普段は仲が良いんだろうけど

  • 1二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 21:50:41

    『ライバル』のことになると二人揃って湿気るから部屋にキノコ生えないか心配になる

  • 2二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 21:52:01

    !!!!!!

  • 3二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 21:52:38

    >>2

    カビ生やす人はお帰りください

  • 4二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 21:59:02

    りゃいあん挟んで除湿しないと・・・

  • 5二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 22:00:31

    >>4

    ライアンもマックイーンに対して…その…

  • 6二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 22:01:56

    >>5

    ライアンは若干湿るけど爽やかに努力して立ち向かっていくから……

    セイちゃんもギリギリまで足掻くし

  • 7二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 22:05:00

    ダービーでスぺちゃんに負けて泣きながら帰ってきたセイちゃんと、怪我でダービーのブライアンに挑むことすらできなかったローレル

    ローレルは気遣って慰めようとするのだけれど、自分が走れなかったレースにセイちゃんは出走して最後まで戦ってきたという感情が喉を詰まらせる

    セイちゃんもローレルの過去を知っているので何も言えない……そんな2人の部屋に突然放り込まれるあにまん民!!

  • 8二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 22:07:53

    >>7

    おれに…どうしろというのだ……

  • 9二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 22:09:01

    >>7

    そこはダークライに任せるべきだと思われるが…

  • 10二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 22:09:40

    やっぱアイネスに届かなかったけど持ち込まないルールで爽やかで健全な関係を築けてるりゃいあんはこの場に関しては除湿機として割りと優秀なのでは?

  • 11二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 22:09:56

    何でもかんでもダークライさんに頼るのやめーや

  • 12二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 22:10:03

    >>7

    セイちゃんは多分その日部屋には戻らないしローレルさんもいつものことだから見逃す、ゆえにあにまん民の排除だけすればいい説を推す

  • 13二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 22:10:37

    >>7

    なんとか慰めようとするローレルが地雷を踏んでセイちゃん激昂

    そのまま部屋を出ていっちゃって残されたローレルがめちゃくちゃ泣きそうな顔しているも追加で

  • 14二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 22:10:40

    セイちゃんは皐月で勝ってるし菊花で雪辱も果たしてるじゃない

  • 15二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 22:11:21

    >>10

    ダービーの後に入院してしまったため戻らずそのまま事実上の一人部屋になってしまったライアンが菊花賞の後何を思うかということについていつも考えるけど結論は出ない

  • 16二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 22:13:03

    >>13

    どっちかというと負けたばかりの冷静じゃないセイちゃんが地雷を踏んじゃって

    でも大人なローレルは「そうだよね、あなたは立派に走ったんだから……」と

    とても切なげな眼で受け止めてあげる絵の方が美しい


    セイちゃんはとても悔しい思いをしたはずのローレルに酷いことを言ってしまったとドンテンスカイになるんだ

  • 17二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 22:29:11

    二人ともライバルに対して重いけど重さの形が違うから微妙にかみ合わせ悪そう

  • 18二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 22:35:20

    最近知ったんだけどロブロイのファン感謝祭で一緒に登場したんだってねこの2人
    そこでお互いの呼び方とか判明したのかな

  • 19二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 22:35:42

    (ノック音)

    セイちゃん、聴こえる? ……聴いて、くれるかな。
    私は――あなたの気持ちを、本当にはわかってあげられないのかもしれない。
    クラシックを棒に振ってシニアでやっと走れるようになった私と……
    クラシックで二冠に輝いたあなたでは色々違うって、わかってる。

    (衣擦れ。部屋の中でセイウンスカイが首を振っている、おそらく布団に顔を埋めたまま)

    でもね。それでも、短くない時間を同じ部屋で過ごしたあなたが落ち込んでいるのは見ていられないの。
    あなたは自分の才能を疑っているかもしれないけれど、クラシックの冠は偶然で取れるものじゃない。
    ましてあなたが、天才だって言っているライバル相手から……私はそれが心から、羨ましかった。
    でもね、信じてほしいの。妬ましいだけじゃなくて、そんなあなたと同室でいられて誇らしかった。

