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まさかの文学
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まさか最終話までやるのか
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暫く金網にしがみついていた猿は、白い車の到着の時も散々文句を垂れていたが
後は大人しく乗った。往生際が悪い。
このクマのぬいぐるみ……リスだそうだ、は自ら運転している。
わたしたちは別に要らないのではないかと思って後ろで静かにしている。
千束は頻りにあのリスに話しかけている。
戸籍がないこと、制服が都市迷彩の役割を果たしていることなどをぺらぺらと
バラしているがよいのだろうか?
しかし、このリスは数時間後には日本から立つのだ、あまり害はなかろう。
それに、リコリスへと依頼できる道があるのだから、わたしたちについて多少なりとも知っているのもある意味当前かもしれぬ。
態々隠すことも、気をもむことも無かろう。
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- 31二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:25:01
- 32二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:26:04
やにわ彼女はわたしを抱きしめる。分からない。
彼女の言うことはわたしの頭を上滑りしていく。わからない。
ただ、一つわかるのは、彼女はわたしに何も押し付けていないということ。
上官であるのだから、わたしに「リコリコに戻れ、ゲームをしろ」と命ずることができるはずなのに
そうはしなかった。どの赤いのとも違った。
そうしてわたしの頭がぼうっとしていたころにわたしを持ち上げて駒のようにくるくると回った。
これもわからない。
会えて嬉しいとはどういうことなのだろう?
ともかくも彼女はわたしをぐるぐると回してどうにも満足したようで模擬戦に出て行った。
なに、私怨めいたことを口に出していたがそれも嘘だろう。
……
わたしの起こした喧嘩を彼女が買う必要抔ないのだ。
- 33二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:26:59
- 34二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:30:08
続き期待
- 35二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:31:05
三話までしか書いてないわ……
- 36二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:45:46
こんな場末じゃなくこうちゃんとした所に‥いやどこで見せればいいんだこれ
- 37二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 07:11:17
保守
- 38二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 12:54:13
保守っとくか
- 39二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 15:14:51
自分も保守
- 40二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 15:18:09
坊ちゃんの向こう見ずな性格はたきなに似てるな
- 41二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:05:40
- 42二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:06:28
- 43二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:06:59
- 44二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:07:33
- 45二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:08:16
スカートを持っておらんのかと訊かれたから持っておらぬと答える。
抑々リコリスが制服以外の衣装を持つ謂れなどない。
銃は抜けないわ、防弾防刃機能は失うわで私服に利点などなかろう。
……とまれ、何を選ぶかなどはとんと分からぬから千束に投げておいた。
するとまあ、不思議に彼女は昂揚した。
服屋に着くとわたしで着せ替え人形を楽しむ千束。
どれがいいかとも訊くが、わたしとしては特に好みはないからきみの好きなようにし給えと
しか答えられぬ。
あれ着ろ、それ着ろと忙しい。
しかし、彼女はわたしが何を着ても可愛い可愛いと赤子に対するように声掛けるから少々面映ゆい。
しかしながら、本来の目的は下着なのだ。
すっかり忘れ果てるところなりき。
- 46二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:09:26
- 47二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:10:25
- 48二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:11:04
- 49二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:25:44
続き書いてるよ……
- 50二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 23:14:15
- 51二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 23:14:40
チンアナゴも魚だという。確かに穴子は魚であるからチンアナゴも魚であるのは
道理が通っているな。と一人満足していると、千束が水槽の横で気でも狂ったのかと
思うような動きをしている。
リコリスは目立つべからず、これを彼女の辞書に入れ忘れた者がおるな。
わたしの諫言も千束には通じず、波間を漂う海月の如く彼女は行ってしまわれる。
制服を着ていない時はリコリスじゃあないんだよたきな、などと得意げ。
ははぁ、わたしに、リコリスたらざる一日を与えんがために制服を禁じたのか。
この千束というやつは本当に分からぬ。リコリスでないわたしは何なのだろうか。
千束はリコリスでなくなっても、何か残るものがあるのだろうか。
- 52二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 23:19:18
続きキタ!
- 53二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 23:20:36
- 54二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 23:21:18
- 55二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 23:21:47
- 56二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 23:22:29
さてと帰ろうとすると、周囲にリコリスが多数配備せられている。
そして、地下鉄から爆風がゴウゴウと来る。
なにかあったに相違ないと思わず駆け出すが、千束に止められる。
制服を着ていない時はリコリスじゃあない。
そうだ。命令も下っておらぬ、ここで行くのは作戦に支障を来たすこともあり得る。
しかし、あの地下鉄にリコリスがいたとしたらこの爆風だ。無事ではすまぬだろう。
――? 今までこのように味方を特に心配したことはなかったはずなのだがと
千束に腕を引かれながらわたしは自分の感覚に狼狽える。
千束がわたしの下着を履いていることをミズキに咎められ客にばばんと公開せられている。
わたしもなぜか被害に遭うが、ミズキは千束にご執心でそれがなぜか愉快でたまらなかった。
こんなしょうもないことに笑える日が来るとは思ってもみなかったと言ってもいい。
- 57二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 00:42:53
さかなー!が行間に埋まってて笑う
そういうとこだぞたきちゃん - 58二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 00:54:01
我輩はウォールナットである。名前はまだ無い。とかも出来るかな?
