のレイアウトも変わっていない。紛れもなく、私たちが出逢いを果たしたコンビニその場所だった。

  • 6二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:35:49

     けれど、台詞を進めていくうちに、お互いにだんだん面白くなってきてしまう。自然な会話というよりは、芝居じみた話し方になってきて。

    「お湯を入れてくださる係の方が、なかなかいらっしゃらなくて。もしかして、今日はお休みなのかな?」

     そこまで言ったところで、トレーナーは噴き出してしまった。

    「もうっ! せっかく名演技だったと思ったのに~」
    「ごめんごめん。でも、ファインだってニヤニヤしてるじゃないか」
    「えへへ。だって、こんな初対面が運命の出会いだなんて、やっぱりちょっとおかしいんだもの!」

     彼の案内に沿って、店舗の中へと戻る。ポットの使い方もばっちりで、火傷をするなんてことはない。容器にお湯を注ぎ、蓋をして三分間。いまと同じように、トレーナーは後ろで見守ってくれていたよね。
     しかし、人生を左右した邂逅がコンビニの前だったなんて、お城に帰ってから日本留学についてお話するときにはなんて言えばいいのかな。

    「ファインもどうして俺に声をかけてくれたんだ? 他にも人はたくさんいたはずだけど」
    「うーん、それはね。……一目見た瞬間に、ピンと来たものがあったの!」
    「……本当に?」
    「……というのは冗談で、学園で見かけた覚えのある顔だったからなんだ」

     冗談とは言ったけれど、半分くらいは本当のこと。キミとの対面に、何かを感じたというのは嘘ではない。

    「それに、護衛の方たちに止められなかったから。危ない人じゃないってわかったの」
    「確かに、本当に見ず知らずの人だったら途中で引き剥がされてたかもしれないな」
    「聞いてみないとわからないけれど、学園に出入りする人の素性は全員調査済みなんじゃないかな」
    「おお……流石は王女親衛隊だ」

  • 7二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:36:33

     親衛隊だなんて大げさだけれど、護衛の皆さんは二十四時間周囲を警戒してくれているから、感謝を込めてそれくらいの称号は贈ってもいいかも。

    「トレーナーも、どうしてあんなに親切にしてくれたの?」
    「それはまあ、トレセンの制服を着て困ってる生徒がいたら放っておくわけにもいかないし」

     いまは自分のお洋服だけれど、あの日は制服でお出かけしていた。新しい衣装を着るのが楽しくて、袖を通す度にワクワクが止まらなかったなあ。

    「じゃあ、声をかけたのが私でなくても手を差し伸べていたのかな?」
    「どう答えても機嫌を損ねそうな難しい質問だな……」
    「ふふ、いじわるしちゃった♪」

     他愛もない会話を繰り広げていると、ピピピ、と体内時計のアラームが鳴った。本来は、レースのラップを刻むために鍛えたもの。ラーメンの待ち時間を測るのにも役立つようになるとは、ちょっと予想外だった。
     蓋を開けて後入れスープを投入し、割り箸を二本に割る。準備が整ったところで両手を合わせて。

    「いただきます!」

  • 8二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:37:09

     軽く一杯を平らげ、後片付けを済ませる。買ったその場で食べられるシステムはやはり興味深くて、何かに応用できないかな、なんて思ったり。

    「うん、素敵な体験でございました!」

     まだまだお腹には余裕があるし、これからが本番。それから、このあとの言葉は決まっている。

    「親切なお方、手ほどき感謝いたします♪ それでは次に――」

     次の目的地へ、あの日と同じ台詞で。
     
    「『麺屋極極』まで、エスコートしてくださるかしら?」

     戸惑った反応の演技を予想していたら、トレーナーは一歩、私に近づいてくる。首を傾げていると、彼はそのまま当然とばかりに手を伸ばしてきて。

    「……いいの? 周りの方が……」

     少し躊躇う素振りを見せると、ひょい、と腕が引っ込められてしまう。

    「あー、そういえば『行き先は自分で調べる』のが普通だったよなあ」

     口角を上げた、わるーい笑顔。さっきの質問の仕返しかしら?

    「むむむ。普通はそうかもしれないけれど、いまは“特別”がいいな!」

     本当は、やめておくなんて考えはなかったのだろう。抗議をすると、すぐに優しげな笑顔に戻っている。改めて差し出された、その手をとって。

    「では、ご案内よろしくお願いいたします♪」

  • 9二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:38:11

    「おう、姉ちゃん。いらっしゃい!」

     暖簾をくぐると、威勢のいい挨拶とともに、店内に満たされた熱気が飛び出してきた。空いている場所を見極め、手前のカウンターに着席する。もちろん、隣の席にはトレーナー。

    「ここに来るのも何回目になるのかな?」
    「ほとんど毎週来てたような気がするよ」

     店主とはもう親しい間柄だし、お店を貸し切りにさせてもらったこともある。トレーナーも修行に来ていたことがあるから、常連以上のお付き合いといっていいのかも。

    「今日も“いつもの”でいいかい?」
    「ああ、それなのだけれど……」

     来店して開口一番に「いつもの!」と注文することも多かった。だから、ここで悩む素振りを見せることに、大将は意外そうな顔をしている。そんな姿をよそに、ちらりと横を窺って。

    「“アレ”に挑戦してみようと思うの!」

     壁を指し示すと、隣のトレーナーは目を丸くする。“極盛り”の完食達成者だけが名を連ねることができる、栄光の証。貼り出されている写真には、大食い自慢の錚々たる顔ぶれが並んでいる。

    「……本当にやるの? アレ」
    「何事もやってみること大事ですし、一度挑んでみたかったんだもの」

     彼は心配そうにしているけれど、大丈夫。私だってウマ娘だもの。それに、食事量を控えなければならない事情もないし、デートの予定が決まったときから挑戦しようと決意していた。

    「ねっ、いいでしょう?」

     両手を合わせて“お願い”の構え。どんな要望やわがままでも通らなかったことは一度もない、トレーナーによく効く得意技。しばし、彼は悩ましそうな様子を見せると。

    「……無理はしないでね。食べきれなさそうだったら貰うから」
    「やった! ありがとうございます♪」

  • 10二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:38:46

     ちゃんと考えているのだろうけど、いつも受け入れてくれる。他の人が聞いたら「甘やかしすぎ」なんて言われちゃうかも?

