- 1二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 14:47:58
- 2二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 14:48:29
髪の色だけじゃねーかよ えーっ
- 3二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 14:49:03
妹って言われたらなんとなくそんな気がするのは分かる
- 4二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 14:52:24
キタサンみたいな陽キャ勢よりは相性良さそうか
- 5二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 14:54:48
血縁関係ありますと言われたら納得できるくらいには
- 6二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 14:56:11
南坂はハルーワスウィート産駒だった…?
- 7二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 15:05:34
そんな…シュヴァルが諜報部員だったなんて
- 8二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 15:06:09
同一個体じゃないの?
- 9二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 15:25:03
ちょうだい そういうのちょうだいもっと
家族の集まりの時とかに姉妹コンプで居づらさを感じてるときに、接しやすい距離感にいる従兄の南坂が優しくしてくれてからというもの、積極的ではないにせよ会ったときに表情が少し明るくなったり、不安な時にそばに近寄ってしまうようなお従兄ちゃんっ子と化したシュヴァルグラン、みたいなのを妄想するようになってしまって駄目なんだ
- 10二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 16:31:37
少年兵時代の南坂もこんな感じだったんかなぁ
- 11二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 17:19:31
僕たちは港町で育った。
陽炎が揺れるアスファルトを抜けると強い磯の香りがする。
刺すような陽の光を反射する波のさざめきは、遠くからだととても綺麗に見える。
でも、ちゃんと近づいてみると、ヘドロが浮いているし、むせるような悪臭がする。
僕は馬鹿だから、小さい頃は、そんなふうになにかに期待しては幻滅することを繰り返していた。
「お兄ちゃん、海は現実世界に似ているね」
僕はそんなことを言った記憶がある。
いまだったら恥ずかしくて言えやしないけど、当時の僕は些細なことでいつも傷ついていたし、もっと本気で物事に向き合っていた。
そのとき兄は、たしか例の困った表情で、「シュヴァルは面白いことを言うな」と僕の頭をなでたと思う。
僕は兄の優しさが嫌いだった。
そしてそんなことを思う自分自身のことがいちばん嫌いだった。 - 12二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 17:20:00
姉は高校に入るとメイクをして、男の人と連絡を取るようになった。
でも悪い感じがするのではなくて、いつもあっけらかんと笑って、僕や周りの人の心を明るくしてくれた。
いちどだけ姉の友人グループで遊びに連れていってもらったことがある。
僕を着せ替え人形みたいにして、綺麗なお姉さんたちが、かわいいとか似合うとかたくさん褒めてくれた。
僕は耳の先まで真っ赤になって、心の奥のほうがむずがゆくなるような気持ちになった。
帰り道、西陽が差し込むなかで、建物の窓が光を反射してキラキラと輝いていた。
姉たちが僕の少し前で楽しそうに話している。
そのとき姉が、僕のほうを振り返って、「楽しかった?」と聞いてきた。
姉のサラサラの髪の毛がオレンジ色の光で縁取られて、スローモーションで揺れていた。
僕は帽子のつばをぎゅっと深く押し込んで、うん、と応えるのが精一杯だった。 - 13二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 17:20:27
GIを連覇した実績を持つ姉と違って、僕は勝ちきれないウマ娘だった。
その日も期待に応えられずに負けてしまって、レース場からトレセン学園に帰るために電車に乗っていた。
このまま乗り続けたら、海を見ることができるだろうか。
そんなことを思っているうちに、僕はほんとうに海まで行ってしまった。
僕の知っている海と違って、そこはサーフィンをしている人や浮き輪で泳いでいる人がたくさんいた。
僕は砂浜に腰かけて、日が暮れていくのを見ていた。
「こんなところでなにをしているんだ?」
僕はびくっと肩をふるわせた。
聞き馴染みのある優しい兄の声だった。
僕は兄におそるおそる正対した。「……えっと、」
兄は穏やかに僕の言葉を聞いていたのだが、いきなり、
「こちょこちょこちょ」
「え、」
僕は無理やり笑わされて、息が苦しくなったし、涙も出てきた。
ひと通り落ち着いたあと、兄は僕を優しく抱きしめて言った。
「僕は君が強い娘だって知っている。大丈夫。君のやり方でいい。君のペースでいい。
シュヴァルは聡いから、たくさんのつらいことや醜いことが見えてしまうんだと思う。
でもきっと、シュヴァルはそれを力強く乗り越えることができるって、僕は知っているんだ。
自分のことが信じられなくなってしまうのなら、僕の言葉を信じてくれ。
君は必ずGIを制する、偉大なウマ娘になる」
帰り道、僕は兄にくすぐりのお詫びを要求した。
そのときに食べたソフトクリームより美味しいものを僕は知らない。 - 14二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 17:38:18
いざやってみると辛いことってあるよな
- 15二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 17:43:05
ウワーッ! なんか出力されてる!?
