- 1GMトンタッタ23/03/17(金) 21:27:32
- 2GMトンタッタ23/03/17(金) 21:28:23
- 3GMトンタッタ23/03/17(金) 21:30:02
- 4GMトンタッタ23/03/17(金) 21:30:44
- 5GMトンタッタ23/03/17(金) 21:33:00
早速戦闘フェイズを書きたいのれすが、GMはお風呂に入る時間れす
少々お待ちください - 6二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 21:36:55
立て乙れす
落ちないように10まで埋めておくれす - 7二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 21:52:38
支援埋め
この先どうなる - 8二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 21:56:49
たて乙れす保守するれす
- 9二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 22:07:13
コラさんローヴェルゴの3人だけの空間じゃなくてペンシャチベポもいるのはよかったかもしれん
- 10GMトンタッタ23/03/17(金) 22:31:16
ショックのあまり未だ呆然と立ち尽くすローを庇うようにして、ヴェルゴに立ち向かう。小さなあざらしと大きな鬼はあまりにも体格差があり、力の差は歴然……のように見える。
だが、コラソンはそんなことで萎縮するようなオバケではなかった。ローの“親代わり”として今まで様々な困難を乗り越えてきた、そして守り続けてきた彼が、敵対するハグレオバケに背中を向けるわけがない。
「シャチ、ペンギン、ベポ!ローのことは任せた!」
「あっ、あいあい!」
コラソン 攻撃
dice2d6=1 3 (4) (9以上で成功、お助け力使用により+1の修正)
- 11二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 22:34:31
かっこいいシーンなのに相変わらずダイス運がいかん…!
- 12GMトンタッタ23/03/17(金) 22:42:29
(正直泥試合の予感しかしないれす)
コラソンの魔力17→16
コラソンの攻撃はいとも簡単にヴェルゴに避けられてしまう。
……それもそうだろう、ヴェルゴは今まで訪れた町々で子供やオバケたちを襲ってきた。ゾウの町でベポを襲った張本人である。つまり、戦闘は彼の最も得意とする分野だ。
「その程度かロシナンテ!」
「クソ……!」
ヴェルゴ 攻撃
dice2d6=3 6 (9) (9以上で成功、お助け力使用により+1の修正)
成功の場合、コラソンにdice1d6=6 (6) +2のダメージ
- 13GMトンタッタ23/03/17(金) 23:00:10
コラソンの魔力16→8
「ぐあっ……!!」
ヴェルゴの容赦ない拳がコラソンに突き刺さる。モロに受けてしまったのか、小さなあざらしの体が手術室の壁まで吹っ飛んだ。
風を切る音と苦しそうな呻き声。その声に項垂れていたローは思わず目を見開き、シャチたちの静止も無視してコラソンに駆け寄った。
「っコラさん!」
「……わ、悪いな、ドジっちまった。でもまだおれはやれる!」
そう言ってコラソンは安心させるように笑顔を浮かべた。だが、幼い頃から彼と親子のように過ごしてきたローにはわかっていた。彼の今の笑顔は、痩せ我慢をしている取り繕った笑顔だということくらい。
「……おれがあいつの弱点を探ってみる!それまでコラさんは耐えてくれ!」
ロー ひみつを暴く《推理/大人6》
dice2d6=2 5 (7) (ウソつきから判定、8以上で成功)
- 14GMトンタッタ23/03/17(金) 23:06:37
ローの眠気 6→7
「チッ……あと少しだっていうのに……!」
コラソンが傷ついた焦りからか、それともまだショックが抜け切っていないのか。鬼のヴェルゴの弱点を探るのは難しく、ローは眉間に皺を寄せる。
もう少しで弱点がわかるような気がしたからか、尚のこと悔しかった。
「コラさん、もう少し耐えられるか!?」
「大丈夫だ!言っただろ、おれはまだやれる!」
コラソン 攻撃
dice2d6=2 6 (8) (9以上で成功)
- 15GMトンタッタ23/03/17(金) 23:07:01
さっきから1足りないれす!!!!!!!
- 16二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 23:07:26
妖怪1足りないの出番が多いな
- 17GMトンタッタ23/03/17(金) 23:21:54
コラソンの攻撃をいなしたヴェルゴはすぐに拳を硬く握る。
殴られる、とコラソンは体を強ばらせたが、何故か拳が飛んでくることはなかった。そろそろと目を開けると、眩しいくらい白い毛がコラソンの視界に飛び込んでくる。
「ベポ……!?」
「お、おれ、記憶とかファミリーとかよくわかんないけどさ!この町に来たばっかで心細かったとき、コラソンが声をかけてくれてすっごく嬉しかったんだ!」
コラソンにとっては、なんでもない行動だ。所在なさげなオバケが放っておけなかっただけ、それだけの理由で話しかけた。
「守るよ!友達だから!」
仲間がおらず不安でいっぱいだったベポには、それが救いの手だった。
仲間効果
ベポ 魔法《しっぽをたてろ!》使用
dice1d6=5 (5) サイクルの間、ダメージを1点軽減
ヴェルゴ 攻撃
dice2d6=5 4 (9) (9以上で成功)
成功の場合、コラソンにdice1d6=3 (3) +2のダメージ
- 18GMトンタッタ23/03/17(金) 23:36:19
「コラさん!」
「っ大丈夫だ、大丈夫……」
ぼろぼろになったコラソンにローは駆け寄る。魔力が尽きかけているのだろう、息も絶え絶えの様子だ。ローは慌てて傷を看ようとするが、その様子をヴェルゴは冷たい言葉で弾圧した。
「理解できないな。自分の記憶を操作していた奴を心配するなんて」
「うるせェ!そうだとしてもおれにとってコラさんは……離したくない人なんだ!」
激昂したローが、ヴェルゴに向かって吼える。思わず零れ出た涙が、ぽたりとコラソンの頬に伝った。
ロー 命を捧げる
コラソンの魔力 dice2d6=2 6 (8) 点回復
- 19二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 23:49:29
涙で魔力回復はチユチユの実みたいで素敵れすね
- 20GMトンタッタ23/03/17(金) 23:52:53
ローの元気5→4
コラソンの魔力4→12
「! 魔力が湧いてくる……」
ローの涙が触れた途端、底を尽きかけていた魔力が湧き上がっていくのを感じた。
イノセントはその身を捧げることで、スプーキーの魔力を回復させることができるとは聞いていたが、この回復量は格別だ。ローの体質によるものだろう。ヴェルゴが……ドフラミンゴがローを欲しがる理由も頷ける。
「その力……やはりドフィに与えるべきだ!」
「させるか!!」
コラソン 攻撃
dice2d6=2 5 (7) +1(9以上で成功、お助け力使用により+1の修正)
成功の場合、ヴェルゴにdice1d6=6 (6) +1のダメージ
ヴェルゴ 攻撃
dice2d6=4 6 (10) -1(9以上で成功、お邪魔力使用により-1の修正)
成功の場合、コラソンにdice1d6=3 (3) +1のダメージ
- 21GMトンタッタ23/03/17(金) 23:53:21
ここのダイスはDV気質なんれすか?
- 22二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 23:58:38
辛コラさん半身アザラシのセイレーン的なやつ想像してるけど辛っ
- 23GMトンタッタ23/03/18(土) 00:06:58
「うおっ!?……あ、あれ?」
「よっと!……ローさん、コラさんのことはおれたちに任せてください!」
「早くあんな奴やっつけちまえ!」
いつの間に移動していたのか、シャチとペンギンが攻撃によって吹っ飛んだコラソンを抱きとめる。そして、あざらしを抱えたままヴェルゴから逃げるようにして部屋中を駆け回った。
芸術的な寝相で呑気に寝ている2人を知っているローは、普段との違いについ口元を緩めてしまう。
「あァ、頼んだ!」
ロー ひみつを暴く
dice2d6=3 6 (9) +1(ウソつきから判定、8以上で成功、お助け力使用により+1の修正)
コラソン パス
dice1d6=5 (5) 点魔力を回復
- 24二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 00:08:10
ダイス神がデレた!!
- 25GMトンタッタ23/03/18(土) 00:22:29
コラソンの魔力5→10
「いい加減にしろ!」
「うわっ!?おれらごと潰す気かよ……!!」
ヴェルゴの黒光りする拳がシャチたちの足元を掠めると、ただでさえ耐久力に不安のあった床が崩れ落ちる。冷や汗が背中に垂れ、足が縺れて転びそうになるも、2人はなんとか体制を整える。
ローが自分たちのために廃病院を訪れていることを、2人はなんとなく察していた。あの夜、ローが自分たちを止めてくれたおかげでこのオバケに襲われずに済んだということも。
「ローさん!どうですか、何かわかりました!?」
「あァ、わかった。ヴェルゴの弱点が!」
「へへっ、流石!」
ヴェルゴの弱点 【マナー/大人5】
弱点が判明したので、合体攻撃!を行うことができます
ヴェルゴ 攻撃
dice2d6=3 6 (9) (9以上で成功)
成功の場合、コラソンにdice1d6=5 (5) +2のダメージ
- 26二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 00:28:14
ヴェルゴ強すぎるな
なんだコイツ - 27二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 00:30:22
何こいつ
- 28二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 00:34:47
ヴェルゴ鬼強え!
- 29GMトンタッタ23/03/18(土) 00:35:48
ベポランドの魔法があったのでダメージは6れす!でもヴェルゴの判定ばっかり成功するのおかしいれす!
