(SS注意)ホワイトデーの贈り物に意味があると知らないと相手を混乱させてしまうよねという話

  • 1二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 19:32:16

     冬の寒さも落ち着いてきて、少しずつ暖かくなってきて、春の訪れを感じる今日この頃。そんな良い日に俺は、トレーナー室で一人頭を抱えていた。顔を上げては下げてを繰り返している姿は、人から見れば滑稽なことこの上ないよな……。でも、それくらい俺にとっては大きな問題なんだ。
     ――担当ウマ娘へのホワイトデーのプレゼントが全然決まっていないのだ。きっとデキるトレーナーなら、バレンタインの日にはお返しを考えているだろうが、そんな風に完璧な気遣いはあまり出来ない。だからこそ、悩みに悩んでいるのである。
     少し気分を変えるために横を見たら、カレンダーが目に映った。ちょうど一週間後がホワイトデーかぁ……。見るんじゃなかったなぁ……。現実逃避はやめだ、真剣になれ俺!まずは考えをまとめよう。

    「手作りチョコは……どうかな……?」

     手作りチョコで返す……。ありではあるのか……?きっと彼女――キタサンブラックも喜んでくれるだろう。というか、下手なものじゃない限りは喜ぶよな……。でも……う~ん……。これには小さな問題がある。

    「もし手作りでやるなら良いものを渡したいよな……」

     そう、手作りでキタサンに贈るなら、彼女に並ぶものを渡したいと思っているのだ。彼女がくれたものは、大きなチョコ、キタサン型のチョコ、かりんとう饅頭と凝ってるものばかりだ。それに比べると……どうしても……う~ん……。中々いい考えが浮かばない……。
     このままでは埒があかない。手作りは一旦外そう。既存のもので良いものってなると……。高級品とかかな?いや、遠慮するに決まってるだろ……。仮に贈るとして何を贈るんだ?ペンダントとかか?……いいとは思うけど……。う~ん……。
     悩みに悩んだ結果、あることを思い出した。

  • 2二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 19:32:44

    「そういえばキタサンって、砂糖菓子を食べると止まらないだったかな……?」

     そんなことを、少し恥ずかしそうな顔で言っていたような……。正直その姿を見てみたいが……無理だろうな……。黙々と、にんじん焼きを食べてた時と、同じではあるんだろうか。
     まぁそれは置いておくとしよう。砂糖菓子自体は、砂糖を主原料とするものの総評のはずだ。それなら飴やキャラメル、もしくは金平糖がいいんじゃないか?……どこか短絡的な気がする……。これでいいのかな?いや、ここで迷ってる時間はないはずだ!

    「もうこの3つに絞ろう」

     まずは、見た目が良いものにするかな?飴や金平糖ってキラキラしていて、食べる前から楽しめるよな。キャラメルは……どうしても似たような色になってしまうんだよな……。正直惜しいけど今回は無しにしよう。
     飴と金平糖の2択か……。これは好みの問題だな。2つとも甘さで言えばバッチリだし、手に取りやすいのも共通している。こうなったら直感で決めよう。悩みに悩み抜いて何分だっただろうか。
     よし、星みたいで綺麗な金平糖にしよう!星のように輝く姿が、キタサンのようだったからそう決めることにした。

    「決めたからには買わないとな」

     本当なら、日にちを決めて買いに行くのがいいけど、悩んだせいでもう時間がない。今回は通販サイトでの購入にしよう。
     早速サイトを開いて、色んな種類の金平糖を購入するのを決めた。発送も充分間に合いそうだし、これでやっと安心出来る。
     そう思って力を抜いたら椅子の背もたれにもたれ掛かってしまった。……思ったよりも肩に力が入ってたんだな。何にせよ、これで後はホワイトデーを待つだけだ。
     それからの一週間は、特に何事もなく過ごすことが出来て、無事にホワイトデーを迎えることが出来た。

