- 1二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 20:53:28
今日はお日様がポカポカしていて、走り出すにはこの日しかないって感じ!いつものあたしなら、このまま駆け回りたくてしょうがないはずだ。
――いつものあたしならだけどね……。
「ふわぁ〜……。うう、眠たいよぉ……」
そう、昨日はあまり眠れなかったから、眠たくて眠たくて仕方ないのだ……。目もしばしばするし、頭の中もぼんやりしてて何も考えられないよぉ……。いつもなら元気をもらえるお日様も、今日ばかりは眠気を増幅させる敵みたい。……正直ちょっと憎たらしい。そんなときに限ってお助け活動が忙しかったりするんだよね、もう体がヘトヘトだ……。
「あれ……あそこって……」
ぼやけた視界の先に大きな木が見えた。ちょうどいいや、ここで少し休もっかな……。まるで糸に引っ張られるように、真っ直ぐ木に向かって歩いていく。
「ふぅ……、ここなら少し落ち着けれるかも」
木に腰掛けてみると、さっきまでの疲れがほんの少しだけ和らいだような気がした。凪いでいる風も、葉っぱの揺れる音も、何もかもがあたしを癒やしてくれるみたい。
「うん、凄く気持ちいいなぁ……」
風を浴びて少し安心したからかな?眠気が少し強くなってきたような……?まだまだ練習まで時間があるし、このまま眠ってもいいよね?
誰に対して言ったかわからない心の声は、そのままあたしの意識とともに消えていった。 - 2二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 20:55:17
温かい日差しと気持ちのいい風が心を晴れやかにしてくれる。こんな良い日に外に出ないのは勿体なくて、少しだけ外を歩いてみる。ふとグラウンドを見てみると、ウマ娘達が元気よく走っていた。その様子を見て今日も頑張ろうと思えるんだから、間違いなく俺はこの仕事が好きなんだろう。
こんな日も元気印のあの娘なら、いつものようにみんなをお助けするために走ってるんだろうな。笑顔が眩しい姿を思い浮かべて笑みが溢れる。
大切なあの娘のことを考えていたからなのか、意外なところで彼女――キタサンブラックを見つけてしまった。
「すぅ……すぅ……」
大きな木を背もたれにして眠る姿は、いつものハツラツとした印象とは、まるで違ったものだった。普段が可愛いとするならば、今の状態は綺麗で儚げである。……肌の白さがどことなくそれを強くしているのかもしれない。
その姿を見て少し不安になり、しかし起こすわけにもいかないから、俺はキタサンが起きるまでは木の近くで見守ろうと思った。
「むにゃむにゃ……」
近づいてみると目の下に隈があるのを見てしまう。……どうやら寝不足の彼女は、ここで疲れ果てて眠ってしまったみたいだ。おそらくその状態でもいつものように、お助け活動をしていたのだろうなと想像がついてしまう。
「こういうときに頼って欲しいんだけどな……」
そんな寂しさを口に出てしまったけど、その声は今の彼女に届くことはないだろう。ずっと見てみるのも何だよな、そろそろ離れないとな。
そうして離れようとしたときに、彼女が少し目を開くのを見た。ポヤポヤしてていつもよりも幼い印象を与える。目が開いたことに驚きつ、離れようとするのを一旦やめてしまった。 - 3二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 20:57:57
「………………?」
「キタサン?」
首を傾げて何かを考えているのかな?ぼんやりしてる様子だからかよくわからないなぁ……。少しだけ体を揺らしている様子が心配だから、さっきよりも近づいてみる。
――寝ているとは思えない速さで抱きつかれてしまった。
「えへへ~」
「な、どうしたんだ!?」
いつも距離は近い方ではあるけれど、こんなことを何も言わずにするのは初めてだ。離れようとするけれど、眠っているとはいえウマ娘、その力は強く逃れることが出来ない。もがけばもがくほどその力は徐々に強くなるようだった。もう諦めて身を任せるしかないようだ。
「ぎゅ~」
何やら嬉しそうな彼女と違い、こっちは心臓がバクバクとなって苦しくてしょうがない。しっかりと鍛えているからこその筋肉の硬さと柔らかがあり、練習の成果が出ているんだなと現実逃避をするしかない。暫くこのままでいたら今度は横になりだした。どうすることもできない俺は、そのまま一緒に横になるしかなかった。
「よしよし……えらいねぇ……」
抱きつくだけでなく、今度はゆっくりとした手つきで俺の頭を撫でだしたキタサン。きっと夢の中で誰かを褒めているんだろうか、優しくも暖かいが伝わってくるようだ。……ここが外でなければこれも仕方ないと受け容れただろうなぁ。
色んな人達に微笑ましそうな目で見られるのは、これで何度目になるだろう。初めは恥ずかしさから逃れるために数を数えていたけど、十を超えてからはそれもしなくなった。
いつまでも続くと思われていたこの天国のような地獄は、彼女の本当の目覚めで終わりを迎えることになった。 - 4二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 20:59:40
「んぅ……ん?」
さっきまで撫でていた手がゆっくりと止まっていき、閉じられていたはずの瞳が開いていた。その瞳は赤く輝いていて、色んな人達が彼女に夢を託すのも改めて分かるようだった。
