【ss】雷鳴の如く

  • 1二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 21:45:49

    ※史実ネタ+メインストーリー組+非ウマ娘化競走馬ネタ注意。



    ウマ娘にとって一番の無念とは何か。

    勝てないことか?
    違う。
    私にとっては、走れなくなることだ。
    幼少期とそして2年前、私は脚を2度も折った。だが私はここにいる。まだ私は走れるのだ。

    『――2番手争いもう1度エアチャリオット!エアチャリオット!2番手出てきた!』

    この興奮、熱狂。
    私がここにいると教えてくれる。
    ここが私の場所だ。

    『外からヤエノジョオーもやってくるが三番手の争い!』

    私はここにいる、そう叫ぶため。
    自分と言う名の誇りを示すため。
    レースの度に刺激される私の中にある"何か"を探すため。

    『勝ったのは8番トロットサンダー! アイルランドトロフィーを制しました!』

    そして、私は私を証明するためにここにいる。

    "トロットサンダー"

    それが私の名だ。

  • 2121/11/12(金) 21:48:23

    「トロットサンダー、か」

    眼下には今この瞬間にゴール板を駆け抜けた鹿毛のウマ娘の姿があった。

    「気になる?」
    「あぁ。彼女も地方から中央に来たと知ったんだ。私と同じだな」
    「……ウラワでは9戦8勝、2着1回。骨折で1年療養してたけど復帰戦で勝利、そして中央入り」

    スラスラと手元の資料から情報を読み上げる同行者。今の時代にタブレット端末ではなく紙を使うのもこの人くらいだろう。

    「実を言うとスカウトしたかったんだ。だけど先を越されちゃって」
    「そうなのか?」
    「うん。いい刺激になると思って。でも残念だ。今の彼女の末脚と走りと勝利への執念、それこそ今のチームにはちょうど必要そうだから」

    少しばかり瞳に憂いを帯びる同行者、もといトレーナー。

    「……トレーナー」
    「トロットサンダーの次のレースはマイルチャンピオンシップだそうだよ。私は見に行くけど、ついてくる?」
    「……そうさせてもらおう」

    食いぎみに自分の発言を遮ったトレーナーに上手くかける言葉が見つからない。
    自分はウマ娘で、ドリームトロフィーリーグを走る選手で、トレーナーではない。

    「次のレースもある。パドックへと行こうか。"オグリ"」

    そう言うとオグリキャップの同行者……"シリウス"のトレーナーは目元を伏せ観客席から去っていった。

  • 3121/11/12(金) 21:49:58

    アイルランドTから数日。
    私は美浦寮の敷地の外れにあるベンチでただただぼーっとしていた。

    「……暇」

    今日はオフだ。
    本当は走っていたいが、過去に2度も折れている事からトレーナーからは「オフの日は絶対に走るな」と強く言われている。
    かといって他にやるべきことがあるわけでもなく、こうして1人でぼんやりとベンチから空を眺めることくらいしかない。
    お陰でこのベンチは私の特等席だ。中央に来てから1年半ほど経ち、四季を問わずオフの日はここで暇を潰しているからか「謎の鹿毛の子のベンチ」として妙に近寄り難いものになっているらしい。ありがたいと言えばありがたいのだが、お陰でただでさえ少ない他人と会話する機会が失われてしまった。

    「知ってる?今日ブライアン先輩が練習してるらしいよ」
    「そうなの!? ちょっと見に行ってもいい? 握手とかして貰えるかなぁ!」
    「アンタ、ブライアン先輩の大ファンだもんね~」

    近くを歩くウマ娘たちの会話。何気ないものだが私はそんなことを話す友人は……いない。
    中央に高等部になってから編入した私には今さら友人を作るのはハードルが高すぎる。
    チームの子と話すのもいいんだけど、皆私より年下だし、なんか勘違いされているらしい。なんでもクールでかっこいい先輩、だそうだ。
    それっぽく見えるのは最低限の会話しか出来なかったからなんだけど、勘違いされるくらいコミュ障呼ばわりされた方が気が楽だったかもしれない。

    「友達欲しいなぁ」

    私と同じで地方から来たウマ娘でも私とは違ってコミュニティの中心部にいたウマ娘もいる。
    例えば、私の憧れのオグリキャップさんとか。クールでかっこ良くて強い先輩が、カサマツとウラワとはいえ同じ地方からの転入となれば憧れもしてしまう。

    「……帰ろ」

    結局今日も1人で時間を潰してしまった。
    友達欲しい……。

  • 4121/11/12(金) 21:51:28

    寮に帰ると私のルームメイトが既に戻ってきていた。

    「トロットさん聞きましたよ!マイルチャンピオンシップに出るそうですね!」

    この黒鹿毛の子……チヨノカツラとは同じ部屋なだけあってそれなりに話す。もっとも部屋の中だけであってここから出れば彼女にはたくさんの友達がいるのだが。

    「マイルCSにはボノちゃんやビコーちゃんたちも出るけど、トロットさんの事を応援します!」
    「それはその、嬉しいけど、友達を応援してあげたら?」
    「もちろん応援します。でもルームメイトがG1出るならもっと応援しますよ! それと私はトロットさんと友達だと思ってたんですけど、違うんですか……?」
    「いや、友達、だと思う……」

    瞳をうるうるとさせた上にじりっとにじり寄られ、相手は中等部だというのにタジタジにされてしまう。中央の子はこれほどまでに進んでいるのか……ウラワとは違う……隣の県なのに……。

    「なら良かったです! そうだ、今からボノちゃんたちと併走するんですけど、トロットさんも来ますか?」
    「いや、行かない。行きたくないんじゃなくて、チヨノが応援してくれるなら頑張りたいから」
    「そうですか……わかりました。でもしたくなったらいつでも仰ってくださいね。ボノちゃんもビコーちゃんも喜ぶと思います!」

    礼を言いつつチヨノを見送り、今までのマイルCSの情報がまとめられたノートを取り出す。
    次はG1だ。今までも重賞は走ってきた。だがG1は違う。誰もが手が届く舞台ではない。

    「ヒシアケボノ、ビコーペガサス、レガシーワールド……」

    ライバルたちは全員強力だ。重賞をとったウマ娘たちが何人もいる。中にはG1を獲った子さえも。
    それと比べて私は重賞に手は届いていない。
    だがマイルCSの1600mという距離は私の得意な距離そのものだ。1600mの感覚というのはわかっている。京都ではまだ走ったことはないがコースの情報と私の感覚、それを合わせれば勝つのも不可能ではない。

    「やってみせる、絶対に」

    私を証明するために。

  • 5121/11/12(金) 21:52:16

    11月19日、京都競バ場。天気は晴れ、バ場も良。最高のコンディションだ。

    「ふーっ」

    ついにきた、マイルCSの舞台。
    なんでも私は4番人気とのことだ。重賞未勝利ながら1600mでは無敗なのが評価らしい。
    勝負服は黄色をベースに腕部にピンク、胴体に黒いラインを引いたものにスカートは白。何故かはわからないが、これが一番ピンと来た。

    「いたいた、トロットさん!」
    「うん?」

    地下バ道で声をかけられた。

    「ヒシアケボノとビコーペガサス……」
    「話はいつもチヨノちゃん聞いてるよ~。今日はとってもボーノなレースにしようね!」
    「アンタがトロットサンダーだな! めちゃくちゃ強いみたいだけど今日はアタシが勝つ!」

    なんというか、身長差がすごい。見上げたり見下ろしたりで首が疲れる。

    「うん。よろしく」

    ルームメイトを通じて2人の人柄はよく知っている。そして実力も。

    「クールだな!なんか前のメーレマンみたいだ!」

    誰……?