コラソンの魔力10→4
「ぐっ!!」
「うおっ!?わ、悪いコラさん!」
「大丈夫か!?」
避けきれなかったヴェルゴの拳がコラソンの頬を掠める。満身創痍の彼には、それだけで重いダメージになるのだろう。顔を顰める彼に、シャチとペンギンは不安げに声をかける。
そんな弱々しい子供の声に“だめだ”なんて格好悪いことが言えるはずもなく、コラソンは胸を張ってにこりと笑いかけた。
「心配かけてすまねェ!おれは平気だぜ!」
コラソン パス
dice1d6=5 (5) 点回復
- 30GMトンタッタ23/03/18(土) 00:54:43
コラソンの魔力4→9
「コラさんが危ねェ……!まずはおれが攻撃しねェと!」
ベポの魔法である程度はダメージが軽減されているものの、このままでは全滅も有り得るだろう。そうなればコラソンは仕留められ、自分たちは魂と魔力を奪われてしまう。そんなこと、絶対に嫌に決まっている。
ローはありったけの力を全身に込める。そして先程突き止めたヴェルゴの弱点を使い、攻撃しようと身構えた。
ロー 攻撃《マナー/大人5》
dice2d6=4 5 (9) (ウソつきから判定、7以上で成功)
成功の場合、ヴェルゴに1のダメージ
ヴェルゴ 攻撃
dice2d6=1 1 (2) (9以上で成功)
成功の場合、ダメージ無効
イノセントは《けんか/不良12》かオバケの弱点を使うことで攻撃ができます(ダメージは1で固定れす)
- 31二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 00:57:11
おお…今までの反動の様に…
- 32GMトンタッタ23/03/18(土) 00:58:45
あっヴェルゴがファンブルれすね
ヴェルゴはオバケなのでdice1d6=5 (5) 点魔力が減少れす
- 33GMトンタッタ23/03/18(土) 01:01:40
今まで攻撃できなかった分、これは大きいれすね!!
キリが悪いれすが今日はここで終わりれす……おやすみなさい……
ちなみにヴェルゴの弱点がマナーなのはいつも頬に何かしらを付けているのがマナー違反だと思ったかられす - 34二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 07:33:22
シリアスな戦闘だけどちょっと笑った
- 35GMトンタッタ23/03/18(土) 11:26:30
- 36二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 19:55:53
wktk頑張れ!
- 37二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 21:43:57
このレスは削除されています
- 38GMトンタッタ23/03/18(土) 21:44:46
ダイスミスれす……
ローの攻撃が魔力を蝕み始め、ヴェルゴは咄嗟に防御体制をとる。しかし、因果は巡り巡ってハグレオバケに報いを与える。彼が先程空けたばかりの床の穴が、思いがけない障害となったのだ。
「でかい図体じゃ動きにくいみてェだな!」
「ローさんすげェ!」
「やっとあいつにダメージが通った……!」
やっと一矢報いることができた喜びから、ローはニヤリと不敵に笑う。それに答えるように仲間たちも歓声を上げた。
ヴェルゴ 攻撃
dice2d6=5 2 (7) -1(9以上で成功、お邪魔力使用により-1の修正)
成功の場合、コラソンにdice1d6=5 (5) +1のダメージ
- 39GMトンタッタ23/03/18(土) 22:33:36
コラソンの魔力9→8
喜びに打ち震えている間にも、ヴェルゴの拳は降り止まない。しかし、その歓喜により元気の源が湧き出てきたのか、少年たちは軽やかに攻撃を躱した。
その勢いでシャチの腕から飛び出したコラソンは、あざらしとは思えないほど華麗に着地する。ちょうどローの足元だ。
「コラさん、もう休まなくていいのか?」
「あァ。いくぞロー、一緒に攻撃だ!」
ロー&コラソン 合体攻撃!《マナー/大人5》
dice2d6=4 5 (9) 、dice2d6=1 4 (5) (ウソつきから判定、7以上で成功)
成功の場合、ヴェルゴにdice2d6=2 6 (8) +1のダメージ
- 40GMトンタッタ23/03/18(土) 22:37:30
合体攻撃!成功れす!
合体攻撃って?
・2人の力を合わせて行う攻撃れす
・それぞれが2D6を振り、その4つのダイスから好きな2つの目を選び、その合計値で判定します
・合体攻撃!をするには相手の弱点が判明していなければなりません
・成功でも失敗でもイノセントは【元気】を1つ失います
そして!今回は4と4でゾロ目れす!
ゾロ目が出ると心が繋がったものと見なし、ダメージが2倍れす!! - 41二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 22:47:45
心が繋がるってこの2人だとよりグッとくるな
- 42GMトンタッタ23/03/18(土) 23:22:49
「ピーカーブー!!」
そのかけ声と共に契約者たちの力が共鳴する。人間の子供とオバケの歪だが強固な絆が、2人の心を繋げる。ローの胸の内が燃えるように熱くなる。それはコラソンも同じこと。無いはずの心臓が凄まじいスピードで高まっていくのを、コラソンは感じていた。
「絶対に守り抜く……!!」
ずっと傍にいた契約者であるロー。そしてローが大切にする家族のシャチとペンギン。自分の新たな友のベポ。
ずっと秘密にするつもりだったことが明るみに出るとわかっていても、どれだけ痛めつけられても、コラソンがしっぽを巻いて逃げることをしなかったのは。
それでも大切なものを守りたかったからだ。 - 43GMトンタッタ23/03/18(土) 23:52:40
眩しい光がヴェルゴを襲い、その魔力を限界まで削ぐと、徐々に彼の体が小さくなっていく。
「!! ロー、ロシナンテ……!」
どさりと音を立てて、ヴェルゴは膝から崩れ落ちる。その姿に鬼の面影などほとんどなく、小人のようなコバケ状態に陥っていた。辛酸を舐める表情を浮かべてヴェルゴは一同を睨めつけるが、先程まで彼の強さに打ち砕かれようとしていた子供たちはもうどこにもいない。
「よ、よくもゾウの町を襲ったな……!」
「ローさんとコラさんから離れろ!」
「こんなに小さくなったお前なんて怖くねェ!」
この場にいる誰も彼もがヴェルゴを打ちのめさんと、勇猛にそして果敢に立ち塞がった。絶対に奪わせないという決意が辺りに立ち込めていた。 - 44GMトンタッタ23/03/19(日) 00:30:03
「くっ……」
悔しそうに歯噛みし、ヴェルゴは一同を見上げた。ローは相変わらず彼を凍てつくほど冷たい目で見下ろし、コラソンもそんなイノセントを庇うように振舞っている。
……コラソンは血の掟で固められたファミリーを抜け、他でもないドフィを裏切った。それにも関わらず大切なものを守りたいだなんだと宣う姿が、憎くて憎くて仕方がなかった。だが、魔力が底を尽きたヴェルゴはコラソンに危害を加えることはできない。情けなく捨て台詞を吐くので精一杯だった。
「ロシナンテ!裏切り者がこのまま野放しで済むと思うな!お前を、そしてローを捕らえるためにファミリーは何度でも手を伸ばす……!!」
乾いた笑いが病院中に響き渡り、ヴェルゴが黒い霧に包まれる。黒い霧が晴れる頃には、彼の姿は影1つも見当たらなくなっていた。 - 45GMトンタッタ23/03/19(日) 00:32:34
これにて戦闘フェイズは終了、今夜はここまでとさせていただきます
明日(もう今日れすが)はエピローグを書いてセッション終了になる予感がするのれす - 46二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 01:45:52
お疲れ様れす
ヒヤヒヤしたけど最後は協力して倒すというロマンチックな展開でとても面白かったれす
エピローグも楽しみれす - 47二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 10:38:15
もし次のセッションがあれば是非見たいれす
ローの記憶の謎コラさんの秘密が明かされて欲しいれす - 48二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 19:23:04
エピローグwktk待機
- 49二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 20:27:10
次のシナリオもみたいです!
- 50GMトンタッタ23/03/19(日) 20:38:00
「……お、終わったんだよね?」
長い沈黙を打ち破るようにベポが呟く。それを皮切りにして、一同は緊迫感のあまり疎かになっていた呼吸を取り戻した。
「あー!走りすぎて疲れた……」
「おれも足ガックガクだ……」
ぷつりと緊張の糸が途切れると、それぞれにドッと疲労感がのしかかる。特に終始ヴェルゴの相手をしていたコラソンの疲れは他とは比にならず、彼は斑模様のカーペットのようにべたりと床に這いつくばった。長い舌をちろりと出して呼吸を繰り返す姿はどことなく犬を想起させる。
ローはコラソンの隣に座り込むと、その顔をじっと見つめた。 - 51GMトンタッタ23/03/19(日) 21:25:50
コラソンも同じようにしてローの顔を見つめ返す。
出会った頃に比べて少し大人になった自分の契約者。まだ小学5年生という幼い年齢の彼に、今日だけで色々な重荷を背負わせてしまった。そうさせてしまった自分が情けなくて仕方がなかった。
「……ロー、すまねェ」
「すまねェって、何がだ」
「お前の記憶を弄ったこと、そして今までそれを黙っていたことだ」
“本当にすまなかった”とコラソンは何度も口にする。ローの信用を裏切る行為をしてしまったのだから自分は何をされても文句は言えない。許されるつもりも彼には毛頭なかった。 - 52GMトンタッタ23/03/19(日) 21:52:31
だが、ローは違った。
「おれを守るために記憶を消したんだろ?…………なら、いい」
いつもの大人びている表情とは全く違うからりとした子供っぽい笑顔を浮かべて、コラソンの罪を肯定した。予想だにしなかった反応を投げかけられ、コラソンは目を丸くし幾度か瞬きを繰り返す。
「ロー……」
「帰ろう、コラさん」
頻りに“ローたちを守る”と言っていたコラソンの言葉。魔力の危機が迫っていてもその姿勢は変えず、ヴェルゴに立ち向かった姿。そして今までの思い出。
ローがコラソンを信用するにはそれで充分だった。 - 53GMトンタッタ23/03/19(日) 22:12:08
「それにしても、ベポ!お前って魔法が使えるんだな」
「あァ、あれな!かっこよかったぜ」
「えっ、本当に?」
弾むような足音を鳴らしながら、一同は家へと帰るために病院の廊下を歩き出す。わいわいと楽しげに言葉を交わすシャチたちとは対照的にローとコラソンの間に会話はなかったが、それでも暖かな空気が流れていた。
そして全員は、トラファルガー病院から1歩外に出た。 - 54GMトンタッタ23/03/19(日) 22:29:01
すると、途端にシャチたちが騒ぎ出す。
「あれ!?コラさんとベポがいなくなった!」
「おれも見えねェ!」
「嘘、見えなくなっちゃったの!?」
普通の小学生であるシャチとペンギンにはオバケ屋敷でしかオバケを見ることができない。
“折角友達になれたと思ったのに!”と3人は悲嘆する。廃病院を後にするまでの短い間だったが、先程まで一緒に行動していた友人が見えなくなった焦りは抑えきれなかった。 - 55GMトンタッタ23/03/19(日) 22:45:10
「おい、お前ら落ち着け」
「ベポもそう泣きそうな顔するなって」
見かねたローとコラソンが3人をたしなめようと声をかける。しかし、そんな心配をあっさりと裏切るように、シャチとペンギンは笑顔を浮かべた。
「……でも、見えなくなっても友達だよな?」
「だってそこにいるんだろ、コラさん!ベポ!」
どうしてなのかはわからない。だが、シャチとペンギンは見えていないはずの2人をしっかりと見据えて笑いかけた。オバケたちはぽかんと互いの顔を見合わせ、そして口元を緩ませて締りのない表情を浮かべた。 - 56GMトンタッタ23/03/19(日) 23:07:04
家に帰る道すがら、5人は会話を交わしながら歩いた。と言っても、ローはほとんどをオバケが見えないながらも話をするシャチたちの通訳に費やしていたのだが。
それでも、疲労感と緊迫感でで支配されていた身体にはちょうどよく、友人との会話は凝り固まった心を解していった。
「オバケの友達とか、あんな冒険とか、おれ初めてだ!」
「おれも!疲れたけど楽しかった」
「おれ、今日だけで3人も人間の友達ができて嬉しい!」
絶えず笑顔を浮かべる3人に、ローとコラソンは釣られて笑みを浮かべる。
つばめの里まであと少し。暗くなっていく空を見上げれば、一際輝く一番星が仲間たちを見守っていた。 - 57GMトンタッタ23/03/19(日) 23:08:02
ご近所メルヒェンRPG ピーカーブー
シナリオ「オバケのシルシは真っ白け」 おしまい - 58GMトンタッタ23/03/19(日) 23:12:16
これにてセッション終了れす!
拙い文章れしたが、約10日間もお付き合い頂きありがとうございました!
きっとつばめの里に帰ったみんなは大盛りご飯を食べて泥のように眠るでしょうローランドはコラランドから記憶について話されるかもしれませんね - 59二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 00:46:21
イッチ乙!!めちゃくちゃ面白かった!!
ワンピカテでサイコロフィクション見られて我は満足でござる(ニッコリ) - 60二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 06:51:18
毎日面白かったれす!イッチありがとうなのれす!
コラソンのダイス運にヒヤヒヤしたけどハッピーエンドで良かったれす
もし次のシナリオもあるなら是非見たいれす - 61二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 15:04:27
凄いいセッションだった!ここ最近の楽しみでした!
- 62GMトンタッタ23/03/20(月) 19:17:29
暖かいレスありがとうございます!こちらこそ楽しく書かせていただきました!
初めはベポランドだけがパーティに加わる予定だったのれすが、いつの間にかシャチランドとペンランドも加わっていました……おかしいれすね……でも結果的にエンディングを明るくすることができたのでいてくれて良かったと思います - 63二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 19:18:08
消された記憶も気になる……めちゃくちゃ面白かった!
- 64GMトンタッタ23/03/20(月) 19:26:09
ローランドの記憶は描写するか検討中れす
本当は今回のシナリオ中に書けたらよかったのれすが、そうするとぐだぐだしそうだったんれす……新セッションでするにもかなり短くなりそうなのでSSのみで良ければ書こうかなとは思ってます - 65二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 20:41:32
どちらでもとっても嬉しいです!
スレ主の好きな方でどうぞ! - 66二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 06:45:52
スレ主の文章好きだから楽しみ
- 67二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 15:30:44
ローの過去がわかるのすごく楽しみ!
- 68GMトンタッタ23/03/21(火) 18:17:54
ありがとうれす!
セッションではなくSSのみれすが、今日からまたぼちぼち書き始めていこうと思います - 69GMトンタッタ23/03/21(火) 18:18:40
「……な、なんだよ、その子供……」
身体のあちこちに怪我をした子を、それはそれは大事そうに両の手で抱える兄。そのやけに丁重な手つきにロシナンテは思わず顔を歪める。
兄は人間嫌いのオバケだ。そんな兄がわざわざ人間の子供を攫ってきた。そして、この匂いは……。
「フッフッフ、お前にもわかるか。……美味そうな匂いだ」
元々の体質なのか、その子供はオバケにとってご馳走のような存在だった。たったひと舐めするだけで大量の魔力が得られそうなほどには。 - 70GMトンタッタ23/03/21(火) 18:51:21
「わかるだろ、ロシー。おれがオバケの王になるにはこいつの才能が必要だ」
やはり、そうだったか。ロシナンテの背中に冷や汗が滲む。
「そいつの家族は?」
「孤児だ」
「……そうか」
あたかも“これならなんの問題もないだろう”とでも言うかのように、兄は口角を釣り上げる。
恐らく兄はこの子供を自らのイノセントとして育て上げるつもりだ。魔力を補充するための都合のいい存在にしか見ていないなのか、はたまた親のいない子供に同情したのかは定かではないが……。 - 71GMトンタッタ23/03/21(火) 19:29:49
ぼろぼろのベッドの上で死んだように眠る少年の顔を、代わる代わるに見つめるオバケが2人。大きなリボンをつけた少女のぬいぐるみと特徴的な喋り方の車のオモチャは、内緒話にも似た会話を交わす。
「全く起きないわね」
「もしかして死んでるんじゃないか?全然動かないだすやん」
「ええっ!じゃあ若様のイノセントになれないじゃない!」
悲愴感のある会話にも関わらず2人はきゃらきゃらと笑い、少年の頬を摘んだり腹をつついたりして好き放題に弄ぶ。
それだけ騒がしくしていれば少年が目覚めるのは必然のこと。“うう……”と短い呻き声を上げた少年は、オバケたちが気付かぬ間に瞼を開けた。 - 72GMトンタッタ23/03/21(火) 20:05:17
「…………誰だ、お前ら……」
掠れた声で呟くと、オバケたちは一斉にこちらを振り返る。ぬいぐるみのボタンと車のライトの視線が降り注ぎ、生命を感じさせない眼差しに少年は居心地が悪くなる。
オバケたちは少年の問いに答えることもなく、賑やかにはしゃぎ、そして部屋を飛び出してしまった。
「起きただすやん!」
「若様に報告しないと!」
「あっ、おい!……なんなんだ……」
1人取り残されたローは、部屋内をゆっくりと見渡した。
誰もいないぼろぼろの部屋。見たこともないオバケたち。そして、独りぼっちの自分。
「……そういえば、父様は?母様、ラミも……!」 - 73二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 20:29:57
ヒェッ初っぱなからこわぁ
- 74GMトンタッタ23/03/21(火) 21:42:18
さっきまで一緒にいたはずの家族がどこにもいない。
『えーっと……次の信号を直進か』
『遊園地楽しみ!私ね、お兄さまと一緒にメリーゴーランドに乗りたい!』
『め、メリーゴーランド?……わ、わかったよ』
『良かったわね、ラミ』
父が運転する車に乗り、窓の外を眺めては“早く着かないかなあ”と目を輝かせる妹。それに対して“落ち着けよ”と窘める自分。そして、その光景を穏やかな眼差しで見守っていた母。
……遊園地まであと少しのところで、ああ、そうだ。
横からトラックが突っ込んできたんだ。 - 75二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 21:42:49
うわぁ……
- 76二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 21:51:35
既に泣きそう…
- 77GMトンタッタ23/03/21(火) 22:14:02
「あ、ぁ……うわあああああ!!ラミっ!父様、母様っ……!」
信じられない。信じたくない。あんなのタチの悪いオバケが見せた悪夢に違いない。頭を掻きむしって、脳内で何度も何度も否定して、それでも瞼の裏に焼き付いた凄惨な光景は離れなかった。
赤だ。嫌になるほど鮮やかな赤い色が視界を染めていた。
「なんで……」
町1番の医者で、いつも勉強を教えてくれて、ずっと目標にしてきた父も。
笑顔が誰よりも優しくて、怒るとびっくりするくらい怖くて、家族想いの母も。
幼い頃から病弱で、体についた白斑と点滴の跡が痛ましくて、母親譲りの薄茶色の髪が綺麗で、無邪気で可愛い妹もいない。
「なんでだよ……」 - 78二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 08:09:35
ヒエッ悲しい
- 79二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 12:45:07
ロー…
- 80二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 20:12:12
だから記憶を消したのかな?
- 81GMトンタッタ23/03/22(水) 22:52:43
ごめんれす今日無理そうれす
明日は絶対に書きます - 82二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 06:53:52
保守してるので、焦らないでくださいね
- 83二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 15:32:16
ゆっくり待っているので気にせずに
- 84GMトンタッタ23/03/23(木) 19:49:45
保守と暖かい言葉感謝れす!
相変わらずマイペースれすが書き始めます!
