- 1図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 21:40:55
『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん』二次創作SS!
原作さながらに? 邦画を熱烈プレゼン!
紹介するのはあの異色漫画の実写版『HK 変態仮面』!
パンティーをかぶって脱衣(クロス・アウ)ッ! 正義の(変態)ヒーローに変身する主人公の活躍を描いた漫画『究極!! 変態仮面』。
そのあまりにも(あさっての方向に)ぶっ飛んだヒーロー像が話題を呼んだ伝説の漫画が、いかに実写化されているのか?
そして邦キチこと映子ちゃんは、いかにそれをプレゼンするのか?
『邦キチ』原作の雰囲気を重視した前半と、そこから暴走した後半!
『邦キチ』ファン、『変態仮面』ファン、そして映画ファンにこそ読んでいただきたい一作! - 2二次元好きの匿名さん23/03/01(水) 21:42:25
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- 3図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 21:42:56
部長「さてと、今日も今日とて部室に行って映画話を……というか、また聞く羽目になるんだろうな……邦キチの邦画プレゼンを」
――部長こと|小谷洋一《こたによういち》
『映画について語る若人の部』(要するに映画同好会)部長。好きな映画ジャンルは洋画全般、マーベルコミックス実写系のアクションなど。ジブリやルパンなどメジャーどころのアニメも好き。良くも悪くも普通の男子高校生。――
部長「それにしても。何ていうんだこういうの、二次創作? 【実写化】ならぬ【文章化】?」
「普段『実写化映画がどうのこうの』言ってる俺たちからすればおっかないな……【他人の手による作品化】って」
「どうせあれだろ、原作からのキャラ崩壊だとか、エロい方面に振られたりするんじゃないのか? 不安だな……」 - 4図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 21:43:49
(不吉なことを言いつつ部室棟にやってくると、中から女子の声が聞こえた)
邦キチ「いや~、これはなんとも……何度見ても素晴らしい造形でありまするな~」
――邦キチこと|邦吉映子《くによしえいこ》
『映画(略)部』部長以外で初の部員にして後輩。
好きなジャンルは邦画。とにかく邦画。邦画狂と言っていいほどの邦画大好き女子高生。
いつも(妙にツッコミどころの多い)邦画を発掘してきては愛と勢い(と悪意のないツッコミ)に溢れたプレゼンを所構わずかましてくる、邦画界の歩く爆弾。
まぁまぁ(あくまで「まぁまぁ」)可愛い天然女子。リボンを結んだショート丈のポニーテールがチャームポイント。――
邦キチ「はぁ~、本当に見れば見るほど素晴らしい……お尻でありまする!」
部長「(尻!!?)」
ヤンヤン「確かにナ……役者魂が伝わってくる、いいケツしてるアル」
部長「(また尻!!? 女子二人いて話すこと尻!!? さっそく変な方面に振られてないかこれ!?)」
――ヤンヤンこと|東《トン》|洋洋《ヤンヤン》
隣の『|東洋電影《アジアえいが》研究部』部員(部員は彼女一名)。映画(略)部に入り浸ってるので実質そっちの部員みたいな人。
中国・インドハーフの父とフィリピン・韓 国ハーフの母を持つアジアの申し子。カンフーアクションだけでなく、幅広くアジア映画を推してくるアジア版邦キチ的存在。
褐色の肌にチャイナドレスが映える美人(部活時以外は制服)。―― - 5図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 21:44:36
部長「(いや、いや待て落ち着け俺)」
「(役者魂がどうとか言うからには、俳優の肉体美を指して言ってるんだろう。……尻から伝わるものかはサッパリ分からんが)」
「(映画(略)部の部長として、冷静な対応を――)」
