ここだけダンジョンがある世界の掲示板 イベントスレ第139層

  • 1『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/11(土) 19:47:18

    このスレは「ここだけダンジョンがある世界の掲示板」の番外編みたいなものです

    異世界に召喚された至宝詩編と同じく召喚された勇者達を中心にしたSSスレになる予定です

  • 2『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/11(土) 19:48:43

    【現在の状況】
    異世界の神に召喚された。
    外界神の侵攻に対し、その尖兵である魔物の親玉『魔王』の討伐を依頼される。
    魔王を倒せば尖兵は全て消え、その隙に強力な結界を張れるらしい。
    その場で帰還の確約を貰い、各地に振り分けられた。
    まだ余裕のある段階で呼び出されていて、各国が政治的な活動に集中し始めている問題が発生している。
    勇者は至宝詩編を除いて約20人はいるらしい。そのうち一人が逃げて、一人が死亡したと見られる。巨人の国が半壊した。
    至宝詩編が動いて、主だった国と勇者が集合し、紆余曲折あったが方針を一致させた。
    魔王は反撃以外に目立った動きをしていない。
    リーダーを《仁聖》に据え、副リーダーに《交渉人》と《熱剣士》がついた。
    掃除屋と《ブロック》が巨人族の復興に向かい、掃除屋はそのまま偵察任務。《ブロック》は復興と同時に要塞化を進める。
    現在、おとなしい魔王とその軍勢に対し『削り』をいれるか思案中。
    削り作業を行い、軍編成と勇者の配置が完了し、戦争間近

  • 3二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 19:49:16

    (※サムネがちょっと集合体っぽくてゾワッとしてしまった…)

  • 4『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/11(土) 19:54:04

    ・勇者一覧
    《塩漬け》…エルフ族勇者
    《絶壁》…ドワーフ族勇者
    《熱剣士》…大国勇者
    《掃除屋》…妖精族勇者
    《仁聖》…教国勇者
    《率団》…小人族勇者
    《守銭奴》…商国勇者
    《鉄壁》…獣人族勇者
    《影》…ドヴェルグ族勇者
    《イエスノー》…王国勇者
    《ブロック》…嶺国勇者
    《神速》…天使族勇者
    《無垢糸》…蟲人族勇者
    《聖剣》…ダークエルフ族勇者
    《多妻》…悪魔族勇者
    《先生》…多種魔族連合勇者
    《交渉人》…帝国勇者
    《学徒》…都市国家郡勇者

    (以下、至宝詩編未確認)
    《無尽機》…機械族勇者
    《嵐災》…ハーピィ族勇者
    《流星》…巨人族勇者
    《英雄登竜門》…公国勇者
    《未確認》…共和国勇者
    《蛮勇》…寒村勇者

  • 5『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/11(土) 20:06:58

    【勇者の配置】
    ・連合軍前線
    《塩漬け狩り》…義勇遊撃軍(寄せ集め)指揮官
    《仁聖》…教国軍最前線1
    《鉄壁》…教国軍最前線2
    《無垢糸》…蟲人族軍帯同
    《多妻》…悪魔軍帯同
    《学徒》…都市国家郡統合軍帯同
    《掃除屋》…威力偵察、観測気球

    ・連合軍本陣
    《絶壁》…防壁、魔法医療担当
    《率団》…情報共有装置
    《先生》…科学医療担当
    《交渉人》…参謀
    《ブロック》…要塞補修、兵站担当

    ・魔王討伐(暗殺)特別部隊
    《熱剣士》…一応指揮官
    《守銭奴》…鉄
    《影》…砲
    《イエスノー》…玉
    《神速》…ズ
    《聖剣》…☆

  • 6『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/11(土) 20:44:28

    【作戦5時間前】
    《塩漬けside》
    【半壊され要塞化された巨人の国の中、その会議室の一室に勇者全員が集められていた】

    「それでは最終確認を始めようか?」

    【そう言ったのは《仁聖》だ】
    【こいつは一応俺達のリーダー。旗頭という扱いになっている。見た目は白銀の長髪の青い目をした豪奢な煌めく鎧を身につけている、いかにもお伽噺の中から出てきた様な奴だ】
    【それでいて強く、優しく、賢く、真面目だが時に冗談だって言い交わせる性格だ。一言で言えば俺らの中で一番『勇者』っぽい奴で、だからこそリーダーになってもらった面が強い】

    「では、まずは作戦概要から始める」

    【《仁聖》から引き継いで話し始めたのは《交渉人》の奴だ。黒スーツに髪を油で撫で付けた様な風体の背の高い男だ】
    【初っぱな俺達(至宝詩編)を疑ってかかった奴ではあるが、それは恐らく疑惑を早めに解消しつつ、自分の能力を知らしめるパフォーマンスだったんだと、今ならわかる】
    【その後、こいつは勇者側の交渉人として積極的に各国との調整をこなしたが、正直かなり悪どい手を使った事は想像に固くない】

    「今回の作戦はカウンターに対するカウンターだ。魔王の尖兵たる魔物は、進攻された分だけ進攻をし返す。これは間違ってないな?」
    「そんなの散々確認したじゃないか?」
    「それは間違いない」

    【仏頂面で割り込んだのは《守銭奴》と《影》だ】
    【《守銭奴》は熱剣士並みに顔がいいが、反比例するようにキツい性格をしている。《影》は一見鋭く冷淡な奴だが、鋼鉄人の様に変身し、その戦いぶりを見る限りは芯の熱い奴だと言うのはわかる。どちらも、個人の戦力は俺以上なのは間違いない】

  • 7『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/11(土) 21:37:36

    「えー? それを確認する場じゃないの?」

    【幼げな口調でそう言ったのは、《無垢糸》だ。見た目はアルケニーに似ているが、それはそういう風に改造されたというのが本人談だ】

    「ふふ、そうですね」

    【と微笑んだのが《多妻》。文字通りのハーレム野郎だが、その性格は聡明で誠実、事前準備は決して疎かにしない用意周到な面がある。童顔で身長はあまり高くないが、しっかり成人しているらしい】
    【《無垢糸》に微笑む。出会った当時なら色々心配したが、今は何の心配もしていない。奴の背後には奴の嫁さん八人が待機しているが、その嫁さんも穏やかな顔で《無垢糸》に微笑んでいるからだ。夫完全に信頼しているらしい】

    「話が脱線している。元に戻そう」

    【棒読みでそう言ったのは《神速》。ただし奴は壁に鼻先がつきそうな場所でそう言っている。……こいつに関してはこういった行動が常なのでもはや誰も気にしていない】
    【咳払いした《交渉人》が後を続ける】

    「そうだな、話を戻そう。……進攻に対しカウンターを返す魔物達は、そのカウンターを止められるとそこに戦力を集中する習性があるのが、先日の『削り』作業と掃除屋の観測でわかっている」

    【《イエスノー》がコクコクと頷く。先日、思考入力と自動読み上げ機能がついたスクロールを作ってやったが、ここで使う気がないらしい】

    「そこで各国と調整した結果、大軍を三つに分ける。一つは教国、ドワーフ・ドヴェルグ・エルフ・ダークエルフ・巨人族の中央軍。ここは一番の反撃を受けると予測されるので《仁聖》と《鉄壁》を配置する」

    「ふははははっ、任せて貰おう!」

    【大笑いして胸を強く叩いたのは全身鎧の大男《鉄壁》だ。防御至高主義を掲げるだけあり、俺らの中では一番防御が巧い。ただ、一切の武器は持たないポリシーも持っているが】
    【しかし問題ない。殴打の攻撃力も高いし、崩しも反らしも巧いため、奴がトドメを刺さなくても後ろの奴が仕留めればいいからだ。最前線を捌いて進めば、後にバランスを崩したお手頃な敵が量産されている訳だ】

  • 8詩謳う御子◆bRrRGs00cA23/02/11(土) 21:47:57

    新スレ立てお疲れ様でございました
    インテリヤクザがいるー!

  • 9『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/11(土) 21:59:24

    「そして、帝国・共和国・王国の左軍。ここは勇者は配置されないが、国力の高い国の集まりだ。さらに大国と悪魔族、天使族の右軍と《多妻》。
    これら三つの大軍の内側に小回りの効く中軍を置く。中央と右の間には、都市国家郡統合軍と《学徒》」

    「は、はい。がんばります」

    【黒髪黒目に黒い詰襟の様な服(学ラン)を着た少年が緊張ぎみに答えた。こいつの飲み込み、異常に早い。その上に女神からもらったアレがある。力を発揮できれば足を引っ張る事はないはずだ】

    「中央と左軍の間には、義勇遊撃軍と《塩漬け狩り》」

    「おう」

    【と俺は短く返す。義勇遊撃軍は義憤に駈られて集まった、国や種族に縛られない傭兵と冒険者の混合軍だ】
    【いつの間にか集まっていたこいつらは、当初捨て駒として運用されかけていたが、俺が待ったをかけて俺の指揮下にした】
    【練度も装備もバラバラだが、俺にはむしろそっちの方がやりやすい。ここ数日の間に、十分とは言えないが簡単な約束事を守らせる程度はできていた。とりあえずそれで満足するしかない】

    「残りの前線軍と勇者は後詰めとして、前線と本陣の間に配置する……其では具体的な話に移ろう。三大軍にて一斉に攻勢を仕掛け、敵の反攻を正面から受けきる。崩れそうなら二つ中軍でこれを支援し、それでも崩れそうなら後詰めがある出る。
    そうやって反攻を防いでいれば、奴らは三大軍に戦力を集中分散する筈だ。
    そうすれば敵の兵力は魔王から離れ、隙間ができると思われる。
    その隙間を空から探すのが掃除屋の仕事だ」

    「わかりました」

    【掃除屋は落ち着いた口調で言う。この中では若い方で重要な役目を担っているが、乱れは見られない。その事を少し誇らしく感じていると、《交渉人》は続ける】

  • 10『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/11(土) 21:59:50

    「そして、その隙間に飛び込み。魔王を討つのが、《熱剣士》率いる魔王討伐部隊の仕事だ。
    君らは魔物を相手にしては行けない。カウンターの対象になると作戦は破綻する。
    魔王を探し、見つけ次第、殺す。以上が作戦内容だ」

    「了解した。一応、僕が部隊長になっているが、各々自由に動いて貰いたい」

    【それに応じた熱剣士は、部隊の面々を見渡してそう言った】

    (まぁ『聖剣』は要塞の外に締め出してるがな……)

  • 11『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/11(土) 22:00:26

    い、一端休憩…

  • 12詩謳う御子◆bRrRGs00cA23/02/11(土) 22:08:19

    >>11

    お疲れ様でした

  • 13〈薄明〉◆JawX2fps5g23/02/11(土) 22:10:32

    まさかリアルタイムで書いて投下を……!?
    一旦乙です

  • 14海竜の巫女23/02/11(土) 22:11:47

    立て乙かしら!!

    ……何か魔王軍の反撃が機械的?な感じがするのがキナ臭いわねぇ、暗殺部隊はその修正を利用して作戦立てた見たいだけど。
    何も考えずにカウンターしてるのか、そう言う性質があるのか……カウンターのカウンター誘う策って事は、まさか無いとは思うけれど。

  • 15撃剣使い◆gt1ganT7To23/02/11(土) 22:12:07

    乙です
    何故か一人だけCVが付いてますね(錯覚)

  • 16『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/11(土) 22:53:14

    作戦4時間前
    《絶壁side》

    【要塞の門から前線軍が次々と出立していくのを、絶壁は見送っていた】
    【傍らにふてくされている《率団》と共に】

    「いいなぁ」

    【野太い声に反して、子供じみた口調で思わずクスリと笑う】

    「《率団》さんはこの軍の要ですかねー。いい加減諦めたらどうですかー?」
    「重要な役目を任されているのはわかる! だが、これでは退屈ではないかっ!」

    【うがーっと叫ぶ彼に絶壁は笑いながら言った】

    「退屈なら、また鱗剥がしますかー? いくらあっても足りない事はないですしー」
    「な、それは!」
    「──剥がすなら任せて下さい」

    【後ろから声がかかり、《率団》はひきつった顔で振り返る】

    「せ《先生》殿か! いや、これは《絶壁》殿の冗談だ! 決して本気ではない! そうだろう!?」
    「まー、冗談半分ですかねー?」
    「──つまり半分は本気なのですね?」

    【ピクリとも表情が動かす事なく《先生》はメスを取り出した】

    「──私も2回やって慣れました。3回目はもっと痛みを少なく剥がせるでしょう。いえ、麻酔を使わせて貰えるなら無痛で処置可能です。寝ている間に《絶壁》さんに再生して貰えば、無限に剥ぐことも可能ですね」
    「それは名案ですねー」
    「え、遠慮させて頂くっ!?」

  • 17『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/11(土) 23:13:31

    「おー、なんか面白い話?」

    【とそこに更に加わったのは《ブロック》だ。彼女は大国で合流し、ここに派遣されてからずっと居着いている】
    【この要塞を一人で作成し、徐々に武装も増やした結果。この世界でも最高の、いやかけ離れた要塞が完成していた】
    【子供が積み木で遊ぶように要塞を作っていく光景は圧巻の一言であった】

    「いえー、《率団》さんで遊んでいただけですよー?」
    「その様な言い様は流石に酷いぞ《絶壁》殿!」
    「──人で遊ぶ。その発想はありませんでした」
    「あはは、《率団》くんのリアクション面白いもんね!」
    「《ブロック》殿まで、ひどいではないか!」

    【そう言って憤慨する《率団》に私は少し真面目に言った】

    「まーまー。……冗談を抜きに言いますとー、この本陣が倒れれば、もう一度とこのような大規模な軍を興せるかわかりませんよー……ここにいる私達は本当の意味で生命線ですねー」

    「まぁねー。城壁ならいくらでも私が治すし、兵員だって補充はできるだろうけど、上級将校や将軍はそう簡単に増やせないもんね」

    「──そして、この本陣はそう言う人達が集まっている、と」

    「そう言うことですねー。相手にまともな知能があるならば、まず絶対にここを強襲してくるはずですのでー」

    「ならなぜ奴らは今、仕掛けてこない?」

    【《率団》は三人の意見を聞いて真面目な顔になった】

  • 18海竜の巫女23/02/11(土) 23:23:24

    ……あんまりにも守りが堅すぎて手を出せないから?と、言いたい所だけれど。
    魔王軍の今までの動きを見ると、何かこー、言い知れぬ不自然さ不気味さ感じるのよねぇ。
    ウチら的な視点での『まともな』知能では……無いのかな……?
    【ちょっと不安げな顔つきでスクロールをポチポチ】

    それにしてもそんなに鱗剥がれだなんて……大変ねぇ……!?
    【ウチなら麻酔有りでも嫌だなぁって顔】

  • 19『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/11(土) 23:48:18

    「これは私の個人的な推測ですがー、集まるのを待ってたんじゃないですかねー?」

    「あー、一網打尽を狙ってるってこと?」

    「──その割には彼らは積極的ではありませんでした。そうすればもっと早く一網打尽を狙えたはずです」

    「それはつまりアレなのではないか? 向こうも何かを待っている、という事ではないか?」

    「かもしれませんねー。たぶん《交渉人》さんも同じ事考えてると思いますよー?」

    「なら、何故言わんのだ? あやつは」

    「それを言っちゃうと、各国が変に守りに入る可能性がありますからねー」

    「なるほど、ちょっと危機感足りないよねここの人たちさ。だから中途半端に脅威を教えると及び腰になる可能性もあるかも?」

    「──だから、そう言った情報を与えず軍を興す様に仕向けたわけですね」

    「えぇ、そうですねー。
    それに、全員かは定かではありませんが、勇者が集まっている今は早く軍を興すのに一役買ってますしねー。
    《交渉人》さんは最初、私とその仲間に突っかかってきましたがー、内心では感謝してたと思いますよー?」

    【そこで、さらに絶壁は続ける】

  • 20『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/11(土) 23:48:45

    「たくさんの勇者が集まった事で、こちらの人々に勇気を与えたられたのは、義勇遊撃軍ができた事で明らかですがー。反面、油断も生まれてしまった可能性もありますよー」

    「なに、どういう事だ!?」

    「私が言うのもなんですが、冒険者や傭兵といった方々がー、ただの義憤で軍を編成できるまで集まるとは思いせんねー?」

    「なるほどぉ、あの人達はこれは既に『勝ち戦』だと思ってる訳ね!」

    「──戦力が大きければ大きいほど、安心が生まれ、それが油断に転ずる訳ですか」

    「もしや、敵が単調な戦法しか使わないのは油断を生じしやすくするためか!」

    「かもしれませんねー。それにプラスして、魔王は何かを『待っている』。もしくは『狙っている』考えるべきですねー。だから、本陣だからと言ってふてくされてるとー……足をすくわれますよー?」

    【最後、絶壁は《率団》の顔を覗き込みながら言った】

    「……少し、体を動かしてくる」

    【《率団》はしばし黙り、立ち上がってその場を後にする。その背中には静かな闘気が漲っていた】

  • 21『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/12(日) 00:12:46

    「わぁお、もしかして《絶壁》ちゃん狙ってた?」

    「前線ばかりが戦場じゃないと教えただけですよー」

    「──見事です。ならば先程のはすべて出任せですか?」

    「いえいえー、必ずしもそう言った訳ではありませんよー。ただ憶測の粋を出ないというだけでー……あ、今敵がここを襲わない理由を教えてませんでしたねー」


    「あ、そういえば! で、なになに?」

    「ここの守りが今は固いと言うのもえりますがー。
    個人的にはー、ちゃんと本陣が機能する前に壊してもダメージは少ないと思うんですよねー」

    「──歩いて転ぶより、走って転ぶ方が怪我が大きくなる。そういう理屈ですか」

    【おお、と《ブロック》が手を叩く】

    「すごいすごい! いやー、私作るのに夢中でなんも考えてなかったなぁ」

    「そこは役割分担という物ですよー。色々考えるのが私の役目ですからねー」

    「そっかー。それじゃ私は要塞の点検に行ってこよっと!」

    【《ブロック》が腕を回しながら、その場から離れると、《先生》は絶壁に話しかける】

  • 22『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/12(日) 00:13:47

    「──貴女は本陣になにかが、起こる。そう確信しているわけですね?」

    「そうした方がいざという時に素早く動けますからねー。心構え、という奴ですよー」

    「──なら、私も医療施設の点検をしておきましょう」

    【そうして《先生》もその場を離れ、一人残された絶壁は】

    「ありゃー、話し相手がいなくなってしまいましたよー?」

    【要塞の一番高い所で響く「エックスカーリヴァー♪(エコー)」を聞きながら途方にくれた】

  • 23『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/12(日) 00:14:09

    今日は以上です

  • 24『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/12(日) 00:18:39

    あかん、読み返すと支離滅裂だ……!

