【SS】あいについて【トレウマ】

  • 1二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 22:02:29

    こちらのSSと関連した話です。

    一応こちら単体でも読めます。

    【SS】拝啓、悪の大幹部様【シナリオネタバレ・トレウマ要素注意】|あにまん掲示板「子分に渡したいものがあるのだ」バレンタインならもう貰ったよ、と伝えると不満げな顔をして唸ってきた。「…ぐるるる。キャンディは勿論ウインディちゃんの本心なのだ。でもなんかこう…物足りなかったのだ!」何…bbs.animanch.com

    ウインディちゃんとの関係に悩むホワイトデーです。

    トレーナーの性別に特に指定はありませんので、ご自由に想像頂ければ嬉しいです。

    一応ですが個別や育成ストーリーのネタバレ注意です。

  • 2二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 22:03:02

    ─大魔王様へ
    ─私は、貴方を愛しています。
    ─これは私がこの手で綴る、紛れもない真実です。 

    「おい子分!もうすぐホワイトデーだな!」
    そう言えばもうそんな時期か、と時の早さを実感する。
    「ちなみにウインディちゃんの誕生日はその1ヶ月後なのだ!オレンジデーなのだ!」
    オレンジデーなんて、今この瞬間初めて聞いた。
    良くそんなに細かく記念日を覚えている物だと感心していると、大魔王様から命令が下される。
    「バレンタインデーはウインディちゃんからのプレゼントだったんだから、ホワイトデーは期待してるのだ。ちなみに誕生日も期待してるのだ」
    そうは言われても、正直困る。
    はっきり言って、私に彼女程気の利いたプレゼントや雰囲気作りが出来るとは思えない。

    貴方から貰ってる物以上に、私が貴方に返せるとは思えない、と正直に言った。
    「愛が重いんだか重くないんだかわからない言い回しは止めるのだ!とにかく!最初からへこたれるなんてウインディちゃんの子分らしくないのだ!悪の作戦参謀なんだからアタマを使ってウインディちゃんを喜ばせてみるのだ!わーっはっは!」
    そう言って、駆け出して行った。

  • 3二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 22:04:32

    放り出されて数十分。
    そうは言われたものの、果たして何をあげればいいのか。
    当てもないまま外に出て、何か適当な物が無いか探す為にぶらつく。
    まずシンプルに、彼女が喜ぶ物が分からなかった。
    貰える物なら何でも喜ぶのでは、と言われれば、私は勿論それでも構わない。
    そもそも彼女はその場に応じて、ちゃんと自分で考えて、一番ベストな物を渡してくれる。
    あの時の手作りのチョコレート。ストール。花束。そして、彼女とお揃いの…ネックレス。
    物自体も勿論嬉しい。そして…考えてくれること自体が私は嬉しい。

    彼女に私は変えられた。
    ただ過ぎ去るだけだった毎日が、彼女と過ごす内に驚きと喜びに溢れるものに変わっていった。
    今日は○○の日だからこんなイタズラを考えたとか、さっき咲いていた花の名前は○○だとか、色々なことを教えてくれる。
    流石に映画の日だからと、映画撮影をしようと言われた時は止めたが。

    アイディアと気づきに溢れる彼女の考えていることは、正直私には分からない。
    だが、これだけは紛れもない真実で。
    道端で見つけた花や、何気なく調べた記念日。
    前までの私なら、ただ花が咲いているとしか思わなかっただろう。
    そんな日があるのか、で流していただろう。
    だけど、今の私は。
    こんな時、彼女だったらどうするんだろう。
    彼女は何を感じるんだろう。
    どんなことを話してくれるんだろう。
    そんなことを考える様になって。
    彼女の存在が、私の人生に彩りをくれた。
    これからも彼女と一緒に居られる、それがどんなに嬉しいことか。

    そしてこの想いは、何と形容すれば良いのか。
    …私は、将来彼女とどうなりたいのか。
    その"答え"も、彼女が喜ぶような良い考えも、思い浮かばなかった。

  • 4二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 22:05:20

    結局、無難にそれらしい包装がしてあるキャンディを買って帰ることにした。
    かわいい動物達を模ったキャンディ。
    以前動物園に行った時、動物達に夢中になっていた彼女の顔を思い出し、少しでも気にいってくれれば、そう思い選んだ。

    ホワイトデー当日。
    バレンタイン程ではないが、学園中でお返しのやり取りが見られた。
    これだけでは味気ないだろうか。
    動物園や水族館にでも行けば良かっただろうか。レストランにでも誘えば良かっただろうか、と当日になって色々思いたった。
    それだけ、緊張しているのだろうか。 

    「子分。来てやったぞ。ウインディちゃんが喜ぶ様な物、ちゃんと考えたんだろうな?」
    扉が開いて、ドヤ顔の大魔王様が降臨する。
    いつもの見慣れた光景。だけど今日は、少し違う。
    喜ぶかは分からないけど…と包みを渡した。
    「…喜ぶかはウインディちゃん次第なのだ」
    包みを渡すと、彼女は品定めをする様に包みをいろいろな角度から一通り眺め、こちらに確かめる様に言った。
    「開けていいか?」
    私は頷いた。
    「キャンディなのだ。動物の。後は…手紙?」
    実は、あのキャンディには『大切な人に思いを送ってみよう!』と言う名目でレターセットが付いていた。
    「…何が書いてあるのだ?」
    探る様な目つきでこちらをみてきた彼女に、私の素直な気持ちだよ、とだけ伝えた。