- 59二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 07:24:21
- 60二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 07:24:49
- 61二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 07:25:15
- 62二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 07:26:17
- 63二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 10:01:11
きたい
- 64二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 13:15:35
- 65二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 13:16:00
- 66二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 13:16:21
- 67二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 13:16:42
貴様が裏をかくのなら、わたしだってそうさせてもらおうではないか。
一旦あいつを放っておいて、目標たる松下のところへ向かわせて、後ろから撃とう。
護衛対象を囮にしてしまっている。これはまた千束にうんと叱られてしまうがこれ以外あるまい。
工事中の東京駅の足場に奴は登って、何故だか知らんがその真下辺りに千束と松下翁がおった。
駅の中にいたのではないのか。
是ではすこし計画が狂う。千束を逃がして迅を撃たなければならぬ。
迅奴の身体は外套の他も防弾でこれ以上足止めすることができないようだから、
奴の腰をつかまえて、地上に叩き落とす。
無論、自分の身体も共に地上三階建て程度の足場から落ちることになるがそうでもしないと
射線から外すことは出来まい。
- 68二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 15:59:24
たきちゃんいいね
- 69二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 17:07:14
坊ちゃんの書き出し無鉄砲で損してるってやつ機銃掃射でDAクビになったたきなだな
- 70二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 21:26:05
混凝土の袋があって僥倖たり。体に來る衝撃は幾分か和らげるものの銃が手から離れる。
迅奴、意外と丈夫であの高さから落ちても平気でわたしを撃ってきやがる。
まあわたしを狙っているのは好都合、この隙に千束に、彼を連れて逃げてもらわなければならん。
千束はおう分かった、と車いすをえいえいと押して離れていく。よかった。
まあ、わたしを執念深く追ってくれることで千束たちの安全が図られるのだ。十分だろう。
……脚を撃たれてしまった。隠れていたというのに上方から狙われてしまう。
流石、熟達した暗殺者。わたしももう動けないし、彼の銃口がわたしの頭を狙っていることはわかる。
少しでも千束と、依頼者を守るに寄与できたならそれで十分だ。
- 71二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 21:26:32
- 72二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 21:27:01
- 73二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 21:27:34
- 74二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 21:27:59
- 75二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 21:28:52
すべて終わった後、千束はリコリコの小上がりで珍しく
しょげている。1日とはいえ、一緒に過ごした人間の素性が全て嘘に糊塗されていたことに
傷ついているようだ。
しかし、よい案内役だったという言葉は真なるものだったと思う。
それが縦しんば、松下の嘘であったとしても、わたしはそう思ったんだからそれでいいだろう。
千束はよい案内役だったとわたしは思う。
それから、少し気になっていたことを確かめてこの日は終わった。
誰もいなければよいという条件も果たされていたし。
しかし、鼓動がないことについて彼女に問うことはできぬ。
逆にわたしに、鼓動があるってどういう感じ? と問われてもなんとも云われぬ。
ただ、彼女はきっと今回のことで胸に痛みを感じていたのだろう。
それが仮令機械仕掛けだったとしても。
- 76二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 21:32:51
- 77二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 23:34:36
- 78二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 23:35:05
- 79二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 23:35:43
千束が部屋を案内してくれるが、まったくの伽藍洞。
常在戦場を旨として、死した後の始末も楽になるようにしているのかと感嘆する。
が、それ以上にも驚くべきことがあった。
壁が回って、その下に梯子があって、下へとつながっている。
どういうことなのだ?
千束の導きに従って下るが、どうも不可思議。
これは囮としての部屋で出入り口は上階で、本拠地は下なのだと威張られる。
他にも基地はいくつかあるのだと彼女は得意気。
わたしの住処もDAの手が回ったもので、よく防犯の効いた施設だと満足していたが
ここには負ける。
さすがファーストと思うも、彼女は殺さないから、復讐をしたい者どもが常に彼女を狙っている
証左だともとれ、複雑な気持ちになる。
- 80二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 23:35:46
あのシーンはこんな感じのなるのだな
面白い - 81二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 23:37:00
それはさておき、家事の分担は大切だ。
負担が大きすぎるのは継続性がない。この生活が短いものと予定されているのならば、
部下であるわたしが全て引き受けるのも吝かでないが、いつ終わるとも分からなければ
わたしとて疲労するのだから、彼女の生活の質を一定に保つためにも当番制がよろしかろう。
最初に書いてきた案を提示すると千束はつまらんと文句を垂れる。
つまらんとはなんだ。家事配分に面白さは必要なのか?
すべきことを料理、洗濯、掃除とで別れているわけだが、一日に三つの項目がある。
七日分なので三かける七で二十一項目。
それを千束が十項目、わたしが十一項目なのだからこれで満足してくれないか?