    「ビコーちゃんそろそろ行こう~。トロットさんまた後でね~!」

    先にコースへと向かう2人を見送り、もう1度深呼吸。よし、行こう。

  • 6121/11/12(金) 21:54:14

    『ゲート、全員揃いました』

    スタート直前、私の中に様々なことが過ぎ去っていく。
    2度折れたこと、ウラワの皆に助けられてまた走れるようになったこと、そして中央にスカウトされて皆に送り出されたこと。
    右足に力を込める。
    ガコン!とゲートが開いた。

    『スタートしました!揃いました18人のウマ娘!』

    初のG1だからと浮かれてはならない。トレーナーの言葉を思いだし、まずは冷静に状況を確認する。

    『まず先頭争いに入りますがやはり間エイシンワシントンです。エイシンワシントンがまず先手を奪いました。あと2番手からは内ヒシアケボノが上がって、ポットリチャード3番手』

    ヒシアケボノはいつも通りの先行。
    あの大きな体で前に居られるというだけで威圧感がある。

    『ニホンピロプリウスが後方から6、7人目。そのあとビコーペガサスとトロットサンダー。さらにはメイショウテゾロと追走です。後方はトーワダーリンにレガシーワールド最後方』

    内側のビコーペガサス、外側にメイショウテゾロと挟まれて後方からレースを組み立てていく。
    ふと右に目を向けるとビコーペガサスと目があった。「負けない」と言いたいのだと口に出されずともわかる。

    『各ウマ娘第3コーナー登りに向かいますが先頭は、エイシンワシントンリードは2馬身くらい。ヒシアケボノが単独2番手で坂の頂上に向かいます。あとポットリチャードが3番手800の標識を通過。スターバレリーナ、ドージマムテキが4番手5番手』

    坂を登る。ここからが勝負だ。私の末脚は最後の直線に貯めておく。

    『――あとまだビコーペガサスは後方集団の一角です』

    外から第4コーナー目掛けて突っ走る。
    勝負どころは近い。

  • 7121/11/12(金) 21:57:46

    『各ウマ娘第4のカーブに入ってエイシンワシントン、エイシンワシントン先頭!』

    最終直線に賭ける。
    大外からなら私の走りは邪魔されない。まとめて差しきってやる。

    『2番手ヒシアケボノ、ヒシアケボノ! ドージマムテキが早めに来た! スターバレリーナが4番手くらい!』

    今しかない。
    ヒシアケボノの大きな体を目印に先頭めがけて突っ込む!

    『そのあとメイショウテゾロ! ビコーペガサスはまだ中段の中!先頭はヒシアケボノ!! ヒシアケボノ先頭だ! あとドージマムテキ2番手か! 内からエイシンワシントン粘っている!』

    ――そうかこれがG1か。
    前を走るウマ娘たちの後ろ姿を見て、ふとそう思った。
    誰もが最後まで自分が勝つと疑っていない。私が一番速いのだと叫んでいる。
    この渇望とも言える熱気こそ私が求めていたものだったかもしれない。
    だったら私がやることはただひとつ。

    ――全力で駆け抜ける、それだけだッ!

    「ああああぁぁぁぁッ!!」

    そして私はなりふり構わない絶叫とともにラストスパートをかけた。

    その、瞬間だった。
    私の体を雷が駆け抜けたのは。

  • 8121/11/12(金) 21:58:41

    ――後に、このレースを見た者は口を揃えてこう言ったという。

    「トロットサンダーが踏み込んだ瞬間、爆発音が聞こえた」

    音声記録にはそんなものは入っていない。実況のマイクもそんな音は拾っていない。
    だが観客だけでなく、実際にレースに出ていたウマ娘たち、実況解説に京都競バ場の職員、URAの上役等々、その場にいた誰しもの耳に焼き付いたという。

    トロットサンダーから発した爆発音。
    そしてその爆発音を全員がこう例えた。


    ――まるで"雷鳴"のようだった、と。

  • 9121/11/12(金) 22:00:21

    『追い込み勢から、トロットサンダー!!』

    身体を焼くような痛みと共に光にでもなったかのような感覚。
    1歩、また1歩と踏み込む度に私の身体を駆け抜けるそれに名前を与えるとするならば、"雷"だった。

    『トロットサンダー!トロットサンダー!! メイショウテゾロ突っ込んできた!』

    気付けば笑っていた。
    どうだ、見たか。何度折れても私はここに立つ。そして今まさに頂上へと手が届く。
    やはりレースは楽しい。こんな高揚感は他では味わえない。

    『さぁトロットサンダー! ヒシアケボノ!メイショウテゾロ!』

    どんどん感覚が鋭くなっていく。
    後続は私に追い付いてこれない。
    ここは私の独壇場だ。私が輝くレースだ。

    『トロットサンダー!』

    そうだ、私の名を呼べ。
    これが私だ!

    「私の名を焼き付けろッ!!」

    咆哮と共にゴール板を駆け抜けた。

    『トロットサンダー先頭ゴールイン! 2番手はメイショウテゾロとヒシアケボノ!』

  • 10121/11/12(金) 22:02:44

    「あの雷鳴とあの眼光……彼女は、領域-ゾーン-に入ったのか」

    自身の経験を振り返りオグリキャップはそう呟く。流石に雷鳴は鳴らしたことはないが、あの末脚と捕食者のような表情はオグリキャップも覚えがある。
    トロットサンダーの今後がますます楽しみになった。彼女はきっとまだ強くなる。

    「トレーナー」

    後ろにいる"シリウス"のトレーナーに声をかけるが、そのトレーナーはオグリキャップの声は入っていないようだ。

    「アンタはこのレースを見せてどうしたいんだ」
    「……凄い末脚だったでしょ?」
    「確かにそうだが、聞きたいのはそういうことじゃない」

    トレーナーの隣にはナリタブライアンと、車椅子に乗ったライスシャワーがいる。

    「そうだね、君たち2人には必要なものだと思ったんだ。彼女の……トロットサンダーのレースは」
    「ライスたちに……?」

    レースと聞いてライスシャワーは無意識に折れた左足を撫でた。

    「トロットサンダーは2度、足が折れている」
    「……!」
    「でもああして立ち上がり、G1という大舞台に登りそして掴み獲った」

    ライスシャワーもナリタブライアンも今年になって足に問題が発生した。
    特にライスシャワーに至ってはレース中での故障もあって、生死の境を彷徨うことになった。
    辛うじて命こそ取り留めたが、未だに車椅子生活を余儀なくされている。

  • 11121/11/12(金) 22:03:31

    「トレーナーさん……ら、ライスはもう走れないんじゃ……」
    「……ライスはどうしたい? もう走りたくない?」
    「ライスは、ライスは……」

    いきなり走れないか聞くと言うことは、まだ走りたいと言う気持ちの裏返しだ。
    それに、知っている。ライスシャワーの闘志はまだ残っていることは。でなければ"シリウス"に残っていない。
    でなければ、誘ってもここには来なかった。