  • 5二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 22:06:22

    「これ、後で食べるのだ」
    キャンディの包みを置いて、彼女は手紙に目を通し始めた。
    一つ一つの所作がまるで、いつものやんちゃな彼女からは想像も出来ない程に丁寧だった。
    「お母さんから言われたのだ。人から貰った物は大切にしましょうねって。…大切な人から貰った物なら尚更って」
    読みながら、彼女は真意を打ち明けてくれた。
    「…正直に言うのだ。お返しの内容なんて何でも良かったのだ。ただ…こうしてお前がウインディちゃんのことを考えてくれる、それだけで良かったのだ。勿論、高級なレストランでも、動物園でも、水族館でも」

  • 6二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 22:06:59

    「…読ませて貰ったのだ。真剣な思いには真剣に応えるのだ。取り敢えず。親分のことをよく知ってる子分なのだ。褒めてつかわすのだ。だけど、気になる所が一つあるのだ」
    手紙を突き出して、私に見せてくる。
    その箇所には、○が大きく付けられていた。
    "貴方とどうなりたいかも答えが出ないままで、一緒に居たいと言って申し訳ありません"
    煮え切らない、私の素直な思いが綴られていた。

    「確かにあの時、ずっと一緒に居ろって言った。その印としてネックレスだって送った。でも…ウインディちゃん、これ読んで思ったのだ。子分は大人だからかもしれないけど、言葉を重く捉え過ぎな気はするのだ」
    これから先のことを考えるのが、何か言われるのが怖かった。
    ただ一緒に居たいと言うのは、無責任なことではないかと思っていた。
    「まあ…気持ちはわからんでもないのだ。告白やプロポーズで良く使われる言葉なのは間違いないのだ。でも…そもそも一緒に居るには何か証が必要なのか?愛してるって伝えたら…キスとかしなきゃいけないものなのだ?…それならウインディちゃんは、お母さん達としないといけないのだ。…自分で言って何か違う気がするのだ」
    共に生きることを選んだのなら、何かしらの形で行動に示さなければ、周りに認められなければならないのではないかと思い込んでいた。
    彼女の言葉一つ一つが、私を縛る鎖を解いていく。
    愛の形だって、共に生きる形だって、人それぞれだ。一括りにできるものじゃない。
    「…色々悩むくらいなら、ウインディちゃんとお前は親分と子分。悪の大魔王で作戦参謀。それで良いんじゃないかなのだ?誰かに言われた訳でもないし、言われたとしてもすぐにその想いに答えを出さなきゃならない物でもないと思うのだ」
    な?と言って歯を見せて笑う。 
    その言葉と笑顔に、幾度となく心を動かされてきたのを思い出す。

  • 7二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 22:07:37

    「そもそもだな!手紙で不安な気持ちを綴られても、どうしようもないのだ!目の前で渡して読む形だったから良かったけど、こんなの渡してさよならされたらモヤモヤするだけなのだ!ウインディちゃんを褒めてだけいれば良かったのに!上げて落とすな!」
    魔王様による添削が入る。まあ、私も意中の相手から不安な想いをいきなり手紙で吐露されても困ってしまうので最もではある。
    「お前は今までもこれからも、ウインディちゃんのことだけ見てれば良いのだ!いいな!」
    人差し指を突き出して、そう忠告される。
    頷いて、それに応える。

    「いい顔なのだ。これからも悩んでいたら言うんだぞ〜?ウインディちゃんのアイディアで助けてやってもいいのだ〜!」
    …彼女の笑顔とその言葉を聞いた途端、色々悩み、力んでいたのが嘘の様に、何だか力が抜けた様に楽になる。
    「それじゃキャンディも食べるのだ。ウインディちゃんに余計な頭を使わせた罰に食べさせろなのだ!」
    包みを開けると漂う、甘い匂い。
    「うまそうなのだ!早く食べさせるのだ!くっくっく…お前達はウインディちゃんにバリムシャされる運命なのだ!」
    それはこれからの、幸せな時間の訪れを知らせる様だった。  

  • 8二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 22:09:25

    キャンディを口に含みながら、彼女は言う。
    「手紙、ほんとに嬉しかったのだ。それだけは…ちゃんと伝えとくのだ。ちょっと赤裸々過ぎて、びっくりしたけど」
    いつもそれくらい思ってるよ、と伝えると、彼女の顔は真っ赤になる。

    彼女と私は、親分と子分。
    そして、世界を手にする大魔王と作戦参謀。

    ─大魔王様へ 
    ─私は、世界中の誰よりも、貴方を愛しています。

    ─あいについて 終わり─

  • 9二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 22:10:50

    愛だのなんだのは単純には言えないよね、的な話でした 
    取り敢えず当日に間に合って良かったです
    ご覧頂きありがとうございました

  • 10二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 22:13:13
  • 11二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 22:54:08

    今回も良かったです!
    バレンタインから一月になるんですね、何となく感慨深いものがあります。
    愛って一口に言っても沢山ありますよね……。友愛、博愛、恋愛、家族愛……。これらに様々な意味があっても根っこにある大切な人を思う気持ちは同じなのかなって思います。

  • 12二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 23:08:20

    >>11

    今回も感想ありがとうございます

    愛情と言う物は一括りに出来ないからこそ人間関係は面倒臭いし、面白いのかな、と感じます

    そちらが仰っている様に、誰かを思う気持ちこそ愛の本質なのかもしれません

    短絡的な恋愛を書きがちな人間ですが、恋愛もその過程や描写をしっかりと、そして様々な愛を描いていける様になりたいです

  • 13二次元好きの匿名さん23/03/15(水) 09:30:09

  • 14二次元好きの匿名さん23/03/15(水) 21:23:30

    あげ

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