レースを終え、忙しくない最後の夏を送っていたクリークが

  • 1二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 01:03:16

    これまでの日々で対等なパートナーとの関係性の変化を振り返りながら、もうそろそろこの関係性が終わり自分たちの全ての関係に「元」がついてしまうことを想像して、心の中にモヤモヤを抱えていた。
    後輩の指導を終えたトレーナーを夜の海岸に誘ってこれまでの思い出話をしたり、それぞれの将来の展望を話し合っているうちに自分とトレーナーの絆を再確認して、このつながりは決して消えないと確信するも、それでも心のモヤモヤが晴れなくてなんとか言葉にしようと四苦八苦するクリークをトレーナーもずっと見守る。
    そうして長い時間をかけて出た言葉は「これからもずっとゴールで手を広げて私を待っていてください」といういつかトレーナーに言った言葉で、それでもクリークが言語化できる気持ちの精一杯でそれをトレーナーもよく分かっているからただ一言、「ずっと待ってる」とだけ言ってクリークの頭を撫でる。
    そろそろクリークの方から撫で返してくるかなと思うトレーナーだったが、その日のクリークはトレーナーに全体重を預けて優しくされるだけで、月明かりが照らす2人以外誰もいない海岸で、いつもの彼女からは想像もできないようなただただ信頼できる人に名一杯甘える年頃の少女のように振る舞い続けるんだ。

    そんな感じのお話誰か書いてくれない?
    自分は光の純愛は書けないんだ

  • 2二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 01:12:27

    もうゴールインしてんじゃねえか

  • 3二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 01:14:24

    画像の破壊力すごい
    あと自分は書けない

  • 4二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 01:15:40

    年頃の少女クリークは俺に効く
    ありがとう

  • 5二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 01:39:08

    尊みが溢れてきましゅぅ……

  • 6二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 03:32:34

    見たい……ぜひ……

  • 7二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 04:38:50

    出来たじゃねえか・・・ごふっ(吐血)

    もうお前は一人前だ・・・

    これからはお前が薄汚れた俺たちあにまん民に光のSSを書いて・・・書いて・・・死にたくねぇなぁ

    お前のかいたSSを

    もっと

    (ぽっくり)

  • 81/623/03/16(木) 05:46:05

    トレセン学園の生徒たちにとって──或いはトレーナーさんたちにとっても──夏という季節は重要な季節です。
    7月からの2か月間、ウマ娘とトレーナーたちは学園を離れ、合宿をします。
    砂浜や海という場所は普段よりも効果的なトレーニングができますし、お休みなら心も体もリフレッシュできます。
    この期間に力をつけ、秋からの熾烈なレースに挑む第一歩にする。そんな、大事な、忙しい季節。

    さて、そんな今年の夏に、私──スーパークリークはといえば。

    「ふん、ふふん、ふふーん♪」

    合宿所のロビーで一人、なんとも、ゆったりとした時間を過ごしていました。


    どうして、トレーニングをしていないのか。
    その答えは簡単──"もうその必要がないから"です。

    私は、レースの道から退くことを決めました。
    たくさん走って、いっぱい勝って、トレーナーさんと二人で、ここまで来ました。
    けれど、それは私たちの道……とは言うものの、私に重きを置いた道です。

    私たちが積み重ねてきた日々は、トレーナーさんにとっては大きなもの。
    当然、その指導を受けたいという子はたくさん。現に今も、とある後輩ちゃんの指導中です。
    そこに私がいては、却って邪魔になってしまうかもしれません。だから、彼女に道を譲ることにしたのです。

    だから本当は、この夏合宿にも参加する理由はないのでした。
    それでも、何となく……この夏が過ぎれば、きっともう二度と来ないだろうこの場所に、来たかったのです。
    たくさんの思い出が詰まった、この合宿所に。

  • 92/623/03/16(木) 05:46:19

    「ふふん、ふふん♪ ふふふふふーん♪」

    あてもなく、合宿所の中を歩いてみます。
    ギシリと軋む床板、傷が幾つも付いた柱、ちょっとガタつく引き戸、少し汚れた窓。
    手を触れ、指先でなぞるうち、トレーナーさんとの思い出が浮かんできます。