    「というわけで、大将! “いつもの”で極盛りチャレンジをお願いいたします♪」
    「あと、並も一杯お願いします」
    「はいよ!」

     途端に慌ただしくなる厨房。茹でざるが総動員されて、湯気がもくもくと立ち上ってくる。用意された丼は特大サイズで、かえしもスープも、“いつもの”と比べると何倍もの量になっている。

    「本当に食べられる? さっきカップ麺も完食してたよね」
    「問題ありません! 一杯だけだったし、あれは……そう、オードブルみたいなものだから」

     ラーメンでフルコースを用意するとなったら、どんなメニューを揃えようかな。ポワソンやヴィアンドは、それぞれ魚介系のお出汁やチャーシューで表現できそう。でも、デザートはちょっと難しいかも。レモンでなんとかするしかないかな?

     そうこうしているうちに、一番の山場がやってきていた。大将はざるの柄を掴むと、たちまち気合いの入った顔になる。見どころを逃さぬように、しっかりと意識を向けて。

    「せいやぁっ!!!」

     威勢のいい掛け声とともに、目にも止まらぬ速さの腕の振り。何度見ても興奮が抑えられない瞬間。しかも、今日はなんと!

    「みてみて! 『湯切り十文字』の十連発だよ!!」

     ざるが引き上げられて、お湯が切られて、麺がスープの中へ沈んでいく。流れるような、澱みのない一連の工程はまさに職人技。

    「トレーナーはまだ『湯切り十文字』、できる?」
    「本物には劣るかもしれないけど、あれだけ練習したからできるはずだよ。でも……」
    「でも?」
    「あんなに連続して何度も、っていうのは難しいかな」

     トレーナーは大将に敬意のまなざしを送っている。全身全霊の湯切りを繰り返せるのは、やっぱりプロだけみたい。

  • 11二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:39:25

    「淡麗塩の並と極、お待ち!」

     ずしん、と身体にまで衝撃が伝わってくるほどの重量。私の顔よりも大きそうな特丼には、スープがなみなみと満たされている。いっぱいに盛り付けられた麺の上には、チャーシューや煮卵、メンマやコーンといったトッピングがうず高く積まれている。隣の並盛りがミニサイズに見えるくらい、圧巻の景色だった。

    「で、でかい……」
    「おお~! 流石は極盛りね!」

     いざ目の前にしてみるとワクワクが収まらない。お箸を用意して、コップにお水も用意して。「いただきます」と手を合わせれば、いよいよ対決のスタート!

    「さて、この難攻不落のお城はどこから攻めていきましょうか♪」

     まずはお堀からと、レンゲでスープを一口。こんなに量が多くなっていても、クオリティは全く下がっていない。透き通った黄金の見た目も、塩と鶏ガラの風味も百点満点。続いて麺に手を付けると、ぬめりはなく、いくらでも食べられちゃいそうなくらい。

    「いやあ、見てるだけでお腹いっぱいになりそうだよ」
    「トレーナーも食べないの?」
    「じゃあ、そろそろいただこうかな」

     遅れること少し、彼もお箸を動かし始めた。けれど、食べ進めていく最中にも時折こちらの様子を窺ってきている。そんなに面白いものでもないと思うのだけれど、端から見ると違うものなのかしら。

  • 12二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:40:12

     時間はかかったけれど、麺を全て攻略し、トッピングもひとつ残らず食べ尽くした。スープにも少しずつ取りかかり、最後の一口を飲み干して。

    「ごちそうさまでした。とっても美味でございました!」
    「本当に完食した……」

     トレーナーは驚いたような、唖然としているような顔をしている。私自身、食べきる自信はあったけれど、実際に達成するとびっくりしてしまった。あんなに山盛りだったのに、いまは全部私のお腹の中なのが信じられないくらい。




    「大将! “極盛り”、完食いたしました!」
    「おっ! ウマ娘でもギブアップする人もいるんだが……姉ちゃん、流石だねえ」
    「お褒めに預かり光栄ですわ。とても美味しかったから達成できました」

     これだけの量でも飽きることなく食べられたのは、ひとえにお料理が素晴らしいから。勲章を差し上げたいくらい!
     余韻に浸っていると、大将は裏へと行ってしまう。お忙しいのかな、と思っていると、カメラを手にして戻ってきて。

    「記念撮影はするかい?」
    「ええ! 偉業はしっかり残しておかないと」
    「はいよ。じゃあこっちに向いて……」

     構えられたレンズに、空になった丼と一緒に顔を向ける。このお店に長く残るものだから、素敵な笑顔にしないとね。
     パシャリ、とシャッターが下ろされる。印刷された写真を受け取って、ペンを取る。今日の日付を書き入れ、“ファインモーション”と名前を記す。

    「いい顔してるねえ」
    「ふふ、そうでしょう? よく見えるところに貼っていただけると嬉しいです♪」

     サインを済ませて引き渡すと、早速壁に並べてくれた。美味しいラーメンをお腹いっぱい食べられたし、記録も残せて大満足。私が極盛りを完食したという証が、笑顔とともに飾られた。

  • 13二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:40:56

    「ひと休みしたし、そろそろ出る?」
    「そうしましょうか。大将、ごちそうさまでした」
    「あーちょっと待ってくれ。完食特典があるんだ」

     トレーナーがお会計をしている隣で、大将が私を呼び止めた。引き出しを探っているみたい。ややあって、蛇腹に綴られた数枚の小さな紙が差し出される。そのひとつひとつは、見覚えのあるもの。