マリア「ほんと、うっとりしてしまいますね……俳優としての覚悟が伝わってくるような、この……ケツえくぼ」
部長「ケツえくぼ!!? って何だよ!!!」
マリア「部長さん!?」
――|石破《いしば》マリア
邦キチの邦画プレゼンに憧れ、彼女を師匠と呼んでいる。
シネマサロン部員だったが映画(略)部に移籍した……わけでもないのかも知れないが、とにかく入り浸っている。
柔らかな物腰や、ふわふわした髪のお嬢さま然としたルックスに反して、映画の好みはエンタメ全振りのアクションや|黒社会《ノワール》、|悪漢《ピカレスク》系。イケメンがいっぱい出るタイプのアニメも好き。―― - 6図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 21:45:06
部長(部室に入って)「ええい、さっきから聞いていれば! 何なんだ女子が三人も雁首揃えて、話すことがケ……尻って! 伝わるのかよそこから俳優の覚悟!? 何なんだよケ……尻えくぼとかって!」
邦キチ(不思議げに目を瞬かせて)「何って……ケツえくぼはケツえくぼでありまするが」
ヤンヤン「だよナー」
マリア「ですよねー」
部長「ねー、で通じ合ってんじゃないぞ女子! 尻の話で! 何だよその話題! そして何だよこの疎外感!?」
ヤンヤン「疎外感も何も……映画系の部活で主役俳優の話をしてただけアルが」
邦キチ「部長~。部長ともあろう方が、ジャンプで連載されていたあの大人気コミックの大人気実写版を御存知ないんですか?」
部長「(それにしても実写版好きだなコイツ)」 - 7図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 21:45:36
邦キチ「これです! 『HK 変態仮面』! あんど慶周先生の傑作『究極!! 変態仮面』実写版でありまする!」
(邦キチが広げた映画のポスター)
(そこには、パンティーの覆面で顔を隠し、筋肉隆々の肉体にスリングショット水着のような――肩から尻と股間にかけてV字の紐が走っているだけのほぼ裸体、超極小衣装――パンツと網タイツをまとった男)
(ある意味異形のヒーローがたくましい背中を――丸出しの尻も――こちらに向けて、雄々しく立っていた) - 8図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 21:46:35
部長(吹き出して)「う……ぷ、くく……は、ははは……!」
邦キチ「部長?」
部長「いや、すまん……原作は俺も読んだし好きなんだが、なんか……くくっ、その格好、その格好を大マジメに実写化しただけで面白いなんて……ぷぷ……ズルいなこれ! 面白いけど!」
邦キチ「部長~。笑っている場合ではありませぬ。今ご自分がおっしゃった内容が、どれだけこの映画のすごさを物語っているか気づきませぬか?」
部長「え? 『原作の格好を』『大マジメに実写化して』『面白い』……はっ!?」
「(そうだ、俺たちは何度も――主に邦キチのプレゼンで――見てきたじゃないか)」
「(『原作から思いっきりオリジナル路線に行ってしまった実写版』)」
「(『逆に、原作に忠実に作ったあまり、現実感と乖離してしまった実写版』)」
「(『言いづらいけどなんかアレな実写版』の数々を!)」
「(だがこれは、逆に――)」 - 9図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 21:47:02
「そういえば原作に何度もあったぞ……『変態仮面の変態な格好を見た悪党が、思わず爆笑して隙を見せてしまう』シーン! まさにさっきの俺のような!」
「つまり俺は……『原作に忠実な主役のビジュアルだけで』『原作の登場人物と同じ心理状態に引きずり込まれた』ってことか……!?」
邦キチ「そう! まさにそれなのです! そしてそれを可能にした大きな要素が……主演・鈴木亮平の肉体美なのです!」
部長「確かに。全裸に近い半裸で戦う主人公なら、その最大の衣装は『俳優自身の肉体』ってことか」
ヤンヤン「つまり……ケツだナ」
マリア「尻ですね」
部長「尻に戻ってきた!? いや、尻の話はいいだろ、筋肉がすごいって話だろ!」
