【⚓、越境】走れアスカ

  • 1二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:16:26

    ※昔ワンピカテに建ってたスレのアイマス版です、キャラはアイマスキャラであれば何でも可とします


    アスカは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。


    アスカには政治がわからぬ。アスカは、村の>>5である。笛を吹き、>>10と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。

  • 2二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:17:02

    チュパカブラ

  • 3二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:17:22

    お嬢様

  • 4二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:17:25

    傷ついた悪姫

  • 5二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:17:45

    極道

  • 6二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:18:36

    きらり

  • 7二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:19:19

    桜庭薫

  • 8二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:19:37

    あずささん

  • 9二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:20:11

    にちか

  • 10二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:20:23

    美玲

  • 11二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:24:07

    必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。


    アスカには政治がわからぬ。バジルは、村の極道である。笛を吹き、美玲と遊んで暮して来た。


    けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。



    きょう未明アスカは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれたこの市にやって来た。アスカには父も、母も無い。女房も無い。美玲はあるぞ。


    十六の、内気な妹と二人暮しだ。この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿として迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。


    アスカは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。


    アスカには竹馬の友があった。>>15である。

  • 12二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:24:54

    ぴにゃこら太

  • 13二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:25:13

    熊本城

  • 14二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:25:37

    黒井社長

  • 15二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:25:49

    信玄さん

  • 16二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:30:31

    きょう未明アスカは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれたこの市にやって来た。アスカには父も、母も無い。女房も無い。美玲はあるぞ。その上投獄されたぞ。


    (中略)


    アスカには竹馬の友があった。信玄誠司である。


    今は此の市で、石工をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。


    歩いているうちにアスカは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。


    のんきなアスカも、だんだん不安になって来た。路で逢った>>20をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈だが、と質問した。 20は、首を振って答えなかった。


    しばらく歩いて>>25に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。25は答えなかった。アスカは両手で25のからだをゆすぶって質問を重ねた。65は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。

  • 17二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:34:57

    心白

  • 18二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:37:01

    エミリー

  • 19二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:40:44

    うえきちゃん

  • 20二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:43:35

    赤べこ

  • 21二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:46:03

    雪歩

  • 22二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:47:04

  • 23二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:50:31

    小糸

  • 24二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:56:02

    おひお

  • 25二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 17:56:20

    及川雫

  • 26二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 18:09:31

    のんきなアスカも、だんだん不安になって来た。路で逢った赤べこをつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈だが、と質問した。赤べこは、首を振って答えなかった。


    しばらく歩いて雫に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。雫は答えなかった。アスカは両手で雫のからだをゆすぶって質問を重ねた。おっぱいも揺れた。雫は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。

    「王様は、人を殺します。」

    「なぜ殺す?」

    「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」

    「それほど多くの人の命を奪ったのか」

    「はい、はじめは王様の妹婿さまを。それから、御自身のお世嗣を。それから、妹さまを。それから、妹さまの御子さまを。それから、皇后さまを。それから、賢臣の>>30様を。」

    「なるほど…国王も痛い奴らしいな。」

    「いいえ、痛い奴ではございませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮しをしている者には、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。御命令を拒めば十字架にかけられて、殺されます。きょうは、六人殺されました。」

    聞いて、アスカは激怒した。

    「十字架…?やっぱ痛い奴じゃないか」

  • 27二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 18:18:08

    赤べこはそら首ふるだけで答えないわな…

  • 28二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 18:20:43

    シャニP

  • 29二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 18:23:15

    シャニPの両親

  • 30二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 18:23:44

    ぴにゃこら太

  • 31二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 18:33:40

    アスカは、単純な極道であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。たちまち彼女は、巡邏の警吏に捕縛された。調べられて、アスカの懐中からはドスが出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。アスカは、王の前に引き出された。


    「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」暴君>>35は静かに、けれども威厳を以て問いつめた。その王の顔は蒼白で、眉間の皺は、刻み込まれたように深かった。

  • 32二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 18:35:41

    ただの鉄砲玉じゃねーか!?

