たきちゃん

  • 1二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 22:58:47

    たきちゃん

    昔からの合理性の追及で子供のころから損ばかりしている。
    この前も武器商人の連中が人質を取って立てこもっているから
    そこらに置いてあった機関銃で掃撃したら隊長にしたたかに撲られた。
    「エリカを殺す気か、なぜそんな無茶を」などと言われたがそんな心算はないし
    わたしの射撃の腕を信用しておらんのかと言ったら又更に撲られた。
    インカムごと撲られたのだ、創痕が死ぬまで消えなかったどうする。

  • 2二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:00:15

    >>1

    度重なる越権行為なるものの咎でわたしは栄えある本店勤務から

    東京の外れにある喫茶店に飛ばされた。


    商人を殺してはならんと云うなら最初からいい給え。


    さて、東の外れ、江戸城の外れにあるぽっきり折れたりし電波塔の麓に

    それはあった。なんでも子供の落書きのような店構えだ。


    喫茶リコリコという看板があるからここに違いない。

    木造の二階建ての大きな店だ。色継硝子(ステインドグラス)の嵌められた扉を開けると

    髪の長い女が卓に突っ伏してクダを巻いておる。

    これがあの有名な千束なる女か? 見れば朝っぱらから酒を飲んでいる。

    期待外れであるが、少しでも本部に戻れるのなら縋るほかあるまい。

  • 3二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:00:47

    >>2

    DAは馘首にはなっておらん。誤った情報ばかり流れおる。これだから犯人を鏖殺する羽目になるのだ。


    ならばと黒い大男、と見るがどう考えても男だ。

    確かにこの人ではない。ミカとい名は女のようだが、実は女なのではないか?


    などと待っていると、確かに八釜しい女が来た。

    彼女はわたしのことをミカなる者に紹介されるといきなり瞳孔を開いて手を握ってきた。

    わたしも無鉄砲と評せられることもあるが、彼女の方がそうだろう。

    彼女はわたしの個人情報を次から次へと訊いてきて、齢、傷のことなどなどなど。

  • 4二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:01:27

    >>3

    訳を話すと千束なる女は自分が撲られたるかの如く憤慨して隊長に連絡した。

    もう少し沈着冷静なるものがファーストだと思っていたが、大いに予想の外れがある。

    人は階級によらぬものだ。


    管理者のミカの淹れる珈琲は千束の言うように美味しかった、とは判断がつかぬ。

    あまり違いが判らぬ。単に苦いだけに非ざることは掴んだ。


    これから仕事に行くという、わたしの力量を示す絶好の機会なのだから彼女にはそれなりに

    愛想よくせねばならぬ……が、その途は知らぬ、まずは電波塔の英雄として有名だとしてそれなりに褒めておくか。

  • 5二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:02:06

    >>4

    しかしながら、彼女はこの話題は好まぬよう、早々に仕舞にする。

    なるほど、隊長――フキ隊長の奴とは親しいようだ。同室だったという話で電話口であれだけ馴れ馴れしくしていたのも頷ける。


    銃千丁がなかった、という話をしたら彼女、流石に固まっていた。

    確かにわたしも気になっていた。銃千丁など懐に隠して逃げおおせる量ではない。

    嵩だってあるのだ、どこかに隠せるものでもあるまい。


    銃取引自体がなかったという話も、少し諒解できぬ。

  • 6二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:02:52

    >>5

    柵の向こうから子供らの呼ぶ声、千束を呼ぶ声がして見た目に反して声の若い職員が

    千束を迎え、わたしを紹介する。なんだこれは?


    ははぁなるほど、これはリコリス養成用の施設で擬態用に保育園を装っているのだと

    わたしは合点し、愛読書たる教科書を子供たちに読み聞かせたら千束に叱られた。

    何か不手際でも? と訊いたら「オール不手際」と言われて仕舞った。


    ああ、ここでもわたしは失敗してしまうのか。

  • 7二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:04:34

    >>6

    次は外国人向けの日本語学校だ。露西亜語は少々できるがそれがどうかしたのだろうか。

    DAの外国語用の教科書は、「首謀者は誰か」「捕虜を解放せよ」などの例文があって

    これを暗記しただけだが……これは言わない方が賢明だろう。


    次に分からぬのはヤクザの事務所に出入りすることだ。

    怪しげな品物の取引をしていたのでよし殺そうと意気込んだところなんとすぐに止められてしまった。

    手の速い女だ。

  • 8二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:05:08

    >>7

    何をしているのか分からない。共通点を見出せぬと談判せるところ、

    彼女はあっけらかんと、しかし満足そうな顔で困っている人を助ける仕事をしていると言った。

    個人のためのリコリスというものだそうだ。


    凶悪犯がそのあたりにたくさんいる時代に何を暢気なことをと思った。

    しかし、わたしはここで彼女の機嫌をこれ以上損ねるわけにはいかぬ。

    義務的に手を取るほか、ないのである。


    延空木の建つその日までには本部へと。

    役立たずの旧電波塔の仕事はもうお仕舞にしたい。

  • 9二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:06:11

    >>8

    警察署に出向いて、刑事に挨拶する。

    なるほど、ああいう子供向けとか外国語学校の仕事は目くらましでこれが本当の仕事か。


    身辺警護はまあまあ格が落ちるが豆の配達よりはましだろう。

    ただ、評点が気になる所である。

    もやもやしていても埒が明かぬ、ここは思い切って訊いてしまえ。


    「何故撃ったか」など決まり切っている事柄なのにわざわざ訊いてくるが

    最後にはわたしの行動を肯定して、帰還に助力してくれるとということは分かった。

  • 10二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:06:48

    >>9

    しかし、この女、抜けているようでそうでないような言動もある。

    事件は事故になるし悲劇は美談になる。

    かかる台詞はDAの処理を端的に表現しているような気もする。


    わたしは世事には疎いが、自分の参加した作戦を新聞でちらと見ると

    大抵ガス爆発に直されていた。この頻度で起こっていれば日本のガス管はボロボロだろう。


    沙織という女からの相談は、脅迫を送ってくる者をどうにかしろということだ。

    なんだ実に簡単ではないか? 狙いは彼女なのだ。

  • 11二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:07:30

    まさかの文学

  • 12二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:08:26

    >>10

    なんと、ここに写っているのは取引現場にこれ相違ない。

    これがために彼女は狙われていたことか。

    彼女自身に問題がないことは分かったため、わたしは特に考えることはなくなった。


    しかし……この千束なる女はどうも軽薄で困る。不安だ。

    命大事にということだが是非とも沙織には生きていてもらわねばならぬ。


    さて、狙い通りこの女を追う車あり。

    彼女もわたしに協力してくれるとの弁、その言葉通りご協力願った。

    沙織を犯人らの車に一旦乗せさせ、その隙に犯人を銃で脅せばよかろう。

  • 13二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:09:13

    >>12

    犯人に取引した銃の所在を訪ねている最中に千束がわたしを捕まえて非難してくる。

    なんなんだこの女は。

    まあしかし、犯人が合理的な判断をしているかどうかは分からないのは事実。

    とりあえず空を飛んでいる無人機を打ち落とせとの命に従う。


    それに気を取られた犯人たちを千束は撃ち殺していく。いや、違うようだ。

    これは、粉であろうか、噂に聞いたことのある非殺傷弾だろう。

    命大事には敵にも対応される語か、まったく気違っている。

    その後、犯人らはどこかに持っていかれた。


    千束にうんと叱られたるのはここに言うまでもない。

  • 14二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:10:05

    >>13

    しかし、わたしには他に行く場もなければ、この店で給仕などをやることになるのだ。

    髪などを纏められ、青い服を与えられすっかり店員にさせられてしまった。


    DAより早く銃の行方を追えれば復帰も叶うのではないかという餌にわたしは飛びつかざるを得ず、

    千束のおもちゃとなって写真を撮られ、流されていく。

    写真が原因で今回の事件が起きたとはご承知ないようだ。


    お客人来る。散々ッぱら練習させられたご挨拶を。

    いらっしゃいませと。

  • 15二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:11:10

    >>14

    ■2


    千束は朝早くから来ていたお客に給仕もせずに話し込み居る。

    頬に傷残らざるを期待していたが、果たしてこれは叶う。

    リコリスは隠密を旨とするから特徴はなければないほど良い。


    尤も、あの千束の目立ちようはそれに完璧に反する。

    わたしの行動をなにかと戒めるが、今一度ご自分の姿を鏡で見るとよろしかろう。

  • 16二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:11:51

    >>15

    今回は漸く武張った仕事。……というか護衛ばかりではないか?

    こういう仕事はわたしには向かぬ。

    前回のことを千束は覚えておらんのか。映画のことばかりはようよう覚えているようだが。

    前に、店長の珈琲のどこが好きかを尋ねたら

    「一番気に入っているのは値段だ」と千束は答えた。なるほど、確かに手ごろな値段であることも

    商品としては大事だと思ってメモしたが、これは映画の台詞だという。


    わたしとしては真剣に質問したのに茶化す癖がこの千束にはある。

  • 17二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:12:07

    まさか最終話までやるのか

  • 18二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:12:35

    >>16

    さて、彼女は装備を整えて一緒に出立する。


    目の前で駅弁を食べていて、わたしにも誇示するから固辞してやった。

    それでもなお勧めてくるから断るのも面倒くさくなって、一口煮卵を食べてやった。

    ……悔しいが美味い。


    護衛対象はハッカー。千束のハッカーに対する想像も、勿論映画由来だ。

    彼女は全てを映画で学んだらしい。

    ミズキは逃走経路を確保してもう待機らしい。あの女、流石に今は酒を飲んでおらんだろうな?

  • 19二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:13:35

    >>18

    駐車場に車が用意せられているからそれにハッカーを乗せて羽田まで行けとの指示。

    実際、難しいことはなんともないだろうが、相場の三倍の値段なのだ。

    金額が吊り上がると警戒心も上がる。猶更、任務の内容を把握していない千束にムカついた。

    尻でも蹴とばしてやろうかと思った。


    千束が運転したいと駄々っ子になるけれど、困ったものだ。こんなやつにハンドルを任せるわけには

    いかんだろう。暴走列車のような人間に。

    こういうのは冷静沈着なるわたしの出番だ。


    ……いわんこっちゃない。金網にしがみついて赤い車が良いなどとゴネておる女には

    自転車すら危ういのだ。

  • 20二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:14:18

    >>19

    暫く金網にしがみついていた猿は、白い車の到着の時も散々文句を垂れていたが

    後は大人しく乗った。往生際が悪い。


    このクマのぬいぐるみ……リスだそうだ、は自ら運転している。

    わたしたちは別に要らないのではないかと思って後ろで静かにしている。

    千束は頻りにあのリスに話しかけている。

    戸籍がないこと、制服が都市迷彩の役割を果たしていることなどをぺらぺらと

    バラしているがよいのだろうか?


    しかし、このリスは数時間後には日本から立つのだ、あまり害はなかろう。

    それに、リコリスへと依頼できる道があるのだから、わたしたちについて多少なりとも知っているのもある意味当前かもしれぬ。

    態々隠すことも、気をもむことも無かろう。

  • 21二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:15:30

    >>20

    高速道路に乗る予定が外れてしまった。何があったと問うと、

    車の制御が乗っ取られたという。このまま海に突っ込むと、なんとまあ死ぬのなら

    リス一匹にしてもらいたい。


    さてどうするか、路由器というのがあるらしい。それの所為でこのような操作不能状態に

    陥るという。何だか知らんがそれを壊せばよろしい。

    しかしこの車の主にあらざれば、リスは知らぬという。まったく。

    ああ、飛んでいるあれだな? 最近よくこれに出会うものだ。

  • 22二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:16:15

    >>21

    一旦土手に駆けあがってもらい、撃つ。撃つ。 撃つ。

    全弾命中しそれは壊れるも、我々も車の操作がしづらければ、結局海に落ちてしまった。


    どこかに避難するも奴らしつこく我らを追う。面倒くさいから皆殺しにしてしまいたいが、

    千束はそれを許さない。いや、別にわたしには何も言わない。

    彼女が勝手に殺さないだけだ。


    そのせいで生き残った奴らがわたしを滅茶苦茶に撃ってくるのだが困りものだ。

    とりあえず装備の脇から胸でも撃っておこう。

  • 23二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:16:51

    >>22

    旅行鞄を盾にするなというからそんなのは無茶だと答える。

    バラララと撃ってくる弾を避けられるとでもいうのか。


    避けられるようだ。

    信じられないが。

    彼女は絶え間なく放たれる銃弾を見て、避けている。

    その後、当たり前のように銃弾を襲撃犯に何度も当て、応急処置までした。


    正気かと思いしが、ここから離れることが先決。彼女の弁によれば

    ここからすぐに追いつくと。絶対に信じることのできない言葉だが

    彼女のことだ、あり得ないともいえないかもしれぬ。

  • 24二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:18:28

    >>23

    のしのしと歩いているリスはわたしより先に外に通じる扉を開けた。

    一拍も開かず銃声が響き、途端にリスは銃弾を浴びた。

    と同時に思う。普通は銃弾など避けられないのだ。わたしの認識は

    狂っていないななどとどこか冷静な気持ちも同居する。


    あの後から酷かった。

    千束は泣きじゃくるし、その癖わたしの所為じゃないとかなんとか言って

    慰めてこようとする。彼女なりに責任を感じているようだ。

    それなら……殺さないなどということは止めたらよいだろうと。

    わたしの舌はそのときは、そう動かなかった。

  • 25二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:20:12

    >>24

    着ぐるみに包まれた亡骸はぴくりとも動かない。

    着ぐるみの目だけが爛爛と光っていて、死ぬ前と死んだあととで変わらぬ。


    動いた。起きた。脱いだ。

    リスの中から出てきたのはミズキ。

    眼鏡をはずしていて髪を解いていて誰かはわからなかったがミズキだ。

    出るなり酒を要求している、やはりミズキだ。間違いない。


    救急隊員は店長。


    ……なんとも趣味が悪い。着ぐるみは防弾で、本物は旅行鞄にいたというのだ。

    わたしたち丸ごと騙されたということだ。

  • 26二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:20:49

    >>25

    千束ももう元気になったのだ。

    わたしだって懸念を表明してもよろしかろう。

    敵を殺さないで対処するほうが難しく、非効率的で、味方の命を危険にさらすことを。


    しかし千束の味方の概念が違う。彼女の頭は将棋盤のようで、わたしには測れない。


    ……しかしもっと分からないのはあの曲芸だ。


    ほら、今も避けやがった。後ろに目が付いているのか?