邦キチ「いえ、つまりそれを集約すると……尻なのです!」
部長「何が!!?」 - 10図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 21:47:34
ヤンヤン「ヤレヤレ……お前、ヤンヤンたちがイヤラしい目線で鈴木亮平の尻を見てたと思ったナ? まあソレもあるが――」
部長「あるんかい」
ヤンヤン「筋肉界隈にはこういう格言があるアル――『鍛え具合を見たければ下半身を見よ』と」
マリア「体を鍛える方はついつい腕や胸、つまり上半身を重点的に鍛えてしまいがちだそうです。ズボンに隠れている下半身と違って、他人からも自分からも目につき易い部位だからでしょうね」
ヤンヤン「そういう、上半身ばっか鍛えてるような奴は筋肉界隈で『チキンレッグ(ニワトリみたいなヒョロ脚)』と呼ばれてバカにされるアル。けど――鈴木亮平はそんなこと言われるタマじゃないアル」
邦キチ「見て下さい、腕や背中の筋肉だけじゃない、この脚、太もも、そして……お尻!」
ヤンヤン「|大腿《だいたい》筋――太もも――は人体で最も大きな筋肉。軽視されがちな下半身が最も重要な筋肉というのは皮肉アルが、だからこそここを鍛え込んでるかどうかを見られる箇所アル。亮平のたくましい大腿筋、そこから続く引き締まった|大臀《だいでん》筋……つまり尻。それがまさに、ガチの筋肉!」 - 11図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 21:56:13
マリア「そして鍛え抜いて筋肉を肥大させ、脂肪をそぎ落とした尻の両サイドに現れるくぼみ、美の曲線……ケツえくぼ。いい……」
ヤンヤン「いい……」
邦キチ「はい……」
部長「……いや、何だこの空気! どうしたらいいんだよ俺! ていうかそんな筋肉界隈の住人なのかお前ら!」
ヤンヤン「これぐらいは常識アル。本格中国拳法マンガ『拳児』でも基本中の基本として『とにかく足腰を鍛えろ』って言ってたからナ。武術でもスポーツでもそのほとんどは『足腰で発生させたエネルギーを手に伝える動作』……腕はテクニック担当であってパワー源じゃない以上、上半身だけ鍛えても強くはなれないのアル」
部長「そういや『鬼滅の刃』の岩柱こと|悲鳴嶼《ひめじま》さんも、足腰を鍛えろって言ってたな」 - 12図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 21:57:15
邦キチ「そんな鈴木亮平でありまするが。なんとこの肉体を作り上げるため、いったんわざと15キロも太った状態にまで脂肪をたくわえてから鍛えていったそうでありまする!」
部長「15キロ!? 脂肪で!?」
邦キチ「まず脂肪を増やして体を大きくした後、筋肉を鍛えて脂肪を落としていく方法を取ったそうです。『失敗したら俳優生命が終わる』という覚悟で挑んだそうですね」
部長「それで失敗したら肉体美どころかデブだもんな……」
邦キチ「本作の後も鈴木亮平は『天皇の料理番』で【病でやせ細っていく主人公の兄】、『俺物語!!』で【太くたくましい巨漢の主人公】、『|西郷《せご》どん』で【体重100キロの西郷隆盛】を演じておりますね!」
部長「どんな体重の振れ幅だよ! 俳優生命より本人の生命が心配になるわ!」 - 13図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 21:58:16
邦キチ「ということで、まさに俳優魂と覚悟が生んだケツえくぼというわけですね。まあお尻の話はこれくらいにいたしまして」
部長「最初からしなくていいわ! 肉体美に絞って話せよ! ……いや、それより映画自体はどうなんだ」
邦キチ「あらすじでございまするが。正義感は強いがケンカはからっきしのダメな拳法部員、主人公の|色丞《しきじょう》 |狂介《きょうすけ》」
部長「原作では拳法部のエースだったが、変身後との対比を考えればその方がいいかもな。それにしてもすごい名前だ」
邦キチ「まあ変身前でもガタイがすごいので、全く弱そうには見えないのですが(身長186センチ)」