やめてくれよ公式に絡むことの望めない関係性に良さを見出したときに一番苦しむのはこっちなんだぞ!!?あー好き!! - 16二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 17:45:20
この後ジャパンカップ勝ったんだよね…
- 17二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 17:52:00
しれっと南坂シュヴァルグランの位置特定してて草
- 18二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 17:53:00
文章力めちゃくちゃ高くて情景がありありと脳内再生されながら読んでた。素敵なSSありがとう
- 19二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 17:57:45
シュヴァルグランの意味「偉大な馬」
- 20二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 18:06:51
ヴィルシーナへのコンプレックスがリアル過ぎて泣きそう
- 21二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 18:09:51
このレスは削除されています
- 22二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 18:20:28
南坂お兄ちゃんにアイス要求するシュヴァルいい…
- 23二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 18:22:42
この下に優秀で恐らく陽キャの妹が居ると思うと、そらこういう中身にもなる
- 24二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 18:35:25
南坂にくすぐられるシュヴァル、控えめに言って可愛すぎる
- 25二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 18:44:01
ネガティブな娘をスパダリ南坂が導く…
南ネイだこれ - 26二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 19:19:54
この世界線だと、カノープスに勝ちきれないウマ娘が集まったのも、南坂がスカウトの時に自身の心を知ってか知らずかその姿をシュヴァルグランと重ねていて、放っておけずにそういう子達に声をかけてしまっていたりしてそう
- 27二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 19:24:54
南坂オタク、意外な概念に出会えたことに感謝
- 28二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 19:26:21
おれはキタサトアニメでシュヴァルがカノープス入りすることを信じてるぞ
- 29二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 19:48:17
南坂シュヴァルグランの兄説に説得力が出始めてるのどう言う状況だよ
- 30二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 19:56:50
賢い子ほど臆病になるんだよな
そうなんだよな - 31二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 21:13:55
- 32二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 23:20:46
気取られることなくしれっと帽子の裏とかにGPS仕込んでそう
- 33二次元好きの匿名さん23/03/11(土) 23:24:03
諜報員にされたりウマ娘の兄にされたり大変だなこの男も
- 34二次元好きの匿名さん23/03/12(日) 07:43:40
シュヴァルはキタちゃんに土付けたおいしい立ち位置にいるし、関わりを持つのは厳しいんじゃないかと思う
でもこれ見ちゃうとなぁ~、欠片でも絡みが見たくなるわ - 35二次元好きの匿名さん23/03/12(日) 10:31:11
南坂お兄ちゃんは実現しなくても、カノープスで南シュヴァが実現する可能性はまだ残されているはずだ
南シュヴァの火を絶やすな - 36二次元好きの匿名さん23/03/12(日) 10:42:30
- 37二次元好きの匿名さん23/03/12(日) 12:42:01
全ての元凶
- 38二次元好きの匿名さん23/03/12(日) 17:26:02
なになに学園内で会ったときにいつもの様に呼び掛けてしまい「あっ、おにいちゃ――。…トレーナーさん」って恥ずかしそうに帽子を目深に被りなおすシュヴァルグランの話ししてる?
