【SS】例え別れが訪れても

  • 1二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 23:26:08

    トレセン学園、卒業。
    大きな別れの時期だ。多くの者は再会の約束を取り付け、同級生という同じ志の仲間としての時間に別れを告げる。
    だが、カフェと私はそうではなかった。
    「寂しくなりますね」の一言すらなく、静かな別れだった。

    「じゃあ…またいつか」
    「うん、元気で」

    こんな簡単な別れの挨拶だった。仲が険悪になった訳でもなくこれだ。端から見ればドライなんてものじゃないのだろう。でもこれが私たちのスタンダードだった。
    だが卒業したあの日から、だんだんと私の周りは非常に、今まで以上に、仕事などの喧騒があるにも関わらず静かになったような気がした。
    あの旧理科実験室での日々だって結構静かだったろうに。
    それだけ私の心象に変化を与えたとなると、それだけカフェの存在の有無が大きかったんだろう、さすがの私でも分かる。
    とはいえカフェの連絡先ぐらいはある。
    寂しければ電話で話しかけるなりLANEでメッセージを飛ばすなりあっただろう。
    だが、同じ学生、同じレースに身を置く者同士という接点が消えた以上、お互いに会う理由が失くなってしまった。
    趣味も違えば、珈琲と紅茶で嗜好品すら違う。なんだかんだカフェの優しさに甘えてきたが、本来は水と油だったのかもしれない。

  • 2二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 23:26:40

    「…雨か。」

    窓際から外を眺めていると降ってくる雨粒。
    じわじわと響きだす、心を宥めるような雨音。だけど背中をさするようなそれが、尚更私の心から欠けたものを逆撫でしていく。

    「…彼女は、私を今でも『お友だち』と、そう言ってくれるのだろうか」

    本人に聞けば良い、まぁそうだろう。それが出来れば苦労しない。ばつが悪いのもあるのだが、なにより……
    『違う』と言われるかもしれないことに恐ろしさを覚えているんだ、私は。
    可能性を求めて道を歩んできた私が、可能性に怯えている。
    別に嫌われても良いと思っていた、同じ時間を過ごしたり構えてもらえるなら、多少嫌われていてもそれで十分だと思っていた。
    だが実際はどうだ?その少しの時すら失うとこれ以上失うのかもしれないということに恐怖する。
    だというのにLANEのトークルームを開いては閉じて、文面を考えては消去して、踏み出すに踏み出せない私が笑えてくる。
    そんな嘲笑混じりな思考を巡らせていると…

  • 3二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 23:27:27

    「あああっ間違えた!!?」

    指が滑り普通にポンと送信してしまった。
    しかも既読の文字がすぐについてしまったときた!明らかカフェ宛の文面なので消して間違えたと言うわけにも行くまい!!?

    『唐突ですね、どうしました?』
    『いやちょっと、最近どうしてるか気になって』
    『元気ですよ』

    元気ですよ、って…どう返そう。いや、私の友人だ、別に固まる必要もない。それは分かっているはずなんだが久しぶりなものだからどうにも変な力が入る。

    『仕事は順調かい?確か自営業の喫茶店だったはずだね?』
    『えぇ、思っていたより店が繁盛しているので、上手くやれています』
    『たまにお邪魔させてもらおうかな?』
    『仮に店で迷惑行為でもすれば』
    『いくらあなたでも即締め出しますよ』
    『まさか!』
    『さすがに私も店先で試薬を使うような真似はしないさ!』
    『どうだか』
    『信用なりません』
    『えー!!?』

    「……くくっ」
    つい口元が緩む。そうだったな、彼女との会話というのはこんな感じだったか。心踊っているのか、メッセージを綴るスピードが早くなる。

    「意外と、変わらないものだね」

    少しの間とはいえ、この会話がとても楽しいものだったのは間違いなかった。何を怯えていたのか、すっかりLANEでも饒舌になって、結局最終的にカフェに既読スルーされるまで絡み続けてしまう始末だ。なんというか、変わらないな…。

  • 4二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 23:27:46


    ──
    …卒業して、毎日のように顔を会わせることもなくなってしまった今。
    (お互いの生活も変わって、もう前みたいにはいかないのかと思っていたが……)
    (いらない不安だったようだ、まったく…)
    カランカランと響くドア。見覚えのある姿が、即座に目に入った。

    「いらっしゃいま……え?」

    距離が離れたからって、顔を会わせることが減ったからって、その程度で私たちの友情は、終わらない。
    会う理由なんて、適当なもので良い。
    それに気付くのに、数ヶ月もかかってしまった。
    だから…これからは、これからも。

    「カ~フェ~~!!!」
    「ええっ…!?」


    おわり。

  • 5二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 23:41:56

    ちょっと前に卒業シーズンだったのもあってつい出力してしまったというのと単に卒業後のタキカフェの様子を書いてみたく……
    お目汚し失礼しました。

  • 6二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 23:44:35

    別れは切ねえなぁと思いながらも暖かな清涼感のある展開だった……

  • 7二次元好きの匿名さん23/03/17(金) 23:56:35

    どうせタキオンのことなんで「アポなんてないねぇ」って感じで行ってそうだよね

  • 8二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 00:25:59

    フゥン…いいタキカフェだねぇ

  • 9二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 00:36:08

    >>7

    というか最後のカフェの驚きようからして突然行ってる可能性大だと思う…

  • 10二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 00:44:18

    タキカフェの距離感はこのくらいがいい

  • 11二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 03:25:13

    最後のシーンもはやタキオンが飛び付いてそう

  • 12二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 09:51:49

    LANE(LINE)の小刻みなメッセージ打ちが彼女らも年頃の若い子なんだなって分かるのすき

  • 13二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 12:13:31

    なんかこう軽く毒づきあったりとかLANEでもいつものノリがあって、離れてても友情が繋がってる感じがまさに親友、って感じのタキカフェだ…

  • 14二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 18:17:25

    >>11

    久しぶりに主人にあった飼い犬かな?

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