    「はい、替え玉無料券五枚ね。“また”来てくれよな」

     予期していた言葉だったのに、一拍、返事をするのが遅れた。

    「ありがとうございます。“また”伺いますね」
    「おうよ! ありがとな!」

     お辞儀をしてお店を後にする。トレーナーが暖簾を手でよけてくれる。

    「……ファイン」
    「次のご案内も、よろしくね」

     “また”という機会はもう存在しない。彼の言葉を遮って、宙ぶらりんになっていた手を掴んだ。握り返す反応は、ここに来るときよりもわずかに弱くなっているように感じた。

  • 14二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:41:34

     赤く染まった空は藍色に移っていく。思い出を辿って、夕暮れ時の駅前広場。あの日はここでお別れの時間だった。

    「これで予定していたルートは踏破かな」
    「そうだね。見事なエスコート、ありがとうございました」

     初めて出会った日と同じ道を歩いたけれど、街並みには変わったところも、変わっていないところもあった。以前とは違うラーメン屋が店を構えていたり、当時は気がつかなかった面白そうなお店を見つけたり。寄り道もしていたから、終着点に着いたのは少し遅めの時間だった。

    「今日一日、楽しめた?」
    「ええ、とっても!」

     日本で過ごす最後の時間を、こんなに素敵なものに演出してくれるなんて。期待以上の一日で、胸がいっぱいだった。

    「それから、これはエスコートのお礼」

     手を伸ばし、彼に『極極』で頂いた無料券を握らせる。

    「ここまで同じになるとは思わなかったな~」
    「……これは受け取れないよ」
    「でも、私が持っていても仕方がないでしょう?」

     拒むように返そうとしてきたけれど、それを強引に押し切る。せっかくのものなのだから、無駄にしてしまいたくはない。握らせた手を離し、彼の顔を見上げる。

    「これがあれば、キミはあと五回はあのお店に行く。そうしたら、あの写真を見てまた私を思い出せる」

     トレーナーははっとしたように、手の中に目を向ける。

    「大切に使ってね」
    「ファイン、最初からそのつもりで……」
    「さて、どうかしら!」

  • 15二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:41:56

     物陰に目を向けると、隊長が控えているのが見えた。そろそろ、今晩を明かすホテルへ向かわないと。

    「今日は本当にありがとう。素敵な思い出は、もっともっと素敵なものになりました!」
    「……」
    「明日の朝は空港で見送ってくれるのでしょう?」

     トレーナーは無言で頷く。

    「始発じゃないと間に合わないかもしれないから、寝坊しないように気を付けてね」

     四年前を踏襲して、ここでさよならのつもりだった。しかし、彼の反応があまりないことに違和感を覚える。いつもはちゃんとお返事をしてくれるのに。

    「……トレーナー、どうかしたの?」
    「……まだ」
    「え?」
    「まだ、“デート”は終わってないよ」

     聞き直すと、今度ははっきりと声が聞こえた。でも、終わっていないって?

    「その、どういうことかしら」

     コンビニの前で出会って、『麺屋極極』に連れていってもらって、それから街を散策して。最後に駅前で替え玉無料券をプレゼントして、一日は終わりだったはず。

    「『あと一軒が最後のお楽しみ』って言ってたじゃないか」

     ――門限には間に合うけれど、日没までの外出期限だからと行けなかった最後の一軒。

  • 16二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:42:44

    「……そんなに細かいところまで覚えていたんだ」
    「当たり前だよ。ファインが『ずっと忘れない』って言った日なんだから、全部覚えてるよ」
    「ありがとう。でも……」

     再び物陰を確認すると、隊長の姿はなかった。後ろからは一歩、トレーナーが迫ってきて。

    「ファイン。あの日、これからどこに行こうとしていたのか教えてくれないかな」


    *


     予定外の延長戦。もう一軒のお店を出た頃には、すっかり夜の帳が下りていた。東の方角へ、いくつかの電車を乗り継いでいく。宿泊先まで送ってくれるというから、その申し出に甘えることにした。
     都心の夜は並び立つ街灯のおかげで、昼間のように明るかった。府中も東京だけれど、ここまで明るいということはない。ダブリンの街並みよりも眩いように見えた。

    「最後の一軒まで行かないと、思い残しができちゃうんじゃないかと思ってさ」

     隣を行くトレーナーが明かしてくれる。

    「ありがとう。あそこには行かないと思っていたから」
    「予定にはなかったけど、君の姿を見ていたら『行かないと』って思ったんだ」

     突然の予定変更で、護衛の方々には迷惑をかけてしまっただろう。どこかのタイミングでお礼とお詫びを伝えておかないと。

    「そんなに行きたそうにしてたかな?」
    「何というか、そのままにしたらいけない気がして」

     やはり、替え玉無料券のやり取りで感じるものがあったのだろう。小さな綻びも見逃さない、鋭い観察眼。
     ――なら、いまの揺れ動く不安定な感情にも気づいているのだろうか。

  • 17二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:43:18

     ぽつぽつと会話を交わしながら歩いていると、目的地まではすぐだった。エントランス前に掲げられた看板には、飾り文字でホテルの名前が記されている。
     入口の側まで来たところで足を止めた。隣に向き直り、感謝を述べる。

    「改めて、本日はありがとうございました。最高の思い出になりました」

     私たちの歩みの締めくくりにふさわしい、この上ないひとときだった。始まりと終わりをまとめ上げた、素晴らしい終幕だった。

    「こちらこそありがとう。貴重な時間を君と過ごせて嬉しいよ」

     どこかすっきりしたような、爽やかにも見える笑顔だった。思わず、目を逸らしたくなってしまうくらいに。

    「明日は長旅になるんだから、今夜はよく寝るんだよ」
    「……うん。ありがとう」

     ああ、楽しかった一日――彼と過ごせる日々が終わってしまう。
     別れは一度体験したから、理解しているはずなのに。その時よりも胸が裂けてしまいそうな思いがする。
     わかっていたはずの未来がやってくるだけなのに、どうしてこんなにも苦しいの?