  • 25女竜騎士23/02/12(日) 00:26:45

    キャラが多いからしゃあないねん…!

  • 26雷精竜◆xSpc7yy5XY23/02/12(日) 00:44:20

    お疲れ様でした
    シリアスな笑いいいですね

  • 27海竜の巫女23/02/12(日) 07:26:47

    「つまりアレね、実際に戦が始まって、本陣が指揮系統として動き始めて重要になってから叩き潰す、と」
    「アレ……これ暗殺部隊の送り合いになる??最悪魔王が乗り込んでくる??」

    「まぁ、皆さんやる気は戻った見たいなのでそう簡単にやられはしないと思うけれど……」

    (※お疲れ様です!この手の大規模戦始まる前のインターミッション、いいよね……!!)

  • 28『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/12(日) 22:32:26

    作戦2時間前
    《掃除屋side》

    【定期の偵察任務を終えた私は、歌が少々うるさい要塞の城壁通路へと降り立った】
    【ハーピー状態からの変身を解き、そこから要塞の内側を見る】

    (もうほとんど行っちゃいましたね……)

    【残っているのは本陣防衛部隊と兵站を担っている商国と嶺国の関係者だけだった】
    【外側を見ると、最後に出立したであろう後詰めの軍の最後尾がうっすらと見える】

    (熱剣士さんも、あそこかな……)

    【等と思いながら、胸の前で拳を握る。ここ数日、熱剣士とは録に会えていない】
    【否、会えていない訳ではないが、それは勇者同士の会合や会議の場であり、私自身も復興の手伝いや偵察任務、敵兵力の削り作業も合間って二人切りの時間というのは、作れなかった】
    【自分が重大な役目を任されているのは分かっているし、そこに対して誇りも感じている】

    「はぁあ……」

    【それでも、思わずため息が出た】
    【ここに来る前、大国滞在時の事を思い出す。当初、現地の人達は私を見て「こんな少女が勇者の一人なのか」という反応を見せていた】
    【当然だと思う。明らかに幼げな《無垢糸》さんを除けば私が最年少(《多妻》の奥様の一人は同い年でした)ではあるし、それに私の能力を説明した時は「そんな力が役に立つのか?」という反応だった。さらに変身能力を見せれば珍獣扱いだった】
    【熱剣士さんと再会した時は嬉しかったし、思わず抱きついてしまったが……その後は、まぁいつもの自体が待っていた】

    「あの人は、なんであぁも女性を惹き付けるんでしょうかね……大国のお姫様にはやっかまれますし、その他の女性にも睨まれますし……第一、この国の人は危機感が足りないと思います」

    【愚痴が口に出る。言い切った後で、胸に去来したのは、虚しさだけだった】
    【要塞に戻って来たのは、一時的な休憩の為で報告自体は《率団》さんの鱗で報告済みだ。休憩を終えたら、今度は戦いが終わるまで飛びっぱなしになるだろう】

    「寂しいですよ、熱剣士さん……」

  • 29『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/12(日) 23:09:43

    「それは悪かった」
    「え?」

    【突如、背後から声がして振り返るとそこには熱剣士がいた】

    「あの、どうやって……」

    【原始精霊達は私に何か近づくといつも教えてくれる。上の反応も実際に風の原始精霊が、それとなく運んでくれた噂話だ】
    【故に、私に気づかれる事なく近づくのは、相当難しい筈だ】

    「最近気づいたが、心の中で原始精霊にお願いしながら近づけば悟られないらしい。もしかしたら僕にさ原始精霊魔法を扱う素質があるのかもしれない」

    【表情も変えず、そう言いながら熱剣士さんは私を後ろから抱き締める】

    「寂しい思いをさせしまったな」
    「え、あ、あの……どこから聞いてました?」
    「君がため息を吐いていた時からだ」
    「あう……」

    【ほとんど聞かれていた事が恥ずかしく、抱き締められた温もりが心地よい】
    【無意識に抱き締める彼の腕に手を添える】

    「まだ、出発してなかったんですね」
    「あぁ、これからだ。本当はもう出発してないと行けなかったが、無理を行って皆には待ってもらっている」
    「えと、それは……」
    「出発する前に、君とこうしたかった」

    【耳元で囁かれ、顔が熱くなる】

  • 30『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/12(日) 23:15:29

    「め、珍しいですね、熱剣士さんがそんなわがまま言うなんて……」
    「愛する人との触れ合いが少なくなれば、こうしたくもなる」

    【抱き締める腕の力が強くなり、彼の顔が自分の顔の横に来る。首筋に息が当たって、くすぐったい】

    「っ……」

    【くすぐったいけど、それと同時に愛おしさが溢れる】
    【横目で彼の顔を見た】
    【瞼を閉じいてて、相変わらず綺麗で、安らいでいた】

    (この人、こんな顔を見れるのは私だけ……)

    【愛している。そして、愛されている】
    【その自覚と自信がある。どんな女性が彼に言い寄っても、動じずにいられる】
    【無意識に、力を抜いて彼に体重を預けていた】

    (あぁ、このまま時間が止まればいいのに)

    【幸福感に包まれて、私はそう思った】
    【やがて、彼の顔が離れる。少し寂しくて、温もりを求める様に彼の方を向く】
    【目が合う】
    【熱を感じさせない表情で、熱さを称える赤い瞳に射貫かれて、動けなくなる】
    【動けなくなった私、その視界が彼で埋まっていき──唇が、熱い】

  • 31『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/12(日) 23:33:28

    【目を閉じて、その熱さに身を委ねる。その熱さで自分が満たされていく】

    (あ、舌……)

    【抵抗はしない。するわけがない】
    【先程よりも大きくて、確かな熱が流れ込んで、思わず彼の腕に添えた手を握り締める】
    【どれだけそうしていたのか、時さえ忘れ、私と彼の境界線がどこなのかあやふやになった頃、唇に風を感じた】
    【目を開けると、彼は抱き締めていた腕から私を解放していた】
    【少しの間、見つめ合う】

    「行ってくる」
    「はい」

    【彼が短く言って、私も短く答える】
    【それ以上の言葉はもう必要ない】
    【颯爽と離れていく彼の背中を見届けた後、私はその場に腰を落とす】

    「少し、休憩時間……多めにしないと」

    【体の内側に渦巻く熱が冷めるまで、動けそうになかった】

  • 32『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/12(日) 23:35:07

    ※ちょっと泥みたいに濃いコーヒー淹れてくる……

  • 33二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 00:22:02

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  • 34『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/13(月) 00:25:01

    作戦1時間30分前
    《熱剣士side》

    【僕ら──魔王討伐部隊──は要塞を出発し、待機場所に向けてひた走っていた】

    「それで、部隊長さんはわざわざ私ら待たせてなにやってたんだい?」
    「……掃除屋と会っていた」
    『そういえば恋人でしたね』

    【《守銭奴》がちゃかしに答えると、《イエスノー》が持つスクロールが彼の思考を読み上げた】

    「ははぁん? 戦の前にイチャイチャしてきたわけかい? 随分余裕なこった」
    「ああ。これが最後になるかもしれない」
    「君は厳しい戦いになると考えているわけか」

    【髪を書き上げながら言う《守銭奴》に答えると、今度は《神速》がムーンウォークで滑る様に移動しながら言う】

    「当然だろう。俺達を呼んだ女神がこれだけの数の猛者を用意する必要があった、そう考えるならそれだけの相手と考えるのが普通だ」

    【冷淡な口調で《影》が言った】

    「僕も同じ考えだ」
    『僕としては多すぎないか? という木持が強いですね』
    「私は《イエスノー》に同意だね。多すぎて、私はいらないんじゃないかと思うね」
    「それを今言った所で仕方ない」
    「愚痴ぐらい言わせてやれ。それで天罰を下すほど狭量な女神ではあるまい」

    【各々が好き勝手言いながら、それでも誰も足を止めない】
    ※すみません。中途半端ですが、今日はここまでで。

  • 35海竜の巫女23/02/13(月) 00:43:15

    「異世界の、王国貴族のご令嬢まで惹きつけるとは……勇者の肩書を置いておいても凄い魅力だよね!?」
    「でも、それでも動じずに信じていられると……甘いラブロマンスね……戦場だって事を忘れそうになるかしら」
    「とはいえ、まずは無事に帰って来る事を考えるといいかしら?所帯を持つにしても安全を確保してからじゃないと!」
    【割と『やるじゃん!?』という顔でスクロールを読んでいる巫女】

    「という訳で作戦の成功、祈ってるよ……!」
    「なぁに、件の女神が心配性なだけかもしれないし……ウン、きっとそうだよ……!!」【楽天家】

    (※おつかれさまです!)

  • 36二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 09:19:38

    (※片道4時間ぶらり一人旅25時間弾丸ツアーしてたため保守)

  • 37『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/15(水) 09:20:08
  • 38『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/15(水) 21:33:52

    作戦1時間前
    《塩漬けside》

    (誰だって死にたかねぇもんな……)

    【俺は自分に任された義勇遊撃軍の一番先頭を歩きながらそう思った】
    【背後には多種多様、練度も装備も経歴もバラバラな連中が思い思いに話ながら歩いている】
    【緊張感はあまりない奴もいるが、逆に緊張しすぎている奴もいた】

    (さて、どうすっかな?)

    【配置予定場所までに一度締めておくべか、それとも配置場所で一度締めて置くべきか】
    【そんな事を考えていると、】

    「なー、勇者さんは指揮官だろ? なんで一番前歩いてんだ?」

    【先頭近くを歩いていた、ガラの悪そうな傭兵の男が大声でそう言った】

    「ほう? そりゃまたなんでだ?」
    「いや、指揮官って言えば騎獣に乗って後ろか真ん中でふんぞり反ってるもんだろ?」

    【逆に聞き返されて、傭兵の男は困惑気味に答えた】
    【一瞬だけ周囲に目を配ると、こっちの話に興味深げに聞いているのが多い】

    「まぁ、普通そうだろうがよ?」

    【指揮官の指揮のしやすさ、状況把握のしやすさ、生存率の高さ、兵の逃亡防止を考えれば、そう考えるのが普通だ】
    【ただし、それは普通の軍での話だ】

  • 39ひりゅー(りゔぁいあさん)23/02/15(水) 21:36:42

    「ひりゅ! ひりゅひりゅ!」
    【おうえん】

  • 40『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/15(水) 21:38:34

    「俺達は、独立愚連隊同然だからな。いざ戦いになったら細かい指揮とか無意味だろ。それに正直に言えばお前らは、この連合軍の中じゃ一番信頼されてねぇんだ」

    【俺が言うと、周囲がざわめき始めた】

    「俺が名乗りあげなきゃ、たぶん容赦なく捨て駒扱いにされてたと思うぞ……用はな、お前ら大した事できねぇと嘗められてんだ」

    【続けて言うと、多少空気がピリつくのを感じる。冒険者や傭兵はメンツを大事にしている奴も多いからな】
    【こいつらが騒ぐ前に、俺は静かにハッキリと言う】

    「だからよ、見返してしちまえ」

    【また空気が変わった】

    「俺の背中について来て、大いに暴れろ。やっちまえ、見せつけてやれ。お前らの力をこの世界の連中に知らしめてやれ」

    【大声は張らない。ここで大声でこんな鼓舞をしたら戦が始まる前に疲れて使い物にならなくなる】
    【周囲の奴らの目が変わっていくのを見ながら、俺はまた前に向き直る】

    (背中から来る圧力が増したな……)

    【配置場所につくまでに、全員に今の話は行き渡るだろう。最後尾の連中にはだいぶ盛られた話を聞かされるだろうが】

    (そういうもんで、こんなもんだろ)

    【俺は自分を納得させ、粛々と配置場所を目指すことにした】

  • 41『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/15(水) 22:03:37

    作戦30分前
    《熱剣士side》

    【待機場所まで来た僕らは武器の整備をしたりしながら、そこそこリラックスしていた】
    【僕らの役目来るのは作戦が始まってから、恐らくしばらく経ってからだろう】
    【目を開けて、各々に過ごしている面々を見る。ここに来てすぐに、一度眠らせてもらった】

    「おはよう」
    「おや、随分早い目覚めじゃないか?」
    「いきなり寝ると言い出した時は、どうなるかと思ったがな」

    【近くにいた《守銭奴》と《影》が答える】

    「そういう魔法だ」
    『前々から思っていましたが、あなた方四人は本当に同じ世界出身なのですか? 扱う魔法が違いすぎます』
    「それは私も思っていた。同じ世界なのなら、似通う筈ではないか?(棒」

    【質問に答えると、《イエスノー》と《神速》が言った。僕は疑問の意味がよくわからなかった】

    「国や地方や世界が違えば、魔法に違いが出るのは当然ではないのか?」

    【そう答えると、何故か全員が困惑しているのに気づく】

    「あんたの所は地方で扱う魔法が違いのかい? めんどくさそうだね……」
    「というか世界とはどういうことだ? まるで君の世界は他の世界と繋がっているように聞こえるが?(棒」
    「その通りだ」

    【そう答えると、沈黙が帰ってきた】

  • 42『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/15(水) 22:37:38

    「僕はそんなに変な事を言っただろうか?」
    『いえ、少し驚きました。他の世界と繋がってるんですね』
    「正確に言えば少し違う。僕らの世界には『衝合』という、他の世界の一部と融合してしまう現象が発生する。
    それによって、他の世界から国がこちらに現れたりする事もある。
    特に異世界人が現れるのは珍しいことじゃない」
    「……よく世界が持つな」
    「それはこちらでも言われている。……なるほど衝合というのは、他の世界では珍しいのか」

    【認識にズレがあった事を自覚する】

    「どんなヘンテコ世界だい、あんたの所は。他にも変な所がありそうだね?」
    「変か……、そういえば一つ隠してることがあったな。
    この世界人間には聞かせられないが、君たちに言っても問題ないだろう」
    『少し怖くなって来ましたね』
    「何を隠しいる(棒」
    「僕ら四人は、元の世界では世界50位の冒険者パーティだ」

    【全員が固まるのがわかった。それに構わず続ける】

    「今は向こうで、しばらくクエストしていないので少し下がったかも知れない」
    「それは、君たちが世界で50位の強さという事か?(棒」
    「違う」
    「……へぇ、実質もっと上って言いたいのかい」

    【何を勘違いしたのか、《守銭奴》がそう言ったので否定する】

  • 43『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/15(水) 22:38:30

    「いや、もっと下だ。
    50位というのは冒険者の中の信頼度のランクで、戦闘力とイコールではない。
    戦闘力だけなら、僕らに匹敵する。或いは超える下級冒険者も存在する。
    それに軍、冒険者以外のギルド、流浪の実力者達やダンジョンマスターやモンスターを含めれば世界100位に入るかも怪しい」
    「……あっははは! そいつは愉快な世界だ、是非行ってみたいね!」

    【《守銭奴》はおかしくてたまらないという顔をした。彼女がこんなに楽しそうなのは初めてだ】

    「なんで、そんな事を隠していた」
    「君らの世界の50位を思い浮かべろ。そいつと同等と思われるのは嫌だろう。
    こちらの世界でも50位と知れれば、余計な手間や無駄が生まれる可能性があったので省いた」
    『それは、まぁ……確かに』

    【全員が納得した時、不意に《神速》が言った】

    「ああ、そうだ。コレ、そろそろ出した方がいいか?(棒」

    【そう言って、彼が掲げたのは防音の魔法がこめられたズタ袋だった──中身は《聖剣》だ。ずっと蠢いている】

    「「「「……」」」」

    【僕を含め、《神速》以外の全員が首を横に振った】

  • 44『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/15(水) 22:40:23

    ※今回はここまでで。
    ※……恐らく次には戦争始まってる……筈、だといいなぁ。

  • 45二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 00:27:11

    守銭奴さんは一人強大な力を持たされて神話級貧乏くじをひとりで引き受けてたから実際それくらい実力者がいて自分でなんとかしていく世界は見てみたいだろうな
    役目が嫌になってるわけではないし自分の守る世界はなんだかんだ好きではあるけど

  • 46海竜の巫女23/02/17(金) 00:10:46

    (※ナメられてると感じてやる気出す愚連隊これが好き)

    「塩漬けさんの隊の方はやる気は出たみたいね!とは言え装備がバラバラなのはちょっと……心配かなぁ?」
    「あまり損害が出過ぎないように、だけれどナメられないように上手い事指揮してあげて欲しいわねぇ!」
    「とは言え……ウチは指揮経験とか無いから応援しかできないけれど……」

    【ダンジョン探索と合戦は別モノよねぇ……と考えている巫女。自分が同じ事に巻き込まれたらどうしようかと考え中】
    【きっと陣地固めて引き籠りたがるなぁ……《ブロック》さんの隊が良いなぁ……という方へ思考が逃げて行った】

    「熱剣士さんの方は……遂に防音されたのね《聖剣》さん。まぁ《神速》さんが上手い事御してくれると信じて……」
    「世界の違いについては興味深いわね。衝合の無い世界――住みやすそうだけど、刺激が足りない気もするかな?」

    【スクロールを読みながらそんな事を考えて。割と変な技術を見るのは好きなんだなと、自分でも思った巫女】

    「個人的な予想だけれど、《神速》《イエスノー》《聖剣》さんは何かブッ飛んだ戦法をしてそうだから――」
    「……《影》《守銭奴》さん当たりの戦い方から何かを学べれば嬉しいな――って、思うかしら!」

    【でも、変な技術を見るのと、それを盗んで真似出来るようになるかは別問題だよね――と、考え直す巫女であった】

  • 47『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/17(金) 23:37:48

    作戦5分前
    《掃除屋side》

    【私は空を高く飛びながら、地上を見下ろしている】
    【ここからだと、地形がよくわかる。敵陣の一番外側にあるのは鬱蒼とした森林地帯で、しかし、ぽっかりと空いいる空間がある】
    【一番最初に攻め行った巨人族が通った後であり、その後私達が敵兵力を削っていた時に更に切り開き、整地した後でもあった】
    【その先には起伏のある剥き出しの地面があるらしいが、そこは魔神の尖兵足る魔王の軍勢がひしめいており、地面は見えない】

    (相変わらず、目がチカチカします……)

    【敵は真っ黒か真っ白かのどちらかで、遠目からは白黒のモザイクが蠢いている様に見えた】

    (お陰で魔王がどこにいるか、……わからなかったんですよね)

    【更に彼らの姿は千差万別で、人型から獣、虫、魚など様々だが、不思議と空を飛ぶ物はいないかった】

    (だから、こうして偵察できているんですけど……)

    【と、私は上からだと『州』の様に見える本軍の右を見る】
    【そこの構成員には、空を飛べる天使族と悪魔が多く配属されている。飛ぶ敵が出てくるかも知れない事を考えれば、最低でも左右に分割して欲しかったが】

    (政治、ですかね……)

    【思わずため息をつきそうになる。後詰めにも空を飛べる獣人族の方がいるが、数は心許ない】

  • 48『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/17(金) 23:38:11

    「それでも、やるしかないですからね」

    【そう踏ん切りをつける。もはやうだうだしている時間ではない】
    【その時、懐に入れて置いた《率団》さんの鱗から内側に響くように声が聞こえた】

    『諸君、時が来た。無遠慮に踏み行った奴らを我々の世界から叩き出す応報の時間だ』

    【その声は、この世界の人間の、大将軍に据えられた人の物だった】

    『決して臆するな。我らには女神の加護がある。力ある勇者たちがついている。彼らと共に行こう』

    【そこで、少し溜め】

    『全軍に命じる──攻撃開始』

    【戦いが、始まった】

  • 49『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/17(金) 23:38:37

    ※今日はここまで

  • 50海竜の巫女23/02/19(日) 04:58:33

    「天使と悪魔、こっちの感覚で考えると仲が悪そうにも思えるんだけれど――向こうの世界では違うのかしらね?」
    「或いは国同士の括りで軍を組んだ時に、余り物として纏められたとか!?」
    「流石に魔王軍相手の戦いなら協力はするだろうけれど……」
    【スクロールに図面を書きながら読んでいる。所々、巫女考案の『スゴイ作戦』のメモが書かれている様だ】

    「空を飛ぶ敵……悪のドラゴンとかはどの世界にも居そうだし、そう言うのが群れで出て来ると厄介なのかな?」
    「ダンジョンとかじゃあんまり機会は無いけれど、纏まった人間の塊とかブレスの良い的だしねぇ」
    「そう言うのを防ぐ空軍が居ないのは不安要素ね……掃除屋さんなら後れを取る事は無いとは信じてるけれど」

    「……油断はせずに、十分気を付けて、それで存分に戦って来てね!