  • 33二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 18:45:05

    美城専務

  • 34二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 19:06:12

    ロドリゲスみさえ

  • 35二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 19:12:09

    天井努

  • 36二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 19:19:11

    「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」
    暴君天井は静かに、けれども威厳を以て問いつめた。その王の顔は蒼白で、眉間の皺は、刻み込まれたように深かった。
    「市を魔女狩りの王の手から救うためだ。」とアスカは悪びれずに答えた。
    「おまえがか?」王は、憫笑した。「仕方の無いやつだ。おまえには、私の孤独がわからん。」 「言うな!」とアスカは、いきり立って反駁した。
    「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。王は、民の忠誠をさえ疑って居られる。」
    「疑うのが、正当の心構えなのだと、私に教えてくれたのは、おまえたちだ。人の心は、あてにならない。人間は、もともと私慾のかたまりさ。信じてはだめだ。」
    天井は落着いて呟き、ほっと溜息をついた。「私だって、平和を望んでいるのだが。」
    「なんの為の平和だ。自分の地位を守る為か。」こんどはアスカが嘲笑した。「罪の無きアイドルを殺して、何が平和だ。」
    「だまれ、下賎の者」王は、さっと顔を挙げて報いた。「口では、どんな清らかな事でも言える。私には、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、今に磔になってから泣いて詫びたって聞かんぞ」

  • 37二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 19:25:13

    「ああ、王は悧巧だ。自惚れていろ。ボクは、ちゃんと死ぬる覚悟で居るぞ、命乞いなど決してしない。ただ、――」と言いかけて、アスカは足もとに視線を落し瞬時ためらい、「ただ、ボクに情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えてくれ。たった一人の妹に、亭主を持たせてやりたい。三日のうちに、ボクは村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来る。」


    「馬鹿なこと言うな」と暴君は、嗄れた声で低く笑った。「とんでもない嘘を言う。逃がした小鳥が帰って来るというのか」


    「そうだ、帰ってくる」アスカは必死で言い張った。「ボクは約束を守る。ボクを、三日間だけ許せ。妹が、ボクの帰りを待っている。そんなにボクを信じられないなら、この市に信玄という石工がいる。ボクの無二の友人…うん、友人だ。そういう設定だ。知らんけど。あれを、人質としてここに置いて行こう。ボクが逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を絞め殺せばいいさ。たのむ、そうしてくれ。」


    それを聞いて王は、残虐な気持で、そっとほくそ笑んだ。生意気なことを言う。どうせ帰って来ないにきまっている。この嘘つきに騙された振りして、放してやるのも面白い。そうして身代りの男を、三日目に殺してやるのも気味がいい。


    人は、これだから信じられぬと、私は悲しい顔して、その身代りの男を磔刑に処してやるのだ。世の中の、正直者とかいう奴輩にうんと見せつけてやりたいものさ。


    「願いを聞こう!その身代りを呼べ。三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、その身代りを、きっと殺す。ちょっとおくれて来るといい。おまえの罪は、永遠にゆるしてやろう。」


    「何を言うんだ、やっぱり痛い奴じゃないか」


    「はは。いのちが大事だったら、おくれて来い。おまえの心はわかっているぞ」


    アスカは口惜しく、地団駄踏んだ。ものも言いたくなくなった。


    竹馬の友、信玄誠司は、深夜、王城に召された。


    信玄「>>40

  • 38二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 19:32:19

    !?

  • 39二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 19:46:17

    くっ

  • 40二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 23:08:04

    うっうー!

  • 41二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 23:11:43

    信玄さんがうっうー言うのか…

  • 42二次元好きの匿名さん23/03/05(日) 23:12:57

    ただでさえ友人を亡くしているのに新しくできた友人が極道でそいつのせいで処刑されそうになったらそら狂うわ…

  • 43二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 00:19:55

    竹馬の友、信玄は、深夜、王城に召された。


    信玄「うっうー!」


    暴君天井の面前で、佳き友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた。アスカは、友に一切の事情を語った。


    信玄はショックで発狂していた。アスカは困っている信玄を見てちょっと笑った。信玄は縄打たれた。アスカは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。