    「また、走りたいです。もう1度だけでも、ターフに立って、この足で……!」
    「そう言ってくれて良かった。ライスがまた走れるまで、私でよければ力を貸すよ」

    トレーナーは手を差し出した。
    はじめてライスをスカウトしたあの日のように。

    「……よろしくお願いします!」

    ライスシャワーに足りなかったのは、あと1歩踏み出す勇気だった。
    その勇気を引き出したのはトロットサンダーだ。あの雷鳴は間違いなく、1人のウマ娘の人生を変えた。

  • 12121/11/12(金) 22:04:58

    「ブライアン」
    「言いたいことはわかっている。アンタは私にあの執念を学べと言いたいんだろう」

    ナリタブライアンは怪我明けの天皇賞(秋)を落としてしまっている。獰猛な獣のような走りはどこへ行ってしまったのか、あのレースを見た者の多くが口にした。

    「あの勝ちに……いや、"走る"ことへの異常な執着心。アイツは勝ちを見ていない。自分自身があの場で駆けることで己を証明しようとしている。そうか、私に必要なのはその執念と執着心。……『私の名を焼き付けろ』か」

    渇望とも言い換えられるその執着心。その強い渇望を目にしてナリタブライアンの渇きにまた滾る何かが流れ込む。

    「トレーナー、明日からのメニューはもっとキツいものを用意してくれ」
    「わかった。でも無理はさせないからね」
    「あぁ」

    短く答えるナリタブライアンの瞳には先ほどまでとは違い、それこそ獰猛な獣そのものの力が宿っていた。
    彼女もまたレースで駆けることを特別視しているウマ娘の1人だ。目的は違えど、いい影響はあると踏んでいたがその通りになってくれて良かったと一安心。


    「……ありがとう、トロットサンダー。君のお陰で私も救われた」
    「トレーナー」

    漸く安堵の目を見せた"シリウス"トレーナーに、オグリキャップは静かに声をかけた。

    「ごめん。さっきは無視しちゃったね」
    「いや、トレーナーは凄いな。あの2人を震い立たせるなんて」
    「私は何もしていないよ。ライスとブライアンをたきつけたのは彼女だ」

    トレーナーの視線の先には勝利インタビューを受けるトロットサンダーの姿があった。

    「それでもだ。……私もトレーナーになれば後輩たちに助言出来るのだろうか?」
    「君なら出来るよ。……いいかい、オグリ。私たちに必要なのはトレーナーとしての腕よりも、誰よりもウマ娘を信頼し、何があっても絶対に諦めないことだよ。そして彼女たちの"夢"を叶える。それが私たちの役目だ。……まぁ、ほとんど先生の受け売りなんだけどね。でも私もそう思ってる」

  • 13121/11/12(金) 22:06:41

    今日はここまで
    需要あるか知らないけどとりあえず投げておくキャラ紹介。

    ・トロットサンダー
    鹿毛。髪型はセミロング。耳飾りは右。
    身長は165cm、靴のサイズは25cm。
    高等部。実はライスシャワーやミホノブルボン、サクラバクシンオーと同期。
    ウラワで9戦8勝2着1回の好成績を残し、中央に移籍した。
    幼少期とウラワにいた頃(中等部)で2度脚を折っていて、2度目は競争能力喪失になりかけている。なのでレースで走れなくなることを非常に恐怖している。
    そして走らなくなったら誰からも忘れられるのではないか? とも考えている。
    高等部になってから転入したのとコミュニケーションが苦手なのもあって周りと上手く馴染めず、同室のチヨノカツラくらいしかまともに話せない。そのせいでトロットサンダーを良く知らない後輩ウマ娘からはクールでかっこいい先輩と思われがち。
    実は、雪が苦手。
    雪が積もった日はは誰よりも率先して雪かきを行う。


    ・チヨノカツラ
    黒鹿毛。髪型はシニヨン。耳飾りは左。
    身長は150cm、靴のサイズは23cm。
    中等部。トロットサンダーの同室。彼女に中央のことを色々教えた。
    トレセン学園に入れたのはいいが走る才能がないと薄々感じているようで、サポートクラスへの転入を考えている。


    ・"シリウス"のトレーナー。
    女性。髪型はポニーテール。身長は168cm。
    若くして先代から同チームを継いだ後、G1ウマ娘を多数輩出した名トレーナー。
    ウマ娘が走る姿が何より好きで、ウマ娘たちが夢を叶えられるように支えるというのが彼女の信念。
    トロットサンダーをスカウトしようとしたがタッチの差で先を越されてしまった。
    しかしスカウト出来なくても個人的にトロットサンダーのレースを見るくらいには気になっている様子。
    実は、壊滅的な機械音痴。
    最低限の書類作成くらいは出来るが、それ以上はマックイーンやゴルシに頼る。

  • 14121/11/12(金) 22:08:41
  • 15二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 22:09:38

    なんか皆未実装の馬の幻覚見え始めてるな……
    いいぞもっとやれ!

  • 16121/11/12(金) 22:09:42
  • 17121/11/12(金) 22:10:33
  • 18二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 22:11:41

    まさかかのパーフェクトマイラーのSSが、しかもこんなクオリティで出てくるとは…
    いいぞもっとやれ

  • 19二次元好きの匿名さん21/11/12(金) 22:30:46

    投下乙!かわいい

  • 20121/11/12(金) 23:11:23

    保守

  • 21121/11/13(土) 10:27:38

    昼保守

  • 22121/11/13(土) 10:28:11

    夜にまた投下します

  • 23121/11/13(土) 20:09:48

    続き投下

  • 24121/11/13(土) 20:11:08

    マイルCSを制してから私の生活は激変した。まずあの後ヒシアケボノやビコーペガサスと仲良くなった。最近はたまに併走してる。とても嬉しい。
    そして私のお気に入りのベンチが使えなくなった。いや、正確には使えることには使えるんだけど……。

    「ここで待ってたらトロットさんが来るってほんと!? マイルCSでファンになっちゃった!」 「……『私の名を焼き付けろ!』 かっこいい……」 「あのキリッとした目とクールな性格、いいよね……」

    ……何やら有名になってしまったらしく、私のベンチにはミーハー気質な子たちが屯するようになってしまった。これでは落ち着いて空を眺められない。
    それに、『私の名を焼き付けろ』はなんかこう、テンション上がって言っちゃっただけなので、今になって恥ずかしくなってるし、なんなら言ったことを取り消したい。

    「トロットさんトロットさん」
    「チヨノ?」

    影から私のベンチを眺めているとどうやって私の場所がわかったのか、チヨノに見つかってしまった。

    「その、驚かないでほしいんですけど」
    「うん」
    「オグリキャップさんが呼んでます」
    「はぁ!?」

    思わず大声をあげてしまう。なにせ相手が相手だ。知らぬ者はいないウマ娘、オグリキャップ。『芦毛の怪物』『アイドルウマ娘』『ありがとう、オグリキャップ』などなど、彼女を讃える二つ名は枚挙に暇がない。そんなウマ娘が、私を? 何かの冗談では?