    (※お疲れ様です!遂に始まる戦い……これだけの視点と戦場を捌き切るのは大変そうだ……)
    (※『至宝詩篇』の戦い、勇者達の奮闘と、後は愚連隊の行く末と気になる点は多々ありますが、無理はなさらずに!)

  • 51『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/19(日) 20:07:01

    作戦開始15分

    【立ち上がりは小さな物だった】
    【三つの大軍、二つの中軍は少しずつ歩を進めていく】
    【蠢いていた敵はその振動を関知して、そちらに向きを変えていく】
    【お互いに徐々に間を詰めていく中、一番前を歩く中央軍の、更に先頭にいた二人はというと】

    「一番槍は俺の役目かな? 《鉄壁》殿」
    「喜んでお譲りするぞ《仁聖》殿!」

    【緊張感なくやり取りをして《仁聖》は剣を抜き、力を溜めていく】

    「ふむ、接敵まで時間があるというのはありがたい」

    【呟き、剣が光輝いていく】

    「素晴らしい力を感じますな!」
    「開戦の狼煙だ。派手に行こう」

    【もう目視で敵がはっきり見える位置にいても二人は変わらない】
    【敵が速度を上げて迫る。そして──】

    「〈煌めく剱〉(ブライトセイバー)!」

    【──光が爆ぜた。敵は消し飛び、その輝きは全軍が目にする事になった】
    【それを皮切りに、三軍が一気に進軍速度を上げる】
    【左軍は魔術師達が予め用意していた戦略級の合同魔術を放ち、右軍は《多妻》含めた天使と悪魔の魔法が炸裂する】
    【完全に先手を取り、崩れた前線に前衛達が躍り出る】

  • 52『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/19(日) 20:27:02

    【その中で最も異質だったのは『鉄壁』の姿だった】

    「ふはははははっ! 防御こそ至高ぉ!」

    【彼は全身甲冑に身を包み、両手にタワーシールド。肩に菱形のショルダーシールド。背中にカイトシールド。更にその上に予備のタワーシールドを二枚背負った姿だった】
    【そんな重装備を物ともしない突進力で、敵を掻き分けなぎ倒していく】
    【しかし、止めを差しているわけではないので、その後処理はドワーフ達の重装歩兵達が討ち取っていた】
    【エルフ達も弓矢の曲射でそれを援護する】

    【勇者のいない左軍は堅実だった。魔術師達が後方に下がると同時に長槍隊が前に出て、槍襖を形成し壁を作ると、各国精鋭の騎獣隊が敵を掠める様に左右から連続で迫って敵を削っていく】
    【削る度に長槍隊が前進し、間を詰める。その左右から弓兵隊が出てきて、敵が騎獣隊に備える暇を与えない】

    【右軍の前面の大国軍は似た様な動きをする。ただし、こちらにいるのは騎獣隊ではなく個に優れた天使と悪魔だ。更に《多妻》とその奥方達も加わっている】
    【左軍に比べれば統率力は低いが、打撃力はこちらのが高い】

    【その様子は空中の掃除屋から《率団》を通して、全軍の指揮官と勇者達に共有されていた】

    「今の所は作戦通りですねー」

    【要塞の城壁から、《率団》の中継する報告を聞きつつ絶壁は遠くの戦場を見つめる】

  • 53『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/19(日) 20:34:49

    ※一旦休憩

  • 54『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/19(日) 21:53:48

    作戦開始45分
    《塩漬けside》

    【本格的に開戦が始まって30分が経過した。こちらの進軍は勢いを失いつつある】
    【中軍の一つを担う俺は、それを一定の距離を開けながら見ている】

    「たぶん、そろそろだな。お前らいつでも動ける様にしとけよ?」

    【自らのメイスとハンマーを抜きつつ、そう言うと中軍に緊張が走った。一番近くにいた傭兵が聞く】

    「なんでわかるんだよ、ボス?」
    「ボスって言うな。こっちの軍が攻め疲れを起こしているからだよ。俺が向こうなら、このタイミングで動く」

    【俺が前を見据えながら返答直後だった】

    『掃除屋より、報告。敵の反攻の兆しを確認。総員注意されたし!』

    【懐の鱗から内側に響くように声が聞こえた】

    (やっぱりな)
    「本陣からの報告だ! 仕事の時間は近いぞお前ら!」
    「おう! おめぇら、ボスに恥かかせんなよ!」
    「だからボスって言うんじゃねぇよ……」

    【小さく愚痴を溢しつつ、俺は静かに強化魔法を自分にかけるのだった】

  • 55『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/19(日) 22:17:18

    作戦開始51分
    《掃除屋side》

    (来た!)

    【数分前に反攻の兆しを報告した。三つの大軍に向けて、奥から敵が波打つ様に押し寄せるのが見えたからだ】
    【その報告をしたと同時に、各軍が動く】
    【左軍は騎獣隊が下がり、長槍隊の多くが前面に出てくる。それに合わせて左右の弓兵がその後ろへ。更に魔術師部隊が少し前進し、再び合同魔術の準備に入った。弓兵と魔術師を守る様に、奥から歩兵部隊が出てきてその左右を固めた】
    【右軍も同様に大国の兵が前面を、悪魔族が左右を固め、そして大国の後ろに控えた天使族がバフと回復魔法を準備している】
    【中央軍では、教国軍が前に出てきて《仁聖》と《鉄壁》の後ろに出てくると彼らは歌い始めた。御子を筆頭とする吟遊詩人系の冒険者がよく使う広域のバフだ。ドワーフ・ドヴェルグが左右を固め、エルフ・ダークエルフがそれに挟まれる形になった】
    【間に挟まれた二つの中軍も、左右どちらにも横槍を入れて援護する準備を整えていて、後詰めの混成軍が前進している】
    【更に本陣から先生ものであるだろうバフや防御魔法が飛んでくるのが分かった】
    【そうやって待ち構えた全軍に、敵の戦力が今やぶつかろうとしている】

    「報告! 反攻、来ます!」

    【懐の鱗に、念じるように叫ぶ】
    【次の瞬間、眼下で白黒のモザイクが三大軍を飲み込もうとして──吹き飛んだのが見えた】

  • 56『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/19(日) 22:50:20

    作戦開始57分
    《学徒side》

    【連合軍中軍。都市国家郡統合軍の中で、僕は緊張していた】

    (大丈夫、僕だってやれる!)

    【僕はごくごく普通の真面目な高校生だったのに、女神によってこの世界に飛ばされてきた】
    【最初は正直「チートもらって異世界ウキウキ生活」ってのを期待していたが、最初に待ち受けたのは策謀渦巻く政治だった】
    【その後に待っていたのは他の勇者達で、なんで自分が呼ばれたのかよくわからなくなるほど強い人達だ】
    【何故か面白がって鍛えてもらったことは感謝しかないが、場違いであるという気持ちは拭えなかった】

    (やるしかないんだ!)

    【だけど削り作業という初実戦を乗り越えて、いつの間にかそう覚悟することができた】

    『本陣より、要請。右軍が崩れつつある。援護を頼む』

    【鱗からそんな声が聞こえて、僕は右を見る】

    「《学徒》様、参りましょう」

    【この軍の指揮官に声をかけられ、それに頷く】
    【統合軍はすぐに動き始め、苦戦する右軍を攻め立てる敵に向けて突撃する】

    「〈想弾〉──マシンガン!」

  • 57『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/19(日) 22:51:03

    【僕が五指を相手に向けるとそこからオーラが射出された、敵を蜂の巣にした】
    【これが僕のチート〈想弾〉だ。僕の想いを弾に乗せて撃ち出すチートで、僕の意志が固いほど固く、僕の殺意や害意が高いほど威力が高くなる】

    (塩漬けさんには変異固有スキルって言われたっけ……)

    【そんな事を思いながら、敵を倒していると味方に負傷者が出た。それに気付き僕は彼を撃つ】
    【そして彼の怪我は治り、少し手を上げて礼を返された】
    【これも〈想弾〉の力だ。癒しの想いや励ましの想いを乗せれば、それが反映される】

    (あの人達には頭が上がらないな)

    【あの人達とは、塩漬けさんを筆頭とする四人組のことだ。あの人達は僕のチートに興味を持ち、検証に付き合ってくれた。そのお陰で僕は〈想弾〉の裏の活用法に気づくことができた】
    【ふと、反対側の戦場を見れば──空中に浮かんだ巨大な砲弾が次々と撃ち出されている所だった】

    (やっぱり僕、場違いじゃないかな?)

    【その内、休憩から帰って来た《多才》さんにお礼を言われ、戦線を引き継いで僕は一旦下がる事になった】

  • 58『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/19(日) 22:56:53

    ※《多才》→《多妻》
    後、《多妻》が一旦下がったの描写し忘れてた。

  • 59『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/19(日) 23:25:13

    作戦開始1時間3分
    《ブロックside》

    「大丈夫? 絶壁ちゃん?」

    【要塞の城壁の上。絶壁の隣で戦場を眺めていた私は、床に散乱した瓶を見つつ言った】

    「ちょっと飲み過ぎましたねー。さすがに、あの数と魔法はちょっと堪えましたねー」

    【お腹を押さえながらニコニコ顔の彼女に】

    (そう言う意味じゃないんだけどなー)

    【あの質と量の魔法? を繰り出して気にしているのは、回復薬乗せれば量なのはちょっとおかしいと思う】

    「私の世界のバフのトップならポーションに頼らず、ここから唄うだけで同じ事がきっとできますよー?」
    「……私なんも言ってないんだけど?」
    「顔に書いてましたよー」

    【思わず、ぐにぐにと顔を揉むと絶壁ちゃんはまた笑った】
    【近くにいる兵士がそんな私達を見て、まるで不謹慎だと言いたげに顔をしかめているが、気にしない】

    (今さらさぁ、取り繕ってもしょうがないもんね!)

    【もう戦いは始まっているんだから、私達はやるべき時が来るまで待機するしかない】
    【それに緊急時以外に私が何かやる時は誰かからの指示待ちなのだ】
    【ずっと真面目な顔をしてたら疲れてしょうがない】
    【そんな事を思っていると】

    「ありゃ?」

  • 60『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/19(日) 23:25:35

    【遠くに見える戦場の更にその奥で、何かが盛り上がっているように見えた】
    【遠すぎて灰色に見えるが、たぶん敵だろう】
    【私の発言に同じものを見たであろう絶壁ちゃんが首から下げた鱗に触れて言う】

    「要塞城壁より、本陣へー。敵に動きありですよー。掃除屋ちゃんに警告お願いしますねー」

    (あっ、そっか! 掃除屋ちゃんから報告がなかったってことは、気づいてないってことか)

    【きっと、最前線の報告を最優先にしてそっちへ注視しているのだろう】

    (うーん、向いているとはいえ、ちょっと押し付けすぎだよね……)

    【ここに来て、課題が出てきたが今どうこうできる問題じゃない】
    【私は動いた敵が何をしでかすのか、それを見つめる事にした】

  • 61『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/19(日) 23:26:01

    ※今日はここまで

  • 62海竜の巫女23/02/20(月) 09:02:21

    「遂に開戦、先陣は光と盾、攻撃力と防御力が両方備わり最強に見えるわね……てか《鉄壁》さん重装備過ぎ!?」
    「勇者無しで敵と渡り合える左軍は地力の高さを感じる。多分、勇者無しならこの戦役の主力を担ってた存在よねぇ」
    「彼らにしてみれば、女神に一言いってやりたい気分もあるのかしら……?」
    【勇者に関するひと悶着を思い出しながら、『勇者を配置しない』という布陣にそう言う意味もあるのかな、と思い】

    「塩漬けさん、すっかりボスの風格ね!出会ってす頼られてるのは凄い事だし、遠慮なく『ボス』名乗っちゃいなさい!」
    【割と愚連隊に対する肩入れ度が高い巫女、ついでに『ボス』である事への単純な憧れも割とあり……!?】

    「大規模戦になるとや広域バフが強いよね……ウチにはあまり縁の無い力だけど、レイド戦の時は助けられてるわ!」
    「《学徒》さんの能力検証で秘められた力を見抜いたのは、異能犇めくこの世界出身の冒険者ならでは、かな?」
    【でも自分ならきっと、指から攻撃力のオーラ弾を撃つ能力を、回復に使う手筋は思いつかないと、ため息を付く】

    「ま……この超大規模戦が初陣っぽいのには流石に同情するけれど、ねぇ……」
    【勇者の群れと一緒にこんな所に放り込まれたら自信喪失も仕方ない、完全に折れないだけむしろ強いという顔】

    「《ブロック》さん割と緩いけれど親近感は感じるわね……いや、あの人の異能も傍から見ればブッ壊れだけれど」
    「隣の芝生は青く見えるって奴なのかしら??とは言え《絶壁》さんのバフが凄いのは確かではあるし……」
    「世界毎の得意分野の違いとか?広域バフの無い・少ない世界だと神業とか奇跡にも見えるのかも」
    【異界人からは普通に『勝利の女神』とか『戦争の女神』と思われている可能性もありそうだと思いつつ】

    「ひとまず序盤は順調、少なくとも劣勢では無いよね……どこもその調子で頑張って!!」
    【とスクロールに書き込み、送信した】

    (※遂に始まるバトル……新キャラ達の顔見せってやっぱり盛り上がり所だよねと思った!!)
    (※それとチート持ち勇者とは言えやっぱり師匠は大切なんだなって……!!)

  • 63二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 22:39:27

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  • 64『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/20(月) 22:40:26

    作戦開始1時間4分
    《???side》

    【ソレは感じ取ったアレは驚異だ、と】
    【彼女は気づいたアレを放置すれば同族達が傷つく、と】

    【故に、ソレは飛んだ】
    【だから、彼女は羽ばたいた】

    ((アレは敵だ!))

    【ソレと、彼女は、双方面識はない──しかし、二つは同時に同じ事を思った】

  • 65『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/20(月) 23:07:40

    作戦開始1時間5分
    《掃除屋side》

    「なにか、来る……!」

    【本陣からの警告により、目線をしたから前へ向ける】
    【蠢く白黒モザイクの様な敵のど真ん中が、盛り上がっていた】
    【それらはみるみる内に大きくなり、破裂し、飛び散った】

    (あれは──)

    【飛び散った塵の様な物は、自由落下してから三つの方向に進路を向ける】

    (──飛行型の、敵!)
    「報告! 飛行する敵の姿を確認! 各軍に対応を通達してください! 私も迎撃に向かいます!」

    【気づくと同時に本陣に報告。今までのハーピーから、六枚羽に変身する】

    「はぁあああっ!」

    【短槍を二つ持って、敵の群れに飛び込む】
    【縫うように、すり抜けるように、飛び回りながら、槍と風の一撃を加えていく】
    【『六枚羽』形態は急停止、急加速、急旋回どれを取っても最高の飛行能力を持つ。しかし、攻撃力はさほど高くない】
    【いや、掃除屋自身に武の素質は低く、攻撃力という面では特化した中級よりも劣る】
    【彼女の強みは変身によって全局面に対応し、索敵能力と応用力の高い原始精霊魔法と、数多の魔道具を駆使する万能性にある】
    【故に掃除屋の攻撃は大したダメージを敵に与えていない。だが、彼女はやめない】

  • 66『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/20(月) 23:35:02

    (少しずつでもいい! 攻撃を与えて、敵意を集めないと……!)

    【敵の反攻の性質を利用し、ヘイトを自分に集める事で下の戦場への負担を減らそうとした】
    【瞬時にそれを思いつき、実効に移す事ができたのは、彼女の濃密な経験値の現れだろう】
    【一つの思い違いを除けば……】

    「っ!? なんで……?」

    【敵は掃除屋に見向きもしない。真っ先に各軍に向かっていく】
    【彼らはまるで降り注ぐ矢のように、或いは投石の様に最前線ではない軍の真ん中に着弾した】

    (あぁ……!)

    【上空にいる掃除屋の耳にも兵士達の悲鳴が聞こえた】
    【一部の者達は迎撃に成功していたが、全てを打ち落とすには圧倒的に密度が足らない】
    【現地では、むしろ慌ててに射た矢が外れ、味方に刺さる事例も見られた。それほどの混乱が生まれていた】
    【それを原始精霊達を通じて感じながら掃除屋は冷静さを保ち、気づく】

    「そうか、これも……反攻!」

    【飛行型の出現は、最初のカウンターを防がれた場合に対してのカウンターだった】
    【だから掃除屋の攻撃には目も暮れない。なぜならヘイトを買っているのは以前として軍なのだから】
    【飛行型の群れが最前線の後ろを攻撃しているのは、混乱を巻き起こす為だろう】
    【最前線にいる勇者達は反転できない。何故なら彼らは最初のカウンターを凌いでいる最中だからだ。無理して反転すれば、最前線が崩れ──それは総崩れの引き金にもなる】

  • 67『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/20(月) 23:35:39

    【掃除屋の目には、後詰めの軍が救援に急いでいるのが見えた】

    「けど……!」

    【飛行型が後詰めの軍にも襲撃を始めていた。更に本陣まで迫っている】
    【そんな中で掃除屋に出きるのは】

    「報告! 飛行型の襲撃により前線軍に混乱が起こっています! 救援に向かった後詰めの軍も襲撃を受け始めており、本陣にも迫っています!」

    【今まで通り、報告をすることだけだった】

  • 68『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/20(月) 23:36:30

    ※今日はここまでです
    ※いつも感想ありがとうございます!