  • 27二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:22:16

    >>26

    ■3


    閉店後に常連客を集めて盤戯をしている。

    わたしまで駆り出されるものの、そんなものをして夜寝るのが遅くなったらどうしてくれる。

    早く帰って銃の整備をして眠るべきだ。そんな風に思いながら着替えていると


    なにやらあの銃弾避けお化けがDAに出向くという。ああ! 検診を後回しにしてくれたのは僥倖。

    わたしが来る前に几帳面に受けていれば一緒行けなかっただろう!

    今回ばかりは千束のずぼらなる性格に感謝をせねばなるまい。


    どうにか頭を下げて千束に随行する。

  • 28二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:22:54

    >>27

    千束は健康診断の前なのに飴を食おうとする。その不健康そうな胸はそういう栄養を全て

    吸収しているのではないか。


    楠木司令とは中々会えないのは百も承知だが、待っている間にバカに絡まれるとは

    想定していない。なんだかよくわからない刈り上げ頭がわたしに頻りに絡んでくる。

    リコリスは殺人が許可されていることをこの女もよもや知らない訳ではあるまい。


    千束はなぜか来てくれて、その刈り上げ女を諫める。丁度助かる。

  • 29二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:23:28

    >>28

    待ちわびていた司令が来る。

    わたしは自分の出した成果を出して復帰を乞うがそんなことを言った覚えはないと言われる。

    確かに、確かに、特に復帰に関しての条件は出されていない。

    そうか、これが一方通行というやつだ。

    転属の辞令は出た。それの解除の条件は確かに何も、言われていない。

    ああ、わたしの全ては終わったのだと理解した。


    知らず、隊長の手を握ってしまったが、すぐに放されて貶される。

    もう、わたしはここにはいられない。

  • 30二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:24:11

    >>29

    どこに行く宛もなければ、そこに辿り着くほかあるまい。

    空中で手を放されたリンゴは地面に着くのと同じように、

    わたしはそのきらきらとした噴水の前にいつの間にかいたのである。


    初めてこれを見た時と、今とで同じものを見ている癖に全く違うように思えてくる。

    噴水は、溜まった水をくみ上げて上に噴き出して、またその水は溜められる。

    わたしは、噴き上がった後に、地面に飛び散ってもう二度と吸われない水の粒となってしまった。

    もう二度と帰ってくることはないのだ。


    最初に観た時には、もっと上へいけるものの象徴に思えたというのに。

  • 31二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:25:01

    >>30

    千束が来た。

    あの能天気で、自分の実力に無自覚で、幸運を持っているのに敢えて捨てる

    そんな無粋な奴。

    腹をすかせた子供の前で食べ物を粗末に扱うような人間。

    あなたには分からないだろうと激してしまう。


    ああ、わたしは最終的な行き場すら自分で壊してしまう。ああ、こういう性格だからだ。

    斯かる性質が自分を窮地に追い詰める。自業自得の咎をまぬかれない。


    千束が悪いわけじゃないのに、わたしの判断が招来したこと。

  • 32二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:26:04

    >>31

    やにわ彼女はわたしを抱きしめる。分からない。

    彼女の言うことはわたしの頭を上滑りしていく。わからない。

    ただ、一つわかるのは、彼女はわたしに何も押し付けていないということ。

    上官であるのだから、わたしに「リコリコに戻れ、ゲームをしろ」と命ずることができるはずなのに

    そうはしなかった。どの赤いのとも違った。


    そうしてわたしの頭がぼうっとしていたころにわたしを持ち上げて駒のようにくるくると回った。

    これもわからない。

    会えて嬉しいとはどういうことなのだろう?

    ともかくも彼女はわたしをぐるぐると回してどうにも満足したようで模擬戦に出て行った。

    なに、私怨めいたことを口に出していたがそれも嘘だろう。


    ……


    わたしの起こした喧嘩を彼女が買う必要抔ないのだ。

  • 33二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:26:59

    >>32

    わたしはあの憎い方の赤いのを目いっぱい撲り付けたことでもう満足した。

    が、慣れぬことをした。体が向こう側に転がる。

    これは銃撃戦なのだ、染痕をつけねば勝った事にはならぬ。

    車線上に千束がいる。いや、もう居なくなるだろう。


    予想は当たった。

    千束には当たらなかった。

    フキ隊長には四発当てた。


    もう二度と戻ってくるなと言われた。ああ、そうしようではないか、フキ元隊長。


    案の定千束は目が良くて、わたしが狙って撃ったことを把握していた。

    非常識な人だった。千束は。

  • 34二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:30:08

    続き期待

  • 35二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:31:05

    三話までしか書いてないわ……

  • 36二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:45:46

    >>35

    こんな場末じゃなくこうちゃんとした所に‥いやどこで見せればいいんだこれ

  • 37二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 07:11:17

    保守

  • 38二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 12:54:13

    保守っとくか

  • 39二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 15:14:51

    >>38

    自分も保守

  • 40二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 15:18:09

    坊ちゃんの向こう見ずな性格はたきなに似てるな

  • 41二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:05:40

    >>33

    ■4


    千束の弾を試みに撃ってみたらまあ曲がる曲がる軌跡が。

    こんなもの使い物にならぬと肩を落とすが、だから近づいて撃つのだと彼女はカラリと笑う。

    そんなのは銃弾を避けられるきみしかできないよとわたしは苦笑いする。


    まあこれじゃあ自分を守れないから実弾を使うと言ったら、きみならそれでも急所を外せるだけの

    腕前はあるぜ、と千束はいう。


    急所を狙う仕事はこのまえ馘首になったのだった。

  • 42二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:06:28

    >>41

    千束がやってきて仇を討てという。なんだなんだと言われるがままにごっつい眼鏡を掛ける。

    ははあ、これが今流行っているやつか。


    目の前には射撃場が広がっていて、不細工な動物が銃弾を放ってくる。

    ミ゛ャァとしわがれた声が聞こえる。


    ちょこまかとすばしっこいやつめ、こうしてやる。一発下がって、撃って

    勝つことができた。なぜ千束の方が喜んでいるのかは分からぬが。

  • 43二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:06:59

    >>42

    その後千束はなぜかわたしの下着をめくりに来た。

    理解できないが。これに何か不都合があるのだろうか?

    とうとう店長にまで喧嘩腰で問い詰めているいったい何が彼女にそうさせるのだろうか。

    とんと見当がつかぬ。


    下着に何かリコリコ的な規範があって、それに反しているとかなどと考えるが

    いやそんなことはなかろう。店長が指定したのだから。


    しかしながら千束はわたしのそれが大層気にいらないらしく、下着を新調するぞと

    独り決めてさっさと帰ってしまった。

    わたしはこれは機能的で頗る良いと抗弁したのだれど徒労に終わった。

  • 44二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:07:33

    >>43

    しかも私服でこいとのこと。何を言っているのだか徹頭徹尾分からぬ。

    指定の私服というものは残念なことになかった。


    しかし、制服を着てくるなとあれほど強く言われたからには着てはならぬのだろう。

    さりとて、わたしは特に服を持ってはない。

    まあなんでもよろしかろう、と思って着て行ったのだがどうも千束の様子が変だから

    訊ねてみる。

    ああ、そうだ。銃を持っていることも咎められた。確かに、制服を着ていないのに

    帯銃するのは微妙に規則に反するからそれなのだろう。

  • 45二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:08:16

    >>44

    スカートを持っておらんのかと訊かれたから持っておらぬと答える。

    抑々リコリスが制服以外の衣装を持つ謂れなどない。

    銃は抜けないわ、防弾防刃機能は失うわで私服に利点などなかろう。

    ……とまれ、何を選ぶかなどはとんと分からぬから千束に投げておいた。

    するとまあ、不思議に彼女は昂揚した。


    服屋に着くとわたしで着せ替え人形を楽しむ千束。

    どれがいいかとも訊くが、わたしとしては特に好みはないからきみの好きなようにし給えと

    しか答えられぬ。

    あれ着ろ、それ着ろと忙しい。

    しかし、彼女はわたしが何を着ても可愛い可愛いと赤子に対するように声掛けるから少々面映ゆい。


    しかしながら、本来の目的は下着なのだ。

    すっかり忘れ果てるところなりき。

  • 46二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:09:26

    >>45

    仕事に支障のないものを選びたいと言うと、千束は「銃撃戦用のやつ」が欲しいと見事に

    わたしの頭の中を当てたが、そんなものはないという。

    やれ、どっちなのだ。


    仕事に支障のない下着ならば今履いているものを以て最上と為せるも、猶も千束は

    これは嫌がるらしい。


    何故だいと訊くと、これは人に見せられるようなものじゃないぜと云うから、

    下着など人に見せるもんじゃなかろうとわたしは率直に述べる。


    「いざってときどうすんのよ」と彼女は問う。

    ……いざ? 何ぞや。

    彼女は説明することがすっかりできなくなったようで、千束の口を恃むのは止めて

    実地に千束の下着を見ればよいと天啓を得る。

  • 47二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:10:25

    >>46

    試着室に千束を引きずり込み、それ下着を見せろと催促する。

    彼女は渋々ながらわたしに見せるが……まあこれをわたしが履くべきか否かといえば

    恐らく否。


    よくわからぬ裡に適当に水玉のなにがしかを買う。

    わたしの既に持っていた下着はあわれ芥箱の中に行く運命をたどるらし。


    千束の誘いでおやつに行く。このまま帰るかと思っておったがどうやら千束は

    わたしを帰さない算段らしい。

  • 48二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:11:04

    >>47

    どこかの喫茶店で長々とした料理名を唱えてなにかを頼む。

    何かは分からぬが肥りそうなものだ。

    少なくとも寮の食事よりは量もあるだろう。


    暫くするととても重そうな焼き菓子の出てくるには、鼻の奥がひくひくと

    反応していやに恥ずかしい。美味しいことは確かによいことだ。

    この分走ればよいという千束の弁にそういうことも確かにあるなと思った。


    わたしがぼけらっと空に見惚れていた間に彼女はお得意のおせっかいを焼く。

    焼くのはパンケーキだけかと思っていた。

  • 49二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:25:44

    続き書いてるよ……

  • 50二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 23:14:15

    >>48

    食事の後は水族館に連れていかれる。

    普段生き物に興味と関心がないわたしとしては初めの訪問で思わず物珍しく

    きょろきょろとしてしまう。

    千束はここの華客のようで頻繁にきているようだ。


    タツノオトシゴがふわふわと水の中を漂っているのを見て興味深い。

    図鑑を呼び出して調べてみるとこれも魚の一種と知って千束に、タツノオトシゴが

    かかる姿になれる所以を訊くもこれを引き出すを得ず。

    なんのためにここにたくさん来ているのだろうか?

  • 51二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 23:14:40

    >>50

    チンアナゴも魚だという。確かに穴子は魚であるからチンアナゴも魚であるのは

    道理が通っているな。と一人満足していると、千束が水槽の横で気でも狂ったのかと

    思うような動きをしている。


    リコリスは目立つべからず、これを彼女の辞書に入れ忘れた者がおるな。

    わたしの諫言も千束には通じず、波間を漂う海月の如く彼女は行ってしまわれる。

    制服を着ていない時はリコリスじゃあないんだよたきな、などと得意げ。

    ははぁ、わたしに、リコリスたらざる一日を与えんがために制服を禁じたのか。


    この千束というやつは本当に分からぬ。リコリスでないわたしは何なのだろうか。

    千束はリコリスでなくなっても、何か残るものがあるのだろうか。

  • 52二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 23:19:18

    続きキタ!

