(SS注意)ヤマニンゼファーと遊園地

  • 1二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 00:19:28

     カランカランとハンドベルが鳴り響く音。
     ゼファーと共にある商業施設へとトレーニング用品を買いに行き、その時に貰った福引券。
     せっかくだから、と共に並んでみた結果は思わぬ幸運だった。
     視線の先には、転がる金色の玉。

    「大当たり~! 特賞! 特賞です!」
    「あら、これは、思わぬ祥風ですね」

     ゼファーはまだ抽選機のレバーを握ったまま、耳をピンと立てて声を上げる。
     商店街の福引はティッシュだったものの、まさかこんなところで振り戻しが来るとは。
     期待してなさ過ぎて、目玉の景品がなんだったのかすら把握してないくらいである。
     俺達が景品の内容を確認する前に、ハンドベルを鳴らしながら係の人が声をあげた。

    「特賞の『遊園地ペアチケット』ですー! おめでとうございますー!」

     周りからも拍手を貰ってしまい、俺達は景品を受け取るとそそくさとその場を離れる。
     建物の外にある、少しばかりの自然が楽しめる広場のベンチで腰かけて、景品を確認した。

    「あっ、ここかあ……結構昔からある遊園地だね」
    「そうなんですか? 時候の風には疎くて……」
    「んー、時候の風にすら乗ってないくらい古いというか、なんというか」

     ローカル寄りの遊園地、といったところだろうか。
     小さな頃に一度行ったことがあり、その時はそれなりに楽しかった記憶がある。
     だが大きくなって、年齢を重ねて、メジャーなアミューズメント施設にも色々と行った。
     そして今になって振り返ると、なんかショボかったな……と思い出す、そんな感じだ。

    「なるほど、周辺に恵風の吹きそうな場所は」
    「いや、残念ながらそこまで自然豊かって感じでもなかったと思うよ」
    「そうですか……」

  • 2二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 00:20:00

     少しだけ残念そうに肩を落とすゼファー。
     まあ、遊園地というのは彼女が好む場所とは遠い場所だというのはわかる。
     とはいえ、使わないのも勿体ないし、出来れば彼女には使って欲しいと思うのだけれど。
     だがその心配は杞憂だったようだ。
     やがてゼファーはチケットを見ながら、目を輝かせて、尻尾を振りながら俺を見つめる。
     
    「では、このチケットを使う風道を考えなくてはいけませんね」
    「……もしかして、意外と楽しみにしてる感じ?」
    「自然が楽しめないのは残念ですが、遊園地は私にとって未知の風ですからね」
    「ああ、なるほどね」

     若干の違和感を覚えたものの、納得はした。
     ゼファーは割と好奇心旺盛なタイプであり、遊園地に行ったことがないなら、興味を持つだろう。
     自然の方が良いとか、予定は凪なので、とかで使わないかもと思っていたが。
     思い込みでの認識に反省しつつ、俺は自身の予定帳を取り出して、スケジュールを確認する。
     先日レースに出たばかりで、次の目標はまだ先。
     予定に関してはある程度融通は効く状況といえるだろう。

    「一緒に行く子が決まったら、俺の方で予定を調整するから言ってくれ。早めだと助かる」
    「……はい?」
    「ん?」

     少し気の抜けた、疑念の声色。
     スケジュール帳から視線を外して、その音源に目を向ける。
     そこは眉を逆ハの字にして、耳をペタンと伏せて、悲しそうな表情を浮かべるゼファーがいた。
     くいっ、俺の服の袖を引っ張って、彼女は小風のような声色で、縋るように呟く。

    「トレーナーさんは、私と共に廻風となっていただけないんですか……?」

  • 3二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 00:20:19

    「これは……すごい饗の風の賑わいですね」
    「ああ、正直俺も驚いてる」

     福引でチケットを引き当ててから数週間、俺とゼファーは遊園地で、その人の多さに圧倒されていた。
     事前に調べたところ、数年前にリニューアルをしていたらしく、俺が知ってる姿とはまるで別物だ。
     古臭いという評価は撤回しなければいけないな。

    「この感じだと並ぶ機会も多くなりそうだし、早速行こうか……何か乗りたいものとかはある?」
    「そうですね、まずは手始めに穏やかな旋風を感じてみたいですね」

     周りを物珍しそうにキョロキョロを見回すゼファー。
     あまり見ない、少し落ち着きのない様子に、思わず笑みが零れてしまう。
     さて、穏やかな旋風。
     とりあえず、ジェットコースターなどの絶叫系は後にしておくということだろう。
     旋風というのは言葉の勢いで、風を感じられそうなものが良い、くらいのこと。
     入った時に貰ったパンフレットを眺めていると、ちょうど良さそうなものを見つけた。