    アスカはその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで、村へ到着したのは、翌る日の午前、陽は既に高く昇って、村人たちは野に出て仕事をはじめていた。アスカの十六の妹>>48も、きょうは姉の代りに美玲群の番をしていたぞ。よろめいて歩いて来る姉の、疲労困憊の姿を見つけて驚いた。そうして、うるさく姉に質問を浴びせた。


    「なんでも無い。」アスカは無理に笑おうと努めた。「市に用事を残して来た。またすぐ市に行かなければならん。あす、おまえの結婚式を挙げる。早いほうが良いだろう?」


    妹は頬をあからめた。


    「うれしいか。綺麗な衣裳も買って来た。さあ、これから行って村の人たちに知らせて来い。結婚式は、あすだと」


    アスカはまた、よろよろと歩き出し、家へ帰って神々の祭壇を剣のレプリカで飾り、祝宴の席を調え、間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。


    眼が覚めたのは夜だった。アスカは起きてすぐ、花婿の家を訪れた。そうして、少し事情があるから、結婚式を明日にしてくれ、と頼んだ。婿の牧人>>53は驚き、それはいけない、こちらには未だ何の仕度も出来ていない、ぶどうの季節まで待ってくれ、と答えた。


    アスカは、待つことは出来ない、どうか明日にしてくれ、頼む。と更に押してたのんだ。婿の牧人も頑強であった。なかなか承諾してくれない。夜明けまで議論をつづけて、やっと、どうにか婿をなだめ、すかして、説き伏せた。

  • 44二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 00:25:08

  • 45二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 00:29:22

  • 46二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 00:36:49

    春香

  • 47二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 00:48:31

    あやめ

  • 48二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 00:54:57

    幸子

  • 49二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 01:06:58

    美咲

  • 50二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 01:43:57

    仁奈

  • 51二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 04:10:47

    藍子

  • 52二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 04:11:13

    小糸

  • 53二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 04:11:25

    デレP

  • 54二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 07:11:23

    幸子よかったな

  • 55二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 07:57:41

    結婚式は、真昼に行われた。新郎新婦の、神々への宣誓が済んだころ、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。祝宴に列席していた村人たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、狭い家の中で、むんむん蒸し暑いのもこらえ、陽気に歌をうたい、手をうった。
    アスカも、満面に喜色をたたえ、しばらくは王とのあの約束をさえ忘れていた。祝宴は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになり、人々は、外の豪雨を全く気にしなくなった。
    アスカは、一生このままここにいたい、と思った。この佳い人たちと生涯暮して行きたいと願ったが、いまは、自分のからだで、自分のものでは無い。ままならぬ事である。アスカは、わが身に鞭打ち、ついに出発を決意した。
    あすの日没までには、まだ十分の時が在る。ちょっと一眠りして、それからすぐに出発しよう、と考えた。その頃には、雨も小降りになっていよう。少しでも永くこの家に愚図愚図とどまっていたかった。アスカほどの極道にも、やはり未練の情というものは在る。
    今宵呆然、歓喜に酔っているらしい花嫁に近寄り、「おめでとう、幸子。ボクは疲れてしまったから少し眠る。眼が覚めたら、すぐに市に出かける。大切な用事があるんだ。ボクがいなくても、もうおまえには優しい亭主があるのだから、決して寂しい事は無い。おまえの姉の、一ばんきらいなものは、人を疑う事と、それから、嘘をつく事だ。あとお茶。おまえもそれは知っているな。亭主との間に、どんな秘密でも作ってはいけない。おまえに言いたいのは、それだけだ。おまえの姉は、たぶん偉い極道なのだから、おまえもその誇りを持っていろ。」
    花嫁は、夢見心地で首肯いた。
    アスカは、それから花婿の肩をたたいて、
    「仕度の無いのはお互さまだ。ボクの家にも、宝といっては、妹と美玲だけだ。他には、何も無い。全部あげよう。もう一つ、アスカの弟になったことを誇ってくれ。」
    花婿は揉み手して、てれていた。アスカは笑って村人たちにも会釈して、宴席から立ち去り、美玲小屋にもぐり込んで、死んだように深く眠った。

  • 56二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 08:25:24

    >花婿は揉み手して、てれていた。

    想像してクソ笑った

  • 57二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 15:07:46

    この飛鳥痛いヤツというよりやべーやつでは…?