  • 69海竜の巫女23/02/22(水) 03:16:57

    「最初のは、スクロールの混線??異界でもあるのねぇ……羽ばたいた彼女、誰なんだろう??」
    「『同族』という言い回しからすると種族的な連帯意識が強いのかな?でも、そんな人いたかなぁ……」
    「ただ、『同族』が傷つくことを恐れる点からすると、魔王軍というよりは味方サイドの誰かさん??」
    (※メタ的にはハーピィ勇者のガルダさんかなと思うけど、至宝詩篇も把握してない勇者を巫女が知る訳無いよね!)

    「『ソレ』の方は……敵だか味方だか判然としないよねぇ、羽ばたいた彼女と交戦してるか、あるいは共闘を?」
    「飛んだと言うと、飛行型カウンターかなとチラッと思ったけれど……カウンターに面識とか関係ないよね?」
    【混線したスクロールの映像を何度か再生して確認しているが、どうにも鮮明にはならない様である】

    「飛行型カウンターに関してはぶっちゃけ想定外の事態よね!?しかも後詰めや本陣にも飛んで来るだなんて!?」
    「一応、魔王軍も普通のカウンターでは押し切れない事態を考えては居るのかしらね……でも、誰が考えたんだろう??」
    【自分が魔王ならきっと、最初から飛行型を使って奇襲や補給線切りヒャッハーしてるだろうと思う巫女】
    【やっぱり何かシステムめいていると感じつつ、システムなら誰が組んだのかと訝しむ。邪神であろうか?】

    「これの対策は……ちょっと思いつかないね?現地の司令部さん頑張って!?」
    「《掃除屋》さんの報告も、司令部にとってはきっと貴重な貢献だから……!!」

    (※明らかに今までとは違う駒を使い、今まで通りの「カウンター」を仕掛けてくる辺りに不気味さががが……)
    (※これも防いだらまた対応のレベルが上がるんだろうかという、不気味さと底知れなさを感じる。何が目的なんだろ?)
    (※そして魔王攻めにもカウンターはあるんだろうか……暗殺部隊気を付けてホント気を付けて!?)

  • 70『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/22(水) 23:07:53

    作戦開始1時間9分
    《交渉人side》

    『報告! 飛行型の襲撃により前線軍に混乱が起こっています! 救援に向かった後詰めの軍も襲撃を受け始めており、本陣にも迫っています!』

    【掃除屋からの報告により、本陣が慌て始めた】

    (ふむ、そう来たか)

    【俺は顎に手をやりながら考え、チラッと《率団》を見る。彼はこの事態でも意外と冷静であり、戦局を見極めているように見えた】

    「行けるか、《率団》」
    「応とも! ……我が鱗を持つ者に告げる! これから我が秘技にて、そなたらへの攻撃は『すり抜ける』! 安心して、指揮されたし!」

    【と宣言すると同時にその場にある鱗が光り始めた。俺ではよく分からないが、これを使っている間は攻撃が透過するらしい】

    「勝手な事をしてすまない。一秒を争う事態だったのでね」
    「いや、かまわない助かった。要塞の守備隊は迎撃に入っているな?」

    【本作戦の大将軍に頭を垂れながら話しかけると、彼はすぐに天幕の外へ呼び掛けた。その返事はすぐに返ってくる】

    「はっ、《絶壁》様の魔法により要塞は守られ、兵達は各自迎撃が始めております!」
    「よろしい。こちらの飛行部隊はどうなっている」

    【こちらの飛行部隊とは、各国の保有するペガサス隊・グリフォン隊・ワイバーン隊等の事だ。予め、この本陣に待機させていた】

    「《絶壁》様の魔法は内側から抜けられるようですが、敵の密度が高く今飛び立てば危険とのことです!」
    (出遅れたな。後3分早く出ていれば前線の被害も少なかっただろうに……)

    【思うが、思うだけだ。言った所で余計な時間を食うのが目には見えている】

  • 71『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/22(水) 23:08:11

    (しかし、上を抑えられてはキツいな。どうにか、打開しなければ魔王は出てこないだろう)

    【そう考える間にも、鱗を通じて情報が上がってくる。それを聞きながら、俺は考える】

    (倒す度に厄介さが増していく……まるでゲームの敵キャラそのものだな)

    【ふと、そんな事を思い付き、内心笑ってそんな考えを打ち捨てる】

    (今は現実のみに集中するべきだな)

  • 72『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/22(水) 23:08:37

    ※短いですが今日はここまでです

  • 73海竜の巫女23/02/23(木) 09:06:18

    「鱗を通した魔術?の行使は興味あるね……使えるようになれば戦闘で色々と応用できそう!」
    「すり抜けるってのはどういう技術なのかしらぁ?消耗は大きそうだけど、指揮官の安全が確保できるのは強いよね!」
    【メモ帳にガリガリと文字を書き付けて行く巫女】

    「絶壁さんのガードが間に合ってひとまずは良かったけれど、ココからどう巻き返していくのかしらねぇ」
    「そこら辺は《交渉人》さんのお手並み拝見かしら!……あ、飛び立った混線組さんも居たね……!?」

    (※ペガサス、グリフォン、ワイバーン……個人的にどうしても某手ごわいシミュレーションを思い出す)
    (※冒険者主体のダンスレ関連で貴重な合戦成分、楽しく読ませて頂いています!!)

  • 74『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/24(金) 22:14:45

    保守。明日には続きを……!

  • 75『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/26(日) 18:03:07

    作戦開始1時間15分
    《絶壁side》

    「ふぅ……」

    【マナポーションを一本をチビチビ飲みながら、城壁の上から戦況を見守る。魔力に余裕はあるが、小まめに回復しておく事に越したことはない】

    「ブロックさんのお陰でだいぶ楽でしたねー」

    【しっかりとした要塞がある分、蓋をするだけで済んだ。お礼を言いたかったが、当の本人はツルハシとボウガンを両手に要塞に損害がないか見て回っている】
    【遠くを見れば、前線には天使と悪魔達が飛んで空襲に対処している。他にも弓や砲弾が飛び交っているのも見えた。後詰めでも何かがぴょんぴょん飛び跳ねている】

    (ここからだとノミみたいですが、あれは《無垢糸》ちゃんですかねー?)

    【きっと近く見れば、粘着性の糸で絡めた取られて堕ちてタコ殴りにされる姿や、硬質の糸で作られた武器で切り刻まれた姿が拝めたに違いない】

    (あの娘の体力は無尽蔵ですからねー)

    【などと思っていた時だ。『上空と低空から、ナニか来ます!』、と鱗を通して、生徒の声が聞こえた】
    【冷静に上を仰ぎ見れば──】

    (鳥? 飛行船? いや、あれは……)

    【──それは純白のハーピーだった】
    【そのハーピーは嵐の様な風を纏ったかと思うと、飛行型の敵を圧倒的な力で凪払っていった】

    (おー、たぶん『お仲間』ですねー)

    【彼女は鱗に手を伸ばして、それを報告した】

  • 76『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/26(日) 18:29:29

    作戦開始1時間17分
    《塩漬けside》

    【最前線で指揮を取りつつ、《砲弾》系の魔術で飛行型の迎撃に徹していた彼は弟子の声を聞くと周囲を見て、ソレを見つけて目が点になった】

    「なんで、あんなのが……」

    【呟く。視線の先には、低空で凄まじい速度でこちらに迫る。金属の光沢を纏った巨大な鳥の姿が見えた】

    「ソワスレラ……いや、別口か」

    【個人的に因縁のある国の名前を口にして、即否定する。恐らく同じ勇者だろうと当たりをつけつつ、注視する】
    【その鳥は何かを空中で切り離したかと思えば、それは個々で飛んで光線を放ち敵を焼き貫いていき、本体はその速度と質量で敵を蹴散らしていた】

    「ボス! 何ですか、ありゃ!?」

    【慌てた傭兵は俺に聞き】

    「味方だ。安心しろ」

    【とだけ答えた。よく見れば、どう判断しているか不明だが、敵とこっちをちゃんと識別出来ているらしく、味方に損害は出ていない】

    (同じ『勇者』だな、恐らくよ)

  • 77『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/26(日) 18:29:54

    【どうにも勇者側の航空戦力が少ないと思っていたが、女神はちゃんと用意していたらしい】

    (しかし、これで上を気にせず戦える……!)

    【そう判断した俺はハンマーを片手に最前線にジャンプし、ハンマーを投擲した。最前線で耐えいた隊員を飛び越え、少し離れた所に落ちたハンマーはそのまま大爆発を起こす】
    【唖然とする隊員を飛び越えた俺は、敵のいない地面でハンマーを回収し、振り上げた】

    「疲れた奴は下がれ! 大丈夫な奴は俺の背中についてこいっ!」

    【それだけ言って、再び迫って来る敵の軍勢をハンマーを投げて吹き飛ばし、俺はまだ上を気にして苦戦している左軍へ走る】
    【背後で雄叫びが生まれ、地響きが続く】

    (勢いに乗れる時乗のっとかにゃ損だからな。あの雄叫び聞きゃ、他の軍にも上は平気だと伝わんだろ!)

    【事実として、誰かが本部に連絡し折り返しの指示を聞くよりも早く、全軍が最前線が活性化した】

  • 78『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/26(日) 18:49:47

    作戦開始1時間26分
    《???side》

    「向こう側は随分活発だなぁ」

    【彼は連合軍とは反対側にある森林地帯の中、一本の木の上で遠くの喧騒を聞いていた】
    【いまいち緊張感に欠くその声の持ち主は、頭をポリポリかいてからその手で膝を叩く】

    「うっし、今なら俺っちの所にはそんなにこねぇだろ……」

    【そう言うと彼は両手を広げると、途端にその手が光輝いた】
    【その掌を上向けに斜めに構えたかと思うと──】

    「〈流星郡〉!」

    【──掌から放射状に、まるで尾を引く流星の様な魔弾が放物線を描いて、放たれた】

    「死にかけた礼だ。食らいやがれぇえええ!」

    【流星はまるで爆撃の如く、留まることなく、そして止まることはなかった】
    【彼こそは巨人族の国に現れ、その後血気盛んな巨人族の暴走に引きづられる形で魔王との戦いに赴き、殿を勝手出ては適当な所で雲隠れしていた勇者の一人、《流星》であった】

  • 79『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/26(日) 18:51:23

    ※一端、休憩します

  • 80水使い23/02/26(日) 19:00:22

    ※お疲れ様です!!
    ※朝は時間が無くてついつい忘れちゃうのでこの機に感想投稿

    水使い「ハーピィさんにロボットさんに………女神様って対策バッチリねです!全員有能だし………というかこれ位の頭脳を持つ女神様が此処まで追い詰められていたというのはちょっと怖い気がしますわねです」

    水使い「《流星》さんも普通に生きてるし広域殲滅爆撃とか出来るし凄く強いわねです………巨人族の暴走に引き摺られて魔王軍と戦った結果として連合まで持っていけましたし《流星》さんもファインプレーねです。というか攻撃方法的に単騎の方が味方を巻き込まずに活躍出来そうな感じがする人ねです」

  • 81『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/26(日) 20:58:16

    作戦開始1時間28分
    《先生side》

    (──暇ですね)

    【指示があちこちに飛ぶ作戦指令室足る天幕の中、本来医療班で別の天幕に控えているはずの私はここにいる理由はそれだけだ】

    (──これだけ大規模な戦闘中に怪我人はここに運ばれて来ませんからね。対策はしましたが)

    【衛生兵へのレクチャーを施し、薬の配布、《率団》の鱗の優先(指揮官・勇者は最優先)配布してもらった】

    (──私の仕事はもう終わった後です。『よほど』が起こらない限りは)

    【無感情に思っていると】

    『報告! 敵陣奥から謎の流星を確認、敵を攻撃しています!』

    【《掃除屋》から報告が入り、天幕の中でどよめきが起きる。がそこですかさず《交渉人》が動いた】

    「恐らく報告にあった巨人族の勇者《流星》だろう。生きていて幸いであり、良いタイミングで仕掛けてくれた」

    【その言葉で周囲が落ち着く。事態の把握と、混乱の終息の手際に感心する《交渉人》の名前は伊達ではない】

    (──さて)

    【と、《率団》を見る。かれこれ20分近く秘術とやらを使っているが、顔色に変わりはない。鱗に覆われてはいるが、二回も鱗を剥がした仲だ。よくわかる】

    (──大丈夫そうですね)

  • 82『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/26(日) 20:59:04

    【と、また《掃除屋》から報告が入った】

    『ほ、報告! 敵の一部が大きく戦場を離れました!』

    【その報告にまたどよめきが起きる】

    (──逃亡、いやないですね)

    【第一、敵地のどこに逃げようと言うのか】
    【その後、指令部と掃除屋のやり取りは続き】

    「なるほど、奴らは別動隊か。大きく迂回してこちらに向かっている」

    【最終的出た結論がそれだ。本陣では急いで各飛行騎獣隊を出動させ、本陣防衛軍を外に展開する準備に入った】

    (──飛行騎獣隊で足止めし、外に展開した軍で迎え撃つ作戦ですか。私の仕事が出きるかもしれませんね)

  • 83『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/26(日) 20:59:23

    【なんとなしに思い、天幕を出ようとして、ふと机に置かれた地図の端っこを見る】

    「──ここには何が?」

    【ある一点が気になり、近づいて指を置く。突然ヌッと出てきた私に周囲は驚いていたが、私は気にせずその小さな記号の所に指を置き続けた】
    【それを見た一人の将校が声を上げる】

    「そ、そこには寒村が一つあったはずです」
    「避難勧告は?」
    「……恐らくしてません」

    【確かに、戦場からは遠い。しかし、敵が大きく迂回し襲ってくる以上、そういう訳には行かない】

    「飛行騎獣隊の一部に先行させ、避難を勧告しろ。間に合うかわからないが、それしかできまい」

    【大将軍はそう言って片付けた】

    (──確かに、そうするしかありませんね)

    【恐らく、その村は滅びるだろうという予測を立てつつ、私は持ち場に帰る事にした】

  • 84『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/26(日) 22:16:29

    作戦開始1時間40分
    《仁聖side》

    【迫りくる敵を輝く鎧で跳ね除け、輝く剣で打ち砕く──全く勇者の所業だな】

    「聞いたかい? 《鉄壁》」

    【と隣に立つ戦友に声をかける】

    「ああ、《仁聖》殿! 奴らめ、我ら二人に恐れをなして本陣を狙っているようだな! しかも途中に寒村まであるという! おおっ、出きることならばそちらに駆けつけたいものだぞ!」
    「君がいなくなっては困るな? 私一人でここを支えろというのかい?」
    「ふははははっ! 案ずるな! 友を一人残して逃げるなど私の性分に反する!」

    【そうここは中央軍の最前線にして、三軍の中でも最も突出している場所だ】
    【ここを楔とし、耐える事が今の私たちの使命であり、場合によっては現れた魔王と真っ正面に挑むことすらあり得る場所なのだ】

    「友か、それは心から嬉しいし心強い言葉だ」

    【全く持って心強い】

    「しかし、《鉄壁》殿。私は案外その村は大丈夫なんじゃないかと感じているよ」
    「ほほう! その理由はなんなのか! 是非と拝聴したいなっ!」

  • 85『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/26(日) 22:16:47

    「それはね、私は女神様の深謀遠慮を信じているからだよ。私たち『勇者』に必要ない者などいないと確信しているからだ」

    【誰一人欠けても今の状況は生まれなかった。今はそれほど役に立っていない様に見えてもいつか活躍する】
    【いや、どのような事態になってもどうにかなるように人員を配置されている筈だ】
    【何よりも──私が選ばれているのが何よりの証拠だ】

    「だから大丈夫だ、《鉄壁》殿」

    【私が笑いかけると、彼は呵呵大笑した】

    「ふははははっ! なるほどなるほど! 確かに! 空に現れたお二人なぞ、知りもしなかったが大活躍しておられるしな!」

    【ああ、そうだ。例え、誰かがどうなろうともどうにかなる筈だ。誰がどうなろうとも、あの女神は役目を果たすだろう】
    【迫りくる敵を輝く鎧で跳ね除け、輝く剣で打ち砕く──全く勇者の所業だ。しかし、やりきってやろうではないか】

  • 86『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/26(日) 22:54:27

    作戦開始2時間1分
    《蛮勇side》

    【最初は足に震えを感じた、獣群れが迫る地響きだ】

    「オレ、行ク。コノ村、守ル」

    【作業を手伝っていた農夫にそう告げると、彼は金色の戦斧と銀色の棍棒を持って村を出た】
    【鼻から息を吸えば、良くないモノの匂いがした】

    (アッチ、ダナ)

    【彼は走って、走った──そして見つけた】
    【真っ黒と真っ白の、生き物とは言えないモノ。村を脅かす脅威を】

    「ヌオオオォォオオ、オオオオッ!」

    【彼は突っ込んだ。武器を振り回して殺し、死ぬような傷を受けても、傷はすぐに塞がり彼は一切止まらない】
    【しかし敵もまた、彼を無視してでも進む】

    「サセルモノ、カッ!」

    【通りすぎたモノを追い殺し、再び立ちふさがる】
    【手にした金の戦斧と銀の棍棒に力を込め、命を捧げる──文字通り。しかし彼は死なず、武器は光り輝いた】

  • 87『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/26(日) 22:54:57

    【それは英雄登竜門装備『身命を投げ出し、使命を果たさん』──命を対価とし、限定的な願いを叶える武具である】
    【彼は彼の世界の神の加護により、殺す度に命を得る。半不死の存在である】
    【故に、リスクは「少ない」】
    【敵の敵意が全て彼へ向けられる。感情が感じられぬ、しかし明確な敵意を向けられ──彼は告げる】

    「来イ、ミナ殺ス」

    【殺戮が始まった】
    【殺し、殺され】
    【華やかさはない、欠片すらない】
    【泥々の、という枕詞すら似つかわしくない】
    【底なし沼の中で踠くが如き、凄惨な戦いの末──彼は立っていた】
    【彼だけが、立っていた】

  • 88『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/26(日) 22:56:08

    ※今日は以上です。

  • 89海竜の巫女23/02/27(月) 03:01:21

    「《無垢糸》さんは蟲人族の勇者ね、粘着性の糸とか蜘蛛の性質を持ってるみたいだし、ピッタリかしら?」
    「空を飛ぶ敵を待ち伏せるのは得意でしょうし――あ、でも巣を張る様な土台が無いかも知れない??」
    【すっかり巣を貼って獲物を捕らえる前提で想像をしている巫女、割とアリな策だと思っている】

