酢豚ピザで負け越すCBトレ【トレウマSS】

  • 11/423/03/01(水) 23:54:20

    あー、ねむ…なにしようとしてたんだっけ。

    散歩の途中に酢豚にパイナップルはナシだと力説するブライアンを思い出して、パイン入り酢豚を作ろうと思ったんだった。

    それで買い物して、家について。
    ハンモックが目に入ったからつい寝転がっちゃったら、トレーナーがさっさとキッチンに立ったんだった。
    ま、いっかー。

    ぼーっと間接照明のキツネ色を眺めてる内に、「ピザ食べたいな」と言いかけて喉で止まったことに、自分で驚いた。
    止まった事じゃなくて、出かかった方に。

    アタシは好き勝手やってるけど、不義理は嫌。
    作ってくれてる時に別のが食べたくなったなんて言っちゃいけない。

    なのに、出かかった。彼ならこんなバカな事にでも応えてくれるのかなって、期待した?アタシが?

    「シービー?」
    ぽかんとしてると、コンロの前に立ってたトレーナーが火を止めてこっちを向いてた。

    買ったはいいが放ったらかしになってた肉球のワンポイントがついたエプロンは、今やトレーナーに馴染んでる。男の人だからサイズは馴染んでないけど。

    どうした、ってちょっと期待したような穏やかな声で呼ばれる。

    いいや、言っちゃえ。

    「ピザ食べたいなーって」
    「ピザかー」

  • 22/423/03/01(水) 23:54:35

    「電灯のオレンジ色見てたら壁がこんがり焼けてるように見えたんだよね」
    「どういうことだよ?」

    お腹空いたからって壁齧るなよー、と笑いながらトレーナーは冷蔵庫をゴソゴソしてから、またコンロへ向かう。何するんだろ?
    ソファから跳ね起きて肩越しに手元を覗き込むと、フライパンの上に餃子の皮が敷き詰められていた。

    「おお〜」
    「餃子の皮って焼いたらパリパリになるし、行けるかなって」
    「凄いじゃんよく思いつくねー。うりうり」
    「ぐぇわあぁぁやめしびェア゛ア゛ア゛」

    肩を顎先でグリグリしてやると面白い悲鳴が上がった。デスクワークってアタシは絶対無理だろうなー。

    「よし、うどん茹でよう!」
    「急だな!?」

    で。

    「生地もどき完成。あとはチーズと酢豚乗っけてレンチンだ」
    「お見事ー!こっちもうどんオッケーだよ」

    ……茹で上がったはいいけど、お出汁とかあったっけ?
    あ、薬味どうしよう?

    「はい麺つゆ。冷凍の刻みネギが冷凍庫、あとチューブの生姜ならあったよ」
    「準備完璧じゃん。アタシのことなんでも分かるんだね」
    「君が前に思いつきで買って来た物だけどな」

    そうだっけ?

  • 33/423/03/01(水) 23:55:03

    「よし、酢豚ピザの完成…………大丈夫かなこれ」
    「あはは、ゴメンね変なもの作らせて」

    食卓には辛子マヨを和えたクルトン入りの山盛り千切りキャベツ。ヘンテコピザ。さっき茹でたうどん。

    「これで申し訳なくできたら可愛げあるのになーって思うよ。すっごいお世話になってるのに、恩返しみたいなこと全然できてないし」
    「錘になるよりはいいさ」
    「そうだね……アタシは応えられない。全部振り切っちゃう。走り出したら、もう何も気にならない」

    「残酷だよね。アタシがいっちばん楽しいのは、トレーナーのいないターフの上なんだから」

    たくさん準備して、勉強して、夜遅くまで働いて、アタシを鍛えてくれるのに。
    アタシを最高に満足させるのはいつもレースの中。
    そこにはエースがいて、ルドルフがいて。
    キミはいない。

    これだけ尽くしてもらいながら、アタシは外で満足して帰って来るんだ。
    献身的な奥さんがいるのに外で女遊びして帰ってくる悪い旦那みたいだ。性別逆か。

    「仕方ないさ。俺はウマ娘じゃない」

    トレーナーって、どんな気持ちでウマ娘が走るのを見てるんだろうね。
    自分もあの中で走りたいって思えもしない事を、アタシは想像もできない。

    「俺は君が走るのを遠くで見るだけ。だから君に夢を見られた」

    アタシには、永遠に理解できないかもしれない。

  • 44/423/03/01(水) 23:55:59

    「ね、キミはさ」
    「向けられた想いに応えられなくてもいい、惚れた者負けだから、って言ってたけど」

    キミが一番満足してる時、アタシはキミの傍にいないのに。
    アタシに夢見るキミが素敵に見えたから。

    「引き分けになったらどうなるの?」



    「すぐ俺が負け越すさ」
    「…………そっかあ」

    困ったような溜め息と一緒に、穏やかに見つめていた瞳が伏せられた。
    視線を辿るとうどんの入った器が見えたから、ついでにトレーナーによそってあげる。キミは生姜いっぱい入れるんだね。

    「あー、うどんが沁みる」
    「いいでしょ」

    アタシに惑わされて作ったヘンテコピザにかぶりつくと、ざくりと餃子の皮が弾ける。
    じんわり甘いチーズに、酸っぱい黒酢が居座ってる。
    きっと別々にした方が美味しいんだろうけど、これでいいんだって気がする。

    「おいしー」

    ホントかー?と彼が笑った。

  • 55/423/03/01(水) 23:57:18

    こうですか(小声)
    酢豚ピザが美味いかどうかはわかりません(小声)

  • 6二次元好きの匿名さん23/03/02(木) 00:16:25

    どういうスレタイだよ

    惚れた弱味で無限に殴り合え

  • 7二次元好きの匿名さん23/03/02(木) 07:29:18

    同棲してる…!?
    めっちゃ甘え倒してる内心ですごい真面目なのすき

オススメ

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています