- 1二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:51:57
- 2二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:52:57
それは隣の店ですね
- 3二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:53:16
あるさ!スレ主が書けばきっと後に続く人も現れるだろう
- 4二次元好きの匿名さん23/03/19(日) 23:53:37
このレスは削除されています
- 5二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 00:08:25
「トレーナーさん……!早く目を覚ましてください……!」
私、サクラバクシンオー!優秀な学級委員長です!私は今日もこのバクシン的スピードを鍛えるべく、グラウンドで走っていました!そんな中、なんと突然練習を見てくれていた私のトレーナーさんが倒れてしまったのです!慌てて保健室へと運びました!私のスピードのおかげで一瞬でしたが、まだ目を覚ましてくれません!
「あぁ……一体どうすれば……!」
いくら私が優秀だとしても、残念ながら私はお医者さんではありません!なので保健室の先生に任せているのですが、とっても不安です!普段なら入ることのない部屋なので茶色くて柔らかい椅子や色んなプリント、かかっている優しい音楽やトレーナーさんが寝かせられている真っ白なベッドは新鮮ですが、楽しんでいる場合ではありません!あぁ、この不安を抑えるためにはどうすれば良いのでしょうか!
「バクシンオーさん」
「はい!サクラバクシンオーです!」
保健室の先生に名前を呼ばれ、元気にお返事をしました!保健室ではお静かにと注意されてしまいました!この私としたことが、不覚!さて、お名前を呼んだということは何か分かったのでしょうか?保健室の先生、教えてください!
「貴方のトレーナーさんなんだけどね……重い病気ではないよ。ただ、ちょっと珍しい病気で。」
「ちょわ!?まさか、もう目を覚まさない、とか!?」
「あぁ、大丈夫。ただ……少し目を覚ます方法が特別なんだ。君は、彼の為に何でもできるという気持ちはあるかい?」 - 6二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 00:26:24
「えぇ!何だってしてみせましょう!なぜなら私!トレーナーさんの担当である、優秀で模範的なバクシン学級委員長ですから!」
「保健室ではお静かに。」
「不覚!」
何やらこのやりとりにちょっとしたデジャヴを感じていると先生は咳払いをして、方法を教えてくれました!どうやら私達ウマ娘の精神にトレーナーさんの精神が引っ張られてしまっていて、それで意識を失っていること!目を覚ます方法はとっても簡単なワンステップ!その時一番近くにいたウマ娘がその人にキスをすればいいそうです!なるほどなるほど!シンプルで分かりやすい!
「ちょわーっ!?キスですか!?」
「保健室ではお静かに。」
「不覚!」
確かにこのトレーナーさんは大切な方!このまま意識が戻らないのはとっても困ります!しかしもししてしまえば!なんとも貴重な、私のファーストキスがここで!
『やめておきましょう!異性とのキス!学級委員長として相応しくありません!』
ちょわ!?貴方は、私の心!
『えぇそうです!何か他に方法があるかもしれません!その方法をバクシン的に探し出して、超スピードで起こしましょう!』
な、なるほど……!他に方法があれば!
『いいえ!惑わされてはいけません!トレーナーさんの目を覚ます方法があるなら、すぐに取り掛かるべきです!』
『ちょわ!?貴方は、私の心!いいえ、キスというのはちょっと学級委員長として良くないことでしょう!』
あぁ!私を置いて会話をしないでください!
『このまま悩んでいても仕方ありません!私のバクシン的スピードで私が正しいことを証明します!』
『いいでしょう!いざ勝負!バクシンバクシーン!』
あぁ、もう!二人とも勝手に走っていかないでくださーい!……あぁ、行ってしまいました……。一人になったことです、落ち着いて考えましょう!まず、トレーナーさんの目を覚ます方法はもう分かっています!ですが、それは全生徒の見本としては少し相応しくないのです!