部長「いやまあ、しょうがないけどな身長も鍛えた体も!? その役のために鍛えたんだから!」 - 14図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 21:58:51
邦キチ「そんな彼がパンティーをかぶると……正義と変態の血が覚醒し、限りなく全裸に近いヒーロー『変態仮面』となり! 悪党をバッタバッタとなぎ倒すのです!」
部長「おお、原作どおりだ!」
邦キチ「必殺技は自分の股間に相手の顔を押しつけるわけですが」
部長「原作どおりだ……」
邦キチ「でも原作と違って、パンツの中にまで顔を突っ込ませたりはしないのです……やっていただきかった! 再現してほしかったのです! 役者魂で!」
部長「役者に多くを求めすぎだろ!? 勘弁してやれよ!」
「というか、お前にしては珍しく原作も読んでるんだな」
邦キチ「|私《わたくし》たちからすれば、いわば先輩格のマンガでありまするからね~」
部長「いや、集英社発行のギャグマンガってくくりではそうだが。ざっくりし過ぎだろそのカテゴリー分け」 - 15図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 22:04:15
邦キチ「他に、この映画ではアクション描写も力が入っておりまして! 特に見所はクライマックスのニセ変態仮面との死闘!」
部長「ほう、原作にはなかった展開だな」
邦キチ「お互いに、自分の股間へ相手の顔を押しつけようとする組んずほぐれつの大バトル!」
部長「何だその地獄絵図!」
邦キチ「いかに相手の股間から顔をかわし、いかに相手の顔を股間へ押しつけるか……柔道やプロレスのような組技の試合にも似た、独自の技術体系で魅せる白熱バトルでありました」
部長「白熱したくない絵ヅラだな……」 - 16図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 22:09:13
邦キチ「とにかく! そうしたコミカルな姿で、なのに肉体も強さも正義感も本物のヒーローで! なのに変態扱いされて! 実際変態ではあるのですが! という……ギャップの触れ幅が楽しい作品となっておりまする!」
部長「なるほどな……近年では【シリアスな笑い】という、大マジメにやってるのになんか変、というギャグの概念があるが、その系譜なのかもな」
「欧米では結構古くからあるらしくて、【キャンプ】と呼ばれる概念だそうだ。『バットマン』なんかも元々はその系統として見られていた、と聞いたことがあるぞ」
邦キチ「つまり! 変態仮面こそは正当なヒーローの系譜にしてバットマンの後継、そういうことでありまするね!」
部長「そうはならんだろ!? オマージュ元的にはスパイダーマンの方だろうし! 目つきとか紐での空中移動とか」 - 17図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 22:17:14
部長「いやーしかし……ヒーローとして考えれば、変態仮面の変身方法もスゴいよな。【パンティーかぶって】【脱衣する】んだから」
「まあ考えてみたらバットマンやアイアンマンなんかも【特殊スーツを着る】んだから、着替えるという意味では近いんだが」
ヤンヤン「まあそうアルが。変身アイテムがパンツっていうのは……」
部長「そうなんだが……でもちょっとだけ、分かる気もするんだよな」
ヤンヤン「ハ?」
部長「いや、笑い話だと思って聞いてほしいんだが。【思春期男子のエロス】を【正義のパワー】にもしも変換できたとしたなら。確かにあれぐらい強くなれるんだろうな、という説得力というか男子としての実感が――」
ヤンヤン(部長から遠ざかりながら冷たい目で)「何言ってるアルお前」
マリア(さりげなく遠ざかりながら笑顔で)「ちょっと分かりませんねー」
部長「だから冗談だって言ったろ! 別に俺がパンツかぶるとかじゃ――」 - 18図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 22:18:02
(そのとき、邦キチは)
(ごく自然に、自分のスカートの中に手を入れ)