  • 58二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 15:47:11

    美玲小屋って何…?

  • 59二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 17:32:19

    >>58

    狼小屋だろう


    狼小屋って何……?

  • 60二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 18:00:56

    このレスは削除されています

  • 61二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 18:07:13

    >>59

    狼小屋とは狼小屋ということです

  • 62二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 20:08:34

    くっ、もう少し早ければ親友枠にセリヌン沢あさひを推せたのに……

  • 63二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 00:17:10

    眼が覚めたのは翌る日の薄明の頃である。アスカは跳ね起き、南無三、寝過したか、いや、まだまだ大丈夫、これからすぐに出発すれば、約束の刻限までには十分間に合う。
    きょうは是非とも、あの王に、人の信実の存するところを見せてやろう。
    そうして笑って磔の台に上ってやる。
    アスカは、悠々と身仕度をはじめた。雨もいくぶん小降りになっている様子である。身仕度は出来た。さて、アスカは、ぶるんと両腕を大きく振って、雨中、矢の如く走り出た。
    ボクは、今宵、殺される。殺される為に走るのだ。身代りの友(?)を救う為に走るのだ。王の奸佞邪智を打ち破る為に走るのだ。走らなければならん。
    若い時から名誉を守れ。さらば、ふるさと。若いアスカはつらかった。幾度か、立ちどまりそうになった。えい、えいと大声挙げて自身を叱りながら走った。村を出て、野を横切り、森をくぐり抜け、隣村に着いた頃には、雨も止み、日は高く昇って、そろそろ暑くなって来た。
    アスカは額の汗をこぶしで払い、ここまで来れば大丈夫、もはや故郷への未練は無い。妹たちは、きっと佳い夫婦になるだろう。ボクには、いま、なんの気がかりも無い筈だ。まっすぐに王城に行き着けば、それでよいのだ。そんなに急ぐ必要も無い。ゆっくり歩こう、と持ちまえののんきさを取り返し、共鳴世界の存在論をいい声で歌い出した。

  • 64二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 00:24:10

    ぶらぶら歩いて二里行き三里行き、そろそろ全里程の半ばに到達した頃、降って湧いた災難、アスカの足は、はたと、とまった。
    見よ、前方の川を。きのうの豪雨で山の水源地は氾濫し、濁流滔々と下流に集り、猛勢一挙に橋を破壊し、どうどうと響きをあげる激流が、木葉微塵に橋げたを跳ね飛ばしていた。
    彼女は茫然と、立ちすくんだ。あちこちと眺めまわし、また、声を限りに呼びたててみたが、繋舟に残らず浪に浚われて影なく、渡守りの姿も見えない。
    流れはいよいよ、ふくれ上り、海のようになっている。アスカは海を懐かしみながら川岸にうずくまり、痛いポエムを口ずさみながらガミPに手を挙げて哀願した。
    「クッ…!ここまで追い詰められるとは、実力を見誤っていたよ。フ…この能力だけは使いたくなかったが…そうも言ってられないね。 封印されし左腕の雷帝よ…その力をボクに示せっ!!」

  • 65二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 00:32:46

    濁流は、アスカの妄言をせせら笑う如く、ますます激しく躍り狂う。浪は浪を呑み、捲き、煽り立て、そうして時は、刻一刻と消えて行く。今はアスカも覚悟した。よし、橋を作ろう。青木志貴でいい感じの橋を作ろう。


    濁流にも負けぬ舞台俳優上がりの偉大な力を、いまこそ発揮して見せる。


    アスカは、蘭子もかくやのクソコラを披露した。百匹の大蛇のようにのた打ち荒れ狂う浪を相手に、必死の闘争を開始した。


    数秒かけて前にあった橋にも負けず劣らずの見事な橋を繋いでみせた。アスカはしきくんの橋を駆け抜けた。一刻といえども、むだには出来ない。陽は既に西に傾きかけている。ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠をのぼり、のぼり切って、ほっとした時、突然、目の前に一隊の山賊 >>68 >>70 >>72 が躍り出た。

