- 1二次元好きの匿名さん23/03/01(水) 02:10:26
誰かがそう言っていた。
新しく導入されたVRには、三女神様と同じ名前のAIが居て、様々なアドバイスをくれる。足の使い方、トレーニングの方法、リスクケア。トレーナーと二人三脚でやってきた練習はあっという間にアップグレードした。
私の走りは、ちょっと前とは見違えて良くなった。だけど、
「4着、6着、4着、8着……」
これまでの模擬レースの着順だ。私はまだ、一度も勝ててない。だって、私が強くなるよりもずっと、他の娘達は速くなっているから。
AIは残酷だ。私達の素質を、きっと余すことなく引き出してくれるからこそ。どうにもならない壁が浮き彫りになる。才能を燻ぶらせていた娘が、花開く。私は、そうじゃなかった。私には、磨けば光る才能なんてものは無かった。
負ける度トレーナーは、私に何度も謝った。私の力をもっと引き出せていればと。女神様のもとに何度も通って、改善点も幾つも出してくれた。弱点を、幾つも潰していった。それでも届かない。きらきらと輝く星のような眩しい娘だけじゃなくて、同じくらいと思っていた娘たちにも、どんどんと差をつけられる。
頑張れば、本気を出せば。そんな逃げ道すらもう何処にもない。同じだけの、それ以上の欠点を彼女達は乗り越えてきたのだろう。他人を怨む気持ちも、妬む気持ちも無い。トレーナーに当たるような子供のつもりもない。ただ、
「……疲れちゃった」
もう、私はシューズを履けなかった。