    「んー、コーヒーカップなんてどうかな」
    「……お昼ご飯にはまだ早いのではないでしょうか?」
    「あはは、違うよ、そういう名前のアトラクションなんだ」
    「まあ……私ったら……とんだ季節違いの風を」
    「知らなきゃ誰でも勘違いするさ、どんな感じかは歩きながら説明するからさ」
    「はい、それでは」

     そう言ってゼファーは俺の手をぎゅっと握りしめた。
     小さくて、細くて、暖かい彼女の手の感触は伝わってくる。
     
    「このままだと私は飛絮となってしまうので……今日はエスコートを、お願いしますね?」
    「……ああ、任せてよ。いつかとは立場が逆だね」
    「ふふっ、トレーナーさんが勧めてくれる和風、楽しみにしてますよ」

  • 4二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 00:20:51

    「ふふっ、あはは……! まるでつむじ風になったみたいです……!」
    「……っ、そっ、そうだな」
    「さあ、もっと疾く、限界を超えて、横しま風に……っ!!」
    「機械の限界は越えられないからね?」

     穏やかの旋風とはなんだったのか。
     ゼファーはものすごい勢いで目を輝かせながら中央の円盤を回転させていた。
     ……楽しそうで何よりなんだけど、スピードがヤバイ、大丈夫なのかこのアトラクション。
     掴まってないとカップから放り出されてしまいそうである。
     でも風は確かに気持ち良いし、何よりゼファーがとても良い笑顔を浮かべていた。
     ――――頑張れ俺の三半規管。

    「ふう、まさか私自身が竜巻となれるとは、トレーナーさんが良風を見つけてくれたおかげです」
    「あっ、ああ、新鮮な体験ができたみたいで、何よりだよ」
    「……すいません、少し煽風を吹かせてしまったみたいで」
    「気にしないで、これもコーヒーカップの醍醐味みたいなものだから」

     少しフラつきそうになるのを隠しつつ、俺は答えた。
     終わった後に係員の人が「大丈夫でしたか?」と聞いて来た辺り、周囲から見ても異様な回転だったらしい。
     トレーナーとしてはウマ娘の操作にも耐えられる耐久性を評価したいところ。
     申し訳なさそうにするゼファーに、笑顔を見せながら、話を進める。

    「それで、次に乗ってみたいものってある?」
    「……そうですね、あれなんてどうなんでしょうか、天狗風を楽しめそうですが」

     ゼファーが指差す方向からは、背の高い建物と甲高い悲鳴と歓声。
     それを見た瞬間、俺は若干足の竦んだ。

    「……フリーフォールかあ」

  • 5二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 00:21:31

     少しだけ、嫌気の混じった声。自分の口から漏れ出してしまったそれに気づき、俺は慌てて次の言葉を紡ぐ。

    「あっ、うん、いいんじゃないかな! じゃあ早速行こうか!」
    「…………トレーナーさん」
    「……すまない、アレには苦手意識があって」

     時すでに遅し、ジトっとした目で見つめるゼファーに俺は正直に答えた。
     実のところ人生で初めて体験した絶叫マシンというのが、フリーフォールだった。
     幼い時の俺はあまりの恐怖に大泣きしてしまい、その記憶は未だに脳裏に残っている。
     大きくなって他の絶叫系は問題なくなったが、フリーフォールだけは見ただけで臆病風に吹かれてしまう。
     彼女は少しだけ困ったような表情を浮かべる。

    「……そういうことは正風に言ってください、今日は二人の祥風を楽しむ日なんですから」
    「ああ、そうさせてもらうよ。他のは大丈夫だから、ゼファーも遠慮しないでね?」
    「ふふっ、そうさせていただきます、ところでトレーナーさんが行きたいところは?」
    「んーこれといって特にはないけど…………あれ、あのお化け屋敷」

     ゼファーからの提案に周りを見回すと、既視感を感じる建物が目に入った。
     外装からして年季を感じる、あまり人気のなさそうな、古ぼけたお化け屋敷。
     それは過去の記憶と全く一致していた。

    「そっか、あれはリニューアル後もそのまま残ってるんだ、懐かしいな」
    「確か若芽の頃にここのひかたを楽しんだと言ってましたね、その時にも?」
    「うん、当時の施設は殆どないみたいだけど、アレは残ってるんだな……ゼファー、こういうの大丈夫?」

     言ってから以前、キングヘイローとマチカネタンホイザと共に夜の林に入ったことを思い出す。
     そういえば夜道を怖がる二人と共に、平然と先導していたな。
     ゼファーは胸を少し張りながら、任せろと言わんばかりの表情で俺に告げた。
     
    「はい、頼りにしてください」

  • 6二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 00:21:52

     グギョギョギョギョッ!
     ギョエーーーー!