    「じゃあ、また明日――」

     トレーナーは手を掲げると、向こうへと振り向く。「気を付けてね」と言おうとしたのに、言葉がつかえて出てこない。自分が笑顔でいられているのかわからない。

     彼はそのまま足を踏み出して、トレセンへの帰路に就く。――その背中を目にした途端、ギリギリで抑え込んでいた激情が襲いかかってきた。

     明日、また会うことはできる。彼のことだから、フライトの時間に遅れるなんてことは絶対にない。けれど、残りわずかしかない日本での滞在のことを思うと、一秒たりとも空費したくなかった。

     ――離れたくない。いかないでほしい。

     思うよりも早く、数歩離れた後ろ姿に駆け寄っていた。私の右手は、彼を引き留めるように服の裾を掴んでいる。

  • 18二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:44:03

    「ファイン?」

     不思議そうに向けられた顔を見て、後悔の念がよぎる。なんてことをしてしまったのだろう。彼を困らせてしまうだけなのに。
     自然と俯きがちになって、視線は足元に向いている。伸ばした手が剥がれて垂れ下がる。

     けれど、自分の心に嘘はつけなかった。口にすることは耐えられたけれど、胸の中はめちゃくちゃだった。もう、後戻りはできなかった。

    「――隊長」
    「ここに」

     下を向いたまま呼びかけた。呟くような声だったけれど、彼女はすぐさま駆けつけてくれる。

    「今日のお部屋、手配は済んでいらっしゃるかしら」
    「はい。スイートを一名で確保しております。明日に備えてゆっくりお休みください」
    「……“二名で”確保するように伝えていましたよね」
    「……はい?」

     そんな連絡はしていない。いま、初めて口にしたのだから。

    「殿下、そのような指示は――」
    「隊長」

     顔を上げる。困惑の表情を浮かべる彼女の目を、じっと見据える。

  • 19二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:44:33

    「ねえ、隊長」

     お願い。わかって。幼い頃から仕えてくれている貴女なら。
     隊長は目を瞑る。眉間にしわが寄っている。耳がぴくりと震えている。

     祈るような時間が過ぎていく。やがて彼女は姿勢を正すと、深く腰を折った。

    「……申し訳ございません、失念しておりました。直ちにフロントへ伝えて参ります」
    「ありがとう。よろしくお願いいたします」
    「なあ、ファイン……」

     半ば取り残されていたようなトレーナーが、ようやく口を開いた。彼に弱ったところはあまり見せたくない。根性で気合いを入れ直し、笑顔を作り出す。

    「さてと! お部屋までご一緒に参りましょう♪」
    「ファイン――」
    「ねっ?」

     有無を言わさぬように、彼の腕を捕まえた。両腕で抱きとめて、逃がしてしまわないように。そして、追撃の一撃を放つ。

    「エスコート、してくださる?」

     頬を寄せて、上目遣いで。ここまでの威力の技は使ったことがない。

     少し間があってから。トレーナーは重そうな足取りだけれど、私を建物の中へと導いてくれた。

  • 20二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:45:58

    *

     最上階のスイートルームは一人で過ごすには広すぎて、寂しく思えそうな部屋だった。

     巨大なガラス張りの窓からは、赤く明滅するビルの屋上や蛍光灯に照らされたオフィスが見える。地上を見下ろせば、無数のヘッドライトが絶えることなく道路を行き交っている。絶景といえるはずの眺望はどこか現実味がなくて、模型を眺めているかのように思えた。

     ソファに腰を下ろした。数枚の板を隔てて、シャワーの水音が聞こえてくる。テーブルには一本のリボンと、対になったクローバーの耳飾りが残されている。触れてみると、仄かに体温を感じるような気がした。

     部屋に連れ込まれる前、点検を終えた護衛隊長に耳打ちされた言葉が頭の中に響いている。「殿下をよろしくお願いいたします」との一言は、これからの行動が“ファインモーション”の未来までを左右しうると、暗に示しているのだろう。重責がこの身に懸かっている。

    「トレーナー、お先にお風呂いただきました」

     扉の向こうから現れた、バスローブに身を包んだファイン。うっすらと上気した頬。普段はまとめられている髪は下ろされ、水気を含んで艶めいている。

    「あら、見惚れちゃったかしら」
    「……そういうことにしておくよ」

     つい先ほど、不自然なまでの強引さを見せていた様子とは一転して、彼女は揶揄う余裕すら見せる。そのまま彼女は何事もなかったかのように、着ていた服をクローゼットにかけている。

    「トレーナーもお風呂入ってきたら? あったかいよ」

     彼女から目を離すことに不安を覚えないこともなかったが、勧められるままに浴室へと向かう。脱衣所に入ったところで、ファインは顔を覗かせながら。

    「あとでお背中流しに参りましょうか?」
    「……本当にやめてね?」
    「はーい♪」

     彼女は「ざんねーん」などと言っているが、ここでは気にしないことにした。冷水を浴びて、一度思考をまとめようと思った。浴槽にはお湯が張られていたが、入る気にはなれなかった。

  • 21二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:47:24

     手短にシャワーを浴び、ローブを羽織ってダイニングに戻る。ファインは椅子に腰かけ、髪を梳いているところだった。テーブルにはティーポットと二組のティーカップ。

    「あっ、おかえり~。早かったのね?」
    「シャワーだけで済ませたから」
    「ふーん? ゆっくり温まってきてもよかったのに」
     
     彼女が入った後の湯船なんて、とてもではないが畏れ多くて入ることはできなかった。もっとも、このような状況では気にしたところで些末なものだったかもしれない。

    「さっきお願いして紅茶を用意してもらったの。キミもいかが?」
    「じゃ、いただこうかな」

     ファインは櫛を置き、ポットから紅茶を注ぐ。馨しい香りが立ち上る。少しずつ口に含み、ゆっくりと飲み下す。喉に熱が伝っていくのがわかる。ファインも同じようにカップに口をつけている。