- 39二次元好きの匿名さん23/03/12(日) 19:00:25
年度決算に使うからその話もうちょっと詳しく聞かせてくれる?
- 40二次元好きの匿名さん23/03/12(日) 19:13:57
南坂お兄ちゃんは「アイス買って」みたいなわがまま言える数少ない一人なんだろうな
- 41二次元好きの匿名さん23/03/12(日) 19:27:23
カノープスに入るシュヴァルグランはマジで3期でありそうなんだよな。喜べイッチ、君の願いは多分叶う(
- 42二次元好きの匿名さん23/03/12(日) 20:25:36
実体の無い炎とか不知火みたいだな
- 43二次元好きの匿名さん23/03/12(日) 23:53:54
南坂T従兄概念でカノープスの部室で若干無防備になるグランは当店で取り扱いしていますでしょうか
- 44二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 00:34:25
- 45二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 00:39:00
カノープスからG1ウマが生まれるとか胸熱だな
- 46二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 00:40:13
シュヴァルだけずるい!ターボも!と一緒にアイス食べたいとねだるターボ
2人の仲の良さにある程度察しが付くイクノ
間違ってお兄ちゃんと呼んだと思って自分も先生をお母さんと呼んだことがあるよ~と変な勘違いをするマチタン
2人ってどういう関係…?ってするネイチャ
- 47二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 01:05:03
そうでしたか、では詳しく説明致しますと例えばですね……
「おに……トレーナーさん。次のレースでは──」
「ええ、前言った通り──」
最近、トレーナーとシュヴァルグランを見ているとナイスネイチャは心配になる。カノープス期待の新人の彼女を見た時に何となく「トレーナーと似てるなー」と言う感想を抱いたが実際に彼女にとってトレーナーは従兄弟と言うことらしい。その縁もあり彼女はカノープスに来た……のは良い。しかし、だ。
「じゃあ軽く走り込みに行ってく……きますね」
「はい、もう少しトレーニングメニューを整理したら直ぐに合流しますから、本格的な走り込みはその後で」
偶に敬語が外れそうになる……のは良い。まあ私生活の感覚が混ざる事もあるだろうし、今までと変わるのは中々慣れないだろう、とも思う。けれど──
「よいしょ……」
「いやちょいちょーい! トレーナーが此処に居るのに着替え始めなさんなって!」
「え、あっ。ごめんなさい……!?」
まるで周りに同性しか居ないかの様に運動着……ジャージに着替えようとするのは些か見過ごせない。と言うか見過ごしたら駄目だと思う。南坂トレーナーが出て行く前に着替えを手に取ってしまうのはどうなのだろうか?
幾ら私生活である程度距離感が近いにしてもこれは……南坂トレーナーは咄嗟に顔を逸らす辺り普通に大人としての対応をしているが、彼女は「またやっちゃった……」と言う感情一色であり、羞恥の色はない。その様子でふと思ったのは「あっ、これ兄弟姉妹で相手のこと気にしてない奴だ」と言うある種の家族あるある。成る程それなら当人達はそこまで気にしないだろう。しかし、それでも外聞的な意味でよろしくない、何よりターボへの教育上よろしくない──カノープス唯一のツッコミ担当のネイチャはシュヴァルグランが家族的距離感の過ちを繰り返す度に正している。
と言った物を探しているのですが……
- 48二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 02:17:10
そこにございますね
- 49二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 07:33:20
- 50二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 07:33:53
「カノープスへ移動?」