(何かを、下半身から脱いで取り出し)
(それを。見えないようハンカチに包み、丁寧に畳んだ)
邦キチ(部長に差し出して)「ハイっ」
部長「……え?」
ヤンヤン「え」
マリア「え……」
(その瞬間。部室の空気は凍っていた)
部長「(えーーーーーーーっっ!!?)」 - 19図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 22:18:47
邦キチ「|私《わたくし》、常々思っていたのです……この部という素敵な居場所を作って下さった部長に、いつかご恩をお返ししたいと」
(包みを持ったまま前に出てくる)
「ゆえに、今日はまたとない好機! こんなものでパワーが得られるのでしたらいくらでも――」
部長(後ずさりながら)「待て、待て邦キチ! そんなこと俺は求めてなんか――」
邦キチ(ぐいぐいにじり寄りながら)「受験、卒業、就活……部長の人生にもこれから、大変なことがたくさんあるでしょう。そんなときに|私《わたくし》のこれを! 使って! 存分にパワーを! 発揮していただければと!」
部長(さらに後ずさりながら)「待て、落ち着け! そうだ、そんなもの渡したらお前だって困るだろ――」
邦キチ「いえ、大丈夫でありまする! 今日はたまたま履いてて良かったです~」
部長「(履いてないときあんのお前!!?)」
「(いや待て、おかしいだろこんなの)」
「(いくらSSだからって、二次創作だからってやっていいこととダメなことがあるだろ! 原作はこんなエロスないからなこの野郎!)」
「(頼む……お前ら二人からも何か言ってくれ!)」
ヤンヤン「アッ。そういえばヤンヤン、もうバイトの時間だったかナ~」
マリア「あっ。そういえば私も、家でちょっと用事が~」
(そそくさと出て行く二人は、揃って深く礼をした)
「ごゆるりと……」
部長「(あいつら……っ!! 【虎眼先生の精神状態がヤバいときの虎眼流門下生】みたいな顔で出ていきやがった!? 『シグルイ』の!)」 - 20図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 22:19:32
邦キチ「……部長」
部長「(……ひっ!?)」
「(やめろ……そんな眼をして俺を見るな)」
「(そんな、お前がたま~にする、『全て分かっておりまするよ』みたいな目を)」
「(『あなたの全てを、|私《わたくし》は全て分かっておりまするよ』みたいな)」
「(そんな目をされると、俺は――)」
「(俺は――弱いんだ)」
「(弱い。そんな目をされると――本当に……)」 - 21図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 22:22:09
(そして邦キチは、目を伏せて)
(部室のテーブルの上に、そっ、と包みを置いた)
邦キチ(小さく頭を下げて)「部長。急に無理を言って申しわけありませぬ。これは置いておきますゆえ、必要なときがあればどうかお使い下さい」
「それでは、今日はこれで」
(そうして、それ以上何も言わず)
(邦キチは部室を後にした) - 22図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 22:22:59
部長「…………」
「……何だったんだ」
「いや、というか現状……何なんだこれ」
(息をついて壁にもたれる部長)
「(後輩の パンツと残れる 部室かな ――字余り)」
「(季語はパンツ。その示す季節は春、恋の時節だ)」
「(いや何言ってんだ俺、大丈夫か。大丈夫じゃないなこれ)」
「で、どうしたらいいんだ、これから」
「ふう……疲れたなどうも」
「…………」
(ふと、包みに目をやる)
「……何色なんだろう」
(自分の顔をぶん殴る)
部長「ってバカ! バカか俺は! 俺は変態じゃない、変態じゃない――」 - 23図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 22:23:30
????「――ま……か、聞こえ……か」
部長「何だ? どこからか声が――」