    ──励まして、甘えさせてあげたいと思った、出会いの日。

    ──デビューを控え、改めて立派なトレーナーにしてあげたいと思った日。

    ──レース後に調子を崩してしまって、三冠をプレゼント出来ないと泣いた日。

    ──諦めずに、一緒にトレーニングに励んだ日々。

    ──私から、ばかりじゃなくて。二人で支えあうことの大切さを、教えてくれた日。

    ──気負うことなく走り、二人で勝った菊花賞の日。

    ──走って、勝って、走って、勝って。悪役になったりもして。

    ──どちらが、じゃない、二人で並んで、歩いてきた日々。

    「ふふん、ふふん♪ ふふん、ふんふんふーん♪」

    少しずつ、私たちの関係も、変わってきましたね。
    でも、それももうすぐ終わり。
    私とトレーナーさんの間にある、色々な、ぼんやりとした関係性の全部に、"元"という符号が付いてしまいます。

    たった一文字、されど一文字。いま当たり前にあることが、すべて過去にあったことになってしまう。
    そのことを考えると、どうしても、心の中がモヤモヤしてしまうのです。

  • 103/623/03/16(木) 05:46:31

    「トレーナーさ~ん! こっち、こっちです~!」
    『いま行くよ、クリーク』

    夜、人気のなくなった砂浜。雲一つない空には、お月さまが綺麗に輝いています。
    波の寄せる音だけが静かに響く岸辺に、私はトレーナーさんを誘いました。
    考えてみれば、トレーナーさんは後輩ちゃんの指導でお疲れでしょうけれど……
    それでも、お誘いしてしまいました。こんな風にわがままを言うなんて、出会った頃は考えもしませんでしたね。

    「ふふっ、いつかの夏合宿のことを思い出しますね」
    『お祭りの人混みが凄くて、二人で抜け出して来たんだよね』
    「はい~! あの時も、ここはこんな風に静かでしたね~……」
    『うん。昼間の賑わいが嘘みたいだ、なんて思ったりもしたよ』

    そう、この浜辺にも。私たち二人の思い出が一つ。
    どこに行くにも、何をするにも一緒。思い出には、いつもお互いがいましたね。

    「なんだか懐かしいです~……浜辺といえば、あのタマちゃんとの競争、憶えてますか?」
    『忘れるわけないよ。クリークとの大切な思い出だし、トレーナーとして成長する切欠でもあったし』

    あの思い出にも、その場所にも。二人一緒だから、思い出話もたくさん。
    並んで座って、これまでのことをお喋りしたら、今度はこれからのことを。

    「……そうだ。トレーナーさんは、これからどんなトレーナーになりたいですか?」
    『うーん、改めて考えてみると……うまく言葉にするのは難しいけど、そうだなぁ……』

    他愛のない、いつも通りの私たち。普段と何ら変わらない会話。
    私たちの間に培われたつながりは、決して消えない。そう確信できる、掛け替えのない時間。
    けれど、心の中のモヤモヤは、いつまでも晴れないままです。

  • 114/623/03/16(木) 05:46:43

    過去の話と未来の話を終えて、いまに戻ってくると、クリークは押し黙ってしまった。
    何かを言いたげに、そっと口を開きかけて。何も音にしないまま、また口を結んでしまう。
    トレーナーとして、担当ウマ娘から聞き出すことも出来るだろう。でも、ここは静かに待つことにする。

    「……ええ、と」
    『うん』
    「その、不思議な気持ちなんです。ずっと。引退するって決めたときから」
    『……うん』

    少しずつ、彼女の口から、言葉が紡がれる。

    「トレーナーさんは、トレーナーさんで。私も、私で。それは変わらないことだって、分かっているんです」
    『……』
    「でも。でも、その……頭では分かっていても、心が、ずっと……モヤモヤ、していて……」
    『……うん』

    そこで、言葉が切れる。終わり、ということだろうか。
    ……違う、と思う。まだ伝えたいことがある筈だ。
    なら、見守ろう。二人並んで、一緒に歩んできたパートナーとして。

  • 125/623/03/16(木) 05:47:19

    ややあって、クリークは俯いていた顔をそっと上げ、改まった表情でこちらを向いた。
    そして、ゆっくりと口を開く。

    「これからも。これからもずっと、ゴールで手を広げて、私を待っていてください」

    それは、いつか聞いた言葉。競技者としてレースを走る、スーパークリークが口にした言葉。
    いまの彼女は、そこから退くことを決めた身。故に、この言葉は相応しくない……かも、しれない。

    けれど、連れ添ってきたから分かる。いまの彼女には、これが精一杯なのだと。

    そして、応えなくてはいけない。

    『……うん。ずっと待ってる』

    そっと、手を伸ばす。
    そして、ゆっくりと、その柔らかな髪を──頭を、撫で始めた。

  • 136/623/03/16(木) 05:47:43

    暫く撫で続けた後で、ふと思う。
    いつものクリークなら、この後どうするだろう。
    ……考えるまでもない。撫でて貰ったからには私もと、こちらを撫でようとするだろう。