しかし、ここは彼女を乗せるためにもなにか……。じゃんけんなどどうだいと提案すると
それいいねと乗ってきた。よろしい、三割の確率だからちょうどいい塩梅になるだろう。
- 82二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 23:37:46
- 83二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 07:11:03
保守
- 84二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 12:49:45
坊っちゃん→無鉄砲の自覚あり
たきちゃん→自覚なし - 85二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 12:56:22
坊ちゃんのさらに上を行ってるクソボケたきないいね
- 86二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 13:01:35
自分をツッコミだと思ってる天性のボケたきなさん
まあ無鉄砲とかボケの自覚ないと一人称で小説にしずらいとこあるかもな
その意味でもたきちゃん興味深いわ - 87二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 20:07:13
ハーメルンでお出ししたほうがもっと見てもらえるんじゃねぇかな(小並感
- 88二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 00:07:31
- 89二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 00:07:58
- 90二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 00:08:34
髪を括って掃除に洗濯、そして料理と忙しなく働く。
やい、わたしは女中じゃあないんだぞとは思ってはいるけど、前掛けをしながら千束に茶菓を供していれば
それは最早、女中かその見習いでしかあるまい。
さしずめ千束は道楽坊ちゃんか自堕落な旦那様。
とまあ、夕飯も済んで少々休憩しようかと思っていると、千束の携帯が賑やかに鳴る。
チンピラが来た。しかもまた?
千束がのそりと梯子を登って見せかけの玄関の階に行く。果たしてそこには二人組がいて
わたしがしたようにきょろきょろと伽藍洞の部屋を覗いている。
千束は面倒くさそうにその二人組をバンバンと撃って窓から放り投げる。
がしゃぁんと派手に硝子が割れる、きっとDA宛の領収書が作られて楠木の奴が頭を少し痛めるのだ。いい気味だ。
- 91二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 00:10:32
しかし、リリベルなる奴らについては初めて知ったな。
どんなものかは気になる。確かに、この世界には基本的に男女がおるのだから
男の孤児もいるだろう。そいつらを集めて訓練する機関があってもおかしくはない。
と思って色々聞こうと思ったけど、千束に茶化されて辞めた。
さて、今日もきょうとて家に帰ったら千束のお世話だ。
正直、お客を大量に捌くのにも苦労したし、これから帰って二人分の家事を
するのは正直骨が折れる。困ったものだと思っていると、ミズキが珍しく声を掛けてくる。
かくかくしかじか話をすると、ミズキは同情するような、それとも少し可笑しくて堪らないような
中間のような表情をして、千束には最初はグーでは勝てんぜ、と教えてくれる。
種明かしを聴くと本当に単純で、そこまで考えが行かなかった自分にも腹が立ってきた。
確かに毎回最初はグーだったけど、そこに目がいかなかった。
千束をどうにかするのには最初の一撃が肝心か。
- 92二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 00:11:02
- 93二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 00:11:28
クルミの示す画面には、四人のリコリスが映ってる。これがどうしたと聞くところ、
殺されたのはこの四人という。このカメラの映像が外部に漏れてあたかも指名手配の写真のように
作用したんだとクルミは焦る。
しかし、DA内への侵入があったときに漏れたとして、クルミがその映像を持っているのは何故だろう。
……そう聞こうとしたところ、クルミは緑の瞳を脇にずらして吐く。
あの時の原因はボクだと。
わたしが口火を切る前に、既にミズキが聴きたいことを問うている。答えて曰く、クルミは情報に割り込みしただけで、銃の取引にはかかわっておらぬとは言う。
それが事実かどうかとは、確かめる術は今はなく、正直それは捨て置ける。それよりクルミが出してきた次の画像がわたしを急がせる。
画像にはよく見知ったその横顔があったからだ。
- 94二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 07:28:13
保守
- 95二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 12:50:10
保守
- 96二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 22:10:58
- 97二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 22:11:24
- 98二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 22:11:47
- 99二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 22:12:19
さて、いつもながらちんまりとしているリスが今回はより小さくまとまっている。
ミズキより聞き及んだ。クルミがDAに侵入し、その所為で通信障害が起きて
わたしが銃乱射の判断を取る所以になった。それに、今回のリコリス狩りの端緒でもあったと。
千束はそれを聞いてやい、このリスを煮て食っちまうか? それともチンしてやろうかと
囃し立てる。
さてどうしたものか、確かに千束の言う通りこのリスめをチンしてやるのも面白いだろう。
しかし、そうする必要もない。
あれはわたしがやらんとしてやったものだ。あれが合理的だとわたしが判断したことなのだ。
この小さきクルミの所為ではないのだ。
といってクルミをまな板から解放する。
このリスは生かしておいた方が便利だろう。金の卵を産む鶏がなんとやらだ。
と、思っていたら、早速卵を産んでくれた。
真島、という名らしい。
千束を撲った男というのは。
- 100二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 22:13:13
山岸先生の許に行って、本格的な治療を受ける。
先生が珍しがるぐらいなのだ、千束の怪我は。
なるほど、千束の弱点は目であったかと合点した。
千束はなんだかわたしを足りない子のような目で見て、そんなのは誰だってそうだろうとまで言う。
いやいや、わたしは目があるけれど、千束並になれないぜ。
たきな、もう一度一緒に住まないかと千束が持ち掛ける。ははあ、危険も確かに遭ったし
一緒に住む利点は今一度確かめられたわけだ。
では、千束がわたしにじゃんけんで勝ったならば良いだろうと言ってみると、案の定千束は
悪戯っ子の如く笑い、自信満々だ。
その笑みは何処まで持つかな?