????「聞こ……ますか、聞こえますか……洋一。我はアナタの心の声――深層心理からのメッセージ……アル」
部長「変な語尾ついた今! 中華キャラなの俺の深層心理!?」
深層心理?「洋一よ……恐れることはない……アル。アナタの心のままに行動するがいいアル……つまり――」
「かぶれ。パンツ。四の五の言わずにかぶるアル」
部長「何で!? アグレッシブ過ぎるだろ深層心理!」
???「お待ちなさい!」
部長「また別の声が! 今度は何だよ!」
???「その者はあなたの悪の心……耳を貸してはなりません!」
???「私はあなたの善の心。いいですか部長さ……洋一さん。私の言うことをよくお聞きなさい」
部長「普通に部長さんって呼びそうになったよな今」
善の心?「師匠……いや映子さんが置いていったその下着。決して――」
「――決して! 無駄にしてはいけません!!」
部長「……へ?」
善の心?「いいですか? いったいどんな気持ちどんな覚悟で師匠……映子さんがそれを置いていったと思うんですか!」
「据え膳食わぬは男の恥……かぶりなさい部長さん! 師匠のためだけじゃない! あなた自身の願いのために!!」
部長「エヴァっぽく言ってきた善の心!? というか善悪とも結論同じじゃねーか!!」
「もう、いい加減にしろよヤンヤン! マリア!」 - 24図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 22:28:25
(部室の窓の外から様子を見ていた二人。ヒソヒソと声をかわす)
ヤンヤン「ったく。パンツ一つでまーウジウジとじれったい男アル」
マリア「といいますか……ホントじれったいんですよね~あの二人。つかず離れずでいつも一緒のあの距離で、まだつき合ってないんですからビックリですよね~」
ヤンヤン「パンツでも何でもいいケド、二人がお互いに意識を変えるチャンスだと思ったアルがな~」
マリア「まあ、その手段が下着である必要は全くないんですけど」
ヤンヤン「シカシまあ、アノ二人。つき合うとかどーのこーの通り越して、熟年夫婦感すらあるアルよなー」
マリア「もはやマスオ×サザエを通り越して、波平×フネの次ぐらいの安定感ありますもんねー」
ヤンヤン「なっ!? それもはや人類史上最高レベルの安定感アル!」
部長「何ぶつぶつ言ってんだ外の二人! さっさと帰れよもう! 俺も帰――」 - 25図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 22:30:40
(部室の窓の外から様子を見ていた二人。ヒソヒソと声をかわす)
ヤンヤン「ったく。パンツ一つでまーウジウジとじれったい男アル」
マリア「といいますか……ホントじれったいんですよね~あの二人。つかず離れずでいつも一緒のあの距離で、まだつき合ってないんですからビックリですよね~」
ヤンヤン「パンツでも何でもいいケド、二人がお互いに意識を変えるチャンスだと思ったアルがな~」
マリア「まあ、その手段が下着である必要は全くないんですけど」
ヤンヤン「シカシまあ、アノ二人。つき合うとかどーのこーの通り越して、熟年夫婦感すらあるアルよなー」
マリア「もはやマスオ×サザエを通り越して、波平×フネの次ぐらいの安定感ありますもんねー」
ヤンヤン「なっ!? それもはや人類史上最高レベルの安定感アル!」
部長「何ぶつぶつ言ってんだ外の二人! さっさと帰れよもう! 俺も帰――」 - 26図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 22:31:36
(部長が外へ出ようとしたそのとき)
(息せき切って、邦キチが部室の中へ駆けてきた)
(その勢いのままに頭を下げてくる)
邦キチ「部長! このたびは真に申しわけありませぬ!」
部長「な……何だよ、急に」
邦キチ「本当にすみませぬ……部長のお気持ちも考えず勝手なことを」
部長「いや……いいんだ。……俺もなんか、悪かった。その、お前なりに、俺のためを思ってしてくれたのに――」
邦キチ(聞いてない)「まったく、|私《わたくし》としたことが部長の好みを考えておりませんでした。常に本物志向、パチモンな感じの映画がお好きでない部長に対して、あろうことか――」