「しかし……倒れているトレーナーさんをそのままにするのは、模範的なのでしょうか?」
それに、ここには先生以外には誰もいません。そして、私がキスを拒む理由は"模範として相応しくないから"、です。それ以外、私がキスをしたくない理由はありません。
つまり、今からするキスはトレーナーさんを助ける模範的な活動であって── - 7二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 00:34:57
男は目を開くと辺りを見回す。そうしてそこが保健室であることを確認すれば、彼の担当であるサクラバクシンオーが声をかけてきた。
「トレーナーさん!!目を覚ましましたか!!」
「保健室ではお静かに。」
「不覚!!!」
養護教諭に自分の担当が叱られていることに苦笑しつつ、男は自分が意識を失っていたらしいことを知る。
「ありがとう、バクシンオー。ここまで運んでくれたんだな。」
「いえいえ!私、学級委員長ですから!当然のことをしたまでです!」
そういって胸を張るバクシンオーを見れば、その元気につられてトレーナーの活力も戻ってくる。
「今回のお礼だ、何か俺にできることはないか?」
「やや、お礼ですか?そうですね……」
彼女は少し悩んだそぶりを見せた後、目を細めてトレーナーを見る。トレーナーはその時、彼女のほほがいつもより赤いことに気づいた。
「責任、とってくださいね?」
「……何の!?」
いつもと違う様子の、少しなまめかしさすら感じる担当の様子に困惑する。一方の彼女は、そのまま高笑いをして保健室の外へと走り去る。トレーナーは何が何だかわからないまま養護教諭に礼を言って、慌てて追いかけるのであった。 - 8123/03/20(月) 00:35:29
書きました これで皆続いてくれるでしょうか?
- 9二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 00:41:21
もうあるの
余は満足じゃ - 10123/03/20(月) 00:46:46
- 11二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 01:01:29
素晴らしいのじゃ
- 12二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 05:29:38
おお、素晴らしい…
自分も書けたらいいんだけどな… - 13二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 10:42:47
自分も続きたいねぇ…
- 14二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 11:07:38
スレ主さんに書かせたのにこちらが書かぬは無作法というもの
家に戻るのが夜になっちゃうけどなんとか書きたいです - 15二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 11:24:47
体調を崩しやすい季節とは言え、意識を失うなんて情けない子分なのだ!
どうせ自己管理を怠っていたのだ!
おサボりせず仕事仕事なんて、ウインディちゃんのお手伝い係としてたるんでいるのだ!
ウインディちゃんは体調管理も万全なのだ!
…え?目を覚まさない?
本気で言っているのか?
……で、それほんとなのかなのだ?
目を覚ます方法がそれしかないなんて…。
むむむ…。
ふぅ〜っ…。
いつも噛みついてるみたいにやれば良いだけなのだ!
な、なのに何でこんな緊張するのだ!
と言うか、人命救助なんて何で悪のウインディちゃんがやらないといけないのだ!?
こう言うのは正義のヒーローの仕事なのだ…。
でも…なんか他の奴らにやられるのも癪なのだ。
……いいな!
これで目を覚まさなかったら覚めるまでやるのだ!
