(SS注意)キタちゃんの我儘?を叶える話

  • 1二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 19:00:10

    「いつも頑張っているキタサンにご褒美をあげたいんだけど、何がいいかな?」

     日常が非日常に変わる瞬間だった…なんて言うのは少し大げさかもしれないけどそう思わずにはいられなかった。
     今日は練習もお休みで少しトレーナー室でくつろいでいたときに突然トレーナーさんがそんなことを言っていた。

    「どうしたんですか?あたし何かしましたっけ?」
    「君にはたくさんのことを貰ってるのに何も返せてないのが申し訳なくてね。」
    「そんなことないのに…。」

     トレーナーさんの言葉に少し落ち込んでしまう。
     あたしもたくさん貰ってますよ…幸せという形で返せてますよ…。そんな思いを届けたくてトレーナーさんをじっと見つめる。
     
    「う…。そんな悲しそうな目で見つめないでくれ…。大丈夫だからちゃんと伝わってるから…。」

     優しいトレーナーさんはあたしの思いを真っ直ぐに受け取ってくれたみたいだ。嬉しくなってすぐに笑顔に戻る。

    「えへへ…良かったです!」
    「とはいえ悲しませちゃったみたいだからな。お詫びと言ってはなんだけど叶えられることなら何でも叶えるよ。」

     なんでも…?その言葉に嘘はないですよね?

    「そうですか…何でもですか…。」
    「き、キタサン?」

     トレーナーさんはあたしがあまり我儘を言わないからきっと大したことは言わないのだろうと踏んでいるのだ。でもその言葉を後悔することになると思いますよ?実はあたしにはやりたいことが一つだけある。

    「約束は守ってもらいますからね?」
    「あ、ああ…。」

     あたしの雰囲気がいつもと違うから少し緊張している様子のトレーナーさん。ふふふ、何も悪いことをするわけではないから安心してください。

  • 2二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 19:02:06

    「ではトレーナーさん。ソファーに座ってください。」
    「は、はい。」

     少し早足でソファーに歩きだしてドスンと座るトレーナーさん。それを確認してからあたしもトレーナーさんの目の前まで移動する。
     あたし自身も少し早足になってるのは緊張しているのかそれとも…。ドキドキする鼓動を無視してトレーナーさんに辿り着いた。

    「つ、次にあたしがトレーナーさんに座ります!失礼します!」
    「き、キタサン?」

     荒ぶっている尻尾を抑えつつ後ろを向いてゆっくりとトレーナーさんのお膝に座る。
     少し硬いけど座り心地は悪くない…。むしろあたしとしてはこれ以上ないくらい最高のものだ…。
     って何を失礼なことを考えてるのあたし?それにこれからが本番なんだよ?
     さっきよりも速くなる鼓動はあたしを変な風に考えさせてしまうみたいだった。

    「で、では!トレーナーさん!あたしを抱きしめてください!!」
    「キタサン!?」

     よ、よし!言えた、言えたよ!
     あたしがやりたいことっていうのは後ろから抱きしめてもらうことだった。
     始まりはダイヤちゃんがやってもらって凄く良かったと言っていたこと。それにスイープさんも妙な反応をしていたことであたしもやりたいと思ったのだ。
     で、でも座るだけで結構ドキドキするんだけど…。ダイヤちゃんは何でこれを平気そうな顔で良かったなんて言えたのかな?それともあたしが気にし過ぎなだけなのかな?
     どんどんと全身が熱くなっていき目もチカチカしてきた。

  • 3二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 19:04:23

    「これは本当にやっても大丈夫なのか?でも抱きつく娘って結構いるからそういうものなのか?」

     近くにいるはずのトレーナーさんの声があまり聞こえなくなってるけどそんなことを今のあたしに気にする余裕はない。
     何がふふふ後悔しますよトレーナーさんだ。よくそんな余裕そうなこと言えたものだ。そんな余裕今のあたしには全然ないよ!安心しろ?できないよ!
     後悔はしてないし今のままで幸せだけどこれ以上があるなんてあたし耐えられる気がしないよ!これ以上?これ以上って何?そんなこと存在しちゃうの!?あたし胸が張り裂けちゃうんじゃないの?!助けてダイヤちゃん!!スイープさん!!

    「いや担当の願いを叶えるのがトレーナーだ!迷うことなんて何もない!覚悟を決めろ!」

     なに?なにか言ってるけどわからないよ!どうしようどうしよう!?体が熱くて仕方ないよ!どうすれば体を冷ますことができるんだっけ!?えっとアイスを食べたら体は冷えていくよね。そうだアイスを食べよう!確かアイスは向こうにあったような気がする!
     グルグルと回る目のままあたしは立ち上がろうとしたとき何かがあたしを縛ろうとしてきた。

    「なに!?なに?!なんなの!?!」
    「これでいいか!キタサン!」

     縛り付けようとするものの正体はトレーナーさんだった。というかトレーナーさんの腕だ…。そうだったあたしが頼んだことだった…。あはは…。
     正気?に戻ったあたしは落ち着かせようと目を閉じてみる。うん…胸の鼓動が相当うるさい……。このまま落ち着くなんてできるのかなぁ?

