【SS】ワンダーアキュートの決めポーズの話

  • 1二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 17:50:54

     拙者、普段は退廃的概念好き侍。一太刀失礼致す。
     アキュート殿のG1勝利ポーズ、おデジのそれにちょっと似てるってところから着想を得しSSなれば、しばしお付き合いいただけると幸いに候。

  • 2二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 17:51:31

    「G1に勝った時の、ポーズ?」
     担当ウマ娘、ワンダーアキュートから提案されたのは、届いたばかりの勝負服を着ての、ダンスレッスン中のこと。

    「そう、勝利ウマ娘インタビューの時に、最後にお願いされるでしょう」
     ……なるほど、インタビュー前の撮影用の演出は、各々の個性が出る。勝ったあとに考えるのが原則だが、中には予め考えている子もいるとは聞く。

     初めてのG1に向け、ここ数日はハードなトレーニングが続いている。多少時間は割くだろうが、気分転換には悪くないかもしれない。

     それに『勝った時』の具体的なイメージを持っておくことも、モチベーションに繋がるか。

    「…やっぱり、取らぬ狸の、かねぇ」
     彼女が眉を下げながらうつむく姿を見て、自分の表情が険しくなっていたことに気付く。

    「いや、いいと思う。当日慌てないように、ついでに決めておこうか」
     彼女の不安を振り払うように笑顔で答えれば、倒れていた耳がぴんと立った。

  • 3二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 17:52:05

     …とはいえ、どこから決めたものだろう。そう考えて、『アドバイザー』になってくれるだろう存在を思い出す。

     おそらく背後にいる彼女に、声をかけてみる。
    「そうだな…アグネスデジタルさん、どうしたらいいと思う?」

    「は、はいっ!?月並みで恐縮ですが過去の皆様のポーズを参考にするなんてどうでしょうそしていつからこちらの存在にお気づきでっ!?」

     意見を述べつつ驚く、器用な反応が返って来た。視線こそ向けてはいなかったが、時折「尊い…」「あっ好き…」などと、漏れ出るような声が聞こえていれば、いやでも気付く。

    「最初のほうから、見てくれてたみたいだし」
     おそらく最初から見ていたであろう、アキュートへ確認すれば。大きな頷きとともに同意が返ってきた。

    「えぇ。お客さんがいたら気合が入るし、ありがたいなぁって思っとったのよ」

    「ア、アキュートさんも!?…ま、まさかさっき目線があった気がしたのも…」

    「ふふ、気じゃなくて、本当にあってたのよ」

    「ひぇ…」
     その後、短い気絶から帰ってくると、無数の謙遜を述べつつも、しばし協力してくれることになった。

  • 4二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 17:53:05

    「あ、あのあの、デジタル、で結構ですのでっ」

    「わかった。デジタル、ありがとう」

    「じゃあ…デジタルちゃん。よろしくねぇ」

     ウマ娘、アグネスデジタルといえば、自他ともに認める『ウマ娘ヲタク』であるとともに、G1級レースで勝ち星を重ねる実力者の一人だ。

     …その輝かしい戦績からすれば、本来委縮するのはこちらではないか、という気もするが。本人たちは、お互い特に気にしてないらしい。

  • 5二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 17:53:29

    「こちらこそ、よろしくおねがいします!……では早速…今映像がある方だと…」
     そう言いながら、スマホから、さっそく何人かの映像を見せてくれた。

    「…ふむ、やっぱりくるくる回るの、可愛いわねぇ」

    「わかります…マックイーンさんとか、スカーレットさんとか、華やかですよねぇ…」

     やってみようかしらと言いながら、アキュートが数歩、鏡の前へ。
     手本よりもゆっくりと、一回転。ふわり、と裾が舞う。
     …最後にちょっとだけよろめいて、ポーズ。…なぜか、Vサイン。