    けれど、今夜は一向にそれが無い。
    ただこちらに体を預けて、静かに撫でられている。

    「……」

    そっと彼女の方を見れば、心地よさそうに目を細めているのが目に入る。
    母か姉のように振る舞う彼女は、何処にもいない。
    そこにいるのは、年頃の少女だった。

    ふと、目が合う。

    「──♪」

    安心しきったように、柔らかく微笑むクリーク。
    目を閉じて、こちらの手に自身の手を重ねて。

    二人きりの、はじめての、特別な時間は。
    月明かりに見守られながら、ゆっくり過ぎていった。

  • 14二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 05:49:28

    本当はもっと短く纏めようと思ったのに長くなってしまった……反省

    ご査収ください

  • 15二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 06:51:50

    しまった、先を越された。こんないいものがあるなら、いいかな……

  • 16二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 06:58:42

    解釈も描写も書き手それぞれ味があるからいくつあってもいいのだ

    と思う(非スレ主並感)

  • 17123/03/16(木) 07:39:27

    >>14

    素晴らしいものを見たありがとう



    >>15

    是非あなたのも見てみたい

  • 18二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 09:18:43

    以前は一方的な「与える」「与えられる」関係だったのが対等なパートナー関係になり、ここにきてほんの少しの間与える・与えられる関係になったけど昔とはその立ち位置が逆転してんのがいいね

  • 191523/03/16(木) 12:01:02

     トレセン学園に所属するウマ娘の一人であるスーパークリークは、今はその学び舎から離れていた。隣には彼女を三年間しているトレーナーもいる。
     二人は並び座って海を見ていた。ここに来ているきっかけはクリークなのだが、当の本人はその理由を明かそうとしない。トレーナーも、問いただすような真似はしていない。

     三年前、スーパークリークとトレーナーは契約をした。ウマ娘はレースに勝てるようなトレーニングをしてもらう為、トレーナーはレースに勝たせるトレーニングを指導する為。
     しかし、二人の関係はそのような普通のものとは少し違った。年齢の差からして、トレーナーがウマ娘を導くという構図が自然と出来上がるものだ。
     ただ、トレーナーはなりたての新米で、自信というか気迫というか、ウマ娘側を信頼させる何かが足りなかった。

     そんな時、トレーナーに声を掛けたのがクリークだ。誰かに話すことで気持ちの整理がつく、と聞き手になったのだ。
     年下に悩みを打ち明け、そんな相手から励まされるというのは確かに思うところはあったが、トレーナーは彼女の言葉と微笑みに大きな安心感を抱いていた。

     結果としてトレーナーはクリークを担当ウマ娘とすることになったのだが、それも彼女からの逆スカウト。新米でウマ娘の将来を支えられるか不安と漏らすトレーナーを、責任感ある人物だと評価してくれた。
     二人の繋がりは、彼女から始まった。そして、トレーナーは公私共に彼女のお世話になった。

  • 201523/03/16(木) 12:01:31

     最初にトレーナーが抱いた印象通り、クリークは才能あるウマ娘だった。新人という言い訳があったとしても、不慣れなトレーニングで結果を出してきた彼女の成績がその証拠だった。
     また、トレーナーのプライベートでも彼女はある意味才能を持っていた。生活のだらしなさを様々な形でサポートする様は、最早どちらが指導しているのか分からなかった。

     その世話好きは彼女の実家が託児所を経営しているが故であったのだが、小さな子供に彼女も手伝いとしてずっと接してきたせいか、トレーナーに対しても同様であった。
     トレーナーを励ます時にはいいこいいこと頭を撫でる。それ以外でもちやほやする。むしろ、甘やかしたいから理由を探しているかのようだ。

     しかし、そうではない。クリークはみんなを笑顔にしたいだけだ。誰かを甘やかした結果笑ってくれたら、それだけで頑張れる。他者なくして生きられないウマ娘だった。
     それを理解したトレーナーはされるがままに彼女に甘やかされつつも、時には彼女を支える立場として行動してきた。
     周りの目が奇異なものではなかったとはいわない。それでも、トレーナーはスーパークリークというウマ娘を大切にしたいと考えてきた。彼女の見立て通り、責任感ある人物だった。