大舞台・ジャパンカップまで残り1週を切るなかで、突然のできごとだった。
ジャパンカップに来る海外のウマ娘がクラウンさんのチームに一時的に入ることになり、押し出される形でクラウンさんが僕のチームに加入した。
そして僕が押し出され、兄のチームであるカノープスに入ることになったのだ。
「まあアタシたちのチームには余裕があるからねぇ」
「むむむ……GIとなると、過去にいちども獲れていませぬからのぅ……」
「一部では大舞台には少し足りない、いぶし銀なウマ娘が集まるチームだと噂されているようです」
「シュヴァルがかわいそうだ! ターボ抗議してやる!」
カノープスにいる人たちはすこし変わっているけれど、とてもいい人たちだったので、ひとまず安心した。
「シュヴァルさん、ジャパンカップに向けた作戦を立ててきました」
「え、もう?」
カノープス入りが決まってからまだ1日も経っていない。
いったいどうやったんだろう……。
「結論から申し上げますと、シュヴァルさんが勝つ見込みは大いにあります」
大真面目な顔で兄がそう言い放ったので、僕は耳を疑ってしまった。
ちなみに、ネイチャさんは目を丸くしてから「いやいや」とツッコミを入れたし、ターボさんは椅子からひっくり返ってしまったし、タンホイザさんは煽りを食って鼻血を出してしまったし、イクノさんはインド人の格好をして驚いていた。いつの間に着替えたんだろう……。
「このレースは、キタサンブラックさんを目標にするだけで大丈夫です」
兄の口から出た作戦は、拍子抜けするほど単純なものだった。
「シュヴァルさんは1枠1番。対するキタサンさんは2枠4番です。
シュヴァルさんは最内で脚を溜めながらキタさんをマークすることができます。
そして最終直線。府中の直線は長く広いので、必ず前が空くはずです。
あとは全力でキタさんを追い越すだけです」
兄は自信満々にそう言うと、こうつけ加えた。
「それと、残りの時間はタンホイザさんと練習してみてください。タンホイザさんの根性は、キタさんの最終直線の粘りと通じるものがありますよ」 - 51二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 07:34:23
タンホイザさんは努力家だった。
ノートにびっしり書き込まれたメモ。分単位のトレーニング。しかも、どれもすごく濃密だ……。
「私、普通のウマ娘だから。こうやって努力して、それでも追いつけなくて。だから頑張るんだ。いつかGIの舞台で、あこがれのステージのいちばん前で踊るんだ」
「……タンホイザさんは、挫けてしまったり、しないんですか」
ウマ娘ならいちどは夢に見る、GIのウイニングライブのセンター。
それでも自分の実力とはほど遠くて、いつも目の前には誰かがいて、息が苦しくて、視界がだんだんと暗くなっていくような絶望。
「ん〜。やっぱり悔しいよ。『ああ、私、まだまだなんだなぁ』って。だから、『よし、頑張るぞ〜』って」
タンホイザさんの答えは、僕の考えのすこしだけ斜め上からやってきた。
「……それでも届かなかったら?」
「また頑張る」
「……それでも、それでも届かなかったら」
「もっと頑張る」
「ふふっ」
気づくと僕は笑っていた。
「なんで笑うの〜? シュヴァルちゃんひどい!」
難しく考えすぎていたのかもしれない。
叶えたいことがあるのなら、頑張るしかない。
目の前にどんな絶望が広がっていようとも。
だって、叶えたいことなのだから。
「1番人気、2枠4番キタサンブラック。いまゲートにおさまりました」
だれもがキタさんに注目していた。
玉突きでチームを追い出された僕に注目している人なんかだれもいない。
「だから勝てる……勝てるんだ!」
ゲートが開いて、ゆったりとした先行争いのなか、キタさんがハナを主張した。 - 52二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 07:34:48
展開は兄の予想通りに推移した。
僕は最内で息をひそめ、キタさんを視界におさめつづけた。
最終直線になると、バ群が魔法のようにほどけ、抜け出す隙が生まれた。
「ここだぁっ!」
体力を温存していたからか、翼が生えたように足が軽かった。
いける。勝てる!
