【閲覧注意】ここだけ或人×唯阿または大二×唯阿・祢音→景和スレ(再スレ)

  • 1二次元好きの匿名さん23/03/15(水) 12:16:14

    スレタイ通りに或人×唯阿または大二×唯阿・祢音→景和の関係について語るスレです

    (落ちたので再度立てました)

    (前スレのSSと前スレの197のレスした人の案からスレタイにさせていただきました)

    スレタイ参照元 https://bbs.animanch.com/board/1601846/?res=197

  • 2二次元好きの匿名さん23/03/15(水) 12:16:33
  • 3二次元好きの匿名さん23/03/15(水) 12:33:58

    お疲れ様です

  • 4二次元好きの匿名さん23/03/15(水) 12:39:01

    このレスは削除されています

  • 5二次元好きの匿名さん23/03/15(水) 13:12:15

    保守

  • 6二次元好きの匿名さん23/03/15(水) 13:19:14

    ほしゅ

  • 7二次元好きの匿名さん23/03/15(水) 14:05:04

    スレ立て乙です!

  • 8二次元好きの匿名さん23/03/15(水) 14:32:13

    このレスは削除されています

  • 9二次元好きの匿名さん23/03/15(水) 14:33:13

    スレ立て保守

  • 10二次元好きの匿名さん23/03/15(水) 14:39:07

    スレ立て、ありがとう!!
    書き込もうとしたら規制でできなかった…
    また立ってよかった!

  • 11二次元好きの匿名さん23/03/15(水) 17:17:00

    スレ立てありがとう!
    或人×唯阿・大二×唯阿のいちゃラブが見れるんだね!(期待)
    景和と祢音がカップルになるのも楽しみにしてるー!

  • 12二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 00:12:20

    このレスは削除されています

  • 13二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 10:10:01

    このレスは削除されています

  • 14二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 18:05:41

    このレスは削除されています

  • 15二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 00:42:43

    前スレ見たらなんかくっつててびっくり!

  • 16二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 08:43:38

    このレスは削除されています

  • 17二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 08:44:29

    そういえば春だからお花見とかみんなでやるのかな?

  • 18二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 14:17:19

    脳内設定の更新


    或人×唯阿

    或人は博愛主義で唯阿に無自覚の片想いをしていたが、バレンタインの日に唯阿にチョコレートをもらい同じ日に彼女からチョコレートを受け取ってはにかむ大二とそんな彼にあたたかな眼差しを向ける唯阿を見てふたりの間にやさしい空気が流れているのを感じ訳もなく胸が苦しくなって、何故だろうと考えたとき唯阿に笑ってほしいなと思っているが自分にはできなくて唯阿に頼ってほしい気持ちがあるけれど頼ってくれなくて頼りにならないのかなぁと淋しさを感じていた自分の心を見つめ直し、ようやく恋と気づく
    唯阿に告白をしてフラれ、アーク化した彼女を止められたものの心因性により意識不明となった彼女の精神世界へ行きそこで初めて唯阿の心に巣く自分に対する負い目を知り、好きになってごめんもう言わないよ…となったけれど、唯阿が拉致監禁され彼女を救出できたがその際 自分の腕の中で彼女が気を失ったことが引き金となり、彼女に頼ってほしいけれど頼ってもらえない淋しさやアーク化する程 彼女を追い込んでしまった独り善がりな自分の不甲斐なさと謂った唯阿へ向かうたくさんの感情が込み上げ、彼女の瞳を閉じる瞬間が頭に焼き付いて眠れね夜が続いた
    毎夜 魘される自分を心配して一晩 傍にいてくれた唯阿に「ごめん好きだよ… もう言わないって決めてたんだけど…いなくならないで…俺の前からいなくならないで… 好きなんだ…諦めようとしてだけど諦めきれなくて…好きだよ…ごめん…やっぱり好き…」と胸の内を吐露し、唯阿から「私は、あなたの前からいなくならない。私はあなたの傍にいる」と返事をもらった

    唯阿は一見 或人に絆された感じになっているけれど負い目の所為で自分の恋心に気づけないだけで〈社長さんを独りにしたくない〉が答え つまり、或人のことを好きになっている

  • 19二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 14:19:00

    大二×唯阿

    大二は不破と唯阿がお互いどれ程 気遣い合っていたか語る或人の穏やかな表情や自分では唯阿の傷ついた心を癒せないと言う或人の淋しそうな笑い顔を見て、唯阿には不破という大切な人がいてこんなに真っ直ぐ唯阿を気に掛けて大切に思っている或人がいて勝てる気がしないと思って…唯阿のことが好きと気づくも、唯阿への想いは或人が唯阿を好きと自覚するまでは抜け駆けしないで胸のなかに閉まって唯阿と(或人と)親交を深めていくことにした
    唯阿を守り抜くと心に決め、アーク化した唯阿を止めて心身ともに傷つき病院へ搬送された彼女が入院中に心因性ショックで意識不明となり精神世界に囚われた際には現実世界に連れ戻した このとき唯阿は「助けて」と言わない(言えない)性分な癖して誰かが手を引いて助けてくれるのを無意識下で期待しているとこがあるので多少 強引にでも唯阿の手を掴み「帰りますよ」と真摯な眼差しで告げた大二は最適解を出したのだが、唯阿の精神世界で『社長さんは真っ直ぐで、眩しくて…』『私は社長さんの顔を真っ直ぐ見れない』と或人への心情を吐露する彼女の苦しげな表情が頭から離れず唯阿に意識されていないと気落ち
    それでも〈刃さんを守り抜く〉決意は固く、唯阿が拉致監禁されたときも自分ができ得る限りのことをし彼女を救出した
    その後、御礼と称して唯阿から届いた小包に添えられた手紙を読み文に綴られた《世話になった。ありがとう》が《さよなら》に思えてならなくて溢れる想いを胸に衝動のまま彼女と逢い、彼女が‘なにか’を胸の中に仕舞っているような気がして心に秘めていた想いを抑え切れず、「好きです」と告白した 受け容れてほしいとか今すぐ返事がほしいとかでなくこれ以上 隠し切れなくなって伝えたくなっただけと立ち去ろうとしたら、唯阿に「いつの間にか、私の心のなかに、――君が、いたらしい…」「私も君と同じ想いだ」と微笑みと共に返事をもらった

    唯阿は大二に所謂“癒し”を感じており元々ポジティブな情を抱いていて大二への好感度は高く自分のピンチを救ってくれる彼の言動に唯阿の乙女心を無意識のうちに突かれていた 大二には屈折したものを抱いておらず素直になれることもあり彼から想いを真っ直ぐ伝えられとき自分のキモチに気づき大二のキモチに応え両想いとなった

  • 20二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 14:39:00

    祢音→景和

    祢音
    景和に恋している
    バレンタインにチョコレートを渡し、後日告白 景和にはちゃんと伝わった模様 だけれど、自分の理想の世界を叶える為にデザ神となることが一番の目標だから「返事はまだいいよ」している
    ホワイトデーで景和から手作りのマカロンをお返しにもらって舞い上がったり気持ちを落ち着かせたりしていたら「祢音ちゃんのこと思って、一生懸命 作ったよ」なんて言われてトキメキが止まらないのに、祢音の気も知らないで景和は「バレンタインのチョコありがとね」と人好きのする笑みを浮かべるからはぐらかされているように感じてしまう…といったふうに振り回されている

    景和
    自分への好意に鈍感だったけれど、バレンタインを切っ掛けに自分に向けられる祢音の感情について考え始めたところで祢音に告白される
    祢音のことは仲間として友達として大事に思っていてどう応えようかと逡巡していると「自分の理想の世界を叶える為にデザ神となることが一番の目標だから、いまはいいの」言われ返事をしていない…祢音に対しちゃんと“答”出すから、ちゃんと返事するから、待っていて…と誠意を示すつもりでいる
    ホワイトデーも祢音のことをちゃんと考えて一生懸命にマカロンを作った それで「祢音ちゃんのこと思って、一生懸命 作ったよ」と言ったのだけれど決して誑かそうとした訳ではない他意はない はぐらかす気もない 天然なだけだ

  • 21二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 19:19:00

    書き手です
    前スレで私の妄想文に長々とお付き合い戴いた方、ありがとうございます!!
    このスレでも皆さんと楽しく盛り上がれたら幸いです!

    スレ主さん・皆さんに再度 確認です
    このスレシリーズに投稿した私の拙いssのpixiv転載(時系列順)を検討しています 宜しいでしょうか

  • 22二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 23:55:00

     「すまない、その日は先約がある」
     「そうですか、ではまた次の機会に…。失礼します」
     大二は通話を終え、スマホを切る。相手は唯阿であった。

     久し振りに3人で逢いませんかと倫太郎から連絡を受け、唯阿にアポを取ろうとしたら…彼女には先約があったという訳だ。

     淋しいな、と思う。

     ‘あの日’――唯阿の退院祝いの食事会の帰り道、唯阿に想いを伝えた‘あの日’以来、大二は彼女と逢っていなかった。
     仕事柄、互いに多忙で、これまでも頻繁に逢うことはなかったから珍しくはないけれど。それでも、淋しいなと思う。

     ‘あの’日、置き去りにした想いに未練はない。倫太郎さんともまた逢いたいですね、と言ったのも社交辞令なんかでない。
     恋は叶わなかったけれど、恋愛感情を抜きにしても唯阿は大二が信頼する人だ、尊敬する仮面ライダーの先輩だ。そしてそれは倫太郎も然り。だから、大二は唯阿と倫太郎に逢えるのが嬉しい。ふたりと逢うことは楽しい。3人で過ごすひとときは大二にとって掛け替えないもの。

     久し振りに倫太郎と逢うのが楽しみだ。
     …唯阿に逢えるのも嬉しい。――そう思っていたのだけど、

     「倫太郎さん、刃さんは他に予定があるそうです。なので、ふたりで逢いますか」
     大二は倫太郎と電話でそんな話をする。

  • 23二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 00:03:22

    >>21

    スレ主ですが自分は大丈夫です

  • 24二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 10:00:02

    このレスは削除されています

  • 25二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 10:17:17

     「大二くん!」
     倫太郎に報告が済んだところで、声を掛けられた。
     「景和さん?」
     「こんな処で逢うの、偶然だね」
     「そうですね」
     「……」
     景和が一瞬 思案顔になったけど。あ、と言って
     「大二くん、お昼 食べた?」
     こちらを覗き込むようにして尋ねてきた。
     「いえ、まだです」
     そう返すと、じゃ一緒に食べよう!と誘われる。
     「おいしいお蕎麦屋さんがあるんだ」

     連れて来られた蕎麦屋は景和の行き付けらしい。
     昔ながらの、その蕎麦屋は、大衆食堂のような雰囲気で落ち着く。
     「たぬきそばがオススメ」
    と言う景和に倣って、大二も同じたぬきそばを注文する。

     「…なにかあった?」
     ズズズと蕎麦をすすっていると、景和がそう訊いてくる。
     「?」
     「あ、いや…さっき見掛けたとき、なんかさ…浮かない表情(かお)しているみたいだったから…」
     咄嗟に、一緒にお昼を…と思いついたという。
     自分はそんなにわかり易く顔に出ていたのか…――大二はどう説明しようと考える。

  • 26二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 10:19:17

     「そういえば…」
     大二がすぐに答えなかったので訊いてはいけないことかとでも思ったのか、景和が話題を変える。
     「飛電くんと刃さん、付き合うことになったみたいだよ」
     「! 知っているんですか?!」
     「祢音ちゃんから聞いてね… 大二くんこそ知っていたんだー」
     おそらく、景和は大二の唯阿への想いを知らない。共通の知人として或人と唯阿のことを話に挙げたのだろう。――彼に他意はないと感じた大二はお茶を飲んで一息 吐いてから口を開く。
     「俺、刃さんのことが好きで…」
     「?!」
     景和は瞬間 驚いたような表情(かお)をしてけれどすぐに真剣な面持ちになる。
     「でもずっと刃さんに言えずにいて」
     黙って聴いてくれている景和に彼の配慮を感じながら、続ける。
     「この前、刃さんと或人さんと3人で逢って…
      或人さんと刃さんの間にあたたかな雰囲気が漂っているように思えて…ふたりは心が通じ合っているんだなと察しました」
     「……」
     「失恋したんですけど、ちゃんと刃さんに告白しました。刃さんにキモチが伝わったかはわからないけれど…伝わっていたらいいなと思います」
     語りながら景和の方へ目を遣ると、真面目に耳を傾けているのが見て取れた。
     その後、彼は考え込むような素振りをして、もしかしたらこちらを励まそうと言葉を探しているのだろうか。何だか恐縮するから、大二は
     「刃さんに自分の想いを告げることができたから、吹っ切れた。…って思っていたんですけど、
      俺…浮かない顔してました?」
     敢えて少し戯けた調子で訊いてみる。
     「いや、その…」
     「刃さんとは別に仮面ライダーの先輩がいるんですけど、
      その人に、刃さんと3人で久し振りに逢おうと言われたので、刃さんに連絡を取ったら他の用事があると断られて。
      それで――淋しいな って…」
     「そっか…」
     「だから、昼ごはん景和さんに誘ってもらえてよかったです」
     「大二くん…」
     「……蕎麦、伸びちゃいますね…」
     「! そ、そうだね…!食べよ食べよ!」

  • 27二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 10:50:30

    このレスは削除されています

  • 28二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 10:58:00

     「「ごちそうさまでしたー」」
     大二と景和は店を出た。
     「お蕎麦、おいしかったです」
     「でしょでしょ!!」
     嬉しそうな景和に大二はそっと笑って、じゃあ、と頭を下げる。
     と、
     「大二くん、
      …俺、なんて言ったらいいかわからないけど…」

     ピコーン
     そのとき、景和のスマホが鳴った。

     「姉ちゃんからL○NEだ。…〖今夜はオムライスが食べたい〗? はいはい、わかりましたよー
      あ!」
     突然、そうだ!と声を上げる景和。
     「?」
     首を傾げる大二にこう言った。
     「今から家に来ない?夕飯、一緒に食べようよ」
     「?!」
     「今日、非番なんだろ?昼間から街ぷらぷらしていたし…
      俺はデザグラの次のゲームが始まるまで休息期間だから家に帰っているんだ」
     「だったら、お姉さんと過ごすの久し振りなんじゃないですか?姉弟水入らずの処へは…」
     「気にしないでいいよ。姉ちゃんだって歓迎すると思うしさ!」
     多分、彼は自分を励まそうとしているのだろう。

     どっかの“日本一のお節介”な誰かさんみたいだと思う。

     遠慮すべきなんだろうけれど、断れなくて。大二は景和のお宅にお邪魔させてもらうことにした。

  • 29二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 19:19:00

     桜井家に着いた。

     「ただいま~」
     「おかえりー
      ん?そちらの方は?景和のお友達?」
     「うん。 五十嵐大二くん」
     「五十嵐大二と申します。宜しくお願いします」
     大二はお辞儀する。
     「こちらこそ、よろしくね。
      さぁ、上がって上がって!」
     にこにこ笑う景和の姉に、お邪魔します、と言って促されるまま家の中へ。
     「姉ちゃん、しばらく大二くんと俺の部屋でしゃべるから」
     「はーい。後で飲み物 持っていくわね」

  • 30二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 19:19:19

     「適当に座って」
     景和がベッドサイドに立て掛けてある簡易テーブルを引っ張り出して座蒲団を敷く。
     失礼しますと大二は座った。その様をじっと見ているらしき景和の視線を感じる。
     「……」
     「………」
     「…あ、あのさ、」
     景和が口火を切る。
     「俺、遠回しに聞くの下手だから、ごめん。
      吹っ切れたと言っていたけど…本当?」
     こちらの顔を窺う景和に大二は目を瞬かせる。
     「いやね、俺にもあるからさ」
     そう言って景和は自身のことを話し始める。
     「‘そういう’経験…たくさんある訳じゃないけど、いくつかあってさ… と言っても片想いばっかなんだけど。
      気になる子にプレゼントしたり…お菓子を作ったり… けど、どれも“イイお友達”で終わってね… それでも平気だった…否、平気のつもりだった が正しいかな…
      自分では平気と思っていた、でも無意識的に平気と自分で自分に言い聞かせて自分自身を言い包めて…平気なつもりでいたんだって…――姉ちゃんにはバレバレだった。
      『平気な振りしないの!』って言われて…姉ちゃんの前でいっぱい泣いたし、姉ちゃんにいっぱい愚痴った。
      だから…大二くんはどうなのかなって」
     「!」
     「大二くんはお父さんもお母さんもいてお兄さんと妹さんと弟くんがいるから、きっと‘そういう’悩みとか話せる家族いるよねとは思うよ。
      でもさ…普段は寮生活なんだよね?だったら、――家族と話す機会あるのかなって…」
     「!!」
     「もしそうなら――君は時間が解決するまで独りで耐えるのかなって…振りを振りと自覚しないまま無意識のうちに平気だって思い込んで…」
     「!!!」
     「だから、だからさ…――俺でよければ話を聞くよ?」
     折角、今日 逢ったんだから、と景和は親しみやすい顔で笑い掛けてくる。