余談れすがドフラミンゴの見た目をどうするかが悩みどころれす……コラランドと同じあざらしにするか糸繋がりで人形にするかそのまま夜叉かそれともフラミンゴか…… - 85GMトンタッタ23/03/23(木) 19:53:08
「なんで?そんなの決まってるでしょ?」
「人間が悪いからだすやん」
「! お前ら、さっきの……」
いつの間に戻ってきたのか、ぬいぐるみはそう言うとベッドの上にぴょんと飛び乗る。後からついてきた車もぬいぐるみの言葉に頷き、部屋をぐるぐると旋回した。戸惑うローを全く意に介さず、2人は芝居がかった口調で話し始めた。
「私たちはね、人間に襲われたのよ!」
「そのせいで居場所を奪われだすやん!」
「ね!人間って悪い奴でしょう?」
そんなことを言われても、というのが感想だ。イノセントでもないローにはオバケの事情なんてわからないし、友好的なオバケばかり見てきたからかどうにもピンとこない。
……それに、自分とその家族までもが悪く言われているようで素直には頷けなかった。 - 86GMトンタッタ23/03/23(木) 20:25:34
「あんたもわかるでしょ?人間が悪いってこと!」
「お前が独りぼっちなのも、人間のせいだすやん!」
何よりも大切なものを失ったばかりのローには、彼らの“人間が悪い”という言葉は凶器そのものだった。大好きな家族への罵詈雑言にも取れる発言を畳み掛けるように言われれば、それを見過ごすことなどできなかった。
たとえそれが、過去に人間に酷いことをされたオバケの発言だとしても。
「黙れ!……お前らにおれの家族の何がわかる……!」
「!!」
威嚇する野犬の如く、歯を食いしばって睨みつける。そのあまりの剣幕にぬいぐるみは恐れをなしたのか、車にしがみついてしくしくと涙を流す。ボタンの縫い目が涙で濡れていた。 - 87GMトンタッタ23/03/23(木) 20:52:54
「お前ら落ち着け」
「っ誰だ!」
取り乱すオバケたちを窘める声が聞こえ、ローは咄嗟に振り返る。部屋の入口に奇抜なサングラスをかけたオバケが不気味な笑みを携えて佇んでいた。そのオバケを一目見たぬいぐるみと車はパッと表情を明るくさせ、ローの元から一目散に逃げ出す。
「若様!」
“若様”と呼ばれた彼はもったいぶった動きでローへと近づき、大きな口をにんまりと釣り上げた。いい意味でも悪い意味でもオバケらしい仕草にローの背中に悪寒が走る。
(若様?あのオバケがこいつらのボスなのか……?) - 88GMトンタッタ23/03/23(木) 21:31:48
「ベビー5とバッファローが悪かったな。以前人間に手酷くやられたのが相当堪えているらしい」
“悪かった”と謝る割に、そのオバケは笑みを浮かべたままだ。もはや笑顔が染み付いているのではないかと疑ってしまうほどには表情を崩さない。
先程まで心無い言葉をかけられていた反動もあり、ローは無言でオバケたちを睨みつける。
「…………」
「フッフッフ、そう怒るな。おれたちはお前の敵じゃねェ」
ローに睨みつけられても尚、サングラスをかけたオバケは笑みを貼り付けたままだった。 - 89GMトンタッタ23/03/23(木) 22:00:41
「ちょっとあんた!若様は死にかけのあんたを助けてくれたのよ!」
先程までめそめそ泣いていたぬいぐるみが“そんな態度取っていいと思ってるの!?”と激昂する。騒がしいその声に再び睨みを効かせれば、彼女はまた車の陰に隠れてしおらしく涙を流した。
その姿にやりにくさを感じつつも、ローは彼女の恩着せがましい言葉に引っかかった。
「お前がおれを助けた……?」
「それほど大したことでもねェ。仲間に怪我を治させただけだ」
「父様たちは……」
「……おれが来たときには手遅れだったな」
笑顔だったオバケが途端に真顔になる。彼の静かな言葉に、ローは“そうかよ”と呟くことしかできなかった。 - 90GMトンタッタ23/03/23(木) 23:06:57
……自分の居場所が無くなってしまった。
もしこの部屋に誰もいなかったら、ローは大声を上げて泣きじゃくっていただろう。滝のように涙を流し、無念とやるせなさと絶望に打ちひしがれていたはずだ。オバケたちがいるから、ローは泣けなかった。
「行く宛てがねェならしばらくここにいるといい」
「…………いいのか?」
「こいつらも同じようなものだからな。お前の好きにしろ」
相変わらずサングラスのオバケは笑みを絶やさない。普段であれば、このような甘言には乗らず、手を振り払っていたはずだ。
だが……幼くして家族全員を喪ったローは新しい居場所が欲しかった。もうすぐで齢10歳になろうとする少年が孤独を選ぶことなどできなかった。
「……ローだ。おれの名前……」
「よろしくな、ロー。フッフッフッフッフ!」
目の前のオバケの本心を知る由もなかったから、手を取ってしまった。 - 91二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 07:18:38
ローを泣かしてくれるのはコラさんだけなんれすね
ミンゴがコラさんと同じアザラシ…このお話の中でもこうペタペタ這って移動してると思うとそりゃ警戒も緩んでしまうれすよ
個人的にはミンゴの姿もダイスで決めてほしいれす - 92二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 12:54:26
ヴェルゴに遭遇してからを読み返したけどローはドフラミンゴとファミリー達に会ったことも忘れてるっぽい?
結構な期間の記憶消してるのかな - 93二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 12:56:20
上半身は普通だと思って想像してるけど他がガッツリお化けな見た目の中コラさんだけ下半身アザラシでぺたぺたしてたらそりゃ癒されそうだな……
- 94二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 20:15:29
兄弟揃ってアザラシでもいいし、兄弟別の姿でも良さそう
- 95GMトンタッタ23/03/24(金) 20:51:03
ドフラミンゴの姿はまだ保留しておきます
あざらしか完全ランダムが良さそうれすね - 96GMトンタッタ23/03/24(金) 20:55:16
かくして、ローは人間嫌いのオバケが集まるドンキホーわテファミリーの一員になった。初めこそオバケたちは突如現れた人間の少年に憎悪の籠った目を向けていたが、日々を重ねるうちにローに対する態度が柔らかくなっていった。
しかし、そんな中でもローへの対応を軟化させないオバケが1人。ドフラミンゴの弟であるコラソンは、いつまで経っても氷のように冷たい視線を向けてくる。
「コラソン?あァ、あいつは他の奴に比べても特に人間が嫌いでな……」
「お前、そのうち魂でも取られるんじゃねぇか〜?べへへっ!」
淡々と説明するピーカの横で、下品な笑い声を上げたトレーボルが“気をつけろよ〜?”と煽る。粘液でできたべとべとのスライムが、ローの顔を指さした。 - 97GMトンタッタ23/03/24(金) 21:53:31
べちょりとトレーボルの粘液が床に落ち、足元まで流れてくる。それを避けたローをトレーボルはせせら笑う。その様子を見ていたピーカが、“そういえば”と思いついたように呟いた。
「お前と同じだな」
「……おれと同じ?」
予想だにしなかった言葉にローは顔を上げる。続けて話し出そうとしたピーカを遮るように、トレーボルが口を挟む。変わらず粘液を分泌しながらニヤニヤとした笑顔を浮かべている彼は、意気揚々と口を開いた。
「あァ!お前と同じで、ドフィとコラソンは家族を人間に殺されたんだからな」
「……え」
家族を、人間に? - 98GMトンタッタ23/03/24(金) 22:33:54
「オバケ狩りって知ってるか?オバケを根絶やしにしようとする人間だ」
「ドフィたちは人間に散々痛めつけられ……そして家族を目の前で殺された!」
突如打ち明けられた、ドフラミンゴとコラソンの凄惨な過去。今まで平和な日々に身を置いていたローは、誰かに命を狙われるなんて殺伐とした世界を知り得なかった。
……だが、“目の前で家族が死んだ”という事実については自分と同じだと思った。思ってしまった。
「んねー、んねー、もうわかってるんだろう?おれたちにとってもお前にとっても、何が悪だったのか!」
トレーボルの笑顔越しに、初めて会った頃のベビー5たちの言葉がローの頭にこだまする。
『あんたもわかるでしょ?人間が悪いってこと!』
『お前が独りぼっちなのも、人間のせいだすやん!』
あの言葉の真の意味は、こういうことだったのか。 - 99GMトンタッタ23/03/25(土) 00:04:18
「べへへ!ドフィが王になれば人間に復讐ができる!お前にとっても悪い話じゃねェはずだ」
「よく考えろ、お前から大切なものを奪った人間のことを」
人間のせいで家族がいなくなった。家族と2度と会えないのは、話せないのは、抱き合えないのは、悪い人間のせい。
目の前のオバケたちがローに言い聞かせてくる。頭の中に染み付いていく。その度にローの心に黒い穢れが滲んでいく。復讐を受け入れるように。
「ち、違う……父様たちはそんなこと望んじゃいねェ……!」
醜い感情を否定するため耳を塞ぎ、目をつぶって、ローは逃げるように駆け出した。 - 100二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 07:38:51
そっかだから人間を憎んでいるし、力を欲しているんだな…
- 101二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 15:55:59
そりゃ今の状況だと余計に染みてくるよな…
- 102GMトンタッタ23/03/25(土) 19:49:52
丑三つ時。穏やかな寝顔には程遠いものの、ローは深い眠りについていた。何やら良くない夢でも見ているのか、ローの口から小さく呻き声が漏れる。
一方、眠らないオバケたちは顔を突き合わせて密語を交わす。異形たちの会合は異様な雰囲気を醸し出していた。
「……昼間は些か性急過ぎたんじゃねェか?事を急いてローに不信感を抱かせちゃ意味がねェ」
口火を切ったのはでっぷりと肥えた猫のオバケ……セニョールだ。おしゃぶりを煙草に見立てた彼はちぎりパンのような腕を組み、トレーボルとピーカを責める。可愛らしいピケハットから眉間の皺が覗いた。 - 103GMトンタッタ23/03/25(土) 20:17:05