    「そして、純白ハーピィさんと……何かしらコレ、鉄の鳥?えーっと、これスクロールの縮尺おかしい??」
    「えー、えー……映ッテル人間サンガ1.7mダト仮定シテ……でで電卓……140mぐらい無いアイツ!?」
    「あれが勇者……者?鳥じゃん?機械っぽいじゃん?……いやあれ機械なの?鉄の神格とか???」
    【愚連隊の上を飛んで行く鳥に目を丸くし、サイズを計算して更に目を白黒させる巫女】
    【巫女の『勇者』概念が崩れる音が聞えるようである】

    「ま、まぁ味方っぽいし良いでしょ……イイノカナ?……女神さまも、㌧でも無いやり手の様ねコレ」
    「でも、即座に敵味方の判断付けて士気鼓舞に使う塩漬けさんも流石――見習いたい才覚ね!」

    「そしてこれは――巨人族の勇者さん!無事だったのは何より!《交渉人》さんも判断が早い!!」
    「《先生》も《率団》さんも凄いけれど……えぇ、鱗二回剝がした仲?仲なのそれ???」
    【ちょっとビクッとなり、尻尾を抑える巫女。自身の鱗を使った戦術を取得する意思が早くも揺らいでいる】

    「敵の迂回は予想外の様な、予想内の様な――空を飛ぶカウンターに来ればまだ理解できる気もする」
    「でも、単に空飛ぶ反撃よりは、迂回進撃の方が知的でらしいのかな?……相手方、知力も上がってる??」
    「或いは空飛ぶカウンターが防がれた事で、飛ばないカウンターに進化した……ありそうで怖いなぁ!?」
    【空飛ぶカウンターと、迂回進撃、どっちか進化したカウンターか割と本気で悩んでいる巫女】

  • 90海竜の巫女23/02/27(月) 03:01:53

    「迂回路にある寒村に勇者さんが居たのは幸いだったけれど――命を対価ってのは怖いわねぇ!?」
    「スクロールに出てる『殺す度に命を得る』ってのも、冷静に考えると凄まじい能力だけれど……」
    「それで、リスクが『少ない』……ゼロでは無いと言うのに、あんなに迷いなく戦える訳!?」
    【自分だったら装備しないと確信できる装備だ、例え半不死の能力があったとしても。怖いから】
    【それを手にしながら、捨身の戦いを演じ、しかも勝った彼を化物を見る様な目で見ている】

    「……いや、むしろ、迫る苦難を眼前にして尚、迷いなくそれを選べる精神性こそが『勇者』――??」
    【いつか母に聞かされた『勇者の定義』の一つ、『勇気ある者』を思い出して】

    「何にせよ《英雄登竜門》さんの装備ってのも凄い効果、タイプとしては《ブロック》さん系――」
    「――待って聞いた事あるよその人、って言うか会った事もあるしぃ……ダンジョンマスターじゃん!?!」
    【スクロールに出てきた名前を見て固まる。『ダンジョンマスター』かつ『勇者』と言うのは理解を超えたらしい】
    【『ダンジョンマスター』は何かダンジョン建てて、『勇者』がそれを討伐しに来る――と言う認識だったようだ】

    「でも、女神さまが選んだんなら間違いないでしょう……いやでも鉄の鳥、あー、でも活躍はしてた――」
    「……セントラリアに来て世界は広いって思ってたけれど、うん、異世界ってさらに広いんだねぇ!?」
    「《仁聖》さん並みに分かりやすくて模範的な勇者が逆に珍しく見えて来るよ、いやホント……」
    【絵に描いたような勇者装備、語られる内面も戦意と使命感に溢れる《仁聖》を見て】
    【ビックリドッキリ勇者とは違う癖の無い、物語に出る様な模範的な勇者だと逆に感心している巫女】
    【《仁聖》くんの演技力って、凄いね……!!】

    (※英雄登竜門が異界の勇者に装備撒いたら凄い事になりそう、《無尽機》さんとかどんな事になるやら!?)
    (※《無尽機》さん設定みたらドローン装備、《無人機》なのね……擬似第一種永久機関だから無尽でもありそうだけど)
    (※にせ勇者はもう誰も君の事偽物だなんて思わないよ、巫女なら多分内心知っても勇者だって言い切るよ!!)

  • 91『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/28(火) 21:47:15

    作戦開始2時間23分
    《掃除屋side》

    【本陣から、誰かが寒村守るために戦っているという情報が来た時、私の心に去来したのは安堵と焦りだった】

    (そろそろ、危ないかもしれない……)

    【戦い始めて、二時間以上経っていたが魔王は姿を現さない。各軍の前線も持ちこたえているが、既に深い疲労感に襲われているだろう】
    【既に先生を含めた魔法使い達のバフと回復が何度も飛んでいるが、だからといってずっと戦っていられる訳ではない】
    【これは普通の戦争ではない】
    【相手は間を置かず、まるで波の様に途切れることなく攻めてくる】
    【それは空も同じだ。飛行型の敵は絶えず飛んでくる。低空を飛んでいるソワスレラの兵器の様な巨大な鳥は平均そうだけど、上空の純白ハーピーには疲れが見えている】
    【何度か接近してポーションを飲ませようとしたが避けられた。仕方なく、上から振りかけているが、どうしても分散してしまい。高い回復効果は見込めそうにない】

    (魔剣使いさんだったら、もっと上手くやれるのに……!)

    【歯がゆく感じたが、彼女ばかりに注力していられる状況ではない】

    (撤退を進言しないと)

    【そう考え始めた時だった】
    【敵の中央辺りに動きがあった。5ヵ所が以上に盛り上がり始めたのだ。それは渦巻く様に立ち上ぼり、やがて巨人と化した】

    「報告! 敵中央で五体の大型を確認! ……前線に向けて移動を開始し始めました!」

    【五体の巨人は前線に向けて歩き出した。その歩はゆっくりではあったが、歩幅が違う。10分とかからず前線に到着するだろう】
    【疲れている所に、あんなものが来たら一溜りもない】
    【私は撤退を進言しようとした。その時だった】

  • 92『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/28(火) 21:47:40

    『全軍に告げる。あの大物は僕らで片付ける』

    【鱗から、愛しい声が聞こえた。どこまでも平静で、落ち着く声が】

    『それでも魔王が出てこない場合、撤退を視野に入れて欲しい。殿は僕らが務める』

    【そう良い終えると同時に、敵の横合いに五つの人影が飛び出した。雑兵は完全に無視して、彼ら巨人に迫る】
    【勇者達の中でも、特に個に優れた五人(と一振)】
    【魔王討伐部隊が──進撃を開始した】

  • 93『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/02/28(火) 21:51:50

    ※今日はここまでです

  • 94海竜の巫女23/03/01(水) 08:46:43

    「二時間フルパワー全開で戦ったらドラゴンひものになりそう!?冒険者と軍隊じゃ戦い方も違うんでしょうけれど」
    「それを平然とやる魔王軍の正体は気になる所ね、とは言え流石に焦りはあるのかしら?切り札……よね、アレ?」
    「少なくとも雑兵では無い――と思いたい、けれど」
    【アレが更に湧き続けたらどうしようもない、魔王軍驚異の生産能力のネタは何だろうかと頭を抱える】

    「トドメ用の手札の魔王討伐部隊まで投入して戦線が膠着したら……考えたくも無いよね」
    「武運を祈らせて貰おうかしら――!!」

    (※これは女神もよその戦力に頼りたくなるのもしゃーない)

  • 95『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/01(水) 22:55:50

    作戦開始2時間27分
    《神速side》

    【強襲をかけた魔王討伐隊。その中で一番『早く』巨人に切りかかったのは、一番『遠い』巨人を狙った彼だった】

    「肩慣らしには丁度良い(棒」

    【背中にズタ袋(in《聖剣》)を背負った反復横飛びをするよう形容しがたい動きで空を駆け、剣に手をかける】

    「動かな過ぎて、なまってましたから(棒」

    【細切れになった巨人が塵になって消えた】
    【剣に手をかけただけでそうなった】
    【実際に切ったのか、それとも別の能力を発揮したのか、それは彼にしかわからない】
    【しかし、《交渉人》や《学徒》が見たらきっとこう言うだろう「動きがバグっている」と】

    「さて、皆さんは大丈夫でしょうか(棒」

    【一切感情の込もっていない棒読みで彼は言い、周りを見回した】

  • 96『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/01(水) 22:57:01

    作戦開始同上
    《影side》

    【その先に黒い獣がいた】
    【否、それは獣の意匠を盛り込んだ鎧である】

    「さっさと終わらせる」

    【地を這う獣は冷淡に告げ、天高く跳び上がった。巨人の頭上を越え、一回転して加速、片足を突き出して黒いオーラを纏って突撃】
    【巨人に大きな風穴が生まれ、塵となって消えた】

    「……」

    【何も言わず、片膝立ちから立ち上がった彼の背中の向こうで、閃光と爆発が起こった】

  • 97『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/02(木) 04:00:15

    作戦開始同上
    《イエスノーside》

    【巨人を前に、イエスノーは複雑に組んだ手を突き出すとそこからは目映い程の閃光が迸り、巨人は高熱に晒されて表面が焼き爛れ動けなくなった】
    【更にイエスノーは右手で背中の剣を握りつつ、もう左手を頭上に掲げた】
    【左手の掌には、巨大な光球が生まれ、放たれる。全身が焦げた巨人はそれをまともに喰らい、大爆発が起きた】
    【ぐらりと仰向け倒れ始める巨人は自然と上を向く、その先にいるのは雷を帯びた剣を掲げるイエスノーの姿】
    【それは落雷の如く落ち、巨人を真っ二つに切り裂いた】

    (少し派手すぎたかもしれません……)

    【内心そんな事を考えつつ、彼は剣をしまった】

  • 98『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/02(木) 04:01:07

    ※今日はここまで

  • 99海竜の巫女23/03/02(木) 08:53:30

    「……《神速》さんアレ何!?体術じゃない、多分魔術でも無い……固有スキルか怪異の類?」
    「バグってのはエレクトリカルな魔術式に宿る誤字の悪魔みたいなモンと聞いたけど……まさかそれの使役を!?」
    【挙動を再現しようと試みて、普通にスッ転んだ巫女】

    「《影》さんはキック一発?巨人が脆い……と言うよりはキック一発に信じられないパワーがあるタイプよねぇ」
    「《イエスノー》さんも魔法と剣技どっちも隙が無さそう、これなら戦況も味方有利に動きそうかしら」
    「魔王さんさえ出てくれば普通に討伐できそう、と思わせるのは凄いと思う、うん」

    (※チャートにちゃーんと攻略法書いてそうな《神速》さん、《聖剣》さんを抜くタイミングも決めてあるんだろうか)
    (※一撃で決めるのも、ド派手に決めるのもそれぞれの良さがあって好き)

  • 100『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/03(金) 22:49:37

    作戦開始同上
    《守銭奴side》

    「派手だねぇ」

    【イエスノーの連携技を見て、トントンと手にもった槍の柄で自分の肩を叩く】
    【そういう彼女の隣には、何十の環を嵌められ、鎖に雁字搦めにされた巨人の姿があった。巨人は身動ぎ一つできずにいる】

    「あたしは地味に行くよ」

    【彼女は元の世界で自分もろとも暗黒竜を数百年間封じた、封印術のエキスパートである】
    【彼女の手にかかればそこらの竜程度なら片手で拘束し、そのまま放置して飢え死にされる事すら容易い】

    「だからって時間をかけるつもりはないよ。時間は有限、コストはかけたくないからね」

    【気だるげに呟いた瞬間、巨人は締め潰され、塵となって消える】

    「さて、他はと……あん?」

    【辺りを見回した彼女が見たのは、何もせず巨人の前で立ち尽くす熱剣士の姿だった】

  • 101『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/03(金) 23:11:48

    作戦開始2時間28分
    《熱剣士side》

    (おかしい)

    【動きを止めた巨人を前に、熱剣士は考えていた】
    【熱剣士はあえて、他より遅く動いた。巨人の動きを見たかったからではない。何か違和感を感じたからだ】
    【違和感の正体はわからない。しかし、現に巨人は歩みを止めた】

    「……」

    【彼が少し近づくと呼応するように動きだし、引くとまた動きを止めた】

    「そこから動きたくない。いや、動けないのか」

    【そう呟いた時、周りに仲間が集まってきた】

    「おいおい、部隊長さん? 人に働かせて楽するんじゃないよ?」
    『この巨人、動きませんね』
    「……確かに」
    「そういえば、周りの魔物もこっちに来ませんね(棒」

    【口々に言う彼らを一端無視して、他の巨人が倒れた場所を見渡す】

    「……なるほど」
    「何が、なるほど、なんだい。あんま無視するんじゃないよ?」
    「みんな見てくれ」

    【そう言って熱剣士は巨人の倒れた場所を指でなぞり始めた】

  • 102『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/03(金) 23:12:14

    【他の面々はそれを追い、一部がそれに気づいた】

    『この配置は……』
    「そういうことかい……」

    【まだピンと来ていない《神速》と《影》に熱剣士は説明する】

    「倒れた場所が『五芒星』を描いている。魔術的に意味のある配置だ。巨人は最初から、この一定の距離を保っていた」

    【そこで一言区切り】

    「これは儀式だ」

  • 103二次元好きの匿名さん23/03/03(金) 23:13:25

    このレスは削除されています

  • 104『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/03(金) 23:46:14

    「儀、式?」

    【《影》の呟きに、熱剣士は頷く】

    「魔王を呼び出す。いや、『生み出す』儀式。恐らくこれまで戦った全てがそれに直結している」
    「私らは魔王を生み出す片棒を担いでたって言いたいのかい?」
    「性急に物事を進めたのは失敗だったと?(棒」
    「それは違う。進めなかったら進めなかったで、タイムリミッドがあったはずだ。でなければ、最初から攻め行ってたに違いない」

    【熱剣士の脳裏に過ったのは、全世界規模のスタンピードだった】

    「考えて見て欲しい。何故、僕らはバラバラに召喚された?」
    『……種族の垣根を超えて協力させるためでは?』
    「それもある。ただし、それだけじゃない。僕の考えは、もし集まらずにタイリミッドを迎えても各地に勇者がいれば対処できるからだ」

  • 105『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/03(金) 23:46:40

    【それを聞いた《神速》は言う】

    「確かに離れていたから集まるのに苦労した(棒
    最初から集まっていれば早く動けたかもしれないが、国や種族を超えて軍を動かすのは手間取ったかもしれない(棒
    それでタイムリミッドをして迎えれば、各地での対処が遅れる(棒」
    「どう転んでも良いように駒を配置するのが、上等な策……とは言うけどね。正直、気分は良くないね」
    「なるほど、我々は正しく女神の駒か」
    『僕らの頭上を神々の思惑が飛び交っているわけですね……それで、この巨人はどうするんですか?』

    【イエスノーの問いに、熱剣士は答える】

    「無論、倒す。今時間をかけたのは意識の共通させたかった。こいつを倒せば、五芒星の中心に魔王が生まれる、その可能性が高いと」

    【全員の目が五芒星の中心に向かう】

    「僕がこいつを倒せば、何らかの反応が必ず起こる。僕もすぐに合流するが、できればその前に──生まれる前に叩いて欲しい」

    【熱剣士がそう言うと、四人は彼から離れ、五芒星の中心へ移動する】
    【それを見届けて、熱剣士は巨人を一刀両断した】

  • 106『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/03(金) 23:47:17

    ※今日はここまで、です

  • 107海竜の巫女23/03/04(土) 17:50:19

    「《熱剣士》さんも《守銭奴》さんもお見事!……《熱剣士》さんの見立てが正しければ、ここからが決戦ね!」
    【スクロールに応援の文言を書き込む巫女】

    「五芒、六芒星を描いて魔法陣!……ってのは良くあるけど、それを敵に描かせようってのは珍しよねぇ」
    「術師自身がそれを実行できない状況なのか、或いは『敵意』や『討伐者』をトリガーとして何かを掛ける気?」
    【首を捻りながらログを読み進める巫女。メモ帳には色々な文字が書きつけられている】

    「……いえ、会話から想像すると、魔王を生み出す以外の勝ち筋が相手側には存在した、と……」
    「或いはここで『魔王』を生み出すのは防御的な反応で、敵の本命の手筋では無い、って言うコト!?」
    「『魔王』が倒されると『邪神』の干渉に隙が出て結界貼り直されるんだっけ……」
    【『黒幕は女神……!?』と書かれた部分へ、魔法の羽根ペンがサッと取り消し線を引いた】

    「『魔王』は……強力な防衛用の駒であると同時に、倒されると負け筋になりかねない諸刃の剣」
    「出さずに済むならそれでも良いけれど、ここまで押されて出さざるを得なくなった……?」
    「とは言え、ここまで削るのに勇者と各国の力を結集して、ようやくって感じではあるよねぇ」
    【『魔王の正体とは――邪神の通信ドローン?』と、魔法の羽根ペンがメモ帳に書き付けた】

    「そんで女神様は、勇者の他に各国が手を取り合って協力する事が必要と見ていたものの」
    「それでもいがみ合って協力できなかった際の保険も掛けてたと……強かで賢い女性(ひと)なのかしら」
    【とは言えちょっと信頼されない各国が可哀想かな、と言う表情を一瞬して】
    【でも、負けたら終わりの戦いならそこまで策を練るのも当然よね……と言う顔に戻った】

    (※脳内理解的には追い詰められた敵怪人が巨大化装置に駆け込んだ的なアレ!?)

  • 108『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/05(日) 19:28:56

    作戦開始2時間31分
    《熱剣士side》

    【巨人が塵と化した瞬間だった】
    【地面がうごめき始め、それに構わず熱剣士は走り出していた】
    【五芒星の中心付近にいた四人は既に異変を感じ取ったのか、『中心』を攻撃し始めている】
    【《守銭奴》が何らかの封印術を大地に施している。《影》が渾身の蹴りを繰り出して離れ、《イエスノー》が多種多様な魔法を打ち込み、《神速》が《聖剣》を抜いた】
    【わずかに耳障りな声が聞こえたが無視し、神聖な輝きを放つ聖剣となった《聖剣》は地面を大きく切り裂いた】

    「それでも出てくるか」

    【ソレは生まれる前に散々妨害された事も意に返さないかの如く、ぬるりと出てくる】
    【まるで影法師だった】
    【輪郭も曖昧で、色は白黒のマーブル状、大きさは5メートルほど、そこに存在しているのに現実感はなく、しかし存在感だけはこれまでの敵を凌駕していた】

    「《極大消滅剣》」

    【詠唱を切っ掛けに、熱剣士の剣は光に包まれた】
    【薄明式極大消滅理論を、血の坩堝にて強化された英雄登竜門装備にて応用するこの技は、彼の技の中でも特に物理攻撃力に秀でている】
    【推定『魔王』は既に《守銭奴》の環と鎖にて拘束されていた、そこに一撃入れる】

    「手応えあり、か」

    【彼の剣が通った後は大きく削れていた】
    【《影》はほぼ同時に『魔王』の頭を殴り飛ばし、少し遅れて《イエスノー》が足を斬り落とし、《神速》が《聖剣》で胴体を真っ二つにした】

    「まだ足りないよ、あんたら!」

    【槍を地面に突き刺し、封印に全力を注いでいた《守銭奴》が叫ぶ】

  • 109『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/05(日) 19:29:57

    【『魔王』は即座に再生し、それだけなく、よく見えない顔には口が生まれていた】

    [──ETERNAL]

    【声ともつかぬ音がそこから漏れた】
    【熱剣士はすぐその口を消し飛ばすも】

    [──FORCE]

    【詠唱は止まらない。他の勇者も何もさせじ、と攻撃をやめない】
    【殴打、斬撃、刺突、魔法、奇跡、消滅が畳み込まれ】

    [──BLIZZARD]

    【それでも魔王の詠唱は止まらない】

    「逃げろ!」

    【熱剣士は叫んで、自分も距離を取る】
    【そして】

    [──opponent dies]

    【熱剣士の意識は途切れた】

  • 110『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/05(日) 19:54:46

    作戦開始2時間33分
    《交渉人side》

    【魔王が現れ、討伐部隊が交戦中という情報が流れ、本陣天幕内が沸き立つ】

    (ようやく、か。出きるなら、今回でケリつけて欲しい所だ)

    【犠牲者自体は『何故か』想定より少なかったのは意外ではあったが、嬉しい誤算だ】

    「女神のご加護か」

    【小さく呟き、案外間違ってはいないかもしれないと笑みを浮かべた時だった】

    (……寒い?)

    【急な肌寒さを感じた。悪寒ではない、物理的に寒い】
    【しかしそれは《掃除屋》の報告で、悪寒に変わる】

    『ほ、報告……! 魔王、討伐部隊が……全滅、しました!』

    【沸き立っていた本陣が、一気に静まりかえる】

    「なんだと! 交戦から5分と経っていないのだぞっ!」

    【真っ先に反応したのは《率団》だ。槍を握り締めて、立ち上がっている】
    【彼の鱗は討伐部隊も持っている。ということは魔王の攻撃が、彼の透過を貫通したことを意味する】

  • 111『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/05(日) 19:55:21

    (最悪のケース……! いや、まだ最悪には程遠い、感情に流されるな)
    「大将軍、撤退を進言する」
    「この状況で下がるのか!? あなたはそれでも勇者かっ!」
    「この状況だからです。落ち着いてください」
    『掃除屋から本陣へ……、撤退を進言します!』
    「我輩も撤退を進言する! 今の情報が兵に伝われば混乱は必死! 今、下がらなければ無用な犠牲を払うことになるぞ!」

    【大将軍と問答を繰り返していると、《掃除屋》と《率団》から進言があった。戦場を一番良く知っている二人からの進言に、大将軍は】

    「っ……撤退する。当初決めていた通り、殿を立てろ」

    【盛大に苦虫を潰していたが、落ち着いた指示を飛ばし始めた】

    (厳しい状況になって来た。出来る限り生き残ってくれよ……)

    【何もできない自分に腹が立ちつつ、そう祈るしかなかった】

  • 112二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 20:24:03

    作戦開始2時間35分
    《塩漬けside》

    【肌が凍るような寒波の後に、衝撃的な情報がもたらされて数分。殿に立った塩漬けは懐の鱗ではなく、スクロールを意識して掃除屋に語りかけた】

    (どういうこった? 熱剣士はどうなった! 何で鎧の力で蘇生しない!)

    【返事はすぐ帰ってきた】

    『皆さん、氷漬けになってて……生命活動が停止してます! ちゃんと原始精霊魔法で調べたから間違えありません! 鎧の力が発動しない理由はわかりません』
    (ちっ、クソが!)

    【内心毒づく。それは掃除屋には伝えない】

    「おい、塩漬けさん! どうなってんだよ!」

    【背後の傭兵が声を荒げる】

    「とりあえず、落ち着け! 生き残ることだけを考えろ! 自棄には絶対になんなよ!」

    【敵の猛攻は変わらない。それを受けつつ、全体で少しずつ下がる】

  • 113『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/05(日) 20:24:26

    【左軍をチラッと見れば、前線が総入れ替えになっていて、時間を稼いでいた】

    (さすがに精鋭集めて来たな。崩れないのは、助かる)

    【考えていると、絶壁のバフと回復が飛んでくるのがわかった】

    (無茶しやがって、でも落ち着いてはいるか)
    「でかいのをブッぱなす! そしたら少し下がるぞ!」

    【〈大魔砲連弾〉を準備しつつ、周りに声をかける】

    (他も大丈夫だといいんだがな)

  • 114『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/05(日) 20:24:53

    ※一端休憩します

  • 115『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/05(日) 21:51:06

    作戦開始2時間39分
    《多妻side》

    (まさかあの方々が敗れるとは……)

    【体の中を循環させ練った魔力を魔法に込め、解き放つ】
    【敵は吹き飛び、空間が空き、その間に下がるを繰り返す】

    「あなた、大丈夫ですか?」

    【幼なじみのダンピールで斧使いの最も古い付き合いの妻が心配げに声をかけてくる】
    【僕は魔力量も多いが、魔力を循環させ練る技法は消費も大きいので、それを心配してくれているのだ】

    「まだ大丈夫だよ。時々休ませてもらったからね」
    「ではまた少し休んでなさい。ワタクシもまだ行けるけど、やっぱり左軍と比べると統率が、ね」

    【そう行って僕と同じ攻撃型魔術師の妻が扇で口元を隠しながら、懸念を述べる】
    【確かに右軍は個が強い分、統率力は劣る。しかし】

    「だからこそ、固い絆で結ばれた僕達が配置されたんじゃないかな?」
    「そうですよ」
    「ん」

    【側にいたラミアの弓術師の妻と、前線から戻って来ていた猫獣人の双剣士の妻が頷いた】
    【最も若く召喚術と幻術を使いこなす妻もコクコクと頷いている】

    「あなたはこの先、どう見ます?」

    【そこに回復術を扱う妻が語りかけて来た】

  • 116『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/05(日) 21:51:27

    「そうだね。要塞に戻るまでに敵の勢いが減っているかわからない。もしかしたら、そのまま籠城戦もあり得るね」
    「うぁ……めんどい」
    「仕方ありませんよ」

    【魔族で体術と呪術に長けた妻が気だるげに良い、錬金術師にして魔道具職人の妻が諦めなさいとその肩を叩いた】

    「みんながいればどうにかなるさ」

    【僕がみんなに笑いかけた】
    【その瞬間だった】

    「な……っ!」

    【急に前線の空いたスペースを埋める様に巨大な門が現れた】
    【いや、右軍だけではない】
    【各前線にもそれが現れていた】

    「これは、一体……」

    【妻の一人が呆然と呟く中、僕は中央軍にできた門の上に誰かがいるのに気づいた】
    【赤髪の美しい女性がそこにいた】

  • 117『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/05(日) 22:18:31

    作戦開始2時間44分
    《鉄壁side》

    「ふはははっ! やはり防御は至高だっ!」

    【目の前にできた壁の様に立ちはたがる巨大な門、それを見ながら彼は数分前の出来事を思い出していた】

    【撤退となり、《仁聖》殿と共に敵の攻撃を押し返し、受け止め、捌いていた時だった】
    【その場に場違いなドレスを着た赤髪の美女が、背の高い黒髪の女性を伴って急に現れたのは】

    「あんたらは下がっときなさい」

    【荒々しい口調でそう言うと、彼女は従者の様な黒髪の女性を一瞥する】

    「あんたは適当に渡り付けといて」
    「かしこまりました」

    【彼女がうやうやしく礼をした。完全に置いてけぼりの我々であったが、そこで《仁聖》殿が声をかけた】

    「あなた方も私たちと同じ勇者ですか?」

    【それを聞いた赤髪の美女は鼻で笑った】

  • 118『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/05(日) 22:18:57

    「私はダンジョンマスター、英雄登竜門。
    素質ある戦士の前に現れ、試練を与え、乗り越えし強者に武具を授ける。
    時に、老兵の死に場所を与え、その装備を軍門に加える者よ……勇者なんかじゃないわ。
    ただ、ここの女神が頭を下げて頼んで来たから力を貸す事にしただけ」

    【その答えに唖然とするこちらを尻目に、彼女は敵に向き直った】

    「さて、ちょうど他の軍も敵との間を開けたみたいね。……全く揃えなさいよ、めんどくさい」
    〈壁門─顕現─〉

    【突如として、目の前に巨大な門が現れ、敵を塞き止めた】
    【これが数分前の出来事だ】
    【私があまりにも唐突で見事な防御に呵呵大笑していると黒髪の女性がこちらに向き直った】

    「私は英雄登竜門様の従者を務める者です。我が主が敵を抑えている間に撤退を」

    【そう告げられ、《仁聖》殿が手早く軍に速やかな撤退を指示し始めた】

  • 119『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/05(日) 22:44:39

    作戦開始4時間58分
    《掃除屋side》

    【全ての軍が要塞内に収容され、敵の攻撃が収まり、『魔王』動く気配を見せない事を確認した私は要塞の城壁に降り立つ】

    「掃除屋ちゃん……」
    「……よう」

    【それを出迎えくれたのは、先生と師匠だった。そこに彼はいない】
    【一瞬泣きそうになるのを堪え、私は聞いた】

    「その後、どうなりましたか?」
    「重傷者は真っ先に運ばれて来たので対処しましたよー。今は《先生》の衛兵隊と《多妻》さんの奥さんと医療スタッフでなんとかなってますねー」
    「《先生》はあの純白のハーピーに付きっきりで治療してんな……相当嫌がられてたけどよ。もう一方の機械鳥は……まぁわざわざ説明するまでもねぇか」

    【師匠が要塞の外に目線を向けると、巨大な鳥の姿がそこにあった。彼?は自主的にそこに立っていた。元より巨大過ぎて入れないのだけど】

    「それと寒村にいた勇者さんもこちらにいますねー。村から離れるのを渋ってたんですが、《交渉人》さんが言いくるめて合流してますよー」
    「それと《流星》だったか? あいつもこっそり合流してやがったよ」
    「そうですか……えと、登竜門さんは?」

    【まさかいるとは全く思わなかった旧知のダンジョンマスターの事を聞くと、二人は苦笑いした】

    「あいつはこっちに来るなり、ふんぞり返って酒飲んでるよ」
    「やけ酒じゃないですかねー? 何せー……あ」

    【先生が何を言いかけたのか、手に取るようにわかった】

  • 120『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/05(日) 22:45:12

    「熱剣士さんは、登竜門さんのお気に入りでした、もんね……」

    【その名前を呟いた瞬間、急に視界がぼやけだした。頬に冷たい感触が走る】

    「ごめんなさい……」

    【語尾を伸ばすことなく、先生は謝って私を抱きしめくれた】
    【それにすがり付いて、私は声を抑える事ができず、泣きに泣いた】
    【原始精霊を介して見た、熱剣士さんの姿がこびりついて離れない】

    【私達は負けた。そして、私は大きな物を失った】

  • 121『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/05(日) 22:46:25

    ※ここで一端終了とします。
    ※次の戦争描写まで保守作業を入れます。

  • 122海竜の巫女23/03/06(月) 09:20:57

    「魔王、想像してたのよりも大分不気味で恐るべき存在だったね……やっぱり邪神の断片なんじゃ……?」
    「少なくとも真っ当な生物には見えない、あの詠唱も魔術なのか、異能なのか……分からない事ばかり」
    【暫くスクロールで魔王との会敵後の戦いをループ再生した後、呟く】

    「熱なら冷気も高熱もイケる《熱剣士》さんが凍らされて、しかも装備の自動効果も働かないなんて」
    「術の冷気も本陣まで及んでるし、今までは効果のあった攻撃透過の切り札も貫通されているし」
    「単純な出力も、普通とは違う特殊性も両方高そうに見える……」
    【支配領域とか、概念系の何か?と思いつつ、でも冷気も出てるし……と、攻撃の正体について悩む巫女】

    「……せめて遺骸だけでも奪還できれば蘇生なり解呪なりの研究もやりやすいんだろうけど」
    「敵の本陣ってのが……難しいよねぇ」
    【突入部隊を編成?⇒再度詠唱されたら?等、自問自答をメモ帳で繰り返している】

    「他のみんなが無事撤退できた事と、魔王が自ら前線に加わって逆襲に来ない事は不幸中の幸いだけど」
    「ますます連中の動きが不気味に感じられてくるよねぇ、動けない?……動く必要も、無い?」

    「……英雄登竜門さん、門を召喚して物理的に喰いとめるとは思ってなかったよ」
    「貢献度では勇者・英雄の類だと思うけど、ダンジョンマスターの名乗りに誇りを持ってる感じなのかな?」
    【門……を盾にした所と、《鉄壁》さんのはしゃぎ様を見ながら、勇者に憧れられる勇者?と呟く】


    「……これで終わり、とは思って無いけれど開戦前より複雑で困難な状況にはなっちゃったね……」
    「打開できる、とは信じてるから。《熱剣士》さんも、他のみんなも無事で、また直接ギルドに顔見せてね!!」
    「諦めなければ……きっと何とかなるから!!」
    【根性論で締めている辺り、有効な反撃手段の類は思いつかなかった様だ】


    (※《多妻》さん本当に多いな……?しかも性癖大分広いな……!?)

  • 123二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 07:08:49

    保守

  • 124二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 20:30:54

    保守

  • 125二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 07:18:20

    保守

  • 126雷精竜◆xSpc7yy5XY23/03/15(水) 18:04:04

    時間停止に近い……?
    ならば熱剣士君も助かる目があるだろう、この程度で終わることは無いと信じている
    それと後方が機能しているのが不幸中の幸いか

  • 127二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 22:48:48

    保守

  • 128『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/19(日) 19:15:46

    ・現在の状況
    首脳陣からの召集命令が来た
    英雄登竜門が《交渉人》を連れて乗り込んで3日間舌戦を繰り広げた
    結果、連合軍は勇者を中心に据え独立軍に変わる
    規模は2/3にになったが、政治的な煩わしさは減少した
    魔王は派手な動きは見せず陣地に引きこもり、さらにバリアを張って立て籠っている

  • 129『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/19(日) 19:18:39

    ・勇者一覧
    《塩漬け》…エルフ族勇者
    《絶壁》…ドワーフ族勇者
    《熱剣士》…大国勇者
    《掃除屋》…妖精族勇者
    《仁聖》…教国勇者
    《率団》…小人族勇者
    《守銭奴》…商国勇者
    《鉄壁》…獣人族勇者
    《影》…ドヴェルグ族勇者
    《イエスノー》…王国勇者
    《ブロック》…嶺国勇者
    《神速》…天使族勇者
    《無垢糸》…蟲人族勇者
    《聖剣》…ダークエルフ族勇者
    《多妻》…悪魔族勇者
    《先生》…多種魔族連合勇者
    《交渉人》…帝国勇者
    《学徒》…都市国家郡勇者
    《無尽機》…機械族勇者
    《嵐災》…ハーピィ族勇者
    《流星》…巨人族勇者
    《英雄登竜門》…公国勇者
    《蛮勇》…寒村勇者

    (以下、至宝詩編未確認)
    《未確認》…共和国勇者

  • 130『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/19(日) 19:43:46

    【勇者の配置】
    ・独立軍指揮系統
    総大将兼第一軍指揮官《仁聖》
    副大将兼本陣作戦指揮官《英雄登竜門》
    参謀長《交渉人》

    ・独立軍前線
    第一軍(只人兵)
    《仁聖》…指揮官
    《鉄壁》…副官
    《蛮勇》…副官
    第二軍(亜人兵+元義勇軍)
    《塩漬け狩り》…指揮官
    《無垢糸》…副官
    《嵐災》…副官
    第三軍(魔族、天使族)
    《多妻》…指揮官
    《学徒》…副官
    《無尽機》…副官
    ・本陣
    《英雄登竜門》…作戦指揮官
    《交渉人》…参謀長
    《絶壁》…本陣防衛軍指揮官
    《流星》…本陣防衛軍副官
    《率団》…情報管理
    《掃除屋》…偵察担当
    《先生》…医療管理
    《ブロック》…兵站管理、工兵管理
    ・魔王討伐部隊(死亡中)
    《熱剣士》《守銭奴》《影》《イエスノー》《神速》《聖剣》

  • 131二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 20:55:39

    おお、変わってる
    塩漬けさんと交渉人の胃が死にそうな配置…

  • 132『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/20(月) 21:58:13

    第二作戦3時間前
    《塩漬けside》

    【俺達は要塞一角を改造した展望テラスに集められていた。そこから見えるのは魔王の張った障壁と、《無尽機》のデカイ図体だけ】
    【テラスには大きなテーブルと人数分の椅子があり、誰が手配したのかお茶の用意までされていた】

    「で、呼びだした張本人はまだか?」

    【手配はしてあったが淹れる者がいなかった為、絶壁が用意したお茶を飲みながら俺は言った】

    「まぁ、登竜門さんですし?」

    【絶壁を手伝った後、隣の席に座った掃除屋が苦笑し、それに絶壁が便乗した】

    「アバウトですからねー」
    「お三方はあの方と古いお知り合いなのですよね?」

    【茶を一口飲んで《仁聖》が言った】

    「だいぶ腐れ縁だがな」
    「放浪するダンジョンでマスターでしたか……僕の出身世界では、そういうタイプのダンジョンはなかったので驚きました」
    「──私には、ダンジョンマスターという言葉さえ耳馴染みはないのですが」

    【俺の言葉に《多妻》が続き、さらに《先生》が溢す】

  • 133『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/20(月) 21:58:40

    「しかし、《交渉人》殿の話を聞いた時は肝が冷えたぞ! 各国のトップに堂々と喧嘩したと聞いたからな!」
    「ふはははっ! まさに女傑の所業だな!」
    「個人的には、めちゃくちゃスカッとした!」
    「すごいよねー!」

    【《率団》、《鉄壁》、《ブロック》、《無垢糸》が各々笑う】

    「で、でも軍の規模は小さくなりました……。やっぱり僕は、不安です」
    「まぁ、それはあるっすけどねぇ。いきなり戦場につれてかれた俺っちからすれば、こっちの事情に振り回されずに動けるのはありがいっすけどね」
    「問題ナイ、敵ヲ倒セバ、解決スル」
    「……」

    【《学徒》は不安がり、《流星》がぼやき、《蛮勇》は端的に言い、《嵐災》は興味なさげにしている】
    【《嵐災》は《先生》の治療により、縫われていた瞼も耳も口も元通りになっていた。そのおかげで食事が出来る様になっている】

    (最初間近で見た時はガリガリだったしな)

    【ハーピィの里から通いでここに来ている辺り、恩義は感じているらしいがあまり打ち解けようとしない。唯一《先生》と掃除屋に少し懐いている程度だ】

    (別に仲良しこよしの集団じゃねぇから構わねぇがよ)

    【と、そんな事を考えていると要塞の中から二人の人物がテラスに入ってきた】

  • 134『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/20(月) 22:52:31

    「待たせたわね。それじゃ、作戦の最終確認といきますか!」

    【人を待たせた癖に意気揚々と入ってきたのは、英雄登竜門。世界の首脳陣と口喧嘩を繰り広げた後、軍の独立を勝ち取りちゃっかり副大将と全体の作戦指揮官に収まった英雄バカだ】
    【その後ろについているのは、いつもの従者ではなく《交渉人》だ】

    (なんか、やつれてねぇか……?)