  • 31二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 19:30:19

     「振りを振りと自覚しないまま無意識のうちに平気だって思い込む…それが、平気のつもり…」
     景和に言われたことを復唱して
     「…俺は…そうなんでしょうかね…」
     大二は曖昧に笑う。
     「ま、平気な振りしているって無自覚なら振りかどうかなんてわからないけどさ…本当に平気というのが事実なこともある。
      大二くん、さっき『刃さんに自分の想いを告げることができたから、吹っ切れた』って言っていたけど…その通りに吹っ切れているのかもしれないし。告白してスッキリしたって人もいるからね」
     だとしたら余計なお世話だったかな…?と独り言ちる景和に
     「自覚してないだけで本当は平気でないのか、本当に平気なのか、わからないですけど…
      なんとも思っていない訳じゃないですよ」
     景和は親身になってくれている。それがわかるから、彼の厚意を無碍にはできない。
     大二はいまの心境を綴る。
     「刃さんのことが好きで、でも色々あって…(或人さんも刃さんを自覚なく好きだったって景和さんに話すのは無粋だよな)…言えなくて、告白する前に刃さんと或人さんが付き合うことになったと知って…。
      だから、自分の所為なんです。俺が臆病だったから…」
     吹っ切れたからと謂って、忘れたのでない。唯阿への愛しさも、自分の気持ちを言えなかった悔しさも、実らないと知りつつ想いを伝えることの哀しさも、全部 憶えている。
     「伝えない方がいいのじゃないかとは思ってました…刃さんは或人さんが好きなんだから俺に告白されたら戸惑うよなって…
      刃さんが或人さんを好きと知ったなら…俺は自分のキモチ、刃さんに伝えない方がいいって思っていたんです、けど…
      俺は…俺の想いを告げました。〈刃さんのことが好き〉というキモチを抱えたまま前へ進めないと思ったから…」
     ‘あの’日、‘あの’場所に、唯阿への想いを置いてきた。けれど、忘れていない。唯阿を想うと、胸が熱くなることを…痛くなることを…苦しくなることを…、心があたたかくなることを…やさしくなることを…、そして、せつなくなることを…。
     唯阿への想いを置き去りにしたって、唯阿を好きなキモチは忘れない。
     「叶わない恋でしたけど、刃さんは尊敬する人だし俺はあの人を信頼してます。
      だから、刃さんに逢わないか連絡したら予定があると断られて淋しいって思ったんです…」
     「……そっか…」

  • 32二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 23:17:00

     トントントン
     ドアをノックする音。
     「はい」
     「景和ー、ジュース持ってきたよー」
     「はーい」
     景和がドアを開け、景和の姉が入ってくる。
     彼女は少し白濁した黄色いジュースが注がれたグラスをテーブルに置いた。
     「アップルジュースでよかったかな?」
     大二は、はい、と肯く。
     「あ、もうこんな時間だ!」
     景和が壁掛け時計を見て言った。
     「姉ちゃん…俺、そろそろ夕飯の支度するよ」
     景和はジュースを一気飲み。
     「それじゃ、俺…帰ります」
     大二もジュースを飲み干してそう言うと、何 言ってるの?と景和から返ってくる。
     「大二くんも食べていきなよ、折角だし」
     「そうよー折角なんだから食べてって!」
     お姉さんにも言われ大二は、はぁ、と応えるほかなかった。


     ダイニングへ移動する。
     「景和さん、何か手伝います」
     「いいよいいよ。大二くんはお客さんなんだから、座ってて」
     「そうそ。こちらにどうぞ~」
     大二が椅子に座ると、景和の姉が斜めの席に着いた。
     「ジュース、もう一杯いかが?」
     「ありがとうございます」
     出されたジュースを今度はゆっくり味わう大二。

  • 33二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 23:17:17

     ふと、景和の姉と目が合った。
     「……ごめんなさい!」
     「?」
     唐突に謝られ、大二は困惑する。
     「景和としていた話、聞いちゃった…」
     「!」
     「聞き耳を立てていたんじゃないのよ。ジュース持って部屋の前まで来たときね、聞こえてきて…
      すぐにノックしようと思ったんだけど、真面目な話みたいだったから…、邪魔しちゃいけないなって…。
      結果的に盗み聞きしてしまって…ごめんなさい…」
     彼女は頭を下げる。
     「……恥ずかしいな…」
     大二はボソッと呟いて
     「頭を上げて下さい」
    と言った。
     「悪気はなかったのなら、いいです。
      それより…こっちこそ聞き苦しい悩みを聞かせることになってすみませんでした」
     大二が申し訳ない気持ちでいると…
     「そんなことない!」
     思い掛けず力強く言われ、目を丸くする。
     「そんなこと、ないよ…。
      あなたはあなたのキモチにちゃんと向き合っていた…相手の人に対しても真摯だって…そう感じたよ」
     「…ぇ…」
     「だから、聞き苦しい悩みなんかじゃない。あなたの悩みは純粋なものだよ…――私はそう思う」
     「……!」
     「私、思ったの。あなたならきっと前へ進める。
      だから…――自信を持って!」
     !!
     彼女の、言葉に、背中を押された、気がして。
     「ありがとうございます」
     大二は感謝の気持ちを口にした。

  • 34二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 23:19:00

     「できたよー」
     景和の一声で、夕食を囲む。彼の作ったオムライスはおいしかった。

     「昼食も夕食もご馳走になって、すみません」
     「いいのいいの!というか、昼食は…大二くん、自分のは自分で払ったじゃん」
     「当然ですよ…」
     「まぁそうなんだけど」
     「…ありがとうございました」
     「こっちこそ、ありがとう…
      (小声で)祢音ちゃんも想いを伝えてくれたとき…大二くんみたいな感じだったのかな…」
     「はい?」
     「ううん、何でもない。
      (大二くんの話を聞いていて、祢音ちゃんのこと本当にちゃんと考えなきゃって改めて思ったよ。ありがとう)
      じゃあ、また!」
     「はい、お邪魔しました」
     会釈する大二を
     「またいつでもおいでね」
     沙羅は手を振って見送った。

     大二が帰った後。
     「彼…五十嵐くん、だっけ?」
     「うん、五十嵐大二くん」
     「五十嵐大二くん、ね…」
     「どしたの、姉ちゃん?」
     「あの子…可愛くない??」
     「……は?」
     「今どき、あんな純情な男の子がいるなんて…!!」
     「………」
     「祢音ちゃん以来の推しだわ!」
     「……エェェェエー?!」

  • 35二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 23:19:19

    という訳で

    新たに 沙羅(→)大二 という可能性が芽生えますた


    >>23

    スレ主さん、pixiv転載許可ありがとうございます

    そのうち、こっそりpixivに投稿致します

  • 36二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 08:40:57

    このレスは削除されています

  • 37二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 17:17:00

     或人は、くすくすドリームランドに来ている。お笑いステージに立つ以外でここへ来ることになるとは…。

     或人は人を待っている。その相手は――
     「社長さん!」
     唯阿である。
     「待たせた…」

     白地に花柄のブラウスとオレンジ色の裾が広がったパンツ(或人は知らないがガウチョパンツ)という春の装いの彼女は――可愛らしい。長い髪を頭の後ろの高い所で一つに結ったポニーテールも可愛い。
     見馴れたスーツ姿と違う唯阿の私服は新鮮で、或人はドキッとする。

     胸の高鳴りを抑えて、ううん…俺もさっき着いたばかりだから、と答える。
     「それに約束の時間よりまだ15分も前だし!」
     「…あなたの方が先に来ているとは思わなかった…。 今日は早く起きれたんだな」
     「俺は遅刻常習犯ですよー」
     「そこまでは言っていないだろ。すまない、ちょっと揶揄(からか)った(今日を楽しみにしてくれていたのかなと嬉しくなったなんて言えない…)」
     「えー
      実は…今日が楽しみすぎて、朝早く目が醒めちゃったんだよねー」
     「?!」
     「いやー目覚まし時計が鳴る前に起きるなんて初めてだよー」
     「 ッ!!そ、そうか…(どうしてこの人は…そんな恥ずかしいことをさらっと言うんだ…っ)」
     「じゃ、行こうか!刃さん!」

     こうして、或人と唯阿の遊園地デートが始まる。

  • 38二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 17:17:17

     ふたりは、まずジェットコースターに乗った。浮遊用の列車両が急カーブのあるレール上を走り急傾斜になっているレールの上を昇っていく。或人はドキドキする。それは、ジェットコースターのスリルを感じるからかすぐ隣に唯阿がいるからか…考えているうちに、列車両が昇りきった。そこから一気に急降下。キャーという彼女の歓声が聴こえてきて。刃さん楽しんでいるみたいでよかった、と思う。
     ジェットコースターを降りると、唯阿が何か食べたいと言うからホットドッグを頬張る。
     それから、ゴーカートに乗り、たこ焼きをつつく。バイキングに乗った後、遊園地レストランでカレーを食べ。コーヒーカップに乗ってドーナツをぱくつく。

     そして現在(いま)、お化け屋敷を出たところ。
     園内に点在する休憩ベンチに腰掛ける或人は
     「大丈夫か、社長さん…」
     心配そうな声と共にペットボトルを手渡される。
     「ありがとう」
     或人は一口ミネラルウォーターを飲み込んだ。と…、はい、と差し出されたのはソフトクリーム。受け取ったら、唯阿が隣に座り込んだ。ふたり並んでソフトクリームを舐める。
     「すまない。私の乗りたいアトラクションを乗り回し、合間の食事も私が好き勝手に決めて…。付き合わせて悪かった…」
     「そんなことない」
     或人は首を横に振る。
     確かに唯阿の体力と食欲に追(つ)いていくのがやっとだったけれど、愉しげにはしゃぐ唯阿を見たら…悪くない、振り回されるのも悪くない.と思ったから。
     「楽しいよ」
     そう続けると、ならいいが…と返して、唯阿が俯く。
     「久し振りに楽しくて…浮かれていた…」
     彼女が、ぽつり洩らす。
     「! 楽しい?本当?」
     初めてのデート。初めての唯阿とのデート。楽しんでくれるかな…と、或人は緊張していた。
     だから、――彼女が浮かれる程 楽しいと感じてくれているなら…
     「あぁ、本当だ。楽しいよ…とても」
     嬉しい。とても嬉しい。
     「俺も、とっても楽しいよ」
     或人は唯阿に追(つ)いていくのがやっとだったけれど、愉しげにはしゃぐ唯阿を見たら…彼女に振り回されるのも悪くない.と思った。
     それに…
     「だったら…一緒だな…」
     唯阿が、にこやかな笑みを浮かべた。
     その笑みにドキリとしながら、ほらね…と思う。
     今まで見たことない唯阿の笑顔――それが、今日は自分に向けられている。

  • 39二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 17:19:00

     「次は社長さんが乗りたいものにしよう」
     どれがいい?と訊かれ、或人はあれと指差した。
     「メリーゴーランド、か…」
     「小さいとき父さんと遊園地に来たとき乗ったんだ」
     「そうだったのか…(思い出のメリーゴーランドなんだな)」
     食べ終えたソフトクリームの容器を捨て、メリーゴーランドに向かう。

     「父さんはヒューマギアだから一緒に乗れなかったけど」
     回転木馬に股がりながら或人が語ると、気遣わしげにこっちを見てくる唯阿の視線とかち合う。
     平気だって伝えようと笑ってみせたら…何故か唯阿は或人の乗る木馬に或人の背中にくっ付くようにして座った。
     「?!?!や、刃さん?!」
     「?!! あ、いや、これは…」
     或人が上擦った声を挙げれば唯阿も慌て出す。どうやら、無意識の行動だったようだ。
     「あなたの、今さっきの笑い顔が淋しそうに見えて、つい…」
     ―――寄り添おうと思ってくれたのかな…嬉しい
     木馬から降りた唯阿は顔を自身の両手で覆っている。
     ―――照れてる…かわいい…
     斜め後ろに(たぶん照れ隠しで)乗り直す唯阿に、或人は笑顔で投げ掛ける。
     「今度、俺のバイクの後ろに乗ってみる?」
     すると、彼女は……そうだな…と、恥ずかしそうに、でも笑顔で、返してくれた。

  • 40二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 17:40:12

    このレスは削除されています

  • 41二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 18:07:35

    >>34

    沙羅姉ちゃん、大二を気に入った…?!

  • 42二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 19:07:38

    或人かわいい!

  • 43二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 19:08:24

    唯阿さん可愛いな

  • 44二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 19:08:48

    このレスは削除されています

  • 45二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 19:09:10

    少女漫画

  • 46二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 19:09:36

    続きが気になる

  • 47二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 19:10:08

    wktk

  • 48二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 19:10:37

    このレスは削除されています

  • 49二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 19:10:57

    このレスは削除されています

  • 50二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 19:12:16

     メリーゴーランドを降りると、太陽が大分 傾いていた。もうすぐ、日が暮れる。
     最後にふたりは観覧車に乗る。
     ゴンドラに入って座席に着く。と、或人の頭の中で昨日マッチに言われたことが蘇った。

     『社長、観覧車の頂上でキスをしましょう!』
     ………。いやいやいや!できないよ!今日、初めてのデートだよ?!初めてなんだよ?!!できないできない!初めてのデートで…できる訳ない!!

     「綺麗だな…」
     唯阿の言葉で我に還る。彼女はゴンドラから臨む風景を眺めていた。そんな唯阿を或人は見つめる。
     綺麗だと思う。唯阿が。
     唯阿に見惚れていたら、不意に彼女が振り向く。どうした?と目で問われている気がして。
     「綺麗だね」
     そう応えると、唯阿は肯く。

     きっと彼女は風景のことと思っているだろう。或人は本当は茜色の空や上から見下ろす街並みの風景を眺める唯阿を綺麗と言っているのだ…照れくさいから言わないけれど。
     夕陽を浴びる唯阿は輝いていて。そんな彼女がゴンドラから風景を見る光景こそ、綺麗だ。
     煌めく夕陽のなかゴンドラからの空や街の風景を眺める女性(ひと)…――画(え)になるなぁ、と思う。

  • 51二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 19:12:57

     観覧車を降りればデートは終わる。
     「今日はありがとう。楽しかったよ、凄く」
     或人が満面の笑みで伝えると、唯阿はそうか…と呟く。
     「(小声で)私も、だ…」
     ぇ…――微かに聴こえた、嬉しい言葉に、唯阿を見遣ると、彼女は顔を背けている。
     唯阿がどういう表情なのかわからないけれど、ポニーテールから覗く耳が紅く染まっているから照れているのだろう。恥じらう彼女が可愛くて、或人は表情を緩める。
     「あまり、じっと見ないでくれるか?」
     「あ、ごめん。
      えーっと…次のデートは何処に… ――「バイク」
     「へ?」
     「後ろに乗せてくれるんだろう?」
     さっきの遣り取り、覚えていてくれたんだ…!――或人はうん!と返事をした。
     「海に連れてってくれ」
     やわらかく笑んで静かに告げる唯阿は、キラキラしている。
     沈みゆく夕陽に照らされた彼女のやわらかな微笑(えがお)が眩しい。
     「 ッ、…わかった!」
     キラキラ輝いて見える唯阿の姿に早まる鼓動を堪えてそう応えたら、彼女はあたたかな眼差しで或人を見て微笑んでくれた。
     その微笑みに或人の胸の鼓動がまた跳ねる。
     「社長さん、顔が紅いぞ?」
     「~~~ッ 夕焼けの所為だよ…」
     どうしたんだ?と窺い見る唯阿を躱して、そう誤魔化した。
     「…じゃあ、名残惜しいけど…そろそろ」
     「そうだな…帰るか」

     遊園地を出れば、お互い帰り道は反対方向。
     「それでは、また」
     「……うん…」
     「次は社長さんのバイクで海だ」
     「うん!」
     そして、ふたりはそれぞれ帰宅の途に就いた。

  • 52二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 19:14:06

    或人唯阿かわいすぎない?