     しばらくの間、お互いに無言のまま時間が流れていく。空になったカップをサイドテーブルに置き、ベッドに腰を落ち着けた。体重をかけたところに窪みが残る。疲労が溜まっていれば、すぐにでも眠ってしまいそうな肌触りだった。

  • 22二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:48:23

    「ねえ、トレーナー」

     ファインが沈黙を破る。遠い目をして、窓の外を眺めながら。

    「……私ね、明日には祖国に帰らないとならないの」

     彼女は紅茶を飲み干すと、カップをソーサーの上に伏せた。

    「祖国の繁栄のため。私の生きる理由。そのためだとはわかっているの」

     しばらくして、ファインはカップを裏返し、その中を見つめている。

    「だけどね。……どうしても胸が苦しくて、心に折り合いがつけられないの」
    「……誰でも、別れは辛いものだから」
    「うん。……以前の帰国のときも同じようなお話をしていたかもね」

     あのときも、彼女は自分の心と向き合うことに苦しんでいた。相反する感情がせめぎ合う、荒波が立った心の中と。

    「やっぱり、帰りたくないな、って思ってしまうの」
    「……ファイン」
    「ああ、でも、悲劇のヒロイン、というわけではないの。私がそうしたくて、進んで選んだ運命だから」

     望まぬ道を強制されているのではない。彼女は、心の底から祖国と国民のために身を尽くしたいと願っている。それは、どのような交換条件があったとしても、揺らぐことはないだろう。

    「二度目になるのにね。そう簡単に割り切れないんだ」

     ファインは目を瞑り、深呼吸をするように大きく息を吐く。こちらに身体を向けると、困ったように耳を垂れさせた。

    「たくさんの思い出を抱えて祖国に帰る。けれど、それだけじゃだめみたい」

  • 23二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:48:56

    長っ

  • 24二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:49:21

     彼女はベッドに登ってくると、隣へと座り込んで。

    「キミがほしい。ずっと、私の傍にいてほしい。でも、私の隣に、キミはもういなくなってしまう」

     力なく笑う。目の光が揺らめいている。

    「おかしいよね。キミを含めた、たくさんの人々に私のことを覚えてもらって、忘れないでいてくれるだけで満足なはずだったのに」

     語りには徐々に感情が籠ってくる。手の甲に、彼女の手のひらが重ねられる。

    「キミにはね、覚えていてくれるだけじゃなくて……ずっと傍にいてほしいって。もう叶わないのにね」

     ファインは身体を傾け、体重を預けてくる。もたれかかってくる重みは、徐々に増していく。

    「……だからね、せめて最後に」

     腕が伸びてきたかと思うと、肩を掴まれていた。あっけにとられている間にも力が込められて、身体が徐々に押し込まれていく。

    「……ファイン?」

  • 25二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:49:58

     ただならぬ様子に声をかけるも、次の瞬間には視界がぐるりと回っていた。背中には柔らかなマットレスの感触。遅れてから、仰向けに倒されたことを理解した。

    「いまある、キミの全てがほしいの」

     ファインは足を跨ぎ、膝立ちになる。黄金色の瞳が射抜くように向けられている。

    「一生忘れられない――一番確かな、キミの存在を」

     彼女は自身の腰の結び目に指をかける。

    「私も全てを差し上げます。痛いようにはさせません」

     流れるような手つきで紐が解かれる。

    「明日になったら忘れてもらっても構いません。だから――」

     襟が開かれる。袖から腕が引き抜かれていく。

    「キミと過ごした証を」

     するり、とローブが滑り落ちる。

    「キミの手で、永遠に消えない跡を」

     布地に覆われていた素肌が露わになる。

    「私に、刻んで。――お願い」

     懇願するように。
     潤んだまなざしで、彼女はそう告げた。

  • 26二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:50:16

     ――息を呑むほどの美しさだった。
     傷ひとつない肌。肩から胸、腰へと続くしなやかな曲線。筋肉の上に薄く脂肪が乗った肢体は、非の打ち所がない体躯だった。
     
    「……何か言ってくださらないの? 本当に見惚れちゃった?」
    「……ああ、綺麗だよ」

     しっぽが太腿を撫でる。ファインが上体を傾けると、鹿毛の毛先が頬をくすぐった。同時に、甘いシャンプーの香りが飛び込んでくる。同じものを使ったはずなのに、自分とは全く違った匂いがした。

    「バランスには自信があってね。お友だちに『綺麗だね』って言われたことも、何回もあるのよ?」

     彼女は手を伸ばし、襟の隙間から胸板に指を這わせる。肋骨をなぞり、指先の熱を擦り込むように。彼女の存在を刻み付けるように。

    「その、初めてなのだけれど、お姉さまに教わったのを頑張るから」

     どんなものを仕込んでいるのかと、彼女の姉妹関係が心配になった。しかし、呑気なことを考えている暇はない。護衛隊長の言葉を思い出す。自分がなすべきことは何なのか。

     “全てを賭す覚悟”は、まさにいま、問われている。

    「ファイン」

     両腕を広げた。直感だった。彼女は嬉々として身体を倒れ込ませてくる。その背中に手を回し、固くきつく抱きしめる。胸には胸の、腰には腰の柔らかさが伝わってくる。

    「……トレーナー?」

     抱きしめられたまま、何も起こらないことを不安に思ったのだろう。自分が原因なのに、彼女の心境を察すると心が痛んだ。

    「……ねえ、トレーナー」

     ファインは顔の向きを変えようとする。それを許さないように、回した腕をさらに狭めた。

  • 27二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:50:33

    「……ごめん」

     震える声をしていた。我ながら情けないと思った。彼女の身体から、少しずつ力が抜けていった。

    「……だめ、かな。やっぱり、私、あまり大きく……」
    「……そうじゃない。とても魅力的だと思ったよ」

     願っている。心の中まで伝わってくれるように。お互いの鼓動は丸聞こえだった。彼女もそれに気づいているはずだった。

    「わかるかな。こう見えて、本当は全然冷静じゃないってこと」
    「……うん。ドキドキしてるの、わかるよ」
    「でも、ファインを大切にしたいんだ。こういうことだけが全てじゃない」