    【ここ数日、何を気に入られたのか英雄登竜門に引っ張り回されているせいで少し痩せた様に見えるのは、気のせいだと思いたい】

  • 135『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/20(月) 22:53:35

    ※眠気がすごい為、キョウはここまでで

  • 136『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/21(火) 19:34:45

    「あら、お茶なんて誰が手配したのかしら? 気が利いてるわね」
    「登竜門さんじゃないんですか?」
    「私はしないわよ、そんなこと……それじゃ、始めるわよ」

    【掃除屋の疑問をスルーして英雄登竜門は話始めた】

    「今回はまず、あのバリアをぶっ壊すわよ。軍を配置するのはその後ね……それで塩漬け狩り、検証の結果はどうだったのかしら?」

    【水を向けられた俺は、ある一人をチラ見して答えた】

    「ああ、そこは問題ない。むしろ期待以上だったな」
    「そ、ならいいわ」
    「質問があるぞ! なぜ最初に軍を配置しないのだ!」
    「《率団》……あんたはもうちょっと頭を働かせなさいな。中がどうなってるのかわからないのよ? 壊したら、まず情報収集でしょうが? 何が出てくるかわからないのだから、最初は様子見と防御に徹するべきなのよ」
    「──では、軍の編成をあらかじめ決めていた理由はなんでしょう? 情報収集の後、的確な編成を決めればよいと思うのですが?」
    「そりゃ《先生》、何が起こるかわからないからよ。何かあってから、編成する。それは流石に後手に回りすぎ。情報収集も大切、それと同時にすぐ動ける様にしておくのも大切なのよ」
    「うーん、だとしたら軍の編成を種族毎に固まらせたのはなんで? 別に混成部隊で良くない? 何が出てくるかわからないなら、何でも出来る様に編成した方がいいと思うけど?」
    「確かにね、でも《ブロック》。万能が全てを賄えるわけじゃないのよ……やろうと思えば出来るけど、それには長い時間がかかるの。
    第一軍は只人だけだけど、その分汎用性と連携力は高いし、いざとなったら軍を小分けにも出来るわ。
    第二軍の各亜人達だけど、種族毎に得手不得手がハッキリしてる面があるから、うまく運用できた時の爆発力は高いのよ……反面、分断された時に脆さが出てくるのだけどね。
    第三軍の天使と悪魔は、なにより個々の能力が高いわ。分断されてもある程度は対処できる反面、個の実力に頼りがちで連携面で不安が出てくるのよ。
    だから、私は大まかな種族毎に軍を三つに分けたのよ」
    「実際に人員を振り分けたのは俺だがな……」

    【質問にテキパキ答える英雄登竜門。その最後に《交渉人》がため息を吐く様に言った】

  • 137『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/21(火) 20:19:37

    「もう質問はないかしら? それじゃ続きを話すわね」

    【それを華麗に無視して英雄登竜門は続けようとして、《学徒》が遮る】

    「あの、すみません。続きと言っても……相手の出方次第で臨機応変に、ではないのですか?」
    「それはバカのすることよ。ある程度は予測して、対応策を用意して置くのは当然だわ」

    【バッサリ切り捨てた英雄登竜門は言う】

    「まず何かが飛んできた場合、それは《絶壁》が対処しなさい」
    「わかりましたよー」
    「次に敵が雪崩れ混んできた時は、《流星》。あんたの爆撃で吹き飛ばしなさい」
    「うっす」
    「で、その対応を超える空飛ぶ奴が大量に出てきたら《嵐災》と《無尽機》に一任するわね」
    「……(コクリ)」
    「そしてその二つをやり過ごした後、または敵が動かなかった際は《掃除屋》が偵察に出なさい」
    「はい」
    「後、魔王が直接殴り込んできたら、それは私が対処するわ。その時は軍全体の指揮は《交渉人》に一任する」
    「了解した」
    「最後は……魔王討伐部隊が操られて攻めて来た場合ね」

  • 138『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/21(火) 20:46:38

    【その一言に、その場がピリついた。ずっと真面目に話を聞いていた《仁聖》が口を開く】

    「彼らが敵になる場合があると、貴女は思っているのですね?」
    「あのバリアの中でずっと死にっぱなし……なんてのは、頭ん中お花畑すぎるわね。もう跡形も無くなっている可能性もあるのよ? それに比べれば……敵になっている方がまだ救いがあるじゃない」

    【隣の掃除屋がギュッと拳を握ったのが見えた。俺はイラついて一言おうとしたが、その前に掃除屋が声を出した】

    「その場合は、熱剣士さん達が敵になっていたら……その時は、どうするんですか?」
    「その時は《仁聖》、《鉄壁》、《蛮勇》、それと私の【軍勢】で対処するわ。手足の5、6本捥いででも止めなさい。……第一軍はあんた達なしでも機能はするでしょうしね」
    「なるほど、心得ました」
    「任せて貰おう!」
    「オウ!」

    【三人が各々答えた後、英雄登竜門はそれに頷いてその場の全員は見渡す】

    「特に名前を上げなかったのは、各々の役目を全うしなさい。
    いま挙げた事態が一度に全て起こる可能性だってあるんだから……その時に慌てず対処すること、いいわね? あんた達が崩れると軍も機能しなくなるわよ。
    特に《学徒》と《無垢糸》はそれぞれの指揮官の言う事をちゃんと聞きなさいな」
    「はーい!」
    「わ、わかりました……」

  • 139『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/21(火) 20:48:04

    【それを聞いた英雄登竜門は席を立った】

    「それじゃ、一時解散ね。
    作戦開始1時間前までは好きにしてて頂戴な。さ、行くわよ《交渉人》、第一軍の臨時指揮官を決めないといけないからね」
    「……全く人使いの荒い」
    「あんたの得意分野でしょうが?」
    「私も付いて行こう。名目上とは言え、私が第一軍の指揮官なのだからね」
    「あー、それもそうね。総大将を蔑ろにはできないし」
    「その、総大将というのは……流石にこそばゆいのだが?」
    「謙遜するな。君が総大将でなければ、この独立軍は結成されなかっただろうさ」
    「それ、私が総大将だったら無理って言ってないかしら?」
    「おや? わかっていて《仁聖》を総大将にしたと思っていたが?」

    【そう言い合いながら、三人は出ていった。それを皮切りに、他の奴らも展望テラスを出て行き始める】
    【俺はすっかり冷めたお茶を飲み干しつつ、第二軍の運用を考えていると、ふと思い出す】

    (結局、お茶の用意は誰がしたんだ?)

  • 140『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/21(火) 20:48:47

    ※今日はここまでです

  • 141海竜の巫女23/03/22(水) 08:58:19

    (※続き来てた!!お茶……本命《交渉人》さんの手配?対抗《英雄登竜門》さんの従者さん?)
    (※大穴として《ブロック》さんが場の装飾代わりに置いただけの可能性……??)

    「あ、こっちも動きがあったのね!!至ほ……詩篇さん達、と言うより英雄登竜門さんオンステージ?」
    「政治的に色々あったけれど、2/3残ったのは世界の危機故かしらね……逆に1/3は何やってんのかしら」
    【色々あったとは聞いていたので多少心配していた巫女。2/3残ったのはマシな方かなと思いつつ】

    「……まぁ、総大将も副大将も異界の勇者がやってる独立軍に自軍を任せる、ってのも勇気は居るのかな?」
    【アレだけ発破かけられて……と思った辺りで、《交渉人》さんの話題が出て色々察した巫女】
    【発破かけるだけじゃ無くてちゃんと話し合う人も居たんだ、と言う顔になり。貧乏くじだよね……と憐みの表情】

    「相手が閉じこもってる結界を破壊できそうなのはまずめでたいとして、討伐隊の方々の現状予測は……」
    「……中々に辛いものがあるわねぇ、あり得ない話では無いとは言え……」
    【『跡形も無くなっている可能性』に視線をやった瞬間、一瞬ぴしりと凍り付く。普通に止まったままだと思ってた巫女】
    【固定された『死』、以上の悪状況があり得る『魔王』との戦いの重みを、改めて感じている】

    「でも、これだけ対策を練って挑めば何とかなる、よねぇ……?」
    「この計画立案能力はウチも見習いたいものね、いずれ強敵の討伐依頼に挑むとしたら必要な技能でしょうし」

    「……ご武運を、『五体満足で』救出できることを願っているわぁ!!?」
    【『手足の5、6本捥いででも』で再度青くなる】

  • 142ティーポットリクガメ23/03/24(金) 22:17:11

    「こぽぽ」
    「ぷしゅうぷしゅう」

  • 143『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/24(金) 23:18:50

    保守

  • 144二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 21:02:58

    第二作戦約2時間30分前
    《仁聖side》

    「ふぅ」
    【城壁の上に出て息を吐く。臨時指揮官の取り決めはほぼ滞りなく終わり、その後、第一軍の指揮官と軽い打ち合わせをしてきた】

    「堅苦しい会話は肩が凝るな」
    (だから、こうして風に当たりに来たのだが……)

    【総大将にまで任命される流石に緊張してくるが、その分やりがいがあると言うものだ、と自分に言い聞かせる】

    「ん?」

    【ふと横を見ると、意外な組み合わせが揃っていた。《掃除屋》《蛮勇》《流星》《ブロック》の四人だ】
    【このから顔が見えるのは話している《掃除屋》だけだが、なにやら楽しそうだ】
    【恋人がどうなっているかわからないというのに、という思いはあったが同時に少し気になった】

    「やぁ、何を話しているんだい?」
    「あ、《仁聖》さん……その、英雄登竜門さんの事を話していました」

    【そう言って彼女は照れくさそうに笑う】

    「君は彼女と仲がいいのかい?」
    (《塩漬け狩り》殿や《絶壁》殿は──

    「いえ、別に仲良くはないです」

    ──疎んでいる感じ、ん?)

    【即答。あまりの即答ぶりに、ずっこけそうになった】

  • 145『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/26(日) 21:05:00

    「ほ、ほう。その割りに嬉しそうに話していたが?」
    「それがさー、聞いてよ《仁聖》っち! なんと《熱剣士》は《英雄登竜門》の末裔なんだってさ! 私びっくりしちゃったよー」

    【《ブロック》の言葉に思わず固まる、というリアクションを取ってしまう】

    「……それは初耳だ。どうして彼女は黙っていたんだ? というか末裔?」
    「《英雄登竜門》ハ、約三千歳ラシイ」
    「見た目より若い思っちゃいましたがそこまでとは思わなかったッスよね~」

    【私の疑問に《蛮勇》が答え、《流星》が茶化す】

    「えと、たぶん恥ずかしいんだと思いますよ?」
    「んー? 別に末裔がいることくらいよくない?」
    「いえ、たぶん……いつもの英雄登竜門さんの性格なら、人類の問題は人類が解決すべしと静観していたはずですし……」
    「俺が言えた義理じゃないッスけど、確かにもっと早く出てきてもよかったッスよね」
    「おそらくなんですが、お気に入りの熱剣士さんが殺されて……思わずカッとなって出てきたんだと思います」
    「なるほど、確かに」

    【思い返すと介入したタイミングが、《掃除屋》の推察にピッタリ符合する】

    「でもさぁ、お気に入りってどう言う事? 単なる血の繋がりで助けたんじゃないの?」
    「それは、えと……《蛮勇》さんは試練を受けられたんですよね? どうでした?」

    【《掃除屋》は《ブロック》の質問に答えず、《蛮勇》に水を向けた。彼は少し考えて答える】

    「……俺デモ、辛ク厳シイ物ダッタ。加護ガ無ケレバ百ハ死ンデイタ」

    【端的に答えるが、私は少し驚いていた。彼の戦闘記録は読んでおり、それは自分の命を命と思っていないような狂戦士の所業であった】
    【その彼がそこまで言うのだから、よほどの物だったのだろう】

  • 146『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/26(日) 21:39:12

    「《熱剣士》さんはそれを四回受けています。私達の世界でも現役最多と言われています」
    「……それは確かに『お気に入り』ッスね」
    「それと、登竜門さんは過保護なんですよ?」

    【そう言って彼女は、いたずらっぽく微笑んだ】

    「ほーほー、どう過保護なの?」
    「登竜門さんが熱剣士さんに渡した装備ですね。
    まずは剣です。これは高熱に溶けず技量が高いほど切れ味が増す魔剣なんですが、これは武器を使い捨てせざるをえなかった熱剣士さんにピッタリだったんです。それに単純に何でも切れるとかではなく『技量が高いほど』というのが、熱剣士さんの性格にマッチしています。
    次にペンダントなんですが、これは対状態異常用のペンダントで、特に熱剣士に対する熱気と冷気を常温レベルまでシャットアウトする代物です。熱を操る魔法を極めはじめて自分すら焼く事のあった当時の熱剣士さんにピッタリです。
    そして、鎧です。熱剣士さんの鎧には『自己治癒』『再生』『蘇生』の力があります。きっと平気な顔で無茶ばかり始める熱剣士さんを思っての事でしょう。
    最後に四方紙片という栞みたいな紙なんですが、これはパーティ専用装備で……本人のとある性質のせいでソロだった熱剣士さんにパーティを組む切っ掛けを与えた装備なんですよ」

    【《ブロック》が尋ねると、《掃除屋》は立て板に水の如く話し始めた】

    (とある性質……、女難だろうか?)

    【そう思いつつ、私は少し気になった事を切り出した】

    「君は《熱剣士》が生き返らせる事ができる状態だと、信じている様だね」

    【彼女の様子には、テラスの茶会で垣間見せた不安や陰りは一切なかった】

    「はい、ありません。私は彼の生存を信じています。登竜門さんがあの場でああ言ったのは『この程度で揺らぐな』という叱責だと思っています」

    【真っ直ぐな目だ。私の様な紛い物では決してできない目であった】
    【恐らく他の四人も同じような物を感じたのだろう。感心した雰囲気がその場に流れていた】
    【しかしそんな中、《ブロック》が爆弾を投下する】

  • 147『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/26(日) 21:39:37

    「いやー、《熱剣士》は愛されてるね! ……あ、そういえばさ? 二人が結婚したら《英雄登竜門》が姑になるわけ? あの人、嫁いびりキツそうだね!」

    【結婚というワードが出た瞬間、《掃除屋》の顔が赤く染まる】

    「あ、いや、その、まだそう言った具体的な話は、まだ……」
    「いやいや、誰も具体的な話なんてしてないっスよ?」
    「俺ハ、二人ノ事ハヨク知ラン。シカシ、アノ女傑ノ認メタ末裔トナラ……キット強イ子ヲ為セルダロウ」

    【二度三度畳み掛けられて彼女は真っ赤になって俯いてしまった】
    【そんな様子に私は、年相応な面を見れてホッとしている。故に私もこの流れに乗っかることにした】

    「私個人としては、二人の結婚式に立ち会えそうにないのが残念で仕方ないよ」

    【私が言うと、《掃除屋》はとうとう顔を隠してその場で踞ってしまったのだった】

  • 148『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/26(日) 21:40:03

    ※今日はここまで

  • 149海竜の巫女23/03/28(火) 09:19:49

    (※四方紙片がPT至宝詩篇へと導いた……両方『しほうしへん』だ!?)

    「今はランカーの《熱剣士》さんも、最初は色々と問題を抱えていたのねぇ……武器を使い捨てとかお財布大変そう」
    「それを一つずつ解決して来て、今があるってのは見習いたいね!修練だけでは無く、装備品に頼る方法もある、と」
    【スクロールに書かれた《熱剣士》のこれまでを読み、他の上級冒険者達も、色々乗り越えたのだろうと想像する巫女】

    「……そして《英雄登竜門》さんの試練を受けた回数、そんなに多いのね!?そりゃお気に入りって噂が立つ筈ねぇ」
    「これは血の繋がりがあるから――ってワケでは無さそうね、もしそうなら《英雄登竜門》一族とか有名になりそうだけど」
    「……そういう噂やイメージを聴いた試しは無いし……各国の長にも物怖じしないぐらいだし、血族にも厳しいのね!?」
    【自分がもしその一族に生まれてたら、何を言われていたのだろう?と、ちょっと想像してみて蒼くなる巫女】
    【修行をサボって実家から追い出された癖に、修行の相談を実家に持ち込んだ、一族におんぶにだっこ巫女あのだ】

    「それにしても《ブロック》さんは相変わらず軽いわねぇ!?ま、ずっとドンヨリムードよりはマシなのは間違いないけれど」
    「《蛮勇》さんもナチュラルに結婚後の話までしちゃって――アレ素よねぇ、頼れるツッコミ《流星》さん頑張って……!?」
    「……でも、《仁聖》さんにも初手で女難体質の話と疑われるレベルだと、一人じゃツッコミ切れないかも――??」
    【そこはこう、『ツッコミ流星剣』で……などと、《流星》さんに脳内で期待しつつもちょっと同情する】

    「……ちなみにご祝儀は3万Gぐらいで良いかしら?こっちの世界に帰って来ないと渡せないから、そこんとこヨロシク!」
    【と、言いつつ激励かボケか分からない内容を、スクロールに流れるように送信した】

  • 150『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/30(木) 07:20:38

    ほしゅ

  • 151『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/30(木) 22:24:47

    第二作戦約2時間前
    《率団side》

    【槍を盾に叩きつける。しかし届かない。幾度も幾度も叩き続ける。だが届かない】

    (ぬぅうううん……! やはり凄い! 凄い防御力だ!! 我が槍がまるで届かぬ!!!)