  • 53二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 19:14:35

    ふたりとも可愛いー

  • 54二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 19:14:56

    なにこれかわいい

  • 55二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 19:15:33

     「「あ」」
     大二と唯阿は同じタイミングで、待ち合わせ場所――映画館の入口に着いた。
     「同時でしたね」
     「あぁ。でも、まだ約束の時間より15分も早いぞ」
     「遅刻しないよう早め早めに用意していたら…こうなりました」
     「そうか。私も、だな。身支度がかかって間に合わなくならないよう余裕を持って行動した結果だ」
     そう言う唯阿は春を感じさせる優しげな黄色のワンピースを着てその上から白いレースのカーディガンを羽織っている。…いつも以上に女性らしさが醸し出され、大二はドキドキする。
     「それじゃ、行きましょうか」
     ときめく胸を抑え、大二は唯阿を連れ立って館内へ入る。

     これから、唯阿と初めてのデートだ。


     今日 観るのは、アクションもあるバディもの。どの映画がいいか唯阿に尋ね、彼女が選んだ作品だ。大二も気になっていたので、これにしようとなったのだった。
     人気のあるシリーズものだからかほぼ満席だ、予め席を確保していてよかったと思う。

     「やっぱり人が多いな」
     「満員御礼みたいですよ」
     「君が早目に予約してくれていたお蔭で、いい席だ」
     「…席が取れてよかったです」
     「始まるぞ」
     「楽しみですね」

  • 56二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 19:17:19

     映画を観た後、ふたりはイタリアンカフェで少し遅めのランチをしている。
     パスタとピザをひとり一品ずつ、ドリンクはアイスティーとホットコーヒーを注文。

     「映画、面白かったですね… 刃さんはどうでした?」
     「あぁ、面白かったな。続編も楽しみだ」
     「そうですね。でも、イーサンは次回作に出てくるんでしょうか」
     「今回のラストで別部署に異動になったから、どうだろう…」
     「異動先でイーサンが担当する事案とユーイ達の任務が繋がって って展開なら…」
     「有り得るな…それぞれで事件を追っていたらユーイ達のピンチになって、いいところでイーサンが助けに来る とか…」
     「さすが主人公…」
     「ユーイとW主人公だ」
     「バディものですからね」
     「私としてはダンにもスポットを当ててほしいな」
     「今回、頑張ってましたね」
     「イーサンとユーイの間で板挟みになっていたから…報われてほしい」
     「報われて…って…」
     「…今回のを観て思ったんだが、ユーイはダンと人生を歩むという道もあるのじゃないかと」
     「…けど、ユーイのバディはイーサンですよ? それに、あのふたり、どう見ても…」
     「好き合っているな。
      ただ、イーサンの異動が決まって、ユーイに『一緒に来てくれないか』と言うのが引っ掛かって…」
     「確かに、イーサンと一緒に行くとなるとユーイは辞めなくちゃいけないか…」
     「それもだが…イーサンなら有無を言わさず『一緒に来い』とユーイを連れ去る くらいすると思っていたから…」
     「あー」
     「今まではどちらかと謂うとイーサンが主導権を握っていたのに、ふたりの関係にも係わってくる問題を前に『一緒に来てくれないか』ってユーイに決定権を委ねるのが少しズルいな、と…」
     「……なるほど」
     あくまで私の感想だが…と話を切り上げて、唯阿はコーヒーを飲む。

  • 57二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 19:17:50

     カフェを出て、ショッピング。
     「付き合わせてすまない」
     申し訳なさそうな表情(かお)をする唯阿に、気にしないで下さいと大二は笑う。

     唯阿とこんなふうに一緒にいられることが嬉しいのだから。…なんて、恥ずかしいから口に出せやしないけれど。

     ウィンドウショッピングをする唯阿の愉しげな雰囲気に、大二の顔も綻ぶ。
     唯阿があるショーウィンドウの前で足を止めた。
     「刃さん?」
     唯阿はただ一点を見つめている。彼女の視線の先にある物を大二も見て
     「刃さん、こ… ――「何でもない」
     これほしいんですか、と訊く前に、彼女は再び歩き出したけれど、さっき見たものが気になっているのか足を止めたショーウィンドウの方を時々振り返っている。

     しばらくして唯阿が化粧直しに行くというから、その間に大二は先程 彼女が足を止めたショーウィンドウの店に行き、唯阿が見ていたオレンジ色のキーケースを購入する。

     唯阿が戻ってきた。
     「夕食のお店の予約までまだ少し時間がありますけど、どうしましょうか。
      ショッピング続けます?他に行きたい処ありますか?店に電話して時間を早めてもらえるかお願いしてみてもいいですが」
     「もうちょっと見たいものがある。
      あ、でも、私ひとりで見て来る!君も疲れただろう… ほら、あそこに休憩用のベンチがある。ちょうどいい、座って待っていてくれ!」
     「大丈夫ですよ。何か買うんだったら荷物持ちが要るでしょう?」
     「いや、その…君に見られるのは少し恥ずかしいんだ…」
     それを聴いて察した大二は、わかりました、とベンチに腰掛けて待つことにした。

     唯阿がウィンドウショッピングから帰ってくる。
     「買えました?荷物、持ちましょうか」
     「ひとつだからいいよ。
      それでは行こうか」
     「はい」
     唯阿と大二は夕食の予約をしている店へ向かった。

  • 58二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 19:19:17

     ふたりが食べに来たのは、大二が学生の頃よく通っていた定食屋。

     「いらっしゃい」
     昔馴染みの大将が変わらず出迎えてくれる。
     さぁこちらへどうぞ、と席を案内してくれる女将さんも変わらない。
     「大くんがこんな綺麗なカノジョさんを連れて来てくれるなんてねー ゆっくりしていってー」
     「……あ、ありがとうございます」
     明け透けな女将さんに対し、唯阿は恥ずかしがりながらお礼を言い、大二は頭を軽く下げる。…ふたりして顔が紅くなる。

     大将お薦めの菜の花や蓮根・さくらえび等の天ぷら定食(付いているごはんは筍と鶏肉の炊き込みごはんと普通の白いごはん)を頼んだ。

     旬の食材を使った見た目も綺麗な和料理に舌鼓を打ちながら、ふたりは歓談する。

  • 59二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 19:19:50

     「これを」
     おいしくいただいた後、大二は唯阿にキーケースの入った紙袋を手渡す。
     「これは…??」
     「ちょっとしたものです」
     「開けても…?」
     「どうぞ」
     唯阿が袋から箱を取り出す。箱の中身は…
     「これは…!」
     「ショーウィンドウでじっと見ていたから、ほしかったのかなって」
     「あ、あぁ。確かにほしかったが…ふたつは買えないなと思って…」
     「ふたつ??」
     「実は私も…」
     そう言って唯阿が差し出す。
     まさか…!大二は受け取り、中身を見る。そこに入っていたのは、案の定…
     「黄色いキーケース…」
     「…今日は君をショッピングに付き合わせたから…その、お礼に、と思って…――プレゼント。
      君はアクセサリーとか着けないだろうが、これなら少なくともご実家の鍵と職場の寮の鍵は普段から持ち歩いているのじゃないかと」
     「!!ありがとうございます!」
     嬉しいです、と伝えれば、
     「…それはよかった///」
     唯阿は照れながらも微かに笑みをくれた。
     「……そういえば、お揃いだな…色は違うが」
     唯阿が、ぽつり呟く。
     「………///」
     「………///」
     期せずしてお揃いなったけれど、――凄く、嬉しい…。
     「大切に使います」
     大二がそう告げると
     「私も大切にする」
     唯阿もそう応えて、オレンジ色のキーケースをやさしく見つめた。

  • 60二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 19:49:59

    ということで

    37~39,50~51:或人×唯阿で遊園地デート

    55~59:大二×唯阿で映画館&ショッピングデート

    でしたー


    ※余談

    >>22 で唯阿さんが言っていた「先約」は或人との遊園地デートのこと

  • 61二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 01:31:47

    このレスは削除されています

  • 62二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 10:48:46

    二人共デートが楽しそう!

  • 63二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 21:18:27

    このレスは削除されています

  • 64二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 00:13:58

    二人のデート甘酸っぱいなぁ…
    ちょっと自分には眩しい…!

  • 65二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 10:11:21

    二人のデートが尊すぎる…

  • 66二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 19:17:00

    大二と唯阿さん気が合うね!感性が似ているのかな?

  • 67二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 23:48:50

    >>66

    お互いしっかり者だからなぁ…

    そこで馬が合うのかな?

  • 68二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 09:00:33

    デートの段取りしたのは大二かな?
    ちゃんと唯阿さんをエスコートしている

  • 69二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 19:09:17

    大二×唯阿でお花見デート

  • 70二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 19:10:00

     (どれにしよう…)
     唯阿は目の前の服を見ながら悩んでいた。


     〖花見に行きましょう〗
     あの日、大二の馴染みの定食屋を出、実家に泊まるという彼が通り道だからと唯阿の家まで送ってくれた。そのとき次の休日がいつかはまた連絡しますと帰って行った彼から、後日L○NEが来てふたりの休みが重なる日に桜を見に行くことになったのだけれど。


     (何を着て行こう…)
     唯阿はデートに着る服をどうしようかと考えていたのだ。

     春らしく明るい色目で派手すぎず柔らかい感じのものがいいなと3パターンに絞った。
     一つはピンクベージュのリネンワンピースにカーキ色のデニムジャケット。もう一つが白いカットソーにペパーミントグリーンのスラックスパンツ。それから、同じく白いカットソーにコーラルピンクのフレアスカート。
     そういえばこの前はワンピースを着たなと思い出し、ベージュのワンピースは候補から外す。グリーンのパンツかピンクのスカートか…

     「これにするか」
     思案の末、より柔らかなイメージのあるコーラルピンクを選んだ。
     刺繍の入った白のカットソーに斜めフリルの付いたコーラルピンクのフレアスカート。春先の防寒としてさらっと羽織れるカーディガンは…アイボリーイエローにしよう。――着ていくものが決まり、自然と笑みが溢れる。

     ―――少しでも綺麗と思われたらいいな


     唯阿はオシャレをするのが好きだ。オフの日に自分でコーディネートしてお気に入りのカフェで好きなものをたくさん食べることが唯阿の至福。
     自分の為の洋服選びは楽しい、でも…誰かの為に着るものを選ぶのはまた違った楽しさがある。――こんな気持ちは久し振りで。自分にまだこんな“女の子”な部分があったのかとくすぐったくなる、けれど、悪くない。恋を知らない訳でないのに初恋のように浮かれている自分に笑ってしまうけれど、そんな自分が厭じゃない。

  • 71二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 19:10:19

     花見当日。
     唯阿は朝早くから起き出し、キッチンに立っている。…弁当を持って行こうと思ったのだ。


     ホワイトデーでお返しをくれたときの大二の言葉を思い出す。
     『バレンタインは刃さんお手製のチョコレートをもらったので…』
     『新組織(ブルーバード)発足祝いとして手料理を振る舞ってくれたでしょう?』
     『‘そのとき’のように刃さんの心が籠っているなって…そう感じたんです…』
     『‘あのとき’も、このあいだのバレンタインも、――嬉しくて…』
     ……ああ言われてしまってはな…――作るしかないだろう。お花見弁当。
     クスッと笑って、唯阿は弁当箱に出来上がった料理を詰める。


     唯阿はコーディネートした衣装に着替える。髪はハーフアップ。
     斜め掛けできるショルダーバッグに、弁当箱を入れたトートバッグを用意して、大二が来るのを待つ。
     彼からは、つい先刻 連絡があった。直に着くはずだ。


     花見の場所は、大二の実家の近くにあるという公園。
     唯阿は大二との電話の遣り取りを思い返す。

     「お家まで迎えに行こうと思うんですが、バイクのふたり乗りはちょっと危ない気がするので徒歩で伺います。
      それで…公園には歩いて行くことになりますけどいいですか」
     「構わないよ。ウォーキング好きだし、ちょうどいい運動になる」

     靴は歩きやすさを重視して履き慣れたスニーカーにする。

  • 72二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 19:12:19

     ピンポーン
     チャイムが鳴った。
     唯阿は玄関ドアを開ける。
     「お待たせしました」
     「さっき支度が済んだばかりだ」
     ふたりは玄関の外に。唯阿は鍵を掛けようショルダーバッグの中からキーケースを取り出す。――この前、大二にもらったオレンジ色のキーケース。

     ‘あの日’、ショーウィンドウで目に留まったキーケース、ふたつは買えないな…彼にあげる用だけ買うか…等と考えているとき大二にほしいのかと訊かれ咄嗟に何でもないと返したのは――本人の前で買うのが気恥ずかしかったからだ。結局、気になったから化粧直しの後、大二に休憩してもらっている間に購入したのだけれど。…彼からプレゼントされるとは思わなかった。

     唯阿は小さく笑んで戸締まりをした。
     「荷物、持ちますよ」
     大二が声を掛けてくる。けれど彼も大きな手荷物を持っていて、でも…と遠慮しようとして
     「公園まで歩いてもらうから…大きい方のバッグ、持ちます」
     そう言われ、無碍にできず彼に持ってもらうことにした。
     君は気を遣いすぎだ…――そう思い、この前もショッピングで随分と歩いたが…と言えば
     「あれは刃さんのリクエストですから。
      今日のはバイク送迎を却下した俺の都合だから…」
    と返ってきた。
     気にすることないのに、と口の中で呟いて。
     代わりに、唯阿は自分の気持ちを口に出す。
     「君とこうして歩くのは……私は…嫌いじゃない」
     好き、とは流石に言えなかった…照れるから。
     嫌いじゃない、というのも恥ずかしくて…大二から顔を背ける。
     相手から返事がないので、引かれたのだろうか…と大二を窺い見ると――目を見張る彼と、
     …瞳(め)が合う。
     瞬間、大二が、微笑(わら)った。
     その笑みに、唯阿は微笑み返す。こちらの本心――『ウォーキング好きだし、ちょうどいい運動になる』が社交辞令でなく本当であることが伝わったのならよかったとホッとして。

  • 73二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 19:12:58

     そこから、唯阿と大二は並んで歩き始める。桜咲く公園までの道を。
     空は晴れていて、日差しが柔らかい。散歩するのにぴったりの気候だ。
     麗らかな日和のなか、ふたりは歩く。
     道端に咲く名も知らない野花やゆるやかに流れる小川等の風景を楽しみながら、ゆっくり歩く。時々、どこからから鳥のさえずりが聴こえる。
     菜の花畑を通り過ぎると、桜並木が見えてきた。
     「……」
     公園へと続くその並木道の桜は、淡い桃色が連なって風景に透け込んでいる。
     「刃さん?」
     綺麗な桜並木を前に足が止まった唯阿は、大二の呼び掛けで我に還る。
     「あ、いや…綺麗だな、と思って」
     「そうですね。公園にある桜はもっと綺麗ですよ」
     行きましょう、と促され再び歩き出す。

     公園の桜はいまが満開といった感じで、見渡す限り淡い桃色が霞んでいる。
     「中央の小高い丘の上にこの公園でいちばん大きな桜の樹があります」
     「うん、行こう!」
     唯阿は自分の胸が弾んでいるのがわかった。

     なだらかな丘を昇ると、そこには――
     深部の紅く染まった白い花弁が重なり淡い桃色の花を咲かせる大木。
     風が動くと花も動く。ひらりひらりと舞い散る花弁は、揺らめいて地へと落ち。大木を彩るように根元へ桃色の絨毯を作る。
     「……っ」
     唯阿は、息を飲む。
     「……」
     大二も魅入っているのか、なにも言わず、けれど傍にいるのは感じる。
     ふたりは黙って桜の樹を眺める。

  • 74二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 19:15:00

     しばらくして、お昼にしましょうか、と大二が声を掛けた。
     大木の下のベンチにふたりは腰掛ける。大二が持ってくれていたトートバッグを返してもらい弁当箱を出す。
     「刃さん、それ…」
     「今朝、作ってきた」
     中身は…
     「ちらし寿司…!」
     「久し振りに作ったから…おいしくできたかはわからないが…」
     「いえ、嬉しいです。ありがとうございます」
     「 そ、そうか…。
      ところで、君が持っている荷物は一体…?」
     「実は俺も…」
     彼が荷を解く。中から出てきたのは…二段弁当。
     「君も作ってきたのか」
     「…スーパーとかで買う時間がなくて…」
     仕事が忙しいのだろう。
     「せっかくの休み、ゆっくりしたかったんじゃないか」
     唯阿は大二が自分に合わせて無理しているのでないかと心配になる。
     「……刃さんと花見したかったから…」
     ぽつり溢して鼻先を掻く仕草をする大二に、唯阿はキュンとなる。
     「 ッ それで、何を作ってきたんだ?」
     大二が弁当の蓋を開ける。一段目はおにぎり、二段目に卵焼き,鶏の唐揚,ポテトサラダ。
     「フェニックスの訓練生の頃は自炊していたんですけど、隊員になってからは全然…。
      だから料理するの久し振りで凝ったもの作れなくて…」
     「私も似たようなものだ。
      大学生のときは寮に住んでいて、自炊していたんだ…学食はあったがテクノロジー研究に時間を充てたくてな、必然的に研究室で食事も摂るようになって自作の弁当を持って行っていた…。
      社会人になってからは時間的にも精神的にもゆとりがなくて…
      ちらし寿司なんて何年も作ってないから、それを完成させるのに精一杯で…おかずまで手が回らなかった…
      君が持って来てくれたからよかった」
     「! そしたら、いただきましょう」
     「あぁ。いただきます」

  • 75二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 19:15:20

     「「ごちそうさまでした」」
     「ちらし寿司おいしかったです」
     「そうか、よかった…
      君が握ったおにぎりおいしかったよ。あと、卵焼きも…それから、唐揚…そして、ポテサラ」
     「…全部じゃないですか」
     「どれもおいしかった」
     「ありがとうございます…」
     「あ、そうそう…これ。デザートにと、昨日デパ地下で買った“いちご大福”」
     ふたつのいちご大福を見て、大二は黙る。
     「どうした…?」
     「いえ、その、…俺も買ってきたんですけど…、これ、、、」
     「…大福」
     「……はい…。大福です、さくら風味の。被っちゃいましたね…。
      家がお祝い事やお使いもので和菓子が要るときよく頼む地元の小さな和菓子屋さんがあるんですが…
      今日、刃さんを迎えに行く途中で立ち寄って…季節限定だから買いました…さくら大福をふたつ」
     「味が違うからいいじゃないか」
     「え」
     「私のはいちご大福、君が買ってきたのはさくら大福。どっちも今の季節にしか食べられないものだし、2種類の味が楽しめるんだから得した気分にならないか?」
     「!! それもそうですね!」
     ふたりは1種類ずつ分ける。

  • 76二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 19:16:17

     唯阿はいちご大福を一口 食べる。
     「ん~!」
     苺が1粒まるごと入っていて、その苺の爽やかな酸味・みずみずしい甘さと白餡の甘さのバランスがいい。
     続いて、さくら大福を一口。
     「!!さくら餡か!」
     「そうなんです、そこの和菓子屋のさくら大福はさくら餡なんです。気に入ってもらえました?」
     「ん~!!」
     おいしい。――唯阿の笑みが溢れる。
     餡は勿論、求肥にも桜の花が練り込んであるらしく、桜の香りが口いっぱいに広がる。餡の上品な甘さも相まって、やさしい味だ。
     唯阿は持って来ていたペットボトルの緑茶を口に含む(2本 持参し1本は大二に…ところが大二はミネラルウォーターをこちらも2本 用意しており、物々交換)。
     …と、視線を感じて、大二の方を向くと。――彼はあたたかな眼差しでこちらを見つめている。
     「 /// あまり見ないでくれるか?(恥ずかしいから)」
     「ご、ごめんなさい!
      (刃さんの笑顔が可愛くて見入ちゃった…!
       女の人が食べているところじっと見るのはやっぱりマズかったかな…)」
     ふたりして目を逸らす。

