今は亡き日本語版ポッターモアを貼ってく part2

  • 1121/11/15(月) 23:31:29

    前回↓は落ちてしまったんだけれどせっかく反応をもらったのに半分で終わってしまったのはやはりキリが悪い!


    今は亡き日本語版ポッターモアを貼ってく|あにまん掲示板網羅はできてないと思う(控えてるのあったら出してほしい)、英語読めないので訳されてないのもナシ。bbs.animanch.com

    可能な限りは貼っていきます~

  • 2121/11/15(月) 23:32:28

    【狼人間】01

    J.K. ローリングからの新着コンテンツ

    狼人間は世界中に存在しますが、彼らが頻繁に生まれる魔法界では、古くからつまはじきにされてきました。狼人間を狩ったり研究したりする魔女や魔法使いは、平均的なマグルよりもこうした生物に襲われるリスクが高いのです。19 世紀の末、当時イギリスきっての狼人間研究の権威だったマーロウ・フォーファング教授が、狼人間の習性に関する初の包括的な研究を行いました。その結果、観察や聴き取り調査を行うことができた狼人間のほぼすべてが、噛まれる前は魔法使いだったことが判明しています。また、マグルは魔法使いと「味」が異なることや、マグルは噛まれた傷がもとで死にいたるケースがはるかに多いのに対し、魔女や魔法使いは死亡せず、狼人間として生きながらえるということも、教授の研究によって明らかになりました。

  • 3121/11/15(月) 23:32:50

    02

    狼人間をどう扱うかという問題に対する魔法省の方針は、これまで常にあいまいで、効果に乏しいものでした。1637 年に「狼人間の行動綱領」が策定されると、狼人間はこれに署名したうえで、変身しても誰も襲わないようにするため、毎月自身を安全な場所に監禁すると約束しなければならなくなりました。当然、行動綱領に署名した者は 1 人もいません。みずから魔法省に出向いて自分が狼人間だと申告する覚悟など、誰にもなかったからです。のちに狼人間登録室が設置されたときも、当局は同じ問題に悩まされました。この登録室には本来、すべての狼人間の氏名と個人情報が記録されることになっていましたが、制度導入後いつまでたってもリストは完成せず、登録情報は信頼性の低いものにとどまりました。というのも、新たに噛まれた人びとの多くは、自分が狼人間になってしまったという事実を隠そうとしたからです。それが露見すれば必ずや恥辱にまみれ、社会から追放されてしまうのですから、当然といえるでしょう。また、狼人間は長らく、魔法生物規制管理部の動物課と存在課の双方から疎まれてきました。狼人間を人間に分類すべきか獣に分類すべきか、誰も判断をつけられなかったからです。そのため、一時は狼人間登録室と狼人間捕獲部隊が動物課にあり、狼人間援助室は存在課にあるという有様でした。もっとも、登録室に登録する狼人間がほとんどいなかったのと同じ理由で、支援室を利用しにくる者はひとりもおらず、この部署はやがて廃止されてしまいました。

    狼人間になるためには、満月の夜、狼の姿になった狼人間に噛まれる必要があります。狼人間の唾液が噛まれた者の血液と混じり合うと、感染が起きます。

    狼人間にまつわるマグルの神話や伝説の多くは、すべてがウソとは言いませんが、おおむね間違っています。たとえば、銀の銃弾を撃ち込んでも、狼人間は死にません。ただし、銀粉とハナハッカのエキスを混ぜたものを狼人間に噛まれて間もない傷に塗れば、傷口がふさがり、失血死を免れることができます(もっとも、噛まれた当人が狼人間として生きながらえることを悲観し、その場で死なせてほしいと懇願したという悲話も多く伝えられています)。

  • 4121/11/15(月) 23:33:19

    03

    20 世紀後半になると、狼に変身する症状を緩和する魔法薬がいくつか開発されました。なかでも最も有効なのが、トリカブト系の脱狼薬です。

    狼人間は毎月、狼に変身しますが、なにも手当てをしないと極度の苦痛を伴い、通常その前後数日間は顔色が蒼ざめ、体調不良に見舞われます。狼の姿になると、本人は人としての善悪の概念をまったく失ってしまいますが、それでも、(何人かの権威者、とりわけエメレット・ピカルディー教授がみずからの著書『狼の無法ぶり――なぜ狼人間を生かしておけないか』で述べているように)彼らが永久に道徳観念を失ってしまうと主張するのは間違いです。人間の姿でいる間は、普通の人間と同じ程度に善良かつ温和な狼人間もいます。一方、フェンリル・グレイバックのように、人間の姿のときでも危険な行動を取る者もいます。グレイバックは人間の姿の間も人に噛みつき大けがを負わせるために、いつも爪を鉤爪のように尖らせていました。

    人間の姿でいるときの狼人間に襲われた場合、襲われた者は狼じみた軽度の症状(生肉を好むようになるなど)を発症することもありますが、長期的な後遺症に悩まされることはありません。とはいえ、狼人間に噛まれたり引っかかれたりした痕は、襲ってきた狼人間が狼の姿だった場合も人間の姿だった場合も、長く傷として残ります。

    狼の姿でいるときの狼人間は、本物の狼とほとんど見分けがつきません。しいて言うなら、鼻が若干短く、瞳孔が小さいのと(いずれも、より「人間らしい」特徴です)、尻尾の毛が本物の狼ほどふさふさしておらず、むらがあるという程度です。狼人間と狼を分ける明確な違いは、外見ではなく、その行動にあります。生粋の狼は、さほど攻撃的ではありません。狼を無慈悲な殺りく者のように描いている民話や伝承の多くは、狼ではなく狼人間のことを伝えたものであるというのが、今日の魔法界当局の通説です。本物の狼はよほどのことがないかぎり、人を襲いません。それに対し、狼人間はほぼもっぱら人間を攻撃対象に選び、他の生き物にはほとんど危害を加えないのです。

  • 5121/11/15(月) 23:33:40

    04

    狼人間は通常、狼人間ではない人間を襲って仲間を増やします。狼人間であることを恥とする風潮は、何世紀もの間あまりに強く認識されてきたため、結婚して子どもをもうける者は極めて少数です。しかし、狼人間が普通の人間と結婚した場合でも、狼に変身する体質が子どもに受け継がれたという事例は聞かれません。

    興味深いのは、狼人間の男女がたまたま満月の夜に出会って交尾した場合(これは到底ありそうにない偶然で、実際そういったケースは 2 例しか知られていませんが)、生まれてくるのは狼の幼獣です。こうして生まれた仔狼は並外れて知能が高いという以外、本物の狼となんら変わりません。彼らは普通の狼以上に攻撃的な特性も持たず、特に人間だけを狙って襲うこともありません。かつて、このようにして生まれた仔狼たちが、極秘裏にホグワーツの「禁じられた森」に放されたことがあります。アルバス・ダンブルドアが特別に許可したもので、成長した彼らは、美しく、並外れて賢い狼になりました。そのうちの何匹かは、今も「禁じられた森」に住んでいます。彼らのせいで、いつしか「禁じられた森」には狼人間が住んでいるとうわさされるようになりました。ホグワーツの教員たちも、森の番人も、このうわさをあえて否定しようとしません。生徒たちが「禁じられた森」に近づかないのであれば、大人たちにとっては好都合だからです。

  • 6121/11/15(月) 23:34:14

    【守護霊の呪文】01



    >「守護霊の呪文」は、「普通魔法レベル(O・W・L)」資格をはるかに超えるきわめて高度な魔法。うまく効くと、魔法使いを吸魂鬼から守る守護霊が現れる。


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    「守護霊の呪文」は最も有名な防衛の呪文ですが、特にその難しさで知られています。動物の姿をした銀白色の守護霊、いわば保護者を創り出すのがこの呪文の目的で、成功しないと、守護霊のはっきりとした姿はわかりません。魔法界で最強の防衛魔法のひとつとされる守護霊は、魔法使い同士の使者として利用されることもあります。この魔法は、混じりけのない幸せや希望を魔法の力で凝縮して身を守るというもので(守護霊を出すには、何かひとつ、守りの力を秘めた思い出に集中することが不可欠です)、吸魂鬼に対抗できる唯一の呪文です。ほとんどの魔女や魔法使いは守護霊を創り出すことができないため、守護霊の呪文を使えることは優れた魔法の能力を持つ証しと考えられています。


    銀色をした霧やひと筋の煙のような、実体のない守護霊を創り出せる魔女や魔法使いもいます。また、あえて実体のない守護霊を創り出し、守護霊の本来の姿を隠すというケースもあります(たとえばリーマス・ルーピンは、実体のある守護霊を出すと目撃者に多くを知られすぎると懸念しています)。実体のない守護霊は本物の守護霊ではないため、防衛の力には限りがあります。実体のある守護霊は動物の姿をとり、実体のない守護霊よりはるかに大きな防衛力を持ちます。

  • 7121/11/15(月) 23:34:46

    02

    「守護霊の呪文」は最も古い呪文のひとつで、古代の魔法に関する文献にはその名が何度も登場しています。古くから、気高く崇高な理念にのっとった戦いに従事する者との結びつきが強い呪文ですが(実体のある守護霊を創り出せる者たちは、しばしばウィゼンガモットや魔法省の高官に選出されました)、闇の魔法使いたちがこの呪文をまったく使用しないわけではありません。「心が清らかでない魔法使いは完全な守護霊を創り出すことができない」というもっともらしい考えが広く信じられていますが(最も有名な逆噴射の事例は、うじ虫に貪り食われた闇の魔法使いのラクジディアンです)、数少ないとはいえ、道徳的に問題のある魔女や魔法使いでも、この呪文を成功させている例があります(ドローレス・アンブリッジは、吸魂鬼から身を守るために猫の守護霊を創り出すことができます)。自分の行動は正しいと心から確信していることが、守護霊を創り出すのに必要な幸せの源になるのかもしれません。とはいえ、闇の生き物と手を結ぶなどして、その影響を受けにくくなった者たちは、防衛手段としての「守護霊の呪文」など必要ないと考えることがほとんどです。

    個人の守護霊がどんな姿になるかを予測する確実な方法は発見されていませんが、18 世紀の偉大な呪文研究者、カトゥルス・スパングル教授は、広く事実と信じられている原則を書き残しています。

    スパングル教授の主張によれば、守護霊は、「創り出す者の内面に潜み、その存在を知られていないものの、必要とされているもの」を表しているといいます。スパングル教授の代表著作、『防衛と抑止の呪文』には、こんな記述があります。

    「吸魂鬼のような人にあらざる邪悪なものに立ち向かうとき、人はそれまでに必要としたことのない資質を引き出さなくてはならない。また、守護霊とは、必要となるまでは眠ったままでおり、今こそ表面化されなくてはならないというときになって初めて目覚める、隠れた自己なのである。以上ことは明白で…」

  • 8121/11/15(月) 23:35:22

    03

    スパングル教授によれば、これこそ、呪文を唱えた者が特に親しみを覚えたことのない動物や、(まれではありますが)見たこともない動物など、予想もしなかったものが守護霊の姿に表れる理由だといいます。

    スパングル教授の説で興味深いのは、自分のお気に入りの動物の姿をした守護霊を創り出せる珍しい魔女や魔法使いに関する記述です。

    「そのような守護霊は、呪文の使用者の強い執着や奇抜さを示すものだと確信している。こうした魔法使いは日常生活でみずからの本質を隠すことができず、他の者であれば隠そうとするような性質をさらけ出す可能性がある。守護霊の姿がどのようなものであれ、みずからが望んだ姿の守護霊を創り出す魔女や魔法使いには敬意を持って接し、ときには警戒するのが賢明といえよう」

    守護霊の姿は、創り出す者の一生の間に変化することもあります。守護霊の姿が変化する要因として知られているのは、近しい人と死に別れたとき、恋におちたとき、人格が大きく変化したときなどです。このため、ニンファドーラ・トンクスがリーマス・ルーピンに恋をしたとき、彼女の守護霊はジャックウサギから狼(狼人間ではありません)へと変化しました。なかには、ある種の精神的ショックを受けて初めて守護霊を創り出せるようになる魔女や魔法使いもいます。

    なお、必ずというわけではありませんが、守護霊はそれを創り出す人の生まれ故郷でよく見られる動物の姿になるのが一般的です。実体のある守護霊自体、とても珍しいものであることは念頭に置く必要がありますが、そのなかで最もよく見られる守護霊は、犬、猫、馬です。これらの動物は古くから人間と親しんできましたから、当然かもしれません。とはいえ、いずれの守護霊も、それを創り出す魔法使いと同様に唯一無二の存在です。たとえ一卵性双生児でも、それぞれがまったく異なる守護霊を創り出すことが知られています。

  • 9121/11/15(月) 23:35:53

    04

    絶滅した動物の守護霊はかなり珍しいですが、前例がないわけではありません。また、古くから魔法界と関わってきた動物であることを思うと不思議ですが、ふくろうの守護霊はあまり例がありません。考えられるなかで最も珍しい守護霊は、ドラゴン、セストラル、不死鳥などの魔法生物でしょう。とはいえ、史上最も有名な守護霊として挙げられるのは、イリウスという名の伝説の若き魔法使いが創り出した、平凡なネズミです。イリウスはそのネズミを使って、たったひとりで吸魂鬼の大群を撃退しました。守護霊が珍しい魔法生物の姿をとった場合、創り出した者の性格が変わっていることが反映されているのは間違いありません。だからといって、そういった守護霊がとりわけ強力だったり、呪文を唱えた者をより効果的に守ってくれたりするわけではないのです。

  • 10121/11/15(月) 23:36:31

    【リーマス・ルーピン】01

    リーマス・ルーピンは、ハリーがホグワーツの 3 年生の年に「闇の魔術に対する防衛術」を担当する先生。とび色の髪の毛には白髪が交じり、みすぼらしいローブを着ていることが多い。優しくて、ほとんどの生徒から慕われている。

    J.K. ローリングからの新着コンテンツ

    誕生日:
    3 月 10 日
    杖:
    イトスギと一角獣のたてがみ、26 センチ、よくしなる
    ホグワーツの寮:
    グリフィンドール
    特殊能力:
    「闇の魔術に対する防衛術」の極めて優れた才能、狼人間
    家系:
    魔法使いの父親、マグルの母親
    家族:
    妻ニンファドーラ・トンクス、息子エドワード・リーマス・ルーピン(愛称「テディ」)
    両親

    リーマス・ルーピンは、魔法使いのライアル・ルーピンと、その妻でマグルのホープ・ハウエルの一粒種でした。

    ライアル・ルーピンは、やや内気ながら頭脳明せきな青年で、30 歳になるころには「人間外の霊的存在」の権威として世界に名を知られていました。彼の専門は、ポルターガイストやまね妖怪のボガートを始めとする奇妙な生き物たちでした。こうした生き物は、外見やふるまいが幽霊に似ている場合もありますが、過去にも現在も本当の意味で生きていたことはなく、魔法界においてさえ、その存在は謎扱いされています。

  • 11121/11/15(月) 23:36:55

    02

    あるときライアルは、ウェールズにある、特に悪質なボガートが出没するといわれる深い森に調査におもむき、そこで未来の妻と出会います。その女性はホープ・ハウエルという名で、首都カーディフにある保険会社の事務所で働く、美しいマグルでした。ホープは、そこがなんの危険もない普通の森だと思って、軽率にも散歩をしていました。ボガートやポルターガイストの気配はマグルにも伝わることがあり、人一倍想像力豊かで感受性の強いホープは、いつしか木の下闇から何かが自分を見つめていると思い込みます。やがて、彼女があまりにも想像をたくましくし過ぎたせいで、ボガートはいかにも凶悪そうな大男に姿を変えてしまいました。そして、両手を広げて歯を剥いてうなりながら、薄暗い森のなか、ホープに迫ってきたのです。悲鳴を耳にした若きライアルは、木々の間を走って現場に駆けつけると、杖をさっと一振りして、ボガートを小さなキノコに変えてしまいます。恐怖におののき、すっかり動転していたホープは、自分に襲いかかろうとしていた暴漢をライアルが追い払ってくれたものと思い込み、彼が開口一番「大丈夫。ただのボガートですよ」と告げても、耳に入らないようでした。彼女がとても美しいことに気づいたライアルは、ちゃっかりボガートの話を引っ込め、暴漢が恐ろしげな大男だったと言う彼女に話を合わせます。そこからごく自然な流れで、危険だから家まで送っていきましょうという話になったのでした。

    若い 2 人は恋に落ちます。数ヵ月後にライアルが、実は森では少しも危険はなかったのだとおずおずと打ち明けたときも、ホープの気持ちは少しも冷めませんでした。彼女はライアルのプロポーズを受け入れると、いそいそと結婚式の準備に取りかかり、てっぺんにボガートを乗せたウェディングケーキまで用意したのです。ライアルは大喜びでした。

    結婚から 1 年後、ライアルとホープにとっては初めての(そして唯一の)子どもとなった、リーマス・ジョンが生まれます。明るく元気な男の子で、早くから魔法の素質を示したので、ゆくゆくは
    きっと父親と同じようにホグワーツ魔法魔術学校に入ることになるだろうと、両親は夢を膨らませました。

  • 12121/11/15(月) 23:37:22

    03

    感染

    リーマスが 4 歳になるころには、イギリス全土で闇の魔術の活動が激化の一途をたどっていました。日々増えつづける襲撃事件や目撃談の背後に何がひそんでいるのか、真相を知る者はほとんどいませんでしたが、魔法界の覇権を握ろうというヴォルデモート卿の最初の試みは、着々と進行していました。そして死喰い人たちはありとあらゆる闇の生き物を勧誘し、魔法省を転覆させる陰謀に取り込んでいたのです。魔法省は、ボガートやポルターガイストのような比較的無害なものも含め、闇の生き物をよく理解したうえで脅威を封じ込めようと、その道の権威や専門家に協力を要請しました。ライアル・ルーピンも「魔法生物規制管理部」に加わるよう求められ、喜んでこれに応じます。彼がフェンリール・グレイバックという名の狼人間と顔を合わせたのは、規制管理部の一員として務めを果たしているときでした。グレイバックはマグルの子ども 2 名の死に関与した疑いで取り調べを受けるため、魔法省に連行されてきたのです。

    「狼人間登録室」は、登録機関の体をなしていませんでした。狼人間は魔法界で忌み嫌われていたので、通常彼らは他人との接触を避け、みずから「群れ」と呼ぶ集団で暮らし、登録されないようあらゆる手段を講じていました。魔法省はグレイバックが狼人間だと把握していませんでしたし、当の本人は自分がマグルの流れ者に過ぎないと偽り、いきなり魔法使いだらけの部屋に連れてこられて面食らっているし、死んだかわいそうな子どもたちのことを聞いてショックを受けていると言いたてました。

    グレイバックは薄汚い身なりをしていて、杖も持っていなかったため、無知なうえに働きづめで疲れていた査問委員会のメンバー 2 人は、グレイバックが本当のことを話していると信じ込んでしまいました。しかし、ライアル・ルーピンの目は、それほど簡単に欺けません。ライアルはグレイ
    バックの外見と行動にまぎれもない狼人間の特徴を認め、次の満月まで勾留しておくべきだと主張しました。満月が昇るのは、わずか 24 時間後でした。

  • 13121/11/15(月) 23:37:48

    04

    しかし、ほかの査問委員は鼻で笑って取り合おうとしません(「ライアル、君はウェールズのボガートだけ相手にしていればいいんだよ」)。グレイバックはその間、ひと言も発することなく座っていました。ふだんは穏やかなライアルもさすがに色をなし、狼人間は「無慈悲で、邪悪で、殺されて当然の存在」だと訴えます。委員会はライアルに部屋から出ていくよう命じ、「マグルの流れ者」には委員長が詫びを入れ、無罪放免としたのでした。

    グレイバックを出口まで送った魔法使いは、グレイバックに「忘却術」をかけ、魔法省に連行されたことを忘れさせるつもりでした。ところが、術をかける隙もないうちに、グレイバックと 2 人の狼人間に襲われてしまいます。グレイバックの仲間が 2 人、出口で待ちかまえていたのでした。3 人の狼人間は、まんまと逃げ去ります。

    グレイバックは、ライアル・ルーピンが自分たちのことをなんと言ったか、すぐさま仲間に知らしめました。その結果、「狼人間など殺されて当然だ」と口にした魔法使いに対する彼らの復しゅうが、速やかかつ無慈悲に実行されることになったのです。

    リーマス・ルーピンが 5 歳の誕生日を迎える少し前のこと、ベッドですやすや眠っていたリーマスの寝室の窓からフェンリール・グレイバックが侵入し、リーマスに襲いかかりました。駆けつけたライアルが強力な呪文を連発してグレイバックを撃退し、息子の命を救いますが、それ以来、リーマスは狼人間になってしまったのです。

    「無慈悲で、邪悪で、殺されて当然の存在」… グレイバックの前でそんな言葉を口にしてしまった自分を、ライアル・ルーピンは生涯ゆるしませんでした。彼が口にしたのは魔法界の誰もが思っていることでしたが、息子のリーマスは以前と変わらず、愛らしくて利発な少年でした(ただ、満月の夜になると苦しみに満ちた変身を遂げ、周囲の人びとをおびやかす怪物となってしまうことを除いては)。ライアルは何年もの間、息子に襲撃の真相を話しませんでした。自分が誰に、なぜ襲われたのかを知ったリーマスが、復しゅうに走るのを恐れたからです。

  • 14121/11/15(月) 23:38:16

    05

    子ども時代

    ライアルはなんとか息子を治す方法を見つけようと手を尽くしましたが、効果のある魔法薬も呪文も見つかりませんでした。それ以来、リーマスの「病気」を隠すことが、一家の暮らしの最優先事項になります。彼らは村から都会に移り住み、息子の奇行がうわさされるようになると、すぐによそへ引っ越しました。魔法使いの仲間たちは、新月が近づくたびにリーマスがやつれるのに気づきましたし、彼が毎月決まって姿をくらますのを怪しんだことは言うまでもありません。またリーマスは、ほかの子どもたちと遊ぶことも禁じられました。うっかり口を滑らせて、狼人間だということを周囲に知られては大変だからです。その結果、愛情深い両親がいるというのに、リーマスはとても孤独な子ども時代を送ることになりました。

    リーマスがまだ幼いうちは、変身の時期に安全な場所に閉じ込めておくことは難しくありませんでした。鍵のかかる部屋に入れて防音の呪文をたっぷりかければ、たいていは事足りたからです。ところがリーマスが成長するにつれ、変身後の狼も次第に大きくなり、10 歳を迎えるころには部屋のドアを押し破り、窓を割ることができるようになってしまいました。息子を閉じ込めておくのに必要な呪文はどんどん強力になり、ライアルもホープも心労と恐れでやつれていきます。ふたりにとっては心から愛する息子でも、活発化する闇の勢力の活動にすでに悩まされている世間が、制御不能な狼人間の存在を許すはずがないのは目に見えていました。ふたりがかつて息子に抱いた期待も、今となってはついえてしまったように思えました。リーマスが人並みに学校に通うのは無理だろうと考えたライアルは、家で息子に勉強を教えるようになります。

    リーマスが間もなく 11 歳の誕生日を迎えようとしていたある日、ホグワーツの校長アルバス・ダンブルドア本人が、なんの前触れもなくルーピン家を訪ねてきます。驚いたルーピン夫妻はあわてて入口を閉ざしますが、その 5 分後、いったいどうやったものか、ダンブルドアは炉端に腰掛け、クランペットを食べながらリーマスとゴブストーンに興じていました。

  • 15121/11/15(月) 23:38:39

    06

    ダンブルドアはルーピン夫妻に、「リーマスに何があったかは知っている」と切り出します。グレイバックはリーマスを噛んだことを得意げに触れ回っていて、闇の生き物たちの中にはダンブルドアのために働くスパイもいるのでした。にもかかわらず、ダンブルドアは、リーマスがホグワーツに来てはいけない理由などないとルーピン夫妻を説得します。ダンブルドアによると、変身の時期には安全な場所をリーマスにあてがえるよう、すでに手配済みだというのです。狼人間に対する偏見が根強い状況を考慮して、リーマスの「病気」については、本人のためにも、伏せておくのが無難だという結論になりました。そのうえで、リーマスは月に 1 度、ホグワーツから地下道を使ってホグズミード村へ行き、そこにある安全で快適な家に身を隠せばよいというのです。その家はたくさんの呪文で守られており、ホグワーツの校庭に入口がある地下道からしか入ることができません。そこでなら、リーマスは安全な環境で変身できるというわけです。

    リーマスは、生まれてからこんなに喜んだことはないというほど大喜びしました。他の子どもたちと会ったり、生まれて初めて友達や遊び仲間を持ったりすることは、ずっと夢だったのです。

  • 16121/11/15(月) 23:38:59

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    学校生活

    グリフィンドール寮に組分けされたリーマス・ルーピンは、さっそく 2 人の同級生と仲良くなります。ジェームズ・ポッターとシリウス・ブラック――どちらも陽気で自信満々の腕白少年でした。2 人はリーマスが持つ穏やかなユーモアのセンスを気に入り、また、誰にでも親切なところに感心しました。2 人も人には親切にすべきだと思っていましたが、そうできないこともあったからです。いつも弱い者の味方をするリーマスは、同じグリフィンドールの寮生で、小柄で少し頭の回転の遅い
    ピーター・ペティグリューにも親切でした。リーマスが説き伏せなかったら、ジェームズもシリウスもきっとピーターを相手にしなかったでしょう。こうして 4 人は、すぐに親友になりました。

    リーマスはこの 4 人組のいわば良心の役割を果たしていましたが、ときにはその良心が働かないこともありました。ジェームズとシリウスがセブルス・スネイプを容赦なくいじめることには感心しませんでしたが、リーマスは 2 人が大好きでしたし、自分を友達として受け入れてくれたことにとても感謝していたので、スネイプをかばうべきときにそうしないことも少なくなかったのです。

    当然ながら、ほどなくして 3 人の親友たちは、リーマスがなぜ月に 1 度姿を消さなければならないのか知りたがるようになります。ひとりぼっちで過ごした幼いころの経験から、本当のことを打ち明ければきっと友人たちは去っていくと思い込んだリーマスは、姿を消すたびに手の込んだ言い訳をでっちあげるようになりました。それでも、2 年生のときにはジェームズとシリウスに本当のことを悟られてしまいます。ところが、リーマスにとって意外で、ありがたくもあったのは、親友たちが彼を見捨てるどころか、毎月隔離されるリーマスの孤独を和らげる天才的な方法を考え出してくれたことでした。おまけに、彼らはリーマスに「ムーニー(月)」という愛称までつけてくれたのです。以来この名で呼ばれつづけたリーマスは、ホグワーツでの最後の年に監督生となり、卒業しました。

  • 17121/11/15(月) 23:39:32

    08

    不死鳥の騎士団

    親友 4 人組がホグワーツを卒業するころには、ヴォルデモート卿の支配はほぼ確立しつつありました。それに対する本格的な抵抗運動は「不死鳥の騎士団」と呼ばれる地下組織がもっぱら担っており、卒業したての 4 人も全員、騎士団に加わります。

    ジェームズ・ポッターとその妻リリーがヴォルデモート卿に殺害されたことは、ただでさえ苦悩に満ちたリーマスの人生で最も忌まわしい出来事のひとつでした。リーマスにとって友人は、普通の人にとっての友人よりもずっと大きな意味を持っていました。大半の人びとからのけ者扱いされることに慣れてしまったリーマスは、とうの昔に結婚も子どもを持つこともあきらめてしまっていたからです。そんなリーマスに、さらなる不幸が追い打ちをかけます。ジェームズの死から 1 日とたたないうちに、残る 2 人の親友も失ってしまったのです。おりしも不死鳥の騎士団の任務で北部に出かけていたリーマスは、そこで戦慄すべき知らせを受け取ります。親友の 1 人がもう 1 人の親友を殺害し、アズカバンに収監されたというのです。つまりその親友は、騎士団とポッター夫妻を裏切ったのでした。

    ヴォルデモートの失脚は、魔法界にとってはこのうえなく喜ばしい知らせでした。しかしリーマスにとっては、今後ずっと孤独で鬱々とした暮らしを送らなくてはならないことを意味しました。リーマスは 3 人の親友を失い、騎士団は解散し、団員仲間たちはそれぞれ、家族との忙しい日常に戻っていきました。リーマスの母親はすでに他界していましたし、父親のライアルは息子が顔を見せればいつも喜んでくれましたが、一緒に暮らして父の平穏な生活をおびやかすつもりは、リーマスには毛頭ありませんでした。

    リーマスは、自分の能力よりはるかに劣る単純な仕事を転々としながら、その日暮らしをするようになります。毎月 1 度、満月の夜に必ず具合が悪くなることを同僚に怪しまれる前に、職場を去らなければならないことがわかっていたからです。

  • 18121/11/15(月) 23:40:11

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    脱狼薬

    そんなあるとき、魔法界に朗報がもたらされます。トリカブト系の脱狼薬が開発されたのです。この薬は、月に 1 度人間ではなくなってしまう症状を防ぐ効果はないものの、変身してもごく普通の狼として眠りつづけるように抑制できるというものでした。リーマスは常日頃、正気を失っている間に人を殺めてしまうことを最も恐れていたのでした。しかし、あいにく脱狼薬は調合が難しく、材料もとても高価です。自分が狼人間だと明かさずに脱狼薬を試す機会はなく、リーマスはその後もひとりぼっちで、根無し草のような暮らしを続けました。

  • 19121/11/15(月) 23:40:34

    10

    再びホグワーツへ

    リーマス・ルーピンの人生は、再びアルバス・ダンブルドアの介入によって転機を迎えます。ヨークシャーにある、廃虚のような朽ちかけたコテージでリーマスが寝起きしていることを突きとめたダンブルドアは、そのコテージを訪ねてきました。校長に会えて喜ぶリーマスに、ダンブルドアは驚くべき話を持ちかけます。ホグワーツで、「闇の魔術に対する防衛術」を教えないかというのです。返事を渋るリーマスでしたが、ホグワーツに来れば、「魔法薬学」の教授を務めるセブルス・スネイプの計らいで脱狼薬が無制限に手に入ると説得され、ようやく引き受けることを承知します。

    ホグワーツに戻ってきたルーピンは、教員としての優れた資質を発揮します。「闇の魔術に対する防衛術」の類まれな素養もさることながら、彼には教え子たちを深く理解する力がありました。また、ルーピンは相変わらず弱い者の味方で、ネビル・ロングボトムとハリー・ポッターはルーピン先生の知恵と優しさに救われました。

    ところが、リーマスの昔からの欠点が頭をもたげます。彼は脱獄囚として指名手配されている旧友に関して重大な疑いを抱いていましたが、それをホグワーツの誰にも打ち明けませんでした。仲間でいたい、みんなに好かれていたいという気持ちがあまりにも強すぎて、しかるべきときに勇敢にも正直にもなれなかったのです。

    やがて不運が重なり、リーマスは学校の敷地内で狼人間に変身してしまいます。セブルス・スネイプの怒りは、人間の姿に戻ったリーマスがどれだけ礼節をわきまえていようが収まりませんでした。スネイプは腹いせに、「闇の魔術に対する防衛術」を担当する教師の正体を学校中に広めます。これ以上ここにはいられないと感じたリーマスは、職を辞し、再びホグワーツを離れました。

  • 20121/11/15(月) 23:40:58

    11

    結婚

    ヴォルデモート卿が再び魔法界での支配力を取り戻すと、かつての抵抗組織が再結集され、リーマスも再び不死鳥の騎士団の一員になっていました。

    今回、騎士団には、創設時には歳が若すぎて参加できなかった 1 人の闇祓いが加わっていました。ピンク色の髪をした、賢く勇敢でユーモアのセンスも持ち合わせた娘で、名をニンファドーラ・トンクスといいます。彼女は、騎士団の中で最もタフで、最も白髪の多い闇祓い、アラスター・マッド - アイ・ムーディの秘蔵っ子でした。

    ひとりぼっちでふさぎこんでいることの多かったリーマスは、まずこの若い魔女に興味を抱き、次には感心し、やがて本気で恋してしまいます。リーマスにとっては初めての恋でした。これが平和なときなら、リーマスは仕事を変え、新しい家を見つけて彼女の前から去っていたでしょう。トンクスが闇祓い本部所属の若くてハンサムな魔法使いと恋に落ちるのを、指をくわえて見ているのは耐えられないからです。しかし、今は戦時です。リーマスもトンクスも不死鳥の騎士団で必要とされていますし、明日のことは誰にもわかりません。リーマスは「ここに居残るのは仕方がないことなのだ」と自分に言い聞かせ、トンクスに対する想いは胸にしまったままでいました。それでも、誰かが自分とトンクスをコンビで夜通しの任務に就かせてくれるたびに、ひそかに喜びを噛みしめていたのです。

    自分は汚らわしくて無価値な存在だと考えることに慣れきっていたリーマスは、まさかトンクスが自分の想いに応えてくれるとは夢にも思いませんでした。ある夜、死喰い人と判明している人物の家を 2 人でひそかに見張っていたとき、1 年という時をへてすっかり親しくなっていた気安さから、トンクスが騎士団のメンバーの 1 人について何気なくこんなことを言います。「彼って相変わらずハンサムじゃない? アズカバン帰りとは思えない」。トンクスが自分の旧友に心を奪われたと思ったリーマスは、思わず、「女にもてるのはいつもあいつだ」と、痛烈な受け答えをしてしまいます。それを聞いたトンクスは、急に怒りだしました。「わたしが誰にほれてるか、あなたにはよくわかるはずだよ。そんなふうに自分を憐れんでばかりいなければね」