「──ど根性ッッッッ!!!!!!」
そのとき、キタさんが再加速した。
信じられないスピードで後続を突き放していく。
ああ、キタさんはすごいな。
いつも僕の前にはキタさんがいた。
息が苦しい。全力で走っても、いっこうに差が縮まらない。
また僕、負けちゃうのかな。
「突然のことで申し訳ないが、今日付けで君にはカノープスに移ってもらう」
どうして? いくらなんでも、あまりに急じゃないですか。
「おい見てみろよ、また2着だぜ」
「いつもいいとこまでは行くんだけどな〜」
もしかして、勝ちが期待できないウマ娘は必要ないってことですか。
「ん〜。やっぱり悔しいよ。『ああ、私、まだまだなんだなぁ』って」
ねえ、タンホイザさん。カノープスのみなさん。
お兄ちゃん。
「──僕だって、悔しかった!!!!!!」 - 53二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 07:35:23
それからのことは、よく覚えていない。
気づくと僕は押し倒されて、もみくちゃにされていた。
「おめでとう!! シュヴァルちゃん!!!」
「カノープス初のGI勝利ですね」
「イクノや、これをカノープスの勝利にカウントするのはちと強欲すぎやしませんかね」
「次はターボが勝つ……」
やっと立ち上がると、そこには兄がいた。
「おめでとう、シュヴァル」
「お兄ちゃん……」
「「「「お兄ちゃん!?!?」」」」
兄妹関係を隠していた形になった兄は、カノープスのみなさんからひとしきりブーイングを受けた。
それからどういうわけか僕のカノープス歓迎会をやる流れになった。
「その……トレーナーとシュヴァルが育った街を見てみたいな〜……ナンテ」
「さんせー! ターボ海行きたい!!」
「あっ、あの……」
僕の街の海は汚いですよ、と言いかけてやめた。
根暗な発言で、楽しい雰囲気に水をさしてしまうかもしれない。
海を汚いと思うのは、悪いところばかり目がいく僕のせいかもしれないし──。
「ぐえぇぇぇ、汚ねえぇぇぇ」
「遠目には綺麗に見えるのにねぇ……」
「東京湾ですし、いたしかたないかと」
「みんな、シュヴァルちゃんやトレーナーの育ったところを悪く言うのはよくないよ!」
──僕だけなんてことは、ぜんぜんなかった。
「……いえ、実際汚いので……ごめんなさい……」
「なんでもっとはやく言わなかったんだ! ターボ怒ったもん!」
「……み、水をさしてしまうんじゃないかと思って……楽しい雰囲気に……」 - 54二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 07:35:55
「あのさ、シュヴァル」
ネイチャさんが僕の肩を、ちょいちょい、とさわる。
「シュヴァルはもっと自己主張していいんだよ。シュヴァルにしか気づけないことがあるんだし。
アタシはさ、みんなそうやって補いあってると思うんだ。
そう考えたら、アタシみたいなウマ娘でも、生きてる意味ってやつ? あるかな〜なんて思っちゃったり。
以上、ネイチャおばあちゃんのおせっかい話でした」
……僕が生きている意味。
根暗な僕でも、だれかの役に立てるのだろうか。
「ターボもっと綺麗な海に行きたい!!」
「それならターボさん、もっと綺麗な海に行きましょう」
兄はそう言うと僕にほほえんだ。
電車を乗り継いで着いたのは、見覚えのある海だった。
「見て見て! サーフィンしてる人がいるぞ!!」
「あちゃー、あんなに肌を出しちゃって、若いっていいですなぁ」
「ネイチャさんも若いですよ」
「ねーねーみんな海入らないの? ほら、シュヴァルちゃんもいっしょに」
「え、いや、僕は」
言いかけている間に、僕は海へと沈められてしまった。
それから、みんなでわちゃわちゃして、ずぶ濡れになった。
「「「「ようこそ、カノープスへ!!!!!!」」」」
帰り道、僕たちはトレーナーにソフトクリームをおごってもらった。
「シュヴァルさんの末脚はほんとうに素晴らしかった。カノープス期待の新星です」
「……いえ、僕はたいしたことなくて、トレーナーとタンホイザさんのおかげです」
