- 1◆y6O8WzjYAE23/02/14(火) 00:00:21
季節は2月に入り、厳しい寒さがまだまだ続く。
2月の大きなイベント事と言えば……。
「ドーベル。少しよろしくて?」
「なに? ブライト」
「バレンタインのことで、少し相談したいことが」
そう、バレンタインデー。学生同士で渡す友チョコや、トレーナーへの日頃の感謝を込めてだったり。
トレセン学園が実質的な女子校ということもあり、この季節はいつも皆浮足立っている気がする。
「別にいいけど。なに? 前みたいにチョコレートの作り方を教えてほしいの?」
「あら〜? よく気づきましたわね。ええ、今年トレーナーさまに渡すためのチョコレート。折角なら、美味しく作りたいですもの」
なるほど。トレーナーに渡すためにチョコを作りたいけど、一人だと不安だから前にも一緒に作ったことがあるアタシに白羽の矢が立ったのか。
「ふ~ん……そっか。作りたいチョコレートとかはあるの?」
「実は、そのことも相談したいと思っておりまして〜」
ひと口にバレンタインのチョコレートと言っても色々ある。
スタンダードに市販のものを溶かして型に流し込むものや、チョコレートケーキだったり、クッキーにしたり。
それにトリュフとかガトーショコラなど、選択肢はかなり多い。
「トレーナーさまへの本命チョコレート、どのようにしたらよいのでしょうか〜?」
「ほ、本命!?」
思い掛けない言葉がブライトの口から飛び出した。ほ、本命チョコ!? 渡すの!? ブライトが!?
「好きな殿方に渡すチョコレートは本命チョコレートと言うのでしょう〜? でしたら、それで間違いありませんわ〜」 - 2◆y6O8WzjYAE23/02/14(火) 00:00:33
ブライトの好きがどれくらいの好きかは分からないけど。どうやらアタシは中々に責任重大な役割を任せられるらしい。
「その……告白も、するの?」
「告白、ですか〜? 本命のチョコレートを渡すことが告白と言うのなら、そういうことになりますわね〜」
へ、へぇ~……するんだ、告白……。
「そう、なんだ……」
「以前はカカオの樹を差し上げたのですが〜。実をつけるまでに、あと3年はかかりそうですので。実をつけ始めてからは毎年チョコレートを手作りする約束をしておりますが、それまでは渡せないでしょう?」
「……はい?」
カカオの樹を差し上げた? え? 樹をあげたの?
既に本命チョコレートよりも上を行くような、スケールの違う贈り物をしていた事実に開いた口が塞がらない。
「……もう付き合ってるの?」
「? いいえ〜。お付き合いはしておりませんわ〜」
一体どうなってるんだろう、ブライトとトレーナーの関係は。
カカオの樹になった実を毎年チョコレートにして渡すなんて、それはもう将来を誓い合ってるようなものだと思うんだけど……。
まあいいや。正直凄く気にはなるんだけど、上手くいってるみたいだからアタシが変に気を回す必要はないだろうし。
バレンタインまではまだ10日ほどある。のんびり屋なブライトにしてはかなり余裕のあるスケジューリング。それだけ気合が入ってる、って事だと思う。
折角頼ってくれたんだから、だったらアタシもその期待に応えてあげたい。
「ブライト、今日の放課後って空いてる?」
「ええ。本日はトレーニングがお休みですので。問題ありませんわ〜」
「じゃあ一緒にレシピ本とか買いに行くよ」
アタシはともかく、ブライトのチョコレートは本命になるわけだし。絶対に失敗したくないから。 - 3◆y6O8WzjYAE23/02/14(火) 00:00:47
授業も終わって本屋さんでレシピ本を買ってきてから、カフェテリアでちょっとした作戦会議。
「どんなのにする?」
「そうですわね〜……あっ、こちらのマカロンがいいですわ!」
「ブライト、マカロン好きだもんね」
見た目も可愛らしいマカロン。ブライトにとってはそれだけじゃなくて、アイスクリームとかと違って目で楽しんでいても溶けたりしない、という理由もあるみたい。
「じゃあ、あげるチョコレートはマカロンで決まりだね。前日に作っておけば大丈夫だから後はラッピング……」
「ドーベルはチョコレート、どうするのですか〜?」
「アタシ? あっ、そっか。そういえばアタシも決めないといけないか……」
ブライトの事ばっかり考えてて、自分がトレーナーに渡す分を全く考えていなかった。ただ、アタシの方は悩むまでもなく。
「ブライトと一緒のマカロンでいいよ。その方が手間も少ないでしょ?」
「まぁ~! お揃いですわね〜♪」
ブライトと一緒に作った、って言えば渡す時に変な誤解も産まないだろうし。ちょうどいいと言えばちょうどいい。
「それよりもラッピング! そのまま渡すわけにはいかないでしょ!」
「ええ、そうですわね〜。今度の休日、ご一緒してもらってもよろしくて?」
「まあチョコとか今から買っておける材料は揃えておきたいし、それでいいけど」
「それでは決まり、ですわね〜」
こうしてバレンタインに向けての準備はつつがなく進行していった。 - 4◆y6O8WzjYAE23/02/14(火) 00:01:03
バレンタイン前日。この日の放課後は毎年調理実習室、寮内のキッチンスペースはチョコレートを作る子たちで賑わう。それと食堂の厨房も使わせてくれたり。
そしてバレンタインの準備で忙しいことを分かっているからか、トレーナーたちも前日と当日はトレーニングをお休みにしてくれる人が多い。
チョコレートを作るに当たって、アタシたちは調理実習室の方を使わせてもらうことにした。
調理器具はこっちの方が揃ってあるし、アタシとブライトは寮が美浦寮と栗東寮で別々だから。
どちらかが自分の方じゃない寮のキッチンスペースを奪っちゃうのも……っていう部分もあるにはある。
「よし、じゃあ始めよう」
「ええ、よろしくお願いしますわ〜」
ぶっつけ本番で作るのは自信がなかったから、事前にアタシの方で一回作ってみた。
その時も特に問題なく出来上がったし、今日作って失敗しちゃった、とかの心配は恐らくない。
「そういえばドーベル。知っておられますか?」
「なにを?」
「お菓子言葉というものがございまして〜。マカロンの場合は“あなたは特別な人”みたいですのよ」
「……えっ?」
ただの世間話、だったんだと思う。にこにこと笑いながら話すブライトからしてみればなんて事のない、知識の共有程度の話でしかない。
ただアタシからしてみれば、今から作るバレンタインのチョコレートの意味を大きく決定づけてしまうひと言で。
「バレンタインにはぴったり、ですわね〜♪」
特別な、人。いや、確かに担当トレーナーなんだから、特別な人というのは間違いではない。
でもバレンタインに渡すもので、特別な人という意味が込められたものを贈るだなんて。それはもう、貴方が意中の相手です、って言ってるのと同じなんじゃ……。
「ドーベル? どうかされましたか?」
「あっ、いや、その。なんでもない。それよりほら、早く作り始めないと。一応時間が掛かるものなんだし」
「ドーベルはせっかちさんですわね~」 - 5◆y6O8WzjYAE23/02/14(火) 00:01:16
取り合えず今はマカロンを作ろう。お菓子言葉とかどういう意味を込めて渡すかとかは、完成してから考えればいいから。
材料は問題なし。ちゃんと揃ってるのも確認して調理に取り掛かる。
「ドーベル〜。最初はどうしましょう〜?」
「ブライトは粉類をふるって混ぜておいてくれる? アタシはチョコの方を溶かしておくから」
「はい~。承りましたわ〜」
ブライトがマカロンの生地になる粉類をふるってる間に、アタシはチョコの方を砕いていく。
お互いトレーナーに渡すものとは別に、友チョコ用のものも一緒に作るため少し量が多い。
「あっ! 湯煎用のお湯を沸かさないと!」
忘れていた。作業の効率が落ちるだけで大きな問題ではないけど。温度を調節する時間も必要だし、予め用意しておくに越したことはない。
「ドーベルちゃん、私たちのとこで沸かしてるから後で使う?」
「あっ、うん。ありがとう」
同じく調理実習室でチョコレートを作っていた子たちが先にお湯を沸かしてるみたい。
チョコを砕き終わったらありがたく使わせてもらうことにしよう。
「ドーベル、こちらは終わりましたわ〜」
「あれっ、思ったよりも早い……じゃあもう生地作り始めてもらってもいい? 出来そう?」
「こちらのレシピ通りに作ればいいのですわよね〜?」
「うん、アタシも作ってみて失敗しなかったし大丈夫のはず」
ブライトがミキサーで卵白を泡立て始める。アタシの方もそろそろチョコは砕き終わるからそろそろ湯煎出来そう。
ちなみにアタシたちが作るのはマカロンだから卵白しか使わないし、余った卵黄が勿体ない、とも思ったんだけど。
普段からお菓子作りをしてる子が後でプリンにしてくれるらしいからその辺りの心配は無用だったりする。こういう時学園でチョコ作りをするのは心強い。 - 6◆y6O8WzjYAE23/02/14(火) 00:01:32
「このような感じでよろしいのでしょうか〜?」
「うん、いい感じだと思う」
アタシがチョコの湯煎に取り掛かり始めた頃には、ブライトの作っていたメレンゲは完成していた。
「じゃあさっきふるった粉類と混ぜてくれる?」
「これは一度に全て入れてしまっても構いませんか?」
「うん、それは分けて入れなくてもいいはず。入れたら掬うように優しく混ぜてね」
「優しく、ですわね〜」
他にチョコレートを作ってる子たちの合間を縫って電子レンジなどを使わせてもらいながら、アタシの方もマカロンで挟むガナッシュが完成しつつある。
お互い、ただひたすらにボウルの中身を混ぜるだけの作業に入る。そうなると調理以外の事にも思考が割かれてしまう訳で……。
(本命、かぁ……)
ブライトは渡すチョコレートは本命だと言っていた。アタシは……どうなんだろう。
以前は義理として市販のものを買って渡した事もある訳だけど。その後ブライトにチョコづくりを教えるという名目で手作りのものも渡す羽目になったけど……。
でもその時とも違って今年は最初から手作りのチョコレートを渡す事になる。本命と言う勇気はないけど、義理だと思われるのは……なんだか嫌だな。
「ドーベル、そろそろよろしいのではなくて?」
「えっ? あっ、そうだね」
ブライトの声でチョコと生クリームが綺麗に混ぜ終わった事に気づいた。
ガナッシュに関しては後は冷蔵庫に入れて冷やすだけ。だから後はブライトの方……ももう終わってるみたい。 - 7◆y6O8WzjYAE23/02/14(火) 00:01:45
「腕、疲れてない? 変わろうか?」
「いいえ~。わたくしがマカロンがいいと言ったんですもの。わたくしにやらせてくださいませ~」
生地を混ぜ終えて、ボウルの中で気泡を潰す、いわゆるマカロナージュをした後。絞り袋に生地が流し込まれていく。
あらかじめ裏面にシャーペンで円を書いたクッキングシートに、出来上がった生地が絞り出されていくと、見知った形のマカロンに近づいてきた。
「オーブンで焼く前に乾燥するのを待たなきゃだけど、ガナッシュも冷やしてる最中だし丁度いいかもね」
「ドーベル、待ってる間お茶にしませんか~?」
「そうだね。ぼーっと待ってるには少し長いし」
それからブライトとカフェテリアで少しお茶をして。生地が乾いた頃合いで再び調理実習室に戻ってくる。
指で乾燥したことを確認してからオーブンに入れて焼き上げて。冷めるのを待ってから、マカロンでガナッシュを挟んで。
「うん、完成」
「ですわ〜!」
見た目もマカロンが割れる事もなく、淡い茶色をしたマカロンが綺麗に仕上がってくれた。早速明日渡す為に用意しておいた箱に入れて。
「ドーベル」
「なに? 何か気になることがあるの?」
「あ~ん♪」
いこうとしていたところに、アタシに向かってブライトが小さく口を開けてくる。
「はぁ、しょうがないなぁ〜」
流石にこの仕草でして欲しい事は、例え察しが良くない人でも分かると思う。ちょうど手に持っていたマカロンをブライトの口に運ぶ。 - 8◆y6O8WzjYAE23/02/14(火) 00:01:59
「んふふ〜♪」
まあ形が悪くなったりした時用に少し多めに作ってあるし、余った分をアタシたちが食べるのは全然問題ない。それに味見も兼ねられ……。
「あっ、そっか。味見」
「と~っても! 美味しいですわ〜♪」
多分ブライトはそこまで考えてなかっただろうけど。反応を見るにしっかり美味しく作れたみたい。
「では、ドーベルも。はい、あ~ん♪」
「え、アタシはいいって」
「あ~ん♪」
「あーはいはい。食べるから……」
こうなったブライトを拒むのは中々に難しい。拒む理由も特にないし、ブライトの手でマカロンを口に運ばれ咀嚼する。
「んっ! 本当に美味しい……」
「これなら、トレーナーさまにも喜んでいただけますわね〜♪」
アタシが食べてみても出来は申し分ない。贈られても迷惑にならないのは間違いないはず。
味見は出来たわけだし、今度こそマカロンをラッピングする。アタシの方は明るめなチョコレート色の、細長い箱に6個ほど入れて。
ブライトの方はアタシのものより正方形に近い、トリュフ用の箱を使って同じく6個ほど。色は上品なピンク色のもの。友チョコ用のものは個包装の袋に。