    「あたしがやるとゆーっくりになっちゃうから、あんまりカッコよくないかしら」

    「むしろそのゆっくりさに魅力が…穏やかな表情……尊…」
     デジタルはそう呟いて天を仰ぐと、意識を失った。

    「うーん、周りにぶつからないようにしないといけないし…デジタルちゃん?」

  • 6二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 17:53:56

     デジタルは短い気絶から覚醒すると、次なる映像を繰り出す。
    「で、では!あんまり大きく動かないのだと…タキオンさんのとか!」

    「おお~、袖をふりふりするのもいいねぇ…ふりふり~、ふふ、どうかしら」

    「ちょっと動きがふわりとして…良…」
     デジタルはそう呟いて天を仰ぐと、意識を失った。

    「うーん、袖がもうちょっと大きい勝負服じゃないと、動きが小さいかしら…デジタルちゃん?」

  • 7二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 17:54:20

     デジタルは短い気絶から覚醒すると、次なる映像を繰り出す。
    「そうですねぇ……勝負服関係ない、シンプルなのだと…オグリさんのとかどうでしょう」

    「おぉ~、最後にお腹が鳴るの、かわいいねぇ」
    「いえ、それは天然というか…偶然というか」

     仁王立ちで、腕を突き上げ。…腹の虫を聞いて、お腹をさする

    「…さすがに、今は鳴らんねぇ」

    「困った顔でおなかさするの可愛…」
     デジタルはそう呟いて天を仰ぐと、意識を失った。

    「…毎回ちょうどよく鳴らせるよう、練習しなきゃかしら…デジタルちゃん?」

  • 8二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 17:55:13

     デジタルは短い気絶から覚醒すると、次なる映像を繰り出す。
    「あとは…ファインさんとか、ブライトさんみたいな、手を合わせるの、どうですか?」

     デジタルが見せてくれた映像を見て、アキュートがぽむ、と手を打つ。

    「そういえば、デジタルちゃんのも、こんなのだったわね。よかったら、見れないかしら」

    「覚えて下さってありがとうございますっ!?…でも、え、えっと、最後に取るポーズがまぁ、それっちゃそれですけど」

     自分のポーズの話に行くことは予想外だったか、いつにもまして歯切れが悪く、いつにもまして早口だ。

    「えっと……そうだ、申し訳ないのですが、自撮りは入ってなくてぇ…」
    …そう言いながら、表情はあんまり申し訳なくなさそうで。

    「あら、よくわからんけど、そうなのねえ…トレーナーさん、持ってたりせんかねぇ」
     流石に担当外の子のインタビュー映像までは……断りかけて、はたと思い出す。

    「そうだ、先輩なら」

    「し、失礼ですが、せんぱいってまさか」

    「うん、デジタルの担当の…あ、『いる?』って送ってくれてる」

    「な、なんでそんな自主的に……」

    「さっき、こういう相談のため、担当をお借りしますって連絡したからね……あと、『推し活』だって」

     顔を真っ赤にしながら口をぱくぱくさせるデジタルには申し訳ないが、担当の頼みは断れない。三人で送られた映像を見る。

     余談だが、先輩がスマホで録ったその姿は、他の物以上に、アングルにこだわっていた、気がする。

  • 9二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 17:56:12

    「おお~…これ、すごくいいかもしれんよ。まねっこしてみてもいいかしら」
     回転もしてるし、動きも忙しいが……アキュートの中では、思ったより好感触だったらしい。

    「いや~、お目汚し失礼しまし…アイエエエ高評価?高評価ナンデ!?」

    「だって、くるくる回るのも、最後のポーズも、すっごく可愛かったもの。……でも、やっぱりそのまま真似するのはよくないかしら」

    「えっあっ、こんなのでよければ、っていうか、こんなのでいいのかっていうかぁ…」
     謙遜を聞き流しながら、うきうきした様子で、アキュートが実行に移す。

    「こうして、こう回って…手は、こう?」

    「ひょええっかわいっ」
     確かに、かわいい。普段みることのない慌てたような表情も、全体的にちょっとゆっくりなのも。

    「本当?ならこれにしようかしら…ええと、『ありがたきしあわせぇ~』」

    「あっあっ台詞までは真似しなくてもっ脳溶けっ……しゅき……っ!」
     ついに許容量を超え、今度こそ限界に達したデジタルを保健室に連れて行ったのち。
     改めて、ダンスレッスンの続き……センターの振り付けの練習を、再開するのだった。

    「ダンスも、ポーズも……みんなのまえでお披露目できるよう、頑張らんとね」

  • 10二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 17:57:16

     後日。いつぞやと同じような、ダンスレッスン中。

    「いやぁ、いざ勝っちゃうと……あんなに舞い上がっちゃうなんてねぇ。おかげでお手本通りにはできんかった……ごめんよ」

    「と、とんでもないです!あたしの前半パニくってるだけだった無駄な動きを省きつつ、
    そこにアキュートさんのほっこりした可愛らしさが足されて、
    全体としてより素晴らしいものに昇華され…最後の微笑みはもはや…もはやぁ・・・感謝・・・!圧倒的感謝・・・!」

    「拝みたいのはこっちのほうよぉ。……そういえば、トレーナーさんには聞かず終いだったけど……考えてたの、あったかしら?」

    「一応、ね」

     今回は二人の自主性に任せた結果、出番はなかったが。聞かれたときのために、考えていたのがひとつ。待ってましたと頷いて、軽く咳払いする。

     仁王立ちで構え。手を突き上げ、お腹からの声で。

    「1! 2! 3! ダー!」






    「えぇと…おふたりのお力になれて、本当に良かったです」
    「本当に、デジタルちゃんがいてよかった、ありがとうねぇ」

  • 11二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 17:57:50

    以上に御座る。長々と失礼いたした。

  • 12二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 18:06:21

    忝のう御座る
    拙者デジタル殿より多数気を逸し候えた

  • 13二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 18:37:24

    読了いたした。今宵もよき太刀筋でした
    細かきことなれど、アキュート殿が手を打つ音が『ぽむ』なの愛らしくてすき

  • 14二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 21:49:10

    天丼は基本。

    それとオチw
    トレーナーは「お前の担当にそれはちゃうやろ」って言いたい。www

  • 15二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 23:42:59

    珍しい組み合わせ助かる

  • 16二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 23:48:36

    こう言う繋がりも素敵だな…

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