  • 3二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 19:33:08

     ホワイトデー当日。トレーナー室で予定を話し合った後、ホワイトデーのプレゼントを渡すことになった。……このときが一番緊張するよな。

    「キタサン、バレンタインは本当にありがとう。喜んで貰えればいいんだけど……」

     鞄の中で厳重に保管してあるプレゼントを取り出した。大切なものだから丁寧に扱わなきゃな……。
    キタサンに近づいてゆっくりと渡した。

    「気持ちがこもっていれば、何だって嬉しいですよ!こちらこそありがとうございます!」

     受け取った後に耳をピョコピョコさせながら、眩しい笑顔を見せてくれた。この顔を見るだけで本当に良かったと思える。

    「えへへ……嬉しいな……。何が入ってるのかな?トレーナーさん、これって中身は何なんですか?」
    「色んな種類の金平糖だよ」
    「え?」

     俺がそういった瞬間、キタサンの表情は一変した。何度かプレゼントと俺を見返した後、顔を真っ赤にさせてこちらを見ている。

    「えっと……あの……。ど、どうして金平糖を選んだんですか……?」

     何故か動揺している様子で、目もキョロキョロしてるし尻尾も忙しなく動いているキタサン。
     どうして金平糖を選んだのか……。そう言われると結構難しいな……。悩んだ末の決断だったし……。そうだなぁ……。

    「う~ん……。君が好きだと思ったからかな?」
    「す……好き!?!!?」

     何故か凄い反応になっている……。そんなに変なこと言ったかな?でもそうだよな……。俺が勝手に金平糖を好きだと思い込んでるだけなのは、間違いじゃないよな……。

  • 4二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 19:33:42

    「もしかして、金平糖嫌いだったか?」
    「そうじゃないです!そうじゃないですけど……。ど、どんなところが好きだと思ったんですか……?」

     ワタワタしながら動くキタサンは、どこか面白さを感じてしまう。
     とはいえ、キタサンからの疑問にしっかりと答えなくちゃな。好きだと思った理由か、そうだなぁ……。目を閉じて考えるといくつか思い浮かんできた。

    「先ずは見た目が綺麗だからかな」
    「綺麗!?!?」
    「キラキラ光ってて星みたいでいいよな」
    「お星様みたい……」

     少し視線が遠くなっている様子だが、その表情は嬉しそうで顔の赤みはますます濃くなっている。

    「小さくて少しコロコロしてるの可愛らしいよな」
    「可愛い?!!?」
    「ああ、見てて飽きないというか」
    「えへへ……見てて飽きないですか……」

     何故かキタサンが照れている様子だ。これって金平糖が好きな理由だよな?まぁ今はそんなに気にしなくてもいいかな。

    「後はそうだなぁ……」
    「は、はい……」
    「甘くて食べやすいからだな」
    「甘くて……食べやすい……?」

     俺がそう言うとキタサンは、口を少しだけ開いてどこかボンヤリとした様子になってしまっている。時間が止まったかのように微動だにしないキタサン。その様子を待つこと数秒。やっとキタサンは動き出した。

  • 5二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 19:34:07

    「トレーナーさん……それが好きな理由ですか?」
    「ああ、好きだと思った理由だよ」
    「えっと……。あたしって甘くて食べやすいんですか?」
    「?金平糖の話だろ?」

     頭に?が浮かんでいる様子のキタサンだが、それはこっちも同じだった。キタサンは、いつの間にか金平糖の話を、彼女自身の置き換えていたみたいだ。俺は何かおかしなことを言ったのだろうか?
     そんな風にお互いが混乱している時に、キタサンがふと何かに思い至ったようで、耳と尻尾がピクッと動き出していた。

    「もしかして……いやでも……」
    「どうしたんだキタサン?」


     何かが分かってしまった様子だが、俺は全く分からない。言い出そうかどうか迷っている様子のキタサンは、口を開いては閉じてを繰り返して中々言葉にできない様子だった。
     待つこと数分。遂にキタサンは口を開いた。