    「ひゃっ!? なっ、なんですかこの声は!?」
    「あー、こんなんあったなあ」

     びくりと身体を跳ねあがらせて、震えた声を出すゼファー。
     その言葉はまるで当時のキングヘイローのようだった、ぎゃっとか言ってたけどあの子。
     繋いでいた手はいつの間にか腕を組む形……というかしがみ付くような形になっていた。
     その力は少し強く、彼女の強い恐怖を感じるようである。
     ……意外だ、こういうのは全然平気なタイプだと思っていたのだが。
     
    「……ゼファー、お化けも自然の一部だって言ってなかったけ」
    「こっ、これはお化けじゃないじゃないですか……!」
    「身も蓋もない」
    「それに、建物の中では風も感じませんし、人の気配だってありませんし……!」

     耳を絞り、今にも泣きだしそうに顔を青ざめさせるゼファー。
     正直なところ、俺からしてみればこのお化け屋敷はかなり古臭い。
     一度来たことがあるというのもあるだろうが、最近のお化け屋敷に比べると安っぽさを覚える。
     
    「きゃあっ!?」 
    「今思うとベタだな……」

     井戸から悍ましい声を出しながら、血まみれの女の人形が飛び出してくる。
     ゼファーは悲鳴を上げながら、しがみ付く力を更に強めた。
     作った人が見たら泣いて喜びそうな見事なリアクションである。
     それはそれとして、ゼファーの反応の理屈は見えた。
     彼女は肝試し的なものであれば、夜の散歩気分で簡単に踏破することができる。
     けれども、完全に風の通らないこの手の施設では、話は別なのだ。

  • 7二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 00:22:16

    「とっ、トレーナーさん! 絶対に離れないでくださいね!」
    「うん、というか物理的に無理だから、むしろちょっと力を弱めてくれると助かる」

     このお化け屋敷が完全に機械化されたものであるのも、ゼファーには刺さっている。
     彼女は風に乗る人の気配や匂いに敏感だ。
     人間が実際に驚かせるタイプのお化け屋敷の方が、彼女にとってはそよ風なのだろう。
     これはお化けじゃない、の言葉通り、全てが作り物であるのが彼女への特攻なのだろう。
     しかし、なんとも、まあ。
     完全に腰の引けてるゼファーとか、もう一生見られないんじゃないかと思う姿である。
     入る前にドヤ顔を披露していたのも相まって、笑いそうになってしまう。
     尻尾もゆらゆらと揺れ動いており、先ほどから背中や掴まれてるのとは逆の腕と接触していた。

     魔が差した、という他ない。

     悪戯心というべきだろうか、そんな感情が心の奥底で蠢き始めき、抑えられなかった。
     先程から腕に接触してた尻尾をタイミングを合わせて掴み、軽く引っ張ってみる。

    「―――――――ッ!!?」

     ゼファーは声にならない叫びをあげて、一際大きく身体を震わせた。
     尻尾も掴んだ手から逃れて、耳と共にピンと逆立つ。
     しがみ付く腕の力も、少し危機感を覚えるレベルで強まり、そして弱まった。
     へなへなと全身から力が抜けたように、彼女は床にへたり込んでしまう。

    「こっ……腰が抜けてしまいました」
    「大丈夫か!? すまないっ! つい出来」
    「お化け屋敷にはこういう仕掛けもあるんですね……何故トレーナーさんが謝られるのですか?」
    「…………とりあえず、おぶっていくから行こうか、他のお客さんも来るかもしれないし」
    「はい、すいません…………ふふっ、トレーナーさんの背中の上だと、暗闇も宵闇みたいですね」
    「…………うん」

  • 8二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 00:22:35

     エグい罪悪感を覚えながら、俺はゼファーを背負いながらお化け屋敷を出た。
     その頃には彼女も回復したようで、その時点で彼女を背中から降ろす。
     ……落ち着いたら、ちゃんと謝ろう。
     そう思いつつ、二人で身嗜みを整えていると、慌てた様子で係の人が向かってきた。
     ドキリとしたが、二人組で一人が背負われて出てきたらこういう反応ににもなるか。