お前の全身に噛みついて思い出させてやる! - 16二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 11:27:24
- 17123/03/20(月) 12:00:47
あー、助かります 大変助かります 助かりすぎてタスマニアデビルになります
最初のしょうがないやつなのだって感じで軽く考えているときの明るさと、その後の不安と緊張で少ししおらしくなる感じ、そして最後の意を決しつつほかの娘にやらせたくないのだ!と言わんばかりの力強さがどれもこれもかわいすぎます
本当にありがとうございました、これで無数にいる私の中の一体が成仏できました
- 18二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 13:06:16
ふふん!使い魔、喜びなさい!!1週間ぶりにご主人さまがきてあげた……わ……
……何よ……せっかくご主人さまが来てあげたのに、歓迎もなし?アンタ、使い魔失格ね。あ〜あ、どうしてアタシったらこんなダメダメな使い魔を持っちゃったのかしら。
…………バカ……いつもみたいに、なんとか言いなさいよ……いつものように、困った顔や笑った顔……アタシに見せてよ……お願いだから……
───『彼の容態ですが、なんとか一命を取り留めています。悪化する様子もないので命の危険はないでしょう……ただし、残念ですが……これから一生目を覚なす事がないかもしれません……』───
…………やっぱり、まだ目を覚まさないのね……傷もまだ、治ってない……アタシの魔法だって、全然効かなかった……
どうして……どうしてよ……
どうして、アンタがこんな目に遭うの……なんで、アタシじゃないの……
……グスッ……お願い……誰か、助けて……
この人はただ、アタシの事を助けてくれて、支えてくれただけなんです……悪いことなんて何にもしてないの……!!
むしろ、アタシの方がいつも迷惑かけてて……わがままばかりで……!!罰を受けるなら、アタシの方なのに……
いや……いやだ……このままずっと目を覚まさないなんてやだぁ……また一緒に、なんでもない事で揉めて、ちっぽけな事で笑って……そうやって、貴方と過ごしたいだけなのに……ヒック……グスッ……
────『この本ですか?この本はですね、眠り続けることになってしまった王子さまにお姫さまがキスをして、王子さまの目を覚ますという内容なんですが……』─────
(…………前にロブロイがオススメしてた本……あれも、今とおんなじような状況だった……
でも、なんで今思い出すの……いまキスなんてしたって……ううん、なんでも良い。
もし、もし……それでこの人が起きてくれるなら、アタシはなんだってするわ……)
好き…好きよ使い魔……アタシの特別な魔法、アンタだけにかけてあげるから……感謝しなさい……
……んっ……
─────っ!!つ、使い魔!?アンタ、目を覚ましたの!?ほ、ほんと!?アタシのこと覚えてる!?
………ええ!!そうよ!!アンタの大切なご主人様、スイープトウショウよ!!……ちょっと、何よ……泣いてなんて……ヒック……泣いてなんて、ないんだからぁ……うあああああん……!!!! - 191823/03/20(月) 13:11:45
わ、わぁ……300文字くらいで終わらせるつもりが行数・文字数ともにギリギリなんとか1レスに収まるクソ長文章に…なっちゃったァ……!!すまねえ隊長……
私はここまでが限界ゆえ、同志達よ……後は頼んだぞ…… - 20123/03/20(月) 13:22:10
あー、ありがとうござます ありがとうございます ありがたすぎてアリアケアカエイになります
とにかく文の全体からスイープちゃんの不安が伝わってきて、メニュー注文した立場でありながらどうかこの魔法で目覚めてくれと心の底から祈ってしまいました
本当にありがとうございました、これで世の中に蔓延る私の中の一体が浄化されました
- 21二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 13:55:14
スレ主はいったい何体いるのか……
- 22二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 17:53:34
──こんな状況、本当に、あるんですね。
えぇ、えぇ、見たことありますとも。ライアンがよく貸してくれた漫画で、沢山。
ただ……信じられない、というだけで。
トレーナーさんを責める訳では、勿論ありません。その『行為』自体も……別に、嫌と言う訳ではないのです。
脚の弱い私のトレーニングには、人一倍気を使ったでしょう。
それでいて、私は速くなりたいと言うのだから、それはもう、本当に疲れたでしょう。
だから多分、多分ですけど。
貴方の頑張りを、神様が見ていて。
ほんの少し、お休みをくれたんでしょう。
私は、そう思うのです。
そんな貴方を起こしてしまうのが、少し、心苦しいだけ。
──でも、仕方ないですよね。
トレーナーさん。許してください。
私の、甘え。我儘を。
許してください。 - 23二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 17:54:14
「……んっ……」
長く、甘い、口付けを交わす。
これ以上に大切な『今』は何処にもなくて。
せめて、起きる時には、素敵な心地でいて欲しいという、私の願い。
──貴方のいない世の中に、私はまだ、耐えられそうにないから。
いつの間にか、トレーナーさんの目はぱっちりと(寝起きとは思えないほどに)開いていた。背中を小さく叩いて、起きているとアピールしている。
時を忘れるって、こういう気持ちなのですね。
──だから、ちょっとだけ。あとちょっとだけ。
あとで、怒られてもいいから。
『今』を繰り返して、『永遠』に。
貴方の身体に、刻まさせて。
貴方だけが知っている、
私の生きた証を。 - 24二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 17:56:12
別にトレーナーが起きた後もキスを続けても構わんのだろう?
