- 1SS書いてみたいマン21/11/11(木) 12:28:53
「三題噺的なことをして創作の練習をするところ」ってスレです
私が安価もらってSS的なものを書きます。1-3レスくらいの短いやつ。
お題三つを安価で募集します。頂いたお題三つを合体させてSSを書いてみるやつです。
前スレ
安価でSSとか練習したいスレ|あにまん掲示板昼間に立ってた「三題噺的なことをして創作の練習をするところ」ってスレが面白そうだったので私もやってみたいなーと思って立ててみました。お試しということで私が安価もらってSS的なものを書きます。1レスで書…bbs.animanch.com - 2SS書いてみたいマン21/11/11(木) 12:29:27
前スレに頂いたお題、「幻想的」「指」「背中を伝う」で書いたSSをとりあえず。
- 3SS書いてみたいマン21/11/11(木) 12:29:57
鬱蒼と茂る緑の洪水が、山間を吹き抜ける風に合わせて生き物のように揺れる。
ざあざあと葉の擦れる音が奏でる音楽を耳にしながら、木の影が生み出した光と影のまだら模様の下を歩いていた。
落ちた葉を踏みつけにして、足元を邪魔する太い根を避けながら、もうずっとこうしている。
わたしが迷子になったのだと気付いたのは、陽がまだ高かった頃だった。
今は木の陰から覗く太陽の光は、ずいぶんと陰っている。そんな気がする。
「森なんかきらい」
田舎ははじめてだったのだ。都会とはまるでちがう母の故郷で、はしゃいで森に踏み入った自分を呪う。
頼りのスマホはずっとアンテナなし。
大きな声で父を呼んでみたけれど、木が揺れる音に遮られて、遠くまで聞こえているとはとても思えない。
一度、一人きりの恐ろしさに思わず駆け出して、樹の根っこに足元をすくわれた。
転んだ時にできたのは、小さな擦り傷だけど、わたしは痛さのせいですっかりまいってしまった。
「うぅ……」
どっちに行けばいいのかも、よく分からない。
テレビとか、マンガとかでは、こういう時は川を目指すとか、高い方を目指すとか、そんなことを聞いた気がするのだけれど、たくさんの木が生い茂る森の中は、自分には段差が激しすぎて、今わたしがこの森を登ってるのか降りてるのかもよく分からない。 - 4SS書いてみたいマン21/11/11(木) 12:31:51
このまま陽が落ちたら、この森の中で一人きり、真っ暗になったらどうしよう。
そんな不安が鎌首をもたげて、わたしはぶるると背を震わせる。
その時、つん、と背中をつつく、指の感触があった。
「……えっ」
思わず振り返った。誰もいない。
すぐにそれが当たり前だと気付く。だってここは森の中だから。
でも、背中をつついた指の感触は、すごく、当たり前に、指だった。つんつんつっつく指だった。
しばらくじいっと後ろを見てみたけど、何もない。上も下も左右も。
そろそろと、背中を向けて、また歩き出す。
つんつん。やっぱり背中を誰かがつついてる。にくらしいぐらい親しげなつっつき方。
お友達でもこんなに気安く背中をつんつんしてこない。
「だれ!」
大きな声を上げて勢いよく振り向いたけど、やっぱり誰もいなかった。
でも、それはそれで、なにか思うところがあった。何かこう、頭の中でピリッと電流が走る感じ。
もう一度背中を向ける。つんつん。振り向く。しーん。
「……なるほどね!」
わたしは、振り向いたまま、指がつんつんしてきた方向に駆け出した。
すぐに木の根っこに足元をすくわれて転んだ。泣きたい。
転んだまま呻いてたら、肩のあたりを指でつんつんされた。うるさい。すぐ起きるもん。
のろのろと立ち上がって、もう一度歩き出す。 - 5SS書いてみたいマン21/11/11(木) 12:32:06
しばらくしたら、右の肩のあたりをつんつんとつつかれたので、わたしはそっちの方向に向きを変えて歩き出した。
さらに、もうしばらくしたら、次は左の肩をつんつん。わかってるから、と頷いて、わたしは森を歩いていく。
そうして陽が落ちる前に、わたしは田舎の道路に出ることができた。
もう、つついてくる指の感触はなかった。
道路をとぼとぼ歩いて母の実家まで歩いて戻ると、父がのんびりとした声で迎えてくれた。なんと父は、わたしが迷子になっていることにすら気付いてなかったのである。
ちょっとムカッとしたけれど、よく考えると恥ずかしいので迷子になったことは黙っておくことにした。
「ただいまー」
「おかえり」
「お母さんにも挨拶してきなさい」
「いいよ。さっきまでいっしょにいたから」
靴を脱いでパタパタと洗面所に向かう。
だいぶ汚れてしまったから、手洗いウガイだけじゃなくて、あちこち拭きたい。
途中に戸が開いた居間を覗き込んで、仏壇に飾ってあるお母さんの写真に、「ありがとね」と一言だけお礼を言った。 - 6SS書いてみたいマン21/11/11(木) 12:33:31