「だが鉄は早いうちに打てと言うだろう」
セニョールに異を唱えるのはハリセンボンのオバケ、グラディウスだ。ゴーグル越しのぎょろりとした目が、セニョールのピケハットを捉えると身体をぷくぷくと膨らませた。
「若のために自ら命を捧GEるくらいになるべきじゃ!のG!!」
「そうざます!人間への憎悪を感じさせることが、若への忠誠心へと繋がるざます!」
「ローを早く“使える”イノセントにするイーン!」
他のオバケたちもグラディウスに同調し、思い思いの意見を言い出す。しかし、セニョールも含め彼らの狙いはどれも同じ。
ドフラミンゴをオバケの王にするためにローを利用することだ。 - 104GMトンタッタ23/03/25(土) 21:21:19
「…………」
ファミリーが如何にローを扱うかを話している中、コラソンは何も言わず、ただ冷めた目で周囲を見ていた。
(話す気も起きねェな……)
トレーボルが話していた通り、コラソンは家族をオバケ狩りに殺された。自分や家族を甚振った人間に対して怨みを持っていたのも否定はできない。人間に復讐しようとするドフラミンゴの考えを一蹴するほどの人が良いわけでもない。
だが……そのためにローの命までも利用しようとするファミリーの思想に共感するのは到底無理な話だった。 - 105二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 21:59:32
おわあ面白そうなTRPGスレ覗いだら
めっちゃ面白い… - 106GMトンタッタ23/03/25(土) 22:11:34
というのも、コラソンは一時期ドフラミンゴから離れて暮らしていたのだ。
家族が殺されてから日に日に歪んでいく兄の胸懐に対する違和感は、自分たちを襲ったオバケ狩りへの恐怖を軽々と越えていった。気づけば兄の笑顔は狂気を孕んだものになっていて、それが恐ろしくてたまらなかった。目に入る人間全てを呪うような目に耐え切れず、コラソンはドフラミンゴの元から逃げ出した。
『オバケ狩りのほとんどはオバケを憎んでいる。……自分や大切な人がハグレオバケの被害に遭ったからだ』
『……じゃあ、おれたちを襲ったオバケ狩りも……』
『その可能性は高いだろうな。……オバケも人間も同じだ、大切なものを喪うと哀しくなるのは』
……数年前に世話になった人間から言われたことを、コラソンは今でも覚えている。
(あの人の言葉通りなら、きっとローも……)
自分と同じなんだ。 - 107二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 23:29:43
このレスは削除されています
- 108GMトンタッタ23/03/25(土) 23:38:33
ごめんなさいれす
さっきのレスは自分でも納得がいかなかったので消しました - 109GMトンタッタ23/03/25(土) 23:41:26
「……い、おい、聞いてるのかコラソン!」
「うおっ!?」
考え込んでいたところを呼びかけられ、不意に意識が浮上する。驚いて身体が跳ね上がり、その拍子に足を滑らせたコラソンは床を思い切り転がり回ってしまった。勢いを増して転がっていくコラソンは、壁に激突したところでやっと停止する。
その様子を見ていたベビー5とバッファローは実に楽しそうに笑っていた。
「……悪い、ぼーっとしてた」
馬鹿にされているのを気にしつつも、コラソンは話の続きを促す。オバケたちは少しの間、コラソンを白けた目つきで見ていたが、すぐに“いつものことか”と気を取り直した。 - 110二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 10:16:04
センゴクさんともやっぱりあっているんだな…
- 111二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 20:25:54
皆の境遇辛いな…
でも勢いよくコロコロ転がるコラソン(アザラシの姿)を想像したらちょっと和んだ - 112GMトンタッタ23/03/26(日) 21:49:12
オバケたちの会合が終わりに近づいた頃。ふと、ローが目を覚ます。眠っていたはずなのに、疲れが取れるどころか酷く頭が痛む。
「クソ……まだ夜か」
……あの日以来。独りになってしまった日以来、ローは悪夢に魘されるようになった。
家族の笑顔が死に顔に変わっていく様子が脳裏に浮かぶたび、ローの精神は疲弊していく一方だ。最近はそれに加えて、家族が“助けて”と、“復讐してくれ”と呼びかけてくる。
(父様たちがそんなこと言うはずねェのに……)
しばしば“夢は願望の表れ”だと言われることがある。仮にそれが真実だとすれば、他でもない自分こそが復讐を望んでいるのではないか……。
生まれて初めての感情を否定したくも、今のローには到底できることではなかった。 - 113GMトンタッタ23/03/26(日) 22:24:21
「父様、母様、ラミ……」
家族を思えば思うほど、昔を願えば願うほど、目の奥が熱くなって鼻がツンと痛くなる。はらはらと零れ落ちる滴はローの頬を濡らし、涙痕を残していく。だというのに、ローは嗚咽の1つも漏らさなかった。
声を我慢しすぎて噛み締めた唇から、血が流れそうになる頃。水面のように揺れる視界の中で片隅に何かが映った。白くて丸くて、小さな何か……。
「わ、悪い、邪魔したな……」
気まずそうに苦笑いをしたあざらしが、足元で小さく縮こまっていた。 - 114GMトンタッタ23/03/26(日) 22:40:49
「っな、なんで、お前……!!」
見られた。
ローは慌ててコラソンから顔を逸らすと、袖で乱暴に涙を拭う。力任せに擦っているからか、目尻がじくじくと痛んでくる。それでも他人……しかも“特に人間嫌い”だと言われているオバケに涙を見せるのはローのプライドが許さなかった。
しかし、そんな行動を諌めたのは他でもないコラソンだった。
「ロー、そんなことしなくていい」
ズゆっくりと首を横に振ると、彼はそっとローのズボンの裾を引いた。 - 115GMトンタッタ23/03/26(日) 23:15:58
「……涙は悲しみの欠片なんだ。それを閉じ込めておく必要はねェよ」
「悲しみの、欠片……」
真似するようにローが呟くと、コラソンは微笑んで頷く。
「大切な人を喪うと悲しくなるのは、みんな同じだろ?」
“なんて、受け売りなんだけどな!”とはにかむ、締りのない顔。いつもの冷ややかな目とは似ても似つかないほど暖かな眼差し。春の陽だまりが雪を溶かしていくように、コラソンは優しく語りかけてくる。
こちらのプライドなんてまるで無視の緩みきった表情。軋轢なんて何1つ無いコラソンの顔を見ていたら、また視界が揺らぐ。 - 116GMトンタッタ23/03/26(日) 23:51:40
「……泣いてもいいぜ?」
「泣かねェよ!!」
コラソンに揶揄う心算はなくとも、泣きそうな顔を覗き込まれてそんなことを言われたものだから、意地っ張りなローの涙は一瞬で引っ込んでしまった。それでも、嗚咽や泣くこと自体を堪えていたときと比べれば彼の表情は明るかった。
ローの波立っていた心が凪ぎ、幾分か晴れやかになった顔を見て、コラソンは思わず威容を誇る。
「泣くのは悪いことじゃないんだからな!いつでも泣けよ!」
「……うるせェ」
調子に乗って胸を張るコラソンを、ローは無慈悲に一蹴する。乱暴に涙を拭ったせいか、ローの目はぷくりと腫れていた。 - 117二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 07:26:27
泣くのは確かに大事だもんな…
- 118二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 17:50:47
保守
- 119二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 21:10:46
今の状態だとコラさんの姿にも癒されていそう
- 120GMトンタッタ23/03/27(月) 22:15:36
家族を喪った悲しみと向き合い始めた人間のローと、自分と同じ境遇のローを暖かく見守るオバケのコラソン。種族は違えどよく似ている2人は、あの日からほとんど毎晩語らうようになった。
「よォ、ロー!今日は泣いてねェみたいだな!」
コラソンは初め、同情心からローに声をかけていたが、次第に純粋な心配を向けるようになった。兄のように人間を憎んで復讐を望む……まだ幼い少年がそんなふうになる姿を彼は見たくなかった。
「だから泣かねェよ!」
ローは、徐々に怒りや復讐を忘れていった。胸の内を支配していたのは悲哀の方が大きかったのに、どうして憤怒が心を満たしていたのだろう……。
気の抜けた笑顔をするあざらしと関わるうちに、ローは自分を取り戻していった。 - 121二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:33:21
いい感じの流れだけどこの先記憶を消さないといけない程の事態が起きちゃうと思うと俺は辛い耐えられない
- 122GMトンタッタ23/03/27(月) 22:50:49
だが、ファミリーはそれを良しとしなかった。
日に日に生気を取り戻していくローが気に食わなかった。ドフラミンゴのために尽くせるイノセントを作り上げようとしているのに、そのための器の心が再起しかけている。一時芽生えたはずの復讐心が萎れそうになっているのは見過ごせない。
「あの様子じゃあ怨みなんて忘れちゃうんじゃないかしら?誰か、ロー兄に何か言った?」
小さな半魚人、デリンジャーが牙を剥き出しにして笑う。その言葉にコラソンの背中に冷や汗が伝った。
“人間嫌い”だと偽っていることが幸いして、ローが元気になったきっかけが自分だということはバレていない。だが、このままでは時間の問題だ……。 - 123GMトンタッタ23/03/27(月) 23:43:06
(どうか誰も気づかないでくれよ……)
そう祈りながら、無言で周囲の顔色を伺う。普段からファミリーに対して口数の少ないこともあり、特にコラソンが疑われることはなかった。
オバケたちは結局ローが怒りを失くした原因を掴むことはできず、あからさまに苛立ち始める。しかしそんな中、新入りの2人がくすくすと笑いだした。黄緑色の翼が綺麗なハーピーとケミカルカラーの小熊のオバケ……モネとシュガーだ。
「……どうした、2人共」
「うふふ、若様。シュガーはうってつけの魔法が使えるのよ」
(うってつけの魔法……?)