千束のさいしょはグーを押し切り、わたしはグーなしじゃんけんを強行した。
これでやっと純粋に三割の勝負に持ち込めるというわけだ。
果たして結果は、はは天よ、わたしは勝ってしまったぞ!
柄にもなくわたしは欣然と踊ってしまった。
- 101二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 04:49:34
- 102二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 04:50:01
そこで初めて千束の描いた絵を見る。なんだいこれは、きみの貸してくれた漫画にそんなのが描いてあった
記憶はあるが現実の人間はそんなんじゃあない。
わたしの方が似ている絵を描けるとはどういうことだ?
フキ元隊長はモンタージュ写真と比べて全然似てないとわたしたちを叱責するけれど
それは似ていないのだから仕方がない。
文句を言うなら自分で描き給えと千束は言う。
しかしながら、残念ながらフキ元隊長は見ていないのだから無理がある。
楠木の奴はわたしたちの絵を見て、なにやら失望した様子でもう帰り給えと部屋を後にしてしまう。
待ってくれ、わたしのは似ている。こんな絵画音痴と同じとしてくれるなと懇請したが、
取り合ってくれぬ。この狭量め。
- 103二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 08:03:23
保守~
- 104二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 12:57:23
結構文量ある
- 105二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 21:48:28
クルミ主催の盤戯が明日の昼に開催されるからきみも来たまえよと千束が言う。
なんでも漫画家が参加予定なのだが、締め切りには間に合わないというからその代役だ。
わたしは出られない、すまないがというと、
なに、負けが嵩んだのが悔しいかね、とチクチク刺してきやがる。
この赤リボンめ、わたしは日本語学校の先生をやるのだから断じてそんな弱腰な理由ではない。
養成所やDAでは幾らでも先生先生と呼んでいたが、呼ぶのと呼ばれるのとでは雲泥の差だ。
教師ははたで見る程楽じゃないと思っているから、準備をするのだ。
今日はなんだか千束の様子が変だ。
こんな懸念を吐いたところ、ミズキのやつは、千束は毎日変だろうと言う。
確かにその通りなのだが、変さの具合が違う。
今日はoddでstrangeではない気がする。
- 106二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 21:50:39
- 107二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 21:59:06
しかし千束がそうじゃあないぜと言いながら胸に縋ってくるから
やめておいた。わたしとてそこまでDAに戻りたいわけでもなしに。
ただ戯れに「きみの代わりにわたしが戻ってもいいんだぜ」と言うと
そんな寂しいことをいうなとしつこさが増す。
「たきなはお呼びじゃあないんだろ」とリスが音を立てるから駆除した。
ミズキ曰く、「こんなん」でもファーストであるから
彼女がいないと支部として成立ないのだという。
ははあ、これは確かに大事かもしれぬ。
わたしは養成所戻しになってしまうし、クルミはまだ命が危ない。
ミズキは高望みを止めたらよかろう。
ミズキのやつは面倒見もよくてよく見ると器量もよいし
頭も悪くないのだがら酒を止めれば一年以内に結婚することも無理ではなかろう。
まあ……本人には言わぬが。
- 108二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 23:25:08
とまれ、我々の目標はリコリコの閉店を阻止することに決まった。
そうと決まればやることは早い。
クルミにBar forbiddenの情報を持ってこさせる。
ヒュンと軽々と出てくるのだらかこれは凄い。
高級な様子らしい。わたしはあまりこういとところには明るくないが
千束は目に見えて興奮しておる。ああ、こいつももしや長じたらミズキのように
婚期を逃す人間ではなかろうか。雰囲気を求めて実を訊ねぬ者よ。
しかし。とクルミがいう。
こんなところで仕事の話などするか、単なる逢引ではないだろうか?
たしかにそうだ。会議には似つかわしくない。店長と楠木の奴は愛人関係に
あるんじゃなかろうか、とわたしも思案するがミズキと千束は否定するし
ミズキに至ってはわたしの口から「愛人」という言葉が出たことに不謹慎に喜んでいる始末。
そういうところではないかしら?
- 109二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 23:25:32
- 110二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 23:26:11
- 111二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 23:28:37
あれこれ200まで行く?