  • 21121/11/15(月) 23:41:21

    12

    リーマスは、今まで味わったことのないような幸福感に包まれました。けれども、それはすぐに、圧倒的な義務感にかき消されてしまいます。リーマスは常日頃、自分は結婚などできないとあきらめていましたし、仮にできたとしても、苦しくて恥ずべき「病気」を子どもに受け継がせる危険を冒せないことは承知していました。リーマスはトンクスの言葉の意味を理解できなかったふりをしてみせますが、それを真に受けるトンクスではありません。リーマスよりも賢い彼女には、リーマスもトンクスを愛しているのに、誤った高潔さからそれを認めまいとしているのだとわかりました。しかしそれ以来、リーマスはトンクスとの遠出を避けるようになり、ほとんど彼女と口をきかず、そればかりか、極めて危険な任務ばかりを選んで志願するようになります。トンクスは絶望に打ちひしがれました。愛する男が二度とみずから進んで自分と一緒に過ごしてくれないだけでなく、気持ちを認めるぐらいなら死地におもむくつもりでいるとわかったからです。

    リーマスとトンクスは、魔法省神秘部でヴォルデモート卿とその配下の死喰い人たちと戦います。この戦いの結果、ヴォルデモートの復活が公の知るところとなりました。リーマスはこの戦いでホグワーツ時代の友人の最後の 1 人を失いますが、彼の自滅的なふるまいは、改まるどころかますますエスカレートしていきます。騎士団のスパイ役を買って出たリーマスが、狼人間たちをダンブルドアの陣営に引き込むべく説得工作に向かう姿を、トンクスはなすすべもなく見送るしかありませんでした。任務のために狼人間たち混ざって暮らすリーマスは、かつて彼の人生を永久に変えた狼人間、フェンリール・グレイバックによる逆襲の脅威にさらされることになりました。

    それから 1 年たつかたたないかのうちに、リーマスはグレイバックとトンクスの両方と顔を合わせます。ホグワーツ城で、不死鳥の騎士団と死喰い人たちが激突したのです。この戦いのさなか、リーマスは愛する人をまた 1 人失いました。アルバス・ダンブルドアです。ダンブルドアは騎士団のメンバー全員から敬愛されていましたが、リーマスにとっては、両親と 3 人の親友以外からは受けたことのない優しさと、ゆるしと、理解を示してくれた人物でした。また、リーマスに魔法界で普通に暮らす居場所を提供してくれた唯一の人物でもありました。

  • 22121/11/15(月) 23:41:43

    13

    まだ激戦の余韻も冷めやらぬなか、フラー・デラクールがグレイバックに噛まれたビル・ウィーズ
    リーへの変わらぬ愛を誓ったのに触発され、トンクスも勇気を出してリーマスへの気持ちを公表します。これにはリーマスも、彼女を想う自分の気持ちがいかに強いものか認めざるを得ませんでした。自分が利己的な行いをしているのではないかという不安こそ消えませんでしたが、リーマスはスコットランドの北部でトンクスとささやかな結婚式を挙げます。立ち会ったのは、魔法使いが集う地元の酒場の客たちでした。狼人間である自分に着せられた汚名が妻に及ぶのを依然として恐れていた彼は、2 人の結婚を華々しく触れ回る気にはなれなかったのです。愛する女性と一緒になれたという天にも昇るような気持ちと、この結婚によって何か恐ろしいものを招いてしまったかもしれないという恐怖の間を、リーマスは絶えず揺れ動きました。

  • 23121/11/15(月) 23:42:12

    14

    父親として

    結婚から数週間もたたないうちに、リーマスはトンクスが身ごもっていることに気づきます。その瞬間、かねて恐れていたことのすべてが、リーマスの中で一気に爆発しました。自分は罪もない子どもに「病気」を受け継がせてしまったに違いないと、リーマスは思い込みます。トンクスは自分の母親と同じような境遇に追いやられ、今後は 1 ヵ所に腰を落ち着けることのできない流浪の暮らしを余儀なくされ、次第に暴力的になる我が子が人目に触れないよう、骨を折る生活に耐えなければならない――。後悔と自責の念に駆られたリーマスは、身重の妻を置いて家を飛び出し、ハリーを探し当てると、命懸けの冒険に出かけるならば同行させてほしいと頼みます。

    ところが、17 歳のハリーはリーマスの申し出を断ったばかりか、腹を立て、リーマスを罵倒しました。リーマスは驚き、憤慨します。ハリーは恩師に向かって、それはあまりに自分勝手で無責任だと非難の言葉を浴びせたのです。かっとなったリーマスは柄にもなく暴力に訴え、憤然とその場を後にすると、「漏れ鍋」にしけこみ、やけ酒をあおったのでした。

    しかし、何時間か頭を冷やしてみると、元教え子からとても大切なことを教わったと、リーマスも認めざるを得ませんでした。ジェームズとリリーは、みずからの死を目前にしても、ハリーのそばを離れませんでした。リーマスの両親、ライアルとホープも、家族が一緒にいるために、自分たちの平穏な暮らしと身の安全を犠牲にしたのです。すっかり恥じ入ったリーマスは、「漏れ鍋」を後にし、妻のもとに帰ります。そしてトンクスに許しを請い、この先何があろうとも、二度とそばを離れないと誓いました。それ以降トンクスが出産するまで、リーマスは不死鳥の騎士団の活動を控え、妻ともうじき生まれる我が子を守ることを、他の何よりも優先したのでした。

  • 24121/11/15(月) 23:42:43

    15

    ルーピンの息子、エドワード・リーマス(愛称「テディ」)の名は、そのころ他界したばかりだった
    リーマスの義父からとったものです。生まれた赤ん坊には狼人間の兆候は見られず、代わりに、思いのまま外見を変える母親の能力が受け継がれていました。リーマスとトンクスはほっとし、大いに喜びました。テディが生まれた日の夜、リーマスはトンクスと息子を少しのあいだ義母の手に委ね、ハリーを訪ねます。そして、激しく言い争って以来顔を合わせていなかったハリーに、息子の名付け親になってほしいと頼みます。リーマスはハリーに対して怒っているどころか、感謝の気持ちしかありませんでした。彼にいさめられて家族のもとに戻っていなかったら、何ものにも代えがたいこの幸せは手に入らなかったからです。

  • 25121/11/15(月) 23:43:04

    16



    リーマスとトンクスは幼い息子をトンクスの母親に預け、ヴォルデモートとの最終決戦に加わるべくホグワーツに戻ります。ヴォルデモートがこの戦いに勝てば、自分たちの家族が根絶やしにされてしまうことはわかっていました。2 人とも不死鳥の騎士団のメンバーとして広く名を知られていましたし、トンクスは死喰い人の伯母ベラトリックス・レストレンジから要注意人物として目をつけられていました。そのうえ息子のテディは、マグルの親戚を大勢持つばかりか狼人間の血まで引いており、純血の正反対を体現する存在だったからです。

    何人もの死喰い人との死闘を制し、何度窮地に陥っても勇敢かつ巧みに戦って急場を切り抜けてきたリーマス・ルーピンも、アントニン・ドロホフの手にかかってついに命を落とします。ドロホフは最も古くからヴォルデモートに従事してきた死喰い人のひとりで、その熱心さと残虐さでは他の追随を許さない人物でした。いっぽうのリーマスは、戦いに馳せ参じた時点で、もはや全盛期の力はありませんでした。騎士団の活動を控え、使うのはもっぱら隠蔽と守護の呪文ばかりという最近の暮らしぶりが、彼の決闘の能力を錆びつかせていたのです。ドロホフはここ何ヵ月ものあいだ殺りくにふけり、大量の重傷者を出していました。そんな百戦錬磨の手練れにとって、リーマスの動きは鈍すぎたのです。

    リーマス・ルーピンには死後、マーリン勲章、勲一等が授与されました。狼人間としては初めての栄誉です。彼の生きかたと死にざまは、狼人間の汚名をそそぐのに大きく貢献しました。生前の
    リーマスを知る者は、決して彼を忘れませんでした。極めて困難な状況でも最善を尽くし、当人が思っていたよりも大勢の人びとを助けた勇敢で思いやりある人物として、リーマス・ルーピンはいつまでも人びとの記憶に残りつづけたのです。

  • 26121/11/15(月) 23:43:23

    17

    J.K. ローリングの言葉

    リーマス・ルーピンは、『ハリー・ポッター』シリーズの登場人物の中でもお気に入りのひとりでした。この記事を書いていたら、また泣いてしまいました。私はルーピンを殺したくなかったのです。

    ルーピンの「狼つき」(狼人間であること)という病は、HIV や AIDS のような、偏見を伴う病のメタファーでした。血そのものがタブー視されるせいか、血液を介して伝染する病には、あらゆる迷信がつきまとうように思えます。ヒステリーや偏見にとらわれやすいのは、魔法界もマグルの世界と変わりません。ルーピンという登場人物は、そういった態度について考察するチャンスを私に与えてくれたのです。

    リーマスは、「守護霊を創り出す」という難しくて珍しい魔法をハリーに教える張本人ですが、彼自身の守護霊が物語中で明らかになることはありません。リーマスの守護霊は、実は狼です。狼人間ではなく、普通の狼なのです。狼は家族を大切にし、争いを好まない動物ですが、リーマスは自分の守護霊の姿が好きになれません。それが常に自身の苦悩を呼び覚ますからです。ルーピンは狼を思わせるものすべてを不快に感じます。そしてたびたび(誰かが見ているときは特に)、あえて形を持たない守護霊を創り出すのです。

  • 27121/11/15(月) 23:43:48

    【煙突ネットワーク】01

    何世紀にもわたって利用されてきた煙突ネットワークには、いくぶん使い心地の悪い面もありますが、多くの利点があります。まず、箒とは違って、国際機密保持法を犯す心配なく使えます。また、「姿現し」とは違って、大けがをする危険性がほぼまったくありません。しかも、子どもやお年寄りでも使えます。

    ほぼすべての魔法使いの家が、煙突ネットワークとつながっています。暖炉をネットワークから切断するのは呪文ひとつでできますが、接続するには、魔法省の許可が必要です。煙突飛行サービスは魔法省が管理し、うっかりマグルの暖炉がネットワークにつながってしまうのを防いでいます(ただし、緊急時に一時的に接続することはあります)。

    家庭の暖炉だけでなく、魔法省にあるものや、さまざまな魔法の商店、宿屋の暖炉など、イギリスには煙突ネットワークとつながっている暖炉が千近くあります。ホグワーツの暖炉は通常つながっていませんが、職員が知らない間にいくつか細工されていたことが、一度ならずありました。

    煙突ネットワークを使うとたいていの場合は正確に目的地に着けますが、ときには間違いも起こります。炎の中に入るときに行き先の名前を大きな声ではっきりと告げなければなりませんが、灰や熱や恐怖のせいで、ときにそれが難しいこともあります。最もよく知られた失敗の事例は、1855 年に起きています。夫と激しい口げんかをした魔女のバイオレット・ティリマンが、居間の暖炉に飛び込み、泣きじゃくりながら「お母さんの家(マザーズ・ハウス)に行きたい」と叫びました。

  • 28121/11/15(月) 23:44:13

    02

    数週間後、汚れていない鍋が台所にひとつもなくなり、靴下を洗濯する必要に迫られた夫のアルバートは、さすがにそろそろ妻に帰ってきてもらわないと困ると思い、煙突ネットワークを使って義理の母の家に行きました。ところが義理の母は、バイオレットは来ていないと言うのです。疑り深く、ちょっとばかり威張り屋なところがあるアルバートは、怒って家に上がり込み、室内を探しまわりましたが、義理の母親は本当のことを言っているようで、妻の姿はどこにもありません。その後、各地にポスターが貼られ、「日刊予言者新聞」に何度も記事が載りましたが、それでもバイオレットは見つかりませんでした。彼女の行き先を知っている人も、どこかの暖炉から出てくる彼女の姿を見た人も、ひとりもいないようでした。バイオレットが姿を消してから数ヵ月の間、人びとは自分も跡形もなく消え去ってしまうのではないかと不安になり、煙突ネットワークを使うのを恐れました。とはいえ、時が流れ、バイオレットのことも次第に忘れ去られ、他に誰も姿を消すことはなかったため、魔法界はやがて日常を取り戻します。アルバート・ティリマンは不機嫌そうに自宅に戻り、洗い物と縫い物の呪文を習得しました。そして、妻と同じ目に遭うことを恐れて、二度と煙突ネットワークを使いませんでした。

    バイオレット・ティリマンの消息が明らかになったのは、20 年後、アルバートが亡くなったあとのことです。煙突ネットワークに入ったときにはっきり発音しなかったせいで、彼女は母親の暖炉ではなく、ベリーセントエドマンズに住むハンサムな魔法使い、マイロン・アザーハウスの家の暖炉にたどり着いたのでした。バイオレットは涙にぬれ、灰にまみれ、顔は真っ赤だったにもかかわらず、彼女がつんのめりながら暖炉から出ると、2 人はひと目で恋に落ちました。マイロンとバイオレットと 7 人の子どもたちは、その後末永く幸せに暮らしたそうです。

  • 29121/11/15(月) 23:45:05

    03

    J.K. ローリングがみずから語る、バイオレット・ティリマンの物語(英語のみ)。

    "物語の中でもハリーが間違った場所に行ってしまうシーンがありますが、煙突ネットワークではよく失敗が起きます。なかでもとりわけ大きな失敗をしたのは、バイオレット・ティリマンという女性です。1855 年、バイオレットは夫のアルバートと口げんかをし、大変取り乱した状態で炎の中に入り、「お母さんの家(マザーズ・ハウス)に行きたい」と叫びました。ところが、このとき彼女は泣きじゃくっていたため、予期せぬ事態が起こります。2 週間後、家の中がずいぶん散らかってきたことに気づいたアルバートは、暖炉に入って義理の母の家に行きました。ところが、そこにバイオレットはいません。その後彼女は 20 年間行方不明のままになります。20 年後、アルバートが亡くなったあとで再び人前に姿を現したバイオレットは、誤ってベリーセントエドマンズに住むハンサムな魔法使い、マイロン・アザーハウスの家にたどり着いていたことを明かします。しかも、発見された彼女には 7 人の子どももいたのでした。"


    "「フルー」は煙突の煙道(フルー)から取った名前です。煙道とは何かと聞かれても、私もよく知りません。煙道というものがあることは知っていますが、その役目についてはよく知らないのです。不便な国際機密保持法という設定を作ってしまったせいで、若年層の魔女や魔法使いたちが魔法を使って長距離を移動するのが難しくなりました。このため、特に子どもの魔女や魔法使い用の移動手段を考えなければなりませんでした。そこで、かなり目立ちにくい方法が必要だと考え、煙突ネットワークを思いついたのです。この方法なら、マグルに見られずに家から家へ移動できます。煙突ネットワークを若干使いにくいものにし、すぐに間違った場所に到着してしまう設定にしたおかげで、おもしろおかしく楽しいお話になりました。"

  • 30121/11/15(月) 23:45:40

    【色】01

    J.K. ローリングからの新着コンテンツ

    魔法使いは公の場で互いにその正体を明かす場合、紫色や緑色の服を着ることが多く、大抵はそれらを組み合わせて装います。イギリス(それにヨーロッパの大部分)では、紫色は、王室や宗教を連想させます。紫の染料は非常に高価だったため、昔は十分な経済力がある人しか身につけることができませんでした。たとえば司祭の指輪には、昔からアメジストが埋め込まれています。一方緑色は、イギリスでは長い間超自然的なものと結びつけられてきました。迷信によれば、緑色は妖精の色であり、彼らはこの色を独占したがるため、身につけるときは注意が必要だと言われています。また、災難や死とも関連づけられているため、結婚式では絶対に着てはならない色とされています。緑は、闇の魔術と関係の深い色です。闇の印もしかり、ヴォルデモートが分霊箱を隠した幽光を発する魔法薬もしかり、多くの闇の魔法や呪文もしかり、それに、スリザリン寮もしかりです。このような背景から、紫と緑の組み合わせは、高貴なものと卑しいもの、有益なものと有害なもの、という魔法の両面を表していることになります。

    ホグワーツの 4 つの寮は四大元素とゆるく関連付けられていて、寮の色もそれに応じて決められています。グリフィンドール(赤と金)は火、スリザリン(緑と銀)は水、ハッフルパフ(黄と黒、麦と土を表している)は地、レイブンクロー(青とブロンズ、空と鷲を表している)は空です。

    桃色やサーモン・ピンクといった色は、明らかに魔法的ではないので、ペチュニアおばさんのような人にとても好まれています。一方、ニンファドーラ・トンクスのような人が好むショッキング・ピンクは、「ええ、父はマグル生まれだけど、それがどうかした?」という、ある種のとんがった態度を表しています。

  • 31121/11/15(月) 23:46:20

    02

    色は、ハグリッドとダンブルドアの名付けにも関係しています。彼らはそれぞれ「ルビウス(赤)」と「アルバス(白)」という、色の名前のファーストネームを持っています。この名前の選択は、錬金術を意識したものです。『ハリー・ポッターと賢者の石』では、錬金術が重要な役割を果たします。「赤」と「白」は、この錬金術を行なう工程に欠かせない要素なのです。錬金術において、色は神秘的な意味を象徴していて、錬金術の工程における異なる段階(多くの人はこれを霊的変容と関連づけます)を表しています。2 人の登場人物に関して言えば、錬金術上の意味を持つ色を名前にすることで、互いに対立しながらも、補いあう性質を表現しました。赤は情熱(あるいは感情)、白は禁欲を意味します。ハグリッドは、世俗的で、温かい心と強靭な肉体を持つ、森の主です。ダンブルドアは、精神的理論家で、卓越した能力を持ち、みなの理想であり、どこか浮世離れしています。この対照的な 2 人は、ハリーが新しい世界で父親代わりとなる人物を探す上で欠かせない存在です。

  • 32121/11/15(月) 23:46:53

    【ポートキー】01

    移動キーは、あらかじめ指定した時刻に、魔法使いをある地点から別の地点へと移動させるのに使う道具。集団で同時に移動することもできる。どんな物でも移動キーにできるが、マグルに見つけられていじられることのないよう、通常は目立たない物が選ばれる。

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    「姿現し」(思いのままに姿を消したり現したりする術)が使えない魔法使いが、日中(つまり、箒、セストラル、空飛ぶ自動車、ドラゴンといった手段を使うべきではない時間帯に)、暖炉以外の目的地(つまり、煙突飛行粉が役に立たない場所)に移動しようと思った場合、移動キーという手段を使うしかありません。

    生き物以外なら、ほとんどなんでも移動キーになります。魔法で移動キーに変えられた物は、それをつかんだ者をあらかじめ指定された目的地まで運んでくれます。また、所定の時刻にキーをつかんだ者(集団でも可)だけを移動させるように設定することも可能です。そうやって膨大な数の魔女や魔法使いの到着と出発の時間をずらすことで、クィディッチ・ワールドカップのような大規模なイベントの開催時でも、警備上の不手際が起きるリスクを最小限にとどめることができるのです。

  • 33121/11/15(月) 23:47:21

    02

    極秘裏に大勢を移動させる必要があるとき、移動キーには目立たない物が選ばれ、人目につかない場所に置かれます。通りすがりのマグルに見つかっても、取るに足らないガラクタだと思わせるためです。とはいっても、事故というのは起きるもので、例えば 2003 年、犬を散歩させていた 2 人のマグルが、セレスティナ・ワーベックのコンサート会場に誤って移動させられたことがありました。彼らの飼い犬たちが、クラパムコモンに落ちていた古い運動靴をくわえて逃げてしまったためです(その結果置いてきぼりになった多数の魔女と魔法使いたちは、落ちているスナック菓子の空き袋や煙草の吸い殻が移動キーではないかと、何もない芝生の上を必死に探しまわるはめに遭いました)。犬を連れていた 2 人のマグルうち 1 人は、なんとセレスティナに指名されてステージに上がり、世界的大ヒット曲『大鍋は灼熱の恋に溢れ』をデュエットしました。途方に暮れた魔法省の役人がかけた忘却術は効いたように見えましたが、その後このマグルは同曲に不思議なほどよく似たマグルの流行歌を作曲しました(ワーベック嬢としては、いい気がしなかったのは言うまでもありません)。

    移動キーを使った移動の際に味わう感覚は、不快とはいえないまでも、決して心地よいものでないことは誰しも認めるところです。吐き気やめまい、場合によってはそれ以上の体調不良を引き起こす恐れもあるため、癒者たちはお年寄りや妊婦など、体の弱い人は移動キーの利用を控えることを勧めています。いっぽう、クリスマスの団らんを迷惑な親戚に邪魔されたくないという魔法使いの家庭では、そういう親戚をあえて移動キーで招待するという方法を選ぶこともしばしばです。

    J.K. ローリングの言葉

    移動(ポート)キーという名前は、フランス語で「運ぶ」を意味するポルテと、秘密や仕掛けという意味でのキーという英語をつなげたものです。自慢じゃありませんが、私は本物の移動キーを持っています。アメリカのラポートという街に飛んでいける移動キーで、これはハリー・ポッター・シリーズのファンサイト、Mugglenet.com を開設したエマーソン・スパーツから贈られたものです。

  • 34121/11/15(月) 23:47:56

    【クィディッチ・ワールドカップ1990-2014】01
    J.K. ローリングからの新着コンテンツ

    1990
    カナダ 270 点、スコットランド 240 点
    あと数ミリのところでスニッチを捕り損ねたスコットランドの惜敗でした。シーカーのヘクター・ラモントは試合後のインタビューで、父親のスタビー(ずんぐり)・ラモントがもっと長い指をくれなかったせいだと言い放ったことで話題になりました。

    1994
    アイルランド 170 点、ブルガリア 160 点
    ピッチ上で行われたことよりも、試合後の出来事が記憶に残る決勝でした。若きシーカー、ビクトール・クラムが素晴らしいプレーでスニッチを捕りブルガリアのプライドは守ったものの、優勝にはあと一歩届かなかったのです。

    1998
    マラウイ 260点、セネガル 180 点
    史上 2 度目のアフリカの国同士の決勝戦でした。1994 年の暴動を受け、試合の安全対策は今までにないほど厳しく、マスコットのヤンボーたちがスタジアムの外で逮捕されたセネガル代表チームは、これに抗議し試合を放棄しそうになりました。ヤンボーはアフリカに生息する屋敷しもべ妖精の一種で、逮捕されても暴れたりはしませんでしたが、報復として半径 10 マイル圏内の食べ物をすべて盗んで夜の闇に消えました。

    2002
    エジプト 450 点、ブルガリア 300 点
    またしてもブルガリアにとって残念な結果となった年でした。ビクトール・クラムはエジプトの天才シーカー、ラウヤ・ザグルールに僅差でスニッチを捕られてしまったのです。試合後、クラムは涙ながら引退を発表しました。

    2006
    ブルキナファソ 300 点、フランス 220 点
    アフリカの小国にとっての大勝利でした。シーカーのジョシュア・サンカラは試合後すぐにブルキナファソの魔法大臣に任命されましたが、クィディッチをやりたいと 2 日後に辞任します。

  • 35121/11/15(月) 23:48:39

    02

    2010
    モルドバ 750 点、中国 640 点
    3 日にも及ぶ白熱した試合となり、今世紀最高のクィディッチが行われたと評判の一線でした。モルドバは小国ながら常に優秀なクィディッチ・チームを排出してきましたが、キャンプ中に龍痘が流行したために 2014 年大会にはエントリーできず、多くのファンが悲しみました。

    クィディッチ・ワールドカップ 2014
    今年のクィディッチ・ワールドカップも、熱い試合展開が期待できると評判です。出場国は以下の 16 か国です:
    ブラジル、ブルガリア、チャド、フィジー、ドイツ、ハイチ、コートジボワール、ジャマイカ、日本、リヒテンシュタイン、ニュージーランド、ナイジェリア、ノルウェイ、ポーランド、アメリカ合衆国、ウェールズ

    上位 2 チームはナイジェリアとノルウェイで、アメリカは初めて決勝戦進出を狙えると言われています。ブルガリア代表には、一度は引退したビクトール・クラムが復帰し話題を呼んでいます。クラムは 38 歳でシーカーとしては年齢が高いのですが、「死ぬ前にワールドカップを手にする」という目標を掲げています。このため、ブルガリアは予選落ちした国々のファンの間で人気のチームとなっています。リヒテンシュタインは前回大会の準優勝国である中国を下して予選を突破し話題を呼んでいます。リヒテンシュタインのマスコットはハンスという名前の大きくて陰鬱なオーグリーで、彼専属のファンクラブを持っています。

  • 36121/11/15(月) 23:49:07

    03

    今大会に関してはこれ以外に特に変わったことは報告されていません。ハイチが亡者を使って相手チームを脅かしたという噂もありましたが、ICWQC によって「根拠がなく、悪意に満ちている」と一蹴されています。ポーランドのシーカー、ボナヴェンチュラ・ヴォイチックが、実はイタリアのシーカー、ルチアーノ・ヴォルピが変身術を使って化けているという疑惑は、ヴォルピがヴォイチックと記者会見に同席したことによって解決しました。ウェールズのマネージャー、グウェノグ・ジョーンズ(もともとはホーリーヘッド・ハーピーズに所属していました)は、ブラジルのマネージャーであるホセ・バルボーザにチェイサーを「無能な鬼婆」と非難されたことに腹を立て「顔を呪い消してやる」と発言しています。(バルボーザは、発言を曲解されたと弁明しています)

    ワールドカップの開幕試合は、来月パタゴニア砂漠で行われます。

  • 37121/11/15(月) 23:49:29

    【スコットランド・ラグビー】01

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    魔法使いの多くは、マグルのスポーツについてほとんど何も知りません。マグルのスポーツなんて本質的に退屈だし、くだらないとさえ思っているほどです。ですから、スコットランドのラグビーチームが魔法界でこよなく愛されているのは、とりわけ異例といえるでしょう。その風習は魔法使いだけに通じるジョークとして、また、純粋に関心の的として、魔法使いの社会に受け継がれてきました。そもそもの発端は 19 世紀、悲しくも感動的な、ある実話にさかのぼります。

    魔法使いのブキャナン一家は、先祖代々スコティッシュボーダーズのとある村で暮らしていました。ブキャナン家の者はみんな荒くれ者の大酒飲みで、体も並外れて大きかったといいます(毎年一家の娘たちが村の綱引き大会に出場し、村人たちの記憶するかぎり、一度も負けたことがありませんでした)。ですから、みんなブキャナン一家にはむやみに近づかないようにしていて、そのおかげで彼らが魔法使いだということが村の者たちに知れることはなかったのです。ブキャナン家の子どもたちは 11 歳になると、ホグワーツに入学するため、決まって次々と姿を消しました。とにかく大柄で暴れ者の子どもたちだったので、村人たちは、更正施設か精神科病院にでも送られているのだろうとうわさしました。

    19 世紀半ば当時のブキャナン一家は、働き疲れた母親と、荒くれ者の父親と、11 人の子どもたちという顔ぶれでした。家はいつも騒がしくてしっちゃかめっちゃかでしたが、3 番目の息子のアンガスがスクイブだということに、両親とも気づかなかったのは驚きといえるでしょう(スクイブというのは、魔法使いの両親のあいだに生まれた、魔法を使えない子どものことです)。アンガスの父親はいつも、スクイブ誕生などという異常は自分の家には一度も起きたことがないと自慢げに言いふらしていました。そればかりか、スクイブは家が衰退する兆しだから、生まれたら追放すべきだとまで主張したのです。

  • 38121/11/15(月) 23:49:55

    02

    兄弟のなかでいちばん体が大きくて、いちばん心優しいアンガスは、兄弟全員から好かれていました。アンガスが魔法を使えないことがばれないようにと、兄弟たちは両親の前で隠ぺい工作をしました。始めは無邪気な意図からしたことでしたが、アンガスがホグワーツに入学する時期が近づくと、本人も兄弟たちも、これ以上両親をだまし続けるのは無理だと気づき、不安を募らせました。アンガスの入学を認めるホグワーツからの手紙は届きませんでしたが、慌てた姉のフローラが偽の手紙を書いたため、両親にはさらに数週間隠し通すことができました。アンガスは人がよくて内気な性格だったうえ、父親を怖れていたので、年上の兄弟たちと話を合わせる以外、どうすることもできませんでした。兄弟たちはアンガスをダイアゴン横丁へ連れていくと、杖を買ってやり、その杖がアンガスを選んだふりをしました。いよいよ入学の日がやってくると、アンガスは兄のヘーミッシュに箒のうしろに乗せられ、ホグワーツへと向かいました。ヘーミッシュは、着いてしまえば入学を認めてもらえるかもしれないし、ホグワーツに足を踏み入れればアンガスにも魔法の力が発現するかもしれないと、わらにもすがる思いでした。

    アンガスがスクイブだと周囲に気づかれてしまったのは、組分けの儀式のときでした。魔法の力を持たない者が組分けの儀式に参加したのは、あとにも先にもこのときだけです。儀式が進み、どうしようもなくなったアンガスは、ある女の子の名前が呼ばれたとき、その子よりも先に前に躍り出て、組分け帽子をかぶりました。すると帽子は、「この少年は温かい心を持っているが、魔法使いではない」と、穏やかに告げました。そのショッキングな瞬間のことを、その場に居合わせた者は生涯忘れなかったといいます。アンガスは組分け帽子を脱ぐと、涙を流しながら大広間をあとにしたのでした。

    アンガスに関する恥ずべき知らせは、本人が徒歩で帰宅するより前に、ふくろう便で両親に伝わっていました。屈辱を味わった父親は戻ったアンガスを家に上げもせず、この家の敷居を二度とまたぐなと命じると、逃げていくわが子の背中目がけて何度も呪いを放ったのでした。

  • 39121/11/15(月) 23:50:20

    03

    家族に捨てられ、所持金もない 11 歳のアンガスは、どうしたらいいのかわからないままひたすら歩き、ときにヒッチハイクをして荷馬車を乗り継ぎながら、首都エディンバラを目指しました。そこでアンガスは年齢を偽り、なんとか労働者として職を得ることができたのでした。

    いつも両親からマグルの悪口を聞かされていたアンガスは、マグルたちがそんなに悪い人びとではないことに驚きました。子どもがなかった親切な親方夫婦に引き取られるという幸運にも恵まれ、18 歳になるころには、身体能力に優れた力持ちの大男に成長していました。心優しいアンガスは誰からも好かれましたが、自らの数奇な過去を他人に明かすことは、決してありませんでした。

    アンガスは幼いころ毎日のように呪いをかわしていたため、大きな体にそぐわない素早さを身につけていました。やがて運動競技に目覚め、熱心に打ち込むようになったアンガスは、当時はまだ比較的新しかったマグルのスポーツ、ラグビーですぐに頭角を現します。また、裏庭で兄弟たちが金のスニッチを捕まえるのを長年手伝って鍛えた能力を生かし、クリケットでも才能を発揮しました。

    1871 年、エディンバラで、世界初のラグビーの国際試合が開催されました。イングランドとスコットランドが対戦したこの試合に、アンガスはスコットランド代表選手として出場しました。ピッチに立ったアンガスが、観客席に 10 人の兄弟全員の姿を見つけたとき、彼の喜びがいかばかりだったかは、想像に難くありません。マグルの娯楽を片っ端から毛嫌いし、二度とアンガスに会ってはいけないと命じた父親に背き、彼らは弟の行方を捜していたのでした。心強い応援を受けたアンガスは最初のトライを決め、試合はスコットランドが勝利しました。

  • 40121/11/15(月) 23:50:40

    04

    家族と再会し、自らの魔法使いとしてのルーツに再び向き合うようになったアンガスは、1900 年、世界的ベストセラーとなった画期的な自伝、『スクイブとしてのわが人生』を出版します。それまでスクイブたちは、いつも日陰者でした。魔法界の片隅に生き、常に「二流」という引け目を感じながら、なんとか溶け込もうと努力を続ける者もいれば、魔法使いの社会に完全に別れを告げ、自らの出自を否定しながら、マグルとして生きる者もいました。『スクイブとしてのわが人生』という一冊の本によって、魔法界はこうした人びとの苦しみに気づかされたのです。

    こうしてアンガス・ブキャナンは、マグルの社会で称賛されながら、同時に魔法使いたちのあいだでも世界的有名人となりました。これは歴史上、初めての功績です。それからというもの、世界各国の魔法使いたちが、アンガスがプレーするスポーツを観戦しにくるようになりました。とはいえ、残念ながらクリケットは、魔法使いたちにはあまり受けがよくなかったようです。「日刊予言者新聞」のスポーツ担当主任記者は、1902 年の記事で次のように書いています。「飛ぶことのできないビーターが、輪ではなく 3 本の棒を守り、選手たちは羽根のないスニッチをその棒に向かって投げる。たったそれだけのゲームが、ときには数日にわたって行われる」。一方、ラグビーは人気でした。「姿くらまし」で逃げたり、「骨生え薬」で骨折を治したりすることもできないマグルたちが、こんなにも粗暴なスポーツに挑むその強さと勇気を、魔法使いたちはたたえずにいられなかったのです。ただし、なかにはその残酷さにひかれた魔法使いもいたことでしょう。

    アンガス・ブキャナンが亡くなったときは、魔法界とマグルの社会、両方がその功績をたたえました。そんな人物は歴史上、彼ひとりだけといえるでしょう。アンガスは、自らが生まれついた境遇を精いっぱい生かし、大きな成功を収めた模範的人物です。それでも、謙虚だった彼は自分が世間にどれほど大きな影響を与えたか、自覚していませんでした。ホグワーツでは毎年、並ならぬ努力をした生徒に「アンガス・ブキャナン杯」が授与されます。『スクイブとしてのわが人生』は、現在第 110 版まで増刷されています。

  • 41121/11/15(月) 23:50:59

    05

    クィディッチ、クォドポット、クレオスシアン(法律で禁止されているものの、いまだに違法にプレーされています)、箒レース、ゴブストーンなど、魔法使いたちは元来自分たちのスポーツに関しては熱烈なファンで、各自の国のチームを応援しています。ただしラグビーについては、スコットランド以外のチームを応援することは自らの品格を下げる行為とみなされています。アンガス・ブキャナンが世界初の国際試合で勝利に貢献してからの約 150 年間、スコットランドのラグビーチームについて会話をすることは、近くにマグルがいる場所で魔法使いがお互いの正体を探る際の、秘密の合い言葉のひとつとなっているのです。ペルー人同士がスコットランドのチームについて熱心に語っていれば、立ち聞きしているマグルは不思議に思うかもしれません。それでも、公然とクィディッチについて議論したり、杖の長さを比べたりするよりは好ましいとされています。

