Re:Valentine【♀トレウマ・SS】

  • 1二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 22:46:18

    今日は、3月14日。所謂、ホワイトデー。
    バレンタインデーが意中の人への愛情を形にして送るモノならば、ホワイトデーはそれに対する返答をする日と言える。その日、チョコをくれた相手にお返しするモノによって、返答の意味が異なるらしい。例えばキャンディなら、『あなたが好き』。マカロンなら、『特別なあなたへ』。

    ここ、中央トレセン学園においてもバレンタインデー・ホワイトデーは特別なイベントだ。いつもお世話になっているあの人へ、いつも励ましてくれる大好きな人へ、そして、愛する貴方へ。ウマ娘達は想いを込めて、甘く特別なスイーツを送り合う。
    勿論、それはトレーナー達も例外では無い。送られた愛情にスイーツで返事をしたため、例えばお出かけ先で心を乗せたそれを渡すのだ。

    「お待たせ、バクシンオー」
    「やや! トレーナーさん、これはまた随分お早い到着ですね! 予定の時間より30分も早いですよ!!」

    思った通り、そう心の中で呟いてから、待ち合わせ場所時計と私の顔を交互に見ながら驚きの表情を見せる担当ウマ娘に、笑顔を返す。

    「模範的な学級委員長なら、きっと私が指定した待ち合わせ時間の30分前には着いて待っててくれているだろうな、って思ってね」
    「仰る通りです! 流石トレーナーさん、私の日頃の行いをよくご存じのようですね!」

    腰に両の手を当て、満面の笑み。これが、私の大好きな表情の一つ。ありがとう、と一言返してベンチに腰掛ける。

    「それで、今日はどうされたのですか? 高松宮記念までもうすぐと言うのにお出かけとは」
    「うん、そのためのトレーニング、凄く頑張ってくれてるから、今日はご褒美も兼ねて渡したいモノがあるの」

    そう言って、小さな木箱を取り出し、バクシンオーに差し出す。不思議そうに顔を傾げるバクシンオーを真っ直ぐ見つめてから、にっこり笑顔。

    「バレンタインデーのチョコのお返しだよ。ハッピーホワイトデー、バクシンオー!」

    バクシンオーは、まず驚きで目を見開いた。そして、すぐに目を輝かせ、キラキラと笑顔を見せる。

    「トレーナーさんの私への想い、確かに受け取りました!! 早速、開けてみても?」
    「もちろん」

    箱を開けると、春を感じる淡いピンク色の柔らかな道明寺の餅が、それに映える緑色の葉で包まれているものが行儀良く並ぶ。バクシンオーの好きな、桜餅だ。

  • 2二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 22:51:57

    「色々と考えたんだけどね、バクシンオーと言えば、やっぱりコレかなって。レースも近いからそんなに沢山って訳じゃないし、初めて作ったからちょっと自信もないんだけど……」
    「いえいえ、そんな事はございませんよ。とっても美味しい桜餅でした!! 常にバクシン的スピードで頂点を目指す私の名を冠した桜餅はホワイトデーに相応しいお返しと言えましょう!流石はトレーナーさんです!! ごちそうさまでした!!!」
    「もう食べてる!?」

    召し上がれ、と言う間もなく一つ平らげていたバクシンオーに驚きの声を上げると、バクシンオーはうん、と一言頷いて、私に桜色の瞳を真っ直ぐ向ける。それまで纏っていた目映い陽射しを、少しだけ春の陽のように優しくしながら。

    「トレーナーさん」
    「なに?」
    「私は、本当に幸せ者です。いつも、これまでも、これからも私を、私の夢を迷わず信じてくれるトレーナーさんに、私の一番好きなお菓子をホワイトデーに送って貰えるのですから」

    ホワイトデーのお返しに、私は迷わずこのお菓子を選んだ。お返しの意味は色々あるらしいが、私から彼女に想いを込めて送るお菓子は、これしか考えられなかった。告げられた感謝の想いに、思わず胸が熱くなる。その想いに応えるように、私も負けじとまっすぐに想いを告げる。

    「勿論だよ。だって、私の大切な担当ウマ娘から、一番大好きな子から貰ったチョコのお返しだもの。その子の一番大好きな物をプレゼントしたいって、私はいつだってそう思うよ」
    「……!」