    ……私ね、次のレースは海外なんだ。いよいよ凱旋門賞に向けて、旅立つつもり。
    同じ春の天皇賞を走った仲、なんて言って受け入れてくれるかはわからないけれど。
    精一杯走ってくるから、セイちゃんも見ていてくれないかな?
    負けちゃった子同士でもこれだけやれるんだって……あなたに見てもらいたいんだ。

    ずっと夢だった凱旋門賞。自分の為だけに走るんだって思ってた。
    でも、追いかけたいライバルができて――背中を見せたいお友達だってできた。
    セイちゃん、あなたは私に力をくれたの。だからどうか、恩返しの機会を頂戴?

    ……それじゃあ、行ってくるね。セイちゃん。
    あなたがまたレースを面白く感じられるように元気いっぱいに駆けてくるから――。

    ――それはセイウンスカイが釣果を見失った最中に交わされた約束
    ――サクラローレルが競技生命を失う以前の、最後の会話だった

  • 20二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 22:57:19

    救いは……救いはないのですか……?

  • 21二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 23:01:07

    どうして二人の一番きつい時期を同時期に合わせたんですか・・・救いは・・・

  • 22二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 23:13:02

    05月某日 春の天皇賞 サクラローレル2着、セイウンスカイ3着
    08月22日 札幌記念  セイウンスカイ1着



    09月14日 フォア賞  サクラローレル8着



    10月31日 秋の天皇賞 セイウンスカイ5着

  • 23二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 23:13:50

    >>8

    待てよ

    ウマ娘のアニマンミン/アニマンタミちゃんかもしれないだろ

  • 24二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 23:15:51

    せっかく札幌記念で勝ったセイちゃんの足を引っ張ってしまったと気に病むローレル!

    ローレルの言葉のおかげで札幌記念に勝てたと示したかったのに秋天で負けるセイちゃん!

    やっぱり私のせいなんだともう動かなくなった足を抱えて泣き咽ぶローレル!

    違うと主張したかった矢先に自分も怪我をして動けなくなるセイちゃん!

    そこにケア役として放り込まれるあにまん民!!!

  • 25二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 23:21:08

    待って、これ

    セイちゃんのラストランが「ローレルのためにも」と1年半かけてリハビリして出走した2人の思い出の春天での大敗エンドに

  • 26二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 23:22:17

    >>25

    酷すぎる……競馬神はもう朽ちろ

  • 27二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 23:34:10

    し、史実と同じこと繰り返すだけならウマ娘世界に転生した意味ないし
    違う結末があると信じようぜ

  • 28二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 23:46:26

    『第123回、伝統の天皇賞……今スタートしました』
    『春雨を切り裂くようにしての先行争いは、セイウンスカイが行った!』

    その名がマイクに乗った時、確かに少なからぬ観客が反応した。
    かつて黄金世代の一員としてターフを駆けた、芦毛の二冠ウマ娘。
    彼女の名前は、間違いなく記憶されていた。

    ここに至るまでに彼女が辿った道のりは、平坦とは程遠いものだった。
    同期との才能の差に絶望して引きこもりかけた。

    ――セイちゃん、あなたは私に力をくれたの。だからどうか、恩返しの機会を頂戴?

    そう励ましてくれた同室の友人は、海を越えた先で競争能力を失った。
    そして自身は、次のレースで敗北を喫し……自らも重い怪我を負った。

    ――ごめんなさい。私が、私があんなものを見せたから……?

    タイミングが重なっただけだ。その言葉が、友人に届くことはなかった。
    代わりに届く何かはあるか……悩み抜いて出した答えは、ウマ娘の本能に根差すもの。
    もう一度走って、他ならぬサクラローレルの言葉で立ち直ったと示してみせる。
    セイウンスカイは地獄のリハビリに身を投じ、ターフへと戻って来た。

    (いやあ、柄にもないことしちゃってますね)