     そのとき、風が吹いた。
     淡い桃色の花弁が舞って、ふたりは大木に目を遣る。桜の枝の隙間から日差しが降り注いでいる。風に揺れる枝が小さくざわめいた。
     「こんなにじっくり花見をするのは久し振りだ」
     本当に。何年振りだろう。
     「俺もです。昔は家族と来てましたけど、ここ何年かは都合がつかなくて…俺ぬきで行っているみたいです」
     「それじゃあ今年は家族と行かなくてよかったのか?」
     「別日に行く予定なので気にしないで下さい。妹が受験勉強と空手で大変みたいで…空手大会が終わってからってことになっています」
     「そうか…」
     なるほど、おそらく家族との花見の休暇を取るからそれまでに終わらせなければいけない仕事があって前倒しでしたのだな…と唯阿は考える。
     「だから今日、刃さんと‘ここ’に来られてよかったです。刃さんと一緒に、この桜を見たかったから。一緒に来れてよかった」
     大二が嬉しそうに頬を緩めるから。

     だったら…、…‘ここ’で羽を伸ばしてもらおう。‘ここ’はゆっくりと時間が流れる。静寂に包まれた‘ここ’でのんびりすることが、彼の休息になればいい。

  • 77二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 19:16:59

     木漏れ日のなかで観る桜はあたたかくやさしい陽の光に照らされて煌めいている。
     「綺麗…」
     「綺麗ですね」
     自然と零れる言葉。
     ふたりは瞳(め)を見合わせて微笑み合う。

     また風が吹いて、淡い桃色の花弁が空中へと舞い上がる。
     見上げれば、そこには雲一つない晴れた空。真っ青という程 青くなく、層のように積み重なった、それでいて透明感のある春の空に、桜が色をつけていく。
     宙を舞いはらはらと落ちてくる花弁を掴もうとするけれど、指の隙間をすり抜ける。

     「刃さん、髪に桜が…」
     大二が手を伸ばし、唯阿の髪に触れる。淡い桃色の花弁を取るとき、彼の指が毛先を通る。瞬間、ドキッとする。大二に髪に触れられて。心臓が跳ねる。
     「っ、あ、ありがとう」
     動揺を隠して言えば、大二の髪にも桜の花弁が。
     「君もついているぞ」
     唯阿は手を伸ばして、大二の前髪についた花弁を取る。
     「/// あ、ありがとうございます」
     お礼を言う彼の方に向こうとして…
     ―――顔がっ、近い…っ///
     額がぶつかり合う程 間近に大二の顔面があり。慌てて、お互いにパッと離れる。
     そぉっと振り返り大二を窺い見ると彼は後ろを向いていた。明らかに照れ隠しだけれども、こっちだって気恥ずかしいのだから目を合わせられない。唯阿も紅くなっているだろう顔を両手で覆って、背中を向ける。

     早鐘を打つ胸を抑え、息を整えようと深呼吸していると、視界の端に眩しさを感じた。――いつの間にか、陽が大分 傾いている。
     もうすぐ、日が暮れる。

     「そろそろ帰りましょう」
     「そうだな…」
     ふたりは帰り支度をする。弁当箱とペットボトルをトートバッグに詰めて。

  • 78二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 19:17:17

     ここで大二が、刃さん、と唯阿に話し掛ける。
     「どうした?」
     「写真、記念に撮りましょう」
     「あぁ。わかった」
     唯阿は大きな桜の樹の下に立ち、大二に撮ってもらう。その後、大二に桜の樹の下に立ってもらって、唯阿がレンズを彼に向けカメラのシャッターを切る。
     帰ろうとしたとき、花見に来た親子が写真を撮っている――父親が母と子を撮り、交代して母親が父と子を撮っているところに遭遇した。唯阿と大二は頷き合って、その親子に近づく。
     大二が父親に声を掛ける。
     「あの、よかったら…3人で撮りましょうか」
     「いいんですか? じゃ、お願いします」
     大二は父母子(おやこ)3人の写真を撮った。
     「「ありがとうございます」」
     「いえいえ」
     「おふたり、お撮りしましょう」
     「「え、」」
     母親に言われ、唯阿と大二は顔を見合わせる。
     「どうします?」
     「私は…(折角だし…ふたりの写真ほしいが…)」
     「俺はふたりで撮りたいんですけど」
     「!! わ、私も…///」
     「よかった。
      じゃあ、お願いしていいですか」
     父親に大二のカメラを渡し、唯阿と大二は桜の樹の下にふたり並ぶ。
     「おふたりさん、もっとくっついて~」
     「「は、はい…」」
     母親に促され、ふたりは近づく。腕と腕が触れそうな距離。唯阿の、収まっていた鼓動がまた速まる。
     「撮りますよ。はい、チーズ」
     「「ありがとうございます」」
     ふたりは夫婦にお礼を言って
     「お兄ちゃん、お姉ちゃん、バイバーイ」
     子供に手を振った。

  • 79二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 19:19:00

     「さて、」
     「帰りましょう」
     ふたりは、丘を下り、公園を出る。

     一度、唯阿は後ろを振り返る。
     暮れていく空を背景に桜は輝いている。夕陽を受け、花は淡い金色に縁取られ、風が吹く度に花弁だけでなく光が零れ散っていった。

     「刃さん!」
     「いま行く!」
     大二を追い駆けて、隣を歩く。
     「暗くなってきました。日が落ちる前にお家に着けばいいんですけど」
     「そうだな、でも…君が家まで送り届けてくれるから心配してないよ」
     「……///!! 写真、あとでL○NEします…!」
     「あぁ、宜しく」

     写真――記念になるものができて嬉しく思う。
     唯阿は自分でも気づかないうちに花が綻ぶように笑っていて。…唯阿のその微笑みに、大二がときめいたことを知らない。

     唯阿の家に着いた。
     「今日はありがとう」
     「こちらこそ。楽しかったです」
     「私もだ。春の訪れを感じる花見だった」
     「そう言ってもらえて、俺も嬉しいです。ありがとうございます。それではまた」
     「あぁ、また。気をつけて」
     「失礼します」
     会釈して、大二が帰っていく。その後ろ姿を、唯阿は見送った。

     陽は落ちて、空には星が輝いていた―――。

  • 80二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 00:00:00

    このレスは削除されています

  • 81二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 08:51:02

    このレスは削除されています

  • 82二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 17:48:32

    大二×唯阿のお花見デート…尊い…

  • 83二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 00:31:48

    きれいなお花見デート…
    これは推せる…!

  • 84二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 11:33:03

    或人×唯阿のお花見デート話もたのしみにしている!

  • 85二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 11:58:11

    景和祢音のお花見デート話もね!
    というか、初詣のときみたいに5人でわちゃわちゃを読みたいんだけど或人×唯阿・大二×唯阿で別ルートになったから5人仲良くは難しいかな…

  • 86二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 14:00:21

    両想いの大二と唯阿さん、いい…
    お花見デート楽しみにしている唯阿さんが可愛すぎる…

  • 87二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 14:10:02

    何を着ていこうかなって洋服選びからウキウキしてたよねー唯阿さん

  • 88二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 23:55:17

    このレスは削除されています

  • 89二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 08:39:19

    このレスは削除されています

  • 90二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 09:17:03

    髪に付いた桜を互いに取って顔が近い のシーンで、チューしろ!という気持ちとそこで照れてパッと離れて目を合わせられないって後ろ向く初々しいふたりがいいんだ!という気持ちがある…心がふたつある~

  • 91二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 10:17:19

    唯阿さんが凄く乙女…

  • 92二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 10:17:58

    ふたりとも可愛い

  • 93二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 10:19:19

    唯阿さん滅茶かわいい

  • 94二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 12:19:00

    普段クールな女の人が実は乙女っていいよね…

  • 95二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 12:19:35

    大二も可愛いだろ!
    「……刃さんと花見したかったから…」ってぽろっと呟くんだぞ!

  • 96二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 14:17:24

    >>95

    唯阿さんも、なにこのかわいい生き物…ってなってるみたいだし

  • 97二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 14:19:17

    大二も記念写真が嬉しくて微笑む唯阿さんにときめいているっぽいし…
    ふたりともお互い相手にキュンキュンしてる…

  • 98二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 14:33:00

    或人×唯阿の方もそうだけど、あの曇らせというかシリアス展開からこんなラブラブになるとは…
    そう思うと感慨深いなぁ…

  • 99二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 23:19:00

    レスがいっぱいだ!

    皆さんありがとう!!

    お花見デートss投稿に集中していてレス返事が遅くなり、すみません


    >>41

    沙羅さんこの時点では祢音ちゃんかわいい!!と似た感覚で大二推しになった感じ

    今後その感情はどう育っていくんでしょうねー…(沙羅→大二って需要あるのだろうか…)


    >>42 >>43 >>45 >>52 >>53 >>54

    或人と唯阿さんは結ばれるまでふたりとも心がズタボロだったので…晴れてカップルになったのだからいちゃいちゃさせたろの精神で書いたら…いつの時代の少女漫画かな??になってしまいました…


    >>62

    なんとなく唯阿さんと大二は趣味が似ていそうだなと思ったので…楽しそうと思ってもらえてよかった…


    >>64

    唯阿さんと恋仲になるまで大二ずっとせつないポジションだったので報われたからには幸せになーれって気持ちで書いたらこうなりました

    甘酸っぱい感じが伝わったなら書いた甲斐がありました “眩しい…!”とまでコメントいただきありがとうございます!


    >>65

    “尊すぎる…”いただきましたー! 嬉しいです!!


    >>66 >>67

    ふたりとも苦労人なのでね…お互い相手の気遣いを気遣いと認識できるのじゃないかなぁと妄想

    あとふたりは趣味が似ていそうと思っているので、感性が近くて自分だったらどう反応されたら嬉しいか考えての言動が割りと相手にとっても正解というイメージがあり…相性はいいと考えてます


    >>68

    はい、そうです 大二は気遣い屋なので…段取りは大二です

    ただ、大二は自己評価が低い気がするのでちゃんと唯阿さんをエスコートできているかデート後ひとり反省会していそうと思ったり…(自信を持て大二…)

    余談ですが、大二はフェニックス入隊前ママさんやさくらの買い物に何度か付き合ってその度に荷物持ちしていたので女性のショッピングには慣れている設定です

  • 100二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 23:19:19

    >>82

    “尊い…”と言っていただけて光栄です!!


    >>83

    “推せる…!”って、本当ですか!“きれいな”デート…やったー!


    >>84 >>85

    景和←祢音・或人×唯阿のお花見ダブルデート、ただいま妄想中です 遅筆ですみません

    ここに大二も参加は、、、或人も唯阿さんも誘おうとは思わないし景和も祢音も大二の失恋を知ってそんなデリカシーないことはしないだろうから…


    >>86 >>87 >>91 >>93 >>94

    唯阿さん口調こそ男っぽいけれど私服を見る限りオシャレ好きみたいだし心はばっちり女子と思ってます

    高校卒業と共に自然消滅して長らく恋をしていない設定なので恋人とデートも久し振りでウキウキな唯阿さんになりますた

    あと、私の脳内では…唯阿さんは心身ともにボロボロのとき〈私をさらって…〉なんてことを望むくらいには乙女思考なので…


    >>92 >>95 >>96 >>97

    私の中で、唯阿さんは乙女思考で大二は純情男子なので…


    >>98

    本シリーズのスレPart2でちらっとレスしたのだけど

    くっつくまではシリアスだけれどくっついたら甘い雰囲気になる(という妄想)

    を元にssを書いてます



    皆さんからのレス、励みになります

    これからも宜しくお願いします

  • 101二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 09:11:38

    このレスは削除されています

  • 102二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 19:19:20

     「では、この件はいったん持ち帰り…、内容を見直し、本日 挙がった意見も検討して改めて提案いたします」

     飛電インテリジェンスはこれまでヒューマギアの純粋故の脆弱性問題への解決に向け対策を講じてきた。衛星ゼア本体を失って今後 更なるセキュリティ強化はどうするかが懸案だったけれど、ゼロワンがバルキリー達と共にシンクネット信.者が引き起こした世界規模のテロ活動を終息させて以降、A.I.M.Sの隊長であり技術に長ける唯阿に協力を仰ぎ対策会議を定期的に行っている。その会議のなかで唯阿が考案したのが“心にアクセスできる脳計測器”だった訳だけれども、色々(唯阿のアーク化・入院、連続少女誘拐監禁事件に唯阿が巻き込まれたこと)あって…唯阿が飛電インテリジェンスを訪れるのは数ヶ月振り。
     この日の会議で、唯阿から例の“脳計測器”に蓄積されたヒューマギアのシンギュラリティに関するデータを元に悪意ラーニングによるヒューマギアの暴走を阻止するパッチの生成というテクノロジーの分野以外からのアプローチ法の一つが示され、議論の末もう少し手直しを加えて再提案することになった。

     「刃さん、お疲れ!」
     考え込んでいる様子の唯阿に、或人は声を掛ける。
     「お疲れ様…。
      相変わらずあなたの所の副社長は要求のレベルが高い…」
     「…ごめん」
     「あなたが謝ることでは…。
      あなたに感化されて目指す理想が高くなったんだろう」
     「え、え?(オロオロ) ごめんなさい」
     「だから、社長さんが謝ることじゃない…あなたは悪くないんだから…。
      理想があるというのはいいことだろう?」
     「そだね! それより、刃さんの提案、すごかったよ!理想だけじゃない、理論もしっかりしていてさ」
     「そうか…。 社長さんは私に賛同してくれたな」
     「皆もそうなんだけど、だからもっといい方法を!ってなっているんだと思う」
     「運用前にブラッシュアップが必要ということだな… 次回の会議で試運転まで漕ぎ着けるよう考えるよ」
     「うん、丸投げで申し訳ないけど…よろしくお願いします」
     「いや、御社(そっち)も案を出しているだろう… こちらこそ宜しく頼む」
     或人は僅か険しかった思案顔を緩めて笑みを浮かべる唯阿に胸を撫で下ろす。

  • 103二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 23:46:34

    このレスは削除されています

  • 104二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 09:21:28

    今度は或人と刃さんの話か
    どんな話になるかな?

  • 105二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 17:17:00

    このレスは削除されています

  • 106二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 17:19:17

    このレスは削除されています

  • 107二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 19:17:19

    このレスは削除されています

  • 108二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 23:43:56

    続き楽しみに待ってます!

  • 109二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 09:28:50

    或人と唯阿さん、これからどうなるんだろ…

  • 110二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 10:17:19

    あーやっぱり…105,106,107が削除されている…

    書き手です

    最近IP規制され易く、規制されると直前までに書き込んだレスが消されるという現象に見舞われていて…昨晩も寝る前に規制されて朝には解除されるだろうと寝たのですが、起きてこのスレを見にきたら案の定…105,106,107は削除ですよ…(ちなみに規制されたままだったのでルーターの電源をいったん切って入れ直して今 書き込んでます)


    >>104 >>108 >>109

    レスありがとうございます!

    再投稿します




     「刃さん、」

     仕事の話はここまで、と或人は唯阿に呼び掛ける。

     「ん?」

     「週末って仕事、休み?」

     「あぁ、休みだ」

     「一緒に、お花見どうかなーって思って…なにか予定ある?」

     「否、ないな。一緒に行こうか」

     「うん!!

      それでね、祢音ちゃんと桜井くんも誘おうと考えているんだけど… 祢音ちゃんのこと応援したいからさ、…どう?」



     ふたりっきりも楽しいのだけど…――或人は唯阿とふたりで遊園地に行ったときのことを思い返す。


     ‘あの日’の唯阿は、キラキラしていた。アトラクションで楽しそうにはしゃぐ唯阿、にこやかに笑う唯阿、メリーゴーランドで照れ笑いする唯阿、観覧車から景色を眺める唯阿、帰り際「海に連れて行って」とやわらかく微笑む唯阿。‘あの’日、唯阿が或人に見せてくれた表情はどれも輝いていた。あまりの眩しさに自分は何度 胸が高鳴ったことか…。

     だから、

     ―――ふたりっきり、は…心臓もたないかも…


     祢音の恋を応援したい気持ちも嘘でないから。

     だから、景和と祢音も誘って花見をしようと思いついた。

  • 111二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 10:19:00

     「いいんじゃないか?私は構わない」
     唯阿が賛同してくれてホッとする。
     「じゃあ、祢音ちゃんに連絡するよ」
     或人はそう言ったが
     「ふたりの都合がつかないときはどうするんだ?」
     唯阿に訊かれ、こう答える。
     「俺と刃さんのふたりで行こう」
     返してから、気がついた。――そしたら、刃さんとふたりっきり…
     意識した途端、心臓が跳ねる。いまからこんなんでどうするんだ…と悩ましくなった、ところへ
     「そうか、“なし”にはしないんだな…」
     よかった…と小声で洩らしてほんのり笑む唯阿の横顔が可愛くて…

     ―――どうしよう…かわいい…

     或人は顔を紅らめた。

  • 112二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 10:19:17

     「ねぇ、景和」

     デザイアグランプリの休憩中、スマホを見ていた祢音に話し掛けられ、何どうしたの?と尋ねれば

     「週末、花見に行こうよ」

     …それってつまり…デートのお誘い…?――祢音の気持ちを知っているからそう受け取って、景和は<まだ付き合ってないのにデートっていいのかな…>と考え、こう返す。

     「え、っと… それ、大二くんも呼んでいい?」

     ふたりきりはマズいよね…という思考から咄嗟に口をついて出てきたのだけれど、他に案はなかったのかと自分で自分にツッコミたい。

     「それはダメだよぉ… 或人さんからお花見しようってL○NEきたんだからー」

     「飛電くんから??」

     「うん。唯阿さんとお花見することになったから、私と景和も一緒にどう?って…」

     「なるほど…。それは……大二くん呼べない…」

     「でしょー?気まずいもん… (景和、失恋した大二さんが心配なんだろうなぁ…優しいんだからもう) 大二さんと行くのは別の日にしたら??」

     「そうだね…そうする よ…?いやいや待て待て! そのときは祢音ちゃんも行こう…!」

     「え」

     「男ふたりで花見 て…絵面を想像したら気持ち悪いでしょ… だから祢音ちゃんも一緒に…

      (ん?よくよく考えてみたら…男ふたりに女の子ひとりでお花見 って構図も、なんか…ヤバくね?