「本物の変身アイテムであるパンティーではなく……短パンを渡していたなどと!」
部長「短、パン……」
邦キチ「体育の後でたまたま履いたままにしておりましたので、ちょうど良いかな~と思ったのでありまするが」
部長「(それで、たまたま履いてて良かった、とか言ってたのか)」
「(フ……なんだそうか、短パンかぁ)」
「(俺としたことがすっかり慌てていたな……最初から別に、気をもむようなことでも――)」 - 27図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 22:31:57
「(――いや、充分おかしいわ!!)」
「(後輩が脱ぎたての短パンくれるのも普通に変だろ!)」
邦キチ(全て分かっておりまするよ、という目で)「部長。さ、本物志向の部長にふさわしいのは」
「こっちで、ござりまするね……?」
(す、とスカートの中に手を差し伸べつつ)
(部長の方へとにじり寄る)
部長「(ふりだしに戻ってる!!! 結局パンツくれようとしとる!!?)」
「(~~~ッ!! なんてこった……前半は邦画プレゼンもして、二次創作にしちゃあ平常運転だと思ってたが)」
「(|奴《やっこ》さん、とんだ隠し球だったぜ……! 後半になって牙を剥いてきやがった!)」
「(割といつものテンションのまま、センシティブな方向にグイグイ来やがる……!?)」
ヤンヤン「(そして、外からのぞいてるヤンヤンたちは)」
マリア「(こういうときどんな顔をすればいいか分からないのです。いえホントに)」 - 28図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 22:35:23
邦キチ(さらににじり寄りながら)「さあ、どうしたのでありまする部長? さあ……さあ、さあ――」
部長(後ずさり逃げようとするが、背中が壁にぶつかって動きが止まる)「(~~~ッッ! なんてこった……何かちょっと【変態仮面にじり寄られて股間を押しつけられる悪党の気持ち】が分かっちまったぜ……!)」
「(というか、むしろこの状況に甘んじてしまいたい俺がいる……それが何より怖い……ッ!!)」
部長「(ああ、誰か――)」
「(誰でもいい――)」
「(どうか――)」
「(誰か、助けて……! 誰か、そう、ピンチに颯爽と現れてくれる『ヒーロー』のような――)」 - 29図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 22:35:58
(そのときだった)
(突然。部室のドアを吹っ飛ばして、誰かが室内に倒れ込んだ)
(誰かに殴られたようなボロボロの男が)
倒れた男「ぐ……!」
部長「え? ちょ、何だ――」
(外には、いかにも不良といった格好の男たちが)
(部室の入口を取り巻くように何人もいた)
不良1「なんじゃい、口ほどにもないやんケ」
不良2「ちょーっと他の生徒から通行税取立てよっただけじゃろがい……何の文句があるんじゃいワレ」
不良3「文句あんなら足腰立たんようにしてやっど、おおっ!?」
倒れた男「くそう……」
邦キチ「だ……大丈夫でありまするか?」
(男に巻き込まれるように倒れていた邦キチ)
(男を気づかって近寄る、その手には)
(握られていた――その男にとっての)
(変身アイテムが……!)
倒れていた男「これは……パンティ!? すまない、君――借りるよ」
(素早くパンティを取り、慣れた手つきで顔にかぶる。まるで変身ヒーローの、覆面のように)
部長「これは――」
邦キチ「この方は……まさか――」
倒れていた男「フオオオオオオオオッ! たぎる、たぎるぞ……エクスタシーッッ!! |脱衣《クロス・アウ》ッ!!」 - 30図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 22:37:38
(説明しよう!)
(人間は通常、潜在能力の30%しか使うことができないといわれている――)
(だがこのとき、体内に眠る変態の血が異常興奮に誘発され覚醒し、潜在能力が100%引き出されたのだった!)