その魔法に、コラソンは心当たりがあった。
感情が消えてしまったのなら作ってしまえばいい。邪魔なものは消し去ってしまえばいい。
「私がローの記憶を弄って……好きなように変えてみせる」
シュガーの得意魔法はコラソンと同じ……記憶を操作する魔法。“都市伝説”だ。 - 124二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 07:59:43
ドキドキする~
- 125二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 16:04:40
記憶の操作が鍵になるのかな?
- 126GMトンタッタ23/03/28(火) 21:30:38
「……そんなことができるのか?」
「私ならできるわ、任せて。ウフフ……」
まずい、本気でやるつもりだ。
焦燥感がカルメ焼きのようにむくむくと膨らむ。ドッドッドッとうるさいくらいに心臓が拍動して、血の気が引いていく感覚がした。……コラソンが血の通った人間ならばの話だが。
「人間に悪意を向けるように変える。そして、余計なもの……ローに希望を与えているものは排除しないとね」
ローに希望を与えているもの……。即ち、心の拠り所にしている家族との思い出だろう。
シュガーはあどけなくて可愛らしい顔を邪悪に歪ませる。シュガーだけじゃない。コラソン以外のオバケたち全員が、それはそれは人間を厭うオバケらしい顔つきをしていた。 - 127GMトンタッタ23/03/28(火) 22:00:51
「おい待て!ローを廃人にでもするつもりか!?」
ローがドフラミンゴの手を取ったのは、孤独を嫌忌していたから。家族を喪って情緒が安定していなかった彼がここで心安らぐことができるなら、無理に連れ出す必要はないと思っていた。
だが、何も悪いことをしていない人間の子供に本気で手を出すならもう見過ごせない。
「それで若様が王になれるならいいでしょ?……それとも、何か不都合でもあるの?」
「……それは」
シュガーに睨みつけられ、他のオバケにも凍てついた視線を送られ、言葉に詰まってしまう。ドフラミンゴの目はサングラスに遮られて見えていないが、きっと他と同じ目をしているはずだ。
無理もない、自分は“特に人間嫌い”だと思われている。ローを守ろうとする行為は、ファミリーへの裏切りに等しいだろう。
…………それがどうした。 - 128GMトンタッタ23/03/28(火) 23:30:25
走った。一目散に。
背後から何やら自分を呼ぶ声が聞こえたが、構っていられなかった。ファミリーから逃げなければ。ここにいたらローは不幸になってしまう。泣くほど大切な家族を忘れさせるなんてそんな惨いこと、許せるわけがなかった。
「ロー、起きろ!」
「んん……なんだよ……」
「逃げるぞ!走れ!」
「はァ!?……っ、わかったよ」
全く状況が把握できていないローは目を白黒させていたが、コラソンの尋常ではない形相に何かを感じ取ったのだろう。コラソンの言うことを素直に聞き入れ、走り出した。 - 129二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 08:11:15
ドキドキ保守
- 130二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 13:08:18
そりゃ逃すよな…
- 131二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 20:31:40
ここで記憶を消した理由がでてくるのかな?
- 132GMトンタッタ23/03/29(水) 22:36:24
いつも保守と感想ありがとうございます!すごく嬉しいれす!
申し訳ないのれすが今日書けなさそうれす……ただでさえ最近あんまり書けてないのにごめんなさいれす - 133二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 22:54:07
気にしないでほしいのれす
むしろいつもありがとうなのれす
保守は任せろーバリバリ - 134二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 07:27:24
無理はなさらずに頑張ってください!
- 135二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 16:31:24
更新しているだけですごいから気にしないで
- 136GMトンタッタ23/03/30(木) 19:16:00
皆様ありがとうれす!
今日はやれるれす - 137GMトンタッタ23/03/30(木) 19:16:15
ファミリーが根城にしている館は構造が単純だ。何せ、所属するオバケの数も種類も多い。そのうえドジを連発するコラソンがいるということもあり、段差や無駄な物を配置することがなかった。
非常に走りやすく、逃げやすい環境。だがそれはつまり、逃走者を発見するのも容易いということで。
「見つけただすやん!」
「捕まえて若様の役に立つのは私よ!!」
「キャハハ!待て待て!」
「クソッ、やっぱり見つかったか……!」
取り分け動きの素早いオバケたちにすぐさま見つかってしまい、コラソンは焦りを募らせる。ベビー5、バッファロー、デリンジャー……誰も子供っぽい性格のオバケということもあり、実に楽しそうに自分たちを追い詰めてくるのがタチが悪い。
「……使うしかねェのか……!?」
「コラさん……?」
不安げな瞳を向けてくるローの隣で何度か深呼吸をし、コラソンは魔力を体に込め始めた。 - 138GMトンタッタ23/03/30(木) 20:18:22
神妙な顔つきで、コラソンが3人に向けて魔力を放つ。魔力の波動が襲いかかった、その瞬間。
「……あれ?私たち、何してたんだっけ?」
「思い出せないだすやん」
「あんな子供、ファミリーにいた?」
3人は何事も無かったかのように、はたと足を止めた。再び走り出すこともなく、出口へと奔走しているコラソンたちの背中をぼーっと見ているのみ。まるで鳩が豆鉄砲を食ったときのような間抜けな表情を浮かべている。
「ど、どういうことだ?」
「……そのうち戻る!気にするな!」
(気にするなって言われてもな……)
もう自分を追ってこない3人を気にかけながらも、やはりまだ事態を飲み込めていないローはコラソンの後をついていくことしかできなかった。 - 139GMトンタッタ23/03/30(木) 21:16:46
その後もコラソンは追ってくるファミリーに魔法をかけていく。先程まで鬼気迫る勢いで追ってきていたオバケたちが突然立ち止まり、なんでもないような顔をするのがローの不安を煽っていった。
……流石にこれ以上は抑えきれない。今にも転び出そうな疑問を、ローはとうとう口に出した。
「……なァコラさん、さっきから何やってるんだ!?危ねェことじゃないんだよな……!?」
「……命に関わるようなことじゃねェ。……大丈夫だ!」
ローを安心させるため笑顔で言うが、実の所コラソンの心は陰っていた。彼がファミリーたちにかけている魔法は、シュガーがローにかけようとしているものと同じ。記憶を消す魔法。
(笑えない話だな……)
ローから家族の記憶を奪おうとしているファミリーが許せなかった。だからこうやって逃げているというのに、まさか自分が同じことをしてしまっているなんて。
結局、あのオバケたちと……兄上と自分に相違点なんて1つもなかった。 - 140GMトンタッタ23/03/30(木) 23:57:34
「コラさん、あそこのドアを開ければ外か!?」
「あ、あァ!そのまま突っ走れ!」
……考え込んでいる間に、玄関に辿り着いていたようだ。
逃げることしか考えていなかったから、ローとコラソンは後ろを振り返りもせずに扉に手をかけてしまった。しっかりとドアノブに体重をかけ、外に1歩踏み出して。
踏み出そうとした、が。
「おれのイノセントをどこに連れていくつもりだ?」
“なァ、ロシー”と慣れ親しんだ声が足を縛り付ける。地の底から響いているような恐ろしい声は、2人が脱走するのを決して許しはしなかった。 - 141GMトンタッタ23/03/30(木) 23:58:01
「……おれのイノセントって、なんだ……」
口に出した疑問はほとんどが空気が擦れる音になっていて、言葉として発されなかった。
ドフラミンゴと契約した覚えはない。自分は彼のイノセントではないし、彼は自分のスプーキーでもなんでもない。それなのに、目の前のオバケはまるで自分を所有物かのように話してくるものだから、ローは混乱を禁じえなかった。
「……ロー、先に出てろ。外に出たら真っ直ぐ走れ」
そんなローを庇う形で、コラソンは自らの兄に立ち塞がる。
“オバケの王になる者”だとファミリーから称されているだけあって、ドフラミンゴの覇気は凄まじい。その気迫に気圧されないように、コラソンはなんとか平常心を保とうとドフラミンゴを睨みつけた。 - 142GMトンタッタ23/03/31(金) 00:20:53
「コラさんは……」
「すぐに追いつく。……大丈夫だ!」
そう言って短い腕でガッツポーズを作り、コラソンは無理矢理笑顔を浮かべた。あまりにも強引に表情を作ったものだから、きっと変な顔になっているだろう。
ローは一瞬だけぽかんと口を開けていたが、すぐにコラソンに釣られて笑顔になり、言われた通りに扉を開けた。
「ローを逃がせて満足そうじゃねェか。後はおれの記憶を消せばお前らは晴れて自由の身だもんなァ!?……その残りカスみてェな魔力でどうにかなればの話だが……」
“フッフッフ!”と愉快そうに笑い、ドフラミンゴはコラソンを揶揄する。
……だが実際、ファミリー全員に魔法を使い続けたコラソンの魔力は底を尽きかけていた。ドフラミンゴと正面から戦うとなると、到底敵わない。
(でも、やるしかねェ……!) - 143二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 07:39:29
コラさん…
- 144二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 08:21:00
おわァー!!しんどい
- 145二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 16:59:27
結末はわかっているけどドキドキする…
- 146二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 21:23:06
魔力をたくさん使ったから…
- 147GMトンタッタ23/03/31(金) 22:28:48
残り少ない魔力を削って、コラソンは自身の兄に攻撃を繰り出す。まさに死力を尽くす勢いの攻撃はドフラミンゴを蝕んでいき、その体をボロボロにしていく。
……もちろん、コラソンも息も絶え絶えだ。ただでさえ魔力が空になりかけているというのに、ここに来てドフラミンゴとの戦闘はかなり厳しい。
それでも、もう引き返せないところまで来てしまっている。
「ドフィ!……これで終わりだ」
最後の力を振り絞って、コラソンはドフラミンゴに魔法をかけた。一連の記憶を綺麗さっぱり無くしてしまえば、きっともうあの子供に悲劇は訪れないと信じていたから。
……それなのに、どうにも様子がおかしい。
(なんで抵抗しねェんだ……?)