    内心自嘲しつつも、かつて見せた逃げを敢行しようとするトリックスター
    ……だが、ハナを主張できたのは最初のコーナーに入るよりも前までだった

    「……な!?」

  • 29二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 23:55:16

    『しかし先頭は9番に代わるか? 9番とセイウンスカイ、この2人の先頭争い』

    かつて皐月賞、菊花賞といった大舞台でレースを支配してみせた指定席は早々に奪われる。
    相手は直近のステーヤーズSで2着に入っているとはいえ、重賞未勝利のウマ娘だ。
    その相手ですら、もはや全盛期を過ぎた脚では抜き返すことができない。

    「……くっ!」

    それでも、セイウンスカイは諦めなかった。
    だってもっと酷い状況で、最後まで走り抜いた友人の姿を知っているのだから。
    腱がちぎれる激痛の中でも最後の最後まで夢を追い続け……自分を励まそうとしてくれた。
    そんなサクラローレルの姿を目に焼き付けた自分が、諦めるわけにはいかない。

    『さあ、そしてちょうど1000mを通過。58秒5!』
    『前を行く2人はかなり速いペースで飛ばしています、セイウンスカイと9番です』

    逃げウマ娘が勝ちたいなら、スローペースに落として足を残すのが定石。
    それが叶わないなら緩急をつけて幻惑を……。

    『テイエムオペラオーも外へ、ナリタトップロードも動いた!』

    その目論見は叶わない。背後からは、新世代のウマ娘たちが追ってくる。
    同期のグラスワンダーに引導を渡した後輩たち。彼女たちがそんなペースを許さない。

    『ナリタトップロード、テイエムオペラオーの前に出て行きました!』

    実況はもはや、そんな新世代の走りばかりを伝えている。
    観客たちの声援も……自分が先頭を走っていた区間とは比べ物にならない大きさだ。

  • 30二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 00:08:29

    『大歓声、10万人を超える大歓声であります!』

    その声はもはや、黄金世代の生き残りには向けられていなかった。
    6桁を誇る観客たちは、覇王世代のライバル関係に夢中なのだ。

    『さあ第1コーナーで、テイエムオペラオーはナリタトップロードの内の方へ入りました』
    『あるいはナリタトップロードは、オペラオーを内に封じ込める作戦なのか?』

    アタシを見ろ、と同期で最も賑やかなエルコンドルパサーはかつて言った。
    サクラローレルが出走できなかった凱旋門賞で、世界一まであと一歩まで迫った友達。
    彼女のような主張をするならば、あれくらいの走りを見せたい。見せたい、のに。

    『それからメイショウドトウ、エアシャカールが続いているっ』
    『1コーナーから2コーナーへ淡々とペースを作っている先行2人でありますが、ここで先頭は9番――』

    ぴったりと体を合わせて併走してみても、隣のウマ娘を抜くことができない。
    後ろを惑わすほどの存在感を放つこともできない。脚は重く、肺は今にも破れそうだ。
    注目の新世代にまだつけているはずの10バ身の差が、信じられないほど心許ない。

    『さあゴールまであと1000メートルであります、先頭は依然として9番とセイウンスカイ』

    久しぶりに、彼女の名前が呼ばれる。だがそれは、前振りに過ぎなかった。
    彼女を呑み込まんとしている世代交代の波が、どう動いているかの枕とされて。

    『そしてこの2人を吸収するように、ナリタトップロードが行った!』

    『そして、そしてテイエムオペラオー!』

  • 31二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 00:16:09

    「うあああああああああ!」

    セイウンスカイの悲痛な絶叫は、もはや何の効果も示さなかった。
    かつてダービーで策を破られて流した涙と、今の涙は重さが違う。

    心の底から悔しかった……あんな悔しさはもう二度とないだろうと、何も知らない頃は思っていた。
    でもあの後は、菊花賞でさらなる策でやり返すことができた。
    天才スペシャルウィークに一矢報いて、変わらぬライバル関係を誓ってもらえた。

    でも、彼女に届くことはもうなかったのだ。やり返そうにも、彼女はとっくに引退している。
    もうターフにはエルコンドルパサーもいない。グラスワンダーもいない。
    ツルマルツヨシも……キングヘイローも、いない。

    今残されているのは、スタンドで待ってくれている同室の友人だけ。
    何年も前に走れなくなって、怪我のせいで自分を傷つけたと思い込んで、心がターフに囚われている彼女だけ。

    もう、何度も走れるような足じゃない。
    2人で走った思い出の春の天皇賞で、もう大丈夫だって証明したい。
    そう誓って、1年半も頑張って来たのに……!

