- 1二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 17:22:35【超閲覧注意】グエルさん、一人でできたんだね、えらいえらい!|あにまん掲示板ニカが四肢欠損したグエルのお世話をするお話https://bbs.animanch.com/board/1478667/?res=31このスレを参考に書いたかなりがっつりグエルの尊厳破壊がされるので閲…bbs.animanch.com
の続きで>>53の後あたりからの分岐のラウダルート
12話の後なんやかんやで四肢欠損、幼児退行したグエルとそれを見つけて保護するラウダのお話
一人称注意、いろいろ捏造注意
- 2二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 17:23:26
ラウグエ分岐
久しぶりに会った兄さんは、僕の記憶の中にあるどの姿よりも幼くなっていた。
プラントクエタでの事件で、僕の兄さんは父親と、自分の手足を失った。どうしてそんなことになってしまったのか僕にはわからない。兄さんはただ僕に謝罪をするだけだったから。
別に謝らなくてもいいのに。父さんが亡くなったのは悲しいけれど、兄さんが生きて帰ってきてくれた喜びの方が僕にとってはよっぽど大きかった。もちろん、手足を失ってしまった兄さんはとても痛々しくて、見るのも辛かったけれど、僕が兄さんの新しい手足になって一緒に生きていけたらいいと思った。
でも、兄さんは僕を見て父さんのことを思い出したり、ジェターク社のCEOに就任した僕が兄さんとの面会のために時間を割いていることに罪悪感を抱いたりして、苦しそうだった。
だから、退院後すぐに兄さんを株式会社ガンダムに預けた。あの水星女たちに兄さんを任せるのはとても悔しかったけれど、辛い記憶から遠ざかって、新しい手足を得て、兄さんが平和に生きられればそれが一番だ。
兄さんに不便な思いをさせたくはないから、ミオリネを経由してこっそりと資金を援助したり、ジェターク社の人間やジェターク寮の生徒たちに兄さんの様子を探らせて、定期的に報告させたりしていた。
その報告によると、新しい手足を得た兄さんはだんだんと以前の快活さを取り戻しているようだった。
なのに、あるときから兄さんの目撃情報がぷっつりと途絶えてしまった。今の兄さんは生徒として学園に在籍しているわけではないから、外に出ない日があってもおかしくはないけれど、これだけの長期間となるとさすがに変だ。
腕利きの部下を何人か連れて、学園に赴く。地球寮の奥の部屋で見つけた兄さんは、何もできなくなって、ベッドの上に転がっていた。地球寮には水星女の他に、悪い魔女がいたのだ。
僕たち兄弟は赤ん坊の頃から一緒に育ったわけではない。だから、こんな兄さんは初めて見た。僕の知る兄さんはいつだって責任感が強くて、恰好付けたがりで、僕を引っ張ってくれた。
でもたとえ悪い魔女の呪いで姿を変えられようとも、兄さんは兄さんだ。無理に呪いを解こうとして、兄さんが辛い思いをするのも嫌だ。だからせめて、兄さんがこれ以上悪い人に誑かされないように、僕の知らないところで何も起きないように、もう手放さないようにしよう。 - 3二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 17:24:38
「…ん」
地球寮から連れ出すときに怖がってぐずっていたので、薬で眠らせていた兄さんが目を覚ました。
「兄さん、おはよう。僕だよ、ラウ…」
「とうさん…」
兄さんがまだ混濁とした目で僕を見て、呟いた。
「とうさん、おはようございます…」
「っ…!」
兄さんは僕のことを父さんだと思っているようだ。確かに僕の瞳の色は父さんとそっくりな琥珀色で、僕が今着ているスーツも父さんが着ていたものと同じデザインで、今の僕は若い頃の父さんによく似ていた。
「とうさん、どうかしましたか…?そういえばにかは…」
あの魔女のことは覚えているのに、僕のことはわからなくなってしまったのか。とても悲しくて泣いてしまいたくなる。でも、駄目だ。兄さんのことを一番に考えないと。僕はどうしたらいいだろう。
「あの女とはもう会わせないぞ。今日からお前の面倒は俺が見る」
考えがまとまるよりも先に口が開いた。いつもより低い、威圧的な声。父さんにそっくりだ。
確かに、今の兄さんは父さんが目の前にいると思い込んでいる。そこに僕はラウダなのだと、父さんはもう死んでいるのだと現実を突きつけたら、兄さんはまた苦しむことになるだろう。たとえ偽りだとしても、兄さんを安寧の中に置いておけるならこれが一番いいのかもしれない。
「え…」
「どうした。俺に口答えをするのか」
「いいえ、なんでもありません…」
ごめんなさい、兄さん。こんなにひどいことを言ってしまって。でも優しい言葉で諭して、あなたが違和感を覚えてしまったら、真実に気が付いて傷ついてしまったら嫌だから。赦して欲しいとは言わないよ。ただ、せめて心の中では謝らせて。 - 4二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 17:27:29
「終わったぞ、寒くはなかったか?」
「…?はい」
「そうか。ならいい。心地が悪くなったらすぐに言うんだぞ」
兄さんがきょとんとする。普段僕たちのことを気遣っていなかった、気遣っていたとしても決して表には出さなかった父さんがこんなことを言ったら、驚くのも無理はない。
「グエル、すまなかった。俺がお前のことをよく見ていなかったばっかりに、お前を辛い目に合わせてしまった。せめて、このくらいはさせてくれ」
どの口が、と思う。もし父さんがこの台詞を言ったとしたら、僕は怒りに震えただろう。でも兄さんを誤魔化すためにはこう言うしかなかった。
「…ありがとうございます、とうさん」
兄さんが少しこそばゆそうな顔をした。僕がどれだけ兄さんのことを気にかけてもそんな表情はみせてくれなかったのに。
「そうだ、らうだは…らうだはぶじにしていますか…?」
唐突に僕の名前が出る。必死に動揺を隠して、会話を続ける。
「ラウダか?元気にしているぞ」
「よかった…。とうさん、らうだにもやさしくしてやってください。おれのせいで、あいつはじぇたーくのりょうちょうも、けっとういいんかいもやらなきゃいけなくなって、たいへんなんです。らうだはしっかりしてるけど、さびしがりなところもあるから…。おねがいします…」
兄さん…、僕のことそんな風に思ってたんだ。兄さんの前では努めて冷静に、理性的に振舞っていたつもりだったんだけど、ばれていたんだね。兄さんには心配を掛けたくなかったんだけどな。でも、兄さんが僕のことを心配してくれたのは、正直結構嬉しい。
「そうか…、わかった。お前がそう言ったことを知ったら、ラウダも喜ぶだろう」
以前よりも伸びて、顔にかかるようになった桃色の前髪をそっとかき上げるようにして額を撫でると、兄さんはくしゃっと笑った。
「ありがとうございます!とうさん」 - 5二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 17:36:49
「グエル、首は楽にしてていいと言っただろう?」
ある日の朝、兄さんに朝食を食べさせた僕は兄さんの髪の手入れをしていた。ベッドの背を起こして、そこから僕が片腕で兄さんの首を支えて持ち上げるようにして空間を作ってやっていたのだけど、兄さんはなかなか素直に体重を預けてくれなかった。
「はい…こうですか?」
「ああ、それでいい。痒い所があったら言うんだぞ」
僕の方から促すと兄さんはやっと首の力を抜いてくれた。筋力が落ちてしまった今の兄さんでは、自分の頭を支えるのも大変だろうに。
兄さんのふわふわとしたたてがみのような髪をコームを使って丁寧に梳かしていく。もともと兄さんは襟足の部分を伸ばしていたけれど、今は髪全体が長く伸びてなんだか女の子みたいだ。
そういえば、初めて会った頃の兄さんも中性的な雰囲気だった。まだ二次性徴が来る前だったから線も細くて、あの時の僕はただただ綺麗な人だなと感嘆していた。そして兄さんは妾の子である僕を受け入れてくれるような心の広さも持っていて、僕はそんな人と家族になれるのが嬉しくって、兄さんの弟であることが誇らしかった。
でも背負うべきものが一つ増えたせいだろうか、あるいは成長して求められる責任が大きくなったせいだろうか、あれからすぐに兄さんの表情は険しくなっていって、風貌も男らしく力強い物へと変わっていった。僕も兄さんの助けになりたくていろいろと頑張ったけれど、兄さんは僕に感謝こそすれど、自分から頼って甘えてくれることはなかった。だから僕は兄さんのすべてを包み込んで安心させてくれるような朗らかな笑顔が暖かくて大好きだったけれど、同時にすこし寂しくってちょっとだけ嫌いだった。 - 6二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 17:38:02
「どうだ?気持ちいいか?」
「…ん…、はい…」
今兄さんは僕の…いや、父さんの腕の中で、人懐っこい猫のようにブラッシングされていた。僕がずっと憧れていたような光景だった。ずっと父さんのことが羨ましかった。でも父さんはもういない。今兄さんのそばにいて、兄さんの世話をして、兄さんを甘やかしてあげられるのは俺だ。