    「トロットさん! 大声出したから気付かれちゃいましたよ!」
    「えっ」

    ベンチの方向から何人ものウマ娘が私の方へと駆け寄ってきている。「トロットさーん!」「サインお願いします!」「あの台詞もう1回言ってくださいー!」……やばい。

    「ごめんチヨノ、オグリキャップさんどこにいるの!?」
    「美浦寮の前です」
    「わかったありがとう!」

    どうしたってそんな目立つ所にと疑問にはなるが、今はオグリキャップさんに会うのが先だ。

  • 25121/11/13(土) 20:12:27

    美浦寮の前に辿りとくと案の定人集りとそれから発せられる歓声が出来ていた。その黄色い声の中心にいるのは間違いなくオグリキャップさんだろう。

    「……む、すまない皆。約束していたウマ娘が来た」
    「誰ですか!?」
    「トロットサンダー、君だ」

    全員の視線が私に注がれる。レースではもっと大勢の人に見られているはずなのになんだか気まずい。

    「その……お待たせしました」
    「私もさっき来た所だ」
    「は、はい」
    「では行こうか。カフェテリアで良いか?」
    「あっはい……」

    同じ地方から中央へと殴り込んだという共通点から、勝手ながらオグリキャップさんを目標にしてきた。いつか会って話してみたいと考えていたが実際に目の前にすると何を話して良いかわからない。……いや、何を話して良いかわからないのは普段からだった。

    「急に呼び出してすまない。どうしても話したかったんだ」
    「いえ、その……」

    会話にならない会話を繰り返し、なんとかカフェテリアに辿りつく。カフェテリアに到着した途端、オグリキャップさんはあっという間に大量の皿を抱えて近くの席に座った。

    「君も何か食べるといい。食事しながらの会話は捗るとトレーナーが言っていたからな」

    緊張やばくて何も入りそうにない。とりあえず軽いものを用意してオグリキャップさんの前に座る。

    「それで、その、話というのは」
    「あぁ。マイルCS、おめでとう」
    「あ、ありがとうございます……」

    それだけ言うとオグリキャップさんは無言で2皿ほど一瞬で平らげた。

  • 26121/11/13(土) 20:14:30

    「あ、すまない。まだ言いたいことがあるんだ」

    ジョッキに入ったにんじんジュースを飲み干し、オグリキャップさんは私の方向を向く。うわ、顔がいい……。

    「私と君はカサマツとウラワという違いはあるが、同じ地方からきただろう? だから妙に親近感が沸いたんだ」
    「だから私を探していたんですか?」
    「あぁ、仲良くなりたかったんだ。それともうひとつ。お礼を言いたかった」

    お礼? 初対面のオグリキャップさんにお礼を言われるようなことは何もないと思う。
    むしろこうやって話せる機会を設けてくださったオグリキャップさんにお礼を言いたい。

    「君の走りで"シリウス"の皆が再起してくれたんだ。あのマイルCSの走りで」

    "シリウス"というチームは私でも知っている。数年前に当時のトレーナーが引退して当時新人だったサブトレーナーに継がせたばかりだというのに、かのチームに所属するチームはG1ウマ娘だらけというおかしいチーム。
    そうか、オグリキャップさんも"シリウス"に所属していたんだっけ。今はドリームトロフィーリーグで走っているけど。

    「君が足を2度折っても走り、そしてG1を勝ったというのは偉業だ。これならも君の走りを楽しみにしてる。誰かを勇気付けられる、君の走りを」

    勝った……そういえば私は勝ったんだった。
    今まで走ることしか考えてなかったけど……そっか、勝てば他にも何かあるんだ。

    「はい! これからも走って、勝っていきます!」
    「応援しているよ、トロット。……ごちそうさま」

    気がつけばあれだけ大量にあった食べ物が全て消えていた。なんでそんなに入るんだろう……。

    「もっと話していたいんだが、すまない。これから用事があるんだ」
    「い、いえ。その楽しかったです。また、機会があれば一緒に食事してくれすか?」

    そう聞くとオグリキャップさんは笑顔で「いつでもいいぞ」とだけ言った。

  • 27121/11/13(土) 20:17:06

    「ねぇ、チヨノ」
    「なんでしょう」

    その日の晩、どうしても気になることがあってチヨノに尋ねた。

    「勝つと嬉しい?」
    「嬉しい……と思います。トロットさんは違うんですか?」
    「……わからない。今まではレースで走るだけで良かった。でも今日私が勝ったことで変わったウマ娘がいるって知った。その時の感情がよくわからなかったんだ」

    多分嬉しい、だと思う。でもこれはレースとは関係ない。
    それにレースを走る度に感じる"何か"とは明確に異なるって言える。

    「……そうですか。ならトロットさん、これからも勝ってみては?」
    「難しいこと言うなぁ」

    今までは本当にレースで走れればそれで良かった。走って走って私を誰かに覚えて貰いたい、知って欲しい。それだけだった。
    でもレースで勝つと何かが変わると知ってしまった。オグリキャップさんの言う"シリウス"のように。私が勝ったから変わったウマ娘たちもいると知ってしまった。

    「でも、勝つよ。勝ったら"何か"がわかるかもしれないし」
    「応援してます!」

    誰かを勇気づけられる走り。
    他でもないオグリキャップさんにそんなことを言われると気持ち悪い顔でニヤニヤしてしまう。
    だから、これからも勝とうと、軽率な気持ちで決めてしまった。
    だが、現実はそう簡単ではないと私はすぐに知ることになる。

  • 28121/11/13(土) 20:18:51

    『トロットサンダーとメイショクユウシ並ぶようにして今ゴールイン! 勝ったのはトロットサンダーか!?』

    年が明け、まず最初に挑んだ東京新聞杯には勝てた。だが次の京王杯スプリングカップは――

    『ハートレイク先頭でゴールイン!2着はタイキブリザードかトロットサンダーか!』

    結果は3着。
    距離が得意距離より200m短いからとかではない。実力で負けたのだ。
    レースに負けた瞬間異常なまでの激情が私を突き抜けた。別にはじめて負けたわけではない。別にはじめて重賞に出たわけでもない。掲示板から外れたことだって何度もある。
    なのにどうして、こうも突き上げるような吐き気が抑えられない。

    「トロットさん!」

    ふらつきながら控え室に戻る私の下にチヨノがやってきた。

    「体調が優れないんですか!?」

    違う、なんだこの感覚は。

    「ごめんチヨノ」
    「どうして、どうしてトロットさんが謝るんですか。負けて悔しいのはあなたじゃないですか! なのになんで私に謝るんですか!?」
    「悔しい……?」
    「まるで私のために走っているかのような事を言わないでください! トロットさんは自分のために走っているんじゃないんですか!?」

    チヨノがここまで感情を露にしたのははじめて見た。

    「……っ、ごめんなさい、言い過ぎました……」
    「待っ……て……」

    俯いたまま走り去るチヨノを私は追えなかった。

  • 29121/11/13(土) 20:20:26

    その日のライブはまぁ酷いものだった。特にハートレイクとタイキブリザードには悪いことをしてしまった、明日謝りに行こう。
    京王杯スプリングカップは府中での開だ。お陰でその日には美浦寮には帰ってこれる。しかし私とチヨノの部屋には戻れなかった。あの優しいチヨノにあんなことを言わせてしまって、どんな顔をして一緒の部屋にいればいいかわからない。
    すっかり夜だ。門限はとっくに過ぎているし、どうせ怒られるなら今から急いで戻ったところで意味がない。

    ――自分のために走っているんじゃないんですか!?
    ――負けて悔しいのはあなたじゃないですか!