ドフラミンゴは反撃するどころか、魔法を避ける素振りすら見せない。いつものように笑っているだけだった。
「なァロシー。……お前、何か忘れてるんじゃねェか?」 - 148GMトンタッタ23/03/31(金) 22:31:47
「忘れてる?……そんなはずはねェ」
自分は全て覚えている。
最優先に護ろうとしているローのことも、今まで長い時を共に過ごしてきたファミリーのことも。最も危険で大好きだった兄のことも、ちゃんと脳裏に刻んであるというのに……。
「いや、お前は忘れているはずだ。……今最も注意しなくちゃいけねェ奴をな」
何を言っているんだ?
コラソンにとって、今この状況において“最も注意しなくちゃいけねェ奴”はドフラミンゴだ。ローの記憶を弄って、自分の思い通りに操ろうとしている彼こそが、最も危険なオバケのはず。
……いや、待て。
(……そもそも記憶を操れるような奴なんて、おれ以外にいたか?) - 149二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 22:33:01
あっ……
- 150GMトンタッタ23/03/31(金) 23:03:19
「まずい……!」
そんな言葉が口から零れ落ちると同時に、コラソンは脇目も振らず館を飛び出した。
記憶に齟齬ができてしまっている。ローに危険が迫っているはずなのに、それがなんなのか全くもって思い出せない。だが、今すぐ彼の元に行かなくては取り返しがつかないことになるということだけは明瞭だった。
「ロー、頼む。……無事でいてくれ!」
どうか泣くほど大事な家族の記憶まで失ってくれるな、そう願いながら走り続けた。 - 151GMトンタッタ23/03/31(金) 23:31:18
勢い余って転がっても、思わぬ段差に舌を噛んでも、コラソンは足を止めなかった。覚えている限りのファミリー全員に魔法をかけた影響で、彼の体はもう限界に近い。ほとんど気力で動いているようなものだった。
……そんな状況下だが、コラソンの目はローを見逃したりはしなかった。
「ロー!」
「! コラさん……」
「あら残念、もう来ちゃったのね」
トレードマークの帽子を深く被った少年は、何やら見知らぬオバケに捕らえられている。その場からなんとか逃げ出そうと藻掻いているものの、妖艶な雰囲気のハーピーに羽交い締めにされて身動きが取れないようだ。
……そして、その正面に立っているケミカルピンクの小熊はローの頭に手をかざそうとしている。
「やめろ……ッ!」 - 152二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 07:36:45
記憶を消したのはもしかしてシュガー?
- 153二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 16:16:15
ここからどうなるんだ…
- 154二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 20:17:18
消したその先で一体何があったのか
- 155GMトンタッタ23/04/01(土) 22:57:07
なりふり構わず小熊を突き飛ばし、ローから遠ざける。極限状態で歯止めが効かなかったのか、コラソン自身も予想外の力で小熊は地面に叩きつけられる。
艶のあった毛皮が土煙で汚れてしまったのが気に食わないのか、彼女は恨めしそうに怨念の籠った目でこちらを凝視していた。
「何するの!……折角記憶を操ってあげようと思ったのに……」
「! やっぱりお前のことだったか……」
ドフラミンゴが言っていた通り、自分は“最も注意しなきゃいけねェ奴”を忘れてしまっていた。悔やみに悔やみきれず、コラソンは硬く拳を握りしめる。 - 156GMトンタッタ23/04/01(土) 22:58:13
「若様の役に立てるのよ?余計なことを忘れて、若様が命の恩人だってことをよく思い知ればすぐにでも」
「そんなことさせねェ。あいつの人生を壊させてたまるか……!」
「ふーん、そう。……でも、ちょっと遅かったんじゃない?」
……遅かった、って。
身体中に付いた泥を払いもせずに、小熊はくすくすと笑い出す。ローを捕まえたままのハーピーも同様だ。あまりの狂気を孕んだ笑顔に、思わずコラソンは身震いする。彼女たちの表情に兄を垣間見た。
「あんたが途中で突き飛ばしたりなんかするから、魔法が中途半端にかかっちゃった」 - 157二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 09:25:58
中途半端…
- 158二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 09:38:33
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- 159二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 20:11:21
どんな感じになったんだ…
- 160GMトンタッタ23/04/02(日) 21:12:33
目の前が一瞬暗くなった。
気づけば無我夢中で魔力を込めていて、小熊とハーピーから記憶を刈り取っていた。どこまで奪ってしまったのかコラソン自身も定かではない。
「……私、今まで何を?なんで館の外に出てるの?」
「あら?コラソン、その子供は……」
「…………こいつはただ迷い込んだだけだ」
「そう。ならいいのだけれど」
彼女たちが先程のように敵意を剥き出しにしていないのを見る限り、少なくともコラソンとローに関する記憶は無くなってしまったようだ。しかし、自分自身のことやファミリーの記憶は失っていないらしく、コラソンが“帰ってくれ”と言うと彼女たちは素直に頷いて館へ戻っていく。
……どうやらコラソンの良心のストッパーは正常に作動したらしい。それがコラソンにとって良いことだったのか、はたまた悪いことだったのかはわからないが。 - 161GMトンタッタ23/04/02(日) 22:02:54
「コラさん……」
か細い声でローが名前を呼ぶ。コラソンが声にならない声で“ロー”と返せば、彼はくしゃりと顔を歪ませた。
「……思い、出せねェんだ」
「!」
「おれ、妹がいたはずだよな?……いたはず、なのに」
声も顔も性格も、名前すらも思い出せない。“妹”という存在がいたことは覚えているのに、知らないなんてはずがないのに、妹のことがわからない。
ローの呼吸が段々と短くなって、口元からぽろぽろと嗚咽が漏れていく。絶望に染まりゆく瞳から雨垂れの涙が落ちていく。
「っ、父様のことも、母様のことも覚えてるんだ……!なのに、あいつのことだけわかんねェ……!大事な妹だった、はずなのに……ッ!」 - 162二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 22:10:07
もしや齟齬を無くすために…?
- 163GMトンタッタ23/04/02(日) 22:59:31
「ロー……すまねェ、すまねェ……!」
自分がもっと早くここに来ていれば、ファミリーを説得できていれば、そもそもローをファミリーに置くことを容認していなければ。
後悔の渦がコラソンを襲い、今にも呑み込まんと手を伸ばしてくる。しかし、孤独な少年を前に自責の念に浸っている暇はないのも事実。後悔に呑み込まれることも、それを振り払うこともできなかった。
「クソッ!なんで!なんでだよっ……!思い出させてくれよ……」
その隣で、ローは頭を掻き毟って、慟哭して、身体中の水分が枯れきってしまうほど涙を流した。それでも記憶は戻りはしなかった。 - 164二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 23:01:54
思ったよりエグい…エグくない?
- 165二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 23:05:20
解けないの……?
- 166二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 07:00:22
半端なのが一番辛いからね……
- 167二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 08:04:35
都市伝説こわぁ…
- 168二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 14:28:33
悲しい…
- 169二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 20:30:49
そっか元凶?はシュガーの能力なんだな…
- 170GMトンタッタ23/04/03(月) 22:32:29
今日は疲れているのでお休みさせていただくれすごめんなさい
あともう勘づいている人が多そうなので言っておきますがハピエンじゃないれすでもバドエンでもないと個人的には思います - 171二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 07:21:50
了解です!個人的にビターエンドぎみかなとは思うけど大好きだから問題ないです!
- 172二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 07:37:48
了解しました
過去編は大体がビターになりがちなモノ…
ラストまで楽しみに待ってます - 173二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 14:55:17
二人のお話はまだエンディングじゃないのれす
だから泣かないのれす
続きを楽しみにお待ちしてるれす - 174二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 21:25:29
2人の話が大好きなので最後まで見届けたい!
- 175GMトンタッタ23/04/04(火) 22:24:01
……オバケが憎い。オバケが憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くてたまらない。
大好きな家族の記憶を奪ったオバケへの復讐心がローの腹の中でぐつぐつと煮え、身体中に黒い感情を走らせていく。怨念を象った大粒の涙が地面を濡らしていき、厭悪の篭った指先が砂を掴んだ。
(……オバケなんて)
ファミリーによって人間に対する唾棄を植え付けられていたローの心に、オバケへの怨嗟が募っていく。
(オバケなんて、この世からいなくなっちまえばいいのに……) - 176GMトンタッタ23/04/04(火) 22:42:19
「ロー……ごめんな……!ごめん、ごめんな……ッ!」
べしょべしょと涙と鼻水を垂らし、自分のことのように号泣するコラソン。何度も何度も謝罪して、本気で哀咽する彼の眼に、ローの顔が映る。
(……おれ、今こんな顔してるのか?)
