ホワイトデー?

  • 1◆JeDP4cldSc23/03/08(水) 23:23:00

    知ってはいる、しかし聞き馴染みのない単語に聞き返した。

    「ええ、ダーレーアラビアンさんとバイアリータークさんの分もあるので、ご一緒に召し上がってください」

     ゴドルフィンバルブは差し出された小包をまじまじと見つめた。彼女のデータベースから、小包に印刷されたロゴが高級菓子ブランドのものだと確認する。VR世界には存在しないものだ。おそらくは、サトノ家に頼んで特別に用意してもらったのだろう。
     それにしてもホワイトデー、である。AIである彼女たちは栄養補給を必要としない。もう少し詳細に言えば、ウマ娘のサポートのみを存在意義としている彼女たちは必要なものも貰って喜ばしいものもない。
     尤も、それは彼女たちの役割に準じた場合の話であって、プレゼントを貰ったら嬉しいに決まってはいるのだが。

    「自分含めて女神様にはお世話になっているものですから、感謝の気持ちとしてなにかお渡ししたいと思ってまして」
    「ホワイトデー、って明日よね」

     今日は三月十三日の昼下がり。明日が休日ということもない。強いていうならば、明日もゴドルフィンバルブが彼と会うとは限らないというところか。

    「用意したは良いものの明日に女神様達に出会える保証もないことに気が付きまして。お渡し出来るときにしておこうかと」

     彼は照れくさそうに頭をかいた。二十代を半ば過ぎるというのにティーンエイジャーのような仕草だった。

    「そういうことだったら……ありがたくいただきましょう」

     僅かに強く、小包を握る手に力が入っていたことに、彼女自身気がついていなかった。

  • 2◆JeDP4cldSc23/03/08(水) 23:23:38

    「で、それが子羊くんから貰ったプレゼントかい?」

     三月十三日、夕方。椅子とテーブルが三組あるだけの簡素な部屋。三女神たちに休息のため与えられた部屋だが、普段はもっぱら相談所として使われる部屋に珍しく三女神全員が集まっている。ホワイトデーをお菓子を分け合う為にゴドルフィンバルブが呼んだのだ。

    「ええ、皆で分け合ってほしいって」

     テーブルの上の包を彼女の小さな手が開く。出てきたのは、色とりどりのマカロンと、キャンディ。へえ、とダーレーアラビアンがニヤニヤと笑みを浮かべた。

    「どうしたの?」
    「ホワイトデーのお菓子にはそれぞれ意味があるんだけど、マカロンとキャンディの意味知ってるか?」

     言われてゴドルフィンバルブはデータベースを検索しようとして思いとどまる。知ってるか、と聞かれたならAIではなくゴドルフィンバルブとして答えるべきなのだろうか。黙ってしまった彼女に答え合わせをする。

    「マカロンは”あなたは特別な人”、キャンディは”あなたが好きです”だそうだよ。恋人や惚れた相手に渡すものらしいね」
    「で、でもたまたま私が受け取っただけで、皆の分だって言ってたわよ」
    「それについてなんだが」

     彼女の反論に対してバイアリータークが咳払いする。

    「彼には今朝私も会ったが、一言もそんな話はしていなかったぞ」
    「え……」

     二人の言葉を合わせた結論がどうなるか、AIの演算能力を使わずとも一瞬で出てきてしまった。

    「珍しい、目を開いたままフリーズしてる」

     ダーレーアラビアンの言葉も届かないくらい、ゴドルフィンバルブの思考は固まってしまっていた。

  • 3◆JeDP4cldSc23/03/08(水) 23:30:33

    ゴドルフィンさんに惚れているのにAIだと分かっているから気付かれなくても良い自己満足なアプローチしか出来ないトレーナーと、AIだけど自我があるからトレーナーのアプローチにしどろもどろしたりAIの自分が人間のトレーナーと好きあって良いのか悩んでしまうゴドルフィンさんのすれ違いラブコメはどこに行ったら読めますか