  • 53二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 23:20:36

    >>51

    そもそも千束はリコリスとしても奇妙だ。

    殺すことを標準としているリコリスとは全く違う仕組みで動いている。

    この日本に生きている多くの者は殺さないことを標準しているから、千束はきっとそれに近い。

    千束は多数派に属している。リコリスとしては少数派だとしても。


    喫茶店で働くうちに、大多数の人の価値観に触れて考えを変えたのだろうか。


    考えていても仕方あるまい。目の前にいるのだ、訊いてしまえ。


    あの弾はいつから使っているのかと問うと、旧電波塔の時から店長に作ってもらっているとのこと。

    でも何故? 近接して攻撃することに彼女にとって利点があるのか否か。

  • 54二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 23:21:18

    >>53

    気分が良くない、とだけ千束は言った。

    殺すのは気分良くない、とだけ。

    でももっと奥底に別な理由がある気もする。DAを離れたのはどうしてだいと訊いたら

    人探しだと彼女は零した。


    訊くべきではなかったのかもしれぬ。彼女の目が予想以上に左右に揺れていたのだから。

    でも、彼女もどこかで話したいのかもしれない。わたしにできることは黙って聞くこと。


    なんでもフクロウの飾りをくれた人を探しているという。

    そしてそのフクロウは特殊な才能のある者に授けられるという。

    いや、銃弾を避けられるのはそれによるのではないかとも思うが、

    それは千束の本意ではないようだ。

  • 55二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 23:21:47

    >>54

    千束はこれをくれた人に是が非でも会わなければ気が済まぬと、そう言っているようだ。

    ただ、どこかでそれを諦めているようにも思える。

    なぜかは分からぬ。十年探して見つからないのなら、そうなのかもしれない。

    ただ、これを首肯するのはどこか引っ掛かる。


    わたしは何も言えぬ。見つかりますよとも見つからないともいえぬ。

    どれも無根拠で不誠実。


    ……いや、これ以上は止めよう。なんだか異様に体が痒くなってきた。


    ともかくもわたしたちは話題を打ち切ってペンギンを見に行く。

  • 56二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 23:22:29

    >>55

    さてと帰ろうとすると、周囲にリコリスが多数配備せられている。

    そして、地下鉄から爆風がゴウゴウと来る。

    なにかあったに相違ないと思わず駆け出すが、千束に止められる。


    制服を着ていない時はリコリスじゃあない。

    そうだ。命令も下っておらぬ、ここで行くのは作戦に支障を来たすこともあり得る。


    しかし、あの地下鉄にリコリスがいたとしたらこの爆風だ。無事ではすまぬだろう。

    ――? 今までこのように味方を特に心配したことはなかったはずなのだがと

    千束に腕を引かれながらわたしは自分の感覚に狼狽える。



    千束がわたしの下着を履いていることをミズキに咎められ客にばばんと公開せられている。

    わたしもなぜか被害に遭うが、ミズキは千束にご執心でそれがなぜか愉快でたまらなかった。


    こんなしょうもないことに笑える日が来るとは思ってもみなかったと言ってもいい。

  • 57二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 00:42:53

    さかなー!が行間に埋まってて笑う
    そういうとこだぞたきちゃん

  • 58二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 00:54:01

    我輩はウォールナットである。名前はまだ無い。とかも出来るかな?