  • 66二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 00:35:51

    千早

  • 67二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 00:40:16

    未来

  • 68二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 00:49:26

    樹里

  • 69二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 00:50:50

    りあむ

  • 70二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 00:53:07

    智代子

  • 71二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 00:59:27

    フレデリカ

  • 72二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 01:07:16

    りんごろう

  • 73二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 01:30:50

    「待て、アスカ」
    「なんだ、りんごろうか。それに283プロの……知らないヤツだな。すまないが今は忙しくて構ってやれない。後にしてくれ」
    「台本通りにやれ!あー、持ち物を全て置いていけ」
    「ボクにはいのちの他には何も無い。その、たった一つの命も、これから王にくれてやるつもりだ」
    「その、いのちが欲しいんですよ。」
    「さては王の命令で…まあ当たり前か」
    山賊たちは、ものも言わず一斉に棍棒を振り挙げた。アスカはひょいと、からだを折り曲げ、飛鳥(飛鳥だけに)の如くりんごろうに襲いかかり、その棍棒を奪い取って、
    「ボクもそろそろマジメにやらなきゃいけないみたいだ。そんな気がするよ」と猛然一撃、たちまち、三人でりんごろうをすり潰し、残る者のひるむ隙に、さっさと走って峠を下った。
    先程の橋の建造で疲労し、折から午後の灼熱の太陽がまともに、かっと照って来て、アスカは幾度となくめまいを感じ、これではならぬ、と気を取り直しては、よろよろ二、三歩あるいて、ついに、がくりと膝を折った。

  • 74二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 01:37:11

    そろそろ寝るので保守お願いします(明日は諸事情によりかなり遅くなります)

  • 75二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 04:58:02

    >たちまち、三人でりんごろうをすり潰し


    ナチュラルに裏切られるりんごろうさん……まあ山賊だしいっか

  • 76二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 07:29:17

    上げ

  • 77二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 13:03:19

    あげ

  • 78二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 20:43:01

    飛鳥のエクステ揚げ

  • 79二次元好きの匿名さん23/03/07(火) 23:45:15

    お待たせしました

    立ち上る事が出来ぬのだ。
    天を仰いで、寝ながらかっこいいポーズを決めた。ああ、あ、濁流にしきくんをかけ、山賊ひとりを三人で撃ち倒した韋駄天、ここまで突破して来たアスカよ。真の勇者、アスカよ。
    今、ここで、疲れ切って動けなくなるとは情け無い。愛する友という設定の信玄は、おまえが名を口走ったばかりに、やがて殺されなければならぬ。おまえは、稀代の不信の人間、まさしく天井の思う壺だぞ、と自分を叱ってみるのだが、全身萎えて、もはや芋虫ほどにも前進かなわぬ。
    路傍の草原にごろりと寝ころがった。身体疲労すれば、精神も共にやられる。もう、どうでもいいという、勇者に不似合いな不貞腐れた根性が、心の隅に巣喰った。
    ボクは、これほど努力したのだ。約束を破る心は、みじんも無かった。神も照覧、ボクは精一ぱいに努めて来たのだ。
    動けなくなるまで走って来たのだ。ボクは不信の徒では無い。ああ、できる事ならボクの胸を截ち割って、真紅の心臓をお目に掛けたい。愛と信実の血液だけで動いているこの心臓を見せてやりたい。

  • 80二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 00:05:45

    けれどもボクは、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。ボクは、よくよく不幸な女だ。ボクは、きっと笑われる。ボクの一家も笑われる。ボクは友を欺いた。中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。

    ああ、もう、どうでもいい。これが、ボクの定った運命……信玄よ、ゆるしてくれ。君は、いつでもボクを信じた。

    ボクも君を、欺かなかった。ボクたちは、本当に佳い友と友であったのだ。いちどだって、暗い疑惑の雲を、お互い胸に宿したことは無かった。いまだって、君はボクを無心に待っているだろう。ああ、待っているだろう。ありがとう、信玄。よくもボクを信じてくれた。

    それを思えば、たまらない。友と友の間の信実は、この世で一ばん誇るべき宝なのだからな。信玄。ボクは走ったぞ、君を欺くつもりは、みじんも無かった。信じてくれ!

