- 1妹◆V0W4n7M5yw23/03/06(月) 01:57:46
- 2妹◆V0W4n7M5yw23/03/06(月) 02:01:54
【前提知識】
妹:よくわからない怪異的な存在、自己増殖したりする
よくわからないがよく分からないなりに無害なのでひとまず受け入れられた
この度、変な敵対生物が近くにスポーンする難儀な体質になった
他のゴーレムじみた姉冒険者のサポートにより炙りだした「山小屋」が怪しいと睨み
妹はそこへ向かうことにしたらしい。
_________________________ - 3妹◆V0W4n7M5yw23/03/06(月) 02:02:44
【出発後、早速肉塊の出所を探す妹】
反吐が出るほど気味が悪く
そしてその癖に自分の面影を感じる肉塊が定期的に襲ってくる身体になったとすれば
貴方ならどうするだろうか?それはもちろん…
さて、妹は現在『元リリアンの家』と言われる山小屋へと向かっていた
妹は前日、再び増殖する肉塊に襲われたことで後処理に追われていた
自分の周りに沸いて出てくる敵性の存在、これがなんであれ解決しない事には始まらない
(何はともあれ私がケツを拭くしかない…)
(皆は受け入れてくれるって言ってたけど、世間体的にもね…)
(「敵の誘導ビーコンみたいなのになりましたけど周囲が何とかしてくれました」と「自分で何とかしました」では
信用だとかの度合いが変わってくるし…ね!)
特に、今回の件は妹が解決することに意味がある
ようするに信用問題、されど死活問題
『よく分からないけど多分安全』といういわば周囲の経験に裏打ちされた存在は逆を言えば
悪例一つで『よくわからないけど危険』という流れに転びかねないのだ - 4妹◆V0W4n7M5yw23/03/06(月) 02:03:59
【道中にて】
「おっ、あらよっと」
茂みから飛び出してきた狼をほぼノールックで撃ってその脳漿をぶちまけながら
妹は地図を開いて己の位置を確認する
「山小屋はもうすぐなんだけどねえ」
ここまで極めて簡単な旅路だった、遭遇する魔物と言えば、たった今片手間に撃ち殺した狼くらいのもので
他にも出会う事には出会ったがそれこそ戦闘にすらならずに逃げられる有様だった
まぁ、それくらいでもなければ道が舗装されるようなことはないだろう
そもそも妹がここに来たのは初めてではない、前回は今より軽いノリで行って危なげなく帰れたのだ。
「あ、あったあった山小屋」
そして山小屋に到着する
「しかしこの山小屋、マジなら400年前からあるわけでしょ?その割には木材とか味が出てないよねぇ…」
味がない、というのは中々ざっくりとした言い方だが実際に山小屋は妙に小奇麗すぎる
雑草は相応に伸びているが古民家にも関わらず割れた窓一つない
10年放置された廃墟ですら悲惨なことになるのだから、400年と言えば原型すら留めていなさそうである
(ま、他の奇特な私が熱心に手入れしてるんでしょ)
とはいえ深くは考えなかった、ここは一応妹のルーツ
奇特な奴【じぶん】が代わりに維持でもしてるのだろう - 5妹◆V0W4n7M5yw23/03/06(月) 02:04:53
【山小屋を更に散策する妹】
「これが絵本で?これが朽ちた何かしら。まあ判別つかないけど」
調査の程は芳しくなく、前調査から変わったものというのはそれこそ間違い探し問題よりも差がないのである。
しかし調査の途中、ぴたりとその気だるげだった手が止まる。
ちょうど山小屋の窓から覗いた時に何か遠くの茂みの方に気配を感じた
「獣…いや、あれは…人!?いや人じゃない、私(別の妹)だ!あれは!」
ツインテール。小さめの体躯、本当に親の顔より見た顔、そしてその背中。
この山小屋を手入れする熱心な妹が居たのかもしれない
話を聞けば調査を大きく前進させるかもしれないが、その姿は森へと消える
「待って!待て…!」
妹は反射的に追った
「くっそ!なんか試すような背中に腹立ったよ…!」
どうにもその逃げる背中が「追ってみろ」とでも言いたげで。 - 6妹◆V0W4n7M5yw23/03/06(月) 02:05:52
【訳アリな妹を追いかける妹】
森は徐々に深く険しくなっていく
当然、道らしいものも途絶え、おおよそ快適とは言えない起伏だらけになる
「はあ…はあ…オーケー上等だよ、知ってたけど三回呼んで振り向かないって事はわざとだね…ハァ…」
「誘ってるなら捕まえて要件聞くから、いたずらだったらボコボコにするわ…ゲホッ」