    「待てよ……待てよおおおおおおおおおおおおおお!」

    その叫びが誰に向けられているのか、発声している本人にすら定かでない。
    だが無情にも後続のウマ娘は、セイウンスカイをもう1人の逃げウマ娘ごと追い抜いて行く。
    皆が見据えるのは、当然ただ1つのゴール板。

    無残にも、と形容したくなるほど後退する元トリックスターが顧みられることはない。

  • 32二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 00:27:33

    『外から、外からナリタトップロード! これを追ってテイエムオペラオー!』

    もはや実況音声すら、最後方へ流れて行く少女の名を呼ぶことはなくなっていた。
    10万人の観客たちの大歓声が、最終直線を駆ける新世代だけに降り注ぐ。

    『テイエムオペラオー、王座は譲らない! テイエムオペラオー来た!』

    かつて、黄金世代と呼ばれたセイウンスカイたち。
    人々はG1級ウマ娘が幾人もターフに集った光景に見惚れて、声援を送った。
    あの頃と変わらない光景。あの頃と何も変わらないトゥインクルシリーズ。

    『テイエムオペラオーか! ナリタトップロードか!』

    ただ、その声援の向かう先だけが違う。
    自分たちではない世代のライバル関係に人々は興奮し、無我夢中で声を張り上げる。

    もう、届かない。
    グラスワンダーに引導を渡したテイエムオペラオーにも。あの日のスペシャルウィークの幻影にも。
    それどころか、同じ潰れた逃げウマ娘である9番の少女にも。誰にも、届かない。

    『テイエムオペラオー! 外からメイショウドトウー!!』

    素晴らしいレースだった。新世代のライバルたちが競い、明暗を分けた。
    人々は勝者であるテイエムオペラオーを称え、敢闘したメイショウドトウやナリタトップロードを労った。

    「……う゛あああああ、あ゛ああああああっ」

    湧き立った観客席の中でもはや、最下位でゴールするなりターフへ突っ伏したセイウンスカイに目を向ける者はいない。
    泣き崩れてしまったサクラローレル以外には……こんな姿を1番見せたくなった友人以外には、誰も。誰、も……。

  • 33二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 00:30:09

    誰一人





                  「わ゛あああああああああああああああああああああああ!」





    いなかった。



    セイウンスカイの引退が発表されたのは、その夏のことだった。

    もはやもう一度札幌記念に挑む力は、彼女に残されていなかったのだから……。

  • 34二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 00:46:10

    むり、吐く

  • 35二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 00:52:21

    ちょっと競馬神に審議ランプ叩きつけてくる

  • 36二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 01:01:27

    救いがなさすぎてさぁ(震え声)

  • 37二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 05:00:33

    今日月曜日なんだけど……死んだ目で出勤しろと言うのか……

  • 38二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 06:49:14

    朝だよ
    ほら
    目覚まし時計はよ

    はよ!!!

  • 39二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 07:12:31

    >>9

    2人に悪夢で苦しんで氏ねと?

  • 40二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 07:18:37

    >>4

    今日出るシナリオ次第ではとんでもなさそう

  • 41二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 07:21:47

    このレスは削除されています

  • 42二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 07:22:03

    まーた文豪が評価高いし愛がないと書けないメンブレ怪文書書いてる......