    「トレーナーさん……金平糖を贈るのに意味があるの知ってますか?」

     そんな言葉が俺に届いた。……………………。えっ?金平糖に何か意味があったのか?えっ?
     今度は俺のほうが動揺してしまい、視線を泳がせることしか出来なかった。その様子を見たキタサンは、納得した様子で少しだけ肩を下ろしていた。
    ま、不味い……。金平糖ってどんな意味なんだ?そう思うと怖くなってきた……。

    「ち、ちなみに、どんな意味なんだ……?」

     恐る恐る聞いてみると、ビクッと体を震わせているキタサンが目に映った。や、やっぱり不味い意味だったのか……。

  • 6二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 19:34:30

    「え、えっと……そのぉ……。うぅぅ……」

     何度も顔を上げては下ろしてを繰り返しているキタサンと、何も出来ずに待つことしかできない俺。そんな奇妙な光景は、何とか言葉に出来たキタサンが、打ち破ろうとしていた。

    「す、……き……って……み……す……」
    「す、すまない……。よく聞こえなかった……」

     キタサンにしては珍しい小さな声は、室内に溶けて消えてしまった。申し訳ないけどよく分からなかったから、恐る恐るもう一度聞き返そうとしたら、口をムッとさせながらこちらを見ていた。

    「だから!好きって意味なんです!」
    「そうか……好きって意味なのか……」

     室内に響く大きな声は今度は俺に届いた。そしてそれが悪い意味ではないことに少しだけ安心した。……………………。いや、待ってほしい。すき?隙じゃなくて?好きってあの好き!?

    「えっ!?好きって意味なのか!?!」
    「はい……場合によっては、あ……愛してる……みたいな意味にも……なるらしいです……」
    「あい……してる……」

     な、なんて物を渡してしまったんだ俺は……!全身から力が抜けてしまい、膝から崩れ落ちてしまった。その様子を慌てて見ているキタサン。そんな彼女に謝ることしか出来なかった。

    「すまなかった……!意味を知らなかったせいで、こんなに重いものを贈ってしまうなんて……」
    「あ、頭を上げてください!ほら!意味を調べて渡すヒトって、そんなに多くないですし!」

     ゆっくりと顔を上げると、忙しなく体を動かしながら必死にフォローしてくれるキタサン。本当にすまない……!これは確かに動揺させてしまうよな……!

    「それに、想いがこもっていれば、何でも嬉しいって言ったじゃないですか!あたしは、すっごく嬉しかったですよ!」
    「キタサン……」
    「あ、愛してると言われたのかと思って、ビックリはしましたけど……」

     流石に恥ずかしいのか、キタサンは目を背けてながら言っていた。そうだよな……。ホワイトデーでこれ渡すやつがいたら、そういう目で見てたってことになるもんな……。

  • 7二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 19:34:57

    「本当に申し訳ない……!」
    「ああ!違うんです、違うんです!責めてるわけじゃないんです!ど、どうすればいいかな……」

     オロオロしながら、ああでもないこうでもないと考えている様子のキタサンと、もう頭を下げ続けるしかない俺。暫くそんな感じで時間が過ぎていった。

    「う~ん……う~ん……。…………。はっ!そうだ!」

     何かを思いついたのかパチンと手を叩いたかのような音が聞こえてきた。何かあったのかと思い顔を上げると、悪そうな顔をしているつもりのキタサンがそこにいた。

    「トレーナーさんに罰を与えます!覚悟してくださいね……!」
    「何でも言ってくれ……!」

     少しだけニヤリと笑うキタサンだけど、あまり悪そうには見えないあたり性格が出ているようだった。とはいえ、俺が全面的に悪いので彼女の罰は何でも受け入れるつもりだ。我儘を全く言わない彼女だからこそ、こういうときに何でも言ってほしい。

    「まずは立ち上がってください!」
    「分かった……」

     ゆっくりと立ち上がり、キタサンが何をするのかを待つ。その様子を見たキタサンはゆっくりと俺に近づいている。そのまま、じわりじわりと俺に近づいてきたかと思えば、俺の体に抱きついていた。