    アンガスの死後まもなく、忠実なファンたちが在りし日の彼をしのび、「スコットランドラグビーユニオン魔法使いサポータークラブ(Wizarding Supporters of Scottish Rugby Union、略称 WSSRU)」を結成しました。WSSRU は現在も活動していて、スコットランドはもちろん、その他の国にもメンバーがいます。メンバーたちはスコットランドチームの国際試合前夜に必ず集まり、アンガスに乾杯します。そして、マグルたちが泥まみれになってお互いを踏みつけ合う 80 分間を楽しみに待つのです。

    魔法使いがマグルのスポーツに参加することは、国際機密保持法ではっきりと禁止されていますが、マグルのチームを応援することにはなんの問題もありません。とはいえ、「WSSRU には秘密の任務があり、才能あるスクイブをスコットランドの全ラグビーチームに送り込もうとしている」といううわさが絶えることはなく、同クラブはしばしばその火消しに追われています。現在そんなうわさの的となっているのは、ケリー・ブラウン選手(ラベンダー・ブラウンのいとこの可能性あり)、ジム・ハミルトン選手(ハグリッドによく似ている)、スチュアート・ホッグ選手(説明無用)などです。

  • 42121/11/15(月) 23:51:18

    【ボーバトン魔法アカデミー】

    ボーバトン魔法アカデミーは、若い魔法使いたちのための学校だ。
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    ボーバトン魔法アカデミーは、ピレネー山脈のどこかにあると考えられています。山がちな風景の中に魔法で作り出された幾何学式庭園と、その中にたたずむ城の息をのむほどの美しさは、訪れた人々の語り草となっています。ボーバトンの生徒の多くはフランス人ですが、スペイン、ポルトガル、オランダ、ルクセンブルク、ベルギーといった国々からも、たくさんの生徒が集まっています(ボーバトンもダームストラングも、ホグワーツより多数の生徒を抱えています)。若き日のニコラス・フラメルとペレネレ夫人がボーバトンで出会ったことから、この誉れ高い学校の美しい城と庭を造るのに使われた資金の一部は、錬金術師が生成した金であったといわれています。学校の広場の中央にある美しい噴水には癒やしと美をもたらす力があると信じられていますが、この噴水にもフラメル夫妻にちなんだ名前が付けられています。ボーバトンとホグワーツは常に友好的な関係を保ってきましたが、国際的な試合の場では健全なライバル関係にあり、そうした場のひとつである三大魔法学校対抗試合では、ボーバトンが 62 勝、ホグワーツが 63 勝を収めています。フラメル夫妻以外のボーバトン出身の著名人としては、トレフルピック公ヴァンサン(みずからの首に隠蔽の呪文をかけ、すでに首が切り落とされたふりをして恐怖政治の時代をやり過ごした)や、リュック・ミルフィーユ(マグルに害毒をもたらした菓子職人として悪名高い)、そして、世界的に知られる「ホグワーツの戦い」に参加し、フランスとイギリス両国の魔法省からその勇気を称える勲章を授与された、フラー・デラクールといった面々がいます。校長のオリンペ・マクシームは(本人は否定しているものの)巨人の血を引いており、優雅で才気にあふれた、まぎれもなく立派な人物です。

  • 43121/11/15(月) 23:52:01

    【ダームストラング】01

    ダームストラングは、若い魔法使いたちのための学校だ。ダームストラングにはよくない噂があり、闇の魔術に特に力を入れていることで知られている。

    J.K. ローリングからの新着コンテンツ

    ダームストラングはかつて、全世界に 11 校ある魔法学校の中で最も悪い評判を呼んだ学校でした。とはいえ、それは必ずしも正しい評価とはいえません。ただ、真に偉大な魔女や魔法使いたちを数多く輩出してきたダームストラングが、いかがわしい忠義心や非道な目的を持った魔法使いの監督下に入ってしまったことが過去に 2 度あること、そして、悪名高い元生徒が 1 人いることは事実です。こうした好ましくない人物のひとりがハーファング・ムンターという男で、ダームストラングの創立者であるブルガリアの偉大な魔女、ネリダ・ブルチャノバの謎めいた死の直後に、同校を支配下に置きました。ムンターはダームストラングを決闘やさまざまな戦闘魔術で定評のある学校にし、その要素は今日の同校のカリキュラムにも色濃く残っています。ダームストラングの歴史上 2 度目の暗黒期は、イゴール・カルカロフが校長の座に就いたときに訪れました。逃亡生活を終えて戻ってきたヴォルデモート卿の報復を恐れて逃げ出した元死喰い人のカルカロフは、生徒が互いに恐怖を与えたり脅迫したりするのをよしとする不道徳で尊大な男だったので、彼が校長を務めている間に、多くの保護者が子どもたちをダームストラングに通わせるのをやめてしまいました。そして、かつての生徒の中で誰よりもダームストラングの評判に傷をつけたのが、20 世紀において最も危険な魔法使いのひとり、ゲラート・グリンデルバルドです。

  • 44121/11/15(月) 23:52:17

    02

    けれども、近年のダームストラングは再生を果たし、クィディッチのスター選手、ビクトール・クラムのような国際的に有名な人物を生み出しています。ヨーロッパのかなり北にあると考えられているダームストラングですが、所在地については全魔法学校の中でも特に慎重に秘密にしているため、どこにあるのかはっきり知る人はいません。訪問者はそこまでどうやってたどり着いたか思い出せないよう、忘却術をかけられることに同意しなくてはならないのです。ダームストラングを訪れたことがある人の証言によれば、広大な敷地からは数々の美しい景色が見られるといいます。また、学校の裏手の山にある湖には大きく黒々とした幽霊のような船が停泊し、夏にはそこから生徒たちが飛び込みをするといわれています。

  • 45121/11/15(月) 23:52:40

    【日刊予言者新聞】01

    「日刊予言者新聞」は魔法界の日刊新聞。ふくろう便での配達料は 5 クヌート。

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    「ザ・クィブラー」のように発行部数の少ないものを除けば、魔法界の新聞はイギリスに 1 つしかありません。ダイアゴン横丁に本社をかまえる「日刊予言者新聞」は、毎日ふくろうが配達し、イギリスに住む魔法使い家庭のほぼすべてが購読しています。購読料は、新聞を配達してくれるふくろうの脚に結びつけられた小さな袋に入れて支払うシステムで、まれに(たとえば、フォード・アングリアがイギリス上空を違法に縦断飛行したなど、特に耳目を集める事件や胸躍る出来事があった場合など)、「夕刊予言者新聞」が発行されることもあります。

    「日刊予言者新聞」は完全に公正中立な報道機関とはいえず、花形記者のリータ・スキーターに象徴されるような、扇情主義的な傾向を見せることもあります。また、不偏不党といってもあくまで建て前にすぎないので、魔法省(または時の権力者)の圧力で記事を差し止められたことも一度ではありません。この報道機関が何をいちばん大切にしているかは、「日刊予言者新聞」というその名前に、「利益(profit)」と同じ発音の「予言者(prophet)」という言葉が含まれていることからも推し量れそうです(もっとも、「未来のニュースを予知するとうたう魔法使いの新聞」というアイデアを、私がとても気に入った、というのも事実ですが)。

    魔法族には、報道に多様な政治色を求めない傾向があります(とはいえ、「日刊予言者新聞」に政治的主張がまったくないというわけではありませんが)。普通の人間とは異なる、とかく迫害されがちな少数の異端者の集まりである魔法使いの社会では、概して、誰もが同じようなことに関心を抱きます。具体的には、誰かが国際機密保持法に違反して面倒なことになっていないかとか、マグル製品不正使用取締局が今度は何を規制の対象にし、市民のいら立ちを募らせようと思いついたかとか。それから、クィディッチ・リーグの試合結果、セレスティナ・ワーベックや「妖女シスターズ」の次のコンサートの開催日…市民の関心は、そういった話題に集中するのです。

  • 46121/11/15(月) 23:53:00

    02

    マグルの世界ではインターネットの利用が増え続けているのに対し、魔法使いたちは、今後も紙に印刷された昔ながらの新聞を読み続けるようです。マグルの新聞にも「動く写真」が載っていれば、発行部数を伸ばすことができるかもしれませんね。

  • 47121/11/15(月) 23:53:16

    【湖】

    J.K. ローリングからの新着コンテンツ

    ホグワーツの校庭は、マグルの居住地区では生息が難しい魔法生物の自然保護区でもあります。

    ホグワーツの湖は、マグルの博物学者なら喜びのあまり卒倒しかねないような生物であふれていて(もっとも、恐怖が先に立たなければの話ですが)、グリンデロー(どう猛な小型の水魔)や水中人(たくましいスコットランド系)、それに大イカもいます。この大イカはほとんどペット同然で、天気のいい日には浅瀬に日向ぼっこしにやってきて、生徒たちに足をくすぐらせるほどです。

    大イカは実際に存在しますが、とても謎めいた生物です。その巨大な死骸はこれまで世界中のあちこちに打ち上げられてきましたが、生きた大イカの姿が初めてマグルの映像に収められたのは、2006 年のことです。大イカはきっと、魔法の力を持っているに違いありません。

    J.K. ローリングの言葉

    ホグワーツの湖は、『炎のゴブレット』の中で代表選手たちが挑む第 2 の課題の舞台です(この課題は私のお気に入りでもあります)。不気味な雰囲気と、代表選手たちが水中で呼吸するために様々な手段を選ぶことも、それまでに描いてこなかった場所について詳しく説明することを楽しめました。『秘密の部屋』の初稿では、ハリーとロンがウィーズリーおじさんのフォード・アングリアで不時着する場所はホグワーツの湖でした。その時は、湖が別の場所につながっているのではないかと考えていて、水中人たちは物語の中でより大きな役割を果たす予定でしたので、ハリーにはこの段階で湖と水中人に遭遇してもらいたかったのです。しかし最終的には「暴れ柳」がより面白く、物語の流れに沿った着地地点となり、『アズカバンの囚人』で重要な役割を果たしました。湖(スコットランドに多くみられる、陸封の淡水湖のようです)が、他の海や川につながっているという描写は結局物語には登場しませんでした。しかし、『炎のゴブレット』ではダームストラングの船が湖底から現れましたので、魔法使いの船に乗れば他の水路に魔法を使って移動できる可能性はあります。

  • 48121/11/15(月) 23:53:34

    【ペンシーブ】01

    「憂いの篩」は、記憶を保管したり、見直したりするのに使われる道具。

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    「憂いの篩」(ペンシーブ)は金属や石でできた大きな浅い皿です。精巧な装飾を施されたものや、宝石がちりばめられたものが多く、強力で複雑な魔力を持っています。「憂いの篩」にお目にかかることはめったにありません。これを使用するのはとびきり熟練した魔法使いだけで、ほとんどの魔法使いはそうすることを恐れているからです。

    「憂いの篩」が危険視されるのは、それが記憶や思考を支配する力を秘めていることに関わりがあります。「憂いの篩」には、記憶を追体験できるようにするため、潜在意識の中にあるその記憶の細部をひとつ残らず読み取り、忠実に再現する魔法がかけられています。それにより、持ち主やそれ以外の人間が、その記憶に入り込み、その中で動き回れるようになっているのです。隠し事がある人や、過去を恥じている人、秘密主義者やプライバシーを重んじる人々が「憂いの篩」のような品に警戒心を持つのは当然ですね。

    記憶の再現よりさらに難易度が高いのは「憂いの篩」を使った思考の整理です。これができる魔法使いはごく限られています。アルバス・ダンブルドアは『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』の第 30 章で、ホグワーツの「憂いの篩」を用いてこれを行っています。彼が「憂いの篩」に「想い」を注ぐと、ハリーの顔がスネイプの顔に変化します。ダンブルドアは、スネイプとハリーの間に隠された因縁(スネイプがハリーの母親を愛していたこと、そして彼が今、非常に渋々ながら、彼女に義理立てしてハリーを守ろうとしていること)があることを、自らに思い出させようとしているのです。

  • 49121/11/15(月) 23:53:49

    02

    「憂いの篩」は非常に個人的な遺物だとみなされているため、杖同様、持ち主の魔法使いと一緒に葬られるしきたりになっています。「憂いの篩」の中に残された想いや記憶も、持ち主の特別な遺言がない限り、ともに埋葬されます。ただしホグワーツの「憂いの篩」は個人ではなく学校の所有物です。歴代の校長はそれを使用するだけでなく、自らの人生の経験を記憶の形で残しており、その記憶の数々はその時々の校長にとって非常に貴重な参考資料となっています。

    ホグワーツの「憂いの篩」は細かい彫刻が施された石の皿で、アングロサクソン・ルーンの飾り文字が刻まれています。これが学校の創設以前に作られた、太古の遺物である印です。ある(根拠のはっきりしない)言い伝えでは、この「憂いの篩」が地面に半ば埋もれているのを見つけた創設者たちが、正にその場所に学校を建てることを決めたと言われています。

    「ペンシーブ」という名前は深く物想いに沈む様子を表す「pensive」という言葉の同音異義語ですが、その中に「sieve」(※篩の意)という言葉を含めることによって、たくさんの想いや記憶から意味を見つけだすというこの遺物の機能をそれとなく明かしただじゃれでもあります。

  • 50121/11/15(月) 23:54:09

    【病気と障害】01

    J.K. ローリングからの新着コンテンツ

    病気と障害のことについては、ハリーの世界を創造するにあたって、早い段階からじっくりと考えました。たとえば、魔法使いは風邪をひくのだろうかとか、マグルを悩ませるような病気を治すことはできるのだろうかとか、障害を持った魔法使いはいるのだろうか、魔法の薬の効果には限界があるのだろうか、それとも何でも治すことができるのだろうか、といったことです。

    そういった疑問のいくつかは、この物語の核心に触れる部分でもあります。なぜなら、死は「ハリー・ポッター」のすべての巻に一貫したテーマであるからです。魔法で死者を生き返らせることはできない(「蘇りの石」を使っても、死者を完全に蘇らせることはできません)と決めると、他にも決めなければいけないことが出てきました。魔法使いはどういった場合に死ぬのか、どういう病気にかかり、どんな怪我を負うのか、そしてそういった病気や怪我のうち、治せるものは何なのか、といったことです。

  • 51121/11/15(月) 23:54:27

    02

    最終的に、大まかに言って「一般的な」性質のものであれば、魔法使いは治したり、なかったことにしたりできるけれども、「魔法的な」性質のものに対してはそれができない、とすることに決めました。つまり、マグルの身に起こることは何であれ、魔法使いの身にも起こるのですが、それらはすべて治すことができるのです。サソリに刺された場合も、マグルであれば死に至ることがありますが、魔法使いであれば難なく生き延びられます。その一方で、「毒触手草」にかまれた場合には、死ぬこともあるのです。同じように、どこかから落ちたり、殴り合いのけんかをしたりといった、魔法とは関係のない理由で骨が折れた場合は、魔法で治すことができますが、呪いや逆噴射の魔法の結果として骨折した場合には、重傷となったり、回復不能となったり、命に関わる状態になることもあるのです。これこそが、ギルデロイ・ロックハートが、自らかけた「忘却術」の犠牲となり、永遠の記憶喪失となってしまったり、気の毒なロングボトム夫妻が、魔法による拷問のせいで回復の見込みのない障害を負ってしまったり、マッド‐アイ・ムーディが、魔法使いの戦いの際に損なわれてしまった目と脚の代わりに、木の義足と魔法の目に頼らなくてはならなくなってしまったり、ルーナ・ラブグッドの母親のパンドラが、実験の最中にかけた魔法で失敗して死んでしまったり、ビル・ウィーズリーが、フェンリール・グレイバックに会ったあとで回復不能な傷を負ってしまった理由なのです。

    このように、魔法使いは、私たちが対処しなくてはならないインフルエンザやら、ありとあらゆる大怪我に対して有利となる、うらやむべき力を持っているようにも思えますが、私たちが決して直面することのない問題にも対処しなくてはなりません。マグルの世界には「悪魔の罠」や「尻尾爆発スクリュート」といった危険なものは存在しませんし、「機密保持法」があるため、「龍痘」(その名前が示すとおり、元々は「ペルー・バイパーツース種」と密接に関わる仕事をしていた魔法使いから感染させられるものでした)や「黒斑病」をうつす可能性のある者にマグルが接触することもないのです。

  • 52121/11/15(月) 23:54:40

    03

    リーマス・ルーピンの苦しみは、自分の病が HIV 感染のように偏見の付きまとう血液感染性のものであることを意識するところから生まれています。スネイプがルーピンのために調合する魔法薬は抗レトロウイルス薬に似たもので、病の本格的な症状が出るのを防ぎます。それでも、慢性疾患を管理するにあたってこの病に苦しむ人が耐えなくてはならない「疎外感」は、ルーピンの人格に大きな影響を及ぼしました。一方で、マッド‐アイ・ムーディは重大な障害をものともせず、最も手ごわい「闇祓い」として恐れられました。

  • 53121/11/15(月) 23:56:46

    う~む全部終わらなかったあと少し!続きは明日。

  • 54二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 00:14:31


    ルーピンの話泣ける

  • 55二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 00:57:09

    リーマスは生きて幸せになって欲しかったよなあ…
    トンクスも死んじゃったんだっけか

  • 56二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 00:58:15

    すいません、ポッターモアってなんですか?

  • 57121/11/16(火) 08:03:30

    >>56

    ざっくり言うと公式のファンサイトって所ですかね。

    寮診断や杖診断、通販等のコンテンツがあって、これらの書き下ろし裏設定もその一つでした。

    …が、数年前のサイトリニューアルの際に日本語ページが軒並み無くなってしまったのです(後日対応との記述はありましたが今も…)。今貼ってるのは当時コピーして控えておいた物ですね。

  • 58二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 08:05:13

    二次創作書いてる民としては凄く助かるわ
    今ある英語版を自分で翻訳してるけど合ってるかどうか不安になって使えない

  • 59121/11/16(火) 12:55:42

    おお…自分で翻訳とは脱帽です…
    因みにファンタスティックビーストシリーズ公開の際に記念で書き下ろされた
    「北アメリカの魔法界の歴史」
    「イルヴァーモーニー魔法魔術学校」
    「アメリカ合衆国魔法議会 (マクーザ)」
    の3本は唯一日本語版が公開されているのでリンクを貼り…たかったのですが見つからない…読んだ記憶はあるのに何故だ…
    一応控えてはあるのでページが見つからなければこちらも貼る予定です。

  • 60二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 14:25:25

    全く知らなかったハリポタ裏話が思わぬところで読めて感謝感激

  • 61121/11/16(火) 20:15:44

    ぼちぼち再開。一応今日で全部終わるはず…

  • 62121/11/16(火) 20:16:15

    【魔法省】01

    魔法大臣は魔法省のトップで、その国の魔法界の元首。
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    魔法省が正式に設立されたのは 1707 年で、初代魔法大臣にはユーリック・ガンプが任命されました。魔法大臣は民主的な選挙で選ばれますが、非常時には選挙を経ないで特定の個人に就任を求めることもありました(アルバス・ダンブルドアは何度も就任を求められましたが断り続けました)。魔法大臣の任期は定められていませんが、最低でも 7 年に 1 回、通常選挙を行わなければなりません。たいていの場合、魔法大臣の任期はマグルの大臣の任期よりもはるかに長くなります。魔法大臣に対する不平不満も多くありますが、一般的に言えば、魔法使いたちはマグルの世界ではあまり見られないほど魔法大臣を支持しています。その理由は、魔法界のことは魔法界できっちり管理しておかないとマグルに首を突っ込まれるのではないかという思いが魔法使いたちの間にあるからかもしれません。

    マグルの首相が魔法大臣の任命にかかわりを持つことはありません。魔法大臣の選挙は、魔法使いが自分たちだけで行うことです。イギリスの魔法界に関することはすべて魔法大臣の管轄で、魔法省における決定権も一手に握っています。魔法大臣がマグルの首相を緊急訪問する際は、ダウニング街 10 番地にあるマグルの首相の執務室にかけられているユーリック・ガンプ(初代魔法大臣)の肖像画が知らせることになっています。

    いまだかつてマグルの首相が魔法省を訪れたことはありません。元大臣ドゥガルド・マクフェイル(在任: 1858 - 1865)の言葉がその理由を端的に語っています。「マグルのお粗末な脳みそでは対処しきれん」。

  • 63121/11/16(火) 20:16:51

    02

    大臣 在任期間
    ユーリック・ガンプ 1707 – 1718
    ウィゼンガモット法廷の長であったガンプは、国際機密保持法の制約に戸惑う魔法界の秩序を保つという厄介な仕事に携わった。最も輝かしい功績は魔法執行部の創設。

    ダモクレス・ロウル 1718 – 1726
    マグルに対する「厳しい姿勢」を掲げて魔法大臣に選ばれたが、魔法使いの国際連盟から激しい非難を受けて退任に追い込まれた。

    パーセウス・パーキンソン 1726 - 1733
    マグルとの結婚を禁じる法律を制定しようとして完全に世論を読み違えた。反マグル思想にうんざりして平和を望んでいた魔法使いたちは、最初の選挙でパーキンソンを落選させた。

    エルドリッチ・ディゴリー 1733 - 1747
    人気の高い大臣で、闇祓い採用制度を確立した。在任中に死去(龍痘)。

    アルバート・ブート 1747 - 1752
    人はいいが無能。子鬼の反乱への対応を誤り辞任。

    バージル・フラック 1752 - 1752
    最短任期の大臣。小鬼と狼人間が手を組んだため2 か月で辞任。

    ヘスフェスタス・ゴア 1752 - 1770
    最初期の闇祓いの 1 人。魔法生物による数々の反乱を鎮圧したが、歴史学者たちは、彼が狼人間のリハビリ・プログラムの検討を拒んだことが、さらなる反乱を招いたと考えている。アズカバン監獄を改修、補強した。

    マクシミリアン・クラウディ 1770 - 1781
    9 人の子どもの父親であるカリスマ的な指導者。マグルへの攻撃を企てていた純血主義過激派グループを摘発した。在任中の謎の死は、数々の書籍や陰謀論の題材になっている。

  • 64121/11/16(火) 20:17:29

    03

    ポーテウス・ナッチブル 1781 - 1789
    1782 年、時のマグル首相ノース卿にひそかに呼ばれ、国王ジョージ 3 世の不安定な心を治せないか相談を受けた。「首相は魔法使いの存在を信じている」という噂が広まり、ノース卿は不信任決議により職を追われた。

    アンクチュオス・オズバート 1789 - 1798
    身分の高い金持ちの純血から多分に影響を受けていたというのがもっぱらの評価。

    アーテミシア・ラフキン 1798 - 1811
    初の女性魔法大臣。国際魔法協力部を設立し、熱心な招致活動により在任中にクィディッチ・ワールドカップをイギリスで開催した。

    グロガン・スタンプ 1811 - 1819
    とても人気のある魔法大臣であり、熱心なクィディッチファン(タッツヒル・トルネードーズ)。魔法省にゲーム・スポーツ部を設立したほか、長らく争いの種になっていた魔法動物や魔法生物に関する法律の制定にこぎつけた。

    ジョセフィナ・フリント 1819 - 1827
    在任中に不健全な反マグル思想を持っていたことが明らかになった。マグルの新技術を嫌い、電信のせいで杖の働きが悪くなると主張した。

    オッタリン・ギャンボル 1827 - 1835
    ずば抜けて先進的な大臣だったガンボルは、マグルの知力を調査する委員会を設立した。大英帝国の時代、マグルの知力は一部の魔法使いよりも秀でていると思われた。

    ラドルファス・レストレンジ 1835 - 1841
    神秘部を廃止しようとしたものの無視された反動主義者。体調不良により辞任したが、もっぱらの噂では仕事のストレスに耐えられなかったようだ。

    ホーテンシア・ミリファット 1841 - 1849
    在職中に最も多くの法律を制定した大臣。ほとんどは有益な法律だったが、中にはつまらないものもあり(帽子のとんがり具合に関する法律など)、結果的に彼女の政治生命を縮めることになった。

  • 65121/11/16(火) 20:18:10

    04

    エヴァンジェリン・オーピントン 1849 – 1855
    ビクトリア女王の良き友であったが、女王は生涯、彼女が魔女であることに気づかなかった。ましてや魔法大臣であることなど知る由もない。魔力で(違法に)クリミア戦争に介入したと考えられている。

    プリシラ・デュポン 1855 - 1858
    マグルの首相、パーマストン卿を理不尽なほどに毛嫌いし、さまざまなトラブル(首相のポケットのコインをカエルの卵に変えたりなど)を起こした末、辞任させられた。皮肉にも、パーマストンはその 2 日後に辞任に追い込まれた。

    ドゥガルド・マクフェイル 1858 - 1865
    争いを収めるプロ。マグル議会が大混乱に見舞われる中、魔法省はようやく平穏なときを迎えた。

    ファリス・“スパウトホール”・スペイヴィン 1865 - 1903
    最も長く務めた魔法大臣であり、ケンタウルスによる暗殺の企て(蹴り)を生き延びた最もしぶとい魔法大臣。「ケンタウルス、ゴースト、ドワーフがバーに入ってきた」という大臣のくだらないジョークのオチは、そのケンタウルスを歯ぎしりさせた。ビクトリア女王の葬儀に提督の帽子とスパッツで参列したため、ウィゼンガモット法廷からやんわりと退任を促された(退任時、147 歳)。

    ヴェヌシア・クリッカリー 1903 - 1912
    闇祓い出身の 2 人目の大臣。有能で人柄も良かったが、ガーデニング中の不慮の事故(マンドレイク関連)で死去。

    アーチャー・エバモンド 1912 - 1923
    マグルの第一次世界大戦中に在任したエバモンドは、魔法使いが大戦にかかわることを禁じる有事立法を制定した。大規模な国際機密保持法違反を防ぐためだ。多くの魔法使いは彼に逆らい、できる範囲でマグルを援助した。

    ローカン・マクレアード 1923 - 1925
    才能豊かな魔法使いだったが、政治家には向かなかった。並外れて無口で、ほんのわずかの言葉と杖の先から吐き出される意味ありげな煙とでコミュニケーションを取ることを好んだ。彼の奇行に我慢ならない人々によって職を追われた。

  • 66121/11/16(火) 20:18:47

    05

    ヘクター・フォーリー 1925 - 1939
    一見してわかるマクレアードとの違いが、彼が選出された理由であることは間違いない。快活で自信あふれるフォーリーは、魔法界に対するゲラート・グリンデルバルドの脅威を真剣に受け止めなかった。その代償として職を失うことに。

    レナード・スペンサー=ムーン 1939 - 1948
    魔法省事故惨事部のお茶くみから叩き上げで大臣まで上り詰めた、堅実な大臣。魔法界とマグルに大きな影響を及ぼした世界大戦期に大臣を務めた。ウィンストン・チャーチルと仕事上の良好な関係を築いた。

    ウィルヘルミナ・タフト 1948 - 1959
    待望の平和と繁栄の時代に大臣を務めた陽気な魔女。在任中に死去。アリホツィー味のキャンディーにアレルギーがあると気づいたときには手遅れだった。

    イグナティウス・タフト 1959 - 1962
    ウィルヘルミナの息子。母の知名度を利用して当選した強硬派。危険で問題視されていた吸魂鬼繁殖計画を発表し辞任に追い込まれた。

    ノビー・リーチ 1962 - 1968
    初のマグル生まれの魔法大臣。リーチの就任に保守派(純血)は仰天し、多くの純血が抗議のために政府の役職を辞した。イングランドが 1966 年のワールドカップで優勝したことについては、かかわりを一切否定している。謎の病に冒され辞任(陰謀論は多々あり)。

    ユージニア・ジェンキンス 1968 - 1975
    60 年代後半のスクイブ権利運動の時代に、純血たちによる暴動をうまく収めたが、すぐに 1 回目のヴォルデモート卿の襲撃に直面する。危機対応を誤ったとして辞任に追い込まれた。

    ハロルド・ミンチャム 1975 - 1980
    強硬派として見られ、アズカバン周辺のディメンター数を増強したが、とどまるところを知らないヴォルデモートの台頭を阻止できなかった。

    ミリセント・バグノール 1980 - 1990
    非常に有能な大臣。ハリー・ポッターがヴォルデモート卿の襲撃を生きのびた翌朝から夜にかけて国際機密保持法違反が多発したため、国際魔法使い連盟の問い合わせに対応しなければならなかった。見事に務めを果たしたバグノールは、今や悪名高いこの言葉を投げ、居合わせた全員から喝采を浴びた。「パーティを楽しむ権利を奪うことは許さぬ」。

  • 67121/11/16(火) 20:19:07

    06

    コーネリウス・ファッジ 1990 – 1996
    保守路線に固執しすぎた職業政治家。ヴォルデモート卿の脅威を否定し続け、ついには職を失った。

    ルーファス・スクリムジョール 1996 - 1997
    闇祓い出身の 3 人目の大臣。在任中にヴォルデモート卿に殺された。

    パイアス・シックネス 1997 - 1998
    在任中ずっと服従の呪文をかけられていて自分の行動について自覚がなかったため、ほとんどの公式記録からは除外されている。
    キングズリー・シャックルボルト 1998 - 現在
    ヴォルデモート卿の死後、死喰い人およびヴォルデモートの支持者の逮捕にあたった。当初は大臣代理として任命されたが、後に正式に大臣に選出された。

    * 1707 年以前は魔法評議会が最も長い間イギリスの魔法界を統治していました(ほかにも統治機関はありました)。1692 年の国際機密保持法施行により、魔法界は、世を忍ぶ魔法使いたちへの支援、調整、情報伝達を行うため、それまで以上に整然として組織的で複雑な統治機構を必要としました。このコンテンツに記載されているのは魔法大臣として名を連ねた魔法使いだけです。

  • 68121/11/16(火) 20:20:22

    【セストラル】

    J.K. ローリングからの新着コンテンツ

    こうもりのような翼を生やし、黒く、骸骨のような体をした馬のセストラルには不吉な迷信があります。その姿は、人の死を経験した者にしか見ることができないため、何世紀ものあいだ、その姿を見ることは縁起が悪いとされてきました。そのため、本当は穏やかでやさしい気質をしているにもかかわらず、セストラルは誤解され、長年狩猟の対象となり、ひどい扱いを受けてきました。本当は不吉な動物ではなく、(見た目は不気味だが)人間に危害を与えることもありません。それでも、いつも見た人に恐怖を与えてしまうのです。

    セストラルの姿が見えるということは、その人がそれまでに死を見たことがあり、死の意味を感情的に理解しているということを意味します。セストラルの存在する意味が正しく理解されるまで時間がかかったのも不思議ではありません。なぜなら、死を認識する時期は人によって大きく異なるからです。ハリー・ポッターは母親が自分の目の前で殺されてから何年ものあいだその姿を見ることができませんでした。その理由は、母親が殺されたとき、彼はまだ赤ん坊で、その意味を十分に理解することができなかったからです。セドリック・ディゴリーが死んだあとも、ハリーは死の本当の意味を理解するのに数週間かかりました。このときようやく、ホグズミード駅からホグワーツ城まで馬車を引くセストラルの姿が見えたのです。一方、幼いころに母親を亡くしているルーナ・ラブグッドは、霊感が強く直観的で、死後の世界を恐れていないため、早い段階でセストラルの姿を見ることができたのでした。

    怖い外見をしているものの、この肉食の馬は異次元への旅の象徴であり、自分を信頼してくれる人には誠実かつ忠実な態度できちんと恩返しをします。セストラルはフランスとイベリア半島の一部でも目撃されていますが、イギリス諸島とアイルランドが原産であり、馬を愛するケルト民族の血を引く魔法使いと関係があると見られています。セストラルと同種の生物は世界のほかの地域にも生息しています。

  • 69121/11/16(火) 20:20:47

    【命名予見者】

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    魔法使いの両親が子どもたちに付ける名前はさまざまです。まるでマグルかと思われるような名前(たとえば、ジェームズやハリー、ロナルドなど)を付ける両親もいれば、子どもの個性や運命をあらわすような独特な名前(たとえば、ゼノフィリウスやリーマス、アレクトなど)を付ける両親もいます。

    中には、一族の伝統に従って名前を付ける魔法使いもいます。たとえばブラック家などでは、子どもには星や星座の名前を付ける習わしがあります(非常に高い野心と自尊心を持つこの一族にはぴったりだと言う人も多くいます)。それ以外の魔法使いの家庭(ポッター家やウィーズリー家のような)では、単純に自分たちの好きな名前を選んで子どもに付けています。

    けれども、魔法界の一部の人々は、命名予見者に相談するという魔法使いの古代の慣習に従っています。命名予見者は(たいていの場合、高額な料金と引き換えに)子どもの未来を予言して、その子どもにふさわしい名前を提案します。

    この慣習は、今ではますます珍しいものとなっています。多くの両親は、息子や娘には自分の道を自分で見つけてほしいと思っており、才能や限界、最悪の場合には身の破滅といったことに関する兆しを早々と知らされるのを(当然のことながら)嫌がります。たいていの父親や母親は、命名予見者のところから帰る時にはひどく思い悩み、我が子の性格や未来に関する予見者の予言など聞かなければよかったと考えるのです。

  • 70121/11/16(火) 20:21:53

    【アズカバン】01

    孤島の要塞アズカバンは、北海にある魔法界の刑務所。魔法省の管轄で運営されている。

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    アズカバンは 15 世紀から存在しますが、当初は監獄などではありませんでした。北海に位置するその島には最初に砦が建てられたのですが、マグルの地図にも魔法界の地図にも載っておらず、魔法によって作られ、拡張された島だと考えられています。

    島の砦はもともと、ほぼ無名のエクリズディスという魔法使いの住みかでした。エクリズディスがとてつもない力を持った魔法使いであることは明らかですが、その国籍は不明、しかも狂人だったようで、闇の魔術の中でも最悪の魔術の使い手でした。海の真ん中に 1 人きりだったエクリズディスは、マグルの船乗りたちをおびき寄せては自分の楽しみのために拷問して殺していたようです。エクリズディスが死んで初めて島にかけられた「隠蔽の呪文」が解け、島や、そこにあった建物の存在が魔法省の知るところとなりました。足を踏み入れた調査隊は、帰還後、中で見たことを語ろうとしませんでした。島には吸魂鬼があふれていましたが、それは調査隊が目撃した中で最も恐ろしくないものでした。