アルダンは、いいぞ。 - 25123/03/20(月) 18:08:50
あー、美しいです 美しいです 美しすぎてウツボになります
キスをするのが嫌ではなく、せっかく休めているのに起こしてしまうことが申し訳ないという独特な悩み方、そうして起きてからも自分という存在を刻み付けんとキスを続ける様子が艶めかしくもとても美しいです
本当にありがとうございました、これで人々に紛れ込む私の中の一体が昇天しました
- 26二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 19:07:59
スレ主七変化
- 27二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 20:31:54
このスレぬしなんなん
- 28二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 20:44:39
人間版デジたん
- 29二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 20:45:49
と言うか褒める語彙の多さよ
- 30二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 21:21:29
「いやあ、参った参った」
足元で寝息を立てるモルモット君を見下ろしながら、ひとりごちる。
会議があるからと急いでいたのもあるにせよ……内容を聞く前に、こちらの手からとって飲むとは。
おかげで、慌てて研究室に引きずり込む羽目になったじゃないか。誰にも見られなかったのは、せめてもの幸いか。普段から私がとりあえず飲ませているのも一因かもしれないが、いささか無警戒にすぎる。
今回彼が飲んだのは、特定の『キー』となる刺激があるか、数時間経つまで眠り続ける薬。……数十時間、だったかな。
『キー』にしたのは……服薬者が好ましいと思う人物からの、接吻。これはスカーレットくんからのリクエスト。この薬自体が、物語に出てくるような『呪い』を再現できないか、という話の流れだったからで。
試しに肩を揺すったり、バシバシと頬を叩いてみたが、安らかな寝息は変わることはない。間の抜けた寝顔も。睡眠の深さを簡単に測ったところで、気付く。
このまま、彼が、数十時間眠ったら?
この後の会議とやらはすっぽかし、放課後のトレーニングも無くなる。明日の私のお弁当も無し。
これは、思ったよりマズい状況かもしれない。特に最後は由々しき事態だ。まったく。
仕方ない。誰か……彼の友人でも……いや、責任の一端の一部くらいは私にもあるし、今回は私がさっさと済ませてしまおう。
今までも、膝の上に乗ったり、手を重ねたりしたことはあった。実験でだが。
今回もそれと同等、いや、接触する面積で言えばそれらより遥かに小さい。だから、大したことはない、大したことはないのだ。
早鐘を打つ心臓は、急かしているのか、引き留めようとしてるのか。どちらにせよ不自然なほどにやかましい。
胸の内から意識を逸らし、彼の肩に手をのせ。
大したことはない、と。もう一度……さらにもう一度。……結局、何度も。声に出さず唱えて。
彼の唇に狙いを定めた。 - 31二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 21:22:29
「……おはよう?」
「おはようトレーナー君、時間にして5分ほどだが、よく眠れたかな」
トレーナー君は自分の状況に気付くと、慌てて腕時計を確認し、安心したように息をつく。
「……おかげさまで。いい夢見たよ」
「そうか!それは予想外の薬効かもしれない。内容や感覚については、後日レポートを書いてくれたまえ」
「それはいいけどさ、結局何の薬だったの?睡眠薬?」
「そう、それだよ!君の軽率さには些か危機感を覚えるね、説明の前に飲むとは。実は今君が飲んだのは……」
……数秒後。素直に答えてしまったことを、心の底から後悔することになる。