- 112二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 08:05:56
いきそう
- 113二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 12:38:17
- 114二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 12:38:53
- 115二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 12:39:20
受付でクルミに指示された偽名を言うと、難なく通ることができた。
こんな馬鹿げた名前でよく通すものだ。
forbiddenの中には水槽がたくさんあって、なるほどこれは千束好みだろうと思って思わずきょろきょろと
見回してしまう。
そうこうしているうちに店長が来た。普段とは違う様子で大分めかしこんでいるが
やはり楠木の奴が来るのではないか、来るとしたらどんな格好だろうかと内心笑っていたのだが
来たのは果たしてヨシさんだった。
千束は、なぜか得心したような顔をしてここから撤退することを宣言してわたしを追い立てる。
お店の常連だし挨拶していかんかというが、千束は珍しく急いていて取り付く島もない。
が、その割には途中で止まってしまってわたしは千束の尻に顔をうずめることになってしまう。
- 116二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 12:51:24
- 117二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 12:51:48
車寄せでヨシさんに出くわす。店長と二人で話したかっただろうに邪魔をしてしまって
申し訳ないと詫びて、またお店に来てもらうように懇請する。千束はずっとあの人と会いたかったのだ。
その思慕を汲んでやってはくれまいかと頼む。
しかしながらその思いはどうやら一方通行のようで、ヨシさんは通じてはおらぬ。
そして、千束の居場所はここではないとまで言う。
違う、千束はずっとあなたを待っていたというのに。
わたしに何か期待されても困る。
わたしは、千束に何をすることも出来ぬのだ。
なぜ、何かが出来るあなたが彼女を見捨てるような真似をしなければならぬのか、
ぐじゃぐぢゃと思考がまとまらずただ走っていく車を横目で眺める他なかった。
- 118二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 12:53:43
- 119二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 13:09:40
- 120二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 13:10:06
- 121二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 19:52:13
- 122二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 19:52:34
- 123二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 19:52:58
まったく、そんなんで独立した気でいるのはいい気なもんだ。
そうぼやいたら、千束がたきなまでそんな楠木さんみたいなことを言わないでくれと
間抜けな顔をする。締まりがないのは顔だけにし給え、財布の紐がゆるゆるなのが問題だ。
千束の非殺傷弾は特注で高いし、千束の思いつく品物は軒並み経費が掛かるのだ。
あの団子三兄弟について愚痴っぽくなってよいか?
あれは確かに団子を試験管に入れるだけだから作るの自体は問題はない。
しかしな、洗うのがとても大変なのだ。試験管刷子で念入りに磨かねばならん。
特にみたらしのやつは落ちないこと落ちないこと。
あれにかかずらっている時間、他の作業ができないから、あの団子はそういう意味で
経費の掛かるものなのだ。
すくなくとも、千束に与えられた才能は経営のそれではないことは明らかだろう。
そこでわたしが経理を買って出たのである。
無論、わたしとて経営などをしたことがあるわけではないが、そうするほかあるまい。
- 124二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 22:39:52
- 125二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 22:40:28
- 126二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 08:53:30
ほっしゅ
- 127二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 10:11:16
行動はすごいのに独白が淡々としてるのが本編たきなっぽくてとても良い
- 128二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 10:38:28
- 129二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 10:39:08
- 130二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 10:40:04
- 131二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 12:44:03
ぼっちゃんはそもそも無鉄砲ではないよな
遺産で600円(当時)を貰ってて、それを三等分して三年分の学費に回してる - 132二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 13:03:06
- 133二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 13:03:32
- 134二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 13:03:57
- 135二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 21:36:27
最後までいくのか
- 136二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 07:43:38
保守
- 137二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 12:31:30
淡々と続いていく
- 138二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 15:22:07
もう8話か
この淡々さがいい - 139二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 21:25:23
わかる
- 140二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:55:23
店に音楽を流す設備を入れよう。
例の団子三兄弟の試験管を良く洗えるようにする食器洗浄機も導入した。
わたしたちの外回り中に給仕してくれる機械も買ってみた。
なにしろ、この店は人手不足でもおいそれと人を雇うことはできないのだ。
よしよし、これでいいだろう。
クルミには給仕よりももっと向いている仕事があるのだ、市場の状況を見て投資に回してもらおう。
などとクルミと相談している時に千束がやってきてわたしたちの行動を訝しむ。
そんな折に千束の携帯が鳴って、見ると山岸先生だ。
千束が対応に躊躇っているから横から借り受けて、代わりに受診できる日付を伝える。
千束の健康は放っておくとすぐに悪化の方向に傾く。
わたしが押し返さなければなるまい。
- 141二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:56:30
検診の日にも、千束が来ましたぁをやったらどやしつけてやろうと思っていたが
ちゃんと向かったようでなによりだ。
常連さんも迎えて、今日も穏やかに終わるだろうと少しばかり暢気になる。
朗らかな気持ちで少し奥に引っ込んでみた。
クルミがいつもにらめっこしている画面にちょうどわたしの画像が載っていて、
ははあ、リコリコの広告でも作っているのだなとちらと覗き込む。
……
言うまい。わたしが嬉々として提供していた商品がまさか消費者をして
かかる下賤なものと相比較せしめるものに至るとは、わたしだってそんなこと気づかなかった。
思えば千束やミズキ、クルミの反応も手放しに喜んでくれるものではなく、
何かしらの含みを持ったものだったと……。
それはわたしが料理が下手であることからくるものであると思っていた。
しかし、違ったのだ。
- 142二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:56:56
- 143二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 23:55:36
山岸先生から連絡がある。
どうしたのだろうと思って取る。千束が来ていないとのこと。
お店が忙しくないのにすっぽかすことは千束らしくはない。
連絡すると、よかった出てはくれる。
しかし急用ができたとはどういうことだろうか?