     そんな二人は三年間を駆け抜けた。順風満帆とはいかない道のりで、お互いに悩むこともあった。それを励まし合って乗り越え、かけがえのない絆を結び、深めた。
     今の二人には、この長くも短い時間で作り上げた確かな繋がりがあった。

  • 211523/03/16(木) 12:01:53

     ただ、クリークは最近その繋がりが解けてしまうような不安さを感じるようになっていた。
     トレセン学園に通うウマ娘はレースで結果を出そうとするが、それには本格化が不可欠である。著しく成長する肉体によって速さを手に入れるわけだが、それにも衰えが来る。
     今のクリークには幸いそのようなものは来ていない。ただ、この先来ることは確実であるし、そうではなくても彼女自身どこまで走り続けるのかも定かではない。

     たまによぎっていた考えが、よく頭に浮かぶようになっていた。このままトレーナーとゆったりしながら、みんなのお世話が出来たら。
     その誘惑は、クリークの心を掴んで離さなかった。それなのに、彼女の周りはどんどん早まっていく。

     トレーナーはクリークのおかげで実績あるトレーナーとなった。三年も過ぎれば後輩のトレーナーも出来るし、彼女の後輩を指導することもある。
     二人はチームを設立してはいない。そんなことは考えてもいなかった。しかし、かつてトレーナーもそうだった新米の後輩からすれば輝かしい成績を担当に取らせたトレーナーである。
     かつてクリークもそうだった新入生の後輩のウマ娘からすれば輝かしい実績を積ませてくれるトレーナーである。
     その眩しさに惹かれて彼らは、彼女らはトレーナーに集まってくる。ずっと隣にいてくれたトレーナーだというのに、クリークはその光をまともに見ることが出来なかった。

  • 221523/03/16(木) 12:02:14

     気付けば、クリークはトレーナーを海に誘っていた。行きませんか? というほんの一言なのに、彼女はトレーナーと目を合わせることが出来なかった。
     今まで二人で作ってきた思い出は確かにある。トレーナーさんが頼られるのは嬉しい。でも、この私の気持ちは何なのだろう?

     はっきりとした答えを出せずに抱えているモヤモヤとしたものを、トレーナーに見せたくはなかった。見つめられたら、見透かされてしまいそうで。
     そんな態度に何かあると感じたトレーナーだったが、その場で尋ねることはせずに、いいよの一言を返すだけだった。
     そして、二人は海を見ていた。夏合宿のトレーニングに利用した、見知った海。随分な遠出だった。

     しばらくそうして眺めていた二人だったが、やがてクリークの方からぽつりぽつりと話し始めた。
     初めて会った日のこと。初めてトレーニングをした日のこと。初めてレースに出た日のこと。
     多くの初めてを経験してきた。それまでに誰ともしたことはなく、これからも二度とすることは出来ない。クリークにとってはトレーナーが、トレーナーにとってはクリークが初めてなのだ。
     トレーナーは彼女の呟きにも似た声に、相槌を打っていた。一瞬にして振り返ってしまえる思い出を、何度も二人は思い返していた。

  • 231523/03/16(木) 12:02:58

     そうするうちに、過去から未来へと話題が移っていった。クリークはいつの間にか震えている声で問いかけていた。

    「トレーナーさんは、これから、どうされますか?」

     問いかけというには曖昧な内容。それでもトレーナーは考え、答える。

     後輩の、指導かな。トレーナーにしろ、ウマ娘にしろ。クリークのおかげで、頼られるトレーナーになれたから。

     ある意味、分かっていた返答だった。新人トレーナーから『元』新人トレーナーへ。新人ウマ娘から『元』新人ウマ娘へ。思い出の中の二人は初めてのままだけれど、現実の二人はもう初めてではない。
     時間が過ぎ去っていくと共に、二人自身も変わっていく。肉体的な老いのように、精神的な成熟のように。矛盾めいた両者の変化は、そのままクリークとトレーナーに当てはまるように彼女には感じられた。

  • 241523/03/16(木) 12:03:29

     自分だけを見てくれていたトレーナーは、別の誰かを見るようになる。自分を見てくれていたトレーナーを見ていた自分は、別の誰かを見るトレーナーを見るようになる。
     トレーナーは成長していく。大人になっていく。でも、スーパークリークは? 大人になっていく筈なのに、子供のまま取り残されるような。
     いや、子供ですらなく時間が止まったまま。将来を、未来を歩いていくトレーナーに対して、過去に置き去りにされて、老人のような扱いで記憶の中だけに………………

     嫌な想像ばかりがクリークの頭の中で広がっていく。この恐れがモヤモヤの正体だったのか。彼女を見てくれる誰かがいなければ、彼女は彼女でいられない。

     誰か、誰か。トレーナーさん………………

  • 251523/03/16(木) 12:03:47

     でも、これからもクリークのトレーナーだよ。


     心のモヤモヤが、即座に晴れていった。その明るさをすぐに認識出来ず、クリークは隣のトレーナーを見上げる。


     これから色々な人たちと関わっていくと思う。チームを組んだり、新しくウマ娘を指導したり。でもね?