    チヨノの言葉が頭から離れない。気がつけばお気に入りのベンチに辿り着いていた。そういえば最近はここに来ていなかった。ミーハー気質な子もマイルCSから半年も経てば見えなくなっているのに。

    「はぁ……」

    どっさり腰を下ろして深くため息。未だあの吐き気の理由が掴めていない。まるで今まで謎のままでわからない"何か"と一緒のようだ。

    「……一緒?」

    点と点が繋がった。
    そうか、そういうことか。

    「私は……勝ちたかったんだ」

    走れば走るほど沸く"何か"、それが勝ちたいと言う欲求なら、私が今日感じた感情も説明がつく。

    「――"悔しい"っ……!」

    そうわかった途端、涙が滝のように流れ出してきた。勝ちたかった、またゴール板を最初に駆け抜けたかった。

    「トロットさん!」
    「お、いたいた。門限破りは反省文ってわかってんだろうね!」

    近づく声と足音がふたつ。

  • 30121/11/13(土) 20:22:09

    「チヨノ……ヒシアマゾンさん……」

    チヨノはどうやら焦燥しきっているようで、探している最中に転びでもしたのか手や膝に土がついてしまっている。

    「トロットさんが帰ってこなかったから、何かあったんじゃないかって、心配で……!」

    瞳から涙が溢れて、それを隠すかのように私に抱きついてきた。

    「……涙でぐちゃぐちゃだよ。ハンカチ貸すからこれで拭いて」
    「嫌です。トロットさんの服で拭きます。心配させた仕返しです。それにトロットさんも同じじゃないですか」
    「……そうだね」

    チヨノが私の制服で涙を拭くまでヒシアマゾンさんは無言で待ってくれていた。

    「すみませんヒシアマゾンさん。門限を無視してしまって」
    「チヨノから一通り事情は聞いてるけど、規則は規則だからね、反省文は書いてもらうよ」

    そう言うとヒシアマさんは用紙を取り出し、そのまま破いた。

    「おっと力加減を間違えちまったよ」
    「ヒシアマゾンさん?」
    「用紙がないんじゃ反省文も書けないね。その代わりチヨノとじっくり話すんだね」
    「……ありがとうございます」

    ヒシアマゾンさんの気遣いに感謝しつつ、チヨノに向き合う。
    言いたいことがあるんだ。

  • 31121/11/13(土) 20:23:47

    「チヨノ」
    「はい」
    「……チヨノには色んなことを教えてもらった」

    中央のこと、美浦寮のルール、トレセン周辺の飲食店……他にも色々。

    「そして今日になって"悔しい"って感情も、教わった。でもこれは知りたくなかったな」

    こんなにも苦しいものだなんて知りたくなかった。
    こんなにも強く勝利を渇望するようになるものだとも知りたくなかった。
    こんなことなら、走るだけでいいと思えた頃が良かったと考えてしまう私がいる。
    でもそれではダメだ。

    「だから今度は勝つよ。安田記念で。チヨノには最前列で見てもらう」

    レースで走り続けたい。そしてもう負けたくない。なら勝ち続けるしかない。
    チヨノにはそんなことを決めさせた責任をとってもらう。

    「……わかりました。勝ってくださいね」
    「うん」
    「はっはっは! 勝つとは大きく出たね! 安田記念にはアタシも出る、例えアンタでも、今の宣言を聞いたとしても負けてやる気は一切ないからね!」

    ヒシアマゾンさんを前にして勝つと言うのは勇気がいることだったけど、言わなければならなかった。

    「私も負けるつもりはありません。ヒシアマゾンさんには悪いですけど、安田記念を勝つのは私です」
    「いいね、気に入った!」

    ニカッと笑うヒシアマゾンさんに私も精一杯の不敵な笑みで返す。
    ひとつ目的が加わったけど、私のやることは変わらない。
    走って、私を忘れさせない。だけでなく、勝つために走るのだ。

  • 32121/11/13(土) 20:27:25

    6月9日、東京競バ場。天気は曇り。バ場は良。

    フジノマッケンオー
    ヒシアケボノ
    シャンクシー
    フラワーパーク
    ダンスパートナー
    ビコーペガサス
    メイショウユウシ
    タイキブリザード
    ジュニュイン
    ヒシアマゾン
    ゼネラリスト
    トロットサンダー
    オースミタイクーン
    ヤマニンパラダイス
    ハートレイク
    トーワウィナー
    トウホーケリー

    豪華メンバーと謳われるのも納得だ。G1ウマ娘が8人も集まるのもそうそうないとトレーナーが言っていた。
    そんな舞台で私は今から走る。走り、そして勝つ。
    都合のいいことに京王杯で私に勝ったハートレイクもタイキブリザードもいる。リベンジしてやろう。

    「トロットさん」

    コースへと向かう地下バ道には既にチヨノがいた。自分のレースかのように緊張しているみたいだ。

    「応援、してます」
    「うん。勝ってくる」

  • 33121/11/13(土) 20:29:08

    ファンファーレと共に歓声が鳴り響く。

    『想像以上の拍手に歓声。やはりG1ウマ娘8人という豪華さ、期待度が凄いということでしょうか』

    ゲートの前で待機しながらライバルたちの顔を見る。
    ヒシアケボノにビコーペガサスに、ハートレイクとタイキブリザード。他にも知った顔がちらほら。
    その誰もが例外なく、自分が勝つと言わんばかりの表情だ。

    「ふーっ」

    肩の力を抜く。
    やることは変わらない。最後に全員差し切る。1600mは私の舞台だ。普段通りやれば勝てる。
    後ろからポンと肩を叩かれた。振り返るとヒシアマゾンさんが無言で笑いかけてきた。
    言葉にせずとも言いたいことはわかった。
    ――良いレースにしよう。

    「……ありがとうヒシアマゾンさん」

    先にゲートに入るヒシアマゾンさんに続き、私もゲートに入る。
    この瞬間が一番緊張する。

    『17人だて、最後トウホーケリーの枠入りを待ちます』

    右足に力を込める。
    私のために走りそして勝つ。

    『競うべきはかつての勲章ではなく今の実力だ安田記念――スタートしました!』

    ゲートが開いた。

  • 34121/11/13(土) 20:32:42

    すみません用事が出来たのでしばらく席を開けます
    今日は安田記念までを描きます

  • 35121/11/13(土) 20:56:15

    続き投下

  • 36121/11/13(土) 20:56:34

    『スタートしました、ばらついたスタート。ヒシアマゾン出が良くありません』

    横目に出遅れるヒシアマさんを見つつ、まずは先頭争いをする前の集団を見送る。

    『高スタートはトウホーケリー、初G1のウマ娘。後ろをチラっと振り返って思いきって行くのみ。内からヒシアケボノが詰めてくる。そしてじわっとフラワーパークも詰めてくる』