       …デザグラに参加するようになってから英寿と祢音ちゃんと俺で行動するのに慣れて、男子2女子1も気にならなかったけど、普通に考えると…アレだ… だからって英寿を誘って3人でプライベートのお出掛けは…俺、祢音ちゃんは英寿が好きだって勘違いしていたから恥ずかしいし…

       女の子をもうひとり…えーっと、えーっと…、冴さん…はデザグラの記憶を消されているから俺達のこと覚えてないよな…)

      えー、祢音ちゃんも誰か友達とか呼んだらどうだろう…」

     「友達かー… 私、そんなにいないんだよね…

      !さくらちゃん!あ、でも…家族でお花見するだろうから、わざわざ大二さんと一緒に誘うのもねー…」

     「……だね…」



     『ジャマトが現れました!』

     ツムリのアナウンス。休憩時間は終了だ。


     「…俺、他に誰を誘うか考えるから…祢音ちゃんももう少し考えてみて」


     ふたりはジャマーエリアへと飛んだ。

     デザイアグランプリ、再開。

  • 113二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 19:17:00

    景和祢音と或人唯阿のお花見ダブルデートか~ 楽しみ~

  • 114二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 00:09:30

    >>110

    自分も最近引っ越しした影響なのか新しいルーターセットしたのですが何もやってないのに規制されるんですよね…

    書き手さんも大変かと思いますが応援してます!

  • 115二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 09:42:38

    このレスは削除されています

  • 116二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 14:37:33

    >男ふたりで花見 て…絵面を想像したら気持ち悪いでしょ…

    確かに…w

    祢音ちゃんは或人を応援してたけど、景和は大二に肩入れ(?)してるのかな

  • 117二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 19:19:00

     花見当日。

     祢音は白いシャツブラウスと膝丈くらいの小花柄の黄色いティアードスカートに緑色のカーディガンという格好で、景和との待ち合わせ場所へ向かう。

     約束の時間の5分前に着くと、景和はもう来ていた。
     「お待たせ!」
     「そんな待ってないよ。少し早いけど行こうか」
     ふたりは或人と唯阿と合流すべく桜の花で有名な城のお堀がある公園へ。

     「祢音ちゃん!桜井くん!」
     或人が手招きしている。或人と唯阿の元へ駆け寄る。

     「唯阿さん、それオシャレ~」
     唯阿はオレンジと白のギンガムチェックのワンピースにオフホワイトのデニムジャケットを羽織っている。祢音は唯阿のそのコーディネートに目を輝かせる。
     「あ、ありがとう…。
      君も似合っているよ…春らしくて」
     「ありがとうございますー!やったー」
     綺麗なお姉さん(唯阿)に褒められて嬉しい。祢音は素直に喜ぶ。
     「行こう!」
     女子が春のファッションで一頻り盛り上がったところで、或人が声を掛ける。
     「社長さんが穴場の絶景スポットを知っているらしい」
     或人が先導し、唯阿が促す。景和と祢音はそれに続いた。

  • 118二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 22:17:00

     桜の名所は人が多い。
     祢音は自分の目の前を往く景和の背中を見つめ、追(つ)いていっている。彼は人混みを掻き分けながら時々こっちを振り返る。
     はぐれていないか心配してくれているのかな…――祢音はふふっと笑う。
     「桜井くん、祢音ちゃんがはぐれないよう手を繋いだら?」
     「!!」
     或人の唐突な提案に、祢音は目を瞬かせ
     「 ぇ… えッ?!」
     景和が驚きの声を挙げる。
     「いや、だって…桜井くん、時々後ろ振り向いているからさ、祢音がはぐれないよう気に懸けているのかなって…」

     或人さんもそう思うんだー だよねだよね!そうだよね!或人さんから見てもそうなんだね!…なーんて、思うものの、
     ―――手を繋ぐ。景和と。
     想像して、胸がトクンとなる。

     「……」
     黙った景和に或人は続ける。
     「気になるなら手を繋げばいいじゃんって思って…」
     或人に他意はない…ようだ。

     でも…――手を繋ぐ、なんて…
     別に、手を繋ぐくらいなら…いままでだってあった――デザイアグランプリでジャマトから逃げるときとかデザイアロワイヤルのゲーム「悪魔マラソンゲーム」でもトラックに乗るときとか、景和が手を差し伸べてくれてその手を祢音は掴んだことがあった。景和は祢音が困っているといつも手を差し伸べてくれる。だから、景和と手を繋いだことくらいある。
     だけど、今日は――意識してしまう。
     今日はお花見だから、デザイアグランプリと関係ない。ゲームと無関係なときに彼と手を繋いだ経験はない。春の風物詩を切り取った時間のなかで‘それ(=手を繋ぐ)’は意識してしまう。

     景和も或人が揶揄(からか)っているのじゃないとわかったのか表情を和らげ、開き直ったように切り返す。
     「…それは気にするでしょ。一緒に来ているんだから。はぐれてないかなーって振り返りもするでしょ。
      けど、だからって…手を繋ぐとか…俺が祢音ちゃんの手を握る訳いかないじゃん!付き合ってる“ふたり”なら兎も角!」

  • 119二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 22:19:00

     「 んんんー///」
     「 な…っ、///」
     途端、或人と唯阿が顔を紅くする。
     「(え、なにその反応… まさか…!)
      或人さんと唯阿さんって…恋人なのにまだ手を繋いでないの??」
     祢音が素朴な疑問を口にすれば
     「「~~~///」」
     或人は横を向くし、唯阿は顔を手で覆い隠すし…――えーっとこれは…
     「ふたりとも動揺し過ぎ! なんか…ごめんね?」
     景和まであわあわし出す。
     「社長さんがおかしなこと言い出すから!」
     「ごめん!まさかこっちに振られるとは思ってなかったんだ!」
     「(私はなにを見せられているんだろう…)
      あのぅ…、取り敢えず、先に進みません?」
     「そ、そうだね…」

     4人は再び歩く。或人の言う穴場スポットに向かって。

     しばらく行くと、鬱蒼とした庭園が現れた。

  • 120二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 22:19:17

     そこは、確かに人影がまばらで静かな場所だ。

     目の前には、薄いピンクの花弁に彩られた巨木。
     満開の桜が、咲き誇っている。
     「綺麗…」
     思わず零れた感嘆の声。
     ほぅ…と漏らす吐息が祢音の隣から聴こえる。…唯阿、だった。
     と、祢音は唯阿を真っ直ぐに見つめる或人に気づき。或人が唯阿に注ぐやわらかくあたたかな眼差しは愛しい人に向けるそれで…或人がどんなに唯阿を想っているかを感じられて。愛だなぁ、と思う。

     こんなふうに、自分も愛しさが溢れ出す眼差しで誰かを見つめたり…誰かに愛しくて堪らないと感じさせる眼差しを向けられたり…する日が来るのだろうか。そんな愛しい者を見るようなやわらかであたたかな眼差しをくれる誰かと巡り逢えるのだろうか。
     …そういうことを考えながら、桜の花を眺めている景和の横顔を見つめるけれど。彼が祢音の熱視線に気づく様子はなく…。
     鈍いんだから…もう…――祢音は一瞬 口を尖らせて、ピンク色の花に目を遣った。

     緩やかな曲線で空へと伸びている枝が、風に揺れている。

  • 121二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 08:45:04

    このレスは削除されています

  • 122二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 17:00:00

     「お昼にしようか」
     唯阿の一声に、そうだねと或人と景和が応え、祢音ははーいといいお返事をする。
     或人がリュックサックからレジャーシートを敷き、唯阿が或人に持ってくれて助かったと言って彼からピクニックバスケットを返してもらって大きな弁当箱をいくつか取り出す。景和も自身の荷を解き、重箱を出す。
     それを見て、祢音は申し訳ない気持ちになる。
     「(皆、ちゃんと用意してる…)…私、なんにも用意してなくて…ごめんなさい」
     「友達と花見、あんまりしたことないんでしょ?…―― 「うん、初めて」
     「だったら仕方ないよ」
     景和にそう言われ、
     或人に、気にしないで、と言われ、居た堪れなくなるも、
     「君が手に持っている物は…?有名な洋菓子店の袋のようだが」
     唯阿に訊かれて、皆で食べようと思って…と答えれば
     「ちゃんと用意しているじゃないか」
     彼女は顔を綻ばせてそう返してくれた、から、祢音も笑顔になる。
     「それじゃ、食べようか」
     レジャーシートに弁当を広げる。
     唯阿の弁当箱は洋風。ひとつにはサンドイッチ(タマゴ,ハムチーズ,カツ)が、ひとつに鶏の唐揚げ,フライドポテト,そしてもうひとつにアスパラベーコン,目玉焼き,ウィンナーが詰め込まれ。さらにもひとつ、野菜たっぷりのコールスローが入っている。
     景和のお重箱は和風。一段目におにぎり(塩,梅干,おかか)と太巻き、二段目にだし巻き卵,焼き鮭,菜の花の胡麻和え,筍の煮物。
     「唯阿さんのお弁当、見た目 鮮やか~」
     「おいしそー」
     祢音と或人の率直な感想に、唯阿はそうか…とほんのり笑みを浮かべる。
     「うん、彩り綺麗だし、メニューがバラエティー豊かで凝ったものも多いね。
      というか…唐揚げとフライドポテトなんて揚げ物が2種類あるの凄いな?!朝から揚げるの大変じゃん!」
     「いや、そっちこそ…ッ、
      太巻きやだし巻き卵なんて手の込んだ物を作ってきているじゃないか…! しかも、菜の花や筍…旬の食材を使って!むしろ、そっちの方が凝っているだろう!」
     景和に褒められ、唯阿は照れ隠しで若干 切れ気味に言い返す。
     「ふたりとも凄いよ」
     宥めるような笑顔を向ける或人とうんうん頷く祢音を見て、唯阿は気持ちを落ち着かせる。

  • 123二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 19:17:19

     「 食べよう…!」
     或人に促され、景和・祢音・唯阿は、いただきますと手を合わせた。
     「おいしいねー」
     「ねー」
     にこにこ笑顔の祢音と或人に対し、景和と唯阿は…
     「このコールスロー、おいしいよ」
     「そ、うか…。
      君の作ったのもおいしいぞ…菜の花の胡麻和えと筍の煮物は特に」
     「へへっ、ありがとうございます。料理が上手な人に褒められるの嬉しい」
     「……そ、そうだな…(さっきは必要以上に照れて悪いことしたな…)」
     「コールスローって簡単レシピでちゃちゃっと作れるとか言うけど、味付け難しいよねー
      料理本もだけど特にレシピサイトは手軽さ全面で調理工程 省くからさ、調味料なんか少々か適量としか書かれてなくて…困る」
     「確かにな。
      料理するようになって間もない頃は随分と苦労した…」
     「そうそう、試行錯誤してさー、なんとか様になるまでちょっと時間かかるよねー」
     お料理あるある で盛り上がっている。

  • 124二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 19:19:58

     唯阿は軽く息を吐き、
     「……ひとつ頼みがある」
     景和にそう言った。
     「頼み?」
     「迷惑でなければ…私に料理を教えてくれないだろうか…?」
     「え」
     「唐突にすまない」
     「いいけど…どうし…―― 「ダメー!!」
     祢音は割り込んだ。
     「え?え?!祢音ちゃん?!」
     景和がどうしたの?と訊くより早く祢音はこう続ける。
     「唯阿さん、料理を教わらなくても上手でしょ! それなのに、景和に教えてもらうなんて…景和とふたりっきりになるじゃん!!」
     唯阿に主張し、景和の腕にしがみつく。
     「そこー?!
      というか…祢音ちゃん!当たってる!」
     景和はツッコミながら、自分の腕に柔らかいものが当たっていることにテンパる。
     「え?なにが??」
     けれど、祢音は景和が何を焦っているのかわからない(祢音は無意識だから景和の腕に自分の胸が当たっていることに気づいていない)。
     プチパニックに陥っている景和を見兼ねて祢音の誤解を解こうと、唯阿が口を開く。
     「鞍馬さん、桜井くんの腕をいったん放そうか… 私は彼を奪(と)ったりしない。
      私には…その…、…こ、恋人、が…いる、し…///」
     話しながら気恥ずかしくて額に手を当て俯く。
     ((いや、恋人がいると言うだけでそこまで照れるんかーい!))
     景和と祢音は内心 同じツッコミを入れているけれどふたりともシンクロしていることを知る由はない、し、
     (刃さん、かわいい…)
     或人が唯阿にキュンとなっていることも勿論わかっていない。

  • 125二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 19:30:19

     「料理のレパートリーが増えたらいいな、と…思ったんだ…」
     唯阿が心情を綴る。
     「食べてくれる人の喜ぶ顔が見たくて…」
     “食べてくれる人”のところで唯阿が或人の方へちらっと目を遣った。それはほんの一瞬だったけれど、祢音はバッチリ見た。
     自覚してなさげだけど惚気ているなーいいなーと羡ましがっていると、唯阿からこう告げられる。
     「君も桜井くんに料理を教わればいいじゃないか。
      そのとき彼の好物も教えてもらうといい。一石二鳥だろう」
     「!!それ、いいね!わかったーそうする~」
     ご機嫌になった祢音は、
     「景和ー、私にも教えて?」
     景和の両手を掴む。
     よろしく~と景和に笑顔を向ける祢音とそんな祢音にあはは…と愛想笑いをする景和をよそに、
     或人が唯阿の隣に立ち、こう話し掛ける。
     「“食べてくれる人”…刃さんの手料理を食べる人って…―― 「あなたに決まっているだろ!」
     「ぇ」
     「社長さん以外に誰がいるんだ…」
     「それって…俺の喜ぶ顔が見たいってこと…?」
     「~~~///」
     唯阿は瞬間カーッと頬を染める。その後、彼女はコクッと一回だけ肯いた。
     「!刃さん~///」
     或人もちょっぴり照れた後
     「すっごく嬉しいよ!」
     にっこり微笑む。
     「そうか///」
     照れ笑いをする唯阿を見て、
     「また、いちゃいちゃしてる~」
    と祢音が指摘すると
     「い、ちゃ…違っ、そんなんじゃ…ない ッ」
     唯阿は顔を真っ赤にして否定し、或人も耳まで紅くなりながら下を向く、から、
     いいな、いいな…私も景和といちゃいちゃしたい…――そう思う祢音であった。

  • 126二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 23:17:17

     4人はお弁当に舌鼓を打った。
     食後のデザートとして、祢音が持ってきた洋菓子名店の人気商品の詰め合わせをいただくことにする。祢音はお菓子に合うコーヒーと紅茶も専門店で買ってきていて、麗らかな昼下がりのティータイムとなる。
     薄いピンク色の花を愛でながら、フィナンシェやスコーン,カヌレを食べ、紅茶(またはコーヒー)を飲む。――優雅な時間。

     風に吹かれて、桜の花弁が舞う。
     散った花弁が地をピンクに染めていく。

     その、幻想的な風景に、祢音は胸が弾む。
     公園の端から端まで淡いピンクが霞んで見える幻想的な風景に、そんな風景を大好きな人達――大切な友達…そして誰より特別な人と一緒に見ていることに、歓喜する。

     感極まって泣きそうになるのを堪える、と、空がオレンジ色に変わる。もうすぐ、陽が落ちるんだ。帰らなくちゃ…そう思うと不意に淋しくなる。泣くのを我慢したのに、またこみ上げてくる。

     「どうして哀しくなるんだろうね…夕焼け空って」
     ぽつりと景和が、言った。
     驚いて彼の顔を窺うと、
     「夕陽を見ていると淋しくなるよね…」
     祢音にだけ聴こえるように景和が呟く。――だから泣いていいんだよ。そう言われた気がして、
     ごめんと言って、祢音は景和の胸に額を押し付ける。涙で視界が滲む。

     感傷的になっている祢音に或人と唯阿は気づかない振りをして。日の光を浴び、きらきら煌めく薄いピンクの花と輝きながらひらひら舞い散る桜の花弁を見ている。

     「ありがと」
     小さく溢して、祢音は景和から離れる。

  • 127二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 23:19:17

     「そろそろ、帰ろっか」
     或人がそう声を掛け。帰り支度を始める。

     楽しいひとときはあっという間に通り過ぎる。
     公園を出るとき一度だけ振り返って。遠くから見ると、やさしいピンク色で縁取られた花弁が茜色の西陽に照らされる様が一際 目立つ。

     「祢音ちゃーん!」

     ―――この、瞬間を、絶対、忘れない…

     鮮やかな桜とせつなくなる程に哀しい色した夕焼け空を目に焼き付けて。大好きな人達と過ごした‘この’ひとときを心のいちばん深いところに大切に大切に仕舞って。

     祢音は、愛しい人の元へ駆け寄った。

     嗚呼、太陽が沈んでゆく―――。

  • 128二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 23:19:58

    以上、景和←祢音・或人×唯阿のお花見ダブルデート編でした

    次は或人×唯阿ルートにおける五十嵐家+花&玉置のお花見話を考えてます

  • 129二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 23:35:50

    あ、或人×唯阿ルートにおける五十嵐家+花&玉置というのは或人×唯阿の世界線で大二は花見シーズンをどう過ごしたのかっていう話で或人と唯阿は出てこないです

  • 130二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 08:20:21

    >>128

    お疲れ様でした!