    「おっ、お客様! 大丈夫でしょうか!?」
    「はい、少し魔風に驚いてしまって。しなとは必要ありませんので」
    「はっ、はあ? えっと、とりあえずお怪我などはない、ということですか?」
    「ええ、業の風を楽しませていただきました、特に尻尾を引っ張る仕掛けは凄風でした」
    「えっ、そんな仕掛けありませんけど……」
    「……はい?」

     あっ、終わった。
     係員の言葉に首を傾げるゼファー。
     そしてその光景を見ながら俺は背中に冷たい汗を流していた。
     仕掛けはない。
     お化けはいない。
     ならばその現象は、何が原因で引き起こされたか。
     消去法で明らかなわけで。
     ゼファーは真顔でじっとこちらを見ると、じりじりと詰め寄ってくる。

    「……トレーナーさん」
    「はい」
    「詳しく、説明してください」
    「……はい」
    「今、私の至軽風はあからしまになろうとしています」
    「…………すいませんでした」

     その後、俺はゼファーに手を引かれ、フリーフォールへと強制連行されるのであった。

  • 9二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 00:22:58

     フリーフォールで地獄を見た後、昼食をはさんで、色んなアトラクションに乗った。
     ジェットコースター、ゴーカート、フリーフォール、空中ブランコ、フリーフォール。
     ……どうやら一部アトラクションは大層気に入ったようだ、俺も流石に二回目辺りからは慣れたけども。
     気づけば俺自身も童心に帰って楽しんでいた。
     落ちていく太陽を見て、名残惜しいなと思ってしまうくらいには。
     ゼファーは、一日中握っていた手を引いて、円形の大きな建物を指差した。

    「トレーナーさん、最後に、あれに乗りませんか?」
    「……観覧車か、うん、行こうか」

     観覧車は行列もなく、あっさりと乗り込むことが出来た。
     風に揺られながら、俺達の乗ったゴンドラは、少しずつその高度を上げていく。
     茜色に照らされながら、向かい合って座るゼファーは微笑みを浮かべつつ、景色を眺めていた。

    「ふふっ、あれほど東風や南風やと歩き回っていた場所が、とっても小さく見えてしまいます」
    「そうだね……今日は楽しめた?」
    「はい、とっても、竜巻に風巻、車風に天狗風……トレーナーさんの悪風も」
    「あれは本当にすいませんでした」
    「冗談ですよ、ええ、今まで浴びたことのない新風を、いっぱい感じることができました」

     その言葉に、それならばよかったと、俺は肩の力を抜く。
     しかし直後にゼファーから漏れたのは、思いがけない言葉だった。

    「きっと、私はこのような時つ風を、何度も逃してきたのでしょうね」

     一瞬、空気が止まる感覚。
     ゼファーは表情を硬くしながら、言葉を続ける。

    「最近思うんです、周りの風に合わせていれば、出会えた異風もあったのかもしれないと」

  • 10二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 00:23:48

     思い出すのはゼファーのクラスメートと共に、ゼファーを探し回った時のこと。
     ゼファーはクラスの懇親会の誘いを断った。
     先の予定がわからないから、という理由で。
     
    『風の向くままでいたい、そう思いますので』

     自然で自由にありたい、だからこそ約束は結ばない。
     不思議だけれど、ゼファーらしい価値観だと、そう思った。
     けれど今、彼女は迷っている。
     例えばあの時、懇親会に行っていれば、出会えた未知の風があったのではないか。
     それを自分は何度も繰り返してきたのではないか、と。
     …………ゼファーがこうやって悩む姿は、あまり見なかったかもしれない。
     自然派で、風に憧れて、それでいてどこか子どもっぽいけれど、その精神は完成している。
     どこかで、そう勝手に思い込んでいた。
     違和感だの、意外だの、思いがけないだと、そんな色眼鏡をかけて。
     彼女も、年頃の、普通の少女なんだということに、目を逸らしていた。

    「ゼファー、勿体ないよ」

     自分の浅はかさを猛省しつつ、出来る限り穏やかな声色で口を開く。
     何時か、焦る彼女に告げた言葉。
     その言葉に、ゼファーは目を見開いて、こちらを向いた。 

