【SS】君ならで 誰にか見せむ 梅の花

  • 1二次元好きの匿名さん23/02/28(火) 22:20:42

    「ねぇ、キミ、いちごを食べたくない」
     
    「コロッケはいらないの?」
     
    「うん、コロッケはいいかな、今はいちごが食べたいかな」   
     
    「分かった。いちごを買ってくるよ」
     
     そして、いちごを買いに商店街の八百屋に向かう。最初はコロッケを食べる予定だったが、今が旬のいちごが目に止まったのか、いちごを買うことに。自分が担当するウマ娘、ミスターシービーの計画通りにならないことは、最初は戸惑いもあったが慣れたものだ。

    「買ってきたよ」

    「ありがとう、トレーナー。家で帰って食べるより見晴らしの良い所で食べようか」
     
     買ったいちごを持ちながら、シービーに連れられて、行くあてもなく歩いて行く。
     暖かい日差しが指して、吐く息はもう白くはならず、肌に刺すような北風は頬を撫でるような爽やかな風に変わり吹いていく。
     道端に枯れている草も少しずつだが緑色を取り戻し始めている。あぁ、もうすぐ春なんだと改めて実感する。彼女に連れられて、散歩するようになってからか、草花や生き物、川などの自然と触れ合ううちに、自然の移り変わりにも敏感になった気がした。

  • 2二次元好きの匿名さん23/02/28(火) 22:21:28

    自分が大人になるにつれて、子供の時のように外で遊ぶことでしか得られない、自然の変化を肌で感じる機会が減っていたのかもしれない。年齢を重ねていくうちに、自然と触れ合う外よりも家の中でゲームをしたり、動画を見たりなど娯楽に費やす時間が増えていたからだろう。
     だからだろうか、彼女の目的地のない散歩は、子供の時に持っていた自由奔放さを思い出すきっかけをもたらせてくれた。彼女の走りに夢をみるのも、子供時代に感じた知らない世界を切り開くワクワク感を思い出してのことなのかもしれない。そんなことを思い耽ってるうちに、

    「ふふ、ここでいちごを食べようか」
    シービーは語りかけてくる。
     
     最初は山を目指していたが、シービーが連れて来た場所は紅白の梅の花が咲き誇る公園だった。
     桜のように枝全体に咲くのではなく、ポツン、ポツン咲く梅の花は可愛らしく見え、紅白入り混じった景色は美しいものだった。

  • 3二次元好きの匿名さん23/02/28(火) 22:24:12

    公園に入って、梅のほんのり甘い香りとその光景を楽しみながら、歩いて行ったシービーは

    「うん!ここなら両方の梅を楽しめるね」
     
     と言いながら、ベンチの上に座ると、彼女はこちらを招くようにベンチをポンポンと叩く。

    「ほら、早くおいでよ」
    と言ってくるので、俺は言われるがままに隣に座り、二人で梅を見ながら、買ってきたいちごを食べる。

    「うん、いちご美味しいね。いちごはやっぱり、この甘酢っさがいいよね」
    「…ああ、そうだね。うん、美味しい」

     二人で食べるいちごは甘酸っぱく、春の訪れを感じさせる味だった。

    「梅の花って、こんなに可愛いく咲くなんて知らなかったよ」
    「ふふ。春は桜っていうけど、梅もいいものでしょ。桜にはないの色や香りが好きでさ」
     
     シービーは梅を見上げながら語る。
     確かに、桜とは違う可愛らしい梅の花は綺麗だと素直に思う。

  • 4二次元好きの匿名さん23/02/28(火) 22:24:58

    「君ならで 誰にか見せむ 梅の花 色をも香をも 知る人ぞ知る」
     
    「えっと?……短歌?」

    「そうそう。梅を読んだ短歌。昔は桜より梅が人気っぽくってさ。題材にした短歌が多かったらしくて、この歌もその1つだよ」
     
     シービーが語った内容は朧げながら確か古典の授業で習ったことを思い出した。

    「確か、古典でそんなことを言ってたような……。短歌の意味は何かな?」

    「ふふ。それは、調べてみなよ。きっとさ、意味を知った方がもっと楽しめるからさ」
    とシービーは右目をウインクしながら、こちらを微笑んだ。

    「わかったよ。帰ったら、調べてみるよ」
    俺が答えると、シービーは満足そうな顔をしていた。

     いちごを食べ終わった後に、シービーは先にベンチから立ち上がり、
     
    「ねぇ、先に近くで梅を見に行かくから、着いてきてよ」
    「いいよ、いこうか」
     
     そう行って、シービーは先に梅の近くまで駆け出し、木の前でこちらに手を差し出しながら立つ。
     その時に吹いた風が梅の紅白の花びらが桜吹雪のように、シービーを包み込む。
     まるで、彼女の走る姿を祝福しているかのように、シービーの姿は美しく見えた。
     その姿に見惚れていたせいか、一瞬だけ足を止めてしまったが、すぐに追いかけた。
     
     そうして、青空の元、紅白の梅の下で彼女と春の訪れる健やかな時を過ごした。
     

  • 5二次元好きの匿名さん23/02/28(火) 22:29:03

     シービーの得意なことに短歌を読むとあったので、春とか色々組み合わせて書いてみました。
     
      

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