    お花見デート見てて楽しかったです!

    五十嵐家+花と玉置のお花見の話も楽しみにしてます!

  • 131二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 11:15:05

    或人×唯阿のいちゃいちゃいいね
    景和と祢音ちゃんも可愛い

  • 132二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 12:35:20

    景和祢音と或人唯阿のWデート、皆でわいわいしててよかった
    大二サイドも楽しみにしてる!

  • 133二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 12:57:59

    4人ともかわいい

  • 134二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 23:03:29

    五十嵐家に花と玉置のお花見か…
    果たしてのんびりできるだろうか…

  • 135二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 09:21:23

    保守

  • 136二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 11:18:59

    大二と花と玉置がどんな遣り取りするのか楽しみ

  • 137二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 11:30:00

    このレスは削除されています

  • 138二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 12:19:05

    このレスは削除されています

  • 139二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 14:25:00

    Vシネで大二と花・玉置の関係が良好なの和んだから、さくらと一緒にわちゃわちゃしながらお花見を楽しんでいるとこ見たい

  • 140二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 17:17:19

     蒼い空、白い雲。目の前に広がるのは桜色の春。

     大二は数年振りに家族で花見に来ている。フェニックス入隊後は実家にあまり帰っていなかったけれど、ブルーバード所属になってからというもの大二は根を詰め過ぎるきらいがあるからきちんとリフレッシュするようヒロミや狩崎に言われ偶に休暇を取って家族で過ごすようにしている。
     大二が帰省しなかった年も家族でお花見をしていたそうだけれど、今年は大二以外にも五十嵐家のお花見に参加する者がいる。

     桜の樹の前に立ち尽くす女性。と、その女性の斜め後ろに控える青年。――夏木花と玉置豪である。
     花と玉置はデッドマンズ時代の贖罪としてブルーバード保護観察の下、世界平和維持の為の活動に貢献してくれている。大二はそんなふたりを労おうと花見に行かないかと誘ったのだった。

     「大ちゃん」
     さくらに呼ばれ、彼女の方を向く。
     「今日はありがとね」
     「??なにが?」
     「花を誘ってくれて」
     「さくらが礼を言うこと…?」
     「花ね、桜を見るの初めてなんだって」
     「………え?」
     “ギフの花嫁”として、蝶よ花よと育てられていたのじゃないのか。
     「デッドマンズではそういう行事なかったみたい。
      小さい頃はデッドマンズ敷地から出れなくて、敷地内に花は咲いていたけど桜はなかったそうなんだ…
      あと、デッドマンズを辞めてから街に出掛けるようになって気づいたらしいんだけど、デッドマンズの敷地内に咲いていた花は人工物だったって…。
      だから、花…今日のお花見すごく楽しみにしていて…」
     それで…桜の樹の前にずっと――
     「いまも、ああして…桜を見ているの」
     大二は、さくらから花の過去の一欠片を聴かされ、何とも言えない気持ちになる。
     「だから、ありがとう」
     そう笑って花の方に顔を向ける妹が大人びて見えて
     「さくら…成長したな」
     思わず、呟く。
     「えぇー いつまでも子供扱いしないでよー」
     大二の呟きをしっかり拾ったらしいさくらは拗ねたように口を尖らせけれどすぐに口元を緩める。

  • 141二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 17:19:19

     「今年は大ちゃんも一緒に来られてよかった…」

     色々あったからな…反芻して、さくらに辛い思いをさせたと心苦しくなる。けれど、ここで後悔と自己嫌悪をぶら提げた面(かお)をしたら…
     さくらに却って変な気を遣わせさくらを余計に哀しませるだろうから。

     「ただいま」
     一言だけ、告げる。その一言に、色んな感情を籠めて。
     すると、彼女は
     「おかえり」
     穏やかな声色で返してくる。…どうやら、妹はこちらの心根をちゃんと汲み取ってくれたようだ。

     それからさくらは
     「私、もっと近くで桜 見てこよっと!」
     跳ねるように言う。
     その様子に微か笑みを浮かべていると、
     「大ちゃんも行くよ!」
     ほら、と背中を(文字通り)押され、

  • 142二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 19:17:00

     桜色に染まった花を咲かせる大木の真ん前に立つ。

     「綺麗だね」
     「あぁ」
     「…唯阿さんをお花見に誘ったら?」
     桜の花に目を遣ったまま、さくらが然り気ない感じで言ってくるから
     「誘わない」
     大二も桜を見ながら然り気なく返す。
     「どうして?」
     尋ねる妹に
     「フラれたから」
     さらりと応えた、ら、
     小さく、ぇ、と聴こえてきた。
     「ごめんなさい」
     眉根を下げ申し訳なさそうな表情(かお)をするさくらに、大二は…
     「謝らなくていいよ」
    と声を掛け、
     「気にしてくれていたんだろ?ありがとう」
     そう言葉を掛ける。
     さくらは、うん…と頷いて、それでも少ししょんぼりしたまま俯いた、けれど、パッと顔を挙げ
     「ちょっと待ってて!」
     駆け出した。

  • 143二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 21:50:00

     再び桜に目を向けると、視界の端に花が映る。
     一心に桜の樹を見続ける姿は祈りのようにも懺悔のようにも思える。

     懺悔、か…。――大二は眼を瞑る。目蓋の裏に浮かぶのは、悪魔を従えて民衆を恐がらせたことと兄妹に銃を向けたこと。
     ‘あの’闘いで、救えなかった生命がたくさんあって。自身の無力さを呪い、それでも自分が正しいと思う道を選択して足掻いた日々。今となっては…全てが正しかったと言わないけれど、何もかも間違っていたと自棄(ヤケ)になる程 己を呪ってもいない。過去を背負って前へ進むのだと決めたから。

     それでも、いま、祈るような気持ちで懺悔したくなるのは…‘この’桜の樹を久し振りに目にしたからだろうか…
     まだ無邪気な子供でいられた頃に見に来ていた‘この’桜の樹を前にして、赦されたいのかもしれない。

     大二は自分の心のなかを整理して、淡紅(うすべに)の桜をじっと見る花の胸中はどうなのだろうとふと思う。

  • 144二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 22:00:00

     「じゃじゃーん!」
     後方から声が掛かると同時に、頭に“なにか”を乗せられる。
     「さくら…?なにこれなに??」
     「花輪」
     「……は?」
     「小さいとき、大ちゃんレンゲの花輪を作ってくれたでしょ?」
     「…そんなこともあったな」
     「そのとき、花輪の作り方 教えてくれたじゃん?
      それで、作ってみました!あっちの広場に咲いていたタンポポで!!」
     「! ということは…」
     いま自分の頭に乗っかっているのは――
     「タンポポの花輪でーす」
     (うわぁぁあ…)
     大二は額に手を当てる。
     「なんで…?」
     俺の頭にタンポポの花輪を…??――妹に疑問を投げ掛けると
     「大ちゃん可愛いよ」
     よくわからない回答が返ってきた。
     いたずらっぽく笑うさくらを見て大二は彼女の真意を何となく察し、はぁ…と小さく溜息を吐くと、頭の花輪を外し
     「俺よりさくらが似合うって…」
     その頭に被せる。
     「うーん… でもー自分で作ったのを頭に乗せてもビミョー」
     不服そうな顔をするさくらに
     「久し振りに作ろうか」
     大二は仕方ないなぁと漏らした。

     さくらは多分、励まそうとしてくれたのだ。…失恋した自分を。
     そしてそれは桜の樹を前に感傷に浸っていた大二の心を解(ほど)くには充分だった。あまりに子供っぽいイタズラで、邪気がない、から、気が抜けたというか…。

  • 145二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 23:50:50

     「花も一緒に作ろうよー」
     さくらが花に呼び掛け、自分も作ってみたいです…と言う玉置も加わり、4人で花輪作り。


     「…大ちゃん、やっぱり手先が器用だねー」
     「そうか?花輪作りとか10年くらいしてないから編み方 忘れているんだけど…」
     「大二さん、こんな感じでいいですか」
     「うん、いいんじゃないか。上手いよ玉置」
     そこで大二は無言で悪戦苦闘している花に気づく。
     「花さん、ここはこうして…次にここをこう…」
     「あんた、器用なのね…」
     「(さくらにも言われたけど)そうなのかな…
      でも、基本の作り方を覚えれば作れるようになるよ」
     「…ッ… 私は不器用なの!」
     「だけど、一所懸命に作っている」
     「!! な、なんで…そんなこと…」
     「真剣な顔していたから。
      大丈夫。ちゃんと完成するって」
     「 ッ!! わかったわよ」

     それから、黙々とタンポポを編む4人。

  • 146二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 23:55:17

     「「「できたー!」」」
     「………」
     久し振りに作ったけれどまぁまぁかなと思う大二。
     小さいときより巧くできたー見て見て~と嬉しそうなさくら。
     花輪作り初挑戦でちゃんと形になって満足気な玉置。
     花は出来上がった‘それ’を見て何だか浮かない表情。

     見兼ねた大二は、自作のタンポポの花輪を彼女の頭に乗せる。
     「花さんは赤の印象が強いけど…」
     「アギレラだった頃のイメージ、引き摺りすぎじゃない?」
     「あはは、すみません…。
      けど、赤に近い色のレンゲ草はまだ咲いてないんで、
      今日のところは黄色いタンポポで…」
     「くれるって言うならもらっておくわ」
     「よかった」
     「…ッ、レンゲが咲く頃また編んでよね…っ」
     「そのとき、また休み取れるかな?」
     「真面目か!」

  • 147二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 23:58:19

     「花さん…」
     自身が作った花輪を花にあげようとしていた玉置が情けない声を出す。
     「あーもうっ 私がもらうから」
     さくらが玉置作の花輪を手に取ると
     「さくらさーん…っ」
     玉置がさくらに抱き付く。
     「ちょっ、ちょっとー!離れてよー」
     「何やってるのよ?!玉置!!」
     花がさくらから玉置を引き剥がす。
     地面に手を着き項垂れる玉置に、花は
     「これ、あんたにやる」
     自身が作った花輪を差し出した。
     すると、玉置は…
     「花さぁぁぁ~ん」
    と大号泣。
     そして…、
     「泣くなッ!笑いなさいよっ!」
     花が叱咤する。

     大二は、花と玉置の“いつもの”遣り取りを見て微苦笑し、同じく微苦笑しているさくらに言った。
     「“これ”は俺がもらうよ」
     それは、先刻さくらが大二を励ます為に大二の頭に乗せたタンポポの花輪。
     「ブルーバードの俺の寮室に飾るよ。枯れてもドライフラワーになるし」
     そう続ければ、うん、とさくらは肯く。
     「今 作ったのは父ちゃんか母ちゃんか兄ちゃんにあげてよ」
     「そうする」

  • 148二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 07:17:00

     「皆ー、お昼ごはん食べるわよー」
     母の一声に、大二達は桜の樹の下へ戻る。

     レジャーシートには母・幸実が腕に縒(よ)りを掛けて作った料理――サンドイッチ,唐揚げ,つくね,磯辺揚げ,ウインナー,明太卵焼き,餃子,きのこバター醤油,ポテトサラダ,やきそば,枝豆,おにぎりが所狭しと並んでいる。
     皆でわいわい弁当を食べる。さくらと花は愉し気におしゃべりをし、また何か嘆いている玉置とそれを宥める一輝が気づけば笑顔で肩を組んでいて、相変わらず仲睦まじい両親は談笑している。――そんな、和気藹々とした雰囲気に、大二は平和だなと思う。

     見上げれば、蒼い空に白い雲が流れ、桜色の花弁が風にひらり舞って。
     春だ。
     空のブルーと桜の花のピンクのコントラストが綺麗だ。
     大二は、春の訪れを感じる。


     食事を終え、皆でもう一度 桜を見る。
     時々吹く風で花弁が散って地を桜色に染めていく。
     不意に‘この’桜の樹がおかえりと言っている気がして…大二は懐かしさを覚える。

     桜の色が濃くなったように感じて、陽が落ちる時刻(じかん)と知る。
     夕暮れのなか、桜は花の輝きが増して浮かび上がるようだ。

     「そろそろ帰るが…」
     その前に、と父が口を開く。
     「皆で写真を撮ろう」
     「家族写真ね」
     母がにっこり笑い、
     「うん、撮ろう」
     一輝が嬉しそうに肯く。

  • 149二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 07:17:19

     カメラのセルフタイマーで写真を撮った後、
     「ありがとう」
     花にそう言われた。
     「ぇ…」
     何のことだろうと大二は考える。
     「桜の名所って他にもあるんでしょ?」
     「あ、うん」
     他にもというよりここは地元民くらいしか来ないから寧ろ名所ではない。

     『花ね、桜を見るの初めてなんだって』。――さくらの言っていたことが、蘇る。
     『小さい頃はデッドマンズ敷地から出れなくて、敷地内に花は咲いていたけど桜はなかったそうなんだ…』
     『だから、花…今日のお花見すごく楽しみにしていて…』
     ………
     折角なら名所がよかったのだろうか…。――ちらっと頭を掠めたけれど、
     花(と玉置)は保護観察の身、大勢の人が集まる場所に行けば、デッドマンズのアギレラとフリオだったことを気づかれるかもしれない。だから、…あまり知られていない‘ここ’なら と考えたのだけど。

     「でも…」
     考え込んでいた大二は、でも…と言う花の声で我に返る。

  • 150二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 07:19:19

     「‘ここ’が一番の名所ね」
     花はきっぱりと断言。
     ―――ぇ
     大二は目を丸くする。
     「さくらから聞いたわ。ここには昔から花見に来ていたって」
     「うん」
     「五十嵐家で花見をするならここなんでしょ?」
     「うん…」
     「それって…‘ここ’は五十嵐家の、さくらとあんたの、思い出の場所…――そういうことになるわよね?」
     「そうだね」
     「ということは…
      私を家族の思い出の場所へ連れて来てくれた…私を家族のように見てくれている…
      違う?」
     「!!」
     「だから、」
     花が自身の心情を綴る。
     「‘ここ’は私にとって一番の桜の名所なの」
     彼女は言い切った。
     「だから…ありがとう」
     そうお礼の言葉を紡いで、彼女は僅か笑った。

  • 151二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 07:19:33

     「おーい、帰る準備をしてくれー」
     一輝に声を掛けられ、大二は弁当箱やらレジャーシートやらの片付けを手伝う。

     バッグに詰めながら、つい先刻の花の言葉を思い返し安堵する。
     と同時に、自分達 五十嵐家が‘この’場所を大切にしていることが伝わってよかったと思う。そして、やっぱり‘ここ’は思い出深い場所なのだな、と実感する。

     荷を詰め終え、
     「帰るぞー」
     父・元太が皆に呼び掛ける。

     大二は最後に桜の樹の下(もと)へ…

     そうして…
     その巨木の幹に触れ、
     (来年も来るよ)
     心の中で、語り掛ける。

     「大二!」
     一輝に呼ばれ、大二は家族の元へ駆け寄った。

     その瞬間(とき)、風に散らされた桜色の花弁が、大二の目の前を通り過ぎ、宙へ舞った―――。

  • 152二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 07:19:50

    という訳で、五十嵐家+花&玉置お花見の話…でしたが、
    気がつけば、大二・さくら・花・玉置メインになっていました…

  • 153二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 16:43:33

    このレスは削除されています

  • 154二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 19:17:00

    また大二が年上女子とフラグ建ててる…(確か花は大二より年上)
    花と今後どうなるのか気になる~

  • 155二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 19:19:17

    大二とさくらが仲良し兄妹で和む

  • 156二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 06:18:21

    >>154

    >また大二が年上女子とフラグ建ててる…(確か花は大二より年上)

    初めて知った衝撃の事実…

    そうだったのか…

  • 157二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 13:40:34

    いやぁこのメンバーのお花見は和むね…

  • 158二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 19:17:00

    >>154

    大二は花の幼少期の境遇を聞いて花自身のアギレラ時代の己に対する今現在の心中を察して花を気に掛けているけれど恋愛感情はないです

    花の方が大二に気がある という脳内設定

    つまり、花→大二

    書き手の妄想ですすみません…


    >>156

    公式設定がどうだったかはわからないけれど私は中の人の年齢準拠で花は大二より歳上のつもりで書いてます


    >>155 >>157

    和んでもらえてよかったです!