妙に気になってしまい、千束の家に向かう。
どうせまたあれだろう。他の場所にも定期的に行きなさいと
言ってもことごとく無視するのだあの赤リボンは。
ミズキに謝ってリコリコを出るが、自然に、次第に早足になってしまう。
呼び鈴を鳴らす前にドアが開けられ、なんということだ。
真島がのっそりと出てくるではないか。わたしは咄嗟に銃を抜きそれを殺そうと
――千束には申し訳ないが、したがあっさりと腕を抑えられ、猫のように
廊下から地上へ飛び降りて逃げられてしまった。
- 144二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 01:42:32
リコリコに千束を引っ張っていって、真島が来た件を店長に報告する。
千束の居場所が割れて仕舞ったことがどうしようもなく怖い。
そりゃあ千束は最強で、人間業じゃあないことだってやってのけるが
人間なのだ、寝たり病気になることだってあろう。敵というのはどうやらそのようなときに
忍び寄るものなのだ。
それから、真島も例のフクロウの飾りを持っているらしい。
どういう理由かは知らぬが、なぜか持っているそうだ。
……考えたくはない。千束は吉松のことを大事に思っている。
あんなに素っ気ない態度を取られたとしてもだ。
その思い出の象徴ともいえるフクロウが、自分とその仲間に危害を加えるような人間も持っていると、
渡されたと知って、千束はどう思っているだろう。
きっと気分が良くないはずだ。
- 145二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 08:25:25
保守しておく
- 146二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 08:57:03
まもなく心臓のシーンが来てしまう…
- 147二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 13:33:14
- 148二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 13:40:38
- 149二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 13:42:07
てかたきなのクライマックスはシャッターと千束吊り下げだと思うわ
- 150二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 22:34:53
- 151二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 22:35:18
- 152二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 22:35:59
大切。
そんなのは分かっている。千束はずっとその銃とフクロウとを身に着けていた。
日常で二つも、彼に関するものを。
それを大切でないと言ったら嘘つきの悪評を免れないだろう。
寒くなりましたねとわたしは言った。
ずっと銃の話題になってしまえば彼のことが忘れらないままだ。
そうだねと千束は言って、わたしが来た時のことを追想する。
あの頃はまだ温かくて桜が咲いていた。
あれから吉さんこないね……。
彼女は別にわたしに言ったのではないと思う。
ただ独り言を言ったのだと思う。それをわたしがたまたま聞いてしまったような
そんな雰囲気だ。だからわたしに何か解決してほしいというこどでもない。
ただ、彼女はそのような事実を自分自身に対して再確認しているだけなのだ。
- 153二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 22:36:42
ああ、吉さんは来ていない。月に一回や二回は来ていたのに
あれから一度たりとも来ていない。
千束はあの扉の鈴が鳴るたびに、あの明るい顔をそちらに向けるのは何のため。
彼が今度こそ来てくれるのではないかと願っているからだ。
無論、他の常連さんや新規の人が来て嫌なわけではあるまい。
でもわたしは、彼女の期待を帯びたその顔が笑ったまま絶望していることを知っている――つもりだ。
その鈴を鳴らしてやることはできない。
クルミに居場所を突き止めさせて、無理やり引っ張ってきたとしても
それじゃあ千束は喜んでくれない。
わたしにできることはない。
ただ、わたしは彼女の寂しさというか、何かの穴を何かで埋めることを試みるだけだ。
- 154二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 22:37:10
- 155二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 23:14:04
- 156二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 23:17:54
- 157二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 23:18:32
今日はその検診日。
千束を送り出して、わたしたちは通常の業務に精を出す。
そうだ、ちゃんと注射を受けて帰ってくるんだから今日は千束の好きな夕飯でも
作ってみようか。なんて思いながら接客をこなしているのだが、
予定の時間をとっくにすぎているのに帰ってこない。どこかに寄り道している
――例えば診断前には自粛していた甘味を食べているとか。
でもそうしたらわたしにぐらいは自慢を兼ねた連絡が来るはず。
ミズキもしびれを切らして、おそらくこれは心配ではなく単に人手不足を倦んでいるのだとおもうが、
千束遅い遅いとグズる。
わたしも心配になって電話する。
約束の三回を過ぎてもなお、彼女は出ない。
これは、千束の身に何かあるにちがいない。
わたしは着替えて千束のいるだろう病院に駆け出す。
- 158二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 07:41:06
保守
- 159二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 12:47:33
ずっと読んでるとクセになる語り口
- 160二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 16:06:09
たきなの千束ピンチ察し能力はスゴい
- 161二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 19:18:30
ほすう
- 162二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 21:06:43
- 163二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 21:07:23
- 164二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 21:07:51
- 165二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 21:08:24
- 166二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 21:10:00
わたしは踵を返して病室を出ようとする、が千束に行き先を訊かれ
あの看護婦を殺すとだけ言った。案の定千束はそれを望まない。
それ自体に腹が立った。
あの女を殺さなくてもいいと彼女は言う。
いいわけないでしょ、と。その次の句がわたしは継げられない。
もともとそんなに長くなかったと彼女が言ったからだ。
元々……?