(その力を使いこなすヒーローこそが彼、その名も――)
倒れていた男「変態仮面!! 見参!」
(顔を覆うパンティと自らのパンツ、そして脚の網タイツ)
(それ以外の衣服を脱ぎ捨てたたくましいヒーローは)
(自らのパンツに手をかけ、上へ引き伸ばし。肩にかけた。尻に股間に強く食い込んだ、スリングショット水着のような形に)
不良1「ぷ……くくく――」
不良2「な……ぶふっ――」
不良3「は……あははは――」
不良たち「ははは、あはははは!?」
変態仮面「今だ! あたぁ!」
「あたたたたた! あたぁ! ――成敗!」
(あっという間にヒーローは不良たちをなぎ倒し)
(お仕置きとばかりに彼らの頭を収めていた――自らの股間と尻、パンツの内側へ)
(その視線が邦キチへと向けられる)
変態仮面「お嬢さん」
邦キチ「え……」
変態仮面「怪我はありませんか。巻き込んでしまい申し訳ない……だが、貴女のおかげで助かった、礼を言わせてほしい」
(歩み寄る――きつくパンツが食い込んだ股間に、不良たちをぶら下げたまま)
邦キチ「へ……ええええっ!?」 - 31図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 22:37:59
(歩み寄る変態の前に)
(立ちはだかった、彼は――)
(部長、小谷洋一は)
部長「ま……待てい!」
「(実在したの!? とか、あのヒーローが!? とか、思うことは色々あるが)」
「(そんなことよりとにかく変態! 邦キチのパンツかぶってるし!)」
「(だから、よく分からんが、とにかく――)」
「それ以上一歩も近寄るな! 俺の、お……大事な部員に!」
邦キチ「部長……!」
遠巻きに見ていたヤンヤン「(そこは『俺の女』)って言えヨ)」
遠巻きに見ていたマリア「(言えよ)」 - 32図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 22:38:58
(そのとき)
(ヒーローの仮面の奥、鋭利な眼差しが)
(ふ、と緩んだ――そんな風に見えた)
変態仮面「愛……か」
「そう、それこそが全ての力の源」
「私と――同じだな」
(ぽん、と部長の肩を叩く)
「頑張りたまえ。後輩」
部長「え……」
変態仮面「では――さらばだ!」
(股間に挟んだ不良たちを振り落とし)
(ヒーローは駆け出し、去っていった)
邦キチ「部長……あの方は。あの方は、本物の……?」
部長「ああ、もしかしたら、な。――って」
「待て! ちょっと待てオイ、人のパンツかぶったままカッコよく去るんじゃない!! 待てーー!!」
(追って走り出す)
ヤンヤン「ていうかアイツ、自分のパンツみたいな言い草アルな……」
マリア「それより! この不良の方たちと脱ぎ捨てた服! これいつもどうしてるんですか~!?」
(邦キチ、駆けていく部長に向かって大きく手を振る)
邦キチ「部長~! 頑張って下さ~い、部長はいつでも|私《わたくし》のヒーローでありまする~!」
部長「お、おう! ていうかこれ――」
(果てしなく駆けてゆく変態仮面と部長の姿が、遠く小さくなっていく)
「――完全に邦画のオチじゃないか!? 具体的にどの邦画って言われると困るけど!」 - 33図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 22:40:22
――出演――
|小谷洋一《こたによういち》
|邦吉映子《くによしえいこ》
|東《トン》|洋洋《ヤンヤン》
|石破《いしば》マリア
|紅優《こうゆう》高校生徒の皆さん(不良1~3)
|色丞《しきじょう》|狂介《きょうすけ》・変態仮面(特別出演)
――スタッフ――
脚本 図書委員
演出 図書委員
監督 図書委員
――原作――
『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん』(服部昇大 作)
『HK 変態仮面』(福田雄一 監督)
『究極!! 変態仮面』(あんど慶周 作)
――主題歌――
『愛のリビドー(性的衝動)』(筋肉少女帯)
――挿入歌――
『Emotions』(MAN WITH A MISSION)(『HK 変態仮面』主題歌) - 34図書委員◆1NwnY0XjPs23/03/01(水) 22:40:40
――――
変態仮面「むう、このパンティ……色、香り、そしてこのフィット感……三つ星だな」
部長「無駄に高評価!?」
変態仮面「いや、もう少し盛って星3.25か(五段階評価)」
部長「別に高くなかった!?」
――邦キチ二次創作SS製作委員会 2023――
(おしまい)