    「……勿体ない、ですか?」
    「そうやって行動を縛って、不自由になって、可能性を狭めるのは勿体ないよ」
    「……」
    「周りの風に乗りたければ乗れば良いし、流れるままに吹かれたいならそれでも良い」
    「……!」
    「自由に気ままに、色んな風に乗りなよ。俺はどこにでも付いていくし、どこにだって連れてくよ」

  • 11二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 00:24:51

     いつかのように手を引かれて、今日のように手を引いて。
     ゼファーがどんな道を歩もうとも、共に歩むと、とうの昔に決めている。
     だからこそ、今までの選択も、新しく考えてる選択も、否定したくはなかった。

    「だからさ、もっともっと、自由に俺を振り回してくれると、嬉しいな」

     俺の言葉に、ゼファーは少しだけ呆れたような表情を浮かべる。
     ……まあ確かに最後はちょっとアレな言葉だったかもしれない。
     やがて、彼女は小さな声で、呟く。

    「……本当に、凱風な人ですね」
    「それはどうも」
    「……今まで以上に、風来となってしまうかもしれませんよ?」
    「ははっ、ならもっと君といるのが楽しくなるね」
    「色んな野分や颪に、一緒に挑んでもらうことになるかもしれません」
    「望むところだよ」
    「…………ふふっ、浚いの風は近くにあったのに、何を一人で悩んでいたのでしょう」

     ゼファーはいつのまにか、柔らかな笑顔を浮かべていた。
     そして今日の朝の時と同じように、俺の手をぎゅっと握る。

    「ではトレーナーさん、ずっと一緒に、まことの風になってくださいね?」

     あどけない笑顔を見せるゼファーの顔は――――どこにでもいる普通の女の子のよう。
     俺は勿論と言葉を返しながら、その手を強く握り返したのだった。

    「ところで、天つ風が気持ち良さそうですね、ドアを開けてはダメでしょうか?」
    「ダメだし絶対にやめてね」

     ……普通ではないかな、やっぱり。

  • 12二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 00:26:01

    お わ り
    腰を抜かすゼファーが書きたかった

  • 13二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 01:04:33

    誰だってそーする 俺だってそーする
    フリーフォール怖いよね…内蔵が上に浮く感じはヤバい
    ところでゼファーをおんぶは色々ヤバいと思うが大丈夫か?観衆の前でハグしてたし問題ないか

  • 14二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 01:18:03

    ありがとうございます

  • 15二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 07:51:46

    計3回もフリーフォール乗ってるあたり相当根に持ってますね

  • 16123/03/10(金) 08:49:16

    感想ありがとうございます

    >>13

    トレーナーは良識ある大人だから大丈夫(なお事の発端)

    >>14

    どういたしまして?

    >>15

    トラウマも克服できてwinwinということで

  • 17二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 09:23:31

    高品質な風の供給助かります🙏
    お化け屋敷でビビらせたんだからトレーナーもフリーフォール乗るよね?って見てたらホントに連れてかれてて笑ったありがとうございます

  • 18二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 11:18:46

    一日中手を繋いで?
    遊園地でアトラクション巡りして?
    最後は観覧車で思いを伝えて?

    デートじゃん!デートじゃないですかー!!

  • 19123/03/10(金) 20:04:00

    感想ありがとうございます

    >>17

    やらかしたからには三倍返しは基本ということで

    >>18

    やる気アップのためのお出かけだから……

  • 20二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 20:05:15

    ウマ娘の尻尾ってお尻並みにデリケートだと思うがそれを触るとは…

  • 21123/03/10(金) 20:23:38

    >>20

    ゼファーも育成イベントで当ててくるからセーフということで一つ……

  • 22二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 21:00:40

    こういうのでいいいんだよおじさん「こういうのでいいんだよ」
    この満足感は素晴らしいですよ、この風 誉れ高い

  • 23二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 21:13:39

    やってやり返しての距離感が良いですわね

  • 24123/03/10(金) 23:39:26

    感想ありがとうございます

    >>22

    満足していただけて何よりです

    >>23

    素晴らしいイラストありがとうございます

    相変わらずお早い……

  • 25二次元好きの匿名さん23/03/10(金) 23:40:19

    1人が好きであまり人と関わらないゼファーがトレーナーやテイオーなどと関わり合い人との繋がりの大切さに気づき変わって行くというのがゼファーのシナリオでもありますからね
    それを取り入れた上で難しい風の語彙も使う
    お見事です

  • 26123/03/10(金) 23:45:05

    >>25

    読んでいただきありがとうございます

    そう言っていただけるととても嬉しいです

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