  • 43二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 07:34:04

    このレスは削除されています

  • 44二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 07:55:53

    同期もみんな引退して、ターフに残り続けてたのが逃げのセイちゃんだったのがまた…儚い…

  • 45二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 08:14:01

    助けてフラワーマヤマーベラス

  • 46二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 08:27:16

    枯れてしまった花は助けられない
    かける言葉がないってわかっちゃう
    いくらなんでもマーベラスとは言えない

    10代の女の子にはあまりにも…

  • 47二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 08:29:03

    情景がすっと思い浮かんでくる素晴らしい文章だ…
    だけど脳が半壊した

  • 48二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 08:54:01

    こうやって絶対に勝ちたかったレースでボロ負けして折れる子が山のようにいるんだろうな、トレセン学園……

  • 49二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 10:02:33

    姉貴とオペの部屋は割と大丈夫そうだな、ほぼ連対か勝ってるかでコケても掲示板外してないから不甲斐なさとかは無いだろうし

  • 50二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 12:29:32

    ちょっと横になるどころじゃ済まないだろこれ……

  • 51二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 21:04:09

    ちょっと今から晴らすんで、目覚まし時計を貸してくれ

  • 52二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 21:34:49

    <ジリリリリリリリ!>


    「ああああ! ――うぁ?」


    …………夢を見ていた。とても、辛い夢だった。

    寮の相部屋で過ごした友だちに自分は大丈夫だと伝えようとして、大敗した夢。

    肩で息をしながら起き上がると、姉のようなルームメイトはタオルを差し出してくれる。

    ……まだ不自由さの残る足を懸命に動かして、全身の嫌な汗を拭ってくれる。


    「よかった、ひどく魘されていたから」


    いつものように手を合わせて気遣ってくれるもう一人の部屋の主……サクラローレル。

    ただかつてはそれとセットだった、桜の花弁のような笑顔は久しく見られていない。

    代わりに物悲し気な、痛みすら覚えそうな寒波が美しい顔を陰らせていた。


    「……ねえ、やっぱり辛いんじゃないの?」


    その影が晴れないのは、自分――セイウンスカイに原因がある。

    自分の才能を信じられなくなって、折れてしまった。

    励まそうとした彼女は、異国の地で二度と全力疾走できない体になった。


    そう言えばルームメイトは、間違いなく否定してくるだろう。

    あんな怪我を見せたせいであなたの調子を崩したと……。


    「にゃはは、全然? セイちゃんはやりたいことしかやりませんのでー?」


    代わりにできることを探して、唯一見つけた道は走ること。

    走って、ルームメイトの「せい」ではなく「おかげ」だと証明すること。

    夢の中と同じ。そしてこのままでは、同じ結末を辿る道。

    セイウンスカイは悪夢を思い返し、一つの覚悟を固めた。

  • 53二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 21:52:11

    「復帰後のローテかい? そうだね、春天を目標にしてその次は宝塚を考えてる」
    「スカイの人気を考えれば間違いなく選ばれるよ、そこは自信を持って――」

    セイウンスカイからこれからのことについて尋ねられ、トレーナーは嬉々として語りだした。
    現役中は釣りだ昼寝だとトレーニングから抜け出していた自由気ままな子だったというのに
    満足に走れなくなり、過去を悔いながら地獄のリハビリに身を投じる姿を間近で見る日々。
    そんな中で、やっとレースを楽しみに考えるようになってくれたのか――
    そう思えば自然と口も軽やかになり、様々なG1タイトルを挙げようとしたのだが。

    「いやいやトレーナーさん、そこまで頑張っちゃうのはセイちゃんらしくないですよぉ」

    それこそ、怪我以前の彼女なら言いそうなことだった。だが、今になって?
    引退でもおかしくない状態で歯を食い縛って続けて来た少女らしからぬ物言いを、トレーナーは訝しむ。
    もしや、痛苦に耐えられなくなったのだろうか……だとしても責められない、いやしかし。

    ――セイウンスカイが直後に見せた表情は、そんな葛藤をも吹き飛ばすほどだった。
    飄々とした猫のような笑顔でもない、その内にあると知っている負けず嫌いな面でもない。
    只々、覚悟を決めた眼がそこにある。

    「春の天皇賞さえ走れればいいんだ……だから、ピークを全部そこに合わせてくれませんかね?」

    究極仕上げ。ダービーに全てを賭けるようなウマ娘が使う手だ。
    あるいはこれがラストランと決めた、引退するウマ娘のそれ。

    「……良いのかい? 君は1年以上のリハビリを全てそこに捧げて、それきりになるかもしれないんだよ?」

    最終確認をするトレーナーは、しかし、止める様子は見られなかった。
    覚悟の程を、最後の頷きをもって確かめるためだけの問いかけ。
    首が縦に振られたあとは、2人の間に余計な言葉など1つもなかった……。