「タンホイザのおかげ?」
「はい、タンホイザさんが『頑張る』ことを教えてくれたおかげなんです」 - 55二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 07:36:21
「うぅん、それ私のおかげなのかなぁ……トレーナーは、すごいけど。すぐに作戦も練習メニューも組み立てちゃったし。そんなことできるなんて、じつは超一流トレーナーだよ」
みんなの視線がトレーナーに集まる。
「いえ……事前にチェックしていなければ、私もそんなことはできませんよ。たまたまです」
「……!! それって妹だからぐむぐむぐむ」
ターボさんがイクノさんに取り押さえられているなか、僕は兄にソフトクリームを差し出した。
「……どうかしましたか?」
「……これ。すこし食べていいよ」
こんな話があってね。──僕は姉に話をした。
「ちょっと明るくなった?」
姉は僕に言う。「それに、シュヴァルから話をしてくれるなんて久しぶり」
恥ずかしくなって、僕はすこし黙る。
それから、はにかむような笑顔で言った。
「じつは、僕もそう思ってた」
こんな僕でも、受けいれてくれる人がたくさんいるんだよ。
それに気づいたら、いままで目先のつらさや醜さにとらわれていただけで、案外世界はあたたかくて美しい場所なんじゃないかって、ほんのすこしだけ思えてきたんだ。
「ねえお姉ちゃん、話は変わるんだけどさ、もしよかったら、また僕を街に連れてってくれるとうれしいな。──その、ちょっとだけファッションとか、そういうの、興味出てきたから」
ほらやっぱり。
たとえば、僕の姉の笑顔は最高にかわいい。 - 56二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 07:45:01
3期ってもう公開されてたんだっけ?
- 57二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 09:06:48
サトノクラウンに騎乗するはずだったムーアが契約を理由にしてアイダホへ。M・デムーロがスライドしてサトノクラウンに騎乗。1週前追いにも乗ったシュヴァルグランを袖にする形になった。ゆえにハズレを引いたのはシュヴァルグランという結論になっているが、本当にそうだろうか?
【2017年・ジャパンカップ】〝乗り替わりドミノ〟からの戴冠 何から何までイメージ通りだったボウマン&シュヴァルグランの一撃【2017年・ジャパンカップ】〝乗り替わりドミノ〟からの戴冠 何から何までイメージ通りだったボウマン&シュヴァルグランの一撃tospo-keiba.jp - 58二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 14:18:57
「──僕だって、悔しかった!!!!!!」
言えたじゃねえか… - 59二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 18:08:15
ウマ娘の成長物語でしか摂取できない栄養がある
- 60二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 21:33:06
- 61二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 21:35:24
長い!!!(褒め言葉)
- 62二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 21:41:34
アドマイヤデウスのこともやって欲しかった(強欲)
- 63二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 21:48:36
ここまで書かれると3期にもカノープスに出てほしいぞ…
- 64二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 21:58:22
えぇっ!?今日は南シュヴァを復権していいのか!?