  • 59二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 07:24:21

    >>56

    ■5


    脱線事故と糊塗されたる事件の様相がテレビに流れる。

    まったく飽きもせずに隠蔽工作をするものだ。

    代わりに謝罪している社長は気の毒である。

    尤も、一月余りもろくに走れないのだから利用者への不便の量は

    敢えて測るべからざるに至る。


    彼の心痛を得てこちらの胃の腑もよろしくない。


    死亡者なしとの報は、人である者の死者なしとの解釈だろう。

    リコリスは死なず。ただ散るのみと京都で言われたことを不図思い出す。

  • 60二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 07:24:49

    >>59

    いつにも増して千束は張り切っていて、なにやら不気味だ。

    とってもたのしいお仕事などある訳がなく、あるのは唯、憂鬱か退屈か多労のどれかだ。


    しかし、企業の重役で進退が不自由で命まで狙われておるとは

    どれだけの苦を積んだのか。


    千束がかかる者らに掛ける同情は少し長く一緒に居ると嫌でもわかる。

    旅のしおりまでこさえてやるとは実に手が回るものだ。

    普段の仕事もこのくらいやってほしいものだが、特にやりたくないのだろう。

    最優先してくれないということは。

  • 61二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 07:25:15

    >>60

    当日、機械仕掛けの車いすと促話機に繋がれた人がリコリコに来る。

    なんとまあこのようにしてまで人は生きられるのかと感嘆する。


    老爺は自らを機械に生かされているのは奇妙だろうとの諧謔を垂れて笑うが

    千束は自分もそうだという、しかも丸ごと心臓が機械に置き換わっていると。

    いや待ち給え、今朝の朝食は魚だったぐらいの軽さでそのようなことを言うな。


    わたし以外のみんなはこれを既に知っているかのようで

    ミズキのやつなどはお前の心臓には毛が生えているに違いねぇとからかう。

    わたしはまだ正体掴めず、訊くべきことが無数に生えたがどれから採るべきかを

    まよっているうちに出掛ける準備が出来てしまった。

  • 62二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 07:26:17

    >>61

    陸路ではなく船での移動。

    もやもやとした気持ちを抱えながらだったから正直なにがあったかはよくは覚えておらぬ。


    ただ、延空木について千束と彼が話しているのだけは覚えている。

    千束は完成したらまた観にこいと言って、彼は千束の案内を褒めながら肯う。


    あの雰囲気をわたしは知っている。

    死地に赴いてもう二度と帰ってくることはないと知りながら

    明日の約束をするリコリスのものだ。

    努めて明るく、重いその約束は咲くことはないのでしょう。

  • 63二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 10:01:11

    きたい

  • 64二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 13:15:35

    >>62

    この頃の気候は特に暑くて、老人には堪えたのだろう、さっさと船室内に

    行ってしまわれた。ついて行かなくてよいかどうか一瞬迷いしが、

    見えるところに居るので少し安心して千束へ水分を渡す。


    千束は案内人としての技量を褒められていて有頂天だ。

    才能あるかもとまで喜んでいる。


    胸の話を持ち掛けてみると千束はあっさりと認めて鼓動すらないとまで言った。

    一寸確かめてみようかしらんと思って胸を触ろうとすると、意外、拒絶せられた。

    公衆の面前で乳を触るなとのこと。いつも非常識な千束なのにこういうときだけ

    常識人の如く振舞うのは異なことだと思う。

  • 65二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 13:16:00

    >>64

    こう暢気に観光を楽しんで終わりたいと思いしが、あっさりと覆されると悲しいこともある。

    静寂の迅なる者が彼を殺しにきているとクルミが報ず。

    ミズキが発信機を迅につけんと画策するも、どうやら不首尾に終わった。

    連絡も取れないらしい。


    これは本格的に迅のやつがこちらを狙ってきているということだ。

    よし、わたしが出ようではないか。

    千束に託して、歩く。途中クルミからミズキは死んでも発信機を迅につけたという報告が来た。

    なんとミズキよ、普段から酒浸りの駄目大人と見くびって済まぬ、最期に気骨のある者だったと

    知れて嬉しいぞ。

  • 66二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 13:16:21

    >>65

    どこに迅はおるかとクルミに訊くが、後ろだと言われる。それと同時に破裂の音がして

    わたしの近くの壁が破片と転ずる。

    わたしも迅のやつばらを撃つが、畜生、外套が防弾だ。わたしたちと同じ制服の生地なのだろう。

    厄介者め。


    一旦戦線離脱して逃げよう。どうせ奴の居場所は割れてるのだと思ってクルミの指示に従って

    発信機の場所を通じて迅を攻撃しようとするも、発信機の付着せられた外套だけが脱ぎ捨てられていて

    完全に裏を掛かれる。

    流石長いこと暗殺者をしておらぬ。

  • 67二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 13:16:42

    >>66

    貴様が裏をかくのなら、わたしだってそうさせてもらおうではないか。

    一旦あいつを放っておいて、目標たる松下のところへ向かわせて、後ろから撃とう。

    護衛対象を囮にしてしまっている。これはまた千束にうんと叱られてしまうがこれ以外あるまい。


    工事中の東京駅の足場に奴は登って、何故だか知らんがその真下辺りに千束と松下翁がおった。

    駅の中にいたのではないのか。

    是ではすこし計画が狂う。千束を逃がして迅を撃たなければならぬ。

    迅奴の身体は外套の他も防弾でこれ以上足止めすることができないようだから、

    奴の腰をつかまえて、地上に叩き落とす。

    無論、自分の身体も共に地上三階建て程度の足場から落ちることになるがそうでもしないと

    射線から外すことは出来まい。

  • 68二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 15:59:24

    たきちゃんいいね

  • 69二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 17:07:14

    坊ちゃんの書き出し無鉄砲で損してるってやつ機銃掃射でDAクビになったたきなだな

  • 70二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 21:26:05

    >>67

    混凝土の袋があって僥倖たり。体に來る衝撃は幾分か和らげるものの銃が手から離れる。

    迅奴、意外と丈夫であの高さから落ちても平気でわたしを撃ってきやがる。

    まあわたしを狙っているのは好都合、この隙に千束に、彼を連れて逃げてもらわなければならん。

    千束はおう分かった、と車いすをえいえいと押して離れていく。よかった。


    まあ、わたしを執念深く追ってくれることで千束たちの安全が図られるのだ。十分だろう。

    ……脚を撃たれてしまった。隠れていたというのに上方から狙われてしまう。

    流石、熟達した暗殺者。わたしももう動けないし、彼の銃口がわたしの頭を狙っていることはわかる。

    少しでも千束と、依頼者を守るに寄与できたならそれで十分だ。

  • 71二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 21:26:32

    >>70

    千束が来てしまった。

    いくつもの弾丸を使って迅の奴を圧倒して最後には殺さずにも伏せられるぐらいだ。

    あの女め、無茶をしやがる。任せてと言ったろうに。


    ほっとしたのも束の間、松下翁がいつの間にか工事現場に入ってきておる。

    どうやったんだろう、いやそれは今は問題ではない。

    千束をして迅を誅せしめんとする松下翁。

    妻子を殺した奴ゆえに復讐したいと。

  • 72二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 21:27:01

    >>71

    しかし千束はこれを激して止めるのではなくて、優しく彼女自身の思いを伝える。

    わたしに水族館で語ったように。

    「わたしは人を殺したくないんだ」と。

    松下翁の憤激と、千束のそれは極めて対照的で同じ現場に居る者同士とは思われぬ。


    アランの子であれば、使命を果たせと猶も松下翁は、今度は縋るような声色と

    態度とに変わる。が、そうしているうちに機械が停止する。

  • 73二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 21:27:34

    >>72

    異常が起きたのではないかとわたしたちは彼の名を呼びつつ叩いたりするが

    反応これなく、いかんともしがたい。

    千束に話しかけたから、どこからか殺されたのかと思い、わたしは気が気でない。

    千束の所為で人命が喪われたことになったら、千束は自身を責めるだろう。

    絶対、彼には生きていてもらわねばならぬ。


    が、しかしわたしの取りこし苦労なればなり。

    静寂の迅はその看板を掛け替えて店長と話していて、松下翁の家族を殺していないという。

    店長とも一緒に居たと。

  • 74二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 21:27:59

    >>73

    それにあの松下翁は松下ではなかった、という話だ。

    なんでも薬狂いとなってしまった者で、わたしたちとの会話は遠隔送信されてて、

    視界はカメラで情報をどこからか見ていて、車いすは文字通り遠隔操作されていたという。

    あの松下という人間は、まったくの別人をどこからかの傀儡として操作した産物。


    つまりは観光の案内も、松下という者の存在も、妻子を殺されたとの話も

    みな、元から存在しておらんかったということになる。

    何がしたくてそんなことを? 考えても分からぬからもう考えまい。

  • 75二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 21:28:52

    >>74

    すべて終わった後、千束はリコリコの小上がりで珍しく

    しょげている。1日とはいえ、一緒に過ごした人間の素性が全て嘘に糊塗されていたことに

    傷ついているようだ。

    しかし、よい案内役だったという言葉は真なるものだったと思う。

    それが縦しんば、松下の嘘であったとしても、わたしはそう思ったんだからそれでいいだろう。

    千束はよい案内役だったとわたしは思う。


    それから、少し気になっていたことを確かめてこの日は終わった。

    誰もいなければよいという条件も果たされていたし。

    しかし、鼓動がないことについて彼女に問うことはできぬ。

    逆にわたしに、鼓動があるってどういう感じ? と問われてもなんとも云われぬ。


    ただ、彼女はきっと今回のことで胸に痛みを感じていたのだろう。

    それが仮令機械仕掛けだったとしても。

  • 76二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 21:32:51

    >>75

    本当に鼓動がないんだねとわたしの呟きに、そうだすごいだろうと彼女は返す。

    癪だからすごいねとは返してやらなかった。


    それに、わたしはどうしてよいのか分からなかったのが実情だ。

    これ以上の秘密が彼女にまだあるはずなのだ。

    それでも、千束はわたしに言う心算はないのだ。


    わたしは……まだ信用されておらぬのだな。

    と、生身の心臓がひゅっくと縮んだ。

  • 77二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 23:34:36

    >>76

    ■6


    不穏な知らせがDAより来たる。

    四人のリコリスが単独行動中に戮られる。

    なんともおぞましいことだ。任務中に死ぬことは日常茶飯事なれど

    狙って殺されるなんてことは未曾有のことで、

    楠木のやつも大層焦っていて、警戒態勢を敷く。


    あの侵されやすいラジアータめの所為かもしれぬという仮説はあるが

    まだわからぬ。


    警戒態勢といってもそれは本部の話で、わたしたち離れ小島のリコリスはできることなど知れている。

    とまれ、わたしは千束に共同生活を申し出た。

    単独行動していると襲われる蓋然性が上がるのならば

    二人で暮らすのは合理的なはずだ。

  • 78二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 23:35:05

    >>77

    それと、千束は検診に行けという命令をまた怠慢によって逃す。

    こういうのもわたしがそばに居ればなんとか連れ出すこともできるやもしれぬ。


    前までなら、検診忘れぐらい後で行けばよろしいと思っていたが

    正直、あの件を知ってそう太平楽にしてはいられぬ。


    千束は自由を愛するがゆえに、一緒に住むことに対して抵抗するかとおもいきや、

    易々と受け入れてくれた。ありがたい。

    交渉は手間事だし、わたしの得意分野にあらずして、避けたきところ。

  • 79二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 23:35:43

    >>78

    千束が部屋を案内してくれるが、まったくの伽藍洞。

    常在戦場を旨として、死した後の始末も楽になるようにしているのかと感嘆する。


    が、それ以上にも驚くべきことがあった。

    壁が回って、その下に梯子があって、下へとつながっている。

    どういうことなのだ?

    千束の導きに従って下るが、どうも不可思議。

    これは囮としての部屋で出入り口は上階で、本拠地は下なのだと威張られる。

    他にも基地はいくつかあるのだと彼女は得意気。


    わたしの住処もDAの手が回ったもので、よく防犯の効いた施設だと満足していたが

    ここには負ける。

    さすがファーストと思うも、彼女は殺さないから、復讐をしたい者どもが常に彼女を狙っている

    証左だともとれ、複雑な気持ちになる。

  • 80二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 23:35:46

    あのシーンはこんな感じのなるのだな
    面白い

  • 81二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 23:37:00

    >>79

    それはさておき、家事の分担は大切だ。

    負担が大きすぎるのは継続性がない。この生活が短いものと予定されているのならば、

    部下であるわたしが全て引き受けるのも吝かでないが、いつ終わるとも分からなければ

    わたしとて疲労するのだから、彼女の生活の質を一定に保つためにも当番制がよろしかろう。


    最初に書いてきた案を提示すると千束はつまらんと文句を垂れる。

    つまらんとはなんだ。家事配分に面白さは必要なのか?


    すべきことを料理、洗濯、掃除とで別れているわけだが、一日に三つの項目がある。

    七日分なので三かける七で二十一項目。


    それを千束が十項目、わたしが十一項目なのだからこれで満足してくれないか?


    しかし、ここは彼女を乗せるためにもなにか……。じゃんけんなどどうだいと提案すると

    それいいねと乗ってきた。よろしい、三割の確率だからちょうどいい塩梅になるだろう。

  • 82二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 23:37:46

    >>81

    じゃんけんをする。

    この世に理不尽はあると悟った。

    全て負けた。

    理解できない。


    やい千束め! もう一回だ! と叫ぶわけにもいかず。結果は結果として飲み込むほかなかった。

    なにしろじゃんけんを提案したのはわたしに他ならぬ。

    模擬戦を千束に申し込んでおいてボコボコに負けたフキ元隊長の如き格好悪さだ。

  • 83二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 07:11:03

    保守

  • 84二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 12:49:45

    坊っちゃん→無鉄砲の自覚あり
    たきちゃん→自覚なし

  • 85二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 12:56:22

    >>84

    坊ちゃんのさらに上を行ってるクソボケたきないいね

  • 86二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 13:01:35

    自分をツッコミだと思ってる天性のボケたきなさん
    まあ無鉄砲とかボケの自覚ないと一人称で小説にしずらいとこあるかもな
    その意味でもたきちゃん興味深いわ

  • 87二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 20:07:13

    ハーメルンでお出ししたほうがもっと見てもらえるんじゃねぇかな(小並感

  • 88二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 00:07:31

    >>82

    リコリコに行くときも勿論一緒だ。

    わたしは千束の後ろを警戒しながらついて行っているというのに

    当の千束は暢気に鼻歌を歌いながら、さながら散歩の様相。

    本当に警戒心が足りないのだ、千束という女は。


    おそらく安全基地も彼女の発案ではなかろう。

    いや……案外そうかもしれぬ、しかしそれは散らかした後に片付けるのが面倒になって

    荷物そのままにして引っ越したい願望を疑似的に叶えているにすぎぬ。


    リコリコに這入ると、ミズキが珍しくわたしたちを心配してくれるが、

    千束は私らDAじゃあないから心配いらないぜなどと宣う。

    なんというか、やはりというか。

  • 89二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 00:07:58

    >>88

    それにしても楠木の奴は情報をくれないから、こちらとしても対策の取りようもない。

    千束一人の支所などどうでもよいと思っているのかと思うと腹も立つ。


    クルミがどれボクなら勝手に覗いてしまうからせいぜい隠しておきたまえと

    戸棚を漁るリスのごとく活動を開始する。

    まあクルミが集ってくるのは、リスだから仕方がないとして……やはり千束とのじゃんけんの結果に対してもやもやと心が晴れぬ。

    決して如何様をしている訳ではないというのは分かっている。後出しもしておらぬ。

    純然たるわたしの負けだ。

  • 90二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 00:08:34

    >>89

    髪を括って掃除に洗濯、そして料理と忙しなく働く。

    やい、わたしは女中じゃあないんだぞとは思ってはいるけど、前掛けをしながら千束に茶菓を供していれば

    それは最早、女中かその見習いでしかあるまい。


    さしずめ千束は道楽坊ちゃんか自堕落な旦那様。

    とまあ、夕飯も済んで少々休憩しようかと思っていると、千束の携帯が賑やかに鳴る。

    チンピラが来た。しかもまた?


    千束がのそりと梯子を登って見せかけの玄関の階に行く。果たしてそこには二人組がいて

    わたしがしたようにきょろきょろと伽藍洞の部屋を覗いている。

    千束は面倒くさそうにその二人組をバンバンと撃って窓から放り投げる。

    がしゃぁんと派手に硝子が割れる、きっとDA宛の領収書が作られて楠木の奴が頭を少し痛めるのだ。いい気味だ。

  • 91二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 00:10:32

    >>90

    しかし、リリベルなる奴らについては初めて知ったな。

    どんなものかは気になる。確かに、この世界には基本的に男女がおるのだから

    男の孤児もいるだろう。そいつらを集めて訓練する機関があってもおかしくはない。

    と思って色々聞こうと思ったけど、千束に茶化されて辞めた。


    さて、今日もきょうとて家に帰ったら千束のお世話だ。

    正直、お客を大量に捌くのにも苦労したし、これから帰って二人分の家事を

    するのは正直骨が折れる。困ったものだと思っていると、ミズキが珍しく声を掛けてくる。


    かくかくしかじか話をすると、ミズキは同情するような、それとも少し可笑しくて堪らないような

    中間のような表情をして、千束には最初はグーでは勝てんぜ、と教えてくれる。

    種明かしを聴くと本当に単純で、そこまで考えが行かなかった自分にも腹が立ってきた。

    確かに毎回最初はグーだったけど、そこに目がいかなかった。

    千束をどうにかするのには最初の一撃が肝心か。

  • 92二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 00:11:02

    >>91

    とまあ、じゃんけんズル女は組長さんのところに配達に行くという。

    わたしも行くと申し出たのに、彼女は黄色いトンビなどを着てこれなら制服がバレないと

    自慢げ。確かに制服を着ておらんと銃は抜けないからすぐに脱着できるそれは便利だろう。

    まあそういう偽装にはよく頭がまわるこって。……ずる千束。


    タネは確かに割れたが、今日の夕食を作ることは事前に決まってしまってるから

    楽しみにしているぜと言われても断る謂れはない。

    はぁと思っているとやにわクルミの奴が押入れから飛び出して、転がり出てくる。どうしたどうした。

    いつも亀のような動きというのに。

  • 93二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 00:11:28

    >>92

    クルミの示す画面には、四人のリコリスが映ってる。これがどうしたと聞くところ、

    殺されたのはこの四人という。このカメラの映像が外部に漏れてあたかも指名手配の写真のように

    作用したんだとクルミは焦る。

    しかし、DA内への侵入があったときに漏れたとして、クルミがその映像を持っているのは何故だろう。

    ……そう聞こうとしたところ、クルミは緑の瞳を脇にずらして吐く。

    あの時の原因はボクだと。


    わたしが口火を切る前に、既にミズキが聴きたいことを問うている。答えて曰く、クルミは情報に割り込みしただけで、銃の取引にはかかわっておらぬとは言う。

    それが事実かどうかとは、確かめる術は今はなく、正直それは捨て置ける。それよりクルミが出してきた次の画像がわたしを急がせる。

    画像にはよく見知ったその横顔があったからだ。

  • 94二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 07:28:13

    保守

  • 95二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 12:50:10

    保守

  • 96二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 22:10:58

    >>93

    店長が千束に電話を掛けると、出てはくれたが向こう側で酷い音がする。

    何かあったに違いない。わたしは脱兎のごとく配達先へと向かう。

    追いつけ追い越せわたしの脚よ、千束には及ばないこの身体が憎らしい。

    気持ちだけは車より速くあるものの、わたしの脚はそこまでではない。

    少し待ってミズキの車に乗ればよかったか、でもそこまで待ってられなかった。


    目の前に、千束の着ていたトンビと、携帯電話が落ちているのを見つけて

    心臓が跳ねる。ただ疲労の表れではない。

    千束の荷物があるのに、千束だけがいない。どうして?

  • 97二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 22:11:24

    >>96

    どこに居る? この先か?

    どうして千束はわたしをいつも置いていくのだろう。

    そこまでわたしは頼りないだろうか、などと思いながら少しでも音のする方へと駆ける。

    下卑た笑い声と歓声とが聞こえる。幾台かの車が千束を囲んでいて、その中で非常に

    背の高い男が千束を……撲り付けている。

    あの千束が、地面に倒れ伏して好き勝手に撲られているのだ。


    わたしは単純に驚いた。千束に攻撃を当てられる人間がいたとはと。

    ええい、そんなことはどうでもいい。奴が持っている銃だけを狙う。

    見事当てて、その隙にその辺の連中も撃ち殺しはしないが、無力化していく。


    千束も跳ね起きてやられっぱなしであったことに復讐する。

    流石千束。

  • 98二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 22:11:47

    >>97

    ミズキが回してくれた車に二人して飛び乗るが、うまく乗れずに折り重なる。

    ミズキよ、こんな時間なのに酒を飲まないでいてくれてよかった。

    感謝する。


    ほっと一息つく暇もなく、なにかまた車がわたしたちを狙う。

    バラバラと銃弾がわたしたちに向かってくるし、もう本当に無理がある。

    近寄ってきているやつらを撃つのに弾を使い切ってしまった。

    千束もきっとそうだろう。


    それからわたしたちは車で逃げている間、どこかでばごんと爆発の音がした。

    振り返ることはできなかったが。

  • 99二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 22:12:19

    >>98

    さて、いつもながらちんまりとしているリスが今回はより小さくまとまっている。

    ミズキより聞き及んだ。クルミがDAに侵入し、その所為で通信障害が起きて

    わたしが銃乱射の判断を取る所以になった。それに、今回のリコリス狩りの端緒でもあったと。

    千束はそれを聞いてやい、このリスを煮て食っちまうか? それともチンしてやろうかと

    囃し立てる。


    さてどうしたものか、確かに千束の言う通りこのリスめをチンしてやるのも面白いだろう。

    しかし、そうする必要もない。


    あれはわたしがやらんとしてやったものだ。あれが合理的だとわたしが判断したことなのだ。

    この小さきクルミの所為ではないのだ。

    といってクルミをまな板から解放する。


    このリスは生かしておいた方が便利だろう。金の卵を産む鶏がなんとやらだ。

    と、思っていたら、早速卵を産んでくれた。


    真島、という名らしい。

    千束を撲った男というのは。

  • 100二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 22:13:13

    >>99

    山岸先生の許に行って、本格的な治療を受ける。

    先生が珍しがるぐらいなのだ、千束の怪我は。


    なるほど、千束の弱点は目であったかと合点した。

    千束はなんだかわたしを足りない子のような目で見て、そんなのは誰だってそうだろうとまで言う。

    いやいや、わたしは目があるけれど、千束並になれないぜ。


    たきな、もう一度一緒に住まないかと千束が持ち掛ける。ははあ、危険も確かに遭ったし

    一緒に住む利点は今一度確かめられたわけだ。

    では、千束がわたしにじゃんけんで勝ったならば良いだろうと言ってみると、案の定千束は

    悪戯っ子の如く笑い、自信満々だ。


    その笑みは何処まで持つかな?