暫く目をぱちぱちとしているかと思ったら、顔が真っ赤になっていく。ははは、人ってこんなに赤くなるんだ面白いなぁ。そう思ったのと同時に、抱きついていた手が離れて素早く立ち上がるキタサン。
「え?え?これどういうことですか?何でここにトレーナーさんが?というかなんであたしここに?」
見たことがないくらい取り乱しているキタサンを見て、こっちも少しずつ正気を取り戻してきた。とりあえず慌ててるキタサンに説明しないといけないな。少し乱れた服を直すことで気持ちを落ち着かせ、しっかりと目を見て伝える。
「君が俺を抱きまくらにして寝てたんだ」
「ええ?!?!?!!?!」
不味い、頭の中全然正気に戻ってない。端折ったらいけないところを全部端折って話してしまった。キタサンも動揺しすぎて大声を出してしまっている。ええと……こんな時は……そうだ、違うって伝えなくちゃ駄目だ。
「ごめん、違う。寝ていたところを近づいたら、いきなり君が抱きついてきたんだ」
「ヒュッ………………」
これで良かったよな……いや良くないな……。でも何て言うのが正解何だこれ?こう言うしかなくないか?動揺通り越して固まってしまったキタサンに、どう言えばいいのか悩んでしまう。息が詰まりそうな雰囲気は他の人にも伝わったみたいで、心配してか徐々に色んな人達が集まってきた。 - 5二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 21:01:52
長く続くかと思われたこの時間は、作り出した本人が壊してくれた。さっきまで固まっていたキタサンは、姿勢を正したかと思うと、ゆっくりと正座して頭を下げていた。
「傷物にしてしまい申し訳ございませんでした。きっちりと責任を取って大切にします」
「はぁ!?!?!!」
こんな大勢の前で何を言ってるんだこの娘は!?
――湧き上がる歓声と動揺する声に取り囲まれながら顔を上げたキタサン。その顔は真っ赤で目を回していて、正気じゃなくなってるのが分かった。
「嫁入り前の人を辱めたとなれば……やらねばならないことは……これしかないです……」
「待ってくれ何かがおかしいだろ落ち着いてくれ」
「凄く心地良かったです……」
「やめるんだ、今言うとなんか意味が変わるから」
言えば言うほど場を混乱させるキタサンを止めなくてはならないけど、どう止めるのが正解なんだろう……。結局この騒ぎは、やってきたたづなさんに事情を説明することで、ようやく落ち着くことが出来た。
しかし暫くの間は、婚約者だのなんだの言われるようになってしまった。でもあれ以来開き直ってるからなのか、今までよりも距離が近くなってしまったキタサンを見ると、しょうがないのかなと思うしかないのだった。 - 6スレ主23/02/13(月) 21:06:08
明日はバレンタインということで、そのための話も考えたい。だから違う話を今のうちに書きました。
最近トレーナー視点とキタちゃん視点の2つを使いすぎですね…… - 7二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 21:10:23
- 8二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 21:11:34
俺っ娘トレーナーとの百合でしょ
- 9スレ主23/02/13(月) 21:14:47
- 10二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 21:15:38
男だろうが女だろうが構わず嫁にされますねこれは
- 11二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 21:17:45
嫁入り前の~の台詞でハッハーそういうオチか! って一人合点していた私は道化だった……
- 12スレ主23/02/13(月) 21:18:49
- 13スレ主23/02/13(月) 21:21:25
混乱してる様子を書きたくて書いた嫁入り〜でこんなことになるとは……面白いですよね……
- 14二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 21:21:47
何だっていい!気ぶるチャンスだ!良かったです、頼りになるキタちゃんにも無垢な部分もあるよね改めて思えて幸せでした
- 15スレ主23/02/13(月) 21:24:22
- 16二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 21:48:48
正月衣装が白無垢に見えてきたよ
- 17二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 21:50:41
これには組員もニッコリ
- 18スレ主23/02/13(月) 21:53:19
- 19二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 09:54:58
???「素晴らしいです!(パシャパシャ!!)」
- 20二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 17:13:43
乙名史記者かな?記事にされると不味いです……