- 1二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 13:33:18
「『ウェイウェーイ! 今日も和風でマジテンアゲっしょ~☆ 強東風ぼぉんぼぉんでまんまるさんのかまちょアピもよきよりのよきすぎっ! ちょい前まで花信風エンカできんくてガチメンブレ案件だったけど最近はマジで春はあげぽよ~って感じでな? 春一番のフェスも近いし風ってこー☆ おけまる風鈴』……どうかされましたか?」
「……どうかしたはボク達の台詞だと思うけど」
「アハハ、ゼファーって意外とノリが良いよね……」
目の前にはポカンとした表情のテイオーさんとネイチャさん。
豊穣の風を頂く時間、たまたまご一緒することになった二人の風に乗ることとなりました。
その時、ネイチャさんが時候の風にもなっている雑誌を読んでいて、その中の占いのお話。
『今日のゼファーはイメチェンが良いかも? ってさ』
『ゼファーのイメチェン~? 全然想像つかないなー、わがはいは風ぞよー! とか?』
『それはアンタだけでしょ……』
話がそのような風向きになりました。
物は試しと先日併走で共に嵐となったヘリオスさんの凄風を見習ったのですが。
「……いまいちだったでしょうか?」
「急だったからびっくりしたけど、台詞はともかく声の雰囲気とか振る舞いはかなり似てたんじゃない?」
「うんうん、凄かったー! ゼファーって演技とかやってたの?」
二人は私の振る舞いを褒めてくれます。
趣旨はそこではなかった気もしますが、悪風にも感じません。
私は少し心に涼風を感じつつ、彼女達の質問に思考を巡らせました。
「演技の経験はありませんね」
「そーなの? アタシから見たらとても素人の出来とは思えなかったけど……」
「ただ、知り合いに俳優をされてる人がいて何度か練習にお付き合いしたことがあったので」
「えっだれだれ!? ボクも知ってる人!?」 - 2二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 13:33:36
突風のように迫るテイオーさんに、知り合いのウマ娘俳優の名前を告げます。
彼女は名前を聞いてもピンと来ない様子でしたが、ネイチャさんは耳を高い立てて目を見開きました。
「ちょっ……その人ドラマとか出まくってる超有名人じゃん!?」
「……そうなの?」
「そうだよ!? まっ、マジかー、サインとか頼んじゃおうかな……!」
「残念ながら最近は凪いでますし、学園にいる限りは難風ですね」
「あー……それもそうデスネ、残念」
ネイチャさんは耳をぺたんと伏せて、諦めの言葉を口にしました。
梅雨の雨風でしたが、事実こちらから至軽風のように便りを送れる相手ではないので仕方ありません。
そんなネイチャさんを尻目に、テイオーさんは袖の羽風の勢いで目を輝かせていました。
「じゃあさじゃあさ! 次カイチョーやってみてよ! カイチョー!」
「いやいやテイオー、流石に無茶振りが……」
「会長さんですか」
生徒会長シンボリルドルフさん。
テイオーさんの憧れの存在であり、目標であり、いつか超えるべき天つ風。
直接お話しした回数は指で数えるほどですが、スピーチを聞いたことは何度もあります。
何より、テイオーさんからの好風は何度も聞いてますので、他人という気がしません。
私は頭の中で会長さんの姿を模りながら、口を開きます。
「『学園のため、全てのウマ娘の未来のために櫛風沐雨と努力している人だね……彼女の尽力によって学園が風清弊絶となっているのは疑いようがないだろう。威風堂々としたその生き様はまさにその名前に相応しいウマ娘、テイオーという高弟もいてまさに皇帝たる行程は肯定せざるを得ないよ……ふふふっ』」
やってはみましたが、恐れ多くてなかなか仇の風となっていまいますね。
テイオーさんは私の姿を見ながら感心したような呆れたような複雑な表情を浮かべていました。
そしてネイチャさんは、お腹を押さえて顔を伏せて、身体をぷるぷると震わせています。 - 3二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 13:34:24