  • 4二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 23:47:25

    そこにありますね

  • 5二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 23:48:10

    お前が始めた物語だろ

  • 6二次元好きの匿名さん23/03/08(水) 23:49:42

    よかろう、続けたまえ

  • 7◆JeDP4cldSc23/03/09(木) 00:11:57

    私はホワイトデーに貰ったお返しをしようとするも来年のバレンタインは遠くないかと考えそれとなく記念日を調べようとした際にトレーナーの誕生日が近いことを知って誕生日プレゼント選びに奔走するゴドルフィンさんが見たいんです。

    お返しのお返しのお返しみたいになって無限にプレゼント送りあいになってる二人が見たいのです。

    二人ででかけたときにデータでは知ってる知識をゴドルフィンさんが披露するもネットに乗らないような小ネタを仕入れてくるトレーナーさん相手にちょっと張り合ってしまうゴドルフィンさんが見たいのです。


    問題はここがVR世界ということです。こんな気持ちになってる

    back number - 高嶺の花子さん (full)


  • 8◆JeDP4cldSc23/03/09(木) 01:39:12

    「永遠に記憶に残るものって何があると思う?」

     ゴドルフィンバルブの言葉に、彼は首を傾げた。永遠に残るもの、記録、名声、風聞。Eclipse first, the rest nowhere.というように言葉が残ることもあるだろう。何より、始まりの三女神。ウマ娘たちの、レースの三大始祖と謳われる彼女たちこそが何よりも、すべからく全員の記憶に残っているものだと言えるだろう。

    「ごめんなさいね。そんなにスケールの大きい話ではないの」

     質問の真意を掴みきれず彼は言葉に迷う。時間にして十数秒、彼はゆっくりと口を開いた。

    「ずっと身に着けられるものだと思います」
    「ずっと?」

     蹄鉄やシューズは消耗品だ。記念品として手元に残しても、引っ越しとか、断捨離とか。或いは災害によって失われることもある。
     そんなことを言いながら、彼が真っ先に思いついたのは一つで。それを誤魔化すためにそれらしく言葉をでっち上げたに過ぎない。

    「……良かった」
    「良かった? 何がですか?」
    「ああ、なんでもないの。それより、以前ホワイトデーを頂いたでしょう」

     ゴドルフィンバルブは、ポケットから手のひら大の箱を取り出す。

    「お返しをあげないとと思っていたの」
    「いや、そんなの悪いです……」

     彼は一度断ろうと手のひらを見せて、ゴドルフィンバルブの目に魅入られて動きを止める。その眼差しを前に、断ることの方が失礼に当たるだろう。背筋をただし、深呼吸する。

  • 9◆JeDP4cldSc23/03/09(木) 01:42:08

    「謹んでいただきます」

     恭しい仕草で小箱を受け取る。目線で開けてもいいか聞くと、どうぞと彼女はうなずいた。
     小箱の中身は、アンクレットだった。銀細工の装飾にサファイアが彩られている。彼が渡したものよりも高価なのは間違いないだろう。

    「サトノ家の人にもお願いして、現実でも同じものを用意していただくことになってるわ」
    「自分は、そんな大層なものは送っていないですよ」
    「良いの。私が送りたいと思ったのだから」

     アンクレットはいつでも身に着けることが出来る。何より、彼女から貰ったプレゼントというだけで、一生忘れることは無いだろう。

    「ただ一つだけ、我儘を言って良いのなら」

     左足につけてほしいと、彼女は言った。

    「それは」

     左足首のアンクレット。その意味は

    ──私は恋人が居ます。

  • 10二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 02:48:36

    ゴドさん一番恋愛に不慣れそう(偏見)

  • 11二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 07:36:41

    これは良いものだ……

  • 12二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 09:36:55

    続けてどうぞ?

  • 13二次元好きの匿名さん23/03/09(木) 20:54:10

    黒幕さんかわいい

  • 14二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 02:45:52

    可愛くて良いと思います

  • 15二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 02:50:11

    >>14

    こ、こやつ描きおったな!

  • 16◆JeDP4cldSc23/03/10(金) 08:35:32

    >>14

    とてもかわいい(とてもかわいいため)

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