  • 54二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 21:58:56

    そして、セイウンスカイはターフへと戻ってきた。
    あの悪夢の……なんて呼び方を、彼女は決して認めない。

    ここは、このレースは、ルームメイトと走った思い出のG1タイトルなんだ。
    だから復帰の舞台として選んだ。他のどれでもない、このレースを勝つために!

    『第123回、伝統の天皇賞……今スタートしました』
    『春雨を切り裂くようにしての先行争いは、セイウンスカイが行った!』

    苦手だったはずのゲートに臆することは、もはやなかった。
    あの夢の中のようにスルスルと上がって行き、ハナを主張する。

    やっと指定席へ戻ってきたという感傷に浸る暇などないことは、あの夢が教えてくれた。
    艱難辛苦を乗り越えここまできたというのに、なんて酷な話だろう。

    同期との才能の差に絶望して引きこもりかけた。

    ――セイちゃん、あなたは私に力をくれたの。だからどうか、恩返しの機会を頂戴?

    そう励ましてくれた同室の友人は、海を越えた先で競争能力を失った。
    そして自身は、次のレースで敗北を喫し……自らも重い怪我を負った。

    ――ごめんなさい。私が、私があんなものを見せたから……?

    違うんだ。他ならぬサクラローレルのおかげで今の私があるんだ。
    そう叫ぶためにセイウンスカイは、全てを堪えた。

    そう、背後から迫って来る9番の少女に先頭を譲ることすらも。

  • 55二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 22:10:36

    『しかし先頭は9番に代わるか? 9番とセイウンスカイ、この2人の先頭争い』

    もしかしたら夢は夢でしかないかもしれない、と少しだけ本気で競ってみた。
    トレーナーさんに究極仕上げをしてもらった分だけ、頑張ればハナを取れるかもしれない。
    でも、ゴール板までそれが続くことはないだろうと感覚で理解できた。

    1年半頑張って、これなのだ。重賞未勝利ウマ娘を抜かすのにも一苦労するのだ。
    今の、黄金世代の生き残りであるはずのセイウンスカイは。

    「……やんなっちゃうよねえ、本当に」

    同期の天才たちと比べて己の才能不足を嘆いていたあの時間がどれだけ贅沢なものだったか、よくわかる。
    今の自分はあの頃より遅い。ずっと。普通にやって勝てるはずがないことを、序盤だけで理解した。
    だから。

    『あっと、9番が前へ。セイウンスカイは2番手に控えます』

    黄金世代の生き残りに注目していた少なからぬ観客は、そのアナウンスで声を落とす。
    あのスペシャルウィークやキングヘイローと渡り合った逃げウマ娘が、こうもあっさり競り負けるなんて。
    ああ、セイウンスカイは終わってしまったんだ。出走してきたのは彼女の抜け殻なのか。
    彼らはしばし感傷に浸り……彼女のレースを見届けるか、あるいは新世代の応援に移るかとばらけた。

    ターフを疾走する出走者たちはそこまで思考にリソースを割いていないが、反応自体は似たようなものだ。
    必死に追っている、しかし後輩にまるで届かない全盛期を過ぎた先輩。
    そうみなした彼女はマークから外され、先頭を行く9番の少女をきっちり捉えるべくペースが作られる。

    セイウンスカイの表情は、それはそれは苦しそうなものだった。
    その姿に胸を打たれはしても、同情で勝ちは譲れないと後続は最適と信じた動きをする。
    終わったウマ娘ではなく今を走るライバルをマークする、本来最適なはずの走りを。

  • 56二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 22:22:18

    9番の少女は競り合う相手もいなくなり、気持ちよく逃げている。
    展開は落ち着くが、あまりにスローペースでは前にばかり有利となるだろう。
                                  ・・・・・
    鈴をつけなければ……と後続が考え始めたところで、9番の少女が再び伸びた。
    いわゆる逃げ差しのつもりだろうか? それにしてはあまりに仕掛けが早い。
               ・・・・・・・・
    そうかと思えば、今度はズルズルと落ちてくる。