冒険者の体力に加えて山地慣れした冒険者妹【アレクビア】の方がすぐに追いつけそうなものだが
目下の所、その距離は縮まりそうもなかった
「…」
「ねえ、どこに誘導してんのさ」
「…」
「…←って展開に困ると黙りだすの悪癖だよ、ほらなんか喋って!ほら早く!」
「…」
「わーった!わーっかったから!んじゃ追うのやめたらどうする?そろそろ説明されなきゃ帰るからね!?」
しびれを切らした妹はその場に立ち止まって地団太を踏んだ
そろそろプッツリ寸断された堪忍袋の緒も千切りにされそうな頃合いである。 - 7妹◆V0W4n7M5yw23/03/06(月) 02:07:08
【妹…キレた!】
「ついてこい、お前に見せたいものがある。」
「だからさ、ドッキリならそういうの良いから…端的に言ってよ」
ついに口を開いた謎の妹
特にヘリウム声だとかしわがれているだとかもなく
これまた聞き飽きた自分のそれだった。
妹はそれに驚く程の余裕も感動もなく…
「託すべきかどうか、未だ決めかねているのだ。」
「そりゃどうも…」
「そして丁度着いたぞ。ここで立ち止まるとは…気づいていたのか?それとも何かの運命か?」
「へ?」
謎の妹の指す先には、妙な岩が鎮座していた - 8妹◆V0W4n7M5yw23/03/06(月) 02:09:05
【何か変な岩まで誘導された妹】
「これは?」
妙な岩、とはいえ見た目そのものは岩としか言いようがない
問題はその場所だ、作為的といえば言い過ぎかもしれないが
どうも位置も形も都合が良すぎるような気がするのである
「なんというか、誰かがここに置いた?」
「そうだ、私がここを封印するためにな」
「急に話が動いてきたね、でも肝心なところが見えてこないな…何を?」
「それを見てもらうのだ…して、お前は強いか?」
「強いよ、それで?」
「ならば良い」
そういうと、謎の妹は岩をすり抜けて消えてしまった
「着いてこい、お前にもリリアンの残り香があるのならば入ってこれるだろう」
「左程入り組んでもいないゆえ、道は迷うまい…しかし貴様は怪異の香もある。襲われるだろうが…」
「死ぬなよ?」
言い切ると、謎妹の残っていた気配も消え失せ。
後には冒険者妹だけが残された。
「ふうー随分もったい付けてくれるよね、行くよ。覚悟は伝わった」
「死ぬなよ?ふふん、修羅場なんざ数えない程くぐったよ!」
妹は胸を叩くと謎妹に倣い、不思議な岩をすり抜けた - 9妹◆V0W4n7M5yw23/03/06(月) 02:18:06
【謎の岩を潜り抜けた妹】
「ここは?」
岩を通り抜けた先は十メートルばかしのトンネルが続き
それも通り抜けると、より木々の生い茂る森が広がっていた
妹は鼻を鳴らしつつ周囲を見回す
通った先はより鬱蒼とした森だった
(雰囲気がガラッと変わった…転移はしてない)
(ってなると…封印された御大層な何かが関係してるわけね)
ピクニック気分で歩けていた場所が突然にピリついた雰囲気をまとうのは
他でもない、再三言われていた封印されている存在の影響だろう
「なるほど…これは確かに気を引き締めなきゃいけないような気がす…るっ!」
言いかけたその鼻先を堅いものが掠めて飛んでくる
それは地面にクレーターを作ってようやく止まる
ギリギリで引いて躱したものの、当たっていたら首がもげていたろう
「なるほど、とりあえず真相に近づいてるのは間違いないよねぇ…でしょ?」
クレーターを作るほどの威力で降ってきたそれは
「キィィィィィィ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「忌まわしいクソ肉塊さんさぁ!」
自分を悩ませてくれた、増殖する肉塊そのものだった - 10妹◆V0W4n7M5yw23/03/06(月) 02:18:20
続く!
- 11妹◆V0W4n7M5yw23/03/08(水) 12:41:54
増殖する肉塊は妹へ向け、飛びかかるように圧倒的な破壊力の拳を放つ
しかしそれを妹は容易く見切った
「直線的なんだよぉ!」
妹は剣を引き抜く勢いを利用し、居合斬りの容量で増殖する肉塊を斬り付けた。
「手応えあり!これで死んでくれる、ってほど物分りのいいヤツじゃないよねぇ…やっぱ」
呟く妹の目線の先では真っ二つにされながらその各々が再生し今度は二体に分裂した肉塊が蠢いていた
「っらぁ!」
すかさず妹は回復後の動きが鈍った個体に蹴りを入れる
「二体に分裂したね…いや、限界はあるはず」
「無尽蔵に増えるなら出会った側からガンガン増殖してるだろうからね!」