スーツの中で電話が鳴る。
『ジェタークCEO、そろそろお時間です』
「わかった。すぐに行く」
電話を切って、グエルの体をもとの寝やすい位置へと戻す。
「仕事の時間だ。グエル、一人でお留守番できるか?」
「はい、だいじょうぶです…」
「いい子だ。何かあったらすぐに呼ぶのだぞ」
グエルの額にそっと唇を落として、しばしの別れを惜しむ。そして俺はベッドに背を向けると、ツカツカとした足取りで部屋を出た。 - 7二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 17:42:48
これでおしまい
あと>>1に上げたスレはグエルがニカに下のお世話(性的じゃない方)をされる描写が滅茶苦茶がっつりあって、超閲覧注意なので気を付けて
- 8二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 18:02:17
乙!ニカ編ラウダ編どちらもこの先救いがなさそうな倒錯的な雰囲気がよかったわ
- 9二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 18:09:15
良かったです少し余裕が出たら健康のためにリハビリさせるのかな
- 10二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 18:17:49
- 11二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 23:09:03
1乙ー。前スレ落ちてて気になってたので読めて嬉しい
気遣われて喜びより先に驚きが出てくる辺りがかわいそかわいくて良かった - 12二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 23:37:49
ラウグエルートとして投稿されるのめちゃくちゃありがたいです!!ありがとうございます
- 13二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 11:03:34
- 14二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 15:45:32
だいぶ早いが保守
- 15123/01/30(月) 00:46:30
グエル視点のおまけ
「帰ったぞ、グエル」
「おかえりなさい。とうさん」
とうさんがかえってきた。
「今日も遅くなってしまったな。大丈夫だったか」
「はい!」
とうさんはさいきん、かえりがおそい。やすみじかんのたびにきてくれるから、おれはさびしくなんかなかった。でも、とうさんのかおはなんだか、つかれてるようにみえる。
「そうか、グエルはいい子だな。今おむつ替えて綺麗にしてやるからな。それが終わったら夕食にしよう」
とうさんがおまたをきれいにしてくれた。おゆであっためたふきんでふいてくれるから、ぽかぽかしてきもちいい。とうさんはどんなにいそがしくても、おれのことをよくしてくれる。
おれもとうさんになにかしてあげたいけど、いまのおれじゃごはんをつくることも、かたをたたくこともできない。どうしよう。 - 16123/01/30(月) 00:46:52
「終わったぞ。いま食事の用意をするからな」
あとかたづけをしたとうさんがもどってきた。
「ありがとうございます。とうさんもつかれてるのに…」
「何を言っているんだ。俺はお前の傍にいられるだけで嬉しいんだぞ」
とうさんはそういって、おれのあたまをなでてわらった。そうか、それなら…
「とうさん、かおをよせてくれますか?」
「どうしたんだ?」
「もっとちかくがいいです」
「わかった、こうか?」
とうさんのこはくいろのひとみが、おれをうつす。
くびをぐっとあげて、おでこをとうさんにすりよせる。とうさんはちょっとだけびっくりし
て、でもうれしそうにわらってくれた。
「ふふ…、ありがとう、グエル。元気が出たよ。もう一度やってもらってもいいか?」
「はい!もちろん」
こんどはとうさんもおでこをおれによせてくれた。かみがあたってくすぐったい。とうさんってこんなにまえがみ、ながかったっけ。
でも、とにかくあったかくて、ぽかぽかして、なんだかしあわせだ。らうだもこんなふうによくしてもらってるといいな。いまのたよりないおれじゃ、あえないけど、とうさんがいるなららうだもきっとだいじょうぶだ。 - 17二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 09:46:48
グエル視点ありがとうございます!