    ボクは急ぎに急いでここまで来たのだ。濁流を突破した。山賊の囲みからも、するりと抜けて一気に峠を駈け降りて来たのだ。ボクだから、出来たのだ。

    ああ、この上、ボクに望み給うな。放って置いてくれ。どうでも、いいのだ。ボクは負けた。だらしが無い。笑ってくれ。王はボクに、ちょっとおくれて来い、と耳打ちした。おくれたら、身代りを殺して、ボクを助けてくれると約束した。ボクは王の卑劣を憎んだ。けれども、今になってみると、ボクは王の言うままになっている……。

    ふと耳に、潺々、水(?)の流れる音が聞えた。そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。すぐ足もとで、水(?)が流れているらしい。
    よろよろ起き上って、見ると、樹里と智代子が先程のりんごろうを潰した時に出たりんご汁をリンゴジュースに加工していた。

    「…ほら、行くんだろ」
    「…なぜボクを助ける?君は山賊じゃなかったのか?」
    「こうでもしないと話が進まないじゃないですか」

  • 81二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 00:05:59

    その汁に吸い込まれるようにアスカは身をかがめた。ジュースが入ったペットボトルを手に取り、一くち飲んだ。ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。歩ける。行こう。肉体の疲労恢復と共に、わずかながら希望が生れた。
    義務遂行の希望である。わが身を殺して、名誉を守る希望である。斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。日没までには、まだ間がある。ボクを、待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。ボクは、信じられている。ボクの命なぞは、問題ではない。死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。ボクは、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ! アスカ。

    「ポエム言ってないで早く行け!!」

  • 82二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 00:10:30

    路行く人を押しのけ、跳ねとばし、アスカは黒い風のように走った。


    野原で酒宴の、その宴席のまっただ中を駈け抜け、酒宴の人たちを仰天させ、ラジオをちょっと聴き、小川を飛び越え、少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。


    一団の旅人 >>85 >>87 と颯っとすれちがった瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。「いまごろは、あの男も、磔にかかっているよ。」


    ああ、その男、その男のためにボクは、いまこんなに走っているのだ。その男を死なせてはならない。急げ、アスカ。おくれてはならぬ。愛と誠の力を、いまこそ知らせてやるがよい。


    風態なんかは、どうでもいい。アスカは、いまは、ほとんど全裸体であった。彫刻のような身体である。呼吸も出来ず、二度、三度、口からリンゴジュースが噴き出た。見える。はるか向うに小さく、市の塔楼が見える。塔楼は、夕陽を受けてきらきら光っている。


    「ああ、アスカ様。」うめくような声が、風と共に聞えた。


    「誰だ。」アスカは走りながら尋ねた。


    >>90でございます」

  • 83二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 00:13:07

    千夜

  • 84二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 00:16:50

    未央

  • 85二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 00:29:08

    みくにゃん

  • 86二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 00:46:08

    北斗

  • 87二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 00:46:09

    和久井さん

  • 88二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 00:53:46

    りんごろう

  • 89二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 01:00:14

    伊織

  • 90二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 01:06:54

    小梅

  • 91二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 01:22:36

    「小梅でございます…貴方の友達の信玄さんの弟子って設定だよ。」そのオカルトマニアの石工も、アスカの後について走りながら叫んだ。
    「もう、駄目だよ。むだだよ。走るのは、やめて。もう、信玄さんは逃がせないから…」 「いや、まだ陽は沈んでいない。」 「ちょうど今、信玄さんが死刑になるの。ああ、あなたは遅かった。ありがとう。処刑の拍子に信玄さんの死んだ友達の霊が見れそうだよ」 「君も痛いヤツのようだな」アスカは胸の張り裂ける思いで、赤く大きい夕陽ばかりを見つめていた。走るより他は無い。
    「やめて。走るのはやめて。走る理由なんてないよ。信玄さんは、あなたを信じてた。刑場に引き出されても、平気でいたよ。王様が、さんざん信玄さんをからかっても、『うっうー!』、とだけ答えて、正直もうダメだと思う」
    「それだから、走るのさ。例え彼が精神を病んだとしても。間に合う、間に合わないは問題じゃない。人の命も問題じゃない。ボクは、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っている。ついて来い!小梅。」
    「あなたも気が狂ったみたいだね。いや、もうすでに狂ってるか…前見たホラー映画より怖くて幸せだぁ…」 言うにや及ぶ。まだ陽は沈まぬ。最後の死力を尽して、アスカは走った。