     腕の中の身体ごと起き上がる。毛布を肩にかけ、彼女の頭に手を乗せる。

    「……このままだと、本当の繋がりが失われてしまう気がしたんだ」

     両耳が左右に倒される。手を滑らせていくと、さらさらと指の間を髪が流れていく。

    「それが嫌だったんだ。あまりにも残酷だと思って」

     言い訳にしか聞こえないとも思ったが、真意が伝わってくれることを祈った。たった一夜で、これまで紡いできた二人の絆を失いたくなかった。

    「それに、運命を愛する君の枷になりたくない。……本当は寂しいけどね」

     数百万の民に愛される彼女を、ここに縛りつけてしまいたくなかった。国民のために尽くし、彼らのために生きる彼女の気高さに、傷をつけたくなかった。

    「でも、ファインの心の中には寄り添っていられる。これからもずっと、君のことを支え続けると誓うよ」

     たとえ、この身が彼女の隣に居なくとも。心は常に彼女の傍にある。何千キロメートル先の異国の地でも、褪せることも、薄れることも決してない。

  • 28二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:51:10

    「……そうだね。私の胸の中で、キミはずっと微笑んでくれている」

     ファインの顔が上げられる。彼女は目を細めると、ふっと笑みを浮かべた。

    「キミの心の中に、私は永遠でいられる?」
    「ああ、もちろん」
    「どんな顔をしてるかな。もしかして、ラーメンを食べているお顔?」
    「とびっきりの笑顔で隣を歩いてるよ」
    「……そっか。それは嬉しいなぁ」

     ファインは曇りのない笑顔を見せてくれた。正しい選択ができたのだと、ようやくほっと一息つくことができた。彼女は満足そうに、うんと伸びをする。と、肩から毛布がずり落ちる。

    「……キミにはもう全部見せちゃったもんね?」
    「……風邪を引くから着替えた方がいいよ」

     彼女は再び毛布を巻き付けると、ベッドから下りようと離れていった。しかし、「あっ!」と声を上げると、こちらへと戻ってくる。

    「そうそう、キミに頼んでみたいことがあるの」
    「……何かな」
    「そんなに難しいことじゃないから、身構えなくて大丈夫だよ」

     ファインは背中を向けると、腰のあたりの布をたくし上げる。

    「しっぽのお手入れ、お願いできるかしら?」

  • 29二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:51:43

     ファインは寝間着に着替え、ベッドに足を伸ばして座っている。彼女の背後に身を構え、ブラシを右手に持ち、切り揃えられたしっぽに左手を添える。ゆっくりと、優しく、丁寧にブラシを通していく。

    「痛かったりしない?」
    「うん、大丈夫。根元は掴まないでね」

     彼女の指導を受けながら、毛の束を梳かしていく。さらさらとこぼれてしまいそうなくらい、滑らかな手触りだった。

    「流石はトレーナー。呑み込みが早いのね?」
    「以前にブラッシングの本を読んだことがあるんだ」

     ウマ娘が他人にしっぽを触らせることは滅多にない。命とまで呼ぶ者も少なくない。それでも、彼女は自分に任せてくれたのだ。

    「もしかして、今日みたいにしっぽをお手入れする日が来るかもって?」
    「備えておくに越したことはないからね」

     オイルを手に取り、“ロイヤル・テール”に揉み込んでいく。引っ掛かりはひとつもなく、普段から入念に手入れをしていることがわかる。自慢だという毛艶はいっそう光沢を増して、輝いているように見えた。

    「……あのね、トレーナー」

     耳をぱたぱたと上機嫌に動かしながら、よく通る声でファインは切り出した。次に続くだろう台詞は、容易に想像できた。

    「私ね、キミのことが好きなんだ」

     さらりと、言い淀む様子もなく。当たり前のように打ち明けた。

    「ありがとう。君に想ってもらえるなんて光栄だよ」

     いまとなっては、驚くようなものではなかった。言葉にされなくとも、既に十分に伝わってきていたのだから。

    「……あーあ。どうしてキミを好きになってしまったのかしら」

  • 30二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:52:02

     彼女は首を振り向かせながら、えくぼを浮かべて楽しげに。

    「お別れしなくてはならない人を好きになってしまうなんて、なんという運命なのでしょう!」

     きゃあきゃあ言いながら、脚をばたつかせている。揃えた毛先が少し乱れてしまったから、もう一度整えることにした。

    「キミが悪い人だったらよかったのに。あのまま私を手籠めにしてしまって、そのままサヨナラ! って」
    「……そんな酷いことをするような人だと思ってたの?」
    「ううん、全然。私のことを一番に考えてくれるキミを、好きになったんです♪」

     つかえていたものが取れたかのように、ファインには明るさが戻ってきていた。好奇心旺盛で、お転婆で、少しわがままな彼女が最もきらめいている。

    「ふぁ~あ……すっきりしたら眠たくなっちゃった」
    「布団はかけておくから、このまま眠っても大丈夫だよ」

     しっぽを梳く手を止め、招くように隣のスペースを叩いた。

    「んー、じゃあ、お言葉に甘えようかしら……えい!」

     ファインは後ろににじり寄ると、足の間に身体を滑り込ませてきた。背中を胸板にもたれさせると、首をひねりながら見上げてくる。

    「ファイン?」
    「えへへ。こっちがいいなって!」

     催促に応えて、片手で身体を抱きしめる。もう片手は頭に添えて、彼女の様子を窺う。

    「いかがでしょうか、お姫さま」
    「ん、よろしい♪」

     ファインは満足げに鼻を鳴らすと、ゆっくりと瞼を閉じる。彼女の息が穏やかになり、夢の世界に旅立つまで。撫でる手を動かし続けていた。

  • 31二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:53:15

    *

     黎明の展望デッキに人影はない。滑走路は目を覚まし始め、機材たちは身支度を始めている。海までの遮蔽物はなく、運ばれてくる風は湿った冷気をはらんでいる。思わず身を縮こまらせると、隣からトレーナーの両手が伸びてきて。