    桜色の目を見開いて、バクシンオーの頬も桜色に染まる。なんだか、お互いの気持ちをしっかりと結べたような気がして、嬉しくなる。

    「美味しかったなら、またレースのご褒美か何かに作ろうかな?」
    「トレーナーさん」
    「ん?なに────」

    振り返ると、不意を打って目の前に現れた桜色の瞳が、私のそれに映る。同時に、唇に触れる柔らかな感触。道明寺と餡子の淡い甘みと、ほんのりと心をくすぐる桜の香り。私の心に、春が駆け抜けていった。

    頬の桜色が、少し色の濃い山桜に変わる。はにかみながらこちらを見つめるバクシンオーに、私の心は不思議と春の陽のように穏やかだった。

  • 3二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 22:53:08

    このレスは削除されています

  • 4二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 22:54:20

    このレスは削除されています

  • 5二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 22:55:02

    「……不意打ちは、委員長的にどうなの?」

    そう言って微笑みかけると、バクシンオーもどこか安心したように笑みを浮かべる。

    「そうですね、学級委員長として……いえ、それ以前にトレセン学園の生徒としても、模範的とは言えないかもしれません。ですが、今、とても、とてつもなくバクシン的に……貴方が、愛しく思えてしまいました」

    告げられた想いに、私の心にも桜が咲いた。私の頬の色も、きっと山桜のように濃い桜色をしているに違いない。

    「……ありがとう、バクシンオー。私も、同じ気持ちだよ」

    しっかりと想いを込めた私の言葉に、バクシンオーはもう一度、その綺麗な桜色の瞳を見開いて、今度は花開くような笑顔。そして、少し遠慮がちに、口元を動かす。

    「トレーナーさん、お隣、よろしいですか?」
    「うん」

    隣に座っていたバクシンオーが、私にそっと身体を寄せる。

    「もう一つ頂いても?」
    「もちろん」

    木箱の中の桜餅を口へ運ぶ。今度は、ゆっくりと、その甘さと香りを堪能するように。

    「……肩を、お借りしても……?」
    「……うん、いいよ」

    嬉しそうな笑顔と共に、身体を私に預ける。ただそれだけの事で、私は、心も、身体も、彼女と一つになったような気さえしていた。
    ふと、空を見上げてみる。青空と、陽の光を浴びた暖かなそよ風と、桜餅

    春は、もうすぐそこまで。

  • 6二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 22:58:12

    以上です、ありがとうございました。投稿テンポが悪くて申し訳ありません。

    以下のスレの39でいつか清書したいと語っていたものの一つ、「バクシンオーとホワイトデー」を形にしてみました。季節先取りですがご容赦下さい。

    SS書きまん民に聞きたい|あにまん掲示板引っかかったなここは『今後書く予定のSSの予告をしないと出られないスレ』だあらすじやキャプション風にしてもいいし、アニメの次回予告っぽくしてもいいタイトルや仮題、概念だけ書くのもいいハートやレスがつい…bbs.animanch.com

    少ししっとり目のバクシンは健康に良いとされるので、皆さんも是非どうぞ。

  • 7二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 22:58:29

    めちゃくちゃ最高尊い

  • 8二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 23:07:50

    良き…
    オトメバクシンオーは良いぞ

  • 9二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 23:24:58

    ちょっと大人っぽいバクちゃんは禁止カードヤバい

  • 10二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 23:35:09

    この尊さはDNAに素早く届く
    今は効かないが、その内病気にも効くようになる

  • 11二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 23:36:36

    とても好……
    桜餅バクシンで食べるバクちゃんも可愛いかったです
    桜吹雪でも見えるようでした……素敵です

  • 12二次元好きの匿名さん23/02/28(火) 07:23:35

    朝から良いものを見た
    しっとり甘々バクシンオーは破壊力高すぎて困る困らない

  • 13二次元好きの匿名さん23/02/28(火) 14:32:11

    皆様、読んで頂き本当にありがとうございます。


    >>7

    ありがとうございます、尊みはいくらあっても困りません。


    >>8

    不意打ちで恋する乙女を繰り出してドキッとするの、アリだと思います!


    >>9

    禁止にしておかないと攻撃力が高すぎてトレーナーのハートが持たないので仕方がありませんね!


    >>10

    この尊さはその内メンタルにも利くようになる。


    >>11

    次のおでかけは二人で満開の桜の中を寄り添い歩いていることでしょう……


    >>12

    少なくとも私は全く困らないので大丈夫です。なんならどんどん出していきましょう。

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