    やはりヒシアケボノは先行したみたいだ。彼女を如何にして差し切るかもまた重要だ。

    『先頭変わってヒシアケボノ、フラワーパーク3番手。内からフジノマッケンオーも早め。そしてヤマニンパラダイス、レコード娘。真ん中からタイキブリザード今日は早めに行った。そしてトーワウィナーです』

    タイキブリザードが少し早めに動く。
    だがまだ我慢だ。まだ貯めるときだ。

    『そして内々ビコーペガサス。その後ろならは7番のメイショウユウシがつけています。あとはジュニュイン。内からぴったりとマドモアゼル、シャンクシー』

    ヒシアマさんが動いた。
    早すぎる気がするけど――。

    『ヒシアマゾンここでグーっと上がっていった、ちょっとかかりぎみなのか? そしてその後ろ6枠の2人。トロットサンダーが一番外を行く黄色の勝負服、この手応えこの手応え。そしてゼネラリスト』

    ヒシアマさんが早めに動いたのに気が引っ張られそうになるが、ここは自分のレースを貫く。
    そのためにまず外に出て直線の準備に入る。

    『真ん中をつくウマ娘がダンスパートナー、G1の舞い再びなるか。そしてハートレイク、ハートレイクは後ろの方から進んでいます。最後方13番のオースミタイクーンという形』

  • 37121/11/13(土) 20:57:32

    『大欅の向こう各ウマ娘が通過しました。さぁ残り半分だ。マイル、府中のマイルで果たしてどんな、どんな熾烈なレースを見せくれるんだ』

    最終コーナーに差し掛かる。
    勝負処に向けて最後の準備を図る。

    『ウマ娘の想いが問われます4コーナー。さぁ17人のウマ娘、17つの夢がいざ勝負!』

    コーナーを曲がったところで見えたのはヒシアケボノの体。大きい分、見やすくて目標にしやすい。
    そして彼女が一番を走ってくれているのなら――!

    『府中の直線500m安田記念!』

    直線に入った。
    ここからが勝負だ!

    『先頭はまだヒシアケボノだ頑張っている!頑張っているが最後の坂が課題だ!400を通過する!』

    マイルCSの様に足に全身全霊を込める。またあの雷鳴を、この府中に轟かせるッ!

    『横一線!横一線! 横一線の中まだヒシアケボノが先頭か内から内からフラワーパークが出てこようとしているが! 外からタイキ!外からタイキ!』

    タイキブリザードの姿を捉えた。
    ここで彼女にリベンジを果たすッ!

  • 38121/11/13(土) 20:58:27

    『一番外!一番外! 黄色の勝負服トロットサンダー!! この灰色の空の府中に雷鳴が轟いている!』

    身を焦がし、雷光となってコースを駆け抜ける。
    そうだこの感覚だ!

    『しかしヒシアケボノ頑張る!』

    ヒシアケボノが最後の粘りを見せる。マイルCSのようには抜かせてくれないようだ。
    負けてたまるかとヒシアケボノの大きな背中は無言でそう語る。

    『外からトロット!外からトロット!! 真ん中タイキ!真ん中タイキ!ジュニュインも来ている!』

    タイキブリザードと並んだ。

    『しかし先頭ヒシアケボノッ!』

    ヒシアケボノの雰囲気が変わった。マイルCSで戦った時とは違う。
    前にオグリキャップさんから聞いた領域-ゾーン-の話。それを私も発揮しているらしい、この雷鳴がそうなのだと。
    これに近しいものをヒシアケボノから感じた。間違いなくあの時より格段に強くなっている。

    「それでも――」

    ヒシアケボノには悪いけど、先頭に立つのは私だ!

  • 39121/11/13(土) 20:59:20

    『外から懸命に追う! トロットとタイキがヒシアケボノを差した!』

    あとはタイキブリザードを抜くだけだ。

    「この前の様にはいかない……ッ!」

    横にタイキブリザードが並んだ。なんとか引き離そうとさらに両手両足の回転を早める。
    しかしタイキブリザードが引き離せない。横目に見れば歯を食い縛り、目を見開いている。相手も負けたくないのだ。誰だってそうなのだろう。私にも理解出来たのだから。

    「トロットさん!」

    一瞬だけ外に目を動かすとチヨノの姿と声が聞こえた。
    負けるわけにはいかない。負けないと誓ったのだから。チヨノと、何より自分自身に。
    そして私を示すんだ。走るだけでなく、ここで勝つことで。
    私はここにいるのだと。

    ――だから。

    「私が勝つんだああああああああぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

    外聞など捨てた咆哮に応じるかの様に雷は輝きを増して

    『外からトロット!! 外からトロット!! 真ん中タイキ!』

    雷鳴と共にゴール板を過ぎ去った。

    『2人並んだぁぁぁ!! 僅かに外か! しかし微妙だ!』

  • 40121/11/13(土) 21:00:20

    駆け抜けて、しばらくは茫然自失として何も考えられなかった。
    そして写真判定の後、浮かび上がったのは1着12番の数字。

    『1着はトロットサンダー! 春秋マイル制覇! マイルの雷帝の誕生ッ!』

    不思議と涙が流れ出した。
    その場で泣きじゃくりたかったけど、まだやることが残ってる。

    「やった……やった……!」

    最前列のチヨノの下へ駆け寄る。

    「チヨノ……!」
    「見てましたよずっとずっと!」

    勢い余ってそのまま抱きつく。
    後々何か言われそうだけど、構うものか。

    「勝った……勝ったんだよ私! こんなに嬉しいんだ、勝つって!」
    「はい……!」
    「また、勝つから……! 見てて……!」

    その後係員さんに離れろと言われるまで、私とチヨノは抱き合っていた。
    翌日の新聞の1面にこの写真が載った時は流石に肝が冷えた。どうやら私はレース後の興奮でやらかす癖があるらしい。

    世間では雷帝と呼称され、再びミーハーな子から隠れる日々が始まった。
    けれども私は相変わらず走って、勝って、たまに負けたりするかもしれないけど、また走る日常が続いていく。


    ――そう、信じていた。

  • 41121/11/13(土) 21:01:44

    今日はここまで

    明日でラストです

    安田記念の実況の元になったのはこちら、アオシマバクシンオーの初G1実況でもあります


    「周りが止まって見えた」地方出身&遅咲きのベテランがみせた電撃の末脚《トロットサンダー》【安田記念1996】


  • 42二次元好きの匿名さん21/11/13(土) 21:38:52

    age

  • 43二次元好きの匿名さん21/11/13(土) 21:54:11

    この浦和の雷帝、ブルボンライスタンホイザと同じ世代なんよな

  • 44121/11/13(土) 22:48:04

    寝る前保守

  • 45121/11/14(日) 08:36:16

    朝保守

  • 46二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 10:27:32

    安田の後まで書くなら馬主のあれもやるのか

  • 47二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 13:53:32

    昼保守

  • 48二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 21:55:22

    ラストの投稿です

  • 49121/11/14(日) 21:56:25

    「……トロットサンダーさん、いらっしゃいますか?」

    安田記念から少したった後、私とチヨノの部屋にたづなさんが訪れた。
    たづなさんに叱られるようなことはしていないはずだ、この間はじめて門限破ったくらいには真面目に学生としても生活していたはずだけど……。

    「なんですかたづなさん?」

    扉を開けて見たたづなさんの顔は、いつもの朗らかなそれとは違った。
    わざわざ理事長室まで呼び出され、そこで待ち受けていたのは私の理解の範疇を越えていた。

    「……名義貸し?」
    「はい。簡単に言いますとトレーナー資格を持たない人のために資格を持つ人に名義を貸すことになります」
    「その……それの何がいけないんですか?」
    「URAの公平性に反しています。貴女の場合は中央の資格を持たないウラワのトレーナーが、中央に移籍させた後も実質的なトレーナーとして中央トレーナーに指示を出しておりました。これは明確な違反行為となり」

    ウラワ?ウラワにいた時のトレーナーが違反行為をしていた?