    千束のさいしょはグーを押し切り、わたしはグーなしじゃんけんを強行した。

    これでやっと純粋に三割の勝負に持ち込めるというわけだ。


    果たして結果は、はは天よ、わたしは勝ってしまったぞ!

    柄にもなくわたしは欣然と踊ってしまった。

  • 101二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 04:49:34

    >>100

    ■7


    散々ッぱらわたしが追い求めていたDAがわたしを遂に呼んできやがった。

    なんだなんだと思いしが、真島の似顔絵を描けという。

    千束は自信満々である。たしかに千束はわたしより間近で真島を見ておったから

    上手く描けるはずだ。


    わたしだって遠くからとはいえ、真島を見たのだ。そんなに拙い絵にはなるまい。


    二人して鉛筆を手繰って真島の輪郭を浮かび上がらせる。

    よしよし上首尾だ。


    わたしと千束は息を合わせて、これを示す。

    楠木の奴はそれが真島かと問う。ああそうだと言い切る。

  • 102二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 04:50:01

    >>101

    そこで初めて千束の描いた絵を見る。なんだいこれは、きみの貸してくれた漫画にそんなのが描いてあった

    記憶はあるが現実の人間はそんなんじゃあない。

    わたしの方が似ている絵を描けるとはどういうことだ?


    フキ元隊長はモンタージュ写真と比べて全然似てないとわたしたちを叱責するけれど

    それは似ていないのだから仕方がない。

    文句を言うなら自分で描き給えと千束は言う。

    しかしながら、残念ながらフキ元隊長は見ていないのだから無理がある。


    楠木の奴はわたしたちの絵を見て、なにやら失望した様子でもう帰り給えと部屋を後にしてしまう。

    待ってくれ、わたしのは似ている。こんな絵画音痴と同じとしてくれるなと懇請したが、

    取り合ってくれぬ。この狭量め。

  • 103二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 08:03:23

    保守~

  • 104二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 12:57:23

    結構文量ある

  • 105二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 21:48:28

    >>102

    クルミ主催の盤戯が明日の昼に開催されるからきみも来たまえよと千束が言う。

    なんでも漫画家が参加予定なのだが、締め切りには間に合わないというからその代役だ。

    わたしは出られない、すまないがというと、

    なに、負けが嵩んだのが悔しいかね、とチクチク刺してきやがる。

    この赤リボンめ、わたしは日本語学校の先生をやるのだから断じてそんな弱腰な理由ではない。

    養成所やDAでは幾らでも先生先生と呼んでいたが、呼ぶのと呼ばれるのとでは雲泥の差だ。

    教師ははたで見る程楽じゃないと思っているから、準備をするのだ。


    今日はなんだか千束の様子が変だ。

    こんな懸念を吐いたところ、ミズキのやつは、千束は毎日変だろうと言う。

    確かにその通りなのだが、変さの具合が違う。

    今日はoddでstrangeではない気がする。

  • 106二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 21:50:39

    >>105

    やにわ千束がリコリコ閉店の危機だというから一同驚いてしまった。

    千束曰く、楠木の奴が店長と逢引して自分をDAに連れ戻す算段だと。

    携帯電話にちらりと映ったのだという。

    目がいいと余計なものまで視ちまうんだなと口に出すと

    クルミの奴がこの前の下着のことを蒸し返すからお盆で誅しておいた。


    そもそも楠木の奴だとなんでわかるのだ?

    という質問に千束は答えるに、楠木の奴が店長を誑し込まんとしているらしい。

    ほほう、この赤リボンめ、わたしの前で自慢とはいい度胸だ。

    寝ている間に大好きなタバスコを眼に入れてやろうか。

    真っ赤になれるぞ。

  • 107二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 21:59:06

    >>106

    しかし千束がそうじゃあないぜと言いながら胸に縋ってくるから

    やめておいた。わたしとてそこまでDAに戻りたいわけでもなしに。


    ただ戯れに「きみの代わりにわたしが戻ってもいいんだぜ」と言うと

    そんな寂しいことをいうなとしつこさが増す。

    「たきなはお呼びじゃあないんだろ」とリスが音を立てるから駆除した。


    ミズキ曰く、「こんなん」でもファーストであるから

    彼女がいないと支部として成立ないのだという。

    ははあ、これは確かに大事かもしれぬ。

    わたしは養成所戻しになってしまうし、クルミはまだ命が危ない。

    ミズキは高望みを止めたらよかろう。


    ミズキのやつは面倒見もよくてよく見ると器量もよいし

    頭も悪くないのだがら酒を止めれば一年以内に結婚することも無理ではなかろう。


    まあ……本人には言わぬが。

  • 108二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 23:25:08

    >>107

    とまれ、我々の目標はリコリコの閉店を阻止することに決まった。

    そうと決まればやることは早い。

    クルミにBar forbiddenの情報を持ってこさせる。

    ヒュンと軽々と出てくるのだらかこれは凄い。


    高級な様子らしい。わたしはあまりこういとところには明るくないが

    千束は目に見えて興奮しておる。ああ、こいつももしや長じたらミズキのように

    婚期を逃す人間ではなかろうか。雰囲気を求めて実を訊ねぬ者よ。


    しかし。とクルミがいう。

    こんなところで仕事の話などするか、単なる逢引ではないだろうか?

    たしかにそうだ。会議には似つかわしくない。店長と楠木の奴は愛人関係に

    あるんじゃなかろうか、とわたしも思案するがミズキと千束は否定するし

    ミズキに至ってはわたしの口から「愛人」という言葉が出たことに不謹慎に喜んでいる始末。

    そういうところではないかしら?

  • 109二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 23:25:32

    >>108

    暫くして、フキ元隊長とその子分の何某かがリコリコに来て

    警察署襲撃の犯人の映像を見せてくる。

    なに、ヤクザの逆恨みだろう、いまテレビでやっていたぞと思うが、

    なるほど、暫くDAから離れていて勘が鈍ってしまった。


    偽装されているわけだ。なんだこいつら、前に千束を襲った奴らに似ているな。

    沸々と怒りが湧いてきた。


    ふむ、ああ! こいつだ。こいつが真島だ。

    千束とわたしで映像に残った真島を指さす。

    千束が、私の似顔絵はやっぱり似ているだろうというから、髪色だけですねと答えておいた。

  • 110二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 23:26:11

    >>109

    さて、夜になって、店長がforbiddenに出かける頃合いだ。

    わたしたちも尾行するつもりだが、どうもわたしたちは演技が下手で

    何となく集まっているなかでも怪しさが醸し出されてしまうありさまだ。


    店長がいったん出て行ったことに安心してしまって、もう一度入ってきたときには閉口した。

    思わず咄嗟に鞄の中に手を入れてうどんを探しているなどと口走ってしまい

    怪訝な顔をされてうどんは納戸にあると言われたときには死ぬかと思った。

  • 111二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 23:28:37

    あれこれ200まで行く?

  • 112二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 08:05:56

    いきそう

  • 113二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 12:38:17

    >>110

    当たり前すぎるな。


    ミズキの運転で現地に向かう。

    が、その前にひと悶着があった。わたしはいつものようにリコリス制服に着替えて鞄を背負って

    出発の用意をしていたのだが、千束がそんな服じゃあパーには入れんぜと言う。

    確かに一理ある。服装のことなどはどうにも分からぬからきみの判断に任せるぜと言ったら

    言質を取ったという風にわたしを店の地下に連れ込んでは様々な衣装を着せかえる。

    青やピンクのドレスから、何故だか知らんが用意されていた背広までやたらと交換され

    最終的には背広に落ち着いた。まあ動きやすくてよろしかろう。


    千束はというと完全に活動的なるを諦めたのか深紅のドレス姿だ。

  • 114二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 12:38:53

    >>113

    それに例のフクロウの飾りを合わせている。千束はこれを大層気に入っているようで

    よくつけておる。


    これを贈られた者が今日も表彰されているから何かの才能が千束にもあるのだろうと思う。

    真っ先に思いつくのは銃弾を避けるあの芸だが、勘でやっているという。

    計算せずにやってしまわれるのはそれこそ才能の働きなのではないかとも思うが

    千束はそれを慮外においやって、何かもっと別のものがあってほしいと願っている。


    千束の願いは人の役に立つことだから、確かに銃弾を避けるのは特に直接役に立つかというと

    彼女の視点からだとそうではないのだろう。

  • 115二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 12:39:20

    >>114

    受付でクルミに指示された偽名を言うと、難なく通ることができた。

    こんな馬鹿げた名前でよく通すものだ。


    forbiddenの中には水槽がたくさんあって、なるほどこれは千束好みだろうと思って思わずきょろきょろと

    見回してしまう。

    そうこうしているうちに店長が来た。普段とは違う様子で大分めかしこんでいるが

    やはり楠木の奴が来るのではないか、来るとしたらどんな格好だろうかと内心笑っていたのだが

    来たのは果たしてヨシさんだった。

    千束は、なぜか得心したような顔をしてここから撤退することを宣言してわたしを追い立てる。

    お店の常連だし挨拶していかんかというが、千束は珍しく急いていて取り付く島もない。


    が、その割には途中で止まってしまってわたしは千束の尻に顔をうずめることになってしまう。

  • 116二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 12:51:24

    >>115

    そこから、千束はなぜか興奮してヨシさんのところに行ってしまった。

    わたしも訳が分からないままだがついて行く。

    どうやらヨシさんが千束に心臓を与えて、おまけでフクロウを残していった人で

    ――千束が十年懸けて探していた人だ。

    本部詰めの栄誉を捨ててまで待ち望んでいたその人。


    そう、千束の願いの一つが漸く叶う。

    よかったではないか、と千束の肩を叩きたい気持ちを抑えて

    その場を離る。積もる話もあると思えば。


    頬のネジが緩むのは仕方が無かろう。

  • 117二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 12:51:48

    >>116

    車寄せでヨシさんに出くわす。店長と二人で話したかっただろうに邪魔をしてしまって

    申し訳ないと詫びて、またお店に来てもらうように懇請する。千束はずっとあの人と会いたかったのだ。

    その思慕を汲んでやってはくれまいかと頼む。

    しかしながらその思いはどうやら一方通行のようで、ヨシさんは通じてはおらぬ。

    そして、千束の居場所はここではないとまで言う。

    違う、千束はずっとあなたを待っていたというのに。


    わたしに何か期待されても困る。

    わたしは、千束に何をすることも出来ぬのだ。

    なぜ、何かが出来るあなたが彼女を見捨てるような真似をしなければならぬのか、


    ぐじゃぐぢゃと思考がまとまらずただ走っていく車を横目で眺める他なかった。

  • 118二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 12:53:43

    >>117

    もう彼は来るまい。そう予感した。

    上でどんな話がされたかは知らぬ。

    千束とどんな風に喋ったかは訊けぬ。


    ただ、色よい返事はきっと千束にもしておらんなと思う。

  • 119二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 13:09:40

    >>11

    賑やかなリコリコにまだ千束の姿はおらぬ。

    彼女のいないリコリコは、騒がしくてもわたしには寂しく思う。

    不思議な感覚だ。ただ一人いないだけなのに。

    悪人は殺すべきかと漫画家に問われたから然りと答えるなどとしてそれを埋めていく。

    途中ミズキが面妖な格好をして例のバーに出かけようとしたが

    クルミにID消されてて愉快だった。


    店長ももう千束が来ることを今日は諦めている。

    千束との長い付き合いがあるのだ、彼女の落ち込むツボもわかっているんだろう。

    長い付き合いであればあるほどの、ある種の諦めというものが発動する。

  • 120二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 13:10:06

    >>119

    惰性の会話が蹴散らされるかのようにドアが開く。

    千束、ドアにガラスが入っていることを忘れてはないか?