- 65二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 21:59:48
- 66二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 22:01:35
- 67二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 22:04:41
お兄ちゃんが気にかけてくれていたことに気づいてソフトクリームを少しだけ食べさせてあげるシュヴァルグランあーっ死人が出ます
- 68二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 22:07:00
二日前だぞ
- 69二次元好きの匿名さん23/03/13(月) 23:10:43
シュヴァルが南坂を気にするようになったらなったで「…っ! いやいや…、一応身内だし……?いやでも……っ!!」みたいに妙に考えを巡らせてそのうち自爆するネイチャさんの姿がありありと目に浮かぶいい品物ですわ
- 70二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 07:47:39
南シュヴァ兄妹概念なんてスレ金輪際建たんだろうから言いたいことは今の内にいった方がいいね
という事で、南坂にアグレッシブに甘えにいくターボにふと昔の自分を重ねて、その微笑ましい光景に懐かしさを覚えるも、「僕のお兄ちゃんなのに……」と心のどこかで嫉妬心を抱えてしまうシュヴァルグランこちらの方に置いておきますね - 71二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 13:23:33
「お誕生日、おめでとうございます」
「「「「おめでと〜!」」」」
「あ……ありがとう……ございます」
パンッと弾けるクラッカー。目の前に出されたホールケーキ。そして僕の肩から掛けられた『本日の主役』と書かれたタスキ。今日は僕の誕生日、みんながみんな、それを知って祝って来てくれて……何だが緊張して来た所で、部室でおに……トレーナーとみんながサプライズパーティを開いてくれた。
みんなからのおめでとうへのお礼にも思わず敬語を付けちゃうくらいに緊張してるけど、それでも気付かない内に口の形が変わってる事に気づいて、今度は恥ずかしくて顔を俯かせてしまった。
「じゃあ、はい!先ずはターボから!」
「うぇ!?」
ズンと、妙に重たいプレゼントボックスが僕の膝の上に置かれる。
「ではではおマチさんからはこちら〜!」
「うわわっ……!?」
「私からはこれを」
「っとと……ぉっ!?」
「あっはは……じゃあアタシも便乗させて貰いますか〜」 - 72二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 13:24:27
もう少しだけ軽いけどまた重いプレゼントボックスがタンホイザさんとイクノさんから、そして最後に膝に乗せられたネイチャさんからの普通の重さのプレゼントボックス……膝の上に積み上がったプレゼントが僕の顔より上の高さまで来ている。下のプレゼントが重いから安定してるけど、前が見えない……!?
「ああもう皆さん……ええと、シュヴァルさん。一先ずプレゼントは予備の椅子に置いて頂ければ……」
「あ、ありがと……うございま……っとと!?……ふう」
トレーナーが即座に予備の椅子を横に引っ張り出して来てくれたお陰で難を逃れる事が出来た。あの重いプレゼントボックスの中身が何なのかは分からないけど、一先ず頭の隅に追いやっておこう。うん。
僕がプレゼントボックスに若干畏れの視線を向けているとネイチャさんがこそっ、と
「いや〜ごめんね。みんなで色々選んだんだけど……何贈るのが良いかわからなくなっちゃった結果……まあ、気持ちが沢山入ってマス……」
「あー……えっと、気にしないでください……?」
もしかしてや重い物一つが入ってるんじゃなくて色んな物が入って重くなってる……?
その予想から更にプレゼントから目を逸らしたくなって、思考のマークをプレゼントからケーキへ舵を切る。
「……えっと、今日はありがとう、ございます。その、ケーキ、食べよっか」
僕なりに頑張ったと思う。ありがとう、と言った直後にまた敬語を付け足しちゃったのも、その次の一言で挽回できたって事にして欲しい。
- 73二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 13:25:46
──────
────
──
「……」
そんなこんなで、って言えば良いのかな。緊張と恥ずかしさでぎこちない状態の僕を主役にした事を試みるとかなり盛り上がったし変な空気にもならないまま、楽しいパーティになった……と思う。少なくとも解散する時もみんな笑顔で解散できてたから、良かった。