了 - 32二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 21:37:04
拙者、退廃的概念好き侍。一日遅れながら一太刀失礼した。
斯様なシチュエーションこそタキオンの独壇場と思へど、先達たちの様々な解釈、設定に感服せし次第。 - 33123/03/20(月) 21:43:07
あー、愛おしいです 愛おしいです 愛おしすぎてイトオコゼになります
最初は何でもないことだと思っていたのにいざ実践しようとすると途端に照れが生まれてきて、その後わざわざ説明してしまい何をしたのかを自白してしまう様子が大変愛らしく感じました
本当にありがとうございました、これで培養されていた私の中の一体が融解しました
- 34ウマ娘ちゃん好きの匿名23/03/20(月) 21:55:54
スレ主さんが昇天したり融解したり大変なことになってらっしゃる。皆さんの素晴らしいSSが身に染みますねぇ、ここが楽園でしたか。
- 35二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:26:18
「白雪姫病?」
聞いた事が無い病名に私は首を傾けた。
「はい、エアグルーヴさんのトレーナーさんはその病に疾患しております。特に体に悪さをしないものですが疾患すれば忽ち意識を失い昏睡し続ける…発症例もごく僅かであまり詳しい事は分かっていない病なのです」
「そん…な…」
世界でもまだ確認されていない奇病…それを聞いた途端、私は全身から力が抜けて周りの物が色褪せて見えていた。
「ですが安心して下さい。確認されたどの例でも患者は皆完治しているのです」
その言葉を聞いて私の世界に色が戻ってきた。全員完治していると言う事は治療法があると言う事…私は心躍る気持ちであった。
しかし病の名前から気付くべきであったのだ…その病の治療法を聞いた途端、私は頭を強く振り回された様な感じに襲われた。
「昏睡している者が最も大切だと思っている者。その者が想いを込めて口付けをすれば治るか…」
私は病室で眠っているトレーナーの側で呟いた。
「まぁ、それで治るなら容易いな。アイツの身内は皆疎遠か亡くなっていると聞いた…では担当とトレーナーの関係である私なら手早く済ませられるか…」
そう言って私はトレーナーに近づいていった。
そして軽く口付けをして、彼の眼を覚まさせる。それでお終い。
———そう思っていた。 - 36二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:26:41
———身体が動かない
———足が震えて歩く事が出来ない
———あと一歩なのに彼の前へ行く事ができない
(何故だ!普段の様に何故動けないのだ!)
心の声に反して動かない私の身体、苛立ちを感じていると脳裏に『もし口付けをしても目が覚めなかったら?』という疑問がよぎる。そして医者が言っていた『昏睡している者が大切だと思っている者』と言う言葉が私の中で反響する。
そもそもトレーナーは私の事をどう思っているのか、内心迷惑だと思っているのではないか?その疑問に辿り着いた時、私の今までの立ち振る舞いが駆け巡った。
(私はトレーナーをいつも叱責してきた…お礼も言わなかった事も沢山あった…でもトレーナーはそんな私に文句一つ言わずに向き合ってくれた……!)
ふとトレーナーの顔を覗くと、彼は今まるで人形の様に表情なく眼を瞑っている。
本当にもしもこのまま目を覚まさなかったら?
私に見せた笑顔も、私を励ましてくれたあの声も、私を受け止めてくれたあの優しさも全てこの世から消えてしまったら———
「嫌だ…嫌だっ!トレーナーが居なくなるなんて…そんなのやだぁ…いやだぁ…」
気付けば眼からは大粒の涙が溢れ落ちトレーナーの顔に落ちて顔を伝う。
しかし自分の純粋な気持ちが籠った雫は彼の顔を濡らすのみ。その魂までには届かない。
(例え眼を覚まさなくても…私がどう思われていても…伝えなければならない!私の本当の気持ちを!)