    「ウラワと中央のトレーナーはトレーナー資格を剥奪、トロットサンダーさんが所属しているチームは解散となります」
    「…………?」

    脳が理解を拒む。ウラワと中央でお世話になってきたトレーナーたちが違反行為して剥奪。
    これが重大な事はわかる。

    「端的に言えばトロットサンダーさん。貴女は無所属となります。知っておいででしょうが、チームに所属していないウマ娘はレースに出走できません」
    「私は走れないんですか……?」
    「再び新しいチームに入ればまた走れます。もちろんこの異例の事態にURAも協力するそうで、例のトレーナーのチームの面々を移籍させるよう他チームに掛け合っています」

    それならば話は早い。新しいチームを探してまたそこで走ればいい。たづなさんにお礼を言って早速新しいチームを探しに方々のチームを訪れた。

    ――しかし、新しいチームは見つからなかった。

  • 50121/11/14(日) 21:57:35

    何日経っても新しいチームは見つからなかった。同じチームの子のほとんどが新しいところに所属しまた走り直しているというのに。
    訪れたチーム全てに断られた。スカウトしてきたチームも無かった。
    自惚れかもしれないけどG1を2つも勝ったし、実力的には申し分無いという自信もあった。だが入れなかった。

    疲れはて、お気に入りのベンチに腰を降ろす。

    気付けば1ヶ月経っていた。
    チヨノ曰くかなり窶れているらしく、確かに鏡の中の私はまるで別人の様だった。安田記念を勝った時とはまるで別人だ。笑いさえ出てくる。

    「……厄ネタには関わりたくない、か」

    そして1ヶ月チームを探して出た答えがこれだ。名義貸しとやらの中心は私だ。言ってしまえば私のせいで2人はトレーナー資格を剥奪された。
    そんな私をチームに入れたらマスコミの相手が面倒になる、そう考えるトレーナーが出てくるのは自然だろう。
    そしてもうひとつ。私の年齢だ。
    私は中等部の時に本格化を迎えた。そして今は高等部。ウマ娘のアスリートとしての寿命は短い。私が全盛期を過ぎ衰え始めているとここのトレーナーたちは考えているらしい。

    「走りたいだけだったのになぁ……」

    私はただレースで走りたかっただけだ。ただその辺を走るのとはわけが違う。あの興奮と熱狂の場でこそ私は走りたい。
    それでも何れ引退をしコースから去る日が来るのはわかっていた。それでも私が満足して去れるのなら、それはそれで良かった。だというのに、これでは余りにも理不尽だ。
    目の前の私の足と近くにある拳大の石を見て、薄汚れた考えが思い付く。

    「……もう、いらないか」

    私たちウマ娘の力なら、石でも使えば足くらい潰せるはず。もう使えないのなら、使わせてもらえないのなら、こんなものはもういらない。
    疲れたんだ、もう。そうして振りかぶって、足に向かって振り下ろし――

    「やめろ!」

    ――たはずの手は誰かに止められた。

  • 51121/11/14(日) 21:59:01

    「オグリキャップさん……?」

    私の腕を掴んだのはオグリキャップさんだった。

    「チヨノに言われて来てみれば、どうしてこんなことをするんだ! 君の足が潰れてしまうところだったんだぞ!?」

    はじめてお会いしてから何度か食事を共にすることが出来たけど、ここまで感情的になっているのははじめて見た。

    「もう、いいんです。もう走れないので、使う必要はないので……」
    「本当にそう思っているのか?」
    「だって、誰も私を走らせてくれないんです……! やっと、やっと勝てる喜びがわかったのに!」

    私が何をしたって言うんだ。
    私はただ走れれば良かったのに、それすら奪われてどうしろって言うんだ。

    「はぁ……はぁ……トロット、さん……」

    遅れてチヨノが息も絶え絶えといった様子でやってきた。
    オグリキャップさんはチヨノを置き去りにするほどのスピードでこちらに駆けつけたようだった。

    「君の足が無事なのはチヨノのお陰だ。最近君の様子が変だと私に相談してくれていたんだ。そして今日予定が空いたから来てみれば君が足を潰そうとしていた」
    「そんな、無事じゃなくても」
    「そういう物言いは君と君を想うチヨノと君が戦ってきたライバルと君のファン、全てに失礼だ」
    「でも……」
    「……君に会わせたい人がいる」

    そう言うとオグリキャップさんは自分とチヨノが来た方向を向いた。
    そこから人影がひとつ、近付いてくる。

  • 52121/11/14(日) 22:00:10

    ピッチリとしたスーツ姿の女性が笑顔でやってきた。

    「はじめまして、トロットサンダー」

    スーツ姿に襟元にトレーナーバッチ。
    間違いない、この学園のトレーナーだ。だが、今さらトレーナーが何だと言うんだ。

    「ごめんね、関西の方に出張やらライスの復帰戦に研修にでここを長く空けていたんだ。すぐにでも駆けつけたかったのに時間がかかってしまった」

    オグリキャップさんと同じくらいの背のこのトレーナーはまるで子どもかのような笑顔でこちらに話しかける。

    「名乗っていなかったね、私は、チーム"シリウス"のトレーナー」

    トレセン学園にいて"シリウス"の名を知らないウマ娘はいないだろう。

    「"シリウス"と言えば超強豪チームでしょう。そんな人が私に何の用事ですか?」

    "シリウス"のトレーナーは心底不思議そうにこちらの発言に首を傾げた。

    「……ここにトレーナーバッチを持った人がいて、そしてここにフリーのウマ娘が1人いる。ならやるべきことはひとつじゃない?」

    そうして笑顔でこちらに右腕を差し出す。

    「君を、スカウトしに来た」

  • 53121/11/14(日) 22:01:20

    「スカウト……?」
    「そう、スカウト。私と一緒に夢叶えない?」

    あくまで"シリウス"のトレーナーはにこやかに笑いかける
    ……スカウト。
    待ち望んだ言葉だというのに、私はそれを信じられずにいた。

    「今さら……!」
    「信じられない? ならその石で私の手でも足でも潰せばいい。それで信じられるのならそうしてもいいよ」

    何をバカなことを。
    ウマ娘の力で人の手足を石でも使って殴ればミンチにでもなってしまう。
    それだけ本気ということなのか、この人は。

    「……なら何故私をスカウトしようとしたんですか」
    「私はウマ娘の走る姿が好きなんだ。そして無念の内にレースを去る姿が一番嫌いだ」

    君のようなね、とさっきまでの笑顔は消え真剣そのものの表情で私を見てくる。

  • 54121/11/14(日) 22:03:42

    「満足して去るのなら私に止める資格はない。だけどまだ走りたいのに、走れない。それが怪我であれ何であれ。そんな子を私は見過ごせない、見過ごすわけにはいかないんだよ」
    「なら何故私を? 私は自分の足を潰そうとしたのに? そんなウマ娘、あなたのチームにいても邪魔になるだけではないですか?」