    「き、キタサン……!?」

     動揺する心を何とか抑えてそう言うしかできなかった。そうしていると、キタサンがこっちを見上げてニッコリと笑う。

    「暫くこれで動けなくします!これがあたしからの罰です!」
    「……確かにこれは困ったな……。動けそうにない……。ちなみにどのくらい動けないのかな?」
    「そうですね……。あんまり長くするのは迷惑になっちゃうから……う~ん……」

  • 8二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 19:35:36

     力も全然入っていないから、抜け出そうと思えばいくらでも抜け出せる。でもこの罰は彼女の優しさそのものだ。抜け出そうという気持ちは全く起きなかった。
     罰だと言いながら、こっちの迷惑にならないことを考えてることに、思わず小さく笑ってしまう。

    「10分……は長いよね……。う~ん……5分……。そうですね、5分はこのままです!」
    「重い罰だな」
    「そうですよね!だからこれに懲りたら、今度はしっかりと調べてから渡してくださいね!」
    「ああ、ちゃんと意味を分かった上で渡すことを心掛けるよ」

     怒っているとは思えない暖かな声は、彼女らしさそのものだった。だからといって彼女の優しさに甘えてはいけない。彼女だから罰にならずに済んでいるんだ。貰ってばかりではなく、今度はこっちが返さないといけない。
    そんな風に思いながら、暫くの間穏やかな時を過ごすのだった。


    おまけ
    「ホワイトデーのお返しって、こんなに意味があるんだな……」
    「マシュマロとか美味しくて好きなのに、嫌いなんて意味があるなんて可哀想ですよね……。
    ……トレーナーさん。ちなみに何ですけど、意味を分かった上で渡すなら何を渡しますか?」
    「そうだなぁ……。キャラメルかな……」
    「……そうですか。……そっか。嬉しいな……」

  • 9123/03/17(金) 19:40:40

    Q ホワイトデーはもう終わってるのになんで今頃書いたの?

    A あるスレで1レス書いて満足してたからなのと途中で展開がまるまる変わったからです……


    ホワイトデーなら飴とか金平糖見たいな物が意味も含めて好まれるというのはすごく理解できます。ですが自分はキャラメルが一番好きです!キャラメルの意味が一番好きなのでこれからもキャラメルを推し続けていきたいと思います。


    こちらは今回の話に全く関係ありませんがバレンタインの話です。


    (SS注意)キタちゃんのバレンタインの話|あにまん掲示板今日はバレンタイン。時には愛を伝え、時には感謝を形にするための絶好の機会。ここトレセン学園でも友達同士で渡し合っていたり、トレーナー相手に感謝の気持ちを込めていたりと、見ていて微笑ましい気持ちになって…bbs.animanch.com
  • 10二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 19:49:28

    キャラメルだと「一緒にいると安心する」ですか 直球で好きというのもいいけどこういうのもいいね
    意味を知ってからキャラメルを選ぶっていうのがもうね最高だよね

  • 11二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 19:52:34

    せっかくだから良さげな金平糖のダイマをしますね

    えっ?お高い?担当のためなら少しくらい頑張れや

    緑寿庵清水www.konpeito.co.jp
  • 12二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 19:57:24

    まぁ身も蓋もないことを言ってしまうとマシュマロに込められた意味も
    元を辿ればホワイトデーにマシュマロ以外を売りたい百貨店が適当こいただけなんだけどな!!
    (諸説あり)

  • 13123/03/17(金) 19:59:31

    >>10

    キャラメルの意味いいですよね……

    安心という言葉がすごく好きなので他の人も是非この内容で書いてくれたらと思います!

    >>11

    綺麗でいいなぁと思って値段を見たら……凄いですね……

    ホワイトデーとか大事な日に贈ると考えるとこのぐらいは……何でしょうかね……

    >>12

    負も蓋もないこと言うとそうなんですよね……

    SSとかを書く上では書きやすいから使っちゃうけどお菓子に悪い意味を使うのは可哀想ですよね……

オススメ

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