  • 159二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 23:59:32

    読んでて思った、やっぱりお花見っていいね

  • 160二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 09:38:15

    しかし読んでて当たり前だけどこの或人×唯阿世界線だと大二振らちゃったんだよな…、切ない…

  • 161二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 19:17:00

     (どうしようかなぁ)
     景和はうーん…と考え込んでいた。
     「どうしたの、景和?」
     姉に声を掛けられ、実は…と話し始める。
     「今度、大二くんを花見に誘おうかと思っているんだけど…男ふたりで花見ってアレだろ?だから、祢音ちゃんに声 掛けてさ、祢音ちゃんはいいよって言ってくれたけど…
      よく考えたら、男ふたりに女の子ひとり…というのもどうよ?って…
      それで、もうひとり女の子を って…でも、誰がいいか思いつかなくて…」
     「男子ふたりでも悪くないと思うけど…」
     「まぁ悪くはないよ、ただ…絵面がちょっと…キモい というか…」
     「でも、相手は五十嵐くんなんでしょ?キモくないと思う。全然」
     「え」
     「可愛いと思う」
     「……は?」
     「五十嵐くんと花見って可愛いよ、うん」
     「えぇぇー」
     「それより男子ふたりと女子ひとりの方がアレかもねー
      女子をもうひとり… うーん…うーん… あ!」
     「姉ちゃん、思い当たる人いるの?」
     「私、は…?」
     「ぇ?」
     「私 じゃ…駄目、かな…??」
     「え?え?」
     「五十嵐くん誘うんでしょ?祢音ちゃんも来るんでしょ?」
     「俺もいるんだけど?!」
     「推しふたりと弟と花見って最高じゃない?」
     「(あ、俺、忘れられてなかった…じゃなくて!)花見なら俺と行ったじゃん!」
     「何回 行ってもいいじゃない! 景和は2回以上お姉ちゃんと一緒に花見 行くの嫌?」
     「嫌じゃない!けど!!」
     「よかったぁ 私も景和と花見、もう一度 行っていいよー」
     景和は、はぁ…と軽く溜息を吐いて、しょうがないなぁと口元に弧を描き…、けど、と続ける。

  • 162二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 19:19:17

     「大二くんまだ誘ってなくて…断られるかもしれないよ?」
     「そうなの?」
     「大二くんって気ぃ遣いだから…」


     景和はシュミレーションしてみる。

     一緒に花見しようと言ったら…男ふたりでですか?って返ってきそう。
     否、祢音ちゃんも誘っているんだと言えば…お邪魔じゃないですか?とかって遠慮するよね…大二くんなら…。

     だから、祢音が言っていた“さくらと一緒に”というお誘いは悪くないと思った、さくらは祢音と仲いいし大二とさくらは兄妹だし自分と大二も仮面ライダーとして共闘した仲――全員 顔馴染みだからいいんじゃないかと思ったのだけど、
     大二とさくらは家族で花見に行くだろうし、家族と別に兄妹でまた という気になるかが少し疑問――弟ともう一回 花見に行っていいなんて、家の姉ちゃんくらいだよ…――なので止めにしたのだった。


     「だから、遠慮するかもしれないんだ…」
     「そっかぁ」
     沙羅はちょっとしょんぼりする素振りを見せる。
     「い、今から電話してみるから!」
     残念そうな顔をする姉が見ていられなくて、取り敢えずそう言うと、沙羅は
     「じゃあ、途中で私に電話を代わって?」
    などと言う。
     景和は頭に疑問符を浮かべながらも、わかった、と答えて大二に電話を掛ける。

  • 163二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 23:33:19

     「もしもし大二くん、今、電話、大丈夫?」
     『景和さん?大丈夫です。 この前はご馳走になりました』
     「いやいや…そんな畏まらないでよ。
      それでね…今度の土曜か日曜、仕事は休みかな?」
     『はい。…仕事が仕事なので急に出動することはあり得ますけど』
     「花見に行かないかなーって…」
     『景和さんとふたりでですか?』
     「(やっぱりそうくるよね…)否、違うよ。祢音ちゃんも一緒で…」
     『(それって…祢音さんから誘われたんじゃ…)えーっと…(景和さん、祢音さんのキモチもう気づいているのかな…まだ知らないなら何て返そう…)俺、お邪魔じゃないですか』
     「(そう言うと思ったよ大二くんならね うん…)
      それがさ、姉ちゃんも行きたいって言うから…それなら大二くんもどうかなって…(うーん…我ながら、ちょっと強引過ぎる…姉ちゃん来るから君もどう?は話がイマイチ繋がってない…)」
     『それ、部外者の俺が一緒に行っていいんでしょうか…』
     「(だよねーだよねー遠慮しちゃうよねー…)
      そ、そんなことないよ!(いや、本当に!遠慮しちゃうのは君の性格上わからなくないけど!そんな必要ないから!)
      だから、だからさ…!(あー上手いこと誘い文句が浮かばない…!)」
     「景和、電話 代わって!」
     難航している景和を見兼ねたのか沙羅が口を挟む。
     「大二くん、姉ちゃんが話したいって。電話、姉ちゃんに代わるね」
     『はぁ…』
     「もしもし、電話 代わりました!景和の姉·沙羅です!」
     『こんばんは。先日は突然お邪魔してすみませんでした』
     「いいのいいの、またいらっしゃい。
      近くに景和がいるから、部屋を移動するわ。ちょっと待ってね」
     「え、姉ちゃん??」
     景和の声に応えず、沙羅はリビングを出て行く。

  • 164二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 00:17:17

     沙羅は自室に入る。
     「お待たせ」
     『いえ』
     「景和の前では話し難くて…」
     『はぁ』
     「お願いがあるの」
     『お願い…?』
     「五十嵐くんは…景和と祢音ちゃんのこと、どう思う?」
     『どう とは…?(お姉さんは知っているんだろうか…)』
     「私はイイ感じだと思っているんだけどね…」
     『!(気づいて…?でもこの言い方からすると…ふたりはまだ… だったら…)
      その、…俺は…、ふたりがどこまでの仲なのか聞いていないので… 俺に…どうこう言える義理はありません。
      ただ…俺には、ふたりはお互い大切に思っているように見えます』
     「そっか…五十嵐くんの目からはそう見えるのね。
      私ね、祢音ちゃんのファンなの。だから、祢音ちゃんが景和と仲良くしてくれて嬉しいの。それでね、このまま…‘そういう’関係になってくれたら…って思っているの。
      景和はたったひとりの弟だから、幸せになってほしい というか… ほら、姉としては変な女に引っ掛かってほしくないのよ。
      で、祢音ちゃんなら…って、そう思うの。…なんて――勝手よね…」
     沙羅は自嘲しながら、綴る。
     「それで、祢音ちゃんと花見に行くって聞いて…その、心配になって…。だって、景和って…無遠慮なとこあるから!
      私と景和は小さいときからふたりで暮らしてきたのね…だからかな、甘やかし過ぎて…ちょっと図太い子に育っちゃった みたい…
      物怖じしないで人の心にズカズカ入っていくとこがあって…デリカシーがないっていうか…
      だからね、祢音ちゃんとふたりっきりで花見に行って、祢音ちゃんになにかして愛想尽かされたら…って不安になって…
      それで、ふたりの花見についていこうかなって…『一緒に行きたい』って景和に言ったの。…過保護かな?」
     『……肝心なのは景和さんがどう感じているか.だと思います。
      当事者でない俺がとやかく言えることでないですけど…俺も家族が大切だから、幸せでいてほしいし心配にもなります。ずっと姉弟(きょうだい)ふたりで暮らしてきたのなら尚更でしょう…俺には想像もつかないくらい色々あったんじゃないかと思うし…』
     「(五十嵐くん…)ありがとう… やっぱり五十嵐くんに聞いてもらってよかった…」
     『ぇ』

  • 165二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 05:17:00

     「でね、景和と祢音ちゃんと一緒にお花見に行くしたけれど…弟のデートに姉が同行するとか相手の女の子は戸惑うでしょ?だから、もうひとり男の子に付いて来てもらおうと考えて…五十嵐くんにお願いしようって…」
     『え』
     「それが、この電話」
     『……そ、そうですか…』
     「ごめんなさい…唐突にこんなお願い、困るわよね…。でも…
      五十嵐くん、お兄さんと妹さんがいて…家族みんな仲がいいって景和から聞いて…家族をとっても大切にしているって聞いたから…私に共感してくれるのじゃないかって思って…
      いまもこの電話で『家族が大切だから幸せでいてほしい』って…『心配にもなる』って言っているのを聞いていて…私の気持ちに寄り添ってくれたって感じたから…」
     『(本当に景和さんが大切なんだな…そうだよな、弟だもんな、それもたったひとりの…。
       …俺もさくらのことは心配だし。兄ちゃんは彩夏といい雰囲気だから問題ないだろうけど、さくらは…
       やっぱり弟とか妹とか自分より下のキョウダイのことは余計に心配になるのかな…)
      わかりました。そういうことでしたら、ご一緒します』
     「ほんとう?ありがとう!」
     「俺で役に立てるなら」
     「勿論!ありがとうありがとう!
      じゃ、景和に電話 代わるね…」

  • 166二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 05:19:17

     沙羅はリビングに戻る。
     「景和、話 終わったから」
     はい、と姉からスマホを返され、景和は受け取る。
     「五十嵐くん一緒に行ってくれる って!」
     「え?ほんと?」
     「ほんとほんと。ほら早く電話に出て」
     「もしもし大二くん、花見に来てくれるって本当?」
     『はい』
     「よかったぁ」
     『(よかった…?景和さん、何だか凄くホッとしているような…)…』
     「いやー、大二くんのことだから、誘っても遠慮するんじゃないかと思っていたんだ。そしたら案の定…遠慮されたし」
     『(俺なら遠慮すると思っていて、それなのに俺を誘った…?どうして… あ、もしかして、、、――俺を慰める為…??
       仮に景和さんが祢音さんのキモチに気づいていないなら付き合っていない女の子とふたりで花見は断るだろうからお姉さんがついていく話にも他の男を誘うなんて話にもならないだろうし、
       もしも景和さんと祢音さんが想い合っていて花見はデートで、景和さんのお姉さんが心配だからついていくとなったときに祢音さんが戸惑うだろうからもうひとり男を誘おうとなったとして…そのひとりは俺でなくても他にいるはず…それこそ、英寿さんが適任じゃないか…!
       なのに、それでも、俺を誘ったということは…――俺を励まそうと… 自惚れかもしれないけれど、でも…)
      景和さん、』
     「んー?」
     『いえ… 誘ってくれて、ありがとうございます』
     「! 時間と場所はまた連絡するから!」
     『はい』
     「それじゃあ!」
     景和は通話を切った。

     「姉ちゃん、どんなふうに誘ったの?」
     「それはねー… ナイショ」
     「なんでだよ…」
     「私と五十嵐くんだけの…ヒ・ミ・ツ!」
     「えー」
     沙羅はふふ…と笑みを零す。
     景和は姉がくすくす笑って楽しそうだから、まぁいいかとにっこり笑顔になるのだった。

  • 167二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 12:55:24

    このレスは削除されています

  • 168二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 00:19:19

    沙羅姉ちゃん、これ天然か…

  • 169二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 09:21:39

    >>168

    こういうところ見ると景和のお姉ちゃんだなぁど思えるよね

  • 170二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 17:19:00

     約束の今日は快晴。
     大二は桜井姉弟が小さい頃から毎春 花見をしているという公園に、景和と祢音と沙羅と来ている。

     「お天気でよかった」
     ホッとした表情(かお)をする景和に、大二はそうですねと返事をする。

     昨日 降った花散らしの雨で満開だったソメイヨシノは散り始めている、けれど、遅咲きの桜(八重桜)――ヤマザクラやシマザクラが咲き始める頃だ。

     大二は自分の少し前を行く祢音がとぼとぼ歩いているように見えて声を掛ける。
     「…満開の桜が見たかった?」
     振り返った彼女は
     「満開の桜はこの前、景和と皆と見ました」
     「そうなんだ…」
     てっきり、満開の桜を見られなくて残念でとぼとぼ歩きになっているのかと思ったのだが。
     …ん?景和と、皆と、見た…? だったらどうして…わざわざ自分を誘って、また花見…??
     やはり自分を慰めようと花見に誘ったのでは…と思いながら、大二は
     「皆って…?」
     何の気なしに、を装って、尋ねる。
     「デザグラの休憩時間に、景和と英寿と運営のツムリはんと。
      (大二さん、ウソついてごめんなさい!でも、或人さんと唯阿さんと行ったなんて言えないから… 嘘も方便ってことで)」
     「そっか」
     「…それでね、景和とふたりでも一回 行きたいなぁって思って…」
     「……」
     大二はやっぱりお邪魔だったんじゃ…と一瞬 頭に浮かぶも、沙羅の言葉を思い出し口を噤む。
     「そしたら、沙羅さんと大二さんも一緒って言うから楽しみにしていたんだー」
     言ってにこにこ笑う祢音が嘘を吐いているようには見えない。…彼女は、少なくとも、自分を邪魔と思っていないようだと、大二は胸を撫で下ろした。
     「昨日、結構 降ったじゃないですか。だからお天気が心配だったんだけど、晴れてよかったぁ! でも、雨でぬかるんでいてちょっと歩きにくい…」
     苦笑いする祢音に、だから泥濘んだ地面をそぉーっと歩こうとしてとぼとぼしていたのかと合点する。

  • 171二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 19:17:35

     大二は雨上がりの澄んだ空気が好きだから気にしていなかったけれど、確かに歩き難(づら)い。
     「私は雨が上がった後の空気、好きだなぁ」
     とっても澄んでいるでしょ?と沙羅が会話の輪に入ってくる。
     「あ、はい。私もその感じは好きです。
      ただ、ちょっと…お気に入りの靴が汚れちゃうなーって…」
     「わー!その靴、可愛い~ バレエシューズ?」
     「そうです!
      持っている中で歩きやすいの履いてきたんだけど、沙羅さんみたいにショートブーツにすればよかったかな…」
     「ふふふ… でもオシャレしたいよね、女の子だもん」
     「ですよね!」
     「もうすぐ、この公園で私と景和の特にお気に入りの場所だから、そこまで歩いてね」

     姉弟のお気に入りだという場所は、拓けていて見晴らしがよかった。
     そこに大きな桜の樹が2本――ソメイヨシノとヤマザクラが1本ずつ立っている。

     「!この桜、まだ散ってない!」
     うわーと歓声を挙げる祢音に
     「これはね、ヤマザクラ。遅咲きの桜なんだよ」
     景和がレジャシートを敷きながら答える。
     ヘェーと感心する彼女を、祢音ちゃん、と沙羅が呼び掛ける。
     祢音が彼女の傍に寄ると
     「ちょっと靴、見せて」
     そう言うと、沙羅は屈んで祢音の靴をちらっと見る。その後ポシェットからハンカチを取り出し、靴に少々飛んだ泥を払った。
     「これで少しはマシになったかな… お家に帰ったらちゃんと洗ってね」
     「ありがとうございます…!」
     3人の、そんな和やかな遣り取りを、大二は見ている。

  • 172二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 19:19:17

     その、和やかな雰囲気に、あったかい気持ちになる、と同時に、淋しいような哀しいような何とも形容し難(がた)い気持ちにもなる。
     理由は自分でも何となくわかっている。アットホームな空気に懐かしさを覚えるからだ。先日、久し振りに家族と花見に行って、懐かしくなったけれど…もう‘あのころ’には戻れないことを痛感してしまったから…。懐かしさと遣る瀬なさをつい先日 感じたばかりだから、まだ感傷から完全には抜け出せていないのだ。

     もしも…と、大二はふと思う。
     大二が兄妹と対立し兄妹に銃口を向けたと、彼ら(桜井姉弟と祢音)に知られたら…――自分は場違いなのでは…という気持ちを拭い切れない。

     どこか胸が締め付けられるような思いがするのは…穏やかな沙羅・景和姉弟と朗らかな印象の祢音が、自分には眩しいから。


     「綺麗でしょう?」
     思考の海に沈んでいた大二は、その声で浮上する。
     沙羅が大二の隣――ほんの少し間を開けて隣に座る。彼女の視線の先には色づき始めた桜。
     「はい」
     大二もそれに倣って遅咲きの桜に目を遣り、綺麗でしょう?の投げ掛けに応える。
     「今日はごめんね」
     「いえ」
     「景和が祢音ちゃんとふたりで出掛けるの、今日が初めてみたいでね…
      初詣は他のお友達も一緒だったし――確か、五十嵐くんとも逢ったのよね? 何度か何人かでごはん食べに行ってるらしいけれど、ふたりで というのは初めてっぽいから…心配になって…面倒くさいお姉ちゃんだよね…」
     「……」
     そんなことはないと思いますよ…と言おうとして、沙羅の瞳がどこか遠くの方を向いていることに気がついて、嗚呼これは聴いてほしいだけなのだなと察した、から、大二は黙って耳を傾ける。
     「そんな姉の身勝手な行為に巻き込んでごめんなさいね」
     沙羅は申し訳なさそうな表情(かお)をして、でも…、と続ける。
     「それだけじゃないんだ…」
     「?」
     首を傾げる大二に、彼女は何故か
     「……内緒…」
    と言って、笑う。

  • 173二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 23:27:22

    このレスは削除されています

  • 174二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 00:17:17

     「姉ちゃん、大二くん!弁当、食べよう!」
     景和の呼び掛けに、沙羅ははーいと応じ
     「五十嵐くん、食べよ?」
     景和、結構 料理上手なのよ、と大二を促す。

     シートにのせられた風呂敷を開くと大きなお重箱がお目見え。景和が一段一段 並べていく。おにぎり(梅,ワカメ,おかか)に、鶏唐,コロッケ,ハンバーグ(の下にスパゲッティ),卵焼き,茹でたむきエビ,鯵の南蛮漬け,ブロッコリーのサラダ等、バラエティーに富んだお花見弁当だ。

     「すごーい!」
     祢音が手を叩く。
     「ハンバーグもちゃんとあるー」
     わーいと喜ぶ沙羅に、姉ちゃんが入れてって言ったんじゃん、と顔を綻ばせる景和。

     ―――本当に仲がいいんだな。
     大二は微笑ましくなりながら、

     「あの、これ…」
     包みを差し出す。
     「もしかして、差し入れ?」
     景和に訊かれて頷くと
     「気を遣わなくていいのに~」
     少し困ったように眉を下げて笑う。
     「お誘いいただいたので…」
     大二が付け加えれば
     「ちゃんとしているのね、五十嵐くんって…」
     沙羅にふんわり笑顔を向けられる。
     大二は軽く会釈し、包みを開ける。
     「桜餅!」
     祢音が声を弾ませる。