    上層部の多くはアズカバンを邪悪な場所だと考え、破壊するべきだと主張しました。一方、建物に巣食う吸魂鬼から家を奪ったらどうなるかを心配した者もいました。すでに吸魂鬼は殺せないくらい強力になっていたため、彼らに適したすみかを奪ってひどい復讐をされることを恐れたのです。建物の壁という壁には不幸と苦痛が染み込んでいて、吸魂鬼がそれを手放すつもりはなさそうでした。建物の調査にあたった専門家たちは、闇の魔術で作られたアズカバンはそれを破壊しようとする者に自ら復讐する、と強く主張しました。その結果、砦は何年も放置され、吸魂鬼は増え続けました。

  • 71121/11/16(火) 20:22:32

    02

    国際機密保持法の施行後、魔法省は国内の町や村に散在する小規模な監獄にはセキュリティ上のリスクがあると考えるようになりました。魔法使いの囚人が脱獄しようとして、周辺地域に好ましくない形で騒音や臭気、光が発散されることがあるからです。そのため、ヘブリディーズ諸島のどこかの孤島に専用の監獄を建設すべきだということになり、ダモクレス・ロウルが魔法大臣に就任したときにはすでに計画が進められていました。

    ロウルは、世を忍ぶ生活を強いられていた魔法使いたちの不満や怒りに乗じて、反マグルを掲げて権力を握った権威主義者でした。もともとサディスティックな性格だったロウルは、就任後直ちに監獄の新設計画を中止させ、代わりにアズカバンを使うべきだと主張しました。吸魂鬼が住んでいることが好都合だというのです。吸魂鬼を看守として使えば、時間、トラブル、コストの削減につながるというのがその理由でした。

    吸魂鬼の専門家や、アズカバンのような闇の歴史を持つ建物の専門家など、多くの魔法使いが反対したにも関わらず、ロウルは計画を推し進め、間もなく何人かの囚人がアズカバンに収監されました。出所できた者はいません。アズカバンに入る前は正常だった囚人も、中に入るとすぐに気が狂い、危険人物になったのです。

    後任のパーセウス・パーキンソンも、ロウル同様、アズカバン賛成派でした。エルドリッチ・ディゴリーが魔法大臣に就任したときには、アズカバンはすでに 15 年間運用されていました。脱獄者もセキュリティ違反も依然としてゼロ。新しい監獄はうまく機能しているようでした。しかし、視察に訪れたディゴリーはそこで初めて監獄の実態を目にすることになります。アズカバンの囚人はほぼ全員気が狂っていて、絶望の内に死んだ囚人たちを埋葬するための墓地が作られていました。

    ロンドンに戻ったディゴリーは、委員会を立ち上げ、アズカバンの代替施設を、あるいは最低でも吸魂鬼を看守から外せないかを検討させました。専門家たちの説明によると、吸魂鬼が島から(ほぼ)出ないでいるのは、彼らの食料である魂が定期的に供給されているからとのことです。もし囚人がいなくなれば、吸魂鬼もアズカバンを離れてイギリス本島を目指す可能性が高いというのでした。

  • 72121/11/16(火) 20:23:11

    03

    この助言にもかかわらず、アズカバンで見たことに大きなショックを受けていたディゴリーは代替案の検討を強く求めました。ところが、委員会が結論を出す前にディゴリーは龍痘を患い死んでしまいます。それ以来、キングズリー・シャックルボルトが登場するまで、アズカバンの閉鎖を真剣に検討した大臣はいませんでした。大臣たちはアズカバンの非人道的環境に目をつぶり、魔法による施設拡張を認め、大量の吸魂鬼による恐ろしい悪影響があるとして訪問者を大幅に制限させました。彼らのほとんどは脱獄者ゼロという完璧な実績により、自らの態度を正当化したのです。

    3 世紀近く経って、その完璧な実績にほころびが出ました。ある若者が、面会にきた母親と入れ替わり、脱獄に成功したのです。それは、目が見えず、愛というものを知らない吸魂鬼にとって予知することも感知することもできない方法でした。続いてもう 1 人がさらに見事で巧みな方法で脱獄しました。シリウス・ブラックが独力で吸魂鬼から逃れることに成功したのです。

    アズカバンの脆弱性は、その後数年間に発生した死喰い人による 2 件の大量脱獄事件で十二分に証明されます。その頃になると吸魂鬼はヴォルデモート卿に忠誠を誓っていました。それまで味わったことのない自由を与えると、ヴォルデモート卿が約束したためです。アルバス・ダンブルドアは吸魂鬼を看守として使うことに長いこと反対してきましたが、その理由は、囚人に対する非人道的な扱いだけでなく、吸魂鬼の忠誠が移ろうことを予見していたためでもあります。

    キングズリー・シャックルボルトの下で吸魂鬼はアズカバンから一掃されました。アズカバンは引き続き監獄として利用されていますが、現在の看守は本土から交代で派遣される闇祓いです。この新制度の導入以降、脱獄は起きていません。

  • 73121/11/16(火) 20:24:52

    【コークワース】

    コークワースはイギリスのとある町で、スピナーズ・エンドという袋小路がある。

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    コークワースはイギリス中部にある架空の町で、ハリーがおじさん、おばさん、そしていとこのダドリーと一泊したレールヴューホテルもここにあります。コークワースという名前にしたのは、工業都市であることを暗示し、また、重労働と煤の汚れを読者にイメージしてもらうためです。

    どの巻にもはっきりとは書いてありませんが、コークワースはペチュニアとリリーのエバンズ姉妹、それにセブルス・スネイプが生まれ育った町です。ペチュニアおばさんとバーノンおじさんがホグワーツから送られてくる手紙に閉口し、逃げてきたのがこの町でした。おそらくバーノンおじさんには、コークワースのような、どこからどう見ても魔法とは縁がないような場所までは、手紙も追いかけてこないだろうと高をくくっていたのでしょう。でも、それは間違いでした。なんと言っても、ペチュニアの妹リリーが魔女としての才能を開花させたのは、ここコークワースなのですから。

    『ハリー・ポッターと謎のプリンス』の冒頭で、ベラトリックスとナルシッサがやってくるのがこのコークワースです。2 人は親が遺した古い家に住んでいるスネイプを訪ねてきたのです。コークワースには川が 1 本流れており、かつて大きな工場が 1 つはあったことを示す巨大な煙突がそびえています。狭い路地がいくつも入り組み、労働者の住まいがひしめいている町です。

  • 74121/11/16(火) 20:25:43

    【大鍋】

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    大鍋は火の上に吊るして使う、調理用の大きな金属鍋のことで、昔はマグルも魔法使いも使っていました。けれどもやがて、魔法を使う人々にもそうでない人々にもコンロが普及すると、シチュー鍋のほうが便利になり、大鍋は魔法薬を調合する魔法使いや魔女たちの専売特許となったのでした。魔法薬をつくるには裸火が欠かせず、そのためには大鍋がいちばん使い勝手がよかったのです。

    大鍋はたいてい白目か鉄でできているため、持ち運びができるように目方を軽くする魔法がかけられています。今では折り畳み式で自動かきまぜ機能までついた大鍋がいろいろと出ていますし、エキスパートや見栄っ張り向けでしょうか、貴金属でできた大鍋も手に入るようになりました。

    J.K. ローリングの言葉

    何世紀ものあいだ、大鍋は魔法を連想させるものでした。何百年も前から魔女を描いた絵にはつきものですし、レプラコーンが財宝を隠している場所には当然あって然るべきものと、いまだに考えられています。特殊な力を秘めた大鍋の出てくる民話や妖精物語は山ほどありますが、「ハリー・ポッター」シリーズに登場する大鍋はごくありふれた道具にすぎません。実を言うと、ヘルガ・ハッフルパフの「秘宝」を大鍋にしようかとも考えたのですが、そんなふうに大きくて重たい分霊箱を持ち歩かせるのは、少々滑稽だし、不釣り合いの感が否めませんでした。ハリーが見つけなければならないものは、もっと小型で持ち運びやすいものにしたかったのです。とはいえ、大鍋は「アイルランド四種の神器」の一つにも数えられていますし、「ブリテン島 13 の財宝」にも入っています(前者はその鍋で食欲を満たせなかった者はいないという魔法の鍋で、後者は巨人ディルヌウィンの大鍋と呼ばれる、勇者の食べる肉はすぐ煮えても臆病者の肉は煮えないと言われる鍋です)。

  • 75121/11/16(火) 20:26:39

    【魔法薬】01

    J.K. ローリングからの新着コンテンツ

    レシピと必要な材料さえそろっていれば、マグルも魔法薬を調合できるでしょうか? よく尋ねられる質問ですが、残念ながら答えはノーです。魔法薬をつくるには、必ず杖を使わなければならないからです(たんに火にかけた鍋のなかに蝿の死骸やアスフォデルを投げ入れるだけでは、酷い味のスープができあがるだけでしょう。そんなものを飲めば体を壊すことは言うまでもありません)。

    魔法薬には呪文と同じ効き目を持つものもありますが、ポリジュース薬やフェリックス・フェリシスのように、ほかの方法では同じ効果を得られないものもあります。魔法使いにしろ魔女にしろ、同じ効果が得られるなら、自分にとっていちばん簡単な方法か、またはいちばん満足のいく方法を好むのが一般的です。

    魔法薬はせっかちな人たちには向きませんが、その効果は普通、作り手とは別の、経験豊かな調合者でなければ打ち消すのが難しいとされています。魔法薬は数ある魔法の系統のなかでも特に奥が深いので、それだけステータスがあります。また、危険性の高い物質を扱うことから、どこか暗い印象がつきまとうことも否めません。魔法薬のエキスパートと聞いて魔法使いたちが思い浮かべるのは、陰気で、何事に対しても熱くなることがない人物像です。実際、スネイプなどはまさにこのイメージ通りのキャラクターと言えるでしょう。

  • 76121/11/16(火) 20:27:03

    02

    J.K. ローリングの言葉

    学生時代の私にとって化学は大の苦手科目で、そちらの方面には早々と見切りをつけました。ですから、ハリーの宿敵セブルス・スネイプの担当教科を決めるにあたって、それが魔法使いの世界で化学に相当する教科でなければならなかったのは、いわば必然なのです。それだけに、生徒たちを前にしたスネイプの自己紹介(「我輩が教えるのは、名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえふたをする方法である…」というくだり)がとても感動的に思えたのは、なんとも不思議な話です。どうやら私のなかの一部が、スネイプに負けないくらい魔法薬というものに興味を持ってしまったようです。実際、本に登場させる魔法薬を創造し、それらの材料を調べる作業は、煩わしいどころか、楽しくて仕方がありませんでした。ハリーがスネイプに言われてつくるさまざまな水薬や液体の材料の多くは実在しますし(あるいは、実在すると信じられていました)、私が本に書いた特徴を実際にそなえています(あるいは、そなえていると信じられていました)。たとえば、ハナハッカには本当に治癒効果がありますし(いわゆる抗炎症作用があるのですが、それを確かめるために自分を「バラけ」させることはお勧めしません)、ベゾアール石というのは本当に動物のはらわたから採れる塊で、それを沈めた水には解毒作用があると信じられていたのです。

  • 77121/11/16(火) 20:28:12

    【吸血鬼】

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    「闇の魔術に対する防衛術」の授業で、ハリーたちが吸血鬼を研究する場面があるのを見てもわかるとおり、『ハリー・ポッター』の世界にも吸血鬼は存在していますが、物語上ではあまり重要な役割を果たしていません。吸血鬼にまつわる神話はあまりにも豊富で、文学や映画の題材としても、たびたび取り上げられているので、私としては自分がここに新たに付け足せることはほとんどないと感じてしまったのです。いずれにしても、吸血鬼は東欧の伝説であり、私はハリーの敵役を創造するとき、総じて英国の神話や伝承からヒントを得るよう心がけていました。ですから、たまたま会話に出てきたものを除くと、ハリーが小説の中で出会う吸血鬼は、『謎のプリンス』のパーティの場面でどことなくコミカルな姿を見せるサングィニただ 1 人となります。

    しかし最も古い時期の創作ノートを見ると、ホグワーツの最初の職員リストには「トロカー」という名前の、私も忘れていた教科を割り当てられていない吸血鬼の教師がいました。トロカーとは先が鋭くとがった導管のことで、動脈や、体の空洞になっている部分に差し込んで、体液を抜き取るのに使われます。吸血鬼の名前としては悪くありませんよね。でも私は登場人物として彼をあまり重視していなかったようで、彼はかなり早い段階で創作ノートから姿を消してしまいました。

    読者の皆さんの間では、スネイプは吸血鬼かも知れないといううわさが以前から根強くささやかれています。確かに彼は不健康なほど顔色が青白く、長く黒いマントをまとった姿が巨大なコウモリを思わせるという描写もありますが、実際にコウモリに変身することはありませんし、日中に城の外で彼を見かけることもあります。ホグワーツで首に刺し傷のある遺体が見つかったこともありません。要するに、スネイプはトロカーの改良版ではないということです。

  • 78121/11/16(火) 20:29:20

    【亡者】01

    J.K. ローリングからの新着コンテンツ

    「亡者」は、闇の魔法使いの呪いで蘇った生けるしかばねです。忌まわしい操り人形のような存在で、呪いをかけた主である闇の魔法使いは、彼らを使い捨てのしもべとして利用することもできます。亡者たちの目は白く濁っているので、目を見れば生きた人間と確実に見分けることができます。

    人間の死体を動かす呪文は、命を持たない物体を飛ばしたりする呪文と比べて、ずっと複雑です。亡者たちは呪いによってさまざまな働きをし、むやみに近づくものを死に至らしめたり、誰彼かまわず命を奪ったり、主人に代わって危険な仕事を請け負ったりもします。意志を持たず、自ら考えることもできず、不測の事態が起きても対応できない亡者たちが万能でないことは明らかです。とはいえ、彼らは自分の身の危険を顧みないため、戦い手や番人としては多くの使い道があるのです。

    『ハリー・ポッターと謎のプリンス』でハリーとダンブルドアが湖の底に見る亡者たちは、ほとんどが生前ホームレスだったマグルたちです。彼らはヴォルデモートが初めて世界を支配した時代に、わざわざ亡者にする目的で闇の帝王に殺されました。ただし、なかには唐突に「姿を消した」魔法使いや魔女たちの亡きがらも含まれています。

    闇の魔法で不滅の体を与えられた亡者たちと戦うとき、有効な武器は炎だけです。これは、死者の肉体を燃えなくする呪文が発見されていないためで、それゆえ亡者を操る魔法使いは、彼らが炎を避けるよう呪文で指示して対策を講じています。

  • 79121/11/16(火) 20:29:45

    02

    J.K. ローリングの言葉

    亡者には、ゾンビと似たところがたくさんあります。『ハリー・ポッター』の世界では亡者とゾンビは別の生き物ということになっていますが、分霊箱のロケットを守るものたちを「ゾンビ」と呼びたくなかったのには、ちゃんと理由があるのです。まず、ゾンビはイギリスの伝承には登場せず、ハイチやアフリカの一部に伝わる神話と関わりがあります。ホグワーツの生徒たちもゾンビについて学ぶでしょうが、ホグズミードにいるとは思わないでしょう。また、ヴードゥーの伝承に登場するゾンビは単なる動く死体にすぎませんが、関連のある別の言い伝えでは、魔術師がゾンビの魂(あるいはその一部)を利用し、自らの意志を保つ、とされています。これは私が描く分霊箱のエピソードと矛盾しますし、ヴォルデモートが亡者たちに分霊箱の番人以上の役割を負わせているかのようににおわせるのは不本意でした。それに、ゾンビはこの半世紀、あまりに多くの映画で本来とは異なった解釈で描かれてきたため、私には必要のない連想につながる要素がたくさんありすぎるのです。私はマイケル・ジャクソンの「スリラー」が流行した世代の人間なので、ゾンビといわれるとどうしても、真っ赤なボンバージャケットを着たマイケル・ジャクソンが浮かんでしまいます。

    「亡者(Inferius)」という言葉は、ラテン語で「下」を意味する「Inferus」をもじったものですが、当然、生身の人間より「下等」な存在という意味も暗に含んでいます。また、複数形の「Inferi」にはあの世という意味があります。

  • 80121/11/16(火) 20:30:12

    【マーリン勲章】

    マーリン勲章は、魔法界に貢献する偉業を成し遂げた魔女と魔法使いに贈られる勲章です。勲一等、勲二等、勲三等の 3 等級があります。

    J.K. ローリングからの新着コンテンツ

    「O.M.」の略称でも知られるマーリン勲章を授与する機関は、魔法省より歴史が長く、現在は司法と立法をつかさどるウィゼンガモットです。マーリン勲章は美しい黄金のメダルで、勲一等は緑、二等は紫、三等は白のリボンにあしらったデザインになっています。

    この勲章は、生前、世界でいちばん有名だった魔法使いの名前を冠し、15 世紀に制定されました。伝説によれば、勲一等の緑のリボンは、マーリンがホグワーツ時代に所属した寮に由来するといわれます。

    勲一等は魔法に関連する「著しく勇敢または抜きんでた行為」に対して、勲二等は「類いまれなる功績または尽力」に対して、勲三等は「魔法界における知識の保蔵または芸能への貢献」に対して贈られます。

    誰もが欲しがる勲章にはありがちなことですが、特に高い等級のマーリン勲章は、どういうわけか魔法省に気に入られた人物にばかり授与される傾向にあるようです。アルバス・ダンブルドアが闇の魔法使いグリンデルバルドを倒した功績で勲一等を受章したときこそ異議を唱える者はありませんでしたが、魔法省大臣のコーネリウス・ファッジが自らに勲一等を授与したときは、世間の大半は彼が別段ほめるべきことを成し遂げたとは思っていなかったため、不満の声が多く聞かれました。シリウス・ブラックの祖父にあたるアークタルス・ブラックも、受章者としての資格が疑われる人物のひとりです。多くの魔女と魔法使いたちは、彼が勲一等マーリン勲章を受章したのは魔法省に多額の資金を貸し付けたからだと考えています。

  • 81121/11/16(火) 20:30:42

    【拡大呪文】

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    ホグワーツの学校用トランクは、魔法界のほとんどのかばん類と同じく、標準で容量を増加させる呪文、つまり拡大呪文がかけられた状態で支給されます。拡大呪文は、物の外側の大きさを変えずに内側の大きさを広げるだけでなく、中身を軽くします。

    拡大呪文(カペイシャス・エクストレミス!)は高度な呪文ですが、悪用される可能性があるため厳重に管理されています。理論上は、それぞれが十分に熟達していれば、100 人の魔法使いが同じトイレの個室内に住むこともできるわけで、国際機密保持法に違反するおそれがあるのは明らかです。そのため魔法省は厳しい規則を定め、拡大呪文の個人的使用を禁止し、魔法省の関係部門が個別に認可した業者が製品(学校トランクや家族用テントなど)を製造する場合にのみ使用を認めています。ウィーズリー氏とハーマイオニー・グレンジャーは 2 人とも違法に拡大呪文を使用し、それぞれフォード・アングリアと小さなハンドバッグの中の空間を広げました。現在、前者はホグワーツの禁じられた森で野生化していると思われ、また後者については史上最強の闇の魔法使いを撃退するのに重要な役割を果たしたとしてお咎めはありませんでした。

  • 82121/11/16(火) 20:31:52

    【錬金術】

    J.K. ローリングの言葉

    かつて錬金術(賢者の石の探求。賢者の石は卑金属を金に変え、持ち主に永遠の若さをもたらすとされていました)は実現可能だと考えられていました。しかしながら、錬金術の主目的は、その第一印象よりも複雑で、それほど物質に重きを置かないものだったのかもしれません。

    ひとつの解釈によると、錬金術士が残した「手順」とは精神の遍歴を象徴したもので、錬金術士を無知(卑金属)から悟り(金)へと導くものだそうです。錬金術士が携わっていた作業には何らかの神秘的要素があったようで、それが化学とは異なる点でした(錬金術が化学に基いていると同時に化学の先駆けでもあったことは疑いようがありません)。

    赤と白という色については錬金術の古文献で何度も言及されています。ある解釈によれば、赤と白は、卑金属と金のように、2 つの相反する人間性を表していて、互いに調和させる必要があるそうです。これに触発されて、ルビウス(赤)・ハグリッドとアルバス(白)・ダンブルドアという名前が生まれました。この 2 人の男性は、ともにハリーにとって非常に重要な存在であり、ハリーが求める理想の父親像の 2 つの面を表しているように思えました。前者は温かくて行動的で豪快、後者は優秀かつ知的でどこか超然としています。

    ホグワーツの図書館には錬金術の本がありましたし、また私の想像では、6 年生と 7 年生のとても優秀な生徒たちが錬金術を学ぶはずだったのですが、ハーマイオニーはどういう風の吹き回しか錬金術を学ぶ機会をみすみす逃しました。おそらくハーマイオニーは(それにハリーとロンも確実に)、賢者の石をもうひとつ作りたいどころか、二度と目にしないほうが幸せだと思っていたのでしょう。

  • 83121/11/16(火) 20:33:35

    【入寮の歓迎メッセージ】01

    グリフィンドール

    おめでとう! 僕は監督生のパーシー・ウィーズリー、グリフィンドール寮に心から歓迎するよ。グリフィンドールの紋章は百獣の王ライオン、寮の色は赤と金、談話室はグリフィンドール塔にある。

    端的に言うと、グリフィンドールこそホグワーツで最高の寮だ。ホグワーツで最も勇敢な生徒がここに集ってくるんだ。たとえば、アルバス・ダンブルドアとか! そう、史上最高の魔法使い、ダンブルドアもグリフィンドール生だったんだ! もしこれでピンとこないなら、何を言っていいかわからないよ。

    そんなに長くは引き留めないよ、だって僕がハリー・ポッターと彼の友人たちを部屋に連れて行くのに付いて来さえすれば、寮について必要なことはすべてわかるからね。ホグワーツでの時間を楽しんでくれよ。そもそも、楽しめないはずがないけどね。なんてったって、君は学校一の寮の一員になったんだ。

  • 84121/11/16(火) 20:34:05

    02

    スリザリン

    おめでとう!私は監督生のジェマ・ファーレイ、スリザリン寮に心から歓迎するわ。スリザリンの紋章は生物の中でも最も賢い蛇、寮の色はエメラルドグリーンと銀、談話室は地下牢の隠された入り口の奥よ。すぐに目にすると思うけど、談話室の窓はホグワーツ湖の水中に面しているわ。よく巨大イカが水を吐きながら通りすぎていくし、ときにはもっと面白い生物を見れるわ。神秘的な沈没船といった趣でみんな気に入ってるのよ。

    さて、スリザリンについて知っておくべきことがいくつかと、忘れるべきことがいくつかあります。

    まず、いくつかの誤解を解いておきましょう。もしかするとスリザリン寮に関する噂を聞いたことがあるかもしれないわね。たとえば、全員闇の魔術にのめり込んでいるとか、ひいおじいさんが有名な魔法使いでないと口をきいてもらえないとか、その手のやつよ。でも、ライバルの寮が言うことを信じればいいってものでもないでしょう。確かに、スリザリンが闇の魔法使いを出したことは否定しないけど、それは他の 3 つの寮だって同じこと。他の寮はそれを認めないだけなの。それに、伝統的に代々魔法使いの家系の生徒を多く取ってきたのも本当だけど、最近では片親がマグルという生徒も大勢いるのよ。

    他の 3 つの寮があまり触れたがらない、あまり知られていない事実を教えてあげる。マーリンはスリザリン生だったの。そう、かのマーリン、史上最も有名な魔法使いが! マーリンは知識のすべてをこの寮で学んだのよ! マーリンの足跡に続きたいと思わない?それとも、かの輝かしい元ハッフルパフ生、自動泡立ち布巾の発明家であるエグランティーヌ・パフェットのお古の机に座ったほうがマシかしら?

  • 85121/11/16(火) 20:34:30

    03

    やっぱりね。

    スリザリンが何でないかについてはこれで十分ね。スリザリンが何であるか、つまり学校の先端をいく素晴らしい寮だということについて話しましょう。私たちは常に勝利を目指している。なぜなら、スリザリンの名誉と伝統を重んじるから。

    それに、スリザリンは他の生徒から尊敬されているわ。確かに、闇の魔法にまつわる評判のせいで尊敬の中には恐怖が混じっていることは否めない。でも知ってる? ワルっぽい評判というのもときとして楽しいものよ。ありとあらゆる呪いの呪文を知っていると思わせるような態度を取れば、誰がスリザリン生の筆箱を盗もうなんて思うかしら?

    でも私たちは悪人ではないわ。私たちは紋章と同じ、蛇なの。洗練されていて、強くて、そして誤解されやすい。

    たとえば、スリザリンは仲間の面倒を見るけど、これはレイブンクローだったら考えられないことね。連中は信じられないようなガリ勉集団というだけでなく、自分の成績を良くするために互いを蹴落とすことで知られているわ。逆に、スリザリンでは皆兄弟よ。ホグワーツの廊下では不用心な生徒を驚かせるようなことも起きるけど、スリザリンが仲間なら安心して校内を歩き回れるわ。私たちからすれば、あなたが蛇になったということは、私たちの一員になったということ。つまりエリートの一員よ。

    だってサラザール・スリザリンが、彼の選ばれし生徒に何を求めていたか知ってる? 偉大なる者の種よ。あなたがこの寮に選ばれたのは、文字どおり偉大になる可能性があるから。もしかすると、談話室にいる生徒の中には、とても特別な運命があるようには思えない人がいるかもしれない。でも、それは心の中にしまっておくべきよ。組分け帽子がこの寮に入れたということは、何かしら偉大な部分があるということなんだから、それを忘れないように。

  • 86121/11/16(火) 20:35:11

    04

    偉大になる運命にない人たちといえば、グリフィンドールに触れていなかったわね。多くの人がスリザリンとグリフィンドールはコインの両面だって言うけど、私に言わせれば、グリフィンドールなんてスリザリンの後追いをしているだけよ。でもね、中にはサラザール・スリザリンとゴドリック・グリフィンドールは同じような生徒を大切にしたと言う人もいるから、もしかすると私たちは自分たちが思ってる以上に似ているのかもしれない。だからといって、グリフィンドールと慣れ合うわけじゃないわ。グリフィンドールは私たちをやっつけるのが好きなわけだし。もっとも、スリザリンのほうが少しだけグリフィンドールをやっつけるのが好きだけど。

    もういくつか知っておいたほうがいいことがあるわ。スリザリンのゴーストは「血みどろ男爵」よ。彼に気に入ってもらえれば、たまに誰かを脅かしてくれるかもしれないわ。でも血みどろになった理由は聞かないこと。聞かれるのが好きじゃないから。

    談話室に入る合言葉は 2 週間ごとに変わるわ。だから掲示板に気を配ること。他の寮の生徒を連れてきてはいけないし、合言葉を教えるのも禁止。談話室には、7 世紀以上も部外者が立ち入っていないのよ。

    まあ、こんなところかしら。私たちの部屋を気に入るはずよ。私たちが寝るのは、緑の絹の掛け布がついたアンティークの 4 本柱のベッド、ベッドカバーには銀色の糸で模様が入っている。有名なスリザリン生の冒険が描かれた中世のタペストリーが壁を覆い、天井からは銀のランタンが下がっている。きっとよく眠れるわ。夜、湖の水が窓に打ち寄せるのを聞いているととても落ち着くから。

  • 87121/11/16(火) 20:35:45

    05

    ハッフルパフ

    おめでとう! 僕は監督生のガブリエル・トゥルーマン、ハッフルパフ寮に心から歓迎するよ。ハッフルパフの紋章はアナグマ。普段はおとなしい生き物だから大したことないと思われがちだけど、いったん攻撃されると自分よりもずっと大きな動物、たとえばオオカミなんかを撃退することもあるんだ。寮の色は黄色と黒で、談話室は地下のキッチンと同じ廊下にある。

    では、ハッフルパフ寮についていくつか知っておいてもらいたいことを説明しよう。何よりも最初は、この寮に関する根強い誤解、つまりハッフルパフが一番賢くない寮だという話について。それは違う。ハッフルパフは確かに一番うぬぼれていない寮だけど、才能ある魔法使いを輩出してきた数でいったら他の寮と遜色ない。証拠が欲しい? グローガン・スタンプについて調べたらいい、歴代の魔法大臣でも最も有名な一人だ。彼もハッフルパフだった。大きな実績を残したアルテミシア・ラフキンとドゥガルド・マクフェイルの両大臣もそうだ。それに、魔法生物の世界的権威ニュート・スキャマンダーや、数字の 7 の魔法的な力を初めて発見した 13 世紀の数占い師ブリジット・ウェンロック、端から端まで魔法の村、ホグズミードを作ったウッドクロフトのヘンギストもいる。みんなハッフルパフさ。

    だからわかるだろ、ハッフルパフは実力ある優秀で勇敢な魔女や魔法使いを十分すぎるほど輩出してきたんだ。でもそのことを声高に言わないから、正当に評価されていないというわけ。レイブンクローは特に、傑出した人物は誰であろうと自分たちの寮から出たに決まってると思うみたいだ。3 年生のときにレイブンクローの監督生と決闘をしたときはえらい目にあったよ。彼は、ブリジット・ウェンロックはレイブンクロー出身であって、ハッフルパフではないと言い張ったんだ。本当なら 1 週間の罰則を受けるところだったけど、スプラウト先生が注意とココナッツ・アイス 1 箱で許してくれた。

  • 88121/11/16(火) 20:37:28

    06

    ハッフルパフの生徒は信頼できるし、人を裏切ったりしない。僕らは偉そうなことは何も言わないけど、もし誰かが立ち向かってきたら、どんな相手だろうと僕らは紋章のアナグマみたいに自分や友だち、家族を守る。僕らは誰の言いなりにもならないから。

    でもね、ハッフルパフがある 1 つの分野で劣っているというのは事実なんだ。それはハッフルパフが生み出した闇の魔法使いの数がこの学校のどの寮よりも少ないということ。もちろん、スリザリンはフェアプレイなんてどこ吹く風だし、いつだって努力よりもズルを選ぶ連中だから、彼らが悪人を大量生産したって驚かないだろうけど、あのグリフィンドール(僕らと一番仲のいい寮)でさえ怪しい人を何人か輩出しているんだ。

    他にもなにか知りたいことはあるかい? あ、そうだ、談話室の入り口は、キッチンがある廊下の右手隅に積み重ねてある大きな樽に隠されている。下から 2 番目、2 段目の真ん中にある樽を「ヘルガ・ハッフルパフ」のリズムで叩くとふたが開く。僕らの寮はホグワーツで唯一、侵入者撃退装置を備えているんだ。間違ったふたを叩いたり、間違ったリズムで叩いたりすると、不正な侵入者はお酢でびしょ濡れさ。

    他の寮が自分たちの安全対策を自慢するのを聞くだろうけど、ハッフルパフの談話室と寝室は 1,000 年以上もの間、部外者の目に触れていないんだ。アナグマと同じで、僕らは身を潜める方法を心得ている。そしてどうしたら身を守れるかも。

    樽を開けたら中に潜り込んでその先の通路を進んでいくと、そこは 4 つの寮の中でも一番居心地のいい談話室だ。談話室は丸くて素ぼくで天井が低いんだ。いつも太陽が照っているような感じがして、丸窓からは草やタンポポが風にそよぐのが見える。

  • 89121/11/16(火) 20:37:53

    07

    部屋中のあちこちに磨かれた銅が使われていて、植物もたくさんあって、天井から吊るされたり、窓枠に置かれたりしている。ハッフルパフの寮監は薬草学の教授のポモーナ・スプラウト先生で、彼女は談話室を飾るために最高に面白い植物を持ってくるんだ(踊ったり話したりするようなやつとか)。ハッフルパフが薬草学でいい成績が取れることが多い理由の 1 つだろうね。パンパンに詰め物が入ったソファと椅子は黄色と黒の布張りがしてあるし、寝室は談話室の壁にある丸いドアから行くようになっている。銅のランプが暖かな光を投げかける 4 本柱のベッドはみんなパッチワークのキルトで覆われている。それに、足が冷たいときのために、壁には銅のベッドウォーマーが吊るされている。

    寮のゴーストは一番親切なゴースト、「太った修道士」。見たらすぐにわかるよ、太っていて修道士のローブを着ているから。迷子になったり、困ったことがあったりしたときに助けてくれる。

    これであらかた説明したかな。あとは、君たちの中に優秀なクィディッチ選手がいるといいな。ハッフルパフはこのところクィディッチのトーナメントで僕が望んでいるほどの成績を残せていないんだ。

    夜は安心して眠れると思う。寝室は地下だから嵐や風から守られているし、塔にいる生徒たちが経験するような騒々しい夜というのはここではまったくないから。

    最後にもう一度。ホグワーツで一番親切で、慎み深くて、辛抱強い寮の一員になれておめでとう。

  • 90121/11/16(火) 20:38:34

    08

    ※ハッフルパフの談話室

    J.K. ローリングからの新着コンテンツ

    ハッフルパフの談話室へは、ホグワーツの厨房に続く廊下から入ることができます。厨房の入口になっている大きな静物画の前を通りすぎると、廊下の右手にある石造りのくぼみに、大きな樽が山積みになっているのが見えます。2 列目の真ん中にある下から 2 つ目の樽は、「ヘルガ・ハッフルパフ」と発音するのと同じリズムで叩くと開くようになっています*。ハッフルパフ生以外の生徒の侵入を防ぐセキュリティ対策として、間違った樽を叩いたり、叩く回数を間違えたりすると、別の樽の蓋が勢いよく開いて、侵入者は酢でずぶ濡れになります。