- 18二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 20:35:53
ほしゅ
- 19二次元好きの匿名さん23/01/31(火) 01:55:17
ほしゅ
- 20二次元好きの匿名さん23/01/31(火) 06:54:39
ほしゅ
- 21123/01/31(火) 17:12:13
おまけ2
「グエル、今日はお前にプレゼントがあるぞ」
そういって、とうさんがおれのよこになにかをおいた。
ひとのあたまくらいのおおきさの、ちゃいろい4ほんあしのけもの。あたまはこげちゃのもふもふでおおわれている。
らいおんのぬいぐるみだ!
「とうさん、これは?」
「最近お前が気に入ってよく観ているライオンの双子の動画があっただろう?動物園のサイトを見たら、あれのぬいぐるみがあったから注文したんだ」
ふたごのぬいぐるみなんだ。でもおれのよこにいるのは、いっぴきだけ。
「じゃあもういっぴきは…」
「学園にいるラウダに贈ったぞ。兄さんとお揃いだと喜んでいた」
やっぱり!らうだとおそろい、おれもうれしいな。 - 22123/01/31(火) 17:12:37
「とうさん、ありがとうございます!」
「ああ。喜んでもらえて俺も嬉しいぞ」
よこにいるらいおんをよくみた。ちゃいろいめをした、かわいいこだ。でもおれにはうでがないから、だきしめてあげられないや。
「そろそろ寝る時間だぞ。今日はこいつとも挨拶するか?」
「はい!」
とうさんがらいおんを、かおのそばによせてくれた。いつもとうさんにしてるようにおでこをすりよせる。そのあととうさんとも、あいさつをした。
「おやすみなさい、らうだ、とうさん」
「ああ、おやすみ。グエル」
とうさんはおれがねるまで、とんとんとかたをなでてくれた。 - 23123/01/31(火) 17:13:08
グエルが眠りに就いたのを確認して、自室に戻る。そして俺は…僕に戻る。
兄さんが喜んでくれて良かった。ぬいぐるみを渡したときの兄さんの顔を思い出して感傷に浸る。
寝る準備を手早く済ませてベッドに腰かける。そこには、双子のライオンの片割れがいた。
僕たちはこの子たちとは違って双子ではないけれど、兄さんは僕のことをずっと実の弟のように見てくれていた。ライオンの動画も「むかしのおれとらうだみたいだ」と言って気に入っていた。
「ふふ、さっきの兄さん、可愛かったな…」
ぬいぐるみを抱きしめてベッドに潜り込む。綺麗な青い瞳と目が合った。
「おやすみなさい、兄さん」
僕はライオンの額に唇を落として、目を閉じた。 - 24二次元好きの匿名さん23/01/31(火) 21:26:11
最高です
- 25二次元好きの匿名さん23/02/01(水) 07:49:53
兄さんには茶色弟には青の瞳のライオンいいな
- 26二次元好きの匿名さん23/02/01(水) 09:13:34
ラウダはもう自分としてグエルに会うことはできないのかな 泣けるけど本人は穏やかそうだな
- 27二次元好きの匿名さん23/02/01(水) 20:09:09
一話のときの狂う前の兄さんより幸せそうだからな