    一人旅になって、ペースを見失ってしまったのだろうか。
    後続は意図を読み切れなかったが、彼女との距離だけは間違えずに計り続ける。
    なにせレースは終盤なのだ、逃げ切られましたという事態だけは許されない。

    『さあゴールまであと1000メートルであります、先頭は依然として9番』

    そしてどうやら、懸念は杞憂に終わりそうだった。
    9番の少女はさらに落ちて……いや。違う、これは違う!

    前の2人を吸収するように仕掛けようとしたナリタトップロードの目が、驚愕の色に満ちる。
    王者テイエムオペラオーが、してやられたと獰猛な笑みを浮かべて追い縋ろうとする……誰に?

    『さあ9番を抜き去って行ったのはセイウンスカイ……セイウンスカイ!?』

    「……なあんちゃって」

    これ幸いとばかりに9番の少女をかわして伸びて行くのは、終わったはずのウマ娘……。
    誰だ、そんな愚かなことを言ったのは。よりにもよって黄金世代随一の頭脳派相手に油断など。

    けれども、序盤の彼女は確かにそう見えたのだ。では、今は?
    間違いない……今の背中は、そう、芦毛の二冠ウマ娘そのものだ。

  • 57二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 22:30:45

    様々なものを、捨て去った。
    次走以降の予定を投げ捨てた。久しぶりのレースで見る先頭の景色も捨てた。
    ただ1つ、勝利だけを奪いに走る。

    勝利を

    勝利をっ

    友だちの「おかげ」だという、証の楯を!

    想像よりもはるかに残されている脚に、新世代の猛者たちが驚愕する。
    ナリタトップロードも、メイショウドトウも、テイエムオペラオーでさえ読み違えた。

    9番の少女を見つめる後続の視野を考慮しながら、2番手の自分が緩急をつける。
    彼女がかかったり、落ちたりしているように見せかけながらペースを惑わす。
    そして、9番の少女自身には後ろから不定期に迫られるという重圧を与える。

    言葉にすれば、なんてことはなく聞こえるかもしれない。
    だが3200メートルの長丁場を走りながら、後続の視野まで考慮して走れるウマ娘がどれだけいる?
    これが、稀代のトリックスターの仕掛けた策。
    大物を釣り上げたとばかり、勢いづいたセイウンスカイはグングンと加速する。
    全盛期の自分なら、これで勝利は間違いなかっただろう。

    「……く、そぉ!」

    だが、頭の冴えこそ見せられても体は確実に衰えていた。
    地獄のリハビリをもってしても走りは元に戻らず、後続との差はどんどん縮まる。
    振り返る暇などないが、必要もない。覇王やライバルたちの圧はすぐそこまで迫っている。
    これまでか……夢の中と変わらない涙が流れかけた、その時だった。

  • 58二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 22:42:22

    「けっぱれえええええええええええええええええええ!」

    ……夢の中では、聴こえなかった声がした。
    振り返る暇なんてない。そして、今度こそ必要すらない。
    聞き間違えるはずもないだ。あの時の自分の心を折った天才たちの声だ。

    皮肉だな、と自嘲する。陳腐な展開だ、とも思う。気まぐれ猫は素直じゃない。
    それでも……この脚へと、身体へと、降り注ぐ声が力を貸してくれる。

    「行け、ゲホッ 行けえええええ!」
    「もうちょっとデスよー!」
    「GOGOGOGOGOGOGOGO!!」
    「行きなさい……勝ちなさいスカイさん!!」

    困っちゃいましたね、セイちゃんそういうキャラじゃないのにね。
    頭の中ではいつもの調子で笑いながらも、ライバルたちの声を背に最後の力を振り絞る。

    もう大丈夫だと見せたい友達が、観客席で待ってくれている。
    そして……無様な所なんか見せたくないライバルが、集ってくれた。
    想いを背に夢中で駆けて、駆けて、そして。

