スーツ似合ってないよ｜あにまん掲示板

1二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 19:15:50

「ボクの方が絶対似合う」

　衣装合わせの最中になっても、テイオーはまだぶつぶつと文句を言っていた。
　当のテイオーはといえば数人のお手伝いに囲まれて、腰にふりふりしたリボンと肩口にレースをあしらった絢爛なドレスを着せられていた。しかし、どうにも着ているというよりも着られているその姿が、まるで七五三を不機嫌に迎えた子供のように見えてしまって、おかしくて吹き出してしまう。

「あー！なに笑ってるのさ！」
「ごめんなさい、テイオーってば子供みたいで……」

　テイオーは、ますますむくれてご機嫌斜めになる。
　感謝祭の出し物として演劇を行うことになったのだが、くじ引きで決まった配役で、私は主役の男性を、テイオーがヒロインの女性を演じることとなった。
　慣れないタキシードスーツに袖を通した時は抵抗があったが、その代わりにテイオーのこんなに面白い姿を間近で見られたのなら、この役にも価値があった。

「お嬢様の役ならマックイーンがお似合いだよ」
「今はあなたがお嬢様ですわ」

　普段はそのまま流している髪を後ろで結っている私とは対象に、テイオーはいつもの後頭部で結った髪をほどいて腰まで垂らしている。
　メイクと合わさり別人のようにも見える姿に少しだけ……ほんの少しだけ胸が高鳴ったような感覚。

「ではいきますわよ"お嬢様"」

　主役になりきり、テイオーの前で膝まづいてその手を取る。
　手の甲に口づけでもしてやろうかと芽生えたいたずら心は、まだまだ先のネタにとっておいてやろう、と顔を赤くするテイオーに満足し今は見逃してあげることにしたのだった。