- 1二次元好きの匿名さん23/03/03(金) 22:11:40
今日は3月3日、俗に言うひな祭りというやつだ。大雑把に言ってしまえば女の子の健やかな成長を願う日であり、幸せな人生を歩めるように祈る日でもある。そんな日にわたしは休憩室に飾られた雛人形を眺めていた。
「…それにしても誰が用意したのかしらこれ」
「なんか女性陣がお願いして作ったらしいよ。お栄さん達が協力してくれたって」
「急に入ってきたわね…誰かと思えばマスターじゃない。こんなところで何か用事?」
「食堂でひなあられもらったから食べようと思って。今の時間ならここ空いてると思ったんだけど…邪魔だったかな?」
「別にそんな事ないわよ。むしろ話し相手が欲しかったところだし」
「良かった…じゃあここのソファ借りるね」
「良いわよー…って言ってもわたしのものじゃないんだけどね」
「一応先にいたのはクロだし……せっかくだからクロもこっち座って話さない?」
「良いの?ならお言葉に甘えて」
誘われたのでソファに座るマスターの隣を借りる。こうしてると落ち着くのはわたしが彼の隣にいることに居心地の良さを感じているからだろう。
「はい、クロにもおすそわけ」
「ありがと。じゃあ、あーん…」
「口開けて何を…ってまさか」
「食べさせてくれるんじゃないの?」
「…当店はセルフサービスになっております、って言ったら?」
「そう、それならしょうがないわね。でも残念、今日はちょっとぐらいだったら甘えても良いかなーって思ってたんだけど」
「ぐっ…」
「ま、わたしももう11歳だし。甘えるのもそろそろ卒業かしら」
「……やっぱり食べさせるの…その、やっても良いよ」
「本当に?嫌なら無理しなくても…」
「別に嫌ってわけじゃなくて…照れ臭かっただけだから」
「やった♪やっぱりマスターは優しいわね」 - 2二次元好きの匿名さん23/03/03(金) 22:12:01
早速口を開けてマスターに催促する。目の前にいる彼は最初は緊張した面持ちを浮かべていたが、深呼吸をすると手元にあるひなあられをわたしの口元へと差し出してくれる。
わたしはそれを落とさないようにしっかりと口で受け取り、堪能する。カラフルなひなあられは噛むと口の中に優しい甘さが広がっていき、すぐに溶けていってしまった。きっとこの甘さはひなあられだけのものじゃないだろう。
「ん、美味しかったわ」
「そりゃ何よりで。俺が作ったわけじゃないけど」
「それじゃお返しね。はい、あーん♡」
「!?いや、わざわざ食べさせてもらわなくても自分で食べるよ…」
「遠慮しないの。早く口開けて」
「遠慮してるわけじゃ……」
そう言いながらも口を開けてくれる辺り、無意識に期待はしていたらしい。甘えたがり…と言うのは違う気がするが、意外とこういうのが嫌ではないみたいだ。マスターのこんなところを知っているのは多分わたしだけだろう。そうだったら嬉しい。
結局残っていた分も全部食べさせあったのだから驚きだ。誰かがこの様子を見ていたらきっとわたし達は"そういう関係"なのだと思われるはず……マスターが相手ならそれはそれで悪くないか、などと考えながら目の前の雛壇を眺めているとのんびりとした気持ちになってきた。気が緩んできたせいか思ったままのことを思わず口に出してしまう。
「良いわね、こういうのって。ついそのままにしておきたくなるわ」
「でも飾ったままにしておくと行き遅れるって」
「…そういう話があるとしても女の子に向かって言うのはデリカシーがないと思うんだけど」
「……それもそうだ…ごめん…」
「素直なのは良いことだけど、常にそれが良いってわけでもないのを覚えておくように」
「肝に銘じておきます」
そんな他愛もないやりとりをしている内にふとわたしの中のいたずら心が湧き上がってきた。やっぱりわたしはチャンスがあればマスターのことをイジるのがやめられない性質らしい。 - 3二次元好きの匿名さん23/03/03(金) 22:13:01
「……もし本当にそうだとしたら」
「うん?」
「マスターがわたしのこと貰ってくれる?」
「はい!?」
マスターのことを上目遣い気味に見つめながら質問してみる。すると案の定、耳まで真っ赤になったマスターがわたわたしている様子が目に飛び込んできた。普通に考えれば冗談の一つだと分かりそうなものなのに、本気にしているのがなんとも可愛らしい……まぁ、何割かは本気で言ったんだけど。
「どうしたの?すっごく赤くなってるけど」
「どうしたもこうしたも…クロが急に変なこと言い出すから…」
「あら、わたしは本気で言ったわよ?」
「〜〜〜っ!?」
「あははっ、慌ててるあなたも中々可愛いわね♪動画でも撮っておけばよかった」
「勘弁して…」
ひとしきりいじって満足したので彼の方に近づいて体を預けてみる。突然のことにまた驚いていたが、何か考え込むそぶりを見せた後、わたしの肩にそっと手を回して抱き寄せてくれた。嬉しいサプライズ、というやつだ。
そしてこういう時にわたしが喜ぶ事をしてくれ彼を見ると、自分は愛されてるんだなーと思ってしまう……なんとなく顔が熱くなってきたのは気のせいだと思いたい。まぁそれはそれとして、嬉しかったのは事実なのでお礼になるかはわからないけど、わたしの素直な気持ちを伝えておこう。
「さっきの話だけど」
「うん」
「あなたにこの先もそばにいて欲しいって言うのは本当よ?」
「……そっか。じゃあ期待に応えられるように頑張るよ」
「うん、約束よ」
今日は3月3日のひな祭り。女の子の成長を願う日。わたしが今願うものは…
「マスターのそばで支えてあげられる人になりたい…かな」 - 4二次元好きの匿名さん23/03/03(金) 22:14:41
今日はひな祭りですね
自分にはあまり関係ないですが、イチャイチャするクロが書きたくなったので投下させていただきました - 5二次元好きの匿名さん23/03/03(金) 22:28:12
後、今気づきましたが、3レス目の中盤辺りに文字抜けがありますが普通に読む分には恐らく大丈夫なはずなので、気にしないで読み進めてもらえると幸いです
- 6二次元好きの匿名さん23/03/03(金) 22:34:11
うーん口の中がいろんな意味で甘い(作者さん最高です)
- 7二次元好きの匿名さん23/03/03(金) 22:39:35
- 8二次元好きの匿名さん23/03/03(金) 22:59:58
- 9二次元好きの匿名さん23/03/03(金) 23:51:30
クロエには健やかな成長をしてほしいね
変態的な意味とかではなく純粋に - 10二次元好きの匿名さん23/03/04(土) 00:55:11
- 11二次元好きの匿名さん23/03/04(土) 01:42:12
いえいえ、クロの魅力が少しでも広まってれば幸いです
- 12二次元好きの匿名さん23/03/04(土) 12:17:30
もう少しわがまま言っても良いんだよ?ってなる子
まあカルデアだと通りキス魔したり特異点遊びに行ったりして楽しんでるみたいで何よりだけど