    でもいい。さっさと着替えて給仕に回ってくれ給えとわたしがいうと、

    うんうんと言いながら、抱き着いてきた漫画家の頭を撫でる。

    あの漫画家は千束の意見を良く欲する。

    その所為で、悪役は死なないし、正義の味方は負傷する。

    まったく、いっそ千束を肖って描くと良い。


    とまれ、元気になってくれているのなら、わたしは嬉しい。

  • 121二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 19:52:13

    >>120

    ■8

    今日も今日とて常連で賑わい、リスはちゃっかりと客に混じって遊んでいる。

    まあこいつは特に戦力にならんから動き回られるよりは接待している方が利益に資するだろう……。

    それはともかく、この喫茶店には問題がある。


    いや正確に言うと、千束の提供する料理にだ。

    前から気になっていて、どこかで計算しようと思っていたのだが、

    あの経費のてんこもりのパフェはどうなのだ?


    三つ、四つと頼まれたから、もうこの際訊いてしまえ。

  • 122二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 19:52:34

    >>121

    収支計算はそこまで難しい話ではない。

    古いことわざに入るを量りて出づるを制すとある。

    まずどれだけ入ってくるのかを明らかにし、どれだけ出ていくのかを知れば差が分かるというものだ。

    その差、こそが利益となる。


    が、この差が逆に作用しているのがこの店の経営状態だった。

    完全に入って来る量より出ていくものの方が多い。


    こんなんでよく生きてられるな、喫茶店の利益なんかまったくないし

    依頼で得たお金だって消えていくのではないかと少し厳しく問うと

    そこはきみ、DAからの支援金があるんだぜとミズキが言う。

  • 123二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 19:52:58

    >>122

    まったく、そんなんで独立した気でいるのはいい気なもんだ。

    そうぼやいたら、千束がたきなまでそんな楠木さんみたいなことを言わないでくれと

    間抜けな顔をする。締まりがないのは顔だけにし給え、財布の紐がゆるゆるなのが問題だ。

    千束の非殺傷弾は特注で高いし、千束の思いつく品物は軒並み経費が掛かるのだ。


    あの団子三兄弟について愚痴っぽくなってよいか?

    あれは確かに団子を試験管に入れるだけだから作るの自体は問題はない。

    しかしな、洗うのがとても大変なのだ。試験管刷子で念入りに磨かねばならん。

    特にみたらしのやつは落ちないこと落ちないこと。

    あれにかかずらっている時間、他の作業ができないから、あの団子はそういう意味で

    経費の掛かるものなのだ。


    すくなくとも、千束に与えられた才能は経営のそれではないことは明らかだろう。

    そこでわたしが経理を買って出たのである。


    無論、わたしとて経営などをしたことがあるわけではないが、そうするほかあるまい。

  • 124二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 22:39:52

    >>123

    まず最初に目を付けたのが戦闘の経費だ。

    千束の非殺傷弾と後始末の経費がかなりの割合、八割以上を占めるのだ。

    一発あたり、わたしの銃弾の何倍もの価格をするものをわたし以上に撃ちまくるのだ、

    財政逼迫しないほうがおかしいし、いくら廃墟とはいえ弾痕や破壊の痕跡を残しては不都合。

    直させるのにも一苦労だ。


    試算上、この二つの項目が減らせれば文句はない。

    口を酸っぱくして言ったのにやったらめったら撃ちまくるから最後はわたしが捕まえなければならなくなった。

    千束はよそ見をしていると容易に捕縛できることを知れたのは収穫かもしれぬ。

    視野が常人より広い、というわけでもなかった。

  • 125二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 22:40:28

    >>124

    それから……頼りないのは大人たちもだ。

    ミズキは冷蔵庫を開けっぱなしにするし、店長は勘定の計算が遅い。

    クルミは、皿を落とす。


    やはりこの喫茶店には問題がある。


    それから、わたしたちの請ける業務の質にもあまり感心できるところもない。

    この前など、謎の爆弾処理を請け負ったが、代金を踏み倒そうとした不届きな連中がおった。

    しかしながら千束は自身の弾を一発しか撃たないで代金を徴収したから偉いなと褒めたら喜んでいた。

    わたしは銃弾を避けられないから平和的な話し合いで解決することを選んでおいた。

  • 126二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 08:53:30

    ほっしゅ

  • 127二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 10:11:16

    行動はすごいのに独白が淡々としてるのが本編たきなっぽくてとても良い

  • 128二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 10:38:28

    >>125

    節約ばかりでは限界があるものだ。利益を産まなければならぬ。

    川辺を歩きながら、こう考えた。

    単価が高ければ売り上げは経つ、低ければ量は頼まれる。中途半端じゃ役立たず。

    たしかに、パフェのようなものはあったほうがよいのは同意だ。


    千束スペシュァルは量の多さが問題点なのではなく

    作る際に必要な部材が多岐にわたるのが問題だ。

    寒天に求肥、栗金団、アイスクリーム、それからあんこ。細い棒状のお菓子も高い。

    見た目がどこかの武将の兜のようでもあるそれは見た目も大事なのだろう。

  • 129二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 10:39:08

    >>128

    フォトジェニックであれというのは千束の考えの根底にあるから

    つまらないクリームあんみつを提案してもあまりいい返事は貰えないと踏む。


    なるべく工程が簡単で、使用する部材は単一のもののがよいなと考える。


    ひゅうと、わたしの肩を冷たい風が追い越す。

    なるほど、温かい甘味というのものを作ってみよう。


    ホットチョコパフェというものを考えてみた。

    生地を焼くのは難しくはないし、その上にチョコを絞って載せて、黒蜜を掛けただけだ。

    これなら、千束スペシャルよりも低廉で、手間も少なかろう。

    千束のパフェを見るに、どうやら黒蜜とかチョコソースのようなものを掛けなければならないらしい。

  • 130二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 10:40:04

    >>129

    どうだろうか? とミズキに見せる。確かにわたしの料理はあまり評判が良くないのは事実。

    おにぎりさえまともに握れない奴の新商品案というのは聊か奇妙ではあるだろうが、

    だからといってそんなに固まることもないだろうに。

    どうしようかと思っていたら、千束が通りがかって、わたしのそれをみた。


    千束は、う、うんいいんじゃないかな。とだけ返す。

    千束に良いと言われたのならば、きっと大丈夫だろう。

  • 131二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 12:44:03

    ぼっちゃんはそもそも無鉄砲ではないよな
    遺産で600円(当時)を貰ってて、それを三等分して三年分の学費に回してる

  • 132二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 13:03:06

    >>130

    果たしてふたを開けるとこれは大評判なようだ。

    店の外には行列ができて、来る人来る人がみなこれを頼む。

    よしよし、上首尾だ。チョコパフェが頼まれるたびにチャリンリチャリンと音がするような気がする。

    いや、実際しているのだ。


    しかしそれがために忙しい。一息つく間もない。あのリスも駆り出されて給仕をする羽目になっておる。

    いくつかまとめて持ってもらうのは危険なために諦めて、ひとつづつ運んでもらう。

    それなら問題なかろう。

  • 133二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 13:03:32

    >>132

    客がたくさん来ているのに、先約として日本語学校の教員の仕事があったから後ろ髪を引かれるものの

    出掛けなければならぬ。


    そこでは千束が妙な抑揚で犬猫の発音を教えるから教育に良くないと思って訂正したが聞かぬ。

    もしやわたしの言った言葉に反応しているのではないか、と思って逆立ちと言ったらそうした。

    片腕で逆立ちするのは中々骨が折れることだと思うのだが、よくでるものだ。

    最期には首を裸締めされてしまった。理不尽だ。


    保育園の行事は独りでできることだから、千束を他の仕事に回す。

    なにも危ない仕事ばかりではないのだからずっと二人でいる必要はないのだ。

  • 134二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 13:03:57

    >>133

    子供たちに贈り物をあげている間に、千束が仕事を終わらせてきて

    私もよい子なのだからそれをくれと言ってきた、子供に混じってせびってくるのは恥ずかしくないのか。


    すると千束は貰うことは諦めたのか、自分の搔き集めて来た札束を子供に配ろうとする。

    それはいかんぞ。


    そうこう暮らしていくうちに、売上が右肩上がりになり経費は下がる。

    ようやく利益が出て来たということだ。

    利益が出たならば漸く投資に金を使えるのだ。

  • 135二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 21:36:27

    最後までいくのか

  • 136二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 07:43:38

    保守

  • 137二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 12:31:30

    淡々と続いていく

  • 138二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 15:22:07

    もう8話か
    この淡々さがいい

  • 139二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 21:25:23

    わかる

  • 140二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:55:23

    >>134

    店に音楽を流す設備を入れよう。

    例の団子三兄弟の試験管を良く洗えるようにする食器洗浄機も導入した。

    わたしたちの外回り中に給仕してくれる機械も買ってみた。

    なにしろ、この店は人手不足でもおいそれと人を雇うことはできないのだ。

    よしよし、これでいいだろう。

    クルミには給仕よりももっと向いている仕事があるのだ、市場の状況を見て投資に回してもらおう。

    などとクルミと相談している時に千束がやってきてわたしたちの行動を訝しむ。


    そんな折に千束の携帯が鳴って、見ると山岸先生だ。

    千束が対応に躊躇っているから横から借り受けて、代わりに受診できる日付を伝える。

    千束の健康は放っておくとすぐに悪化の方向に傾く。

    わたしが押し返さなければなるまい。

  • 141二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:56:30

    >>140

    検診の日にも、千束が来ましたぁをやったらどやしつけてやろうと思っていたが

    ちゃんと向かったようでなによりだ。

    常連さんも迎えて、今日も穏やかに終わるだろうと少しばかり暢気になる。


    朗らかな気持ちで少し奥に引っ込んでみた。

    クルミがいつもにらめっこしている画面にちょうどわたしの画像が載っていて、

    ははあ、リコリコの広告でも作っているのだなとちらと覗き込む。


    ……

    言うまい。わたしが嬉々として提供していた商品がまさか消費者をして

    かかる下賤なものと相比較せしめるものに至るとは、わたしだってそんなこと気づかなかった。

    思えば千束やミズキ、クルミの反応も手放しに喜んでくれるものではなく、

    何かしらの含みを持ったものだったと……。

    それはわたしが料理が下手であることからくるものであると思っていた。

    しかし、違ったのだ。

  • 142二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:56:56

    >>141

    もうこんなものは出すのはやめると意気消沈して言うが、

    売れてるんだからいいじゃないのとミズキはあっけらかんとと答える。

    現金な奴め。

    しかも、「やっと気づいたか」みたいなことまで言う。

    貴様、やはり知っておったな……。


    まてよ、わたしが一番最初にあれを見せたのはミズキ。

    ミズキが気づいてもなお、黙っていたのが千束にも伝播し……となると

    この恥さらしは元々ミズキの所為か……?


    しかしまあ、ミズキの言う通り、売れているのだからよしとしよう。

  • 143二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 23:55:36

    >>142

    山岸先生から連絡がある。

    どうしたのだろうと思って取る。千束が来ていないとのこと。

    お店が忙しくないのにすっぽかすことは千束らしくはない。

    連絡すると、よかった出てはくれる。

    しかし急用ができたとはどういうことだろうか?


    妙に気になってしまい、千束の家に向かう。

    どうせまたあれだろう。他の場所にも定期的に行きなさいと

    言ってもことごとく無視するのだあの赤リボンは。


    ミズキに謝ってリコリコを出るが、自然に、次第に早足になってしまう。


    呼び鈴を鳴らす前にドアが開けられ、なんということだ。

    真島がのっそりと出てくるではないか。わたしは咄嗟に銃を抜きそれを殺そうと

    ――千束には申し訳ないが、したがあっさりと腕を抑えられ、猫のように

    廊下から地上へ飛び降りて逃げられてしまった。

  • 144二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 01:42:32

    >>143

    リコリコに千束を引っ張っていって、真島が来た件を店長に報告する。

    千束の居場所が割れて仕舞ったことがどうしようもなく怖い。

    そりゃあ千束は最強で、人間業じゃあないことだってやってのけるが

    人間なのだ、寝たり病気になることだってあろう。敵というのはどうやらそのようなときに

    忍び寄るものなのだ。


    それから、真島も例のフクロウの飾りを持っているらしい。

    どういう理由かは知らぬが、なぜか持っているそうだ。

    ……考えたくはない。千束は吉松のことを大事に思っている。

    あんなに素っ気ない態度を取られたとしてもだ。


    その思い出の象徴ともいえるフクロウが、自分とその仲間に危害を加えるような人間も持っていると、

    渡されたと知って、千束はどう思っているだろう。


    きっと気分が良くないはずだ。

  • 145二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 08:25:25

    保守しておく

  • 146二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 08:57:03

    まもなく心臓のシーンが来てしまう…

  • 147二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 13:33:14

    >>146

    たきな視点だと真島との戦いが殆ど抜けてるから

    あのこが大体クライマックスだな

  • 148二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 13:40:38

    >>147

    自分は千束助けるため旧電波塔向かったり延空木登ったりしてる時のたきなの独白知りたい

    千束絶対助けるって感じなんだろけどたきななにも言わずにすごいことするから

  • 149二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 13:42:07

    てかたきなのクライマックスはシャッターと千束吊り下げだと思うわ

  • 150二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 22:34:53

    >>144

    わたしは千束に申し出る。三回以内に電話にでること、もし出ないようなら

    次にもう一度、呼ぶからそれを以てわたしの出発の合図と為すと。

    自分でもこんなことされたらうざったくて仕方がないがこの際仕方あるまい。

    幸い千束はあまり嫌がってはいないようだから良しとしよう。

    別の住処に移り給えというのは渋られる。

    また遊びに行くからと言ってなんとか了承させた。


    ご飯だってなんだって作ってもいい。

  • 151二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 22:35:18

    >>150

    ふと、千束がいない。

    リコリコの中に千束が居なくなってしまった。

    きょろきょろと店の中を見回す。

    はぁ、とわたしは息を大きく吐いた。店の前の縁台に座っていたのが硝子越しに分かったのだ。


    少し冷えて来たのにも関わらず千束は赤いリボンを揺らして銃を磨く。

    千束の銃は知ってる。DAの支給品ではない。

    軽量で取り回しのしやすいグロッグではなくて、棘のついた制動器が具備せられた銃。

    訊くと、フクロウと一緒に吉松に貰ったもの……だという。

  • 152二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 22:35:59

    >>151

    大切。

    そんなのは分かっている。千束はずっとその銃とフクロウとを身に着けていた。

    日常で二つも、彼に関するものを。

    それを大切でないと言ったら嘘つきの悪評を免れないだろう。


    寒くなりましたねとわたしは言った。

    ずっと銃の話題になってしまえば彼のことが忘れらないままだ。


    そうだねと千束は言って、わたしが来た時のことを追想する。

    あの頃はまだ温かくて桜が咲いていた。


    あれから吉さんこないね……。

    彼女は別にわたしに言ったのではないと思う。

    ただ独り言を言ったのだと思う。それをわたしがたまたま聞いてしまったような

    そんな雰囲気だ。だからわたしに何か解決してほしいというこどでもない。

    ただ、彼女はそのような事実を自分自身に対して再確認しているだけなのだ。

  • 153二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 22:36:42

    >>152

    ああ、吉さんは来ていない。月に一回や二回は来ていたのに

    あれから一度たりとも来ていない。


    千束はあの扉の鈴が鳴るたびに、あの明るい顔をそちらに向けるのは何のため。

    彼が今度こそ来てくれるのではないかと願っているからだ。

    無論、他の常連さんや新規の人が来て嫌なわけではあるまい。

    でもわたしは、彼女の期待を帯びたその顔が笑ったまま絶望していることを知っている――つもりだ。


    その鈴を鳴らしてやることはできない。

    クルミに居場所を突き止めさせて、無理やり引っ張ってきたとしても

    それじゃあ千束は喜んでくれない。


    わたしにできることはない。

    ただ、わたしは彼女の寂しさというか、何かの穴を何かで埋めることを試みるだけだ。

  • 154二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 22:37:10

    >>153

    千束が欲しがっていた犬の飾り。

    正直言って、あのフクロウよりだいぶ造りは安っぽいし

    変な顔だし、わたしから貰ったって大して嬉しくないだろう。


    ああ、バカな真似をしたと思って顔を、目を逸らす。

  • 155二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 23:14:04

    >>154

    「最近きみは大活躍じゃないか」と上官からお褒めの言葉を頂く。

    ……千束の大切なところなら守りたいと思ったなんて

    恥ずかしくて言える訳ないだろうに。

    でもどうだ? 養成所に戻されたくないなんて言うのは、今の千束に言うべき

    照れ隠しとも思えない。

    だからわたしは降伏した。店がつぶれないようにと思っただけ。大切な場所なんでしょう?

    とだけ言った。


    千束は犬の飾りを鞄につけながらわたしにお礼を述べた。

    そんな風にされるとは思ってもみなかった。

  • 156二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 23:17:54

    >>155

    定期検診に行けと、念を押す。三回ほど延期されているのだ。

    千束、少しは自分の身体のこと考えてくださいと、口から出そうになる。

    ああそうだ。なぜ行くのを渋るのか聞いておいた方が有意義だろうか。

    すると注射と彼女は存分に躊躇った後言った。

    銃を向けられても幾らでも対処できる電波塔のリコリスが注射が苦手とは

    これは愉快。他のリコリス――千束に憧れている奴らが知ったらどう思うか。

    笑ってしまうに違いない。なにもわたしの笑いの箍が緩いわけでもないのだろう。

  • 157二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 23:18:32

    >>156

    今日はその検診日。

    千束を送り出して、わたしたちは通常の業務に精を出す。

    そうだ、ちゃんと注射を受けて帰ってくるんだから今日は千束の好きな夕飯でも

    作ってみようか。なんて思いながら接客をこなしているのだが、

    予定の時間をとっくにすぎているのに帰ってこない。どこかに寄り道している

    ――例えば診断前には自粛していた甘味を食べているとか。


    でもそうしたらわたしにぐらいは自慢を兼ねた連絡が来るはず。

    ミズキもしびれを切らして、おそらくこれは心配ではなく単に人手不足を倦んでいるのだとおもうが、

    千束遅い遅いとグズる。


    わたしも心配になって電話する。

    約束の三回を過ぎてもなお、彼女は出ない。


    これは、千束の身に何かあるにちがいない。

    わたしは着替えて千束のいるだろう病院に駆け出す。

  • 158二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 07:41:06

    保守

  • 159二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 12:47:33

    ずっと読んでるとクセになる語り口

  • 160二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 16:06:09

    >>157

    たきなの千束ピンチ察し能力はスゴい

  • 161二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 19:18:30

    ほすう

  • 162二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 21:06:43

    >>157

    ■9


    病院に着く。

    妙だ。受付に誰もない。誰もというのは文字通り誰もだ。

    一斉に休憩をとることはないというのに。


    胸騒ぎがして廊下を走る。ツルツルと滑りそうになる。

    どこにも誰もいない。

    こんなのはおかしい。


    千束! 千束は意識がないようでその周りにいる奴が何かをしたはずだ。

    ――殺す。


    いや、千束が喜ばない。

    なんてつまらないことを考えていたせいで外す。

  • 163二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 21:07:23

    >>162

    千束の近くにいた女は銃を取り出してこちらにいくつか撃つと

    それは、躊躇いなく窓を破って地面に着地して走り去る。

    すぐに塀を曲がって逃げて、この位置じゃ追えなくなる。手練れめ。


    とにかく、千束が目を覚まさぬ。

    揺らしても叩いてもどうしようもなかった。


    心臓の鼓動が聞こえないことがこんなにも恨めしいとは思っていなかった。

    ただ、体温があるのと、瞼のひくつきだけが、彼女がまだ生きていると

    わたしに教えてくれるだけだった。

  • 164二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 21:07:51

    >>163

    白かった日の赤くなる頃に千束は漸く目覚める。

    わたしが呼んだみんなを見て千束はひとり、きょとんとした顔。


    しかし、千束は自分が何か加害されたことを予感していた。

    何をされたのかと山岸先生に問う。


    先生は、人工心臓は過充電を以て壊され、もう充電できないだろうという。

    充電ができないとはどういうことだ?

    わたしが受け取れないままというのに、千束は普段の通りだ。

    あとどれぐらい持つかと。


    それに先生は、二か月と答える。安静にしていればもっともつとも。

    二か月とは一体……いや。

  • 165二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 21:08:24

    >>164

    この流れで分からないほどわたしは馬鹿ではなかった。

    充電ができない、あと二か月。答えは一つしかない。

    しかし、わたしの口から勝手に漏れ出る。


    「何が二か月なのか」と。

    それは悲鳴にも思えた。


    千束の余命だ。

    と、店長が確定させる。


    機械ならば、壊れたところを交換すれば治る道理だ。

    でもそれもできないそうだ。千束のそれは特別製で、あまりにも特別だから

    唯一無二だから、だから、もう交換できないのだと。

  • 166二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 21:10:00

    >>165

    わたしは踵を返して病室を出ようとする、が千束に行き先を訊かれ

    あの看護婦を殺すとだけ言った。案の定千束はそれを望まない。

    それ自体に腹が立った。

    あの女を殺さなくてもいいと彼女は言う。

    いいわけないでしょ、と。その次の句がわたしは継げられない。


    もともとそんなに長くなかったと彼女が言ったからだ。

    元々……? 

    千束が、「あいつを殺しても意味がない」のようなことを言うのは予想がついていた。

    わたしがその犯人を殺したところで千束についた傷は消えないのだから

    復讐は望まないだろうことは、然るべく認識していた。


    けれど、元々長くなかったというのはわたしの耳には一度たりとも入ってきたことのない事柄だった。

  • 167二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 22:07:26

    >>166

    正直その後の数日の記憶はない。


    わたしは生ける屍のごとくあった。

    勿論、仕事はした。千束が例のパフェを作って給仕しているところも見た。

    家に帰れば自動的に飯を喰らい、服を洗い、湯を浴み、そして千束に教えられたように

    髪を梳り、温風で乾かして、眠る。


    千束がDAに連れていかれる。

    もう彼女には時間がないのに最後まで使い切るつもりか畜生。

    余命二カ月の人間を使わなければならないほどの逼迫した組織なんか潰れてしまえ

    そんな組織によって守られている平和など滅びればいい。

    全部偽物の、嘘の、そんなものなんて。


    ――千束はそんなこと言わない。


    言わない。千束は、そんな風にはならない。


    せめて千束の愛したここで最期を迎えさせてあげたい。わたしも許されれば一緒にいたい。

  • 168二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 22:08:26

    >>167

    畜生の使いが来た。フキ元隊長と何某かがリコリコに来て

    隊へ戻れという便りをくれる。

    もし、春のうちに貰えていたのならばどれだけわたしは喜んだか分からない。

    しかし、最早わたしにとっては邪魔なものに他ならぬ。

    真島の討伐も、日本の平和も、千束の前には劣後する。


    しかし、千束は……残りが少なかったことをわたしに言わなかった?

    人工心臓であることも言ってくれず、そして残りが短いことも

    彼女はわたしに二つ匿した。


    二度あることは三度とも古いことわざに言う。

    あと三つ四つ隠されているのだろう。わたしはまだ信用に値せぬ。

  • 169二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 22:09:38

    >>168

    ああ、上の空だ。犯人を取り逃がす。千束を走らせてしまう。

    千束を追いかけてしまい、既に捕縛していた他の犯人たちを放置してしまう。

    役立たずのリコリス、あの元隊長にそう評せられたことをふと思い出す。

    だから、まだ彼女に心を開かれていないのだな。


    ある日のことであった。

    わたしはうっかり傘を持たずに外に出てしまい、少し降られてしまった。

    尤も、持っていたとしても差す気も無かったろうが。


    勝手口からリコリコに這入ると、珍しくクルミと店長とが話しているようだった。

    邪魔をすべきではないかと思って少々静かにしていると、クルミの口から洩れる言葉に

    耳の全てを持っていかれた気がした。


    長い話だったが、畢竟吉松が千束を殺しかけたということだ。

    狙いがなんなのかは正直測りかねる。が、真島やあの看護婦を差し向けた時点で

    千束の敵に間違いはなかろう。

  • 170二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 07:53:04

    後半戦や

  • 171二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 08:11:16

    2ヶ月はもちろんだけどやっぱり隠されてたこともショックだったよね
    本編放映時あんまり言われてなかったけど
    こっからの怒涛の切り替え力行動力は凄かった