     初めてをくれたウマ娘はクリークなんだ。そして、クリークの初めてのトレーナーになれたからこそ。

     この先もスーパークリークのトレーナーであることは、変わらないよ。たとえレースで走らなくなっても、絶対に変わらない。

  • 261523/03/16(木) 12:04:06

     トレーナーの目は、まっすぐだった。初めて会った時の自信がないような姿であっても持っていた、まっすぐさ。だからこそ、クリークは責任感があると評したのだ。
     その目は、彼女の目を見ずとも見通すかのように力強かった。その確かな気迫に、彼女の恐れは押されてどこかへ消えてしまった。

     そうして残ったのは、ひとりの女の子だった。幼い頃から大人びて自分より少し下の子供をお世話してきた子。まだまだ子供なのに同年代を、大人を甘やかしてきた子。
     甘えることを与えることばかりしてきて、甘えることをしてこなかった子。その子は、瞳を潤ませて何も言えずにいた。

     何か言おうとはしていた。しかし、その度に喉を震わせて意味のない音を漏らすだけ。トレーナーは、見守っていた。言葉はなかった。ただ、見つめるだけで伝え、それは伝わっていた。
     それを受けて、クリークは何度も喉を震わせた。トレーナーの想いが理解出来るからこそ、自分の想いも理解してほしくて。そして、努力は実った。

    「これ、からも……ずっと、ゴールで手を、広げて……私を、待っていて、ください……」

  • 271523/03/16(木) 12:04:22

     途切れがちの声は普段の彼女のものよりさらに小さくて、聞こえているか分からない。しかし、トレーナーにはしっかり届いていた。

     ずっと、待ってる。

     短い言葉に、彼女が求めていたトレーナーの全てがあった。女の子は泣きじゃくった。両親の前ですら殆ど見せたことがない姿を、大切な人の前にさらけ出していた。
     トレーナーは彼女の頭を撫でた。いつもされるがままに甘やかされる行為を、目の前の幼子に対して。

     トレーナーはふと思う。いつものクリークであれば、撫で返してくるだろうか。しかし、いつまで経ってもそう返されることはない。
     彼女はトレーナーに寄りかかり、その優しさをいっぱいに受け止めているだけ。それでいいと、トレーナーは思い直した。
     

     この女の子は、自分に初めてをくれたスーパークリークなんだから。

  • 281523/03/16(木) 12:04:54

    以上です。ちょっと違っていたらすみません。

  • 29二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 14:59:41

    あ〜これは火力が高い、いい、すごくいい

  • 30二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 15:05:00

    どっちも素敵や…
    めちゃくちゃいい

  • 31二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 15:13:24

    ひとつ萌えポイントとしてクリークがその体を使って自分をアピールせずに自分の気持ちと言葉だけで勝負したのとてもいいと思う。安い色仕掛けを取らなかったの純情で好き

  • 32二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 18:32:26

    やっぱり甘えるクリークっていいよね

  • 33123/03/16(木) 19:31:31

    >>28

    ありがとう。とってもよかった

  • 34二次元好きの匿名さん23/03/16(木) 21:21:40

    そうだよクリークは普通の年頃の可愛い女の子なんだ

  • 35二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 09:06:18

    トレーナーがもうちょい大人じゃなくて
    幼馴染のお兄ちゃんくらいの年齢なバージョンも見たいです
    こう、小学生の時の掃除や集団登下校時の縦割り班でクリークが1年生の時の6年生の班長さんだった様な

  • 36二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 09:17:33

    >>35

    クリークが小さい頃から見守ってきたから余計にクリークが幼い頃の姿のまま写っていて、最初もクリークのわがままに付き合ってあげる幼少期のおままごとの延長線上みたいな感じだったけどクリークと過ごす時間が増えるたびに「なんかクリークのこと好きだな」って幼い子供を見る目ではなく1人の女性として見るようになってしまっていたって感じすかね?

オススメ

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