あとは明日渡すだけの状態になったマカロンを見て達成感に浸る。我ながら上出来だと思う。
(あとは渡すだけ、かぁ)
結局作り終わるまでに、トレーナーになんて言って渡すのかは決まらなかった。 - 9◆y6O8WzjYAE23/02/14(火) 00:02:12
バレンタイン当日。授業が終わってから、チョコレートを渡すべくトレーナー室へと向かうその足取りは、若干重い。
一応手作りのチョコレートはあげた事があると言えど。今年のチョコレートは……少しだけ訳が違う。
ブライトがあんなことを言うから、義理と言い張る事が出来なくなってしまっていた。
だからと言って本命として渡すと覚悟を決めた訳でもない。
やっぱりそれは恥ずかしいし、怖いから。どう言って渡そうかと、頭を悩ませながらトレーナー室へと向かう。
「いっそのこと、今年はチョコはないってことにするとか」
流石にそれは一番ない。それをやるなら義理チョコとして渡したほうがマシ。
トレーナーの事だし、なかったらなかったで忙しかったんだな、くらいで流してくれるとは思うけど。義理チョコでも喜んでくれるんだから渡したほうがいいに決まってる。
(そもそも本命か義理かなんてアタシから言う必要なくない?)
そうだ。バレンタインなんだし女の子から男の人にチョコを渡すなんて普通の事なんだし。バレンタインのチョコと言って渡せばそれで済む話じゃない。
なんて間抜けなことで悩んでいたんだろう。そう思うと足取りは軽くなった。
「入るよ~?」
ノックをしつつトレーナー室へと入ると休憩をしていたのか、トレーナーがマグカップに入ったコーヒーを飲みながらひと息ついていた。
「いらっしゃい。今日はトレーニングはお休みのはずだけど」
「分かってて言ってるでしょ? それ」
トレーナーが今日がバレンタインだという事を理解していない訳がない。
ああ、でも。トレーナーからバレンタインのチョコを催促はしないか、普通に考えて。カバンから昨日ブライトと作ったチョコレートを手渡す。 - 10◆y6O8WzjYAE23/02/14(火) 00:02:23
「……はい、今年のチョコ。一応手作りだから」
「ありがとう! 実は今年も貰えるんじゃないかな、って少し期待してた」
そっ、か。アタシからチョコを貰う事、期待してくれてたんだ。
そんなこそばゆい幸せに少しだけ浸っていると、気付かぬうちにトレーナーが無言で包みを開けていた。
「あっ、ちょっと待って!」
「今年はマカロンなんだな。……なにか開けたらまずかったか?」
「いや、その……」
開けたらまずいというか、マカロンな事の言い訳をさせて欲しかったというか。
ただもう見られてしまったのだから。苦し紛れに言い訳を連ねていく。
「トレーナーさ、お菓子言葉って知ってる?」
「お菓子言葉? ああ! マカロンは“あなたは特別な人”だっけ? それが何か?」
「そう、それ。今年のチョコレートはブライトと一緒に作ってたんだけどさ」
「へぇ~、ブライトと」
「ブライトがマカロン好きでね? それでどうせ一緒に作るんだったら同じものでいいかな、って思ったんだけどそんな意味があるなんてアタシ知らなくて……」
あくまでブライトが好きだから。特に他意はない。そう伝えるはずだったのに。 - 11◆y6O8WzjYAE23/02/14(火) 00:02:35
「だからさ」
口から出てきたのは。
「アンタが決めてよ……」
「え?」
「本命チョコか、義理チョコか……」
トレーナーへの、卑怯な二択。
なにを、口走ってるんだろう。普通に、知らなかっただけで深い意味はないから、って。
それだけ伝えれば良かったのに。トレーナーの顔を直視することが出来ず、俯きがちに視線を逸らす。
「俺に君の気持ちを決めることは出来ないけど」
俯いた視線の先にある手元からマカロンがひとつ取り出され、恐らく口に運んだのか、咀嚼音が耳に入る。
「俺にとってはどんな気持ちが籠もってても、嬉しいチョコレートに違いないよ」
ある意味では曖昧な返事なのかもしれないけど、チョコレートを贈った事を喜んでもらえたという事実は、どうしようもなく嬉しい。
「うん、美味しい。残りも大切に食べさせてもらうよ」
作ったマカロンはトレーナーの口にも合っていたみたいで。これで今日の目的は果たされた。
けれど本命でも、義理でも。どちらでも嬉しいと言われたからか。 - 12◆y6O8WzjYAE23/02/14(火) 00:02:45
「それ! 本命だから!」
自分から言わなくても良かったと思う。でも何故か、知っておいては、欲しくて。
返事が欲しい訳じゃないけど。どうしても今、伝えたくなった。
半ば好意を押し付けるような形で、そのまま脱兎のごとくトレーナー室を飛び出す。
「ちょっと待ってくれ!」
「──っ!」
ことは、叶わなかった。扉に肘を付いたトレーナーに退路を塞がれてしまう。
「ど、どいてっ、出られないから……」
「ごめん、俺の方は逃げられたら困るから。逃げないならいいよ」
今すぐこの場から逃げ出したいアタシに反して、トレーナーの方は意地でも引き止めたい様子。
意図せず壁ドンになってしまっている事もあり、心臓が早鐘を打つ。
「に、逃げないからっ。その……これ、壁ドン……」
「えっ!? ああ!? ごめん! 怖かったよな!?」
「怖かった訳じゃないけど……」
アタシの一言で壁ドンになっている事に気づいたのか、トレーナーがパッと離れる。
「ちょっと待っててくれ。渡したいものがあるから」
そのままカバンが置いてある方まで何かを取りに行き、扉近くにいるアタシのところまで戻ってくる。 - 13◆y6O8WzjYAE23/02/14(火) 00:02:59
「はい、ハッピーバレンタイン!」
「えっ、これ……どうして?」
そして手渡されたのは、有名なお店のチョコレート。
「どうしても何も。俺も去年はドーベルに逆チョコ贈っただろ? 勿論今年だって用意してるよ」
確かに去年アタシはトレーナーからバレンタインのチョコ、いわゆる逆チョコを貰ったけども。今年も貰えるという意識は全くなかった。
「このチョコレートは……義理? それとも本命?」
多分義理チョコ。そう分かってるけど、アタシは本命だって伝えたんだから、聞いてみたくなった。
アタシの問いに少しだけ驚いたかと思えば、悪戯っぽい笑みを浮かべながら返される。
「それはドーベルがどっちか決めて欲しいかな?」
さっきアタシがした二択の問題は、アタシからしてみれば迷うまでもない。
「じゃあ……本命って事にする」
穏やかな談笑が聞こえてくるふたりきりのトレーナー室には、チョコレートの匂いが甘く薫っていた。 - 14◆y6O8WzjYAE23/02/14(火) 00:03:17
みたいな話が読みたいので誰か書いてください。
- 15二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 00:06:22
バレンタインだし絶対来ると思って全裸待機してました
13レスに渡ったお話を我々に書けと!? - 16二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 00:07:16
もう立派なのがあるじゃねぇか。
腹いっぱいだぁ。 - 17◆y6O8WzjYAE23/02/14(火) 00:43:21
という訳でバレンタインネタでした。
前作のアルダンが仕上がった後に取り掛かったので間に合うかどうか微妙だったものの滑り込みセーフ。
来年はもうちょっとスケジュールに余裕をもって書こうね自分(戒め)
話の方向性はブライトと一緒に作るという事だけ決めていたのですがブライトがマカロン好きという事でこんな感じに。
ただひたすらに時間がない中書いたのでもう少し心情描写とかは丁寧に書きたかったなぁ……という思いです。
これクリスマスの時も似たような事言ってましたね。
次書くものは疑似的な締め切りに追われる事なく書けそうなのでひと息つきたい……。
ここまで読んでいただきありがとうございました。 - 18◆y6O8WzjYAE23/02/14(火) 00:44:05
- 19二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 12:06:23
あげ
- 20二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 14:35:49
来月分も楽しみだなァ!
- 21二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 20:41:51
よい
- 22二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 21:19:48
毎回素晴らしいトレベルSS助かる……