【SS】拝啓、悪の大幹部様【シナリオネタバレ・トレウマ要素注意】

  • 1二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 23:48:29

    「子分に渡したいものがあるのだ」
    バレンタインならもう貰ったよ、と伝えると不満げな顔をして唸ってきた。
    「…ぐるるる。キャンディは勿論ウインディちゃんの本心なのだ。でもなんかこう…物足りなかったのだ!」
    何が物足りないのか、と聞くと私の驚きらしい。

    「子分は最近全然リアクションしてくれないのだ。慣れてきた感が出てるのだ。ウインディちゃんも子分を甘噛みするだけじゃ物足りないのだ」
    ウインディの問題行動のいたずらや噛み癖。
    それを繰り返す根底にある本心や欲求。
    自分を見て欲しい、誰かに認めて欲しい。
    その願いを貫いて、世界に名を知らしめたウマ娘だ。
    今や彼女の実力を疑う人は誰も居ない。
    時折以前のノリでおもちゃにされていたりするのだが、いつかそいつもウインディちゃんの配下になるのだ、と彼女はもういちいち反応することもなくなった。

    「ウインディちゃんは最強のウマ娘になったのだ。最強ってことは、世界を思い通りに出来るってことなのだ」
    それは過言では…とは突っ込みそうになったが、取り敢えず話を聞くことにした。
    「でもウインディちゃんが有名になればなる程、子分は離れていく気がしてしまうのだ」
    ウインディちゃんの子分なのに、ウインディちゃんの側に居ないとはどう言うことなのだ!
    そう言って、目に涙を浮かべて身体を震わせる。
    彼女の知名度が上がれば上がるほど、私も比例して忙しくなる。
    ただ、それを言って聞く様な子ならここまで有名になりはしない。
    理解は勿論示すだろうが、その上で足掻いてみせるのがシンコウウインディと言うウマ娘だ。

    「だから色々この機会に作戦を考えてやったのだ!でも全然まとまらなかったのだ!子分の癖にウインディちゃんをこき使った罰に着いてくるのだ!」
    何とも理不尽だが、彼女らしい要求。
    悪の親玉を自称するが、季節の行事やお祝い事には敏感で、欠かさず参加するマメな一面もある。
    今日の日も例外ではない。
    もう遅いから明日にしよう、と言っても恐らく今日がいいのだ、と聞かないだろう。
    それに、彼女がこういう真面目な時は、けしてこちらに危害を加えたりしないことも知っている。
    こちらがそう思っていることを見透かされたのか、ジト目で睨んできても何処か愛嬌がある。

  • 2二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 23:51:26

    車を運転してやってきたのは、彼女が薔薇の花束をくれた、あの場所。
    ライトアップで照らされる花々は、いつも訪れるお昼時とは違う顔を見せてくれる。
    そこに咲いているのは、ピンク色の可愛いチューリップ。
    お花畑と悪の大魔王とは、一見何ともミスマッチだが、彼女を知る人間からすればこう言った雰囲気を大切にするのも「らしさ」だと思うだろう。

    「……ん!」
    ぶっきらぼうに渡されたのは、トレードマークの牙の小物があしらわれたネックレスだった。
    彼女は言葉を続ける。
    「お、お母さんが言ってたのだ。…大事な人には印をつけておくものだって。子分を引き止めておくには、甘噛みの跡だけじゃ足りないのだ。ウインディちゃんも、かしこいから分かってるのだ。子分は最強になったウインディちゃんのことで色々忙しいんだって。子分はウインディちゃんの配下だから、離れたりしないって。でもそれはそれとして寂しいのだ。だから、行動する理由と根拠が欲しかったのだ」

    野性的と言う言葉が似合う、激しい闘争心を剥き出しにしてダートを駆ける、最強のウマ娘。
    はたから見れば、自分が望んだ恐怖の大魔王として君臨する彼女の願いはとてもシンプルで。
    それを叶える為に、足掻き続けた。
    どんなに笑い者にされても、実力を正当に評価されない日々が続いても自分の弱さに負けなかった。
    そんな彼女の力になれればと、私は自分から甘噛みされたりイタズラに引っかかるようになった。
    噂では聞いていた。
    担当のウマ娘に付き合って発光したり、人間クレーンになったりするトレーナーが居ると。
    あり得ないと思っていたそれを、私は受け入れる様になっていった。
    いつしかそれが、日常になっていたのだ。
    その才能に魅了されてから、ずっと。

    「お前はずっとウインディちゃんの子分なのだ!忘れたら甘噛みじゃなくて歯形がくーっきり残るくらいに、すっごく目立つ場所に刻んでやるのだ!そうされたくなかったら今忠誠を誓うのだ!」
    彼女ははっきり言って幼い。
    今抱いている思いも、親愛か恋愛か、その区別も付いていないかもしれない。
    大人になれば消えていく物なのかもしれない。
    でも、それはそれで良い。
    シンコウウインディが刻んだ記録や記憶は、ちゃんと残る。
    沢山の記録が、そして私の記憶が、その証明だ。
    そんなことをしなくても、多分一生忘れられないし、離れられない。
    答えは決まっていた。

  • 3二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 23:59:15

    「まあ幹部なら当然の答えなのだ!ウインディちゃんに平伏すのだ!」
    口調とは裏腹に、何処か虚勢を張っている様にも見える。
    意地悪かもしれないが、大魔王様の「本気」を見てみたくなって。
    「……ウ、ウインディちゃんが付けるのだ…?わ、笑うなぁーっ!!」

    ──
    ───
    ───
    拝啓、大魔王ウインディ様。
    今度、ピンクのチューリップを送らせて頂きます。
    貴方が伝えてくれた思いに、答える為に。
    聡明なる貴方様であれば、意味がわかる筈です。

    親愛なる大幹部より。

  • 4二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 00:00:07

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  • 5二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 00:03:09

    ウインディちゃんの子分になった記念に書いたけどギリッギリなのだ…
    その場のノリで書いたら長くなってしまったのだ…
    私って言ってるけどトレーナーの性別はどっちでも取れる様にしてみてるのだ
    見てくれてありがとうなのだ

  • 6二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 00:22:54

    さすが永きに渡って実装を待ち続けた子分なのだ
    熱量が違う

  • 7二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 00:27:45

    >>6

    ありがとうなのだ

    ここのウインディちゃんダイマが直撃してアニバ前に石使い果たしたけど後悔してないのだ

    ストーリー滅茶苦茶良かったのだ

    ウインディちゃん意外とロマンチストなのが良いのだ

  • 8二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 00:39:06

    キャンディ渡してきたり薔薇渡してくるウインディちゃん、意外と博識かもしれないのだ

  • 9二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 01:13:58

    終身名誉子分に認定なのだ

  • 10二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 01:27:48

    子分になって勢いでスレ立てして書いちゃったけど、スレ画の重要さとか色々気付かされることがあるのだ
    本当に見てくれてありがとうなのだ

  • 11二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 06:54:22

    ウインディちゃんの育成すごく良かったですよねなのだ
    そして愛が溢れているあなたのお話も素晴らしかったのだ

  • 12二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 09:39:40

    ハートが増えたりしてるの、嬉しいのだ
    感想もありがとうなのだ
    本当にウインディちゃんが大好きなのだ

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