- 1二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 21:03:55
「はっ……はっ……はぁ――」
夕焼けに照らされながら、呼吸するための吐く息が白くなる。
朝は霜が降りるほど今日は冷え込んでいた。
俺は白い息を吐きながら、前を走る担当ウマ娘、サイレンスズカの橙色の髪を見ながら河川敷を走る。
冬の光景として、木は葉が落ち、草は枯れて、生命を感じさせない寂しい風景が広がっている。そのため、走っていて、目に映る景色は寒々しい。
そんな寂しい風景に突然、見惚れるほど綺麗な色が付く。
この寒々しい風景を物ともせず、ただただ、先へ、先へ。
誰も見たことがない景色を目指して走る彼女の姿は力強い生命の息吹を感じらせるほど輝きが、夕焼けの色に負けないほど、綺麗なさらさらなストレートの髪からほとばしるようだ。
後ろからなので、スズカの顔は見えないが走ることが好きな彼女は、きっと楽しそうな表情しながら、走っているだろうと思いながら、俺も彼女を目指して駆けていった。 - 2二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 21:05:51
「トレーナーさん、お疲れさまです。よければ、こちらのタオル使ってください」
「ありがとう、スズカ使わせてもらうよ。洗って返すよ」
ジョキングを終えて、一足先に終えていたスズカからタオルを借りて、顔の汗を拭く。いつもなら、俺がスズカにタオルの用意をするのだが、今日は逆にされてしまった。
「トレーナーさん、私だけ先に走りましたが、走るの楽しめましたか?」
「あぁ、色々と気づく切っ掛けになったよ。スズカの走っている後ろ姿が綺麗とかな」
「…もう、トレーナーさん」
スズカがこういうの言うのも無理がない。こちらから一緒に走るの提案していて、並走ではなく、スズカの跡をついて行っただけだからだ。
ただ、走っているスズカの姿は綺麗なのは間違いなかったので誤魔化さず伝えたら、珍しく照れているのか、スズカの頬が少し赤くなった気がする。
しばらく休憩した後、
「…あの、トレーナーさん」
「スズカ、何かな?」
「今度は一緒に隣で走ってもいいかしら」
「あぁ、いいよ。じゃあ、何時にしようか」
「えっと……、なるべく早朝で走りたいわ」
「分かった、それじゃあ……」
こうして、次の予定を決めてトレーニングを終えた。 - 3二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 21:07:00
日が登り初めて、少しずつ気温が上がり始める中、冬の澄んだ空気から隣で走るトレーナーさんの足跡が聞こえてくる。
いつもなら、私一人分の足跡のリズムを刻むけど、今は違う。私の横に並んで走るトレーナーさんがいる。
それに伴う形で、
「はっ……はっ……はぁ――」
早朝の為か、静寂な空気から隣で走るトレーナーさんの呼吸をする音が伝わってくる。
普段ならこんなに近くであなたを感じられないから、私は少し嬉しく思いながらも、横目で彼の顔を見る。
寒さのせいで頬や鼻先が赤く染まり、白い息を吐きながら、真剣な眼差しで前を見て走る彼の表情は凛々しくて素敵だと思った。
この短い時間だけでも、トレーナーさんと同じ景色を共有し、その先の景色を目指して走ることにワクワクを感じながら、彼と一緒に朝日に向かって駆け出した。 - 4二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 21:13:46
短いですが、走っている冬の景色ってこうだかなと思いながら書いてみました
- 5二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 21:54:41
スズカさんが景色を共有したい相手……おそらくは唯一無二の存在なんでしょう、あんまり自覚なさそうなのも含めて素敵だなって感じます
- 6二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 22:03:15
スズカはこういうことする
- 7二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 05:07:26