    樽の中は土の坂道になっていて、少し上っていくと、アナグマの巣を彷彿とさせる、天井の低い居心地のよさそうな円形の部屋が現れます。室内にはハチを思わせる明るい黄色と黒の内装が施されていて、ピカピカに磨かれたハチミツ色の木のテーブルが置かれています。丸い扉の先には男子寮と女子寮があり、木製のベッドにはパッチワークのキルトが掛けてあります。

    色とりどりの草花も、ハッフルパフの談話室の雰囲気に満足しているようです。壁の形に合わせて造られた丸い木の棚にはサボテンが並んでいて、近くを通る生徒に手を振ったり、ダンスを披露したりします。天井からぶら下がっている銅底の鉢植えは、シダの巻きひげやツタを伸ばして、下を通る生徒の髪を撫でます。

    木製の炉棚には踊るアナグマの模様がびっしり彫り込まれていて、その上に飾られた肖像画の中では、ホグワーツの 4 人の創設者の 1 人であるヘルガ・ハッフルパフが、取っ手が 2 つついた金色の小さなカップを掲げて、生徒たちに乾杯しています。城の 1 階の地面と同じ高さにある小さな丸窓からは、そよそよと揺れる芝生やタンポポの美しい風景が見え、ときどきそこを通る人の足が見えることもあります。この低い窓しかないにもかかわらず、ハッフルパフの談話室にはいつも太陽の光が降り注いでいるような明るさがあります。

  • 91121/11/16(火) 20:39:02

    09

    *談話室に入る方法が複雑かそうでないかによって、それぞれの寮の知性の評判が大体わかるといえるかもしれません。ハッフルパフの入口はいつも同じ位置にあり、決まったリズムで扉を叩く必要があります。スリザリンとグリフィンドールには、入室希望者を等しく試す入口があります。スリザリンの談話室の入口は隠されていて、見つけるのはとても困難なうえ、合言葉もそのときどきで変わります。グリフィンドールの談話室にも気まぐれな番人がいて、合言葉がころころ変わります。ホグワーツ一頭の切れる生徒たちの寮と評判のレイブンクローの談話室は、誰かが扉をノックするたびに、知性と哲学の能力を試す新しい問題が出題されます。

    とはいえ、ハッフルパフ生は愚鈍で間抜けだなどと結論づけるべきではありません。たしかに、ハッフルパフの生徒たちはときおり、そうした心ないからかいを受けてきました。しかし、過去数世紀の間には、ハッフルパフからも優れた頭脳を持つ逸材が出ています。こうした秀才たちは、我慢強さや強い勤勉意欲、忠誠心といった、ハッフルパフ生の伝統的な特徴において、特に優れていたのです。

    J.K. ローリングの言葉

    『ハリー・ポッター』シリーズの構想を練り始めた当初、私はハリーがホグワーツ在学中に 4 つの寮の談話室すべてを訪れるものと考えていました。ですが、ある時点で、ハリーがハッフルパフの談話室に入るもっともな理由は今後も出てきそうにないことに気づいたのです。それでも、他の 3 つの寮と同じくらい、私にとってはハッフルパフの寮も現実味を帯びたものでした。授業後にハッフルパフ生たちが厨房のほうへ向かうとき、彼らがどこに向かっているのか、私にはいつもはっきりとわかっていたのです。

  • 92121/11/16(火) 20:40:00

    10

    レイブンクロー

    おめでとう! 僕は監督生のロバート・ヒリアード、レイブンクロー寮に心から歓迎するよ。レイブンクローの紋章は何者も上れない高みに飛する鷲、寮の色は青とブロンズ、談話室はレイブンクロー塔のてっぺんにあって、魔法をかけられたノッカーの付いたドアを通って入るようになっているんだ。円形の談話室の壁にしつらえられたアーチ型の窓からは、学校の敷地を見下ろせる。湖、禁じられた森、クィディッチ競技場、それに薬草学の花畑も。他の寮からじゃ見られない絶景だよ。

    自慢するわけじゃないけど、レイブンクローは最も賢い魔法使いがいるところだ。創設者ロウェナ・レイブンクローは何よりも学びを尊んだし、それは僕たちも同じだ。他の寮はどこも談話室の入り口が隠されているけど、僕らはそんなことする必要はない。レイブンクローの談話室へのドアは螺旋階段を上った先の高い塔のてっぺんにあるんだ。ドアに取っ手はなく、代わりに鷲の形をした銅のノッカーが付いている。ドアをノックするとノッカーが質問をしてくるから、それに正しく答えられれば入れるようになっている。こんな単純な仕掛けで、レイブンクロー以外の人たちをもう 1,000 年近くも遠ざけてきたんだ。

    1 年生の中には鷲の質問に答えるのを怖がる生徒もいるけど、心配はいらないさ。レイブンクロー生は飲み込みが早いし、すぐにドアの難問を楽しめるようになるから。談話室の外に 20 人くらいの生徒が立ち止まっていて、みんなしてその日の問題を解こうとしている、なんてことも珍しくないよ。こういうのって他学年のレイブンクロー生と知り合ったり、彼らから学んだりするいい機会でもあるんだ。でも、クィディッチのローブを忘れて急いで出入りしないといけないときには、ちょっとうっとおしいけどね。だから、レイブンクロー塔を出るときにはバッグの中身を 3 回確認することをお勧めするよ。

  • 93121/11/16(火) 20:40:34

    11

    レイブンクローでもう一つ素晴らしいのは、みんな個性的だということ。中には変人と呼ぶ人もいるみたいだけど。でも天才というのは概して普通の人の範ちゅうからはみ出してしまうものだし、他のいくつかの寮と違って、ここでは好きなものを着て、好きなことを信じて、思ったことを話す権利があると考えてる。僕らは我が道を行く生徒を嫌ったりしない、むしろ評価しているんだ。

    変人といえば、君も寮監のフィリウス・フリットウィック先生を気に入るだろうな。先生は過小評価されているんだ、なんたってとても小さいからね(たぶん妖精の血が入っているのだと思うけど、そんな失礼なことを訊いたことはないよ)。でも呪文学に関しては、今生きている中では最も博識で最高の名人なんだ。先生の部屋はいつでも問題を抱えたレイブンクロー生を迎え入れてくれるし、もし君が本当に落ち込んでいたりしようものなら、机の引き出しに入っている缶から小さくておいしいカップケーキを取り出して、カップケーキのダンスを見せてくれるんだ。実際、ダンスを見るためだけに落ち込んだふりをして会いに行く価値はあるよ。

    レイブンクロー寮には輝かしい歴史がある。最も傑出した魔法発明家や革新者のほとんどはレイブンクロー寮の出身だ。望月鏡を発明したパーペチュア・ファンコートも、愛の妙薬の偉大な先駆者であるラヴァーナ・デ・モントモレンシーも、フルー・パウダーを発明したイグナチア・ワイルドスミスもね。レイブンクロー出身の有名な魔法大臣の一人に、ミリセント・バグノールドがいる。彼女はハリー・ポッターが闇の帝王の呪いを生き延びた晩に職責にあり、「パーティを楽しむ権利は不可侵である」という言葉でイギリス中の魔法使いが祝賀会を開くことを擁護したんだ。それに、ローカン・マクレアード大臣も。彼はとても聡明な魔法使いだったけど、杖の先から煙を吐き出す方法でコミュニケーションを取るのを好んだ。言ったよね、変人を輩出するって。だってレイブンクローは奇人ウリックを魔法界に送り出した寮でもあるんだ。クラゲを帽子にしていたウリックさ。魔法使いのジョークの多くが彼をオチに使っている。

  • 94121/11/16(火) 20:40:54

    12

    他の寮との関係について言えば、まあ、スリザリンについては色々と聞いているんじゃないかな。悪いやつばかりというわけじゃないけど、彼らをよく知るまでは油断しないほうがいい。彼らは勝つためには手段を選ばないという長い伝統を持っているから、気をつけて。特にクィディッチの試合と試験でね。

    グリフィンドールはまあまあ。欠点をあげるとすれば、目立ちたがり屋ということかな。自分たちと違うものに対する寛容さという意味では、僕らよりずっと劣る。浮遊術や、トロールの鼻くその魔法への応用、卵占い(知っていると思うけど、卵で占いができるんだ)なんかに興味があるレイブンクローの生徒を冗談のタネにしてきた。グリフィンドールには僕らのような知的好奇心がないんだ。一方僕らレイブンクローは、君が日毎夜毎談話室の隅で卵を割り続けて、黄身のこぼれ方が示す予測を書き留めていたって何の問題もない。それどころか、何人か君を手伝ってくれるんじゃないかな。

    ハッフルパフに関しては、彼らはいい人たちじゃない、なんて誰も言えないだろうね。むしろ、校内でもっともいい人たちに数えられると思う。ただ、試験期間中の競争ではハッフルパフをあまり気にしなくてもいい。

    大体これで全部かな。あ、そうだ。寮のゴーストは「灰色のレディ」だ。他の寮の生徒はレディは話さないと思っているけど、レイブンクローとだけは話してくれるんだ。レディは、道に迷ったときや物をどこに置いたかわからなくなったときにとても役立ってくれる。

    夜はよく眠れると思うよ。寝室は主塔から分岐した小塔にある。4 本柱のベッドはスカイブルーのケワタガモの羽布団で覆われ、窓辺でヒューヒューいう風の音がとても心地いいんだ。

    最後にもう一度。ホグワーツで最も賢くて、奇抜で、面白い寮の一員によくぞなってくれた。

  • 95121/11/16(火) 20:44:16

    【第427回 クィディッチ・ワールドカップレポート】01

    12 4月 2014
    悲惨な開会式、クィディッチ・ワールドカップの警備に疑問

    日刊予言者新聞クィディッチ特派員、ジニー・ポッター - パタゴニアの砂漠よりレポート。

    第 427 回クィディッチ・ワールドカップは、クアッフル 1 つ投げられることも、スニッチ 1 つ捕えられることもないうちから、既に論争の渦に巻き込まれている。混乱を収拾するため、魔法動物学者たちが砂漠に集結し、癒者たちはショックや骨折やかみ傷に見舞われた観客 300 人以上の手当にあたった。アルゼンチンの魔法評議会は、チームマスコットを主役とした開会式を行うという彼らの決断が、愚かで無謀なものだったのではないかという非難を受け、たじたじとなっている。

    開会式に先立ち、砂漠にはフィジーチームのダクワカ (サメとヒトの 2 つの姿を持つ、変身する生き物)の宿泊施設として、見事な観賞用の湖が造られていた。主催者側は、最初の週の試合に出場する他チームのマスコットが「多様性に満ちた魔法動物世界の大博覧会」と銘打たれたマスゲームに参加すると発表した。

    開会式は、湖の上でフォーメーションを組んで踊るコートジボワールの川の精霊たちとともに、穏やかに始まった。しかしフィジーとノルウェーのマスコットが解き放たれたとき、今回の惨事は幕を開けたのである。

    アルゼンチンの魔法評議会会長を務めるバレンティーナ・バスケスは、次のようにコメントしている。

    「私たちはフィジーのダクワカを迎える準備は整っていましたが、ノルウェー代表団の発表には不意をつかれました。彼らは湖を住処とする大蛇、セルマ のためにも湖にスペースを作ってほしいと言ったのです。私たちはノルウェー代表団がいつもどおりトロールの曲芸団を連れてくるものとばかり思っていました」

    「私たちが知る限り、ダクワカとセルマが共存可能かどうかについての研究が行われた例はありません。従って、魔法評議会は両者を近接した場所に置いた結果生じた不幸なできごとに対して責任を負うことはできません」

  • 96121/11/16(火) 20:45:08

    02

    日刊予言者新聞の独占取材に応じた主任顧問魔法動物学者のロルフ・スキャマンダーは、こう反論する。

    「ダクワカは温暖な海を住処とし、セルマは氷のように冷たい淡水の湖に暮らしている。前者は魚から人間に姿を変える生き物で、後者は人間の肉や魚をむさぼり食う蛇だ。両者を微温の汽水で満たされた狭い空間に詰め込んだら、たちまち流血の惨事が生じることくらい、ビリーウィグ並みの脳の持ち主でない限り見当がつくはずだ」

    この 2 種類の怪物たちが、巨大な水晶のシュートから魔法で造られた湖に放たれたときに起こったのは、正に流血の惨事だった。フィジーとノルウェーの調教師たちは、それぞれ自分たちのマスコットを大人しくさせようと、荒れ狂う水の中に飛び込んだ。だがブラジルのクルピラ (森に住む赤毛の小人たち。足が後ろ向きに付いていて、仲間の生き物が人間の脅威にさらされていると感じると、彼らを守る)が、その努力の大いなる妨げとなった。クルピラたちは、どうやら調教師たちがダクワカやセルマに危害を加えようとしていると思い込んだようで、彼らを攻撃した。

    スタジアムがパニックに陥り、人からも動物からも血が流れ放題となった段階で、ナイジェリアのササボンサム (細長い脚をした吸血動物)が理性を失ったのも、無理のないことだったかも知れない。彼らが観客の間に大混乱を引き起こしている間に、ハイチチームがマスコットとして「亡者」 を連れてきているといううわさが真実であったことも証明された。観客は、つまずいた者は誰であろうと捕まえてむさぼり食おうとする「亡者」がスタジアム内を縦横無尽に動き回る中、先を争って逃げ出そうとした。

  • 97121/11/16(火) 20:45:31

    03

    マスコットのサイズと性質に対する規制は、ICWQC の最上層部で長いこと論議の元となっていた。マスコットを""乳牛より小さな草食動物に限り、火を吐くものは禁ずる""という案は、1995 年に圧倒的多数により却下された。世界中のクィディッチサポーターは、自分たちがワールドカップの伝統であり、彩りであるとみなすものに対する干渉には、いかなるものであろうと反対してきた。

    だが多くの人々は、最も恐ろしげなマスコットを連れてこようとするチーム間の競争が、手に負えないレベルに達していると考えている。ノルウェーチームの監督であるアルヌルフ・モーは、セルマを連れてきた自らの判断を弁護し、セルマは「ノルウェーの選手たちの鋼の意志と猛々しさ」の象徴であり、先にかみついたのはダクワカだと主張した。

    トーナメント開幕の週末に向けて、記録的な数の観客が 10,000 個の移動キーを利用してパタゴニア砂漠のど真ん中に輸送された。アルゼンチンの魔法評議会は、その輸送に関する手配の隙のなさで多くの人々から賞賛を受けているが、試合開始のホイッスルが吹かれる前に記録的な数のけが人が出たことは、間違いなく主催者の恥となるだろう。

    トーナメントの皮切りとなるノルウェー対コートジボワール戦は、明日行われる。

  • 98121/11/16(火) 20:46:08

    04

    13 4月 2014
    ノルウェー対コートジボワール

    日刊予言者新聞クィディッチ特派員、ジニー・ポッター - パタゴニアの砂漠よりレポート。

    ノルウェー、コートジボワールに 340 – 100 で勝利

    今年の大会で有力候補に挙げられていたノルウェーとコートジボワールの戦いは、ノルウェーの圧勝に終わった。今回のコートジボワールは不調だったのか、いつも通りの他を圧倒する実力を出せなかったようだ。

    前回の両チームの対戦では、試合開始 5 日後にようやく決着がついたが、本日は 2 時間を過ぎたところで試合終了のホイッスルが鳴り響いた。

    観客から容赦ないブーイングを受けていた上に、昨日自国のマスコットが起こした騒動により多くの負傷者を抱えていたにもかかわらず、ノルウェー選手たちの態度と精神は素晴らしかった。警備の魔法使いたちが観客席に入り、ノルウェーの有名なチェイサー、ラーシュ・ルンデクヴァムに呪いをかけていた観客を突き止める騒動で、試合が 2 回も止められた。

    コートジボワールのチェイサー、若干 18 才のエロディー・デンベレが活躍し、チーム総ゴール数 10 回の内 7 回は彼が入れた。試合は、開始から 128 分後、ノルウェーのシーカー、シグリ・クリストファーセンが相手シーカーのシルヴィアン・ボワニに競り勝ちスニッチを獲得し決着がついた。

  • 99121/11/16(火) 20:46:52

    05

    14 5月 2014
    ナイジェリア対フィジー

    日刊予言者新聞クィディッチ特派員、ジニー・ポッター - パタゴニアの砂漠よりレポート。

    ナイジェリア、フィジーに 400 – 160 で勝利

    優勝候補のナイジェリアに 400 対 160 という手痛い敗北を喫したフィジーチームのシーカー、ジョセフ・スヌーカに批判が集中している。

    試合序盤、フィジーのビーター、ギンティア・ガラセとナリンダー・シンのプレーは、ナイジェリアのアリコ・オコイエとマーシー・オジュクのアグレッシブさには及ばなかった。フィジーのチェイサーたちはブラッジャーをぶつけられてかなりのダメージを被り、最初の 1 時間でナイジェリアが 40 回のゴールを決めたのに対し、フィジーのゴール数はわずか 1 回にとどまった。

    試合開始後 141 分、400 対 10 とナイジェリアに大きくリードを許すなか、フィジーシーカーのスヌーカが自らの選択でスニッチを捕まえると、解説者は驚き、フィジーサポーターは激怒し、ナイジェリアサポーターからはやじが飛んだ。負けを目前に得点差をできるだけ縮める目的で、自らスニッチを捕まえたシーカーは過去にも例がある(近年では、1994 年ワールドカップ決勝戦でのビクトール・クラムが有名だ)。とはいえ、スヌーカが空中でスニッチを捕まえたとき、ナイジェリアシーカーのサミュエル・エクイアーノとの距離はかなりあった。スヌーカはこれまでにもチームメイトからエゴイストと評されてきたが、今日の行動はその評価をますます裏打ちする形となってしまった。

    フィジーチームのマネージャー兼トレーナーのヘクター・ボロボロは、試合後に一言、「スヌーカの野郎、ぶっ殺してやる」とコメントした。

    ナイジェリアは、日本対ポーランド戦の勝者と対戦する。

  • 100121/11/16(火) 20:47:24

    06

    15 5月 2014
    ブラジル対ハイチ
    日刊予言者新聞クィディッチ特派員、ジニー・ポッター - パタゴニアの砂漠よりレポート。

    ブラジル対ハイチ戦のスコアは 100 – 90、スニッチの反則捕獲でハイチ失格

    ブラジル対ハイチ戦でクィディッチ最古のルールの反則があり、ハイチは本トーナメント初の失格処分となった。

    ハイチのキーパー、レネーレ・パライゾンは本トーナメントでわずか 3 名しかいない女性キーパーの 1 人だが、試合序盤、ブラジルチェイサーのディアス、アロンソ、フロレスから 30 回ものゴール攻勢を受け、代表選手としての力量を繰り返し証明する必要に迫られた。ブラジルのチェイサーたちがわずか 10 ゴールしか上げられなかったことが、パライゾンのすばやさと度胸を物語っている。最初の60分で、パライゾンは鼻を 2 度骨折。そのうち 1 度は、チームメイトのビーター、ジャン=バティスト・ブロンコートが誤ってブラッジャーをぶつけたためだ。

    一方、ピッチの逆サイドでは、ハイチチームのスター選手でチェイサーのクレアヴィウス・イポリトが活躍。チームが上げた 9 ゴールのうち 8 回をイポリトが決めている。開始後 4 時間でブラジルにわずかなリードを許していたものの、 観戦者の大半はハイチが優勢と見ていた。しかしここで、ブロンコートが再び痛恨のミス。ハイチのシーカー、シルヴィアン・ジョリキュールがスニッチをつかもうとした瞬間、ブロンコートが打ったブラッジャーが直撃して意識を喪失、スニッチはブロンコートのローブの袖に飛びこんだ。極めてまれだが、前例のある事故である。「スニッチを捕まえることができるのはシーカーのみであり、他の選手が捕まえた場合、没収試合となる」。これは、クィディッチをプレーする少年少女が必ずたたき込まれるルールだ。しかしこのときブロンコートはかなり動転していたようで、肌着の中に入り込んだスニッチを格闘のすえになんとか取り出すと、これでそれまでの失態の数々を帳消しにできるとでもいうように、得意満面に高々と掲げてみせた。この瞬間、ハイチチームの失格が決まった。

    ハイチのシーカー、ジョリキュールは順調に回復しているが、ビーターのブロンコートは現在、どこかに雲隠れ中だ。

    ブラジルは、ウェールズ対ドイツ戦の勝者と対戦する。

  • 101121/11/16(火) 20:48:57

    07

    16 5月 2014
    アメリカ対ジャマイカ
    日刊予言者新聞クィディッチ特派員、ジニー・ポッター - パタゴニアの砂漠よりレポート。

    アメリカ、ジャマイカに 240 – 230 で勝利するも、現在審査中

    パタゴニアの砂漠が、またもや物議を醸している。ジャマイカのキーパー、ケワンダ・ベイリーが、アメリカのチェイサー、クェンティン・コワルスキーによる 9 度目のゴール直前に箒から落ちて突然気を失ったことを受け、アメリカ対ジャマイカ戦の試合結果に審査が入った。

    審判がすばやく「動きよ、止まれ!」の呪文を使い、ベイリーが地面にたたきつけられるのを無事に阻止した直後、アメリカのシーカー、ダライアス・スマックハマーが相手シーカーのシャニース・ヒギンズに先んじてスニッチを捕獲。これにより、アメリカは僅差で勝利した。

    しかしベイリーの突然の失神のタイミングがあまりに出来すぎていたため、当局は観客による干渉の可能性を調査することを決定し、現在、スタジアム中の万眼鏡に記録された証拠の確認作業が進んでいる。国際魔法使い連盟クィディッチ委員会は、試合結果の正当性の判断は明日になるまで下せないと発表している。

    1849 年のクィディッチルール改正により、観客が選手に呪いや呪文をかけた場合、その行為がチームの要求や承認によるものかに関わらず、無条件で没収試合となると規定されている。

  • 102121/11/16(火) 20:49:37

    08

    16 5月 2014
    アメリカ対ジャマイカ
    日刊予言者新聞クィディッチ特派員、ジニー・ポッター - パタゴニアの砂漠よりレポート。

    アメリカ対ジャマイカ、240 – 230 でアメリカの勝利が確定

    昨日の対アメリカ戦において、極めて重要な場面でジャマイカチームのキーパー、ケワンダ・ベイリーが突然失神し、疑いの声が多数上がっていた件について、今日、調査結果が発表された。ベイリーは開会式中にササボンサム(ナイジェリアチームのマスコットの吸血動物)にかまれ、感染症を患っていることが確認された。観客による干渉の証拠は発見されなかった。アメリカチームは準々決勝に進出し、チャド対リヒテンシュタイン戦の勝者と対戦する。

  • 103121/11/16(火) 20:50:10

    09

    17 5月 2014
    リヒテンシュタイン対チャド
    日刊予言者新聞クィディッチ特派員、ジニー・ポッター - パタゴニアの砂漠よりレポート。

    チャド対リヒテンシュタイン、140 – 120 で試合継続中

    現時点で試合時間が本トーナメント最長となる 11 時間目に入ったリヒテンシュタイン対チャド戦は、選手たちが仮眠を取るため一時中断となった。両チームの力は互角で、これまでに成功したゴールはすべて、コントロールに優れパワーもあるビーターたちの守りを破ってなんとかねじこまれたものである。スニッチがシーカーの手の届く範囲に近づいた瞬間は 3 回ほどあったものの、正確に打ち込まれたブラッジャーにより、3 回とも捕獲を阻止されている。現時点での最優秀選手は、間違いなくリヒテンシュタインのチェイサー、ウィリ・ヴェンツェルだろう。ヴェンツェルは序盤にブラッジャーを頭に 2 発受けながらも、55 メートルの距離から本試合 3 本目となるゴールを決めている。

  • 104121/11/16(火) 20:50:39

    10

    18 5月 2014
    リヒテンシュタイン対チャド
    日刊予言者新聞クィディッチ特派員、ジニー・ポッター - パタゴニアの砂漠よりレポート。

    リヒテンシュタイン対チャド、260 – 250で試合継続中

    試合は2 日目に入っても決着がつかず、選手たちは完全に憔悴しきっている。チャドのシーカー、ジャック・ミスキネは、左眉の上あたりにスニッチが 5 分間漂っていたものの気づかず、慌てて捕まえようとするもキレのない動きで逃してしまった。リヒテンシュタインのチェイサー、オットマール・フリックは、夜になって試合が中断される少し前から、箒の上で眠りこけていたものと見られる。 いまだ接戦が続くこの試合は、2014 年クィディッチ・ワールドカップでも歴史に残る大試合になりそうだ。

  • 105121/11/16(火) 20:51:06

    11

    19 5月 2014
    リヒテンシュタイン対チャド
    日刊予言者新聞クィディッチ特派員、ジニー・ポッター - パタゴニアの砂漠よりレポート。

    リヒテンシュタイン、470 – 330 でチャドに勝利

    ようやく訪れた試合の結末は、突然かつ容赦ないものだった。消耗戦 3 日目、チャドにわずかなリードを許すなか、疲れ果てたリヒテンシュタインのシーカー、ブルーノ・ブルーンハルトが、ジャック・ミスキネの伸ばした手からわずか数センチのところでスニッチをつかみ取った。ようやく地面に降り立った両チームは、涙を流して抱擁しあった。現在、選手たちは全員治療を受けている。

    リヒテンシュタインは準々決勝に進み、アメリカと対戦する。

  • 106121/11/16(火) 20:51:38

    12

    21 5月 2014
    日本対ポーランド
    日刊予言者新聞クィディッチ特派員、ジニー・ポッター - パタゴニアの砂漠よりレポート。

    日本、ポーランドに 350 – 140 で勝利

    激しい力闘が繰りひろげられた日本対ポーランド戦は、ポーランドの 140 点に対し 350 点を獲得した日本が、当然ともいうべき勝利を収めた。ポーランドチームも最終的な得点からはうかがい知ることのできない神鬼迫る力強いプレーを見せたが、ホンゴウとシンゴというベテラン日本人ビーターコンビからの重圧に、若いチームの経験不足が露呈した形だ(ちなみにホンゴウとシンゴは最近、史上最も優れたビーターコンビとして、伝説的な 1994 年ブルガリアチームのボルコフ・ボルチャコフ組に次いで 2 位に選出されている)。注目すべき選手は、ポーランドのシーカー、ヴワディスワフ・ウォルフケだ。優雅かつ大胆不敵な箒乗りだが、序盤で惜しくもスニッチを捕り逃し、開始後 59 分、逸材ノリコ・サトウにわずかに先を越されてしまった。

    日本は準々決勝に進み、優勝候補のナイジェリアと対戦する。

  • 107121/11/16(火) 20:55:15

    >>106

    20 5月 2014

    ブルガリア対ニュージーランド


    …があったはずなんですがコピー忘れが発覚。チクショー!

  • 108121/11/16(火) 20:55:58

    13

    22 5月 2014
    ウェールズ対ドイツ
    日刊予言者新聞クィディッチ特派員、ジニー・ポッター - パタゴニアの砂漠よりレポート。

    ウェールズ、ドイツに 330 – 100 で勝利

    今日のドイツ対ウェールズ戦の観戦者は、シーカーというポジションがいかに危険かを改めて思い知ることとなった。ウロンスキー・フェイントはシーカーが行う危険なプレーで、スニッチを見つけたふりをして自ら急降下し、相手シーカーの急降下を誘って自分は地面すれすれで急上昇することで、相手が地面に激突するよう仕向けるものだ。ドイツのシーカー、トルステン・プフェファーはこの日、命がけのフェイントを試み、悲惨な結末を迎えた。地面すれすれでの急上昇が間に合わず、目撃者の証言によれば時速 100 キロほどと思われるスピードで地面にたたきつけられた。ピッチに駆けつけた癒者がその場で骨生え薬のスケレ・グロを投与し、幸いプフェファーの命に別状はないという。試合後、マネージャーのフランツィスカ・ファウストが記者団に語った内容によると、プフェファーは完全に回復する見込みだが、体中のほとんどの骨が折れており、今は自分がクラウスという名のセキセイインコだと思い込んでいるそうだ。

    プフェファーが担架で搬送された 11 分後、ウェールズのシーカー、アイリグ・キャドワラダーがスニッチを捕らえたが、選手からも観客からも喜びの声は聞かれなかった。ウェールズチームのマネージャー、グエノグ・ジョーンズは、プフェファーが助かる見込みだと聞くとようやく、「本当にうれしい」とコメントした。ウェールズチームは準々決勝でブラジルと対戦する。

  • 109121/11/16(火) 20:57:29

    14

    04 6月 2014
    ブラジル対ウェールズ
    日刊予言者新聞クィディッチ特派員、ジニー・ポッター - パタゴニアの砂漠よりレポート。

    ブラジル 460 - ウェールズ 300

    準々決勝の第 1 戦はこの大会で最も荒れた試合になった。険悪なムードで始まった試合は乱闘騒ぎで終わり、ウェールズ監督グウェノグ・ジョーンズがチームのビーターによってピッチから引きずり出される事態になった。

    ブラジルとウェールズのいざこざは大会序盤に始まった。ブラジルの監督ホゼ・バルボーサが、おしゃべりなベテランジャーナリスト、リータ・スキーターとの酒の席で、ウェールズのチェイサーを「能なし魔女」呼ばわりしたと伝えられたのだ。バルボーサは冗談だと主張したが、グウェノグ・ジョーンズの怒りを静めることはできず、ジョーンズは「呪文で顔を消してやる」と凄んだ。ICWQC が「監督による挑発的な発言」を禁止した(ジョーンズを念頭に置いた措置と見られている)にもかかわらず、ジョーンズは準々決勝でブラジルと当たることが判明して以来、ことあるごとにブラジルチームをこき下ろした。それどころか、「ふさわしいのはハイチ」(ブラジルはハイチの失格により準々決勝に勝ち上がった)と書かれた T シャツを着たジョーンズはスタジアムへの入場を認められず、試合の最初の 10 分間に立ち会うことができなかった。その間ピッチ上では危険なプレーが繰り広げられ、3 つの悪質な反則がおかされた。

    ブラジルのチェイサー、ディアス、アロンソ、それにフローレスは堅実なプレーを見せ、その冷静さは賞賛に値した。他の選手はみな冷静さを失い、キーパーのラウル・アルメイダに至っては「頭」まで失うところだった。ウェールズのビーター、イーファン・ライスがアルメイダに向けて猛スピードでブラッジャーを放ったのだ(そのときクアッフルはピッチの反対側にあった)。それによりブラジルにペナルティがついたが、ライスのプレーは明らかに退場ものだった。

  • 110121/11/16(火) 20:58:02

    15

    とはいえ、ウェールズのプレーが反則だけだったわけではない。ウェールズのチェイサー、ジャッキー・ジャーニガンの 50 ヤードのゴールが本大会で最も素晴らしい得点の 1 つであることに異論を唱える者は少ないだろう。それにビーターのダレン・フロイドはひとりで少なくとも 17 回ゴールを防いだ。

    しかしウェールズの勝機は、ブラジルのシーカー、トニー・シルバの目の覚めるような急降下からのキャッチにより潰えた。131 分、シルバは相手のシーカー、ユーリグ・カドウァラダーの鼻先でスニッチをつかみ取り、ブラジルに勝利をもたらした。

    スタジアムの満員の観衆の前で宣言どおりバルボーサの顔を呪文で消そうとしたグウェノグ・ジョーンズは、今晩拘留されている。癒者によるとバルボーサの皮膚はほぼ再生し、彼自信も意気揚々としているとのこと。ブラジルはアメリカ vs リヒテンシュタインの勝者と準決勝で対戦する。

  • 111121/11/16(火) 20:58:29

    16


    06 6月 2014

    ブルガリア vs ノルウェー

    日刊予言者新聞クィディッチ特派員、ジニー・ポッター - パタゴニアの砂漠よりレポート。


    ブルガリア 170 - ノルウェー 20


    p>大会屈指の番狂わせとなったこの試合では、運よく勝ち上がったと見られていたブルガリアが優勝候補の一角であるノルウェーを圧倒した。ノルウェーはなぜこれほどあっけなく大敗したしたのかを自問しながら帰途につくことになるだろう。

    ブルガリアは、初戦のニュージーランド戦では相手が退場者を出して 6 人になるまで苦しい試合展開だったが、この試合ではホイッスル直後から動きが良かった。ブルガリアは試合開始まもなくニコラ・ヴァシレヴァが 2 ゴールを上げた。しかしすぐにノルウェーもラース・リュンデクヴァムのゴールで追いつく。


    試合は予想外の終わりを迎えた。ビクトール・クラムの突然の下降はよくあるブラッジャー回避に見えたため、ノルウェーのシーカー、シグリッド・クリストファセンはマークしなかった。クラムが右手を上げてブルガリアの勝利を示したとき、クリストファセンは逆方向を見ていた。42 分のことだ。クリストファセンの姿は同情を禁じ得ないものだった。彼女はまっすぐ地面に降りると、キーパーのカール・ワングが彼女を立ち上がらせるまで何度となく地面に頭を打ちつけた。38 歳のクラムは、大方の記者から一線で戦うには歳を取り過ぎでスピードもないと切り捨てられていたが、ファンの大歓声に包まれてピッチを後にした。


    失意のノルウェー監督、オッドヴァー・スピリュムは、記者たちにコメントを発することもなく、ただむせび泣いていた。強豪ノルウェーチームにとってこの大会は運がなかったことに疑いの余地はない。筋の通らないように思えるかもしれないが、多くのファンはチームがマスコットとして連れてきたノルウェーの湖の怪物、セルマに責任があると考えている。開会式で血の惨劇を起こしていたセルマは、今晩は秘密の場所に身を隠している。

  • 112121/11/16(火) 20:59:20

    17

    08 6月 2014
    アメリカ対リヒテンシュタイン
    日刊予言者新聞クィディッチ特派員、ジニー・ポッター - パタゴニアの砂漠よりレポート。

    アメリカ 450 - リヒテンシュタイン 290

    もしマグルが今夜パタゴニアで繰り広げられているお祭り騒ぎに気づかないとしたら、マグルは魔法の能力がないだけでなく、よほどのバカだと考えざるをえない。アメリカがクィディッチ・ワールドカップで準決勝進出を果たしたのだ。そして今私がこれを書いている最中、アルゼンチンの大会関係者はサポーターの宿泊地や選手村を駆け巡って、まるで優勝したかのように狂喜するファンや選手たちを静めようと躍起になっている。