    どうにかして差し伸べられた腕を払おうと乱暴な言葉を投げ掛ける。しかし目の前の人は決して腕を動かさない。

    「……でも君はまだ、走りたいでしょ?」
    「……それは」

    ダメだ。この気持ちに嘘なんてつけない。
    そうだ、私は走りたい。
    走れるというのなら、いくらでも。

    「それだけじゃない。君はこうも想っているはず。"勝ちたい"と」
    「……勝ちたい」

    "勝ちたい"。
    私にも最近漸くそれがわかった。
    とっても難しいことだろうけど、とっても得たいもの。私をレースへと駆り立てるもうひとつの理由。

    ……ずっと無言でこちらを見つめるチヨノが目に入った。
    また、チヨノに迷惑をかけてしまった。彼女にまた勝つと宣言したのにこの体たらくは情けないことこの上ない。だからまた謝って、また走って、そして勝つ。また見ていて欲しいから。

    それだけじゃない。もしこれが運命だと言うのなら、私はそれに勝ちたい。3度走りを奪われてもまた走ることで、この運命に打ち勝つ。
    だからこそ叫ぶのだ。魂の底から。本当は私はどうしたいのかを。

    「――"勝ちたい"!」

    差し伸べられた手をとる。

    「私も、君と"勝ちたい"」

  • 55121/11/14(日) 22:05:43

    ――1年後。

    『トロットサンダー、1年ぶりのレースとなります。前年の覇者はこの府中の舞台で再び雷鳴を轟かせることが出来るのか』

    実況からの声を聞きながらオグリキャップと"シリウス"のトレーナーはそれを感慨深い想いで見つめる。

    「色々と時間がかかってしまったけど、こうして彼女は再びレースの舞台に立っている。君たちのお陰だよ」
    「私はただトロットをトレーナーに紹介しただけだ」
    「私こそ何もしていないよ。前に進むと、夢を叶えるとそう言ったのはトロットだ。私はそれを信じただけ」

    謙遜するトレーナーにオグリキャップはそれでもと反論する。

    「トロットだけじゃない。ライスを再びコースに立たせたのも、ブライアンの姉妹喧嘩も全てトレーナーの手腕だ」
    「……そういうことにしておこうか。でもこれだけは言わせて欲しい。ウマ娘を信じるのが私たちの役目だ。例え折れてもまた立ち上がりたいのならそれを支えるのが義務だ。夢を夢のまま終わらせてはならない」

    それがこのトレーナーの強さなのだろう。
    ウマ娘と共に歩み、信じ、支える。
    夢はきっと叶うからと言い続ける。

    「……将来、トレーナーになろうと想うんだ」
    「君なら叶えられるよ」
    「ありがとう。……私もいつか引退する時がくる、その後どうするかずっと考えていた。それで今回の件でその後がわかった。……私も誰かの夢を信じる立場でありたい」

    "シリウス"のトレーナーの様にはいかないかもしれない。
    けれど誰か1人でも支えられるはずだ。

    「いつか私のところから、誰かの……いや、皆の"ヒーロー"や"アイドル"になる、そんな子を育てられたら。そう想うと楽しいんだ」
    「そっか。その時はライバルだね。お手柔らかに頼むよ」
    「あぁ。容赦はしない!」
    「お手柔らかに、頼むよ……」

  • 56121/11/14(日) 22:08:10

    『芦毛のウマ娘は走らない』

    そんなジンクスは自分たちの脚で破った。

    『ウマ娘にトレーナーは向かない』

    このジンクスも自分の腕で破った。
    ルールだろうと常識だろうと自分の歩みを止める理由にはならないから。


    ――あれから、いくつか季節が巡り。

    トレセンに新しいチームが生まれた。
    その名は"プロキオン"。
    率いるはかの"芦毛の怪物・オグリキャップ"。
    そしてその扉を叩くウマ娘が2人。

    「ミンナノヒーローと言います!あたしを"プロキオン"に入れてください! あたしオグリキャップさんの大ファンなんです!」
    「レディアイコです。姉が心配なので私も"プロキオンに入れてください」

    この芦毛の姉妹に何か特別な縁を感じたオグリキャップは二つ返事でそれを許可した。

    「"プロキオン"のオグリキャップだ。よろしく頼む」

    嬉しそうに喜ぶ姉妹を見て浮かんだ柔らかい笑みと共に、ひとつ質問を投げ掛ける。
    トレーナーとして聞かねばならない、そして叶えなければならないことだ。

    「まずは、君たちの夢を聞かせてほしい」

    新しい一等星たちが、どんな輝きを見せるのか。それはまだ誰も知らない。

  • 57121/11/14(日) 22:10:14

    『ヒシアケボノ既に400を通過! ジュニュインもそれに続く!』

    体が熱い。
    この興奮、この熱狂。
    ここにいると私に伝えてくる。

    『そして大外からトロットサンダー!! マイルの雷帝が1年の時を越えて雷鳴を轟かせる!!』

    私はここにいる。生きている。

    『タイキブリザードが突っ込んできた!! 前年の雪辱なるか!? トロットとタイキ並んだ!』

    ――ウマ娘にとって一番の無念とは何か。

    勝てないことか?
    それも確かだろう。負ければ悔しい。
    しかし私にとっての無念とは走れなくなってしまうことだ。

    3度、私の走りは失いかけた。しかしその度に、時には人の力を借りて、立ち上がった。そうして何度折れてもその度に立ち上がり、また走り出す。
    そして走って走って走りきったその先で、私はここにいる、生きていると叫ぶ。そこにいる全員に向けて。
    私もいつかここを去る時が来る。しかし記憶からは去らない。
    全員の記憶に残り続けるのだ。見た者の瞳に全てに等しく焼き付き、永遠に耳から離れない、雷鳴の如く。

    『トロット!タイキ! ジュニュインか!しかしトロットとタイキ!タイキブリザードかトロットサンダーか! 今縺れあってゴール!』

    私は私を証明するためにここにいる。

    "トロットサンダー"。

    それが私の名だ。

  • 58121/11/14(日) 22:22:19

    以上となります。
    史実では安田記念の後に引退して種牡馬入り、重賞馬を出しますが若くして亡くなってしまいます。その重賞馬がチヨノカツラとの子、ウツミジョーダンです。
    恐らく今ではトロットサンダーの血は繋がっておらず、何故かそこまで知名度も高くなく、馬主の関係上ウマ娘になることも厳しい……と今後表舞台に出るのが難しそうな競走馬の一頭です。
    なので忘れられたくない、というのは自分の願望丸出しの設定なわけです。誰か1人でもトロットサンダーを知ってほしいとssを書いた次第であります。それとミンナノヒーローも救済して欲しいから書きました。
    最後に、無駄に長く拙い文章でしたが、ここまで読んでくださりありがとうございました。

  • 59二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 22:36:58

    熱意やばない?
    良かった

  • 60二次元好きの匿名さん21/11/14(日) 23:37:31

    名作age

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