「うーん、ダジャレまで再現しなくても……それっぽくはあったけど」
「あはは……! 勢い、勢いで押してくるのやめて……!」
「えぇ……えっと、じゃあ次は王様繋がりでオペラオー!」
「『はぁーはっはっは! トレセン学園はまさに素晴らしき新世界! こんなにもウマ娘がいるなんて! だがプリマドンナとなるのは“覇王”たるこのボクッ! さあ妖精エアリアルよ、調べと共に嵐へと誘おうじゃないか!』」
「……今のが似てるか判断できるほど、ボクもお話したことなかったなあ」
「じゃあなんでリクエストしたの……?」
呆れたような表情をテイオーさんに向けるネイチャさん。
勢いのままやってしまいましたが、これはあなじでしたね。
しかし、様々な異風を取り込んでみると見える景色も異なってくるみたいで新鮮な心地です。
風のように気ままで自由が信条でしたが、たまにはこういうのも良風かもしれません。
今度、彼の前でも披露してみましょうか。
「ねーねー、ネイチャはなんかリクエストないのー?」
「アタシ? そんなこと言われても…………あっそうだ、ゼファーのトレーナーさんやってみてよ」
「ええー! またボク達じゃ似てるか判断できないじゃんー!」
「いやあ、他の人のトレーナーさんってどんな感じなのかがちょっと気になってまして……」
「なるほど、私のトレーナーさんですか」
少し目を瞑り、記憶を逆風に乗せてみます。
……大丈夫ですね、トレーナーさんのとの記憶は、いつでもちゃんと思い出せます。
ですが、不思議と真似する気にはならず、私は過去に頂いた恵風を、そのまま風に託してしまいました。
「『俺が凧になる』」
「……ああ、言ってたわーそんなこと」
「実際の発言なの!? 意味わかんないよ!?」 - 4二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 13:34:46
そういえば、あれはネイチャさんとターボさんが共にいたときでしたね。
おかしな言葉だったとは思いますけど、少しだけ気持ちがひよりになったのを覚えています。
後、印象に残った言葉といえば。
トレーナーさんとの思い出が溢れて、一つ一つ口から吹き抜けていきます。
「『もっと自由になろうゼファー、風は自由だろう?』」
「あれ? 物真似関係なくなってない?」
「ただのゼファー先生の回顧録になってますねコレは……」
「『ゼファー、君の恵風になりたい』、『これからも、良い風送るよ』」
「……トレーナーって皆こういう台詞の勉強してるもんなのかな」
「……うーんちょっと否定できないかも」
「『二人で風になったんだ』……あら、二人どうされましたか?」
「……」
「……」
ふと我に返ると、二人は少しだけ顔を赤らめて染めて、目を逸らしていました。
少しだけ早く夕風でも吹いたのでしょうか。
ああ、それにしても私はたくさんのまともよりの風をトレーナーさんから頂いていたんですね。
空を見上げれば青空、良い天気。
この春風も良い風ですが、なんだか柔らかな南風を浴びたくなってきました。
私は席を立ち、後片づけを疾く疾くと済ませて、二人に言葉を向けます。
「ふふっ、少しおぼせを探したくなったので、お先に失礼しますね」
「……あっ、はい、ゴチソウサマデシタ」
「えっ、もしかしてボク達一方的に惚気られたの?」
良くわからないことを呟く二人に会釈をして、私はその場から歩みを進めます。
気分と足は微風のように軽やかで、スキップをしてしまいそうなほど。
さあ――――私の求める風は、どこにいるのでしょうか? - 5二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 13:35:06
「……というかゼファーどこに行くつもりなんだろ?」
「そりゃートレーナーさんのところでしょ……ははーん、天下のテイオー様もこの辺はお子様かなー?」
「…………そういえば、ボクもネイチャの物真似なら少し出来るよ」
「えっ」
「『トレーナーさんの1着だけは誰にも譲らないからッ!』」
「それどこで聞いてたの!?」 - 6二次元好きの匿名さん23/03/06(月) 13:35:57
お わ り
風属性付与難しい