[幻覚・トレウマ] 聳える山

  • 1123/03/17(金) 22:13:04

    「なんだよ、コレ」

    「何って・・・そりゃチョコレートよ。」

    「な事は分かってるよ・・・。」

     僕とキンカメの目の前に軽トラ一杯分のチョコの山が聳え立っていた。なぜ、こんな事になったのか事の始まりはこうだ。
    今日は2月14日 バレンタイン。校内のあちこちでチョコのやり取りが行われていた。僕は、いつもの通り
    チョコをもらう事なく、いつも通りのバレンタインを過ごすものであると思っていながらトレーナー室で
    本を読みながら、担当ウマ娘のキンカメが来るのを待っていた。が、一向に来ない。
     キンカメは派手な勝負服から誤解されがちではあるが、至極真面目でトレーニングに遅れることなど
    一回も無く授業も欠かすことなく真面目に受けている。そのキンカメが遅れるのは珍しいなんて物じゃない。
    仮に遅れる事があっても、必ず連絡を入れてくれる。それすら無いなんて余程のっぴきならない事態に巻き込まれて
    いるのだと考えられる。
     急いで、彼女の教室に向かうと僕はとんでも無い物を見てしまった。なんとチョコの山を前にして、呆然としている
    キンカメがいたのである。まだ、母の序のトレーナーを初めて二年目であるがこんな姿は見た事ない。

    「遅いから心配したけど・・・これは中々だね。」

    「え、ええ・・・確かにそうね。」

    机を埋め尽くしアリ塚の様に高く積み重なったチョコを目の前に僕も彼女もどんなリアクションを取ればいいのか分からずに
    二人仲良く目が泳いでいた。なんだコレは。なんなんだ。ギャグ漫画でしか見た事がない不思議な光景が目の前で起こっていた。
    とりあえず、トレーナー室にある段ボールに詰め込み部屋に持ち込む。

  • 2123/03/17(金) 22:13:29

    「しかしまぁ・・・すごい量だね。どういう経緯でこんなにチョコを貰うことに?」

    「今日は朝からこんな感じなの。会う人会う人からチョコレートを貰って、昼休みには後輩と友達4人から呼び出されて渡されたわ。」

    と言いながらカバンを弄り丁寧に包装されたチョコを僕に見せる。ガワだけでも分かる恐らく” ホンメイ “ だろう。もしかしたら、あの山の中にも
    本命チョコが混じってるのでは?と考えるとなんとも言えない苦い気持ちになった。

    「あら?その顔は、もしかしたら “ ボクのキンカメが自分以外の人から告白されて、付き合ったらどうしよう? “ とか考えてる顔ね。」

    「なワケ・・・。ん?教室でこの調子なのだから、もしかして下駄箱はもっとエラい事になってるんじゃ。」

    「あっ・・・」

    と言うわけで二人で生徒玄関へと向かう。しかし、キンカメはその道中でも先輩や後輩、挙げ句の果てには女性トレーナーからもチョコを
    貰っていた。百歩譲って生徒はまだしもトレーナーがあげるのはどうのか?大人が生徒に対して云々とかじゃなくて、自分と言う担当トレーナー
    が居る前で渡すことに対して遠慮とか、僕がいない時に渡せばいい物を・・・。キンカメもキンカメだ。貰うたびに俺の顔をニヤニヤしながら
    見てくる。人の顔の中を神輿が通ってるワケじゃあるまいに、一体何が面白いのか。人で遊ぶのも大概にしてほしい。
    んな、ガキみたいな事を考えているとどうやら顔に出ていたようだった。

    「トレーナーさんの子供っぽい所、私気に入ってるのよ。普段は、冷静に振る舞ってる貴方の感情的になるところ・・・。ギャップがあって
    面白いわ。」

    「そう?今の僕は勤めて冷静だけど。それにそんなに面白くないでしょ、僕は。」

    「そう言うところが可愛いのよ。感情的な時は直ぐに返事を返すそう言うところが。」

  • 3123/03/17(金) 22:13:54

    自分はツマラナイ奴と思っているが、キンカメが楽しいならまぁ良かろう。しかし、何が面白いのかさっぱり分からない。実の親にすらお前は
    大人になれていないと言われている自分のどこが。
    とか、下らない事を考えていると生徒玄関に到着した。が、そこには想像の倍以上の光景が広がっていた。
    なんとキンカメの下駄箱のある場所に堆くチョコレートの山が聳え立っていたのだ。さっきの机の倍以上、適当な言葉で形容できないチョコの山だ。

    「何これ」

    「何かしらね」

    と言っていても始まらない。とりあえず、あの山を崩さないと話しは始まらない。とりあえず、足元にある段ボールに目をやると既にチョコで一杯になっていた。

    「あぁーーー。もうチョコは見たくない」

    「そうね、流石の私もこの量は。ちょっと」

    その後、30分かけてチョコを撤去し、トレーナー室に運び込んだが結局段ボール10箱分にもなった。次はこれの処理方法を考えねばならないと考えると
    ゾッとする。カロリー量だけで言えば、一ヶ月はこれだけで過ごせるんじゃないかと思うほどの量だが、さてどうしたものか。

    「このチョコの山を見てるだけで、君が如何に愛されてるのかがよく分かるね。凄いよ、僕なんて一度どころか一生かけても今日の君は敵わない。」

    「それは確かにそうかもね。本命かも知れないチョコだけで一箱分はあるもの」

    「ハハっ自分で言ったけど、なんか悲しいな。」

    「そんな事ないわ。だって・・・」

    と言いながらキンカメはカバンを弄っている。

    「貴方にはコレがあるもの。」

  • 4123/03/17(金) 22:14:34

    それは丁寧に包装された白い箱だった。青と黄色に黒のトリコロールのリボンで飾られていた白い箱だった。

    「これは・・・」

    「ふふっ何かしらね?一つだけいい話しがあるの。今日のために私が作ったチョコはこれで一つだけよ。」

    えっと声を出そうとした時には彼女は、それじゃあね。とコチラを見ないで部屋から出て行っていた。

    「・・・・・・」

    とりあえず、包装を丁寧に解き箱の中を見る。中身はホワイトチョコであった。僕がブラックやビターが苦手だからわざわざホワイトを・・・ただ貰えるだけで十分に嬉しかった
    のだが・・・。一つ摘んで口に運ぶ。見た目通り甘くて美味しかった。

    「美味いよ、ありがとう」

    少しだけ開いていたドアの隙間から、鹿毛の尾が見えていた。
    -了-

  • 5123/03/17(金) 22:16:21
  • 6二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 22:29:17

    これくらいの距離のウマトレ好きですありがとうございます
    嫉妬するトレーナーとそんなトレーナーを手のひらの上で転がすキンカメが私性合
    もしかして掲示板初期にもキンカメのSS書いてた方でしょうか?別の方でしたら申し訳ない

  • 7123/03/17(金) 22:31:54

    >>6

    自分で書いたのがどれだか忘れたけど、多分そうですね。

  • 8二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 22:31:55

    あざっす
    良い濃度のトレウマでした

  • 9二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 23:53:18

    >>7

    あのスレの自分にも靡かないトレーナーにムキになって誘惑しようとするカメハメハがいじらしくて素敵でした

    脚とカリスマで沢山の人を魅了するカメハメハのトレーナーにだけ見せる好意がとっても甘くて大好きです。元の競走馬を前提にスレ画の容姿が似合うキャラクターを作って尊いSSが描けるの敬服しました

    画質いいキンカメの画像初めて見た

  • 10123/03/18(土) 00:23:43

    10割の妄想のssにファンが居たとは…ありがたいですね。

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