絶望に支配された顔。目も当てられないほど怨恨を煮詰めた瞳。
……それはまるで、自分に“人間を恨め”と言い聞かせてきたオバケたちのような。
「…………あ、ぁ……おれ……」
自分の涙を受け入れてくれたのも、思い出を奪われないように自身の身を呈して守ってくれたのも、自分のために泣いてくれているのも、全部。オバケであるコラソンなのに。
それなのに、“オバケが滅べばいい”なんて思ってしまった。
「ぁ、う、うぁあああああっ……!」 - 177GMトンタッタ23/04/04(火) 23:56:57
「ロー!?ロー、しっかりしろ!」
「……コラさ、ん。おれ、おれ……ッ!」
突然頭を抱えて大声を上げたローに、コラソンは慌てて駆け寄った。心身共に疲弊しきっているローは、力無く項垂れながら譫言のように頻りに何かを呟いている。
“大丈夫だからな”となんの根拠もない励ましをして、ローの背を摩る。まだ幼い子供のローの背中は小さく頼りない。こんな子供に復讐心を抱かせたファミリーの罪深さと己の無力さを呪うと同時に、コラソンは過去の出来事を思い返す。
(……ローは、父上たちを殺した人間と同じ目をしていた……)
だとしてもローに罪は無い。記憶を失くすということは、存在そのものを消えるようなものだ。
……“オバケも人間も同じだ、大切なものを喪うと哀しくなるのは”。恩師の言葉を、コラソンは何度も何度も噛み締めた。 - 178GMトンタッタ23/04/05(水) 00:27:06
もうローにもコラソンにも、居場所はない。ローは身内1人いなくなってしまったし、コラソンもファミリーに戻るつもりは一切ない。
独りではないが、ふたりぼっちの彼ら。
(……あいつらから記憶を奪ったから、ローは狙われないはず。それに、おれがローを逃がそうとしていたことも忘れさせた)
だが、記憶が戻る可能性がないとは言えない。コラソンよりもずっと強大な力を持つ兄なら、何らかの拍子で記憶を取り戻してしまうかもしれない。
……できるだけファミリーの根城から離れる必要がある。それに、新たな居場所も探さなくてはならない。だが、これ以上ローに家族の記憶を薄れさせるわけにもいかなかった。 - 179二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 00:41:56
>“大丈夫だからな”となんの根拠もない励ましをして、ローの背を摩る。
あざらしの手で想像するとかわいい(状況はかわいくない)
- 180二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 10:06:17
本当だよ…
- 181二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 20:15:46
そっかそれが本編に繋がるのか…
- 182GMトンタッタ23/04/06(木) 06:49:33
昨日がっつり寝落ちしてたれす……書けてた分だけあげるれす
「……ロー、お前は故郷に帰るんだ」
「故郷?」
「あァ」
少しでも家族を感じられるように、墓参りができるように、故郷がいつかローの心の支えになるように、そう願ったコラソンの発言だった。
しかし、対するローの表情は暗い。家族がいない故郷に帰ってしまえば、虚しさが襲いかかってくると勘づいてしまっている。だが、まだ幼いローは故郷以外に安らげる場所に心当たりはない。どの道故郷に……シンセカ町に戻るしか選択肢はなかった。
「……わかった」 - 183二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 07:56:29
おつらい
でも前に進もうとするだけマシなんだな… - 184二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 18:21:44
ビターだけど引き込まれる…
- 185二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 20:42:31
悲しいけどいい話だ…
- 186GMトンタッタ23/04/06(木) 22:32:26
幸運なことに新たな拠り所はなんの屈託も無くローを受け入れた。
「ローさん!じいさんが夕飯だって!」
「一緒に行こうぜ、ローさん!」
同い歳のシャチとペンギン、施設長のヴォルフ、他の子供たち、“つばめの里”の人々はローの心に穏やかな風を運んでいった。子供たちのほとんどは自分と似た境遇だというのに、彼らは底抜けに明るい。ローも釣られて口元が緩んだ。
もちろん、コラソンも一緒だった。ローが次第に元気を取り戻していく姿を目の当たりにする度、大きな安堵と希望が全身を包んだ。
……それでも故郷の空気が与えたのは、安らぎだけではなかった。 - 187GMトンタッタ23/04/06(木) 22:32:53
家族全員が交通事故に遭った中、行方不明になっていたローが傷1つなくシンセカ町に現れたとなれば役所や警察、メディアが殺到する……。そんなことを予測できるほどコラソンは人間を知らなかったし、ローも世間を知らなかった。
『保護者をどうするか……。十中八九施設に行くことになるだろうが……』
『これからどうしたいですか?』
『お父さんとお母さん、そして妹さんはどんな人でした?』
人々はローを追い詰めた。ある人は懸念で、ある人は純粋な興味で。妹のことを聞かれているのに何も答えないローに、世間は“言葉に出せないほどショックを受けた可哀想な子供”というレッテルを貼り付けた。
彼が妹のことを忘れているだなんてこと、誰も知らないから。 - 188GMトンタッタ23/04/07(金) 01:18:09
ローは夜、眠れなくなった。暗い部屋で目を閉じると、周囲によって無理矢理ほじくり返された絶望と、決して思い出すことのない妹という名の虚無が襲いかかってくる。
例え眠ることができたとしても、暗闇と微睡みに紛れて無神経な言葉が囁かれ、すぐに目が覚めてしまう。
『妹さんとの思い出を……』
「……う、ぐ……」
『何か家族に伝えたいことは?』
「うるせェ!!やめろ……ッ!やめて、くれ……」
目覚まし時計の代わりに悪夢に苛まれて飛び起きるのが日常になっていた。 - 189GMトンタッタ23/04/07(金) 01:18:51
ローは見る見るうちに憔悴していった。くっきりと色付いた目の下の隈はもう消えることがないように見え、乾燥した唇からは時折血が流れる。ぼさぼさの髪、欠けた爪、頬にできる涙の跡。
……目も当てられなかった。
「ロー、寝れないなら話でもするか!夜の町はオバケがいっぱいいて面白いんだぜ!」
「…………」
コラソンは必死にローを励まそうとした。渾身の笑い話を聞かせたり、手品をしたり、いつものようにドジってみたり。それでもローの心の傷は癒えなかった。
それどころか、時が経つにつれてローの傷は深くなっていった。いつまでたっても妹の記憶を思い出すことがなかったから。オバケへの憎しみが膨らんでいくから。 - 190GMトンタッタ23/04/07(金) 01:34:35
いつしかローは何もしなくなった。日がなベッドに篭っては、涙を流して父親と母親、そして思い出せもしない妹に焦がれるだけの日々を送っていた。そんな毎日だったから、ろくに眠れもしない体はボロボロだった。
「ロー……」
コラソンの苦悩は広がるばかりだった。ローの幸せを願って帰ってきたはずなのに、彼はどんどん不幸になっていく。彼のために自分がしたことが裏目に出ていく。
……このままではローの身が危ないということを、コラソンは理解していた。 - 191GMトンタッタ23/04/07(金) 01:35:32
自分の身を傷つけるほど大切な妹の存在と、人間やオバケを恨むことに疲れきっている少年の命。2つを天秤にかけなければならない。
守りたい、幸せにしてやりたいという自分勝手なエゴを押し付けてしまったがために、ローは心をすり減らしていく。“助けて”の言葉も言われていないのにも関わらず、コラソンはローを助けたかった。
(真実を知ったらおれを恨むだろう。嫌いになるだろう。…………それでも構わない、とは言えねェな……)
永遠にも思えるほど長い葛藤。これが最善策なのかもわからない。だが、このままではローの心身が壊れるのは痛いほどわかる。
「自分勝手ですまねェ。……お前の苦痛、貰ってもいいか?」
そう呟き、コラソンはローの頭に手をかざした。 - 192GMトンタッタ23/04/07(金) 01:58:15
「……これが全部だ。お前から消した記憶の……」
「………………」
月明かりが差し込むベッドの上、コラソンはローに話しかける。ローは口を噤みながらも、自身のスプーキーの目をじっと見つめていた。
「いつか言おうと思ってた。……思ってただけで、口にできなかったんだ。おれはお前に嫌われたくなかったんだ。……ヴェルゴにバラされるくらいなら早く言っておけばよかったって、今更後悔してる」
すまねェ、ロー。
初めは同情と親近感。次第にローへの庇護欲。そして今は家族のような信用を感じていたから、“嫌われたくない”なんて子供じみた理由で真実を打ち明けられなかった。 - 193GMトンタッタ23/04/07(金) 01:58:51
「失望しただろ、おれのこと。こんな奴のイノセントなんて嫌だろ……?」
……衝撃的な事実だったとは思う。自分に妹がいたことすらさっきまで知らなかったし、オバケの根城で洗脳されかけていたなんて危ういことがあったなんて信じられない。
妹のことを思い出したい。忘れたものを取り返したい。そんな気持ちが湧き上がるが、決してコラソンへの恨みつらみは抱かなかった。
自分のために悩んでくれて、守ってくれていたことを知れたから。
「嫌じゃねェよ。……言っただろ、コラさんは“はなしたくない”人だって」
「! ロー……」
揶揄うような笑みで言ってみれば、コラソンは嬉しそうに目を輝かせる。そして、ベッドの上から落ちそうになりかけながらも、ぴょんと跳ねた。
「おれも、同じだぜ!」
番外編 ローの記憶 終わり - 194二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 01:59:25
うぉぉおおおおお疲れ様でした!!!
- 195GMトンタッタ23/04/07(金) 02:01:25
長らく時間がかかりましたがこれでローランドの記憶は終わりれす!曇らせが過ぎた気がしますがなんでこうなったかは自分でもよくわかってないれす
ここまで付き合ってくれた皆様に感謝れす!毎回感想や反応を見ては嬉しくてたまらなかったれす!本当にありがとうございます!! - 196二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 07:31:57
大好きでいつも楽しみにしていました!
ありがとうそしてお疲れ様でした! - 197二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 08:38:14
それでも一緒にいてくれる2人にホロリとしました
お疲れ様でした! - 198二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 19:27:42
お疲れさまでした!こちらこそこんなに面白い話をありがとう!
スレ主の情景がパッと思い浮かぶ文も相まって個人的にすごく読みごたえがあった
ハートの旗揚げ組が出てきてくれて大歓喜してたらヴェルゴがめっちゃ強くてハラハラしたし
(ローの記憶編で)どんどんすり減っていくローとそれを一番近くで見続けてるコラさんが想像以上につらいしで
前スレ含め一か月近く楽しませてもらいました!スレ主ありがとう!
長文失礼しました - 199二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 20:54:24
本当に楽しい時間をありがとう!
- 200二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 06:50:08
お疲れ様です。楽しませていただきました