  • 92二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 01:23:34

    すみません、そろそろ寝ます。おやすみなさい。明日完結させるので保守お願いします。

  • 93二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 07:37:00

    上げ

  • 94二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 14:14:56

    りんごろう汁で走るのか…

  • 95二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 19:08:07

    信玄さんが何をしたと言うんだ…

  • 96二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 20:38:39

    >>94

    これには山形りんご販促アイドルもにっこり

  • 97二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 00:13:12

    大変お待たせしました、今夜で最後です
    安価はあと一回なので最後までお付き合いいただけると嬉しいです

    アスカの頭は、からっぽだ。何一つ考えていない。ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った。陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、アスカは疾風の如く刑場に突入した。間に合った。
    「待て。そいつを殺すな。アスカが帰って来た。約束のとおり、いま、帰って来た。」と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりであったが、喉がつぶれて掠れた声が幽かに出たばかり、群衆は、ひとりとして彼女の到着に気がつかない。
    すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれた上に口も利けなくなった信玄は、徐々に釣り上げられてゆく。
    アスカはそれを目撃して最後の勇、群衆を掻きわけ、掻きわ、掻きわけられない。群衆が強い。こうなれば最後の手段だ。
    「美玲!」
    「がう。どうしたアスカ」
    「ちょっと群衆を散らしてくれ」
    「わかった……てめぇら全員邪魔だ!ひっかくぞ!!」
    群衆は吹き飛んだ。
    「ありがとう、美玲。……さて、国王天井よ。約束の通り、ボクは帰ってきたぞ」と、ゆったりと歩きながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、唯一残っていたマフラーを巻き付けた。残った群衆は、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。信玄の縄は、ほどかれたのである。

  • 98二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 00:21:57

    「信玄。」アスカは死んだ目で言った。「ボクを殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。ボクは、途中で一度、悪い夢を見た。君が若しボクを殴ってくれなかったら、ボクは君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」
    信玄は、すべてを察した様子で首肯き、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くアスカの右頬を殴った。さすがに元自衛官というだけあって普通に痛かった。殴ってから優しく微笑み、
    「うっうー!」
    アスカは腕に唸りをつけて信玄の頬を殴った。信玄は吹き飛んだ。

  • 99二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 00:25:23

    「うっうー!?(えっ…え、なんで殴ったんだ…!?)」

    「いや…なんかムカついたから…」


    「……」


    「……」


    二人は沈黙ののちひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。


    群衆の中からも、歔欷の声が聞えた。暴君天井は、群衆の背後から二人の様を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。


    「おまえらの望みは叶ったぞ。おまえらは、私の心に勝ったのだ。信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。どうか、私をも仲間に入れてくれまいか。どうか、私の願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」


    どっと群衆の間に、歓声が起った。


    「万歳、王様万歳。」


    ひとりの少女>>102が、緋のマントをアスカに捧げた。

  • 100二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 00:31:30

    サイネリア

  • 101二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 00:33:25

    にちか

  • 102二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 00:37:58

    蘭子

  • 103二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 00:45:07

    「我が友よ、そのような痴態を晒していては偶像としての名が廃るぞ。この緋の衣を纏うが良い(飛鳥さん、そんな格好してたらアイドル引退ですよ。早くこれ着てください)」
    アスカは勢いに押されて受け取ったが、正直裸に慣れてきたので返そうとした。信玄は、気をきかせて教えてやった。
    「もやし」
    アスカは、もう一回信玄を殴った。喧嘩になった。天井社長も混ざったし小梅も混ざった。舞さんも混ざった。通りすがりの魔王エンジェルと覚醒美希も混ざった。どさくさに紛れて春香と千早が765Pを襲った。
    世界は滅びた。

    ~完~

  • 104二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 00:48:06

    終わりです。ありがとうございました

  • 105二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 01:03:29

    イイハナシカナー

  • 106二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 01:15:52

    >舞さんも混ざった。通りすがりの魔王エンジェルと覚醒美希も混ざった。


    そら世界滅ぶわ

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