    アメリカはこれまで国際的なクィディッチ大会でお粗末な成績しか残してこなかった。世界で唯一、クウォドポット(端的に言って妙なスポーツ)が盛んな国だからだ。今日アメリカは魔法界で最も人気のあるスポーツにおいてひとかどのチームに成長したことを示した。

    リヒテンシュタインは 3 日間に渡る壮絶なチャド戦の後で、不利な状況で試合に臨むと考えられていたが、スタジアムに入ってきた様子では体力は完全に回復しているようだった。序盤のプレーはスピーディーで、アメリカと互角に渡り合い、クアッフル支配率もほぼ五分五分だった。アメリカのチェイサー、クエンティン・コワルスキーは巧みな箒さばきとローリングで解説者の賞賛を浴びたが、トップスコアラーは 16 ゴールを上げたリヒテンシュタインの人気選手、オトマール・フリック(「ルッゲルの武骨漢」)だった。

    最高の賛辞が送られるべきは、148 分にアメリカの歴史的な準決勝進出を決めたシーカー、ダリウス・スマックハマーだ。スマックハマーのキャッチは大胆不敵だった。彼は猛烈なスピードで突進し 2 つのブラッジャーの十字砲火をかいくぐり、リヒテンシュタインの大柄なチェイサー、ウィリー・ウェンゼルとの激突の危険を顧みずに、ウェンゼルの左くるぶしのそばに浮かんでいたスニッチをつかみ取った。

    現在、あたりにはおびただしい数の赤、白、青の閃光がきらめき、息をするのも目を開けるのも難しいほどだ。試合後まもなく、困惑した ICWQC の担当者は「日刊予言者新聞」に語った。「準決勝進出でこの調子なら、決勝に進んだらどうなることやら。セキュリティ・トロールの投入を検討中だ」。

  • 113121/11/16(火) 21:00:34

    18

    08 6月 2014
    最新ニュース
    日刊予言者新聞クィディッチ特派員、ジニー・ポッター - パタゴニアの砂漠よりレポート。

    チームの歴史的な準々決勝勝利を祝っていた向こう見ずなアメリカのサポーターが、リヒテンシュタインのマスコット、ハンスを誘拐した。ハンスはむっつりとした大型のオーグリー(雨を知らせるハゲタカに似た鳥)で、大会を通じて熱心なファンを獲得していた。リヒテンシュタインの監督フェルディナンド・イェーゲンドルフは次のコメントを発表した。"Das finden wir nicht lustig.(笑い事じゃない)"。

  • 114121/11/16(火) 21:00:53

    19

    09 6月 2014
    オーグリーのハンスが生還
    日刊予言者新聞クィディッチ特派員、ジニー・ポッター - パタゴニアの砂漠よりレポート。

    リヒテンシュタイン公国のマスコットが、今夜、専用の小屋に戻った。このオーグリーを返すか返さないかをめぐる交渉が、ついにトップ間の直談判にまで発展したすえの決着である。信頼できる情報筋によれば、リヒテンシュタインの魔法大臣とMACUSA(アメリカ合衆国魔法評議会)の議長がハンスの居どころについて、ふくろう便で率直なやり取りを交わしたとのこと。ハンスは先日おこなわれたクィディッチ・ワールドカップの準々決勝、アメリカ対リヒテンシュタインの試合後、自国チームの勝利に狂喜したアメリカ人サポーターによってさらわれていた。

    MACUSAのサミュエル・G・クアホッグ議長は次のような談話を発表している。「この罪なきいたずらが、両国の協力によって穏便に解決したことをご報告できるのを喜ばしく思います。ささやかな冒険をしたハンスも、以前と変わらず健やかに過ごしているのでどうかご安心ください」

    いっぽう、リヒテンシュタインの魔法大臣オットー・オーベルマイヤー氏は、アメリカが人気マスコットを無事に返してくれたことを大変うれしく思うとしながらも、次のように述べた。「現在ハンスは魔法生物学者のチームによる注意深い観察を受けており、もしなんらかの異常が見つかれば、我々は当然、ICWQCに対して、アメリカ・チームを即時失格にするよう働きかけることになるだろう」

    これに対して、あるICWQC役員はうんざりしたように言い捨てた。「いいかね。ゆうべはアメリカの祝勝会がおひらきになってから、我々は砂漠の端に住むおよそ 2,000 人のマグルに大掛かりな忘却術をかけなければならなかった。上空を飛んでいた飛行機のことは思い出したくもない。もういい加減にしてほしい。アメリカ人たちに帰れと言うつもりはない。まっぴらごめんだ。あの鳥には妖精でも食わせておけばいい。これ以上私に面倒をかけないでくれ」

  • 115121/11/16(火) 21:01:48

    20

    10 6月 2014
    日本対ナイジェリア
    日刊予言者新聞クィディッチ特派員、ジニー・ポッター - パタゴニアの砂漠よりレポート。

    日本 270 – ナイジェリア 100

    番狂わせの相次ぐ本大会だが、今日午後、またしても波乱の展開となった。下馬評を得ていた強豪が、完璧に近いパフォーマンスを見せた日本チームに敗れ、準々決勝で姿を消した。

    この一戦は“ビーター対決”として人々の記憶に残るだろう。というのも、この 2 つのクィディッチ強豪国によるブラッジャーさばきは、紛れもなく名人の域に達していた。 ナイジェリアのオコイエ、オジュクの両選手、そして日本のシンゴウ、ホンゴウの両選手が放ったショットの精度と創造性は、ゲームの柱になっていた。彼らは棍棒を振りまわすならず者として描かれることが少なくないビーターというポジションもまた、究めれば芸術家たりうることを示したのである。

    勝敗を分けたのが、ホンゴウ選手の放った強烈なショットであることは間違いない。この一撃で、ナイジェリアのシーカー、エキアノ選手の箒の穂が吹き飛ばされたのである。バランスを失ってきりきり舞いするエキアノ選手。ナイジェリアの選手たちが彼を救おうとよそ見をした隙に、ノリコ・サトウ選手が高く舞いあがってスニッチをキャッチ、勝負が決まった。ナイジェリアを破って勝ちあがった日本は、準決勝でブルガリアと対戦することになる。

    ナイジェリア選手が使用する箒は、何かと物議を醸しているサンダーボルト 7 だ。これはファイアボルト・シリーズの競合モデルで、速度性能を重視するあまり安全性をないがしろにしていると、多くの専門家から指摘を受けている。プロ仕様の箒は本来、どんなブラッジャーの一撃にも耐えられるよう設計されていなければならず、この箒に関してはすでに調査が始まっている。いっぽう、ナイジェリアの魔法戦士の一団が、イギリスのマンチェスターにあるサンダーボルト社の本部に向かっているとの噂もあるが、確認は取れていない。

  • 116121/11/16(火) 21:02:35

    21

    02 7月 2014
    賭けるなら、ルード・バグマンのオッズを参考に

    優勝候補のノルウェーとナイジェリアが敗退するという波乱に、ブックメイカーたちは笑いがとまらないようだ。イングランド代表チームの元ビーターで、熱狂的なギャンブラーでもあるルード・バグマンが、まだ優勝杯を手にする可能性のあるチーム――すなわち準決勝に駒を進めた 4 チームについて、勝敗オッズをつけた。

    ブラジル

    ブラジルはクィディッチ・ワールドカップで 5 度の優勝を誇るが、90 年代と 00 年代初頭は、この古豪にとって低迷期と考えられてきた。ホセ・バルボーザ監督は、全国津々浦々から若い選手を集めることで、この国民的スポーツを復活させた。平均年齢 22 歳と若いこのチームは、トーナメントを勝ち残っているなかでは最も経験の浅いチームと言える。

    使用している箒: ヴァ=ラピドス
    総得点(1 回戦と 2 回戦の合計): 41 点
    スニッチを捕って試合を決めるまでに要した時間(1 回戦と 2 回戦の平均): 131 分*
    注目の選手(1 回戦と 2 回戦で活躍): アレハンドラ・アロンソ(チェイサー)

    ルードのオッズ: 9 倍

    比較的経験の乏しいチームながら、これまでのところ高い得点力を維持している。ただ、こういう若い選手たちは重圧がかかる場面で崩れるかもしれない。才能は豊かなのは間違いないが、今後 4 年間で優勝するという目標のほうがより現実的では?

    *……1 回戦ではハイチが反則にあたる方法でスニッチを捕ったため、これは 2 回戦のみの数字。

  • 117121/11/16(火) 21:02:56

    22

    アメリカ

    アメリカがクィディッチ・ワールドカップの予選ステージを突破、決勝トーナメントに駒を進めるとは、誰も予想していなかった展開だ。初戦こそ、ジャマイカのシーカーの自滅によって思わぬ勝ちを拾った形になったが、準々決勝では下馬評の高いリヒテンシュタインを破って底力を見せつけた。この準決勝でも、勝利の女神はアメリカに微笑むのだろうか?

    使用している箒: スタースウィーパー 21
    総得点(1 回戦と 2 回戦の合計): 39 点
    スニッチを捕って試合を決めるまでに要した時間(1 回戦と 2 回戦の平均): 100 分
    注目の選手(1 回戦と 2 回戦で活躍): ダリウス・スマックハマー(シーカー)

    ルードのオッズ: 12 倍

    リヒテンシュタインとの試合でアメリカが見せた強さには感心したが、年季の入ったクィディッチ・ウォッチャーたちは、このチームに優勝するだけの力があるかどうか、まだ確信を持てずにいる。一番の弱点はディフェンスだ。1 回戦ではキーパーのスーザン・ブランチフラワーがジャマイカに 23 得点を許してしまった。ビーターを務めるプリングルとピケリーも、準決勝で若く才能豊かなブラジルのビーター陣、サントスとクロドアウドを倒そうと思ったら、より効果的なフォーメーションを見つける必要があるだろう。

  • 118121/11/16(火) 21:03:19

    23

    日本

    日本が本大会で活躍することは広く期待されていたが、共に本命視されていたナイジェリアを破った試合で彼らが見せたセンスと攻撃は、見る者すべてをうならせた。今大会で初めてヴェールを脱いだ国産の競技用箒を使用。日本はほぼすべてのポジションに才能あふれる選手を配置して層の厚さを見せつけたが、特に他の追随を許さないのは、ディフェンス陣だ。ホンゴウ選手とシンゴウ選手のレプリカ・ローブが、今や本大会で最も売れ行きのいいグッズになっていることからも、そのことがうかがえる。

    使用している箒: 矢印
    総得点(1 回戦と 2 回戦の合計): 32 点
    スニッチを捕って試合を決めるまでに要した時間(1 回戦と 2 回戦の平均): 61 分
    注目の選手(1 回戦と 2 回戦で活躍):
    マサキ・ホンゴウ(ビーター)、シンタロウ・シンゴウ(ビーター)

    ルードのオッズ: 4 倍

    無慈悲なまでの手際の良さと芸術的な試合運びで快進撃を続ける日本が、今や優勝候補の筆頭に躍り出たことは間違いない。

  • 119121/11/16(火) 21:03:40

    24

    ブルガリア

    ブルガリアが決勝トーナメントを勝ち進むとは、誰も予想していなかった。過去 20 年で 2 度決勝進出を果たしているとはいえ、今大会のブルガリアは影が薄く、16 強にもかろうじて滑り込んだに過ぎなかった。38 歳のビクトール・クラムを代表に選んだのも、チームへの貢献を期待してというよりは、お情けからという見方が一般的だった。たしかに、決勝トーナメント 1 回戦でニュージーランドを破ったときには幸運がブルガリアに味方したのかもしれない。しかし、次のノルウェー戦でクラムが早々とスニッチを捕り、優勝候補の一角を占める強豪を退けたとき、多くのコメンテーターは辛辣な言葉を飲み込まざるを得なかった。

    使用している箒: ファイアボルト・スプリーム
    総得点(1 回戦と 2回戦の合計): 28 点
    スニッチを捕って試合を決めるまでに要した時間(1 回戦と 2 回戦の平均): 88 分
    注目の選手(1 回戦と 2 回戦で活躍): ビクトール・クラム(シーカー)

    ルードのオッズ: 50 倍

    ブルガリアを応援する声は、世界中で日増しに高まっている。これには判官びいきもあるし、いまだ悲願を達成できずにいる天才プレイヤーに対する、クィディッチ・ファンの切ない思いが込められているとも言えよう。しかし、クラムと彼のチームメートに、準決勝で日本を打ち負かすだけの力が本当にあるだろうか? 残念ながら、答えはおそらくノー、だ。

  • 120121/11/16(火) 21:04:03

    25

    04 7月 2014
    アメリカ vs ブラジル
    日刊予言者新聞クィディッチ特派員、ジニー・ポッター - パタゴニアの砂漠よりレポート。

    アメリカ 120 - ブラジル 100(途中経過)

    この試合はどうやら、今大会 2 度目の夜を徹した試合になりそうだ。いや、もっと長引くかもしれない。

    この準決勝のここまでの展開を一言で表すなら、それは「緊張感」だ。試合を通して凡ミスが目立ったのは、それだけ決勝進出が両チームにとって大きな意味を持つということだ。アメリカはすでに過去最高の順位まで勝ち上がってきている。2014 年はアメリカがクィディッチの強豪になったことを示す年になった。一方、輝かしい戦歴を持ちながら近年低迷していたブラジルは、1982 年以来の決勝進出をかけて戦っている。勝利の見返りは大きい。選手たちが大きなプレッシャーを感じているのも不思議ではないだろう。

    選手たちはこれまでのどの試合よりもクアッフルを落としている。アメリカのチェイサー、マーシー・ワードウェルは自らの 5 度目のファンブルに苛立って箒の柄に自分の頭をガンガンぶつけ、シーカーのダリウス・スマックハマーに止められた。ワードウェルだけではない。フェルナンド・ディアスとアレハンドラ・アロンソというブラジルで最も優秀な選手 2 人も 2 回ずつクアッフルを取り落とした。

    ビーターが打ったブラッジャーが誤って味方の選手に怪我をさせてしまうことも何回かあった。試合開始から 4 時間目、ルーカス・ピッカリーはキーパーのスーザン・ブランチフラワーの顔にブラッジャーを打ち込んでしまった。ブランチフラワーは、ピッカリーの箒に飛び乗って文句を言おうとしてさらに怪我しそうになり、審判に注意される。次に初歩的なミスを犯したのはそのブランチフラワーだった。スコア・エリアから大きく飛び出したブランチフラワーはアロンソに交わされてゴールを決められ、ブラジルに 10 点のリードを許す。だがそれも長くは続かない。夜になるとクエンティン・コワルスキーが 2 ゴールを上げ、アメリカがわずかにリードを奪った。夕闇が濃くなってきたが、試合は依然五分五分の状況だ。

  • 121121/11/16(火) 21:05:09

    26

    05 7月 2014
    アメリカ vs ブラジル
    日刊予言者新聞クィディッチ特派員、ジニー・ポッター - パタゴニアの砂漠よりレポート。

    ブラジル 420 - アメリカ 310

    パタゴニアに日が昇った。終夜の激戦を経て、疲れながらも気迫あふれる両チームは、さらに集中力が増し、統制がとれているようだった。両チームが準決勝まで勝ち上がった理由が見て取れる。クワッフルは両チームのチェイサー・トリオの間をダイナミックに行き来し、試合展開は予断を許さなかった。だがゴールの輪を襲うアメリカの攻撃を、ブラジルのキーパー、ラウル・アルメイダが繰り返し跳ね返したことが試合を決定づけた。

    試合開始から 20 時間目、ダリウス・スマックハマーがスニッチを見つけた。しかしブラジルのビーター、サントスとクロドアウドが放った正確なブラッジャーに邪魔され追いきれない。観衆がひとつになって湧く中、スマックハマーとブラジルのシーカー、シルバは先を争ってスニッチを追った。両者とも箒の柄ギリギリまで前のめりだ。2 人はきりもみ状態で地面に突っ込み、一瞬、どちらが勝ったのかわからない。するとシルバがスコアボードに向かって猛スピードで飛んだ。ヤケクソゆえか勝利ゆえか…それはすぐに判明した。ブラジルの勝利だった。

    壮絶な準決勝は劇的な幕切れを迎えた。ブラジルは日本とブルガリアのいずれかと決勝で対戦し、アメリカは敗者と 3 位決定戦に臨む。

  • 122121/11/16(火) 21:05:51

    27

    06 7月 2014
    ブルガリア vs 日本
    日刊予言者新聞クィディッチ特派員、ジニー・ポッター - パタゴニアの砂漠よりレポート。

    ブルガリア 610 - 日本 460

    準決勝の第 2 試合のために競技場に入る 1 分前、ブルガリアのビーター、ボリス・ヴルチャノフはこう語った。「俺たちは大会を通して雑魚扱いだった。負けても失うものはないし、勝てば儲けものだ。ピッチですべてを出し切るだけだ」。

    彼らがその言葉どおりに戦い抜いたことは、誰の目にも明らかだった。だが日本も、魔法界の新たなスターであるシンゴウとホンゴウという 2 人のビーターを擁し、大会を通して素晴らしいパフォーマンスを見せてきた。そんな日本にかける言葉があるとすれば、彼らが戦った準決勝は長く記憶に刻まれるであろうということだ。ここ数年で最多得点を記録した、手に汗握るすばらしい試合だった。

    予想どおり、試合の序盤はシンゴウとホンゴウが支配した。癒者がブルガリア・チームを手当するために試合は 2 度中断された。試合開始から 1 時間も経たないうちにブルガリアの 6 人が頭から出血していた。

  • 123121/11/16(火) 21:06:19

    28

    その後に繰り広げられたスポーツマンシップあふれる 3 連続のプレーは、観客の記憶に残るだろう。砲弾のような勢いで飛んできたブラッジャーを、ヴルチャノフはみずから盾となって止め、スニッチを猛追していたシーカーのクラムを守った。ヴルチャノフは気を失って箒から落ちたが、驚いたことに彼をつかんで救い上げたのは日本のシーカー、ノリコ・サトウだった。サトウがスニッチを追えなくなったことに気づき、クラムは箒を止めた。隙をついて彼女を出し抜こうとはしなかったのだ。プレーが再開されると、観客全員がクラム、サトウ、(意識が戻った)ヴルチャノフに対してスタンディングオベーションを送った。

    日本のディフェンスのすばらしさはクィディッチ界全体が認めるところだが、チェイサーのリュウイチ・ヤマグチ、キミコ・クロサワ、ヨシ・ワカヒサの働きも見過ごすことはできない。試合開始から 8 時間経った頃には日本が 250 点リードしていた。ブルガリアは大きく引き離されていたものの、シンゴウとホンゴウが放つブラッジャーに敢然と立ち向かった。ブルガリアのプレーは決して美しいものではなかったが、その勇気は疑いようもなかった。

    スニッチが再び現れた。クラムはサトウと先を争い、サトウをスニッチから遠ざけたが、自分で捕まえはしなかった。それはチームメートへの信頼を示す行為であり、悪評を呼んだ 94 年の決勝戦とはまったく対照的だった。当時クラムはみずから試合を終わらせ、仲間がアイルランドからさらなる辱めを受けることを防いだのだ。

    それがまさに試合の転機になった。ブルガリアは徐々に差を詰めていき、すばらしい粘り強さと、安定感を増したディフェンスで、ついに日本に追いついた。そして 10 時間目、まれに見る大逆転劇が起きた。クラムの飛び方は相手を見事に混乱させた。ホンゴウの視線を避けるように見せかけてサトウを出し抜き、観客やチームメートにも何が起きたか分からないうちに、クラムはスニッチを捕まえていた。驚きのあまりスタジアム全体が 10 秒間静寂に包まれ、それからようやくブルガリアのサポーターが歓声を上げた。この記事を書いている間も人々は勝利を祝い続けている。だが、よほどの冷血漢でもなければ日本への同情を禁じ得ない。日本はアメリカと 3 位の座をかけて対戦することになる。

  • 124121/11/16(火) 21:06:49

    29

    08 7月 2014
    クィディッチ・ワールドカップ決勝戦にダンブルドア軍団再集結
    「日刊予言者新聞」ゴシップ担当記者、リータ・スキーター。

    あちらにも有名人、こちらにも有名人。ここパタゴニア砂漠に魔法界の著名人が数多く姿を見せ、場に華を添えている。各国の大臣や大統領に、セレスティナ・ワーベック、何かと問題の多いアメリカ人魔法使いバンド「羽の曲がったスニッチ」。こういった人々が姿を現すたびに群衆は興奮し、中には先を争ってサインを求める者や、さらには、その頭越しに橋を架ける呪文を唱え、貴賓席となっているボックス席に行こうとする者まで現れている。

    しかし、ある悪名高い魔法使いの一団(その全盛期であった可愛らしい 10 代の姿ではなくなっているものの、それぞれが誰であるかは十分に分かる)が決勝戦を観にやってきたという話がキャンプ場とスタジアムに知れ渡ると、そこにいた人々はそれまでとは比べものにならないほどの興奮に包まれた。群衆が殺到し、テントは押し潰され、小さな子どもたちは踏み潰された。世界中からやってきたファンが、今も「選ばれし者」と呼ばれる魔法使いをとにかくひと目見ようと必死になり、ダンブルドア軍団のメンバーが目撃されたとうわさされる場所目がけて押し寄せたのだ。

    ポッター一家とダンブルドア軍団の他のメンバーたちには、キャンプ場の特別区画に宿泊施設が用意されている。厳重な呪文に守られ、警備担当の魔法戦士による巡回も行われている区画だ。英雄をひと目見ようと封鎖区画の周りに集まった大群衆の存在が、メンバーがそこにいることを裏付けていた。そして、本日の午後 3 時、大群衆の願いはかなえられた。大きな歓声を伴奏に、ポッターが幼い息子たち、ジェームズとアルバスを連れて選手用の区画を訪れ、ブルガリアのシーカー、ビクトール・クラムに 2 人の息子を引き合わせたのだ。

  • 125121/11/16(火) 21:07:09

    30

    間もなく 34 歳になるこの有名な「闇祓い」の黒髪には数本白いものが交じっているが、あの特徴的な丸いメガネをかけているところは今も変わらない。中には、あれは流行とは無縁の 12 歳の少年にこそ似合うものだと口にする者もあるかもしれない。彼のトレードマークとも言える稲妻型の傷痕には最近仲間ができたようで、ポッターの右頬には頬骨を横切るひどい切り傷が見える。この傷の由来に関する情報要請に対して、魔法省は例のごとく、「極秘扱いである闇祓い部の仕事についての発言は差し控える。これまで 514 回もそうお答えしてきたはずだ、ミス・スキーター」という回答をするのみだった。ではいったい何を隠しているのだろうか? 「選ばれし者」は、いつの日か我々全員の頭上で爆発して、我々を恐怖と暴力の新時代に突入させるような新たな謎に関わっているのだろうか?

    それとも、あの怪我はポッターが恥じるような、もっとつまらぬ理由でできたものなのだろうか? たとえば、妻に呪いをかけられたということは? 自分たちが幸せであることを公言してはばからないポッター夫妻の間にひびが入り始めてはいないだろうか? ポッターの妻、ジネブラが、この大会のリポートを行う間、平然と夫と子どもたちをロンドンに残してきているという事実から何かが読み取れるのではないだろうか? クィディッチ・ワールドカップの取材に派遣されるほどの才能と経験がジネブラにあるのかどうか、まだ結論は出ていない(たった今出たようだ、結論は「ない!」)。だが、それも仕方のないことだろう。苗字がポッターというだけで、門戸という門戸は開かれ、国際的なスポーツ組織からは頭を下げられ、「日刊予言者新聞」の編集者たちからは人もうらやむ仕事を任されることになるのだ。

    ポッターとクラムの熱烈なファンや信奉者であれば覚えておいでだろうが、この 2 人は例の物議をかもした三大魔法学校対抗試合で競い合っている。しかし、どうやら互いに悪い感情はないらしく、再会時には抱き合っている。(あの迷路で実際には何が起こったのだろう? 2 人の温かい挨拶を目にしても、様々な憶測がやむことはなさそうである) 30 分ほどしゃべったあとで、ポッターは息子たちを連れてキャンプ場に戻り、ダンブルドア軍団の他のメンバーたちと深夜まで語らった。

  • 126121/11/16(火) 21:07:44

    31

    隣のテントにいるのは、ポッターの最も親しい 2 人の友人、ポッターのすべてを知っていながら、報道陣と話すことを常に拒む者たちだ。2 人はポッターを恐れているのだろうか、それとも、自分たち自身の秘密が漏れることで、「名前を呼んではいけないあの人」を打ち倒したという神話を汚すことになってしまうのを恐れているのだろうか? 今では夫婦となったロナルド・ウィーズリーとハーマイオニー・グレンジャーは、この神話のほとんどすべての段階においてポッターと行動を共にしていた。ダンブルドア軍団の他のメンバー同様、この 2 人もあの「ホグワーツの戦い」で戦っている。その勇気に対する賛辞と褒賞が魔法界から感謝とともに贈られたのも当然といえよう。

    戦いの直後に、ロナルド・ウィーズリー(あの有名な赤毛が若干薄くはなったようだ)はポッターとともに魔法省で働き始めた。しかし、2 年後には退職し、大きな成功を収めている魔法の悪戯専門店、ウィーズリー・ウィザード・ウィーズの共同経営者となった。果たしてウィーズリーは、当時述べていたとおり、「昔からずっと大好きだった仕事に関して兄のジョージを手助けできるのをとてもうれしく思っている」のだろうか? それとも、ポッターの陰にい続けることに飽き飽きしていたのだろうか? はたまた、「名前を呼んではいけないあの人」の分霊箱の破壊によって「大きな打撃を受けた」と自ら認めるような者にとって、闇祓い部の仕事はあまりに荷が重いものだったのだろうか? 遠目には異常を示す明らかな兆候は見られないが、適切な評価を下せるほどそばに近づくことなど一般の人々にはできない。これは疑わしいといえるのではないか?

  • 127121/11/16(火) 21:08:08

    32

    ハーマイオニー・グレンジャーは、当然ながら常に仲間内における「魔性の女」であった。当時の報道によれば、10 代の彼女は、まずは若きポッターの愛情をもてあそび、続いて筋骨たくましいビクトール・クラムに心を移し、最終的にはポッターの忠実なる親友で手を打つことにしたという。魔法法執行部副部長へと流星のような出世を果たしたうえ、現在は魔法省でのさらなる昇進が予想されており、その上、息子のヒューゴと娘のローズという 2 人の子どもたちの母親でもある。ハーマイオニー・グレンジャーは、すべてを手に入れた魔女もいるということを証明しているのだろうか? (否―あの髪を見ればお分かりであろう)。

    それから、ダンブルドア軍団には、ポッター、ウィーズリー、グレンジャーと比べると若干知名度の劣るメンバーたちもいる。(彼らはそのことに憤りを感じているだろうか? きっとそうに違いない。)今ではホグワーツ魔法魔術学校で薬草学の人気教師となっているネビル・ロングボトムは、妻のハンナとともにここパタゴニアを訪れている。この夫婦は最近まで、ロンドンにある「漏れ鍋」の上階に住んでいた。うわさでは、ハンナは癒者としての勉強をしなおした上で、ホグワーツにおける校医の職に応募したのだという。また、これは根も葉もないうわさではあるものの、ハンナとその夫は、子どもたちを預かる立場の者にしては少しばかり多い量のオグデンのオールド・ファイア・ウィスキーを楽しんでいるようだ。それでも、誰もが彼女の就職がうまくいくことを祈っているはずだ。

    ダンブルドア軍団のリーダー格メンバーのあとひとりは、ご存じ、ルーナ・ラブグッド(今では、かの高名な魔法動物学者ニュート・スキャマンダーの孫息子、日に焼けた肌をしたロルフ・スキャマンダーと結婚している)である。相変わらず、愉快なほど変わり者のルーナは、予選を通過した 16 か国の国旗を組み合わせたデザインのローブ姿で、特別区画をさっそうと歩き回っていた。双子の息子たちは「おじいちゃんと家にいる」のだという。これは「人前には出せないくらい変わっている」ということを遠回しに言っているのだろうか? いや、そんなことを口にするのは、思いやりのかけらもない者のみであろう。

  • 128121/11/16(火) 21:08:55

    33

    他にも何人も軍団のメンバーがここにはやってきているが、人々の関心が最も寄せられるのは先に述べた 6 人である。ちなみに、赤毛を見かけたら、誰もがそれはウィーズリー家の者だと推測することであろう。しかし、それがジョージ(ウィーズリー・ウィザード・ウィーズの裕福な共同経営者)であるのか、チャーリー(ドラゴン使い、なぜかいまだに独身)であるのか、はたまた、パーシー(魔法運輸部部長―煙突飛行ネットワークが混みあった場合、責任は彼にある!)であるのかを見分けるのは難しい。唯一たやすく見分けがつくのはビルのみである。気の毒なことに、狼人間との遭遇によってできたひどい傷痕だらけだが、どういうわけか(呪文? 愛の妙薬? それとも脅迫? 拉致?)非の打ちどころのない美人(だが間違いなく頭は空っぽ)のフラー・デラクールと結婚している。

    うわさによれば、これまでに挙げた者以外のダンブルドア軍団のメンバーたちも決勝戦の際に特別ボックス席に姿を見せ、華やかな社交行事にさらなるけばけばしさを加えるようである。メンバーの中でも若い 2 人の振る舞いが、魔法使いの名を汚し、この一行に恥をかかせたりしないことを祈ろう。

  • 129121/11/16(火) 21:09:19

    34

    若者のプライバシーを侵害することには常にためらいを覚えるが、ハリー・ポッターと親密な関係にある者は誰であれ、その恩恵をこうむるとともに、世間から関心を向けられてしまうこともまた事実である。ポッターが、自分の名付け子である 16 歳のテディ・ルーピン(鮮やかな青い髪を持つ、ひょろっとした半狼人間)が、キャンプ場の特別区域に到着した時から魔法界の有名人にあるまじき振る舞いをしていると知れば、心を痛めることは間違いない。この野性児の両親から死に際に世話を任されたポッターは、常に多忙な身である。厳しく目を光らせておけというのは無理な注文であろう。だが、緊急介入がない場合にルーピン坊ちゃまがどうおなりになるのか、と考えるとぞっとしてしまう。一方、ビル・ウィーズリー夫妻は、になる美しいブロンドの娘ビクトワールが、ルーピン坊ちゃまがたまたまお隠れになっている暗い隅にならどこにでもひきつけられてしまうらしいことを知っておいたほうがいいかもしれない。この 2 人、どうやら耳から呼吸する方法を編み出したようだ。筆者の若かりし頃であれば「口づけ」と表現したであろう行為を、あれほどの長時間にわたって続けながら生きていられる理由はそれしか考えられない。

    だが、厳しい見方をするのはやめておこう。ハリー・ポッターとその一団は、自分たちが完璧だと主張したことはないのだから! 彼らがどれほど欠点だらけであるのかを詳しく知りたいという方々には、フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店にて 7 月 31 日より発売される筆者の新たな伝記、『ダンブルドア軍団:復員兵たちの闇の世界』をお薦めする。

  • 130121/11/16(火) 21:10:06

    35

    09 7月 2014
    3 位決定戦
    日刊予言者新聞クィディッチ特派員、ジニー・ポッター - パタゴニアの砂漠よりレポート。

    日本 330 - アメリカ 120

    短時間かつ血みどろの戦い、その荒々しさを否定する者はまずいないだろう。

    このトーナメントを最後まで勝ち抜くだろうと大方が予想していた日本と、2014 年に入ってから躍進を続けてきたアメリカ、両チームが共に素晴らしいワールドカップの試合を見せてくれた。この 3 位決定戦に出場した 14 名の選手全員にとって、今晩は胸を張れる夜になるはずだ。ただし、何人かの選手―中でも、試合開始から 34 分、2 つのブラッジャーを顔に受けたアメリカのチェイサー、アーセニア・ゴンザレス―にとっては、非常につらい夜になるはずだ。

    日本のビーター、ホンゴウとシンゴウが圧倒的な勢いを見せる中、アメリカは健闘し、その力が過小評価されている英雄であり、今日最高にコンディションの良かった日本側キーパーのトドロキを相手に 12 ゴールをあげた。競技場の反対側では、キーパーのスーザン・ブランチフラワーをかわしてチェイサーのヤマグチ、クロサワ、ワカヒサが 18 ゴールを奪ったあと、日本のシーカー、ノリコ・サトウが今大会中でも一二を争うほどの驚くべき急降下を見せた。飛んでくるブラッジャーやチェイサーたちを振り切り、アメリカのマーシー・ワードウェルからのプレッシャーにも打ち勝ち、ダリウス・スマックハマーとルーカス・ピッカリーの箒を引っかけさせて、見事にスニッチをつかんだのだ。

    地上に降り立つと、両チームは互いに抱き締め合って、心温まるスポーツマンシップを見せた。その後、アメリカチーム(そのサポーターは周知の通り、リヒテンシュタインのマスコットであるオーグリーのハンスを拉致した)に日本チームが鳳凰のひな(鳳凰というのは、日本の火の鳥である)を贈ったという知らせが届いている。

  • 131121/11/16(火) 21:15:31

    11 7月 2014
    QUIDDITCH WORLD CUP FINAL

    Transcript of the Live Coverage from the Daily Prophet’s Quidditch Correspondent Ginny Potter and Gossip Correspondent Rita Skeeter.
    BULGARIA - BRAZIL
    170 - 60
    Ginny Potter

    The stadium is full and the noise is deafening. We await the arrival of both team’s mascots, who will put on a pre-match show. The Bulgarians, of course, bring their celebrated dancing troupe of Veelas, which constitutes a major reason for the team’s popularity, at least with men. Brazil’s Curupiras have already caused a great deal of mischief so far this tournament but are similarly popular, mostly with children. Security wizards stand by all around the perimeter in case of trouble.

    While we wait for the opening performance, let’s remind ourselves what these teams look like and compare some key statistics.

