- 1二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 21:45:29
ホワイトデーに物を貰った記憶は無い。バレンタインの時に誰にも渡してないんだから、当たり前っちゃ当たり前か。私にとってはバレンタインもチョコを貰う日で、渡す日じゃなかった。それも私が望んでないのに送りつけてくるもんだから、可愛そうで受け取ってやっただけ。なにか返礼する気はさらさら無かったし、相手もたいして望んじゃいない。
そういうもんだったから、トレーナーに渡すのもすっかり忘れてた。今にしちゃチョコレートの一つくらい恵んでやっても良かったと思うが、忘れてたんだから仕方がない。渡しちゃいないんだから、お返しを期待するのも身勝手だろう。いつも通り、私にとってはイベントの無い一日だ。
「シリウスー。はい、これ」
「……おい、こいつはなんだ?」
「何って、ホワイトデーだけど」
ご丁寧に包装された小袋が目の前にあった。トレーナーは名前を呼ばれた子犬みたいに首を傾げる。
「私は返されるようなもの送ってねえぞ」
「珍しいね。いつもだったらご苦労って言ってそのまま受け取るのに」
「アンタは私を何だと思ってるんだ」
からかい半分の言葉に耳を絞る。さては私を困惑させる為に用意してきやがったな。普段私に振り回されてるとでも思っているのか、トレーナーは時々こういうドッキリのようなことを仕掛けてくる。 - 2二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 22:00:21
「まあまあ、開けてみてよ」
「チッ、この反応まで予想してたな」
言われた通りに袋を開ける。中に入っているのは、小粒の──マシュマロ。
「マシュマロの意味知って……無いわけねえな。アンタだったら」
バカなくらいに素直なこいつが、ネットで調べれば5分で分かることを調べてないわけがない。マシュマロの意味は”あなたが嫌いです”。だ。冗談にしても趣味が悪い。そして、こいつのことだから、もう一つ仕掛けを用意してある筈だ。マシュマロを一つつまんで口に放り込む。シロップの甘みと柔らかさ、それとは別種の甘ったるさが中から顔を出す。
「こいつは……キャラメルか?」
「”あなたが居ると安心する”。キャラメルの場合はそういう意味らしいね。ついでに言えばマシュマロは”あなたから貰ったものを優しさで包んで返す”という意味が原義らしいよ」
「渡した記憶は無いんだがな」
「シリウスはそうかもしれないけどね。俺は返しきれないくらいに貰っているから」
勝手に勘違いして勝手に受け取ってりゃ世話ないな。マシュマロをもう一つ口の中に放り込む。
「今日、買い物付き合えよ」
「ん? 別に良いけど、どうしたの?」
「別に」
貰うばかりはダサいって、なんとなく思っただけだ。 - 3二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 22:02:37
- 4二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 22:23:29
- 5二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 22:47:28
逃げるな。いや逃げないでくださいお願いします
- 6二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 22:53:37
続きも読みたいんだが???
- 7二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 22:57:54
逃げるなぁ!!!
- 8二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 23:00:31
貴様アアア!! 逃げるなアア!!!
