- 1二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 23:32:14
その日わたしは、いつものようにマスターの部屋で午後ののんびりとした時間を過ごしていた。
「クロ、ちょっと良いかな?」
「何か用事?」
「ちょっと渡したいものがあって……はい、どうぞ」
「ほんと突然ね…これ、わたしにくれるの?」
「うん。ホワイトデーのお返し」
「それならバレンタインの時に貰ったと思うんだけど」
「それはそれ、これはこれというか…俺が渡したくなったからって感じ?」
「…そう、ありがとうマスター」
そこでうまく言葉が見つからず、わざわざそっけなく返してしまうあたりわたしもまだまだ子供だ。とはいえ、嬉しいのは本心なので早速中を見てみる。開けてみると中には月と星をモチーフにした可愛らしくも大人っぽいブレスレットが入っていた。
マスターにしては意外な贈り物だったので、これを選んだ訳を聞くと「クロエに似合うと思ったから」、なーんて返事が返ってきた。よくもまあそんな告白じみたセリフを素面で言えるものだ。言われたこっちの方が照れで顔が熱くなってくる。
だってそれは裏を返せばわたしのことをわたしがいない時でも考えてくれてるということ。それはなんていうか嬉しいような恥ずかしいようなフクザツな気持ちになる。乙女心というものはめんどくさいものだ。
…と、話が逸れてしまった。とにかく、せっかくのマスターからの贈り物だ。今の内にこれをつけて感想をもらっておこう。
「んー…これでよし。どう?似合う?」
「!……よく似合ってる」
「それだけ?」
「後は……すっごく可愛いぞ!」
「ふふっ、ありがと♪」 - 2二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 23:32:29
強引に言わせた感はあるが彼のことだからきっと本心だろう。なにより、好きな人に可愛いと言ってもらえるのはすっごく嬉しい。ここまでしてもらったからには言葉以外にも何かお礼をしなくてはならない。しかし、残念な事に今のわたしはマスターに渡せるものを何も持っていない。なので物以外で攻めてみる事にした。
「マスター♪」
「うん?」
「ちょっとしゃがんで」
「ん、了解」
「うんうん、良い感じね。じゃあ早速、んっ……」
わたしが今できるお礼と言ったらこれしかない。普段だったら魔力供給とか言って誤魔化すところだけど、今回は正真正銘のマスターへ感謝の気持ちと…愛情を込めたとびっきりのキスだ。当たり前の話ではあるが、わたしが男の人とキスをするのはこれが初めて。つまり……そういうことなのである。
「………どうだった?わたしなりのお礼なんだけど」
「……ア、アリガトウゴザイマシタ…」
「顔、真っ赤になってるわよ?」
「……そうだね」
「あははっ、これじゃどっちが乙女なんだかわからないわね」
そんな風に完全に茹だっているマスターを見てたら、もうちょっとだけイチャイチャしたくなったので正面から抱きついてみる。突然のことに狼狽える彼の胸元に顔を埋めると、明らかにいつもより早くなっている心臓の鼓動が伝わってきた。 - 3二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 23:33:16
「クロ…?」
「……本当に嬉しかったわよ、あなたからの贈り物。大切にするわね」
「それなら…良かった」
「そ・れ・に、わたしにわざわざこんな素敵なものを用意してくれたってことは期待してもいいのよね?」
「…まあ、そんな感じだと思う」
「そこは言い切って欲しいんだけど」
「確かに…」
「だからきちんと言葉で伝えて欲しいな」
「わかった」
そう言うと彼はわたしの方に向き直り軽く深呼吸をする。その仕草に思わずドキッとしてしまった。正直、さっきまでからかっていたのが不思議なぐらい緊張している。
「クロエ」
「うん」
「いつも俺のことを助けてくれてありがとう。それから…クロが良ければこれからも一緒にいて欲しい」
「…うん、あなたの想い、伝わってきたわ。わたしも頑張ってその期待に応えるわね」
「ちゃんと本心からの言葉は伝えたよ?」
「それはわかってるわよ。でも一番欲しい言葉はまだもらってないし、いつか絶対言わせて見せるから」
「まだ足りなかったか…ちなみにどんな言葉が欲しかったの?」
「そんなの一つに決まってるじゃない。わたしが欲しい言葉は───」
また少し、マスターとの距離が縮まった…そんな風に思えるホワイトデーだった。 - 4二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 23:34:25
- 5二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 23:49:23
乙
ぐだクロはいいものだ - 6二次元好きの匿名さん23/03/14(火) 23:51:52
続きありがたいです
二人のイチャイチャたまらない