  • 132121/11/16(火) 21:20:02

    >>131

    はい。英語です...(本当はさらに長文で試合の実況がある)

    というのも、ここで日本語版の更新が終了してしまったから。...なんでよりにもよって決勝で⁉どうやらブルガリアが勝ったようですが…


    気になる方は「クィディッチ・ワールドカップ決勝戦」でGoogle先生に聞いてみると有志の方が実況まで要約してくれています。感謝。

  • 133121/11/16(火) 21:34:45

    ここからはファンタスティックビースト公開時に日本語で公開されていた(はずだったんだけどなぁ…見つからない)「北アメリカの魔法界の歴史」および「イルヴァーモーニー魔法魔術学校」。
    同作の舞台となる北アメリカの魔法界についての描き下ろし。本編の舞台であるイギリス魔法界との事情の違いが分かるのでファンタスティックビースト視聴の際にちょっぴり解像度が上がるかも?
    例えばファンタビでのマグルの扱いだったり魔法を知らないはずのマグルがアンチ魔女活してる理由だったり。

  • 134二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 21:35:02

    当時ちまちま読んでるときに日本語版終わっちゃったからすごくありがたい

  • 135121/11/16(火) 21:35:50

    北アメリカの魔法界の歴史 01

    14世紀から17世紀

    かつてヨーロッパの探検家たちはアメリカ大陸を「新世界」と呼びましたが、魔法族はアメリカ大陸の存在を知っていました。マグル(世界の国々には、「マグル」と同じ意味で使われるさまざまな独自の表現が存在します。アメリカの魔法界で使われるのは、「ノー・マジック」を略した「ノーマジ」というスラングです)が大西洋を渡るよりもずっと以前から、魔法使いたちは、さまざまな魔法による移動手段――箒や「姿現し」など――を用いて、さらに千里眼や予感を使って、遠く離れた魔法族同士が中世の時代から互いに接触を持っていたのです。

    ノーマジの移民がヨーロッパからアメリカへと渡り始めたのは 17 世紀ですが、ネイティブアメリカンの魔法族はそれよりもはるかに古い時代から、ヨーロッパやアフリカの魔法族と情報を交換していました。世界中の魔法族たちは、お互いの環境に多くの似通った点があることを、当時すでに理解していたのです。代々魔法使いや魔女を輩出する家系がある一方、それまでは魔法と無縁であると思われていた家系に突然魔法族が誕生する場合もあることも。また、人口全体に占める魔法族の割合や、魔法族に対してノーマジが示す反応は、世界中どこでもおおむね同じであることなどです。ネイティブアメリカンの魔法族の中には、癒しの術を使う呪い師や優れた狩人として名声を得て部族に受け入れられる者もいましたが、そうでない者は悪霊に憑りつかれているなどとされ、差別的な扱いを受けました。

    ネイティブアメリカンの伝承には、スキンウォーカーと呼ばれる、動物に変身する能力を持つ邪悪な魔法使いや魔女が登場します。この伝承の元になったのは、「ネイティブアメリカンの動物もどきは、身近な家族を生贄に捧げることで変身能力を得た」という言い伝えです。しかし実際には、彼らが動物の姿を取る目的のほとんどは、迫害から逃れることであったり、部族の仲間のために狩りをすることであったりしました。このような心ない風説は、ノーマジの呪い師たちが流したものであることがしばしばでした。そうした呪い師たちは、自らが本物の魔法を使えるかのように装っていたため、その嘘が暴かれることを恐れていたのです。

  • 136121/11/16(火) 21:36:12

    02

    ネイティブアメリカンの魔法族が最も得意としたのは動物や植物に関わる魔法であり、特にその魔法薬の品質はヨーロッパのものをはるかに上回っていました。ヨーロッパの魔法と比較した場合、ネイティブアメリカンの魔法の最大の特徴は杖を使わないことでした。

    魔法の杖はヨーロッパで発明されたものであり、魔力の流れを導くことで魔法の精度や力の強さを高める効果があります。しかし基本的には、杖に頼らずとも高度な魔法を使いこなすことができる魔法使いや魔女が優秀さの証として持つものという意味合いが強いのです。ネイティブアメリカンの動物もどきや魔法薬調合師たちが証明してみせたように、杖を用いずとも極めて複雑な魔法を操ることは可能です。しかし、呪文や変身術は、杖なしでは非常に難しいのです。

  • 137121/11/16(火) 21:36:45

    03

    17 世紀以降

    ノーマジのヨーロッパ人が新世界への移住を始めた時代には、ヨーロッパ出身の魔法使いや魔女も多くがアメリカへと渡ることになりました。ノーマジの移民たちの場合もそうであったように、魔法族の者たちが故郷を離れた理由もまた様々でした。冒険を求めて旅立った者もいましたが、最も多かったのは逃げ場を求めた者たちでした。ノーマジの迫害から逃れるため、あるいは同じ魔法族から逃れるため、さらに魔法界の権威から逃れるため、多くの者が新天地を目指し、大勢のノーマジの中に紛れ込み、あるいはネイティブアメリカンの魔法族の間に身を隠そうとしました。ヨーロッパからやってきた仲間の魔法族に対して、ネイティブアメリカンの魔法族の反応はおおむね好意的でした。

    しかしながら新世界は安住の地ではなく、魔法族にとっては旧世界以上に過酷なものでした。主な理由は三つ挙げられます。

    第1に、これもまたノーマジの移民の場合と同じく、魔法族もほとんど何も持たずにやってきて、新世界においては自給自足に頼る生活を送らなければなりませんでした。故郷の地では、魔法薬が必要ならば手近な店に行くだけで手に入れることができました。ですが新世界では、見慣れない植物を自分で採集しに行かなければなりません。優れた杖職人はどこにもおらず、のちに世界最高の魔法学校の 1 つとして知られることになるイルヴァーモーニー 魔法魔術学校も、当時はたった 2 人の教師のもとでたった 2 人の生徒が学ぶ、粗末な小屋に過ぎませんでした。

  • 138121/11/16(火) 21:37:11

    04

    第2に、ノーマジの移民たちが新世界でとった行動を見ると、旧世界のほとんどの国のマグルたちが愛すべき存在に思えるほどでした。移民たちはネイティブアメリカンと戦争を始め、これによって新世界と旧世界の魔法族の関係は悪化しました。また、移民たちの信仰していた宗教は、魔法に対する寛容さがまったく欠けていました。ささいなことを根拠にお互いを悪魔崇拝者だと糾弾し合っていた清教徒 たちに対して、新世界の魔法族が強い警戒を示したのは当然とも言えます。

    そして第3の理由、北アメリカ大陸にやってきた魔法族を苦しめた数々の問題の中でも恐らく最悪であったものは、「スカウラー」です。アメリカの魔法界は規模が小さく、散在していて秘密主義的であり、当時は独自の治安組織が存在していませんでした。そこで生まれたのが、さまざまな国の出身者によって構成された魔法族の傭兵集団、スカウラーです。スカウラーは残忍で恐ろしい集団であり、犯罪者を捕らえるだけではなく、金になりそうだと思った相手は誰であっても狩り立てました。とどまるところを知らずに堕落していったスカウラーは、出身国の魔法政府から遠く離れているのをよいことに、与えられた任務からは正当化できないような権力を振りかざしては暴虐な振る舞いを繰り返す無法者となったのです。スカウラーは流血虐殺と拷問を好み、仲間であるはずの魔法族を売り買いするまでにつけあがったのです。17世紀の終わりごろにはアメリカ中に大勢のスカウラーが存在しており、騙されやすいノーマジたちから報奨金を巻き上げるために、罪のないノーマジを魔法使いや魔女に仕立て上げていたという記録も残されています。

    1692年から1693年にかけておこなわれた有名なセーレム魔女裁判は、魔法界にとっても大きな悲劇でした。この裁判で清教徒を名乗る判事のうち少なくとも 2 名は、アメリカでの生活で生じたトラブルの報復を企んでいたスカウラーであったと、魔法族の歴史家たちは指摘しています。処刑された犠牲者の中には確かに多くの魔女が含まれてはいましたが、彼女たちはまったくの無実であり、また残りの者たちは魔女ですらなく、血に飢えた集団ヒステリーによって不運にも捕らえられただけのノーマジだったのです。

  • 139121/11/16(火) 21:37:50

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    セーレム魔女裁判は貴い人命が失われた事件でしたが、魔法界に与えた影響はそれだけにとどまるものではありませんでした。事件を知ってアメリカから脱出することを決めた魔法使いや魔女の数は多く、アメリカに移住しないことを決めた者の数はさらに多かったのです。これによって、北アメリカにおける魔法族の人口統計には、ヨーロッパやアジア、アフリカの場合と比較して顕著な特徴が現れることになります。20 世紀前半ごろまでのアメリカでは、人口全体に占める魔法族の割合はほかの 4 大陸よりも明らかに小さいものでした。魔法界の新聞を通して清教徒やスカウラーの活動について詳しく知っていた純血の魔法族は、そのほとんどがアメリカへの移住を避けたため、ノーマジの親から生まれた魔法使いや魔女の割合は、ほかの地域と比べて新世界だけが突出して高くなりました。ノーマジ出身の魔法使いと魔女が結婚して魔法族同士の家庭を築く例は珍しくはなかったものの、ヨーロッパの魔法界に根強く残る純血主義は、アメリカにおいてはあまり支持を集めることはありませんでした。

    セーレム魔女裁判が世の中に与えた影響の中で最大のものと言えるのが、アメリカ合衆国魔法議会の設立です。合衆国魔法議会は、アメリカの魔法使いや魔女の間では頭文字をとって 通常MACUSA(マクーザ )と呼ばれており、ノーマジのアメリカ合衆国議会よりもおよそ 1 世紀早く、1693 年に設立されました。北アメリカの魔法族が一体となって自分たちのための法を作り上げたのは、これが初めてのことでした。これにより、ノーマジの社会の内部に魔法族独自の社会が存在するという、世界中の多くの国に見られるのと同じ構造が、アメリカにも誕生しました。そして MACUSA が最初におこなったのは、仲間の魔法族を傷つけた裏切者であるスカウラーたちを裁判にかけることでした。この裁判において、殺人、魔法族の人身売買、拷問などの行為によって有罪を宣告された者たちは、死をもって自らの罪を償うことになったのでした。

  • 140121/11/16(火) 21:38:13

    06

    スカウラーの中でも最も悪名高い者たちのうち何人かは、正義の裁きを逃れることに成功しました。国際的な指名手配がおこなわれたにもかかわらず、彼らは捕らえられることなく、ノーマジの社会に紛れて姿をくらましてしまったのです。彼らの一部がノーマジと結婚してもうけた家庭では、スカウラーの存在に気づかれる原因となりかねない魔力を持った子どもは間引かれ、ノーマジの子どもだけが育てられたと考えられています。彼らの目的は魔法界から追放されたことへの復讐でした。彼らは自分の子に魔法が実在することを教え、魔法使いや魔女は見つけ次第殺さなければならない存在であると信じ込ませたのでした。

    アメリカの魔法歴史学者のテオフィロス・アボットは、そうした来歴を持つ家系を複数発見して調査をおこなっています。いずれの家系の者も、魔法の実在を強く信じ、また魔法に対する深い憎しみを持っていたといいます。北アメリカのノーマジは、こと魔法に関しては他の地域より慎重で騙されにくい傾向が見られますが、その原因の一部はスカウラーの子孫たちの活動や反魔法的思想によるものと考えられており、これはアメリカ魔法界の統治に深刻な影響をおよぼしています。

  • 141121/11/16(火) 21:39:14

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    ラパポート法

    1790 年、第 15 代MACUSA議長エミリー・ラパポートによって、魔法界とノーマジの社会を完全に隔離するための法律が制定されました。きっかけは、国際機密保持法の違反事例としては最大級のものとして知られるある事件が起こり、MACUSA が国際魔法使い連盟から強い非難を浴びたことでした。事件の原因となったのは MACUSA の身内の人物であったため、事態は深刻でした。

    歴史に残る大惨事の引き金となったのは、ラパポート議長の信任も厚い財・ドラゴット管理官の子女だったのです(ドラゴットとは、アメリカ魔法界で使われる通貨です。財・ドラゴット管理官は、その名称から想像できる通り、おおむね財務長官と同様の役職です)。アリストテレス・トゥエルブツリーズは優秀な人物でしたが、彼の娘のドーカスは、美しくはあるものの愚鈍な女性でした。彼女はイルヴァーモーニーの学生でしたが成績は悪く、父親が高官の地位に就いた当時は実家で暮らしていました。魔法の修行をすることはほとんどなく、服と髪型とパーティー以外にはろくに興味を示そうとしなかったのです。

    ある日、近所にピクニックに出かけたドーカス・トゥエルブツリーズは、ハンサムなノーマジの青年であるバーソロミュー・ベアボーンに出会い、すっかり惚れ込んでしまいました。ドーカスには知るよしもありませんでしたが、バーソロミューはスカウラーの子孫でした。バーソロミューの家族には魔法が使える者はいませんでしたが、彼は魔法が実在することを疑わず、魔法使いと魔女はすべて邪悪な存在であると思い込んでいました。

    ドーカスが披露した「ちょっとした術」にバーソロミューが示したうわべだけの興味を真に受けたドーカスは、自分がどれほどの危機を招いているのかまったく念頭にありませんでした。恋しい相手のいかにも自然な質問に答えて、ドーカスは MACUSA とイルヴァーモーニーの所在地を教え、そればかりか国際魔法使い連盟のことも、さらには連盟がどのようにして魔法界を守り、その存在を人間界から隠そうとしているのかも、すべて話してしまったのです。

  • 142121/11/16(火) 21:39:56

    08

    聞き出せるだけの情報を聞き出すと、バーソロミューはドーカスが唯々諾々と 取り出してみせた魔法の杖を盗み、それを手当たり次第に新聞記者に見せて回りました。そして彼は武装した友人たちを集め、近隣に住む魔法族を攻撃し、――あわよくば皆殺しにするための準備を開始しました。さらにバーソロミューは、魔法族が集会を開いている地域を記したビラを作り、一方でノーマジの著名人に手紙を送りつけました。手紙を受け取った者の中には、そこに書かれていた「邪悪な黒魔術の集会」がおこなわれているという場所について、事実を確かめるために調査が必要だと考えた者もいました。

    アメリカ中の魔法族をいぶり出してやろうと意気込んだバーソロミューでしたが、彼が MACUSA の魔法使いの一団だと思い込み銃撃したのは、無関係なノーマジたちでした。運悪くバーソロミューが見張っていた建物から出てきただけだったのです。幸いにも死者は出ず、バーソロミューはMACUSAがかかわる必要もなく投獄されました。あさはかなドーカスの後始末に追われる MACUSA にとって、これは大きな救いとなりました。

    バーソロミューはビラをあちこちにばらまいていました。一部の新聞は彼の言ったことを真に受け、ドーカスの杖の写真を紙面に載せ、振ると「強い反動を感じる」と記事に書きました。MACUSA の建物は大きな注目を集めてしまったため、やむを得ず移転しなければなりませんでした。ラパポート議長は、ドーカスの情報に触れたすべてのノーマジの記憶を残らず「忘却」させる ことができたかどうかは定かでないと、国際魔法使い連盟の公聴会で認めざるを得ませんでした。あまりに深刻な漏洩事件だったため 、その影響は長年に渡って残り続けることになったのです。

  • 143121/11/16(火) 21:40:22

    09

    ドーカスを終身刑にせよ、あるいは死刑にせよという声は多く上がりましたが、実際に彼女が収監された期間はわずか一年でした。恥辱にまみれ 、精神的に追いつめられたドーカスは、遠く離れた魔法界に移り住み、鏡とオウムだけを友人としてひっそりと残りの人生を送ることになったのです。

    ドーカスの無分別な行為は、ラパポート法の導入という結果をもたらしました。ラパポート法によって、ノーマジの社会と魔法界は徹底して隔離されることになりました。魔法族がノーマジと友人関係や婚姻関係を持つことは禁じられ、違反者には厳しい罰が科されました。ノーマジとの接触は、生活のために最低限必要な範囲のみに限定されたのです。

    ラパポート法は、アメリカとヨーロッパの魔法界に大きな社会的差異を生み出しました。旧世界においてはノーマジの政府と魔法族の政府はある程度の協力関係を維持していたのですが、MACUSA はノーマジの政府とは一切の関わりを持とうとしませんでした。ヨーロッパの魔法族がノーマジを配偶者や友人とする一方で、アメリカの魔法族はノーマジを敵視するようになっていきました。すでに極度に疑い深くなっていたノーマジの対策に苦慮していたアメリカの魔法界は、ラパポート法の成立以降、いっそう深く地下に潜っていくことになったのです。

  • 144121/11/16(火) 21:40:46

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    1920年代のアメリカ魔法界

    第 1 次世界大戦は 1914 年に始まり、1918 年まで続きました。 この戦いにアメリカの魔法使いたちが参加していたことは、ノーマジの同胞にはほとんど知られていません。魔法使いの協力があったのは両陣営とも同じで、そのため魔法が戦いの趨勢に決定的な影響をおよぼしたわけではありませんでしたが、彼らの活躍によって多くの味方の命が救われ、多くの敵の魔法使いが倒されたことは事実です。

    こうしてノーマジと魔法族が共通の目的のために協力したとはいえ、MACUSA はノーマジとの交流を許さないという方針を変えることはなく、ラパポート法も依然として有効でした。1920 年代に入るころには、アメリカ魔法界はヨーロッパとは比べものにならないほどの秘密主義の下で生活することに慣れ、魔法界の仲間内だけで付き合う相手を選ぶことに慣れ始めていました。

    ドーカス・トゥエルブツリーズが引き起こした機密保持法違反の大惨事の記憶は色濃く残り、「ドーカス」という言葉は魔法界では愚か者や無能な者を指すスラングとして使われるようになりました。MACUSA は国際機密保持法違反に対して厳罰を科す姿勢を取り続けるだけでなく、ゴーストやポルターガイストといった魔法的現象や、さまざまな魔法生物に対しても、ヨーロッパの魔法界よりはるかに厳しい目を向けていました。そうしたものはノーマジの注目を集め、魔法の存在を知られるきっかけとなってしまう恐れがあったためです。

    1920 年代には、MACUSA の拠点はニューヨークにありました。1892 年に起こったサスカッチの大反乱(これについては、オルティーズ・オフラハティによる名著「ビッグフットの最後の抵抗」に詳しく記されています)の後に、5 回目となる移転によってワシントンから居を移していたのです。20 年代を通して MACUSA 議長の席に就いていたのは、ジョージア州南東部のサバンナ出身の魔女、セラフィーナ・ピッカリー でした。

  • 145121/11/16(火) 21:41:04

    11

    1920 年代のイルヴァーモーニー魔法魔術学校は、創立から 2 世紀以上を経て、世界でも最も優れた魔法教育機関の 1 つとして広くその名を知られるようになっていました。普通教育の普及は進み、すべての魔法族が、魔法の杖の使用に熟達することが可能となっていました。

    19世紀末には、アメリカの魔法族全員に杖の所持許可証の携帯を義務づける法律が制定されました。魔法に関わる活動のすべてを MACUSA が把握し、魔法族の犯罪者を杖によって識別することが目的でした。杖作りの最高峰といえばオリバンダーという評価が固まっていたイギリスとは異なり、北アメリカ大陸においては 4 人が杖作り 名人として知られていました。

    チョクトー族の血を引くシコバ・ウルフは、サンダーバード(フェニックスによく似たアメリカの魔法鳥)の尾羽を芯とする、複雑な彫刻が施された杖の制作を得意としていました。ウルフの杖は扱いには熟練を要しましたが、非常に強い魔力を持つものが多く、特に変身術の魔法の使い手に重宝されました。

    ジョハネス・ジョンカーはマグル生まれの魔法使いでした。ジョンカーの父は熟練の家具職人であり、ジョンカー自身は熟練の杖職人になりました。ジョンカーが手がけた杖の多くは美しいあこや貝のインレイ装飾が施されていたため、一目でジョンカーの作とわかり、大変人気がありました。ジョンカーは様々な芯を試しましたが、最終的に好んで杖の芯に用いたのは豹に似たワンプスキャットの毛でした。

    ティアゴ・キンタナの手によるすらりとした長めの杖は、売り出されると同時に魔法界で大きな話題となりました。アーカンソー州のホワイト・リバー・モンスターの背から取り出した半透明の脊椎骨が芯として埋め込まれ、力強く優雅な呪文を放つことができるのです。ホワイト・リバー・モンスターをおびき出す方法はキンタナしか知らない秘密であったため、乱獲が始まる恐れはありませんでしたが、キンタナはその秘密を生涯誰にも教えることはありませんでした。そのため、キンタナの死後ではホワイト・リバー・モンスターの脊椎を用いた杖は作られていません。

  • 146121/11/16(火) 21:41:20

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    ヴィオレッタ・ボーヴェはニューオーリンズの著名な杖作り人であり、沼サンザシの木を材質とする杖だけを作り続けていました。杖の芯に何を使っているのか、彼女は長年明かそうとしませんでしたが、やがて明らかになった芯の正体はルーガルー(ルイジアナ州の沼に棲む、犬の頭を持った凶暴な怪物)の毛でした。吸血鬼が血を求めるがごとく、ボーヴェの杖は黒魔術を求めるという声もしばしば聞かれましたが、1920 年代の魔法族の英雄の中には戦いに赴くときはボーヴェの杖を使った者も多く、MACUSAのピッカリー 議長もボーヴェの杖の所有者として知られていました

    ノーマジの社会とは異なり、1920 年代のアメリカ魔法界において、MACUSA が魔法族の飲酒を禁じるようなことはありませんでした。当時は禁酒法の時代であり、魔法族だけが飲酒をしていては目立つ恐れがあると 、MACUSA の方針を批判する声は多かったのですが、あるとき珍しくくつろいだ雰囲気のピッカリー 議長が、首席補佐官に、魔法族としてアメリカに住むことがすでに大変な苦労であり、「ギグルウォーター(酒を意味する 1920 年代のスラング)だけは譲れない」と語ったという有名な逸話があります。

  • 147121/11/16(火) 21:42:26

    アメリカ合衆国魔法議会 (マクーザ) 01

    起源

    アメリカ合衆国魔法議会(通称米国魔法省)は、米国の魔法使いたちの間ではマクーザ(MACUSA)の略称で呼ばれ、国際機密保持法の導入を受けて1693年に設立されました。この時期、世界中の魔法使いたちは、1つの転換期を迎えていました。より自由で幸福な生活を送るには、魔法使いに適した支援を提供し、魔法使い独自の体制を整えた秘密組織が必要だと考えたのです。こうした機運の高まりは、特にアメリカで顕著でした。その少し前にセーレムの魔女裁判が行われたからです。

    この議会は、英国魔法省の前身である英国魔法評議会を模範にしています。北米全土の魔法使いのコミュニティから議員が選出され、アメリカの魔法族を取締まると同時に護る法律を制定するのが議会の役目でした。

    マクーザの主要な目的は、金銭目当てに仲間の魔法族を狩り出す、「スカウラー」と呼ばれる腐敗した魔法使いたちを、北米から一掃することでした。第2の法的な課題は、マクーザ設立以前に、母国にあるような法の執行機関が存在しなかったのをよいことに、欧州その他から数多くの魔法界の犯罪者たちが米国に逃亡してきていたことです。

    マクーザの初代議長、ジョシア・ジャクソンは好戦的な魔法使いで、その強硬なところが、セーレム魔女裁判時代後の難しい局面を取り仕切るにふさわしいと、議員の投票で選ばれました。

    設立当初の数年間、マクーザは決まった拠点を持たず、ノーマジに悟られぬよう、その時々で集会の場所を変えていました。

  • 148121/11/16(火) 21:42:56

    02

    法の執行

    ジャクソン議長の緊急課題は、「闇祓い」志願者を募集して訓練することでした。初代「闇祓い」として訓練された12人の名は、米国魔法界の歴史上、特別な位置を占めています。闇祓いの数は少なく、任務は困難を極めたため、志願者たちは、この仕事に就くからには命を捨てる覚悟が要ることを知っていました。以来米国では、この闇祓いの子孫たちに特別な敬意が払われています。初代闇祓い12名の名前は次の通り。


    ウィルヘルム・フィッシャー
    セオダード・フォンテーン、
    ゴンダルファス・グレイブス
    ロバート・グリムスディッチ
    メアリー・ジョーンシー 
    カルロス・ロペス
    マンゴ・マクダフ
    コーマック・オブライエン
    エイブラハム・ポッター
    バーティルド・ロッシュ
    ヘルムート・ヴァイス
    チャリティ・ウィルキンソン

    12人のうち、長生きできたのはたった二人でした。チャリティ・ウィルキンソンはのちにマクーザの第3代議長となり、セオダード・フォンテーンの直系であるアジルバートは、イルヴァーモーニー魔法魔術学校の現校長です。さらに特記すべきは、今なおアメリカ魔法界の政治に影響力を持つゴンダルファス・グレイブスの家系と、エイブラハム・ポッターです。熱心な系図学者たちが数世紀のちに明らかにすることですが、ポッターの家系は、後々かの有名なハリー・ポッターにつながります。

  • 149121/11/16(火) 21:43:25

    03

    数々の課題

    北米は、長い間、魔法族にとってもっとも厳しい環境にありました。ノーマジの社会に巧みに身を隠した「スカウラー」たちの子孫のせいで、魔法を怪しげなものとする風潮が続いていたからです。西洋の大多数の国々とは違い、ノーマジ政府とマクーザとの間にはまったく協力関係がありませんでした。

    当初はアパラチア山脈に魔法で隠された立派な建物が作られ、ここがマクーザの本拠地として定められましたが、時が経つにつれて、ここは山奥で不便だということになりました。魔法使いたちもノーマジ同様、都会に集まって暮らしていたからです。

    1760年、派手な気性のソーントン・ハーカウェイ議長の下、マクーザは議長の住むバージニア州ウィリアムズバーグに移りました。多趣味なハーカウェイ議長は、特に「クラップ(ジャック・ラッセルに似た犬ですが、尾が二股に分かれている)」のブリーダーとして知られています。クラップは魔法使いには忠実ですが、その分ノーマジに対して攻撃的です。不幸にして、ハーカウェイの飼い犬たちが近所の数人のノーマジを襲い、噛まれた被害者はその後48時間、ただ吠えることしかできませんでした。これは「国際機密保持法」の重大な違反であり、ハーカウェイは不名誉な辞職に追い込まれました。(ウィリアムズバーグに米国で最初の精神科専門病院が作られたのは単なる偶然ではないでしょう。実はまったく正常なノーマジが入院させられたのは、ハーカウェイ議長の住居付近で奇妙な出来事を目撃したせいだ、と説明できるかもしれません。)

    次にマクーザは、エイブル・フレミング議長の時代に、その住居のあったボルティモアに移りましたが、独立戦争が勃発し、ノーマジの議会が同じ市に設立されたことで、当然ながらマクーザは神経を尖らせ、現在のワシントンDCの地に移りました。

  • 150121/11/16(火) 21:43:47

    04

    その新しい地で、エリザベス・マクギリガディ議長が、1777年のあの悪名高い「国か族か」の論争の議長を務めました。北米中の何千人という魔法使い・魔女が、マクーザに集まり、参加者を収容するために魔法で拡張された大議事堂での特別議会に参加しました。争点は、居を定めた国に忠誠を尽くすか、それともグローバルな地下組織である魔法族の社会に忠誠を誓うか、でした。英国のマグルからの独立のために戦うアメリカのノーマジに加わる道義的責任はあるか?それとも、自分たちの戦いではないと切り捨てるか?

    賛否両論の議論が長引くうちに、戦況は激しさを増していきました。介入賛成派は、多くの命を救えるかもしれないと論じ、反対派は、戦いで正体を現すことで、魔法族自らの安全を危険にさらすと反論しました。ロンドンの魔法省に使者が送られ、英国魔法省は参戦するつもりかと問合わせたところ、短い四文字の答えが返ってきました。「我傍観す」。マクギリガディ議長の有名な返信はさらに短いものでした。「しかと」。米国の魔法使いたちは、公には参戦しませんでしたが、非公式に近所のノーマジを守るために介入した例は多かったのです。魔法社会も米国の一般の社会とともに独立記念日を祝いました ― ただし必ずしも肩を並べて祝ったわけではありませんが。

    1790年、アメリカ魔法界の最も重要な法律の一つが制定されました。魔法社会とノーマジ社会を完全に分離する法令を、マクーザが可決したのです。当時のエミリー・ラパポート議長の名をとってラパポート法と呼ばれるこの法律が制定されたきっかけは、前代未聞の国際機密保持法の違反です。ラパポート議長の下で働いていた財・ドラゴット管理官の娘と、スカウラーの子孫が事件を起こし、魔法の存在が危うく全世界に露見しそうになったのです。ラパポート法の制定により、魔法使いとノーマジ間の結婚はおろか、友人関係さえ、米国では非合法となりました。

  • 151121/11/16(火) 21:44:06

    05

    マクーザは1892年までワシントンDCにありましたが、サスカッチ(別名ビッグフット)の予期せぬ大反乱が、またしても機密保持を危うくしました。歴史家はこの反乱を引き起こした責任が、「魔法生物(ヒト型)保護局」の局長、アイリーン・ニーダンダーにあるとしています。彼女は、自らの職責を「一線を越えた」サスカッチを容赦なく攻撃することだと解釈しました。サスカッチがワシントンDCに大挙して押し寄せたことで、マクーザは大掛かりな「忘却術」処理と本拠地の大幅な修理を余儀なくされました。

    新たな隠れ家を必要としたマクーザは、その後数年間にわたりニューヨークの新築ビルの建設チームに魔法使いたちを忍び込ませました。ウールワース・ビルとして竣工したこの建物は、ノーマジを収容できるばかりか、正しい呪文をかければ魔法使い用の空間に一変するのです。外から見て、ここがマクーザの新たな秘密の本部であることを示すものは、入り口の上に彫られたフクロウだけです。

  • 152121/11/16(火) 21:44:45

    06

    1920年代のマクーザ

    魔法界の政府はたいていそうなのですが、マクーザもまた、最大の部署は「魔法法執行部」です。

    1920年代、ラパポート法はまだ効力をもっており、マクーザには英国魔法省にはない部局がいくつかありました。例えば、ノーマジとの友好を取締まる局や、杖所持許可証を発行・検証する管理室などで、米国内では市民も旅行者も、常にこの許可証を携帯しなければならなかったのです。

    当時の米国と英国の魔法省の著しい違いは、重大な犯罪に対する刑罰で、英国ではアズカバン送りになりましたが、米国では極悪人は死刑に処せられました。

    1920年代のマクーザ議長は、ジョージア州サバンナ出身のセラフィーナ・ピッカリーでした。また、魔法法執行部部長は、12人の初代闇祓いの子孫として広く尊敬を集めていた、パーシバル・グレイブスでした。

  • 153121/11/16(火) 21:45:31

    イルヴァーモーニー魔法魔術学校 01

    北米の偉大な魔法魔術学校は17世紀に創立されました。グレイロック山の頂に立つこの学校は、様々な強い呪文で非魔法族の目から隠されています。ときには呪文がうっすらとした雲の輪のように見えることがあります。

    起源はアイルランドに

    イゾルト・セイアは1603年ごろの生まれで、アイルランドのケリー州、クームラフラの谷で幼少期を過ごしました。両親とも純血の魔法族の家系です。

    父親のウィリアム・セイアは、有名なアイルランドの魔女、モリガンの直系で、モリガンはカラスに変身する「動物もどき(アニメーガス)」でした。自然との強い絆をもつ子どもだった娘を、父親は「モリガン」という愛称で呼んでいました。イゾルトは両親に愛されて、とてものどかな子ども時代を送りました。両親は近所のマグルたちを目立たないように助け、人にも家畜にも等しく、魔法の治療薬を作ってやりました。

    ところが5歳のとき家を襲われ、イゾルトは両親とも失ってしまいました。イゾルトを火の中から「救出した」のは、母親と疎遠になっていた伯母のゴームレイス・ゴーントで、イゾルトをクームラフラの隣にあるクームカリーの谷、別名「鬼婆の谷」に連れて行って、そこで育てました。

    長じるにつれ、イゾルトは、伯母が救出者ではなく、実は両親を殺して自分をさらったのだと気付きます。精神不安定で残忍なゴームレイスは狂信的な純血主義者で、近所のマグルたちに親切な妹のもとでは、イゾルトが道を誤り、非魔法族の男と結婚するような危険に走ると思い込みました。姪を「まともな道」に引き戻し、モリガンとサラザール・スリザリンの子孫にふさわしく、純血の魔法使いとだけ交わるべきであるという信念を持たせるには、姪をさらって育てるしかない、というのがゴームレイスの考えでした。

  • 154121/11/16(火) 21:45:59

    02

    イゾルトには手本が必要だと考えたゴームレイスは、自らが模範を示そうと、住まいの近くにたまたま迷い込んだマグルや動物に呪いをかけて、その場面を無理やりイゾルトに見せつけました。付近に住む人々は、まもなくゴームレイスの家に近づかなくなり、それからというものは、友達だった村人とも切り離され、付き合いと言えば、イゾルトが庭で遊んでいるときに石をぶつける村の男の子たちだけになってしまいました。

    ホグワーツから手紙が届いた時も、ゴームレイスはイゾルトが入学することを許しませんでした。「穢れた血」がうようよしている危険な平等主義の学校に行くより、家で学ぶ方が多くを学べるという考えからでした。しかし、ゴームレイス自身はホグワーツで学んだので、学校のことをイゾルトにいろいろと話して聞かせました。もっとも、学校をけなすのが主な目的で、魔法族の純血化を図ったサラザール・スリザリンの計画が実らなかったことを嘆きました。半分まともではないと思える伯母に隔離され、不当な扱いを受けていたイゾルトにとって、ホグワーツは天国のように思え、10代のほとんどを、学校のことをあれこれ空想して過ごしました。

    12年間、ゴームレイスは強力な闇の魔術でイゾルトを無理に従わせ、隔離し続けました。しかし、若い娘に成長し、ついに十分な力と勇気を身に着けたイゾルトは、自分の杖を持つことを許されていなかったため、伯母の杖を盗んで逃げだしました。杖のほかに持ち出したものは、「ゴルディオスの結び目」をかたどった母の形見の金のブローチだけでした。こうしてイゾルトは祖国を離れました。

    ゴームレイスの仕返しと並外れた追跡能力を恐れたイゾルトは、いったん英国に逃れましたが、たちまちゴームレイスに嗅ぎつけられてしまいました。養母に決して見つからないように身を隠そうと決意したイゾルトは、髪をバッサリ切りました。イーライヤス・ストーリーという名のマグルの少年に扮したイゾルトは、1620年にメイフラワー号で新世界へと航海します。

  • 155121/11/16(火) 21:46:19

    03

    イゾルトは最初のマグルの入植者に交じってアメリカに到着しました。(アメリカの魔法社会では、マグルは「ノーマジ」と呼ばれます。ノー・マジック、つまり魔法を使えない者の略称です。)上陸後、イゾルトは周辺の山の中に身を隠しました。同じ船で到着した人たちは、「イーライヤス・ストーリー」もほかの多くの入植者と同様、厳しい冬の寒さで死んでしまったのだろうと考えました。入植者たちから離れたのは、ひとつにはゴームレイスが新大陸まで追ってくるのではないかと恐れたからですが、メイフラワー号での船旅の間に、魔女と友達になれる清教徒はそう多くはないだろうと思うようになったからでもあります。

    見知らぬ国の厳しい環境の中で、イゾルトは一人ぼっちでした。イゾルトの知る限り、周囲何千マイルとは言わないまでも、何百マイルの中で、イゾルトは唯一の魔女でした。ゴームレイスの偏った教育には、ネイティブ・アメリカンの魔法使いの情報はありませんでした。しかし、山中で数週間を一人で過ごすうちに、イゾルトは、これまでまったく知らなかった二種類の魔法生物に出会いました。

    「ハイドビハインド(隠れ妖怪)」は、森に住む夜行性の妖怪で、ヒトまたはそれに類する生物を獲物にします。背後に隠れるという名が示すように、いかようにも形を変えて、あらゆるものの陰に隠れ、狩人や獲物の目から完全に身を隠すことができます。ノーマジも、この妖怪の存在には薄々気づいてはいたものの、とうてい敵う相手ではありません。ハイドビハインドに襲われて生き延びられるのは、魔法使いや魔女だけです。

    パクワジもアメリカ固有の生き物です。背が低く、灰色の顔に大きな耳を持つ生物で、欧州のゴブリン(小鬼)の遠縁にあたります。強烈な自立心を持ち、狡猾で、ヒト(魔法族であろうとなかろうと)があまり好きではなく、独自の強い魔力を有しています。狩には猛毒の矢を使い、ヒトに悪さをして楽しみます。

  • 156121/11/16(火) 21:46:39

    04

    この二つの生物が森で出くわしました。桁はずれに大きく強いハイドビハインド妖怪が、まだ若くて経験の浅いパクワジを襲って捕え、まさに腹を裂こうとしていたところを目撃したイゾルトが、呪いを放って妖怪を追い払いました。パクワジもまた、ヒトにとっては非常に危険な生き物であることを知らないイゾルトは、パクワジを抱き上げ、仮住まいの小屋に運んで、元気になるまで看病しました。

    パクワジは、借りを返す機会がくるまでイゾルトに仕える義務がある、と宣言しました。いつ何時パクワジやハイドビハインド妖怪に襲われるかもしれないのに、見知らぬ土地を一人でうろつきまわるような愚かな若い魔女に借りができたのは、パクワジにしてみれば大きな屈辱でした。それからというもの、イゾルトは、ぶつくさ言いながら重い足取りでついてくるパクワジの文句を四六時中聞かされながら、毎日を過ごすことになりました。

    恩知らずのパクワジだとはいえ、イゾルトはおもしろがって、一緒にいられることを喜んでいました。やがて二人の間には、それぞれの種族の歴史に前例のない友情が育っていきました。自らの種族のタブーを忠実に守るパクワジが、名前を明かすことを拒んだため、イゾルトは自分の父親の名前である「ウィリアム」という呼び名をつけました。

  • 157121/11/16(火) 21:47:07

    05

    角水蛇

    ウィリアムは自分の知っている魔法生物をイゾルトに教え始めました。一緒に蛙頭の「ホダッグ」の狩を見物しに出かけたり、ドラゴンのような「スナリーガスター」と戦ったり、生まれたばかりの「ワンプス」の幼獣たちが夜明けに戯れあう姿を眺めたりしました。

    イゾルトが一番引き付けられたのは、額に宝石のはまった巨大な「角水蛇(つのみずへび)」で、近くの小川に棲んでいました。案内役のパクワジでさえ恐れているこの角水蛇がイゾルトに親しみを感じた様子に、パクワジは驚きました。イゾルトが角水蛇の話しかけた言葉がわかると言うのには、ウィリアムはますます驚かされました。

    水蛇との不思議な親近感や、水蛇がイゾルトに何事かを教えているらしいことは、ウィリアムには話さない方がよいと考えたイゾルトは、一人で小川を訪れ、パクワジにはそのことを内緒にしていました。水蛇はいつも同じことを言いました。「私がおまえの家族の一部になるまでは、おまえの家族は暗い運命を背負っている」

    イゾルトには家族はいません。アイルランドにいるゴームレイスを家族と呼ぶなら別ですが。イゾルトには水蛇の謎の言葉の意味が理解できませんでしたし、話しかける声が聞こえると錯覚しているのかどうかもわかりませんでした。

  • 158121/11/16(火) 21:47:34

    06

    ウェブスターとチャドウィック・ブート兄弟

    悲劇的な状況の下でではありましたが、イゾルトはやっと自分と同じ種類の人間と出会いました。ある日、ウィリアムと一緒に森で食べ物を集めていたとき、不気味な音が聞こえてきました。ウィリアムはイゾルトに動くなと叫ぶなり、毒矢をつがえて木々の間を駆け抜けていきました。

    ウィリアムの指示には当然従わず、あとを追ったイゾルトは、まもなく森の小さな空き地で恐ろしい光景を目にしました。かつてウィリアムを殺そうとしたあのハイドビハインド妖怪が、今度こそ首尾よく、何も知らない夫婦を取り殺し、死体が地面に転がっていたのです。そればかりか、重傷を負った小さな男の子が二人、そのそばに倒れ、いまや腹を裂かれようとしている両親のあとに、同じ姿になるのを待つばかりなのです。

    パクワジとイゾルトは力を合わせて、たちまちハイドビハインド妖怪を倒し、今度こそ破滅させました。午後の一仕事に気をよくしたパクワジは、倒れている子どもたちのかすかなうめき声には耳もかさずに、クロイチゴ摘みを続けようとしました。怒ったイゾルトが、二人の少年を家まで運ぶのを手伝うようにとパクワジに命令すると、ウィリアムは癇癪を起して、二人の子どもはもう死んだも同然だと言いました。人間を助けるなど、パクワジ種族の信条に反することで、イゾルトの場合は、命を救われたために、彼にとっては不幸な例外なのです。

    パクワジの非情さに激怒したイゾルトは、少年一人の命を救うことで、貸しを返してもらったことにする、とパクワジに言いました。少年は二人とも虫の息だったので、「姿現わし」で運ぶのは危ないと思ったイゾルトは、二人を抱えて家まで運ぶと言い張りました。パクワジはしぶしぶ年長の男の子―チャドウィックという名でした―を運ぶことを承知し、イゾルトは弟のウェブスターを小屋まで運びました。

  • 159121/11/16(火) 21:47:57

    07

    怒りの収まらないイゾルトは、家に着くなり、ウィリアムにもう用はないと言いました。パクワジはイゾルトをにらみつけ、姿を消しました。

    ブート兄弟とジェームズ・スチュワード

    イゾルトは、助からないかもしれない二人の少年のために、たった一人の友人を失ってしまいました。幸い二人は助かり、その上魔力があることに気付いたイゾルトは、驚くと同時に喜びました。

    チャドウィックとウェブスターの両親は魔法使いで、すばらしい冒険を求めて息子たちをアメリカに連れてきたのですが、森に迷い込み、ハイドビハインド妖怪に出くわしてしまったことで、家族の冒険は悲劇に終わりました。この見知らぬ生き物に出会ったとき、ありふれた「まね妖怪のボガート」だと思い込んだ父親のブート氏が、「ばかばかしい」と叫んで退治しようとしたことから、イゾルトとウィリアムが目撃したような恐ろしい結果になってしまったのです。

    それからの二週間、子どもたちの容態がとても悪く、イゾルトはとうていそばを離れることができませんでした。子どもたちを助けるほうが急を要したので、両親を手厚く埋葬できなかったのが、イゾルトには気がかりでした。チャドウィックとウェブスターがやや回復し、数時間ならそばを離れられるようになった時、子どもたちがいつの日かお参りできるような墓を作るために、イゾルトは森に戻りました。

    空き地に着いてみると、驚いたことに、そこには若い男性がいました。彼もプリマス入植者の一人で、ジェームズ・スチュワードという名前でした。アメリカへの船旅の間に親しくなったブート一家の姿が見えなくなったので、森まで探しに来たところだったのです。

  • 160121/11/16(火) 21:48:21

    08

    イゾルトが様子をうかがっていると、ジェームズは手で掘ったお墓に墓標を立て、亡骸のそばに落ちていた二本の折れた杖を拾いました。ブート氏の折れた杖からはみ出ている「ドラゴンの心臓の琴線」の芯が火花を放っているのを、いぶかしげに眺めていた若者は、何気なしに杖を一振りしました。ノーマジが杖を振ると必ず起こることですが、杖が反発して、ジェームズは空き地の端まで仰向けに吹き飛ばされ、立木に打ちつけられて気を失ってしまいました。

    ジェームズが目を覚ましたところは、木の枝と動物の皮でできた小屋で、イゾルトに看病されていました。そんな狭い小屋の中では、イゾルトは若者から魔力を隠すことができません。それに、ブート兄弟を回復させるための薬を煎じたり、狩をするために杖を使ったりしなければなりません。若者が脳震盪から回復したら「忘却呪文」で忘れさせ、プリマス入植者たちのところに送り返すつもりでした。

    それまでの間、話し相手になってくれる大人がそばにいるのはすばらしいことでした。しかもこの若者は、船旅のときからブート兄弟をかわいがっていて、魔法で受けた傷が癒えるまで二人の遊び相手になってくれました。そればかりか、英国では石工だったジェームズは、グレイロック山の頂に石造りの家を建てる手助けまでしてくれました。造りやすい設計図のおかげで、イゾルトは午後半日をかけただけで家を完成させたのです。イゾルトは新しい家を「イルヴァーモーニー」と名付けました。自分の生まれた家、そしてゴームレイスが破壊した家の名前です。

    イゾルトはジェームズに「忘却呪文」をかけようと毎日心に誓ったのですが、一日延ばしに日が過ぎ、一方ジェームズの魔法に対する恐れは日に日に薄らいでいき、とうとう、お互いに愛し合っていることを認めて結婚し、一緒に前に進むのが一番すなおだということになりました。

  • 161121/11/16(火) 21:48:49

    09

    四つの学寮

    イゾルトとジェームズはブート兄弟を自分たちの養子だと思っていました。イゾルトは、ゴームレイスから聞いた話の受売りでしたが、ホグワーツのことを二人に話して聞かせました。二人ともホグワーツに憧れ、ことあるごとに、みんなでアイルランドに戻って入学案内を待てばよいのに、なぜそうしないのかと聞きました。ゴームレイスの話で二人を怖がらせたくなかったイゾルトは、そのかわりに、11歳になったらなんとかして二人に杖を見つけてあげるし(両親の杖は修理のしようもないほどに破壊されていたのです)、今住んでいる家で魔法学校を始めるから、と約束しました。

    チャドウィックとウェブスターはその考えに夢中になりました。二人の考える魔法学校のあるべき姿は、ほとんどすべてがホグワーツ校に倣ったものでした。ですから、学校には四つの学寮がなければならないと言い張りました。創設者である自分たちの名前を寮の名前にする案は、すぐに没になりました。ウェブスターが、「ウェブスター・ブート」なんていう名前の寮では、寮対抗で勝つ見込みがないと思ったからです。むしろ、それぞれの好きな魔法生物の名前を付けることにしました。チャドウィックは賢く、ただし怒りっぽいところのある子でしたから、飛ぶと嵐を巻き起こす「サンダーバード」を選びました。議論好きでも、きわめて忠実なウェブスターは、豹に似た魔法生物の「ワンプス」を選びました。俊足で強く、しとめるのはほとんど不可能な動物です。イゾルトは、言うまでもなく「角水蛇」です。そのときもまだ会い続けていましたし、不思議な親近感を感じていたからです。

    好きな生物を問われて、ジェームズはとまどいました。家族の中でただ一人のノーマジでしたから、ほかの家族が親しくなり始めていたような魔法生物とは、交わることができなかったからです。結局「パクワジ」の名前を選んだのは、イゾルトから聞かされていた気難し屋のウィリアムの話で、いつも笑わされていたからです。

    こうしてイルヴァーモーニーの四つの学寮が成立しました。四人の創設者はまだ気づいていなかったのですが、気軽に名づけたつもりの寮に、創設者それぞれの個性が流れ込むことになったのです。

  • 162121/11/16(火) 21:49:17

    10



    チャドウィックの11歳の誕生日があっという間に近づき、イゾルトはどうしたら約束の杖を与えられるのか、途方にくれました。イゾルトの知る限り、アメリカに存在する杖は、ゴームレイスから盗んだものだけでした。それを分解して構造を調べる気にはとてもなれず、子どもたちの両親の杖を調べても、芯に使われたドラゴンの心臓の琴線もユニコーンのたてがみも、とうに萎びて生気を失っていることが分かっただけでした。

    チャドウィックの誕生日の前夜、イゾルトは夢を見ました。角水蛇をさがして小川に下りていくと、流れから姿を現した水蛇が頭を下げて、イゾルトがその角から細長い一片を削り取っています。暗闇で目を覚ましたイゾルトは、小川へと向かいました。

    角水蛇はそこで待っていて、夢で見たときとまったく同じように頭を下げました。角の一部を削ぎ、お礼を述べて家に帰ったイゾルトは、ジェームズを起こしました。家族の住む小屋がここまでに美しくなったのは、ジェームズに石や木材を扱う腕があったからです。

    翌朝目を覚ましたチャドウィックのそばには、とげのあるトネリコの木に繊細な彫刻を施し、水蛇の角を芯にした杖が置かれていました。イゾルトとジェームズが、ひときわ優れた力を持つ杖を、みごとに作り上げたのです。

  • 163121/11/16(火) 21:49:35

    11

    イルヴァーモーニー校の創立

    ウェブスターが11歳になるころには、家族で開いた小さな学校の評判はすでに広まっていました。ネイティブ・アメリカンのワンパノアグ族出身の男の子が二人と、ナラガンセット族の女の子二人が母親と一緒に入学し、全員が、自分たちの習い覚えた魔法を教えるのとひきかえに、杖の技を学びたがりました。イゾルトとジェームズは、二人で作った杖を全員に与えました。しかし、自衛本能のなせるわざか、イゾルトは角水蛇の芯の杖だけは、二人の息子にしか持たせませんでした。イゾルトとジェームズは、そのかわりにほかの様々な芯が使えるようになりました。ワンプスの毛、スナリーガスターの心臓の琴線、ジャッカロープの枝角などです。

    1634年には、家庭学校はイゾルトたちの描いた夢をはるかに超える規模に成長していました。家は年々拡張され、生徒の数も増えて、まだ学校の規模が小さい時でさえ、ウェブスターの夢だった寮対抗試合ができるほどの生徒が在籍していました。しかし、学校の評判は、まだネイティブ・アメリカンの種族や欧州からの入植者たちの間にとどまっていたので、寮生はいませんでした。イルヴァーモーニーに寝泊まりしていたのは、イゾルト、ジェームズ、チャドウィック、ウェブスターと、イゾルトの産んだ双子の女の子だけでした。姉はジェームズの亡くなった母親と同じ名のマーサ、妹はイゾルトの母親の名をとって、リーニャと名付けられました。

  • 164121/11/16(火) 21:49:56

    12

    ゴームレイスの復讐

    幸せで忙しい日々を送っていたイゾルト一家は、恐ろしい危険が遠くから近づいてくることなどまったく気が付きませんでした。マサチューセッツ州に新しい魔法学校ができたというニュースは、かつての祖国にまで届いていました。噂では、そこの女性の校長が、アイルランドの有名な魔女にあやかって、モリガンと呼ばれているとか。その学校の名がイルヴァーモーニーだと聞いて初めて、ゴームレイスは事情を飲み込みました。イゾルトが正体を隠したままアメリカくんだりまで逃れ、マグル生まれどころかマグルそのものと結婚し、学校を開いて魔法力のかけらしか持たない者まで教育しているのです。

    ゴームレイスは、イゾルトに盗まれた先祖代々伝わる貴重な杖の代わりに、軽蔑していたオリバンダーの店で杖を入手していました。姪が気付いた時にはどうしようもないほどぎりぎりまで近づいてやる、と決めたゴームレイスは、イゾルトと同じことをしたとは知らずに、男性に変装して、ボナベンチャー号でアメリカに渡りました。よこしまなゴームレイスは、自分が殺害したイゾルトの父親、ウィリアム・セイアの偽名で旅をしました。ヴァージニア州に上陸した後は、ひそかにマサチューセッツ州のグレイロック山を目指し、到着したのはある冬の夜でした。ゴームレイスのねらいは、第二のイルヴァーモーニーを壊滅させること、偉大な純血の家族を作るという自分の野望をくじいたイゾルト夫婦を殺すこと、そして神聖な血筋の最後の子孫となる双子の娘をさらって「鬼婆の谷」に連れ帰ることでした。

    グレイロック山の頂に建つ大きな花崗岩の家が、暗闇の中に浮かび上がるのを目にするなり、ゴームレイスは二人の家に向けて強力な呪いを飛ばしました。イゾルトとジェームズの名前を唱えた呪いは、二人を魔法の眠りに陥(おとしい)れました。

  • 165121/11/16(火) 21:50:24

    13

    次にゴームレイスは、シューッと一言、パーセルタング、蛇語を唱えました。すると、それまで長年にわたってイゾルトに忠実に仕えた杖が、彼女の寝ているベッド脇の小机の上でブルッと震え、力を失いました。何年もその杖を使ってきたにもかかわらず、イゾルトは、それがホグワーツの創設者の一人であるサラザール・スリザリンのものであることも、魔法の蛇、しかもバジリスクの角の一片が芯に使われていることも知りませんでした。杖は命令されれば「眠る」ようにと、作り手によって教え込まれており、その秘密は、杖を所有するスリザリンの子孫に何世紀にもわたって受け継がれていました。

    しかし、眠らせることのできなかった住人がもう二人いることを、ゴームレイスは知りませんでした。16歳のチャドウィックと14歳のウェブスターのことは、まったく聞いていなかったからです。もう一つゴームレイスが知らなかったのは、この二人の杖の芯に水蛇の角が使われていたということです。ゴームレイスの蛇語の呪文でも、二人の杖は力を失いませんでした。それどころか、古(いにしえ)の言葉の響きに反応した魔法の芯が、ご主人様の危険を感じ取って振動し、角水蛇が危険を知らせるときとそっくりの低い旋律を発し始めたのです。

    ブート兄弟は目を覚ましてベッドから飛び起きました。チャドウィックは反射的に窓の外を見ました。そこには、木立を縫って家に忍び寄る影 ― ゴームレイス・ゴーントの黒い影がありました。

    チャドウィックも、子どもというものの例にもれず、養父母が考えているよりずっと多くのことを耳にし、理解していました。親の二人は、殺人鬼のゴームレイスのことを何も知らせないようにしてチャドウィックを護ってきたつもりでしたが、それは思い違いでした。まだ小さい時に、チャドウィックは、イゾルトがなぜアイルランドから逃れてきたかを話すのを漏れ聞いてしまいました。両親ともまったく気付いていなかったのですが、チャドウィックは、木立を縫ってイルヴァーモーニーに忍び寄る老魔女の夢に何度もうなされていたのです。いまこそ、悪夢が現実のものとなりました。

  • 166121/11/16(火) 21:50:48

    14

    チャドウィックはウェブスターに、両親に危険を知らせろと言うなり階段を駆け下り、これしか道はないと思える行動をとりました。外に走り出てゴームレイスと立ち会い、家族が眠っている家の中に入れないようにすることです。

    ゴームレイスはティーンエイジャーの魔法使いに出会うとは思ってもいませんでしたし、はじめは侮っていました。ところがチャドウィックは魔女の呪いを見事にかわし、一対一の決闘を始めました。ほんの数分の戦いで、ゴームレイスは、自分の力がはるかに勝っているにせよ、この少年には能力があり、よく訓練されていることを認めざるを得ませんでした。少年の頭めがけて服従の呪文をかけ、家の方へと押し戻しながらも、ゴームレイスは、彼ほどの才能ある者が純血なら殺したくはないと言い、少年の血筋を問いただしました。

    一方ウェブスターは両親を揺り起こそうとしましたが、呪いの眠りが深く、ゴームレイスの叫び声も家を撃つ呪いの音も、二人の目を覚まさせはしませんでした。そこでウェブスターも階段を駆け下り、いまや家のすぐ外に迫っていた決闘に加わりました。

    二対一の戦いは魔女にとってもより厄介でしたし、その上ブート兄弟の杖の一対の芯は、二本一緒に共通の敵に向かうことで、十倍も強力になりました。それでもゴームレイスの魔力は強く、闇の魔術は二人を相手にしても屈しません。いまや決闘は熾烈を極めていましたが、ゴームレイスは高笑いを止めず、純血の証(あかし)を見せれば情けをかけると約束しました。チャドウィックとウェブスターは、魔女が家族に手をかけるのを絶対に食い止める覚悟でした。しかし兄弟は家の中まで押し戻され、壁がひび割れ、窓ガラスは砕けました。それでもイゾルトとジェームズは眠り続けています。そのとき、二階で寝ていた双子の赤ん坊が目を覚まし、おびえて激しく泣きだしました。

  • 167121/11/16(火) 21:51:11

    15

    その声が、イゾルトとジェームズを眠らせていた呪いを劈(つんざ)きました。激戦の音も魔法も二人を目覚めさせることはできませんでしたが、怖がる娘たちの泣き声が、ゴームレイスのかけた呪いを破ったのです。呪いも、それをかけたゴームレイス自身も、愛の力を計算にいれていませんでした。イゾルトはジェームズに、二階の娘たちのそばに行くようにと叫び、自分はスリザリンの杖を手に、息子たちの加勢に駆け付けました。

    憎い伯母を攻撃しようと杖を上げたとき初めて、イゾルトは、杖が役に立つどころか、眠った杖はその辺に転がっている棒切れほどの役にも立たないことに気が付きました。ゴームレイスは満足げにほくそ笑みながら、イゾルトとチャドウィック、ウェブスター兄弟を階段に追い詰め、姪の娘たちの泣き声が聞こえるところまで、じわじわと階段を上っていきました。そしてついに、赤ん坊の寝室のドアを吹き飛ばしました。そこには、娘たちのベビーベッドの前に、死をも辞せずに立ちはだかるジェームズの姿がありました。もはや万事休すと思ったイゾルトは、自分でも気付かずに、殺された父親の名前を大声で呼んでいました。

    ガタガタという大きなもの音とともに、部屋に射し込む月の光が遮られ、パクワジのウィリアムが窓の敷居の上に現れました。ゴームレイスが状況を飲み込む間もなく、毒矢が彼女の心臓を貫いていました。ゴームレイスはこの世のものとも思えぬ叫び声をあげ、その声は周囲何マイルにもわたって聞こえたほどでした。自らを無敵の者にするためあらゆる闇の魔法に浸ってきた老魔女の体は、数多(あまた)の呪いがパクワジの矢尻の毒に反応して、炭のように固く、もろくなり、千千(ちぢ)に砕け散りました。オリバンダーの杖は地面に落ちて破裂しました。ゴームレイス・ゴーントの残骸は、くすぶる灰の山と、砕けた杖、そして焦げたドラゴンの心臓の琴線だけでした。

  • 168121/11/16(火) 21:51:28

    16

    ウィリアムが一家の命を救ったのです。感謝する一家に対して、ウィリアムはわめき散らしました。これまで10年もの間、一度も自分の名前を口にしようともしなかったくせに、迫りくる死の恐怖に駆られて初めて名前を呼ぶとは不快千万だと。イゾルトには、呼んだ名前のウィリアムが別人であることを伏せておくだけの気配りがありました。ジェームズは何度も話に聞いていたパクワジに出会えたことがうれしくて、パクワジたちが人間嫌いであることも忘れ、ウィリアムが困惑するのもかまわずに固く握手しました。そして、自分がイルヴァーモーニーの学寮の一つに、彼にちなんだ名前を付けさせてもらえたことがとてもうれしいと言いました。

    このほめ言葉の一言が、ウィリアムの怒りを和らげた、というのが通説です。というのも、次の日に自分の家族を引き連れてイルヴァーモーニーに移ってきたからです。そして、相変わらずぶつくさ言いながら、ゴームレイスが破壊した家の修理を手伝ったのです。それから、魔法使いは自らを守ることさえできない鈍い連中だと言い切り、大枚の黄金を対価にする交渉をして、学校専属の番人・管理人になりました。

  • 169121/11/16(火) 21:52:05

    17

    スリザリンの遺産

    スリザリンの杖は、ゴームレイスの蛇語の命令に従って眠ったままでした。イゾルトは蛇語が話せませんでしたし、いずれにしても、不幸な子ども時代を思い出させる最後の遺物には、もう触れる気がしませんでした。イゾルトはジェームズと二人で、杖を家の敷地の外に埋めました。

    一年も経たないうちに、杖を埋めた場所から、スネークウッドの一種の見知らぬ樹木が生えてきました。枝を落とそうとしても、切り倒そうとしても、この木は頑として逆らったのですが、やがて数年も経つと、その葉に強力な薬効があることが分かりました。あちこちに散らばったスリザリンの子孫と同様、この杖も聖と邪との両面を併せ持っていたことを、この木が証明しているようでした。どうやら、サラザール・スリザリンの最もよい部分が、アメリカに移り住んだようです。

  • 170121/11/16(火) 21:52:33

    18

    学校の発展

    イルヴァーモーニー校の名声は年々高まり、花崗岩の家は拡張されて城になりました。増え続ける教育の需要に応じて教師も増えていきました。北米中の魔法使いの子どもたちがこの学び舎に送り込まれるようになり、学校は全寮制になりました。19世紀に入るころには、イルヴァーモーニー校の国際的な知名度も高まり、それが今日まで続いています。

    イゾルトとジェームズは長年にわたって共同で校長を務め、何世代にもわたる生徒たちから、家族同様に慕われました。

    チャドウィックは熟達した魔法使いとなり、広く旅をしました。著書の「チャドウィックの呪文集 第I巻から第VII巻」は、イルヴァーモーニー校の指定教科書として使われています。メキシコの癒者、ホセフィーナ・カルデロンと結婚し、カルデロン=ブート家は、今日もなお、アメリカ魔法界のもっとも著名な名家の一つになっています。

    MACUSA(マクーザ アメリカ合衆国魔法議会) が創設されるまで、新世界の魔法界には警察庁に当たる組織がありませんでした。ウェブスター・ブートは、今でいう「闇払い」として、委託された任務に就いていました。ある極悪人の闇の魔法使いをロンドンに強制送還する任務に就いていたときに、ウェブスターは、英国の魔法省で働いていた若いスコットランドの魔女と恋に落ちました。こうしてブート家は母国に戻り、その子孫は、ホグワーツで教育を受けることになります。

  • 171121/11/16(火) 21:52:55

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    ジェームズとイゾルトの双子姉妹の姉マーサは、魔力のないスクイブでした。両親にも義理の二人の兄にも深く愛されて育ったのですが、魔法が使えないのにイルヴァーモーニーで成長していくのは辛いことでした。結局マーサは、ポコムチュク族の友人の兄弟で魔法力のない男性と結婚し、それ以来ノーマジとして暮らしました。

    双子の妹のリーニャは、長年イルヴァーモーニー校で、「闇の魔術に対する防衛術」を教え、生涯独身でした。家族のだれも確認してはいませんが、噂では、姉のマーサと違ってリーニャは生まれつき蛇語が話せたらしく、スリザリンの血を次の世代に伝えまいと決意していたというのです。(アメリカのこの家族は知らなかったのですが、ゴームレイスはゴーント家の最後の末裔ではなく、その血筋は英国で続いていました。)

    イゾルトとジェームズはともに百歳を超えるまで生きました。イルヴァーモーニーの粗末な小屋が花崗岩の城となるのを見届け、北米中の魔法族が、子どもをその学校で教育したいと騒ぎ立てるほどに有名になったのを知って亡くなりました。二人は職員を増やし、学寮を建て、巧みな呪文の数々で学校をノーマジの目から隠しました。こうして、ホグワーツへの入学を夢見た少女は、それに比肩する学校を北米に創立することになったのです。

  • 172121/11/16(火) 21:53:15

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    イルヴァーモーニーの今

    創設者の一人がノーマジだったことからも想像できるように、イルヴァーモーニー校は全世界の魔法の名門校のなかで一番民主的であり、エリート主義ではなかったことで知られています。

    イルヴァーモーニー城の正面扉の両脇には、イゾルトとジェームズの大理石の像が立っています。扉を開けると、ガラスの円天井(まるてんじょう)の下に円形の部屋があり、二階の高さにぐるりと木のバルコニーがめぐらされています。それ以外はがらんとした広間ですが、学寮を表す巨大な木製の彫刻が四体置かれています ― 角水蛇、パンサーのワンプス、サンダーバード、そしてパクワジです。

    新入生は、全校が円形のバルコニーから見下ろす中、並んでこの広間に入ってきます。新入生が壁に沿って並ぶと、一人ずつ名前を呼ばれ、石床の中央にはめ込まれた「ゴルディオスの結び目」の印の上に進み出ます。静まりかえった広間で、全校が、魔法のかかった彫刻の反応を待ちます。角水蛇がその生徒を欲しがれば、額にはめ込まれた水晶が輝きます。ワンプスがほしがれば吠えます。サンダーバードが受け入れれば翼を羽ばたかせ、パクワジは矢を高く掲げます。

    二体以上が同時にその生徒を入寮させたがった場合、選ぶのは生徒です。ごくまれに ― 十年に一度くらいでしょうか ― 四つの寮が全部受け入れたがることがあります。セラフィーナ・ピッコリー(1920年-1928年 MACUSA議長)が同世代ではただ一人その光栄に浴した魔女ですが、彼女は角水蛇を選びました。

  • 173121/11/16(火) 21:54:29

    >>172

    セラフィーナ・ピッコリー →おそらくピッカリーの誤植ですね。

  • 174121/11/16(火) 21:55:02

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    イルヴァーモーニーの各学寮は、魔法使いや魔女のすべてを表現していると言われることがあります。角水蛇は頭脳を表し、ワンプスは身体を、パクワジは心を、そしてサンダーバードは魂を表します。別の言い方では、角水蛇は学者を好み、ワンプスは戦士を、パクワジは癒者を、そしてサンダーバードは冒険家を好むと言います。

    ホグワーツ校とイルヴァーモーニー校の主な違いは、「組分け儀式」だけではありません。(もっとも、両校は多くの点で似通っています。)どの寮に入るかが決まると、新入生は別の大ホールに誘導され、そこで杖を選びます(むしろ杖に選ばれます)。国際機密保持法を厳格に順守したラパポート法が、1965年に廃止されるまでは、イルヴァーモーニー入学前の子どもは杖を持つことが許されませんでした。その上、学校の休暇中は、杖をイルヴァーモーニーに置いていく決まりでした。17歳になって初めて、学校外で杖を持ち歩くことが法的に許されたのです。

    イルヴァーモーニー校のローブは、イゾルトとジェームズを称える色、青とクランベリー色でした。青はイゾルトの好きな色でしたし、小さい時に入りたかったレイブンクロー寮の色でもあります。クランベリー色はジェームズの大好物がクランベリー・パイだったからです。イルヴァーモーニー生のローブの前は、金色の「ゴルディオスの結び目」で留められています。生家のイルヴァーモーニーの焼け跡でイゾルトが見つけた、あのブローチを記念するためです。

    今に至るまで、学校には多くのパクワジたちが働いています。どのパクワジもぶつくさ文句を言い、もうこんなところにはいたくないと言い続けながら、なぜか何年たっても出ていきません。その中に目立って年老いたパクワジがいて、「ウィリアム」と名を呼ぶと応えます。イゾルトとジェームズの命を救った、あのウィリアムではないかと言われると、そのパクワジが生きていればもう300歳は超えているはずだと笑い飛ばします。しかし、パクワジが正確にどのくらい長生きするのかを知る者はいません。このウィリアムは、学校の正面入り口に立つイゾルトの大理石の像を、自分以外のだれにも磨かせません。そして、毎年彼女の命日になると、その墓にメイフラワーの花を供えるウィリアムの姿を見かけます。無粋にもそのことを口にするものがあると、ウィリアムはひどく不機嫌になるのです。

  • 175121/11/16(火) 22:03:19

    まさかの残り30レス以下…意外に長引いてしまいましたが持ってる分は終了です。
    英語版には海外の魔法学校について(もちろん日本も)やポッター家の祖先について(魔法薬で当てて金持ちになったそうな)もあるそうですが日本語はナシ!誰か英語に自信ある方翻訳して!
    一応Harry Potter Wikiあたりで調べるとざっくりの内容は出てきますのでお暇なら是非。

  • 176二次元好きの匿名さん21/11/16(火) 22:28:19

    あにまんに貼りついてダラダラ時間を浪費したり、合わない意見に出くわしてむしろ不愉快な思いをしたことが多かったが、
    このスレを見れたことであにまんにいて良かったと断言できる

オススメ

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