    「……あったかいね」
    「さっきまでポケットに入れてたからね」

     指先を包んで、混ぜ合わせて、絡ませて、繋いで。二人で握った力を入れたり抜いたりしていると、控えていた隊長が進み出てくる。

    「殿下。手続きをしてまいります」
    「……ええ。よろしくお願いいたします」

     聞き覚えのあるようなやりとりだった。あの日も隊長が手続きをしている間に、最後の時間を噛みしめていた。申し出てきた彼女が去っていく。その姿を眺めながら、隣の彼に話しかける。

    「昨日もそうだったけれど、やっぱり隊長は優しいね。いつも気を使ってくださって」

     優しいどころの話ではない。突然の無理難題にも応えてくれて、普通なら止められそうなことまで許してくれて。私は溢れんばかりの思いやりに囲まれている。

     元来た通路から離れ、二人だけの場所を目指すように。踊るような足取りで、彼の手を引いていく。こんなふうにいろいろな場所に連れ回したことも、何度もあった。いつでも嫌な顔ひとつせずに、ついてきてくれたよね。

     やがて高台の端まで辿り着く。そのままフェンスの手前まで進んで、景色を一望する。ビル群の向こうから、太陽が顔を覗かせている。
     隣に視線を移し、トレーナーをじっと見上げる。眩しいのだろう、少しだけ目を細めていた。

    「トレーナーのお仕事、これからも頑張ってね」
    「ああ、ありがとう」
    「ちゃんとレースを見て、資料を読んで、次の担当さんを見つけるんだよ」
    「……全然集中できてなかったの、バレてた?」
    「もうバレバレだよ~。ページをめくった跡が全然ないんだもの」

  • 32二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:53:46

     彼は苦笑いをしてから、気合いを入れ直すように強く頷いた。私を教えることができたトレーナーなのだから、どんな子が担当になっても活躍できると信じている。もし、アイルランドにまで聞こえてくるような大活躍をしてくれたら、私も鼻が高いというもの。

    「ファインも務めを果たせるよう頑張ってね」
    「キミが後押ししてくれたから、全力で臨めるよ」

     何百年も続いてきた歴史を背負い、新たな時代の礎になる。私のしてきたこと、これから成し遂げていくことが、国の未来へ繋がっていく。
     そうして人々に――祖国に私という存在が息づいていくことを、誇りに思っている。

     これ以上話すことはなかった。ただ、二人で並んでいるだけで胸がいっぱいだった。繋いだ手が心を通わせているから、それだけで十分だった。
     
    「……皆さまをお待たせするわけにはいかないね」

     建物へ続く扉の影に、隊長の姿が見えた。カーテンコールの時間だった。

    「そろそろ行かないと」
    「搭乗の瞬間まで付き添わなくてよかった?」
    「ええ。だって、切なくなってしまいそうだから」
    「そっか。思い残しはない?」

     思い残すことなんて、これっぽっちも存在していなかった。全てをやり尽くし、全てを楽しんだ留学生活だった。だから、笑顔で答えることができる。

    「何一つございません。素晴らしい四年間でした!」

     トレーナーも晴れやかな表情をしていた。その姿を見て、ふと閃く。離れ離れになる前にやっておきたいこと。いま、この瞬間でないとできないこと。

    「――あと、最後にひとつだけお伝えしたいことがあるの」

     彼は思案顔になり、それから首を傾げる。

  • 33二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:54:15

    「……何か重大なもの?」
    「ううん。でも、内緒にしておきたいことかな。お耳を貸してくださる?」

     トレーナーは顔を横に向け、わずかに腰をかがめる。間合いを詰めて、彼の間近で背伸びをして。

    「……ふーっ」

     無防備に晒された耳に、息を吹きかけた。彼は不意を突かれたように震えると、歯を見せながら振り向いてくる。

    「なんだ、くすぐった――」

     すかさず両腕を首に回す。
     一気に彼を引き寄せる。
     ありったけの“私”を、ひとつ残らず吹き込んでいく。

     一瞬とも、永遠ともとれる時間だった。腕を緩め、目と目を合わせて見つめ合う。

    「――ふふっ、最後のサプライズ! これくらいは構わないでしょう?」

     彼の唇に人差し指を押し当てる。その指を自分の唇に沿わせて。

    「今度はキミが奪いに来てね♪」

     ウインクを見せて。華麗に一歩、後ろにステップを。

    「……まったく、ファインには敵わないな」

     困った顔をしているけれど、それさえも愛しいものに見えた。私はお姫さまですもの。騎士を振り回したって、構わないでしょう?

  • 34二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:55:00

    「では、今度こそ。ここまで大儀でした。貴方への感謝は言葉にしてもしきれません」
    「こちらこそありがとう。ファインのおかげで知ることのできたことはたくさんあったよ」
    「私もいろいろなことを教えてもらって、とても充実した時間を過ごせました」

     改めて手を差し出し、固く握り合う。未来へと向かう二人を、お互いに力づけるように。

    「それから……キミを好きになることができて、私は幸せでした!」

     初めての感情は、確実に私を成長させてくれた。ドキドキしたことも、苦しかったことも、全てが宝物だった。

    「またいつか、お会いできることを楽しみにしています」
    「ああ。また、いつか会える日を」

     お互いに、ベストショットの笑顔を見せる。その姿を、両目のレンズに焼き付ける。

    「それでは、ごきげんよう」

     深くお礼をして、手を振って別れを告げる。「いつか」とは言ったけれど、そんな日が訪れる確証はない。本当のことをいえば、もう二度と顔を合わせることはないのだろうとも思っている。

     だけど――そうだとしても。

     キミはいつでも、私の心の傍に。辛いときは励ましてくれる。嬉しいときは一緒に喜んでくれる。だから大丈夫。寂しくないよ。

     朝焼けの赤みは既に透明になっていた。突き抜けるような蒼天だった。大陸を越え、祖国まで続く大空に思いを馳せる。
     期待以上だったターフの熱に、泥まみれになったトレーニング。お友だちとの刺激的な毎日も。そして、彼と過ごして知った『誰かを好きになる』ということ。甘くて切なくて、ちょっぴり苦い恋心。

     いくつもの思い出が浮かび上がり、雲と一緒に流れていく。

     ――夢じゃない。私が過ごしてきた時間は、どれも夢じゃない。
     積み重ねてきた思い出の数々は、無数のきらめきに彩られていた。

  • 35二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 21:56:00

    私はこの分野については素人なのですが、


    これは論文ですか?