  • 4二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 19:06:16

    「いて……。」
    「ど、どうしましたかトレーナーさん!」

     落ち着かないまま座り続けるあたしに突如痛みを訴えるトレーナーさん。
     どうしたんだろう…何があったのか分からなくて心配と不安で一杯になる。

    「すまないキタサン…。尻尾を緩めてくれないか…。」
    「尻尾?」

     そう言われてあたしの尻尾の感触を確認する。どうやらトレーナーさんの腰に巻き付いてるみたいだ…。
     何で巻き付いてるの!?もしかして後ろからだと抱きしめられないから尻尾で代わりにってこと?
     は、はしたなくないかな…これ大丈夫かな…?
     と、とにかく尻尾の力を緩めないとトレーナーさんがずっと痛がってしまう。

    「分かりました!すぐに緩めます!」
    「いてててて!キタサン強くなってる!」
    「あれ!?ごめんなさい!」

     離れたくないからなのか強くなっている尻尾。ど、どうしたらいいんだっけ?変に緩めることを考えるからいけないのかも!大事な人のことを考えるのが大切だって誰かかも言ってた気がするし!

    「トレーナーさん…。」

     小さい声だったから聞こえないと思うけど思いを込めて尻尾を動かすとさっきよりも力が緩んだ気がした。

    「少しはマシになったかも。」
    「良かったです…。」

  • 5二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 19:08:06

     そんな風にドタバタしてしまったこと時間が経てば少し落ち着いてきてやっとダイヤちゃんが良かったと言っていた意味も分かってきた。
     抱きしめられた体温が凄く暖かいのだ。包まれてる感じが全身に伝わってきてこのままいられたらいいなってそんなことばかり考えてしまう。
     ふと巻き付いている尻尾で背中を撫でてみる。

    「キタサンくすぐったいよ。」
    「えへへ、ごめんなさいトレーナーさん。」

     拒絶はしないトレーナーさんを嬉しく思いながらもう少しだけこの感触を味わってみる。あたしよりも大きくてたくましい背中。そんな背中に支えられてるんだって改めて思えた。
     抱きしめてくれている手を重ねてみる。大きくて柔らかいけど暖かい手でさっきよりも安心する気持ちが強くなる。
     安心したからなのかあたしはゆっくりと頭をトレーナーさんに預けるようになっていた。胸に耳を傾けると聞こえてくるトレーナーさんの心音。少しだけ速いその音はあたしの胸の鼓動と同じみたいで嬉しかった。
     あたしも同じ気持ちなんですよ…。この思いがどうか届きますように…そんな思いから重ねた手と巻き付いた尻尾を少しだけ力を入れてみる。
     
    「届いてるからな。」

     そんな言葉を聞きながら少しだけ目を閉じてみる。
     流れる時間は穏やかで聞こえてくるのはあなたの心音だけ。このままずっといたいけど時間だけはそれをゆるしてくれなかった。

  • 6二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 19:10:47

    「…サン、キタサン」
    「はい…、何ですか…?」

     目を開けると外は少し暗くなってきていてどうやら夕暮れになっているとわかった。
     そっか…もうそんな時間なんだな…。もう少しだけいたいな…。
     少しだけ寝ぼけたふりをしてトレーナーさんに引っ付こうとする。わかってるそんなことは許してくれないって。だけどもう少しだけいいよね。

    「もう帰る時間になっちゃったみたいだな。」
    「そう…ですね。」

     そう言って帰るように促しているトレーナーさん。つい尻尾を強く巻き付かせてしまう。迷惑をかけたくはないけどこの暖かさから離れたくない。

    「大丈夫だよ。」
    「?」

     少し痛みをこらえるような声でそう言った。何が大丈夫なのか分からなくてつい首を傾げてしまう。

    「君が望むならいつだって受け入れるから大丈夫。」
    「!」

     またこうしてもいいの?本当に?
     そう言いたかったけど言葉は出てこなかった。代わりに思いが届きますようにともう一度だけ手と手を重ねる。やっぱり暖かくて安心できる。

    「約束ですからね。」
    「ああ、約束だ。」

     その思いは間違いなくトレーナーさんにも届いたみたいだ。だからあたしは手を離した。あたしの思いをここに預けます。また取りに来ますからね。
     尻尾をトレーナーさんの腰から外してゆっくりと立ち上がる。そしてあたしはさっきまでの暖かさを感じながらトレーナーさんに向き合う。

  • 7二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 19:12:09

    「ありがとうございますトレーナーさん!あたしの我儘を叶えてくれて嬉しかったです!」

     ニコリと笑うあたしとそれを受け止めるトレーナーさん。
     あたし達の顔が赤く見えたのはきっと夕暮れに照らされてるからだ。今はそう思うことにした。

  • 8スレ主23/02/09(木) 19:13:42

    一週間に一本を目標に投稿しようにもなかなか形になりにくいです。

    可愛いキタちゃんを書けていたなら幸いです。

  • 9スレ主23/02/09(木) 19:17:27
  • 10二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 19:20:05

    供給助かる

  • 11二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 19:21:12

    途中で話が特に切り替わってないけど段落を入れるのは何かしらの意図がある感じですか?

  • 12スレ主23/02/09(木) 19:22:01

    >>10

    自分のようなものでも喜んでいただければ幸いです。

    もっと頑張ります。

  • 13スレ主23/02/09(木) 19:25:40

    >>11

    ごめんなさい。自分の中でまだ段落が上手く使えないみたいです。

    見辛くて申し訳ありません。

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