    【我は要塞内の修練場にて《鉄壁》殿との打ち合っていた。否、一方的に打っているいるのは我のみ】
    【《鉄壁》殿は盾で受けているだけだ。我が剛力なら例え刃は防げても衝撃を防げる物ではない。しかし、《鉄壁》殿には効いている様子がない】

    「ふはははっ! すごい力だ! 手が痺れてしまいそうだ!」

    【大仰に笑う《鉄壁》殿に同じく笑みを返す】

    「それはこちらの台詞だ! 打ちすぎて手が痺れてしまいそうだ!!」

    【嘘ではない。金城鉄壁を崩そうと『殺す』気で槍を扱っていた】
    【そこに声がかかる】

    「お二人とも、その辺でー。本番前に疲れきっちゃいますよー?」
    【回復─疲労─発動】

    【《絶壁》殿だ。疲労回復の魔法をかけてくれた様で、疲れが取れていくのを感じる】

    「うむ! かたじけない!」
    「ふはははっ! 楽になったな!」
    「では、もう一合お願いしますぞ!」
    「応ともさ!」

    【と、せっかく疲れが取れたので仕切り直そうとした時であった】

  • 152『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/30(木) 22:25:14

    【防御─壁─発動】

    【我と《鉄壁》殿の間に巨大な魔法壁が張られたのは、思わず《絶壁》殿の方を振り替えれば、彼女はまるで笑っていない笑顔で微笑んできた】

    「私の話は聞いてましたかー?」
    「う、うむ……すまん。体が温まって居たのでついな!」
    「ふは、はは……申し訳ないぞ《絶壁》殿!」

    【思わず気圧され二人で頭を下げた】
    【と、そこで同じ場にいた《多妻》殿一行から笑い声が聞こえた】

    「失礼しました。先のやり取りがほほえましかった物で」

    【真っ先に《多妻》 殿が答え、それに奥方達が続く】

    「申し訳ありません。まるで母親とやんちゃな子供達のやり取りを見ているかのようでした」
    「決戦を前に悠長ですわね。変に緊張なさるよりはいいですが……」
    「また、そんなこと言って、笑顔を扇に隠しちゃうんですから」
    「ん。素直じゃない。それに見応えある戦いだった。槍の技術、盾の技術、魔法の技術、三人ともすごい」
    (コクコク)
    「全くです。《絶壁》様の回復魔法は発動も早いのに効果も抜群で……正直、嫉妬してしまいます」
    「あんまり比べるもんじゃないよぉ? 私達の旦那と同じ『勇者』なんだしさぁ」
    「《絶壁》さんは将来、旦那さんを尻に敷きそうだね」

  • 153『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/30(木) 22:25:40

    【まったく賑やかだと思いつつ、笑われて恥ずかしいやら、褒められて嬉しいやら複雑な心境になっていると、《絶壁》殿は最後の言葉が気に入らなかったのか頬を膨らませた】

    「尻になんて敷きませんよー。私の彼はしっかり者ですのでー」

    【《絶壁》殿がそう言うと奥方達とのがーるずとーくが始まり、《多妻》殿が苦笑していた】

    「ふはははっ! 修練どころではなくなってしまったな! それでどうかな《率団》殿、この後は互いの感想戦をしつつ一杯付き合ってくれまいか?」
    「おお、それはいいで──」

    【次の瞬間、ゴーンッと重い音を立てて魔法でできた巨大なタライが我達のすぐ近くに落ちた】
    【防壁ごしに話していたのに、いつの間にそれも消え去っており、我と《鉄壁》殿は同時に、かの御仁に顔を向けた】

    「一杯までですからねー」

    【《絶壁》殿は奥方達に囲まれていたいたので、姿は見えない】
    【二人でガクガク頷きつつ、そそくさと修練場を後にした。その最中、我は思う】

    (《絶壁》殿と結ばれる御仁は絶対に夫婦喧嘩はできないであろうな)

    【と】

  • 154『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/03/30(木) 22:29:07

    ※今日はここまで

  • 155二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 00:15:26
  • 156『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/04/03(月) 00:19:24

    >>155

    ありがとうございます!

  • 157『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/04/03(月) 18:56:36

    第二作戦約1時間30分前
    《無垢糸side》

    【要塞の一室で、あたしは自分で出した糸を操り、次々と武器を作ってそれを《塩漬け狩り》のおじちゃんが見ていく】

    「えーと、どんな感じ?」
    「……まっ、相変わらずいい感じなんじゃねぇか?」
    「やった!」

    【褒められて思わず万歳していると、誰かが入ってきた】

    「何してるんです?」
    「これは、どういう状況だ?」

    【《学徒》のお兄ちゃんと《交渉人》のおじちゃんだ。部屋に並んだ武器を見て困った様な表情をしている】
    【それに対して《塩漬け狩り》のおじちゃんが言う】

    「何って、軍の予備武器だ」
    「これ全部《無垢糸》ちゃんが作ったんですか?」
    「うん! 倉庫にもういっぱいあるよ!」
    「ちょっと待て、そんな報告は受けてないが?」
    「《ブロック》の奴にはちゃんと伝えてあるぞ? 兵站担当はあいつだろ。……報告忘れてやがったな」
    「だろう、な」

    【そして、同時にため息を吐いた《塩漬け狩り》と《交渉人》のおじちゃん達、《学徒》のお兄ちゃんは興味深げに武器を見ている】

  • 158『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/04/03(月) 19:28:29

    「こんな事できたんですね、すごいなぁ。でもどうして?」
    「前々から《塩漬け狩り》のおじちゃんと作ってたよ? 理由はしらなーい」
    「《無垢糸》の作った武器は質がいいんだ。ろくな武器持ってねぇ種族もいたからな、そっちには優先で配備して、後は予備として作って貰ってたんだよ」
    「確かに重要ではあるが、そこまでいいものなのか?」
    「おう。最初はむやみに軽かったりバラつきがあったりしてたが、数日で均一化できた」
    「おじちゃんのおかげだよ!」

    【最初頼まれた時は不満だったけど、だんだん楽しくなってきた】
    【あたしが言葉に《塩漬け狩り》のおじちゃんは苦笑する】

    「俺はこれでも80の爺なんだがな。……実は他にも理由があんだよ」
    「え! そうなの?」
    「……なんで《無垢糸》ちゃんが驚いてるんですか?」
    「それで、どんな理由なんだ?」
    「一つは《無垢糸》はほっとくとふらふら遊びに行っちまうからだよ。連合軍だった時はもっとピリついてたからな、あんま刺激になるような事を避けたかった。……英雄登竜門が結局ぶち壊したがな」
    「あはは、それで他には?」
    「《無垢糸》はこっちに残るらしいからな。手に職はあったほうがいいだろ?」

    【《塩漬け狩り》のおじちゃんがそう言うと、二人はびっくりしていた】

  • 159『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/04/03(月) 19:29:23

    「え、《無垢糸》ちゃんはこっちに残るの?」
    「うん、蟲人族の里に戻るの! あたし元の世界なんか帰りたくないし!」

    【あそこは暗くて冷たくて寂しい所だった。優しい人も仲のいい人も一人もいなくて……だから、帰りたい気持ちはまったくない】

    「そこまでびっくりする事か? 《嵐災》だって残る気満々じゃねぇか?」
    「そう言われれば、そうだが……それにしても職が武器職人というのは無骨すぎないか?」
    「無論、武器だけじゃねぇさ。ほら」

    【と言って《塩漬け狩り》のおじちゃんが腰の雑嚢から取り出したのは、キラキラした大きな布地だった】

    (なんで、あんなに小さいのにあんなに入ってるんだろ?)

    【ふしぎだなー、て見ていると布地に触れた二人はさっきよりもビックリしていた】

    「これは、凄く綺麗ですね。触り心地も凄くいいです」
    「絹なんて目じゃないな。とんでもない品質の布地だ……しかし、あまり市場に流し過ぎると危険ではないか?」
    「そこら辺は本人にも蟲人族の族長にも伝えてあるし、商国の代表にもう見せて少量だけ卸すことが決定してる。大丈夫だ」
    「あたしは好きに好きなの作れないはちょっと嫌だけど、里のみんなに迷惑かけられないもんね……」

    【寂しい気持ちになりながら言うと、《塩漬け狩り》のおじちゃんに大きな手で頭を撫でられた】

  • 160『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/04/03(月) 19:30:37

    「あんま難しく考えんな。作りすぎなきゃいいんだからよ」
    「……はーい」
    「それに《塩漬け狩り》さんはすごいですね。色々な事考えてて、アノ事もそうですし」
    「これでも爺だからな。物事をうまく回すコツくらいは身に付いてんだよ」
    「それはそれとして《塩漬け狩り》殿、少々聞きたい事があるんだが?」
    「あ? なんだよ……」

    【《交渉人》のおじちゃんに詰め寄られて、《塩漬け狩り》のおじちゃんが嫌そうな顔をする】

    「さっきの布地、それに武器の数々、他にもありそうだな……いったいいくつ持っているのかな?」

    【聞かれた《塩漬け狩り》のおじちゃんは目を逸らす。それに対し、《交渉人》のおじちゃんは鋭く目を細め、《学徒》のお兄ちゃんはポカンと口を開けていた】

    「え、いっぱい持ってるよ! あたしがいっぱいプレゼントしたもん! その雑嚢にぜーんぶ入ってるから、ふしぎだなーっ思ってたんだ!」

    【言った瞬間、なんだか変な空気になった】

    (え、なんで?)

  • 161『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/04/04(火) 23:40:08

    第二作戦約1時間15分前
    《嵐災side》

    【胸に手を置かれ、唇をなぞられ、舌を突きだされ、目を覗かれ、耳に触れられる】

    (やはり、ぞわぞわ、する……)

    【それを行うのは無機質な感じのする人間の様な何かだ。彼は一通り、私の体に触れると身を離した】

    「──問題ありませんね」

    【《先生》と呼ばれるソレは言った】

    「不可解、これは前にもやった。その前も。やる意味が、わからぬ」
    「──あなたと出会った時は酷い状態でしたからね。あの様な仕打ちは、あまり見た事がないので、特に念入りにと思ったまでです」

    【感情の込もってない声で言われても、響く物がない】

    「──もう大丈夫ですね。では、私は失礼します。そろそろ集合時間ですので」

    【部屋を出ていく背中を見送る。《先生》、あれは人間ではない】

    (他の人間は、気づいてない、のか?)

    【縫われた口と目と耳を治してくれたのは感謝している。最初は嫌だったが、その異質さが不気味に感じて抗うのを止めた】
    【恐らくだが、気づいている者もいるだろう。しかし、詮索する意味がないので誰もしていないのだろう】

    (所詮は、他人。多種族の、集まりか)

    【そこまで考えて、私は開け放たれたままの窓から飛び立つ】

  • 162『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/04/04(火) 23:42:31

    【向かうのは、《無尽機》と呼ばれる鳥に似た鉄の塊の所。その首筋辺りに降り立ち、顔を見上げる】

    「お前は、命ですらない、なのになぜここに来た」

    【こいつは喋らない。喋った所を見た事がない。こいつは初めて会って、ここに降り立ったまま少しも動かない】
    【故に私の問いは虚空に消え】

    「なんでかしらね?」

    【なかった。声は反対側からした】
    【そちらを見ると《英雄登竜門》と呼ばれる人間の形をした何かが座っていた】

    「なぜ、いる?」
    「風に当たりたかったからよ。そっちは?」
    「同じだ」

    【同じ考えだったのでそれだけ伝えた。《英雄登竜門》はふーん、と興味なさげに呟いた】
    【そこから無言の時間が続く。アレと話す話題はない】
    【しばらくして沈黙を破ったのは向こうだった】

    「あんたさ、私と同じ世界の出身よね?」
    「……!」

    【思わず顔を見る】

    「エンシェントハーピィ……絶滅したと思ってたわ」
    「私の群れは、やはり滅んだのか」
    「私の知る限りではね。やったのは殲魔辺り?」

    【コクりと頷く】

  • 163『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/04/04(火) 23:43:35

    「そ、帰ったらシメとくわ。探せばすぐ見つかるでしょ?」
    「なぜ、お前が気にする」
    「なんでって、仲間の仇だもの?」
    「ナ、カマ?」

    【思わず、すっとんきょうな声が出た】

    「そうでしょ。こうやって同じ敵を見据えて、同じ場所に集まったのだし」
    「……」
    「だからね、あんたの仲間の仇は私が取る。約束するわ」
    「どうして、そこまで、する」
    「こっちに残るあんたへの手向けかしら? それに関わった以上、見過ごすと後味悪いじゃない」

    【その言葉に、奴らへの憎しみが再燃するのを感じ、これから奴らがこの女に八つ裂きにされるのだと思うと、胸がすくような気持ちになった】

    「……頼む」
    「ええ、頼まれたわ」

    【その時だった。背後、要塞の方から私に似た姿の《掃除屋》が飛んで来た】

    「あ、お二人ともこちらにいたんですね。もう集合時間過ぎてますよ?」
    「あら、もうそんな時間?」
    「そうです。《交渉人》さんはカンカンですよ? 時間を設定した本人が遅れるのかって」
    「あったま固いわねぇ。しゃーない、ほら《嵐災》も行きましょ」
    「あぁ、仲間が、待ってる」

  • 164『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/04/04(火) 23:44:03

    【私の言葉に《掃除屋》は驚いた後、微笑んできた】

    「はい、行きましょう。皆さんが待っています」
    「じゃ、ちょうどいいわ。二人して私を運んでよ? いい演出になると思わない?」
    「えぇ……登竜門さんは楽する気でしょ」
    「いいじゃない。あんたら飛べるんだから」

    【二人の会話に思わず頬が緩むのを感じた】

    『提案。本機が運びましょうか?』

    【突如、硬質的な声が聞こえた】
    【私達三人は顔を見合せ、声の主──《無尽機》を見て】

    「「「喋れ(たのか)(るんじゃないの)(たんですか)っ!?」」」

    【声が重なった】

  • 165『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/04/04(火) 23:48:39

    ※今日はここまで
    ※感想がありましたら是非!モチベーションになります!

  • 166『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/04/07(金) 01:27:30

    第二作戦約20分前
    《英雄登竜門side》

    【要塞城壁に勇者が立ち並び、そこからは整列した兵士達の姿が見下ろせた】
    【いわゆる出陣式という奴ね】
    【今は《仁聖》と《交渉人》が喋っているわ】
    【何て言うか、お題目が綺麗で礼儀正しい固い話なのよね。そんなんじゃ、ちっとも盛り上がらないじゃないの】

    「我々に勇者についてきてくれて感謝する。我々はその期待に応える事を約束し、諸君らの健闘と生還を祈る」

    【《仁聖》はそう言って締めようとした】

    (全くなってないわね……)

    【そこで私は前に出た。至宝詩編の連中が「やっぱりみたいな」顔したけど知ったこっちゃないわ】

    「私からも一ついいかしら?」

    【《交渉人》と《仁聖》に向けて言い、返事も聞かずに兵士達を見下ろす】
    【周囲と兵士がザワつく中、私は言う】

    「私は英雄登竜門! その名にある通り、私は数々の英雄達を見てきたわ! ここに並ぶはどこに出しても恥ずかしくない英雄達であることは私が保証するわ!」

    【横目で《交渉人》がホッとするのが見て取れた】

    (なに、安心してるのかしら? 本番はここからよ)

    【私はそこで一拍溜め】

    「でも、私は不安だわ……。だって世界の危機に対しても、この世界は一つなれなかったんだもの……」

  • 167『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/04/07(金) 01:28:36

    【ざわざわと、空気が揺れる】

    「くっだらない政治闘争に明け暮れて時間を浪費し、戦後のことばかり考えて内部分裂さえ起きそうになったわ……端から見ていた身としては『恥知らず』もいいところよ」
    (まっ、詭弁だけどね)

    【目の前の現実のみに対処するのが現場の人間なら、上はソレのみに集中させる環境を作らないといけない。それに、戦後の着地点を考えるなんてのはごくごく当然の行いなのだ】
    【だが、この場ではまるっと無視する】
    【何故なら私が見下ろしているのは、これから決戦に望む兵士達なのだから】

    (高級将官辺りはちゃんと理解してるでしょうが、理解してるなら大人しく私の手の平で踊らされていなさいな)

    【私は声を張り上げ、続ける】

    「それに私は、私達を呼んだ女神にも不満があったわ!」

    【ざわつきが更に大きくなる。それが静まるのを待ってから私は言う】

    「だって女神が私たちを呼んだのは、裏返せば『この世界のあんた達を信じてない』ってことじゃないの?
    それにこの世界の勇者を認定することもできたのに、しなかったわ」

    【現地勇者の不在、という事実を告げられ、またざわめきが起きる】

    「だから私は女神に対して不満を持ったわ。
    自分の産み出し育んで来た者を力が信じられないんだもの……って私は思っていた」

    【あえて過去系で言った】

    「正直な所、私は独立軍は連合軍の半分以下になると思っていたもの。でも、減ったのは1/3程度……感心したわ。
    真に世界を憂い、この場に留まったあなた達は──あなた達こそがこの世界代表の『勇者』だわ!」

  • 168『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/04/07(金) 01:38:33

    【ざわつきが、一瞬で歓声に変わる。ここで声を大にし、畳み掛ける】

    「いい!
    あなた達の背後には何万何億という民がいる! 想いなさい、その者達を!
    それはあなた達の友! 同胞! 仲間!恋人! 家族! あなた達が敗れれば、その者達はいずれ蹂躙されるわ!
    そんな事を許して言いわけがないでしょうっ!」

    【拳を振り上げると、兵士達がそれに続く】

    「力の限り戦いなさい……!
    命の限り、戦って戦って戦い抜いて! 女神に力を示すの!
    この世界を守るのはあなた達よ!
    私達はあなた達と共に行く!
    魔王を滅ぼし、邪神の野望を打ち砕きましょう──『勇者』たちよッ!!」

    【歓声は怒号の如く、その雄叫びは世界を震わせるが如く、響く】




    【開戦の鬨の声は上がった】




    【私が一歩下がると】

  • 169『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/04/07(金) 01:38:59

    「すまない《英雄登竜門》殿……そして感謝している。私では到底この様に士気を高める事はできなかった」

    【兵士達の手前、総大将としてこちらに頭を下げなかったが、横で《仁聖》が申し訳なさそうに言った。それに対し私は彼の胸を裏拳で軽く叩く】

    「私に頭を下げなかったのは及第点よ。けど『勇者をする』つもりなら、ちゃんとしない」

    【彼は目を見開いて驚き、フッと笑った】

    「心得ました。良い働きでした《英雄登竜門》殿」
    「それでいいのよ、総大将《仁聖》」

    【そして私は振り返って、同じ勇者達を見渡した】

    「さっ、始めましょ──決戦をね」

  • 170『至宝詩編』@異界◆sCf6qlU/Y623/04/07(金) 01:42:32

    ※できれば今日夜に!

オススメ

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