- 1二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 01:48:01
用意したのは、両手にも満たない、直方体のプレゼントボックスでした。この日のあなたがいっとうなにかに打ち込んでいたり、みずからを追い込んで疲れきったあと眠りこけるのを、私は知っていたからです。わすれているのか、わすれようとしているのか、私にはわかりません。気にも留めたくない日、という可能性。祝いたい、祝われてほしいと思ってしまうのは、私のエゴなのでしょう。きっとあなたがそれを求めていないのも、私はわかっているのです。
学校の授業が終わって、トレーニングも終わって、部屋にもどってきたあなたが、机の上のプレゼントボックスに気づくのに、そう時間はかかりませんでした。
「おいドトウ」
「それはっ、いつもっお世話になって、りゅっ……」
舌を噛みました。言葉だって用意してきたのに、私はいつもこう。オペラオーさんみたいに上手にできないのです。お誕生日おめでとうございます、のかわりに、いつもお世話になっているお礼です、なんて、あからさますぎるのは、自分でもわかっていました。
口元をおさえて痛みをこらえていると、大きなため息が聞こえました。解かれたリボンは机の上に放られます。開封までに手間取る包装紙は使いませんでした。ぱか、と、蓋が開いたタイミングをみはからって、強く息を吸いました。
「すっ、スターリングシルバー用の」
「銀磨きか」
「は、はいぃ……」
いともかんたんに回り込まれました。こうして、いたらない私に対して先回りしてくれるのも、いつものことです。……だからこそ、あなたは箱を開けてくれたのかもしれません。
「お父さんに、み、みつくろってもらって。私のお父さん、詳しいのでぇ」
「フゥン……んじゃ、有難く」
ほっ、と安堵する私に思いきり眉をひそめたあなたは、イヤホンをつけて、パソコンに向かいます。そこからはいつものこと。胸をなでおろして、私もクッションを抱きしめて、ベッドに腰をかけました。 - 2二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 01:48:50
銀ではなく、わざわざ、スターリングと言った意味に、あなたは気づいたでしょうか。スターリングの語源は、with a star……星とともに。
星に願いをかけるなんて、ロジカルじゃないことは知っています。けれど、あなたが自分の内にある銀色の星を、ていねいに、曇りを消そうと磨いているのは知っています。
気づいているかもしれません。
気づいていないのかもしれません。
さっきのように、気づいてなお、気づかないふりをしているのかも。
鼻歌が聞こえます。マウスをクリックする音。イヤホンから漏れ出るメロディ。机の引き出しから取り出されたのは、あなたのお気に入りのシルバーリング。指先が銀磨きをつまんで、円を描きます。
あなたの大切にする星が、どうかこれからも輝きますように。
私は、そう願ってやまないのです。
おしまい - 3二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 01:51:09
シャカ誕を祝ったのはファインとタキオンだったけどドトウが祝ってないはずがないよなという妄想。
ドトウのお父さんは宝石商なので台座であるシルバーにも詳しいのではないかという妄想です。
シャカールお誕生日おめでとう。 - 4二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 01:52:02
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- 5二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 02:14:55
素晴らしい
- 6二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 02:20:57
ドトウもいじらしいしシャカもかっこいい
良い物見せてもらった - 7二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 02:29:08
シャカールはぜっっっっっったいに同室のドトウにやさしい
- 8二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 02:54:02