千束が、「あいつを殺しても意味がない」のようなことを言うのは予想がついていた。
わたしがその犯人を殺したところで千束についた傷は消えないのだから
復讐は望まないだろうことは、然るべく認識していた。
けれど、元々長くなかったというのはわたしの耳には一度たりとも入ってきたことのない事柄だった。
- 167二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 22:07:26
正直その後の数日の記憶はない。
わたしは生ける屍のごとくあった。
勿論、仕事はした。千束が例のパフェを作って給仕しているところも見た。
家に帰れば自動的に飯を喰らい、服を洗い、湯を浴み、そして千束に教えられたように
髪を梳り、温風で乾かして、眠る。
千束がDAに連れていかれる。
もう彼女には時間がないのに最後まで使い切るつもりか畜生。
余命二カ月の人間を使わなければならないほどの逼迫した組織なんか潰れてしまえ
そんな組織によって守られている平和など滅びればいい。
全部偽物の、嘘の、そんなものなんて。
――千束はそんなこと言わない。
言わない。千束は、そんな風にはならない。
せめて千束の愛したここで最期を迎えさせてあげたい。わたしも許されれば一緒にいたい。
- 168二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 22:08:26
- 169二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 22:09:38
ああ、上の空だ。犯人を取り逃がす。千束を走らせてしまう。
千束を追いかけてしまい、既に捕縛していた他の犯人たちを放置してしまう。
役立たずのリコリス、あの元隊長にそう評せられたことをふと思い出す。
だから、まだ彼女に心を開かれていないのだな。
ある日のことであった。
わたしはうっかり傘を持たずに外に出てしまい、少し降られてしまった。
尤も、持っていたとしても差す気も無かったろうが。
勝手口からリコリコに這入ると、珍しくクルミと店長とが話しているようだった。
邪魔をすべきではないかと思って少々静かにしていると、クルミの口から洩れる言葉に
耳の全てを持っていかれた気がした。
長い話だったが、畢竟吉松が千束を殺しかけたということだ。
狙いがなんなのかは正直測りかねる。が、真島やあの看護婦を差し向けた時点で
千束の敵に間違いはなかろう。
- 170二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 07:53:04
後半戦や
- 171二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 08:11:16
2ヶ月はもちろんだけどやっぱり隠されてたこともショックだったよね
本編放映時あんまり言われてなかったけど
こっからの怒涛の切り替え力行動力は凄かった - 172二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 13:29:07
この辺は触れてなかったね
- 173二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 22:15:45
- 174二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 22:16:29
言うにしても、「わたしDAに戻ります」とだけ千束に言っても、ああそうかい達者でなと
素直に送り出されてしまうだろう。彼女は、最初に会ったときにわたしの復帰に協力すると
快く申し出てくれたのだから。
それだけではよくないだろう。
わたしは、なにもまだ千束に返せていないのだから。貰いっぱなしでは心持が悪い。
しかしながら千束にわたしがあげられるものなどない。
犬の飾りは喜んでくれた。しかしまた物をあげるのでは芸がない。ただ、対案がないのだ。
自分の世間知らずさに腹が立ってくる。
椅子に腰かけて天井を仰ぐ。つけっぱなしにしていたテレビから明日の天気予報が流れる。
普段気にならないそれすら、今は邪魔に思えて消そうと思ったとき、全ての情報が繋がる。
これは、最期の思い出作りなんかではない。
わたしがDAにちょっと出張する前の休暇プログラムだ。
- 175二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 07:43:39
保守しとく
- 176二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 13:26:27
保守保守
- 177二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 19:24:10
保守
- 178二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 01:23:25
- 179二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 01:24:16
- 180二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 01:24:40
まず最初に向かったのは前に訪れた複合施設だがそこについて、千束が
そんな夏服で寒くないのかいと訊いてくる。
確かに寒いが、千束が選んだものだからきておるのだ。それに今回の順路に合わせるのは
これしかない。
すると、千束がわたしの冬服を見繕うとのことで、早速割り込みが入る。
しょうがない人だ。
毎度千束の着せ替え人形になるが、なるほど、確かに冬服では初めてかもしれぬ。
存外、夏服に比べて着脱に時間を食うものだ。あまり掛けていられないのだが。
リンリンと時報が鳴る。次の順路を巡らなければならぬ。
外套がなんだとか千束が言っていたがこれでも十分に温かいのだから
これでよいのだ。先に進まなければならぬ。
千束は戸惑ったような、不平のような雰囲気の声を出すが、時間は限られている。
車で競ったり、犬のぬいぐるみを取ったり、化粧品を見たり、
ケーキを食べたりと消化せざるべからざるものが多きこと甚だしい。
- 181二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 10:05:23
スレ主よ
もしやと思うが、昔「戦闘潮流」とか「西住ちゃん」とか書いたりしてた? - 182二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 11:18:23
