- 1123/02/17(金) 11:12:31
- 2123/02/17(金) 11:12:51
近所にケーキ屋ができた。そこはなんでも、ライオンの鳴き声がするだの、赤や緑など様々な光が漏れていただのとおおよそケーキとは関係のない噂で溢れていた。好奇心の赴くままに件の店に向かい、アンティーク調のドアを開ける。だがしかし、どんな奇想天外な光景が待っているのかとワクワクしていた僕の期待を裏切り、可愛らしいケーキを並べ、隅には少しのテーブルと椅子を構えた至って普通の店内が僕を出迎えた。僕は人のいい笑顔を浮かべる店員の手前、何か買うしかないとショーケースにら並べられたケーキを物色し始めた。
なるほど、先程は至って普通のケーキ屋と思ったが、それは間違いだったらしい。なぜなら並べられたケーキたちはショートケーキやチーズケーキなど普通のラインナップではあるものの、その上にライオンやミラーボール、ヤシの木といった細々とした砂糖菓子が乗っている。クリクリとした目の小さなクマと視線を合わせたところで思わず舌を巻いた。これは可愛いもの好きにはたまらないだろう。僕はとりあえず、イチゴの代わりに大きな法螺貝が堂々と鎮座するショートケーキとシンプルな本体の上にヤシの木と砂浜が再現されているチーズケーキを購入した。
家に帰り、さっそくケーキを食べてみる。まずは法螺貝ケーキだ。ぶすりと法螺貝にフォークを刺して一口で食べる。美味しいなと思った瞬間、ブォォ!という頭に響くほどの大きな音がした。堪らず耳を塞いでひっくり返る。今の音は、法螺貝?ドラマやアニメでしか聞いたことのない音だった。
そこで僕はハッと気がついた。僕は今ケーキの上に乗っていた法螺貝の菓子を食べた。そして、そのケーキを売っている店には妙な噂があった。僕はその噂とショーケースに並んでいたライオンを思い出しながら購入した南国のチーズケーキを見た。きっとこのケーキも面白い味がするのだろう。さっそく僕はヤシの木にフォークを刺したのだった。 - 3二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 11:28:50
明治の奇譚みたいな雰囲気は良いと思うけど、ちょっと「ケーキ」に比重を置きすぎかな
「法螺貝」と「ヤシの木」要素がもっとほしい - 4123/02/17(金) 11:34:21
- 5123/02/17(金) 11:45:30
あともう一個「りんご」「さくら」「高架橋」で800字以内
- 6123/02/17(金) 11:45:49
今夜、僕は過去との決別のために高架橋の下へと向かっていた。重い鞄を背負い直して、いつもは駆け降りていた階段を下る。そうして月明かりに照らされた先には、僕だけの秘密基地と知らない女の子が立っていた。シャクッとりんごを齧った女の子は、僕の方を見てニタリと笑った。
「この秘密基地って君が作ったの?」
僕は少しムッとしながら肯定する。すると女の子はズンズンと近づいてきた。
「すごいじゃん!こんな立派な秘密基地を1人で!」
ビックリして思わず顔を見つめてしまう。その子はニッコリと笑いながら話を続けた。
「君は受験生だよね。…なんで分かったかって?こんな夜遅くにそんなに重たそうな鞄背負ってるんだから分かるよ」
その子と僕は色々な話をした。受験勉強のこと、両親のこと。そして秘密基地についても話した。
「え?秘密基地壊しちゃうの?どうして?」
「…もう子供じゃないから。子供の自分と決別するんだ」
私たち、まだ中学も卒業してない子供じゃない、とその子は楽しそうに笑った。そしてずいと右小指を差し出した。
「じゃあさ、一緒に壊さない?中学を卒業して子供じゃなくなった時に。橋の隙間から桜の木が見えるでしょ?あの木が満開になった時にここに集合ね」
名前も学校も知らないその子と僕は約束を交わした。
数ヶ月後、僕はすっかり緑に彩られた桜を横目に急いで高架橋下へ向かっていた。もう満開の時期は過ぎ去ったのに学校は僕を子供のままに留めていた。やっと子供を卒業した今日、僕は階段を駆け降りて秘密基地へ飛んでいった。そして、あの子はそこにいた。
「桜、散っちゃった」
「そんなことないよ?」
下を見てごらん、と指を差された先には地面の花。
「…そっか、芝桜」
ニッコリ笑ったその子は、僕にリンゴジュースを差し出した。この子はりんごが好きなのかもしれない。きっと答えはこれから分かるのだろう。僕は秘密基地と向き合った。 - 7123/02/17(金) 12:06:04
もうちょっと書きたいので安価でお題求めるかも