責任から逃げるなアア!! - 9二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 23:20:08
よし それじゃあスレ主が戻ってくるまで我々の血肉をもって保守しよう
絶対落としてなるものかこのスレ - 10二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 23:40:53
のべりすとをお前らに教える
- 11二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 23:44:55
素敵なSSだなぁと思って読んでたらぶつ切りにもほどがあって笑っちゃった、連歌やってんじゃねえんだぞ
- 12二次元好きの匿名さん23/03/18(土) 23:51:32
これはこれでええんじゃないっすか
すか… - 13スレ主23/03/18(土) 23:55:35
えっ何この流れ……
わかりました明日書きます……(敗北) - 14二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 00:12:02
続きが楽しみだぜ
- 15二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 00:59:03
シリウスSS希少だからたすかる
これで実装まで生きれる - 16二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 01:47:05
- 17スレ主23/03/19(日) 09:05:15
えっなにこれうわかわいい……顔が良い……
- 18スレ主23/03/19(日) 11:26:48
「アンタ、何か欲しいものはあるのか?」
駅前の百貨店にトレーナーを連れ出してみたは良いものの、何を返したら喜ぶのかなんて考えたこともなかった。私の好きにプレゼントしてやってもいいが、せっかくなら望みのものはないかと聞いてみる。トレーナーはきょとんとした顔をしていた。
「んー、そういえばお米をそろそろ買い足さないとなくなるかなあ」
「そういう意味じゃねえよ」
私が贈り物してやろうってのに日用品を挙げる奴が居るかバカ。何処にプレゼントのお返しに米俵担ぐ奴が居るんだ。いや、トレセンにはそれなりに居そうだな。
「あんまり物の要る生活してないからさ」
「なんか一つくらいあるだろ」
「いやほんと。特別なものは無いって」
じっと見つめると目を逸らされる。視線の前に移動するとまた不自然に揺れる。二、三度繰り返すと動かしすぎた首がポキリと鳴った。
「遠慮してないか?」
「シテナイデスヨ?」
「声が上ずってんじゃねえか」
はあ、とため息が出る。どうしてまあ、悪戯は仕掛けてくるくせにこういうところでふてぶてしさを出せないのか。
「私が恵んでやろうってのに、どうして素直に受け取れないかね」
「いやぁ、気持ちは嬉しいですけども。まあトレーナーとしてのプライドというかなんというか」
「そんなもんたいしてないだろ」
「それはひどくない!?」
トレーナーの考えることなんて、大方私に負担をかけたくないとかそんなところだろう。それならこっちにも考えがある。 - 19スレ主23/03/19(日) 11:58:55
「だったら、私が勝手に選んでも良いんだな?」
そう告げて向かうのは、腕時計の並ぶフロア。フランスブランドのショーケースに触れる。つけられた値段は50万。まあ流石に懐が痛いが、手の届かない金額ではない。
「ちょ、ちょちょっと」
「なんだ? 私のチョイスに文句でもあるのか?」
「いやそういうわけじゃないけど、そうじゃなくて。本気で言ってる?」
「別にアンタが他に欲しい物があるならそっちにしてもいいぜ」
どうする、と聞くとトレーナーは観念したように両手を上げた。
「分かった。降参。降参するから」
「聞き分けの良い奴は好きだ」
「殆ど脅しじゃんかよもう……」
往生際が悪いのが悪い、とは言わないでおく。 - 20スレ主23/03/19(日) 11:59:53
「どれが良いんだ?」
「これ、かなあ」
トレーナーが指さした先にあるのはシルバーのイヤーカフだった。星の装飾が彫られていて、私が見ても悪くないと思うような奴だ。
「シリウスに似合いそうだなって」
「私に?」
聞き返すとしまったという顔をする。ここに来てまだ自分のことを考えていなかったとは、まあいい。
「じゃあそれにするか」
店員を呼んでそのイヤーカフを”二つ”購入する。頭に疑問符を浮かべたままのトレーナーにその片方を渡した。私は残った一つを取り出すと、自分の右耳に嵌めた。
「ほら、お前の方は左耳につけるんだよ」
「え、ああ」
促されて自分で嵌めようとするが、慣れていないのか手付きがおっかなびっくりしていて見てられない。
「ちょっと頭下げろ」
言われるままに下げた頭に手を伸ばして、耳にカフをつけてやる。ま、無いよりはマシって感じだな。
「……これって、ペアってこと?」
「私に似合うって言ったのはアンタだぜ。それをプレゼントに欲しいってんだから、望んでたのはこういうことだろ?」
「……うん、ありがとう」
「分かれば良い」
なんだかんだ嬉しいのか、トレーナーは優しい表情で自分のカフを撫でていた。
……そういえばプレゼントとしてのイヤーカフの意味は。いや、わざわざ教えてやる必要も無いか。 - 21スレ主23/03/19(日) 12:01:57
ということで脅されたので書きました。ちなみにイヤーカフをプレゼントする意味は「あなたといつも一緒にいたい」とか「離れていても私の存在を感じていてほしい」だそうです。
- 22二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 14:17:00
とても素晴らしい
- 23二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 18:20:22
めっちゃ好き、、、!!!
- 24二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 19:34:58
やっぱ貴方に後半の調理工程任せてよかったよ
俺これを出力できる自信ないよ
シリウスの相手を引きずり出すための誘いの言動、その上でペアのイヤーカフ渡すところのおしゃれさとそこにこめられた意味や思いの可愛さで心の中のデジたんが大量に採れました
今度おすそ分けさせていただきます - 25スレ主23/03/19(日) 22:08:50
せっかくなので夜にちょっと上げときます