それで、僕は今何をしているのかと言うと……後片付けをする、ってトレーナーが残った部屋にプレゼントを寮に置いて来た後、こっそり戻って来た。最初はみんなも手伝おうとしたけど、トレーナーが「こう言う日は大人に後を任せて下さい」って言って一人でやってくれるって事になったから。
だから、別に自分だけ戻って手伝おう……って言うつもりは無い。僕でもそれは余り喜ばれないだろうなって分かるから。
「トレー……お兄ちゃん、入るよ?」
「──おや、シュヴァルさ……グラン?」
呼び方を今だけは戻して、扉を開ける。いつも僕の方から呼び方を変えてるから、お兄ちゃんもちょっとビックリしてるみたいだけど、直ぐにお兄ちゃんも呼び方を前の方に戻してくれた。
「どうかしたのかい?」
「えっと……今日は、その。ありがとうって……言うのと」
言おうとした事を躊躇って、つい口籠る。言おうとしてる事が子供っぽく感じて顔が熱くなるし、遠回しに伝えるにしても言葉が浮かばないから、直球で言うしか無いのが余計に恥ずかしい。でも、大人なお兄ちゃんはそんな僕を見て優しく微笑みながらじっ、と待ってくれてる。
「────お、お兄ちゃんからも、プ、プレゼントが欲しい……かなって」
言っちゃった。牽制球も変化球も無しの豪速のストレートな我儘。やっぱり取り下げよう、うん。流石にそんな風にお願いしてプレゼントを貰う歳でも無いんだし……
「ごめん、今のやっぱり無「ハッピーバースデー、グラン」……うぇ?」
- 74二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 13:26:21
ポスンと、頭の上に軽い物が乗せられた。目の前で頭を撫でる様に物を乗せて来たお兄ちゃんの顔を見上げると、ちょっとしたサプライズが成功したとでも言いたげな顔をしている。お兄ちゃんの手が離れて、乗せられた物が落ちない様に咄嗟に手を頭の方に伸ばすと、今日も被ってる帽子の上に……またもう一つの帽子が被せられていた。
「実を言うといつ渡そうかな、と悩んでる内にパーティが終わってしまって……なので丁度来てくれて助かりました、グラン」
「え、えっと……どういたしまして。その、この帽子って……」
僕の被っている帽子と瓜二つに見える。けど触り心地とかを見るにかなり良い素材だし……手に持った帽子を観察していると、裏側にCanopusの刺繍がある。それを見つけた僕は思わずお兄ちゃんの顔を見る。
「ええ、兄心なりに考えてみたのですが、チームのトレーナーとしてもこう言った印のある品が良いかな、と……気に入ってくれましたか?」
「────う、うん! ありがとう、お兄ちゃん。すっごく嬉しいよ!」
緊張とは無縁の笑顔が、今は自然と出た。元からあった輪の中に入るのが苦手で、今までカノープスのみんなにもほんの少しだけ心の距離があったかもしれないけど、こう言う印があるなら……自信を持ってその中に入れる……とまでは断言出来ないけど、きっと。今までよりずっと近くに心を置ける気がする。
「みんなともっと、仲良くなれる気がする」
「────と、言う事ですから。皆さん、グランをお願いしますね」
え? と思って振り返ると、少し開いた扉の隙間に四色のウマ団子が出来上がっていた。
「言われなくてもターボ達は仲良くするぞ!」
────さっきまでのながれ、みられた?
「〜〜〜〜ッ! 今の忘れてーッ!」
次に新しい帽子を被ったのは、頭じゃなくて顔だった。
という訳でシュヴァルグラン誕生日おめでとう!!!という気持ちの籠った作品を探しているのですが此方に在庫ありますか?長い注文失礼しました
- 75二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 16:13:17
シュヴァルちゃんのSSのセリフを読むと脳内が自動的に富田美憂さんの声で再生されるんだけどどうしたらいい?
- 76二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 20:42:14
- 77二次元好きの匿名さん23/03/15(水) 06:36:54
ふいに兄としての砕けた言葉遣いがもれる南坂とかたまらなくないですか?普段の徹底して威圧感を与えまいとしているような敬語に対して、その間に絶対の信頼関係があることを裏付けるようなタメ語ですよ。いつものトレーナーとしての一側面からしか見えなかった存在が、口調一つで違う角度からのイメージが差し込まれて一気に深みを増すのすごいですよね。なんなら二人きりタメ語で会話してるところに混ざっていって、自分が来たとたん器用に敬語に切り替えられてちょっとした隔たりを感じてみたい
- 78二次元好きの匿名さん23/03/15(水) 08:09:32
自信がないと甘えるのにも勇気がいるんだよな…、ほんと良かったね……