  • 36二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 22:04:20

    大変すばらしい論文でした
    情景も美しく、双方は誠実で、秘密は甘美で素晴らしかったです
    二人が幸せな結婚生活を営んでいないので0点、落第とします。

  • 37二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 22:04:50

    ここで終わりなのか、そうでないかすらわからない愚か者だが言わせてくれ、ありがとう…!!

  • 38二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 22:08:40

    教授「落第にして来年もう一回書かせよう」

  • 39◆SBrjZf4QlVCi23/01/27(金) 22:11:29

    前作

    私たちの年越し蕎麦|あにまん掲示板 学園の屋上は凍えるくらいの気温で、冷気が肌に突き刺さっていく。コートを着てマフラーを巻いていても、風が吹けば首をすくめたくなるくらい。目の前の折り畳み式机の上には卓上コンロと湯気の立つお鍋。小さなア…bbs.animanch.com

    ファインちゃんお誕生日おめでとう! 間に合ったよかった 一か月前から書いてるのに終わらないところだった

    こんなに長くなるつもりはなかったのにおかしいね 書き始めると止まらなかった 愛です

    原案は一年前に初めて筆を執ろうと決めたときのもので、当時のへなちょこパワーでは歯が立たなかったものをいまになってようやく書けました ただ、時間が無限にあればもう少し細かく書きたかったところもあったりする

    別れをテーマにして書くことは当初からの目標だったので達成感はあります ずっと完成させたかった作品です


    Kiss summer|あにまん掲示板 夏合宿という“特別”な時間とももうすぐお別れ。荷造りもほとんど済ませて、翌朝を迎えれば府中への帰路に就く。普段のトレーニングとは変わったメニューはやはりワクワクするもので、三度目になっても楽しく取り…bbs.animanch.com

    これの延長線上なイメージではあります

    執筆にあたちストーリーを読み直して泣いたし、ついでにこれ書きながらちょっと泣いた


    キャラソンやストーリーなどからいくつか表現やシチュを取り入れてます

    ファインちゃんすき!!!

  • 40二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 22:11:32

    >>38

    いや、ここは進学させて修論と博論を書かせましょう

  • 41二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 22:13:34

    あっ君かぁ!君はオールウェイズ我々を満足させる文を書いてくれる…進学して修論も書きたまえ

  • 42二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 22:15:12

    あにまん掲示板というフォーマットで長文掲載は向いてないと改めて理解したわ
    読みにくさがダンチ
    あっ、主の内容は普通によかった

  • 43二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 22:39:17

    んおおおお………
    ローマの休日観た後もこんな気持ちだった…
    ビターエンドはつらい…大作で良作なのだけれどこの…もどかしさはつらいよ…

  • 44二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 23:55:18

    トレーナーが抱いた√とトレーナーが頑張ってファインとくっつく√が見たいぃぃぃぃぃいいい
    んでも蛇足だよな…でも見てェよ…

  • 45二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 01:23:01

    儚くも美しい・・・

    蛇足とは承知の上でもしもの未来を望む自分もいる・・・

  • 46二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 07:45:52

    さぁ
    続きが待ち望まれているぞ

  • 47二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 15:13:10

    別れはいつだって切ない。ファインはそれがあるから尊い。
    別れの挨拶が「サヨナラ」ではなく「またいつか」なのもいい。そこにあるのは別離への悲哀じゃなくて未来への希望だと思うから。

  • 48二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 16:59:32

    ”またいつか”を使うものは必ず”いつか”を書かなくてはならない

  • 49二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 22:08:42

    嬉しいコメントありがとうございます

    作者としてはノーマルかグッドのイメージで書いていました お互いがお互いを尊重し、光ある未来へと進んでいくのです

    トレーナーが手を出してしまったらビターかバッドでしょう それは辛いから書きたくなかった


    >>43

    ローマの休日いいですよね その要素をどこかに入れようと思ったけど、くどくなりそうで取りやめたというところがあります

    >>47

    「さようなら」を言わせたくなくて「またいつか」を選びました その通りです 伝わってよかった


    それこそローマの休日のような苦しくも爽やかな読後感を目指していました 結末はもう少し展開させていたのですがすっきり終わらせるためにカットして、現在の形にしました

    楽しんでいただけたのなら幸いです

  • 50二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 23:12:39

    十分ビターでした...ありがとうございました...

  • 51二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 23:46:50

    素晴らしい…………………………

  • 52二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 23:57:47

    素晴らしい作品だったけど正直最終的にこういう苦い結末にしかならないならトレファイを謳わないで欲しい
    どんな素晴らしいトレファイを読んでも『でも最終的に二人は離別しなきゃいけないんだよな...』ってなって興醒めする

  • 53二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 00:02:09

    でもこの二人はいつだって心で繋がってるんだ、それもまた愛じゃよ、ハリー

  • 54二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 00:02:52

    ファインモーションの二次創作のお家芸だよね、こういう話

  • 55二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 00:04:22

    たまにビターエンドを摂取しないとハッピーエンドの甘さに慣れてしまうからな…
    悪りぃやっぱつれぇわ

  • 56二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 00:13:53

    修士論文と博士論文も書け

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