しかし、それのなかの、二等重要な場所が敢無く休館せられていた。
わたしとしたことが、これを想定していなかったとは、思わぬ失策であった。
千束が悲しむのではないか思って申し訳ない気持ちになるが
彼女は案外平気そうな顔をしてついてこいと言う。
人生というものは計画通りにはゆかぬと、老人の如く述べて今度はわたしを導いていく。
果たしてそこは釣り堀であった。
たしかに魚つながりではあるものの、これじゃあ千束に満足のいくようなものではないだろう。
綺麗な水槽もチンアナゴも、クラゲもおらぬ。
せめて数匹釣れればと祈念するも、糸は震えぬ。
水族館が開いていれば、寒さから彼女も守れたというのに。
楽しいですかと訊く。こんなことに付き合わせてしまったが。
そんなつまらぬことを聞くな、といった風情で
「楽しいよ。たきなといればさ」
などと言う。
気を遣わせてしまったな。
- 183二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 11:19:18
- 184二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 11:20:17
- 185二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 12:12:18
たきな視点やっぱりいいなあ
- 186二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 12:15:28
- 187二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 12:18:22
- 188二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 12:18:50
- 189二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 13:19:56
- 190二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 13:20:33
- 191二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 21:07:24
保守
- 192二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 02:20:12
- 193二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 02:21:22
■11
どうも、エレベータが真島の手によって制御不能になっているようで
一旦仕切り直しと言うことになった。
仕切り直してどうなる敵でもあるまい。
さりとて、相手方も狡猾だから策なしではどうしようもできまい。
わたしとしては吉松の居所を知っている部品として真島を取り敢えず生かして捕えなければならぬ。
……フキ隊長に頼んでみるが、それは彼女の権限のうちにない。
それはわかっていた。談判猶予なく殺すことが先決となっておる。
しかし、それじゃあ困るんだよ。千束に関する情報を握っているのがあのワカメ頭しか現状おらんのだ。
バスの中で実行部隊編成が映し出された。
丙隊六番に千束の名あり。
千束を呼んだのか?! あの病人の千束をか? 正気か?
楠木の奴狂ってやがる、堅物白衣だとは思っていたが、冷血だとまではおもってはおらなんだ。
しかし、奴の弁では千束と店長との連絡がつかぬという。これは不可思議。
それなのに我不関焉を掲げるとは。いいや知っていた奴はそういう奴だ。
よろしい、そっちが何も知らないというのなら、まずはわたしがその不可解を確かめる。
- 194二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 02:23:30
- 195二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 02:24:48
しかし、話しかけるいい機会だ。だが残念なことに楠木も吉松のことを知らぬという。
なるほど……やはり根深い問題ということがわかる。
何則、DAのような組織には情報統制の階層があり、どの位置にいるかによって
知るべきこと、知ることを得べきものとがよく分かれている。
千束の人工心臓の有無については恐らくフキ隊長だって司令だって知っている。
しかし、それがどこの技術なのか、どこから来たのかについてはもっと
別の階層によって管理されている情報なのだろう。
DAの正規の方法じゃあ、わたしは千束の人工心臓について、知りたいことが知られる蓋然性が
低すぎるということかこの短い界隈で推測できるというものだ。
- 196二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 02:25:49
- 197二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 11:41:42
などと考えていると当然のようにクルミがインカムから話しかけてくる。
わたしには便利だから良いが、DAの設備はいっぺん見直した方が良いと思う。
なんでも千束の心臓がもう一つあるとのこと。
クルミの推察では吉松が持っているはずだと。
アランの支援を受けた研究者が作ったものを吉松が持って行ったということだ。
ここ最近の足取りはクルミですら見つけられないらしい。
ただ、もうこれは吉松さえ見つければ全て解決するということがわかった。
幾つか気がかりなのが、リコリコの閉店と千束と店長の行方だ。
どうしたものだろうか? こちらからクルミに連絡が取りづらい以上今訊いておきたい。
リコリコの閉店は千束の意思によるものだという。よかった、脅されたとか
不本意なものでなくて。
- 198二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 11:43:50
- 199二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 12:14:33
おお2ができてる
- 200二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 23:40:32
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