    「負けないで……!」

    最後にハナを出そうとしてくるグランドスラム達成者との、熾烈なデッドヒートの末に。
    あの時の自分を励まそうとしてくれたルームメイトの、懇願するような声に最後の一完歩を押され。

    ナリタトップロードでも、メイショウドトウでも、そしてテイエムオペラオーでもない。
    セイウンスカイは誰にも荒らされていない、真っ新なゴールへと飛び込んだ……。

  • 59二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 22:54:21

    かつて、黄金世代と呼ばれたセイウンスカイたち。
    人々はG1級ウマ娘が幾人もターフに集った光景に見惚れて、声援を送った。
    あの頃と変わらない光景。あの頃と何も変わらないトゥインクルシリーズ。

    そしてこの伝統の天皇賞で最も声援を浴びたのは、他の誰でもない。
    あの頃から怪我に苦しみ、地を這うようにリハビリを重ね、衰えてなお帰って来た……。
    ただ1人の生き残り、その人だ。

    届いたのだ。
    グラスワンダーに引導を渡したテイエムオペラオーにも。あの日のスペシャルウィークの幻影にも。
    ――そして、最も無事を伝えたかったルームメイトの心にも。

    「……ありが、とう」

    スペシャルウィークとキングヘイローに支えられ、最前列へやってきたサクラローレルは涙を止められずにいた。
    震える声で、駆け寄って来たセイウンスカイを抱きしめて……腕の中の勝者もまた、堰を切ったように泣き始める。

    「うあああああああああ!」

    素晴らしいレースだった。
    人々は敢闘したメイショウドトウやナリタトップロード、そしてテイエムオペラオーを労った。

    そして10万人の観客たちの大歓声が、稀代のトリックスターへと降り注ぐ。
    残寒など消し飛ばすような熱狂は、この日確かに凍えていた桜を再び芽吹かせた。

  • 60二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 22:57:42

    誰もが





                  「わ゛あああああああああああああああああああああああ!」




    誰もが、思い出していた。黄金世代の栄光と、そして、世界に挑んだ少女の輝きを――



    セイウンスカイの引退が発表されたのは、その夏のことだった。

    他の全てを捨てて調整した彼女にはもはや、もう一度レースに挑む力は残っていなかったのだ。

    でも、それを惜しむことはあるまい。

    そこには確かに。青空と桜のような笑顔が並んでいたのだから……。

  • 61二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 22:59:11

    晴らしたよ

  • 62二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 23:00:14

    ありがとう…ありがとう…良いものを見た……

  • 63二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 23:06:51

    辻曇らせSSからの辻晴らせSSで情緒ジェットコースター

  • 64二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 23:08:12

    いい…いい…似た表現なのに意味合いが全く変わるのが粋だべ…

  • 65二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 23:30:25

    このレスは削除されています

  • 66二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 23:57:17

    壊れた脳が癒やされていく...これが『整う』ってやつか...

  • 67二次元好きの匿名さん23/01/31(火) 00:00:11

    素晴らしい物を読ませてもらった....
    公式での絡みも楽しみだ...

  • 68二次元好きの匿名さん23/01/31(火) 00:00:13

    いい話だもん。多分どこかで似たような作風見たことあるもん

  • 69二次元好きの匿名さん23/01/31(火) 08:10:42

    覇王の(G1)常勝を止めたのがその日限りと決めた策士の一撃だったというのは、そのまま演劇の題材にできそう

  • 70二次元好きの匿名さん23/01/31(火) 08:14:32

    こういう展開も描けるのが、ウマ娘の醍醐味って感じで、素晴らしいです。良いお味です。

  • 71二次元好きの匿名さん23/01/31(火) 18:37:26

    運命を変えたのは目覚まし時計を鳴らしてからの行動と、集ってくれた仲間たち…

  • 72二次元好きの匿名さん23/01/31(火) 23:49:57

    いいもん……見させてもらった……!
    それしか言葉が出てこねぇ!

  • 73二次元好きの匿名さん23/02/01(水) 07:04:11

    このレスは削除されています

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