  • 172二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 13:29:07

    >>171

    この辺は触れてなかったね

  • 173二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 22:15:45

    >>169

    吉松に訊けばすべてが分かる。しかし今の様子だと店長からもあれには辿り着けない。

    すると真島か。……わたしはDAに戻らなければなるまい。

    断ろうと思っていた。けれど、千束を助けられる糸が仮令細くともそこに垂れているとしたら

    わたしは望んでそれを取らなければなるまい。


    ……これが全て水泡に属して、二か月を一緒に過ごせばよかったと

    後悔することがあったとしても、わたしは――。


    わたしから言わなければならない。

  • 174二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 22:16:29

    >>173

    言うにしても、「わたしDAに戻ります」とだけ千束に言っても、ああそうかい達者でなと

    素直に送り出されてしまうだろう。彼女は、最初に会ったときにわたしの復帰に協力すると

    快く申し出てくれたのだから。


    それだけではよくないだろう。

    わたしは、なにもまだ千束に返せていないのだから。貰いっぱなしでは心持が悪い。

    しかしながら千束にわたしがあげられるものなどない。

    犬の飾りは喜んでくれた。しかしまた物をあげるのでは芸がない。ただ、対案がないのだ。

    自分の世間知らずさに腹が立ってくる。

    椅子に腰かけて天井を仰ぐ。つけっぱなしにしていたテレビから明日の天気予報が流れる。

    普段気にならないそれすら、今は邪魔に思えて消そうと思ったとき、全ての情報が繋がる。


    これは、最期の思い出作りなんかではない。

    わたしがDAにちょっと出張する前の休暇プログラムだ。

  • 175二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 07:43:39

    保守しとく

  • 176二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 13:26:27

    保守保守

  • 177二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 19:24:10

    保守

  • 178二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 01:23:25

    >>174

    それが完成したのは丁度東の空が明るくなる頃合いであった。

    曙の光が印刷機から吐かれる紙を照らせばつるつるとした表紙を鈍く光らせる。

    表紙にアレを描くかどうかを少し逡巡した、が彼女は屹度これが好きだろうと思って描いておいた。


    衣装棚をあける。掛っているのはみな悉く千束の選び給いしものばかり。

    その中でも今回の順路にちなんだものを選ぶ。


    良し。衣装棚を閉めた。参ろう。

  • 179二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 01:24:16

    >>178

    リコリコに這入って、千束を座敷に呼ぶ。

    栞を出して、説得提案しようと思ったが、すぐに快諾してくれる。

    店長も急な話だったのにも関わらず、送り出してくれる。有難い。


    千束はいったん家に帰って着替えるという。

    それは織り込み済みだ。わたしだって制服ではないのだから洒落者の千束がそうしたいと

    言い出すことは承知していたから共に帰る。

    その道中も彼女は栞を見ながらどこ行くそこ行くと楽しげ。

    下手くそでも作っておいてよかったとも思う。

  • 180二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 01:24:40

    >>179

    まず最初に向かったのは前に訪れた複合施設だがそこについて、千束が

    そんな夏服で寒くないのかいと訊いてくる。

    確かに寒いが、千束が選んだものだからきておるのだ。それに今回の順路に合わせるのは

    これしかない。


    すると、千束がわたしの冬服を見繕うとのことで、早速割り込みが入る。

    しょうがない人だ。

    毎度千束の着せ替え人形になるが、なるほど、確かに冬服では初めてかもしれぬ。

    存外、夏服に比べて着脱に時間を食うものだ。あまり掛けていられないのだが。

    リンリンと時報が鳴る。次の順路を巡らなければならぬ。

    外套がなんだとか千束が言っていたがこれでも十分に温かいのだから

    これでよいのだ。先に進まなければならぬ。

    千束は戸惑ったような、不平のような雰囲気の声を出すが、時間は限られている。


    車で競ったり、犬のぬいぐるみを取ったり、化粧品を見たり、

    ケーキを食べたりと消化せざるべからざるものが多きこと甚だしい。

  • 181二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 10:05:23

    スレ主よ
    もしやと思うが、昔「戦闘潮流」とか「西住ちゃん」とか書いたりしてた?

  • 182二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 11:18:23

    >>180

    しかし、それのなかの、二等重要な場所が敢無く休館せられていた。

    わたしとしたことが、これを想定していなかったとは、思わぬ失策であった。


    千束が悲しむのではないか思って申し訳ない気持ちになるが

    彼女は案外平気そうな顔をしてついてこいと言う。

    人生というものは計画通りにはゆかぬと、老人の如く述べて今度はわたしを導いていく。


    果たしてそこは釣り堀であった。

    たしかに魚つながりではあるものの、これじゃあ千束に満足のいくようなものではないだろう。

    綺麗な水槽もチンアナゴも、クラゲもおらぬ。

    せめて数匹釣れればと祈念するも、糸は震えぬ。

    水族館が開いていれば、寒さから彼女も守れたというのに。


    楽しいですかと訊く。こんなことに付き合わせてしまったが。

    そんなつまらぬことを聞くな、といった風情で

    「楽しいよ。たきなといればさ」

    などと言う。

    気を遣わせてしまったな。

  • 183二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 11:19:18

    >>182

    リンリンとまた時報。

    この音の鳴るたびに彼女と過ごせる時間が減っていくと自覚する。

    時は流るるものと知りつつもこれを止める手立てはどこかにありはしないか。


    ここから、秘密の場所は片道に一時間余り。

    千束と喋るだけを以てこれだけの時間を過ごせることももうないのでしょう。

    そうとは知りながら、若干の上の空で彼女に接してしまう。

  • 184二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 11:20:17

    >>181

    それは別漱石ですね……


    >>183

    目的地に着くと思いのほか寒く、二度三度と苦沙弥をしてしまい、

    千束に襟巻を与えらる。


    流石は千束、鋭いものでわたしの目当てを何となく察した。


    観念して雪を待っておると言った。

    千束は笑ったが嘲笑ではなかった。寧ろなぜか愉快そうに笑う。

    少しわたしは残念に思えて、完璧な日程だったのになとこぼすが、

    神は気まぐれだから許してやれと、神に対しても尊大な態度をとる。


    今日だけはやめてほしかった。思わず口から洩れると千束は

    それを自慢の感覚器で捉えて逃がさず、そして意外と怜悧なその頭で解に導く。


    本当はわたしの口から言わなければならなかったこと。

  • 185二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 12:12:18

    たきな視点やっぱりいいなあ

  • 186二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 12:15:28

    >>184

    そう、DAに戻ることになったこと。

    千束にしてはわたしが嬉しいか嬉しくないかの態度を決めかねていることが不思議なのかもしれぬ。

    あれほどまでにDAに戻りたがっていたわたしが、頬に笑みすら浮かべぬことから。


    雪降れかしと千束も肯う。

    理不尽なることばかりではないか? 千束の人生は。

    思わずわたしは憤す。


    しかし千束はあくまでも太平楽にて

    自分に届かぬことを悩む理はないぜ、順応性を高め、あるがままを受け止める。

    そしてできることを全力でやる。そうすればいいことあると。


    そしてわたしの労を労う。

    わたしのやってきたことは無駄ではなかったと彼女が言った。

  • 187二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 12:18:22

    >>186

    ああ、彼女には敵うまい。

    冷えた拳同士がぶつかるが、わたしの中は暖かくて仕方がなかった。

    それがあらゆる血管や神経を巡って最後には目に表出する前に。


    わたしはDAに報告しなければならぬ。

    一旦そこへ戻ることを。


    千束の襟巻を贐としてもらう。返さなければならぬ。


    だから「ありがとう」だけでなく、いってきますと言った。

  • 188二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 12:18:50

    >>187

    神は気まぐれである。或る時はわたしの行き先を変更させ。また或る時は天候を変える。

    わたしが石段を蹴って、下に降りたるその時に、また神は気を変えた。


    わたしが希ったそれが優しく柔らかく空から落ちる。

    思わず振り返ると千束もまたそれを欣然として受け、わたしに笑みを返す。


    家に帰るまでが遠足と千束は保育園の子供たちに言っていたことがある。

    だから、家に帰るまでがこのプログラム。

    その中できちんと雪が降った。だからわたしたちのこれは、成功裡に終わったと言っていいのである。

  • 189二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 13:19:56

    >>188

    ■10


    楠木の奴が壇上で偉そうに我々に真島を殺せと垂れる。

    わたしにとってはもう既知の情報ばかりではあるが、

    潜伏先が知れたのは好都合。


    しかし、わたしひとりで突っ込むわけにもいくまい。

    逸る気持ちは何を以て抑えんや。


    ともかくも、情報を確定させよう。

    真島の依頼主を捕獲したと言っているから少しばかり訊きたいことがある。

    反抗的な奴だ。殺すか?


    やめておく。


    延空木を標的にしていることぐらいし吐かん。

    アラン機関が銃取引に関わっていることぐらいしか分からない。

    しかしそれで十分だ。銃取引の裏には吉松がいる。

  • 190二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 13:20:33

    >>189

    潜伏場所に強襲を掛けるが既に逃げらる。

    代わりに、画面に真島が映っていてその不愉快な笑みがわたしたちを舐めるように見る。


    なにやら楠木の奴と長話しているがそんなことはどうでもよい。

    吉松の居所を訊き出せればそれでいい。

    が、真島ははぐらかすばかりで答えはしない。

    そのうちに通信が切れる。糞野郎。


    隊の中の誰かが話していたのだが

    ここの船に爆弾でも仕掛けられていたら私たち全員死んでいたと。

    たしかにそうだ。今回、楠木の奴も来ていたのだから、それはあまりよろしくない。

    ……とすると、DAの中ではリコリスのみならず楠木でさえも捨て駒でしかないという扱いなのだろうか?

  • 191二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 21:07:24

    保守

  • 192二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 02:20:12

    >>190

    延空木を狙うということだからわたしたちはそこの警備につく。

    警備――とは名ばかりで抹殺計画そのものに過ぎないのだが。


    真島は延空木に来て破壊工作をするのだろうとDAは予測していて、

    そこで待ち伏せて殺す気である。


    が、しかし空振りもいいところだった。

  • 193二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 02:21:22

    >>192

    ■11

    どうも、エレベータが真島の手によって制御不能になっているようで

    一旦仕切り直しと言うことになった。

    仕切り直してどうなる敵でもあるまい。

    さりとて、相手方も狡猾だから策なしではどうしようもできまい。


    わたしとしては吉松の居所を知っている部品として真島を取り敢えず生かして捕えなければならぬ。

    ……フキ隊長に頼んでみるが、それは彼女の権限のうちにない。

    それはわかっていた。談判猶予なく殺すことが先決となっておる。

    しかし、それじゃあ困るんだよ。千束に関する情報を握っているのがあのワカメ頭しか現状おらんのだ。


    バスの中で実行部隊編成が映し出された。


    丙隊六番に千束の名あり。

    千束を呼んだのか?! あの病人の千束をか? 正気か? 

    楠木の奴狂ってやがる、堅物白衣だとは思っていたが、冷血だとまではおもってはおらなんだ。

    しかし、奴の弁では千束と店長との連絡がつかぬという。これは不可思議。

    それなのに我不関焉を掲げるとは。いいや知っていた奴はそういう奴だ。


    よろしい、そっちが何も知らないというのなら、まずはわたしがその不可解を確かめる。

  • 194二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 02:23:30

    >>193

    バスを飛び出して電話をするが、繋がらぬ。

    三回掛けてもなお、なにも。あの約束を破るなど千束らしくもない。


    リコリコの扉には千束による文字の閉店の知らせ。

    閉店とはどういうことだ? 鍵を持っていてよかったと思う。

    開けると、千束と店長の携帯電話が机に置かれている。

    二人とも揃って忘れるなんて絶対によくないことが二人の身に降りかかっているに違いない。


    ちっ、楠木からの連絡か。あと三十分で再突入だから戻れという。

    これに対して異論はない。作戦までには戻ると言ったのだから。

  • 195二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 02:24:48

    >>194

    しかし、話しかけるいい機会だ。だが残念なことに楠木も吉松のことを知らぬという。

    なるほど……やはり根深い問題ということがわかる。

    何則、DAのような組織には情報統制の階層があり、どの位置にいるかによって

    知るべきこと、知ることを得べきものとがよく分かれている。


    千束の人工心臓の有無については恐らくフキ隊長だって司令だって知っている。

    しかし、それがどこの技術なのか、どこから来たのかについてはもっと

    別の階層によって管理されている情報なのだろう。


    DAの正規の方法じゃあ、わたしは千束の人工心臓について、知りたいことが知られる蓋然性が

    低すぎるということかこの短い界隈で推測できるというものだ。

  • 196二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 02:25:49

    >>195

    やはり真島に訊くしかないとわたしの頭に浮かぶが、

    司令の奴、それを見透かしたように、知りたいことがあるなら本人に直接訊けと言った。


    そうする機会は与えてくれるという事だろうか?

    よし、戻ろう。


    隊列で殿を務めることになる。

    サードが多く編成されているから、致し方ないこととはいえ先頭に立ちたかったものだ。

    さすれば最初にわたしが真島を無力化しそのままDAに運ばせられるのだが。

  • 197二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 11:41:42

    >>196

    などと考えていると当然のようにクルミがインカムから話しかけてくる。

    わたしには便利だから良いが、DAの設備はいっぺん見直した方が良いと思う。


    なんでも千束の心臓がもう一つあるとのこと。

    クルミの推察では吉松が持っているはずだと。

    アランの支援を受けた研究者が作ったものを吉松が持って行ったということだ。


    ここ最近の足取りはクルミですら見つけられないらしい。

    ただ、もうこれは吉松さえ見つければ全て解決するということがわかった。

    幾つか気がかりなのが、リコリコの閉店と千束と店長の行方だ。


    どうしたものだろうか? こちらからクルミに連絡が取りづらい以上今訊いておきたい。

    リコリコの閉店は千束の意思によるものだという。よかった、脅されたとか

    不本意なものでなくて。

  • 198二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 11:43:50
  • 199二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 12:14:33

    >>198

    おお2ができてる

  • 200二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 23:40:32

    埋め

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