  • 175二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 00:19:50

     食事を終え、皆で桜を眺めながら桜餅を頬張る。
     「おいしー」
     「ねー」
     にこにこしている祢音と沙羅に大二がホッとしていると
     「あのさ、」
     景和に話し掛けられる。
     「これ、大二くんが作ったでしょ」
     「「えーそうなのー?」」
     女子ふたりも興味津々と言った感じで寄ってくるので大二は戸惑いつつ、どうしてわかったんです?と切り返す。
     「如何にも手作りって感じがしたから…。
      まぁ、手作りする和菓子屋さんもあるにはあるけど。何となく…そんな気がして」
     だから…えっと…その…勘…?と告げる景和に
     「普段から料理されているからわかったんでしょうね…」
     大二はそう言うしかなかった。
     「お店で買う時間がなかなかなくて、弁当を作る余裕もなかったから…少しですけど。
      そう言えば母が桜餅を作っていたなって…母の作り方を思い出しながら…作ってみました」
     観念してそう白状すると
     「五十嵐くんも料理できるんだー」
     沙羅は相変わらずにっこりしている。
     大二は恐縮して、そんな大したことじゃないです、と俯いた。

  • 176二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 00:20:30

     食後のデザートを済ませ、もう一度 桜を愛でる。
     花弁が散りゆくソメイヨシノの樹の下は淡い桃色が広がっていて。これから満開を迎えるヤマザクラの花弁は濃い桃色に染まっている。


     「今日はありがとう」
     真横から掛けられた言葉に、大二が沙羅の方を向けば。彼女は目の前の桜を見ながら、こう綴る。
     「やっぱり五十嵐くんを呼んで正解だったわ」
     「………」
     「今日、ここで、ちょっとの時間だったけれど、過ごして、改めて思ったの。――五十嵐くんは家族を大切にしているんだって…」
     「…!」
     「お弁当を食べる前、なにか考え事していたでしょう?」
     「…!!」
     気づかれて、いた…?!――大二は動揺する。

     彼女は気づいただろうか…大二が、穏やかな景和と沙羅の空気感や朗らかな祢音との遣り取りを眩しく感じて、淋しさと哀しさで物思いに耽っていたことを。

     「なにを考えていたかは知らないけれど…」
     一旦 口を結んで
     「やさしい瞳(め)をしていた」
     沙羅がこちらを真っ直ぐ見てきた。
     「……っ」
     大二は息を飲む。
     「私達を見る五十嵐くんの眼差しはやさしかったから…私はそう感じたから…
      ――五十嵐くんは心根がやさしい人なんだわって…思ったの」
     静かに紡ぐ、彼女の眸(め)こそ…やさしかった。

  • 177二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 07:33:25

    なんか沙羅と大二の関係もいいなぁ…

  • 178二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 10:17:00

     「そろそろ帰ろっか!」
     沙羅が大二から離れ、景和と祢音に声を掛ける。
     「はーい!」
     「わかった!」
     ふたりからの返答を聴くと、沙羅は大二に向き直って頷く。
     後片付けをして、帰路に就く。

     並んで歩いている景和と祢音の一歩 後ろを大二と沙羅は歩く。
     「名所じゃない処の花見もいいでしょ?」
     「うん、綺麗だった~✨
      景和と沙羅さんが小さいときから来ていた場所っていうのがいいよねー なんか…景和の“特別”になった気分~♪」
     「っっ、ね、祢音ちゃんッ?!」
     愉しげな祢音と彼女の言動にあたふた焦るようにどもる景和。
     そんなふたりを微笑ましく見守る沙羅の姿に、彼女が景和と祢音を心から慈しんでいると大二は感じる。

     そうしたら、なんだか胸がいっぱいになって…。
     大二は足を止める。
     刹那、辺りが無音になる。
     「五十嵐くん!」
     その声に、ハッとして。声の
    する方へと眼を向けると、沙羅が微笑んでいる。

     まぶしい。と、思う。
     それは、彼女が西陽に照らされているからか…それとも…

     「帰ろ」
     再度 言葉を掛けられ、大二は3人(景和と祢音と沙羅)を追った。
     いまはわからないけれど、いまはそれでいい…と一先ず結論づけて。

     もうすぐ、陽が沈む―――。

  • 179二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 10:17:17

     桜井家帰宅後。

     沙羅は大二のことをぼんやり考える。


     ―――淋しそうだったなぁ…

     桜を見つめる表情が、景和と祢音と自分を見る表情が、眼差しはやさしいのに、淋しそうな…気がして。

     彼の、やさしい瞳(め)をしてどこか淋しそうな横顔に、せつなくなって…

     『綺麗でしょう?』――大二の顔を見ないで、桜の方に目を向けて、彼の隣に座った。

     淋しげな大二の、胸の内を聴きたい気もしたけれど、
     代わりに『景和が祢音ちゃんとふたりで出掛けるの、今日が初めてみたいでね…心配になって…』と、面倒くさい姉の身勝手な行為に巻き込んでごめんなさいね…と、自分の心情を語った。
     『なにを考えていたかは知らないけれど…』と前置きして、自分達を見る彼の眼差しはやさしかった…自分はそう感じたから…――大二は心根がやさしい人なんだと思った…って、彼に彼がやさしい瞳(め)をしていたことは伝えた。

     淋しげな大二の、心を知りたい気もしたけれど、…まだ顔を合わせるのは2回目だから…、
     貴方が家族を大切にしているのだと改めて思った…って、やっぱり貴方を呼んで正解だったって、大二に『今日はありがとう』を告げた。


     「ね、景和、」
     沙羅は弟に話し掛ける。
     なぁに?と振り返る景和に
     「これからも五十嵐くんと仲良くするのよ」
    と言えば
     「俺、大二くんを友達と思っているよ」
     なに当たり前のこと言うの?と不思議そうに返してくるので
     「そ。よかった」
     沙羅は嬉しくなるのだった。

  • 180二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 10:50:19

    そんな訳で、

    『ギーツ』本編は祢音に対して人の心…展開になっているけれど、祢音→景和 要素を含む桜井姉弟&祢音+大二お花見の話ですた


    >>165

    脱字、発見 すみません

    ✕ 「でね、景和と祢音ちゃんと一緒にお花見に行くしたけれど…

    ○ 「でね、景和と祢音ちゃんと一緒にお花見に行くことにしたけれど…


    >>170

    誤字、発見

    ✕ 「デザグラの休憩時間に、景和と英寿と運営のツムリはんと。

    ○ 「デザグラの休憩時間に、景和と英寿と運営のツムリさんと。

    祢音がはんなり京都の人になっている…すみません


    >>178

    変な処で改行になってますねすみません

    ✕ その声に、ハッとして。声の

    する方へと眼を向けると、沙羅が微笑んでいる。

    ○ その声に、ハッとして。声のする方へと眼を向けると、沙羅が微笑んでいる。



    >>160

    はい

    或人×唯阿の世界線だと大二はせつない

    だから、五十嵐家+花&玉置お花見編では実妹·さくらが、桜井姉弟&祢音+大二お花見編では桜井姉弟が、大二を気遣ってます

    あと >>116さんのご指摘通り、景和は大二に肩入れしているというか大二の味方でいようと思っている設定

  • 181二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 12:19:00

    >>177

    書き手の私が沙羅→大二いいなぁと思っているのでこんな感じに…

  • 182二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 14:00:00

    沙羅さん天真爛漫だけど母性を感じる…

  • 183二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 00:18:15

    >>182

    わかる…

    女手一人で育てたからかな?

  • 184二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 00:19:00

    このレスは削除されています

  • 185二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 07:19:01

    少女のような無邪気さと大人の女性らしい包み込むような感じを併せ持つ沙羅さん

  • 186二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 17:12:32

    このレスは削除されています

  • 187二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 00:02:48

    本編が重くなってきてるからこうしてのんびりしてるのいいなぁ…

  • 188二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 10:19:07

    ここはのんびりだけどギーツ本編は地獄展開すぎる…

  • 189二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 19:19:19

    本編しんどいから、このスレのほのぼの景和祢音いいね~ 沙羅さんと大二もいい感じ♪
    ふと思ったんだけど、沙羅姉ちゃん、推しの祢音と弟の景和がくっついて自分は大二と恋人になれたら勝ち組じゃん!

  • 190二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 02:19:00

     「一緒に帰ろう、祢音ちゃん」
     景和は祢音に声を掛けた。
     けれど、彼女は…
     「でも、私には――帰れる場所なんてないよ…」
     景和を見ないで通り過ぎた。そのことに、胸が痛む。

     祢音を却って傷つけてしまった。

     去って行く祢音の後ろ姿を見送って、景和は下を向く。

     『ありがとう…』――祢音の、言葉が浮かぶ。
     彼女は自身に帰る場所がないと思い、それでも、一緒に帰ろうと言った自分にありがとうと返したのだ。どんな気持ちで、ありがとうを…。そう考えると、自分はなんて無神経なのだろうと景和は思う。

     つい先刻の、祢音の背中を思い浮かべる。
     ―――淋しそうだったな…

     景和は顔を上げて
     「英寿…俺、祢音ちゃんと話してくる」
     立ち去った祢音を追い駆ける。

  • 191二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 11:17:19

     景和は祢音を捜して走る。

     ―――祢音ちゃんは…本当の愛を求めていたんだ…
     だから…、幸せになる権利がある…!


     『初めて作ったから綺麗じゃないけど…』。――バレンタインの日、少し緊張気味にチョコレートを渡してくれた祢音を思い出す。

     『チョコレート、受け取ってくれて…ありがとう』『手作りとか重いと思われるかもって不安だったし、それに…初めて作ったから…受け取ってもらえるかなって…』
     祢音は本当の愛を求めていた。だから‘あの’日、緊張しながらそれでもチョコレートをくれたんだ。

     『見た目はあんまりよくないけど…――食べてほしい です…』
     ‘あの’とき、声を震わせる彼女に切実な空気を感じたのは…

     『今日はここでいいよ。ここまで来ればひとりで帰れるから』。――頭に蘇った彼女の科白にハッとする。
     口早に‘それ’を言った彼女の俯き顔と『ありがとう…でも、私には――帰れる場所なんてないよ…』とこっちを見ずに目の前を通り過ぎた彼女の伏し目がちな横顔が重なる。

     『食べてほしい です…』
     声を震わせて告げる祢音に自分が切実な空気を感じたのはきっと…――彼女が本当の愛を求めていると無意識下で察したから。


     祢音は…本当の愛を求めていた…
     『ありがとう…』
     だから…幸せになる権利がある…!
     『私には――帰れる場所なんてないよ…』

     ―――祢音ちゃん…

  • 192二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 17:19:19

     祢音は公園にいた。ベンチに腰掛けている。傍らには彼女のサポーターが。
     「祢音ちゃん!」
     呼び掛けると、祢音がこちらの方を向く。虚を突かれたのか眼を瞬かせる祢音。彼女を庇うようにキューンが前に立つ。
     「何の用だ…?」
     冷静に問うキューンを祢音が制す。
     「キューン、いいよ…」
     「けど、祢音…」
     祢音の顔を窺い見るキューンに彼女は、首をゆっくり横に振る。
     「ごめんけど、席を外して… 景和とふたりで話すから」
     「……わかった…」
     キューンが祢音から離れた。

     「祢音ちゃん…」
     景和は彼女の名を呼んで、近づく。
     「隣…いい?」
     祢音がコクっと頷くのを見てから、景和はベンチに座る。祢音から人ひとり分くらいのスペースを開けて。
     景和は大きく息を吸って、静かに吐いた。
     そうして…
     「祢音ちゃんは祢音ちゃんだよ」
     はっきり言い切る。
     「何があっても、祢音ちゃんは祢音ちゃんだ」
     他の誰でもない。
     祢音がいまどんな表情(かお)をしているのか見ない。ただただ、自分の思っていることを口にする。

  • 193二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 19:17:00

     「………景和は…やさしいね…」
     やや間があって、祢音が、口を開いた。
     やさしくなんかないよ。――声に出さず口内で転がす。
     本当はそっとしておいた方がいいんだろう、と思う。そぉーっとしておくのが優しさなのだろう、と思う。だけど、
     だけれどね、
     「俺は思っていることを言っただけ…」
     景和は前を向いて、
     「祢音ちゃんは祢音ちゃんなんだ」
     繰り返す。届けばいいなと思いながら、言葉を繰り返す。
     「……………」
     祢音が黙り込む。
     「………」
     景和は彼女が何か言うのを待つ。
     何処かでカラスが鳴いている。
     「…もういいかな」
     彼女がぽつり溢したそれは、会話を切り上げる台詞。
     「待って」
     止めると、祢音は顔を背けてこう言い放つ。
     「ッ、もう、ほっといてよ…っ」
     「ほっとける訳ないだろ!」
     「 っ、」
     肩を震わせた彼女はけれど去ろうとする、から、景和は…
     「ほっとけないよ」
     祢音の手を掴んだ。
     反動でこっちを振り向いた彼女と瞳(め)が合う。

     瞬間、
     景和は告げる。

     「好きだよ」

  • 194二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 21:17:00

     「俺は祢音ちゃんが好きだ」
     もう一度 告白すると、祢音の瞳が揺れる。
     「だから、ほっとけない」


     『……すきなの』
     ‘あの’日、真っ直ぐに自身の想いを伝えてくれた祢音の声が蘇る。

     『景和、あのね…私、別に困らせるつもりじゃ…』――そんなの、彼女の眸(め)を見ればわかる。彼女の声色を知ればわかる。
     『返事はいいの…』――静かにそう言った祢音の胸の内はどうだったのだろう…。
     
     『いまは、私の理想の世界を叶えるのが一番だから…!』『その為に、私が、デザ神になるから!』――いたずらっぽく笑った彼女の心のなかはどんな色をしていたんだろう…。


     「返事はいい って…、祢音ちゃん、そう言ったね。
      いまは自分の理想の世界を叶えるのが一番だから って…その為に、自分が、デザ神になるから って…」
     「!」
     「あれから、俺…考えていた。“答”を出して、返事をするって…祢音ちゃんのこと、考えていた…」
     祢音は視線を逸らさないでくれている。そのことに、ホッとして。
     「俺が出した答は――“祢音ちゃんのことが好き”。
      これが、俺のキモチ」
     伝わるといいな…と祈りながら自分の心を綴る。
     「景和…」
     思わずといった感じで祢音が漏らす。――ほんの少しでも彼女の心を溶かせただろうか…。
     「祢音ちゃん、」
     呼び掛けて、
     「俺、祢音ちゃんのこと好きだよ」
     言葉を紡ぐ。

  • 195二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 22:19:00

     「……嬉しい…」
     祢音が、呟く。
     「嬉しいよぉ… だけど、私…」
     一拍 置いて、彼女はこう続ける。
     「いまは…受け止め切れない」
     今にも泣きそう顔をする祢音の肩に手をのせて。景和は、いいんだ、と言う。
     「気持ちの整理は簡単じゃない。
      俺はただ…俺の心のなかを祢音ちゃんに見せたかったんだ」

     バレンタインの日、ハートの形をした手作りチョコレートをくれた祢音の真意を知りたくて、祢音のことが知りたくて、けれど、問い詰める気はなかった。――祢音の心の声を聴きたかっただけだ。
     そしていまは、自分の心の中身を見せたかっただけ。
     だから…

     「いいんだよ」
     改めて相手の双眸(め)を見ると、それは水分を含んでいて。
     零れ落ちるその前に。景和は自らの腕を伸ばし、祢音の身体をぐっと引き寄せる。
     「泣いていいよ」
     彼女の耳元でそっと囁く。
     「こうすれば…誰にも、俺にも、祢音ちゃんの涙は見えない」
     すると祢音は、景和の肩口に額を押し付けてきた。…嗚咽混じりの声を聴きながら、景和は遠くの空に目を遣る。

     「もう大丈夫…」
     しばらくして祢音は弱々しく笑って景和から離れる。
     景和はそれに微かに笑みを返して、祢音ちゃん、と語り掛ける。
     「俺は祢音ちゃんが祢音ちゃんでよかったと思っているんだ」
     少しだけ唇を綻ばせた彼女にこう付け加える。
     「祢音ちゃんに逢えてよかった」
     「……ありがと…」
     祢音はせつなげにでも確かに微笑む。

  • 196二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 22:50:00

     祢音がキューンと連れ立って公園を後にしようとしている。景和は彼女を呼び止める。

     「忘れないで…!」
     振り返る祢音に景和は想いを発する。
     「俺は祢音ちゃんと出逢えて嬉しい」
     祢音の瞳(め)を真っ直ぐ見つめる。
     「俺がそう思っていることを忘れないでほしい」
     景和が想いの丈を連ねたら…
     祢音はぎこちないながらも笑みを浮かべ、小さく頷いてくれた。

     黄昏に染まる道を往く祢音の背が見えなくなるまで、景和は佇んでいた―――。










    そろそろ景和と祢音をくっつけようと思っていたのだけど、本編の展開がまだまだしんどいので、、、ふたりが結ばれるのはもうちょっと先になります…

  • 197二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 22:53:30
  • 198二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 22:58:50

    スレ立て乙!

  • 199二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 01:01:32

    >>197

    あざっす!

  • 200二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 05:17:00

    >>197

    スレ主、ありがとうございます!

    私の妄想文にお付き合い戴いた方、ありがとうございます!

    次のスレでも楽しく盛り上がれたら幸いです

オススメ

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています