『コロンブス交換』が世界を変革した理由を知っているかい？　モルモット君

1文系タキオン21/11/13(土) 19:00:24

やあ、モルモット君。調子は……ゴホッゴホッ
いや、すまない。今日はお昼にうどんを頼んだのだが、うっかり唐辛子を振りすぎてしまってね
世間様のように激辛を有り難がるつもりは毛頭ないが、しかしあの辛味がないとどこか物足りない
まったく、悪魔のスパイスとはよく言ったものだよ……あぁ、まだヒリヒリする

そういえば、君は唐辛子の歴史を知っているかな？
ふむふむ……うむ。正解だ
唐辛子が広まったのは大航海時代のころ、新大陸の栽培作物と共に船で運ばれ世界中に広まった
いわゆるコロンブス交換というやつだね

しかし、考えてみると不思議なものだ
我々のよく知る『辛味』という調味料が、ほんの600年前にはまるで存在しなかっただなんて
君は唐辛子がない世界のインド料理を想像できるかい？
あるいはトマトと辛味を使わないパスタ料理
舌に優しい四川料理なんてのも随分とファンタジーだね

このように、食文化に大変大きな影響を与えたコロンブス交換
今日はその影響の大きさがどうして生まれたかをくどくど話していくとしよう
……だがその前に、ミルクティーを一杯飲ませてくれたまえ

よし。それでは講義を始めるとしようか

2文系タキオン21/11/13(土) 19:01:41

新大陸で生まれた作物は多い

北アメリカではヒマワリ、かぼちゃ
中央アメリカではトウモロコシ、インゲン豆、トウガラシ、サツマイモ
アンデス地方ではジャガイモ、トマト、落花生、タバコ
アマゾン川流域ではキャッサバ、カカオ

いったいなぜ、これほど豊富な栽培作物が？

シンプルな答えはこうだ
アメリカとユーラシアの二つの大陸の間に交流がなく孤立していたから

例えば、トウモロコシの元になったテオシントという植物
元々は粒が6個ほどしかなかったそうだ
そこから品種改良に長い時間を費やして、ようやく完成した品種が我々のよく知るトウモロコシ
もしも彼らの手元に小麦の種もみが少しでもあれば、こんな手間をかけることはあり得なかっただろうね

3二次元好きの匿名さん21/11/13(土) 19:02:44

タキオンの講義好き

4文系タキオン21/11/13(土) 19:02:48

それと理由はもう一つある
二つの大陸の形の違いだ

アメリカ大陸は縦長で、緯度の差からくる気候の違いによって分断されていた
そのため、一つの地方で画期的な農作物が発明されたとしても、緯度による気候の壁をなかなか越えられないので普及に時間がかかる
届かない物は仕方がないので、それぞれの地方で栽培化の努力が続けられることになった

一方、横長のユーラシア大陸では気候の差が比較的小さく、小麦や米が広く普及したため、新たな栽培作物を開拓する余地が狭くなっていた

ユーラシア大陸が横長なおかげで交易が盛んになり技術の進歩も早く進んだわけだが、栽培化だけはその例外
既存の作物が優秀すぎて、他の作物の新規開発に動く理由がなくなってしまうわけだね

5文系タキオン21/11/13(土) 19:03:31

つまりは皮肉なことに、新大陸を遥かに凌駕ユーラシアの雄々しい文明も
こと栽培化に限っては、アメリカの未開の民の続けた懸命な努力を上回ることは出来なかったのだよ

だが現実は非情なものだ
ユーラシアの横のつながりを武器に、コロンブスらは新世界の征服という偉業を成し遂げてしまう

だがしかし、滅びた文明の残した努力の種は
ユーラシアの既存の作物では満たせなかったニッチを埋めることで確実に広まり
やがては世界中で花開くことになる

6二次元好きの匿名さん21/11/13(土) 19:04:13

コロンブス交換って聞くとなんかよく分からん歯茎が頭にチラつくのよな…

7文系タキオン21/11/13(土) 19:04:17

寒冷で痩せた土地の多いヨーロッパではジャガイモが
険しい山地でも栽培できる作物としてトウモロコシが
熱帯の多いアフリカでは栽培の手間の少なさと豊富なカロリーからキャッサバが
そして、どこでも簡単に栽培できる上に、辛味という新たな味覚を刺激するスパイスとして、あっという間に世界中に広まったトウガラシ

これらの作物の力は各地の人々の生活を確実に支え、食文化をはるかに豊かにし、現代の我々の食卓までもを彩ってくれている

こうして、コロンブス交換は
人々の生活を一変させ世界の歴史を変革した
それは恐らく新大陸の民やコロンブスの望んだカタチではないけれど
ま、歴史の遺産なんてものは、おおむねそう言うものかもしれないね

8文系タキオン21/11/13(土) 19:05:21

さて、どうだったかな？
異なる領域を結ぶ一本の線が引かれた時、新たな可能性の地平が見えてくる
偉大な進歩というものは、必ずそうして生まれるものなのだよ
何事も、交流を深めるというのはとても大切なことだねぇ
そうだな。よければ君もぜひ一度、私のお家に招かれてくれたまえよ
その暁には格別にスイートなおもてなしを約束しようじゃないか
ゆったりと食事を共にしながら胸襟を開いて言葉を交わし、その後はベッドの上で手を取り合って遺伝子の交換を……

しまった！　うまぴょい警察だ！！