私は意を決して…互いの唇を重ねた。 - 37二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:27:09
私は彼の温もりを感じる様に…そして私の温もりを彼に注ぎ込む様に唇を重ね続けた。これが白雪姫の場面であるならば子供には刺激が強すぎるだろう…しかしそんな事など知った事か。
(お願いだトレーナー…眼を覚ましてくれ!私は…貴様が居ないと駄目なんだ!私は貴様の事が———)
「ん…グルーヴ?」
至近距離で目と目が合う。トレーナーが目覚めてくれた…私の…私の口付けで…!
「はっ…やっと起きたかたわけ。全く…人騒がせな…」
「さっきまで暗闇だった…でも暖かい光が眼を覚させてくれた。君だったんだね…ありがとう…」
「それと…なんかごめん。君の…その…」
「全くだ。言っておくが貴様は白雪姫病と言う病に冒されていた。治療の為に私は口付けをして貴様の眼を覚まさせたのだ。ある魔法を自分にかけてな」
「魔法?」
「そうだ、その魔法は強力過ぎて自分も危険になる魔法だ…この魔法を解く手段はその…さっき私がした様な事を貴様もすれば良い」
何を言っているんだ私は!ありもしない魔法などと言って彼に私と同じ事をさせようとしているではないか!
……いや、魔法については半分本当か。今私の渦巻くこの感情を魔法と言い表しているに過ぎない。
この魔法が何なのか私にも分からない。だけどある言葉で言い表わす事はできる…しかし私にはまだそれは出来ない…
そして本当にこの魔法は危険だ…下手をすれば自分が自分で無くなってしまう…自らに潜む何かを抑えきれなくなってしまう…困難は去った…だから解かなければならないのだ。女帝である私を戒める様に… - 38二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:27:44
トレーナーは恐る恐る近づいてくる。彼から口付けを受けて…魔法が解けて…それでお終い。そう思っていたのに———
嫌だ!嫌だ!嫌だ!この魔法にかかったままでいい!このまま終わらせたく無い!
そんな気持ちが私の決意を塗り潰すその瞬間、彼の唇が私に触れた。
(ああ…これでいいんだ…これで…)
私が諦めも含んでそう思ったその時———
「グルーヴの魔法は凄いな…実は俺も同じ魔法がかけられていてね」
「え?」
今…何て…?それは私にしか分からないのに…なんで?
「それにこの魔法は同じ魔法にかけられた者と合わさると一生解けないって言われてるんだ。だからさ、同じ魔法にかけられた者同士…これからもよろしくな」
「あ…あぁ…ああぁ…」
その魔法の効果だろうか。涙が止まらない、自分の胸の奥が熱くて抑えきれない…
「当然だたわけ…二度と解けない魔法にしてくれたのだぞ…責任は重いからな…」
「ははっ…大丈夫、責任は取るから。それとありがとうグルーヴ。俺を助けてくれて」
たわけ…助けられたのは私の方だ…
———ふとあの時の事を思い出す。
相変わらずあの時の魔法は解けないままだ。
しかしそれも悪くは無い…そう思っていると。
「珍しく考え事かい?」
二度と解けない魔法にした張本人が話しかけてくる。
「いや、少し昔の事を思い出してな…あの時の魔法の事だ…」
今私たちは互いに寄り添って外を眺めていた。
「あの時の魔法…ようやく私に分かった気がする」
「それはどんな答え?」
「たわけ…貴様も分かっているだろうに…だから教えないぞ」
私たちが互いにかけられた恋という名の魔法…それが合わさって愛という魔法に昇華した…その魔法の正体に色々な事を経験して漸く導き出せたのだ。
「相変わらず厳しいな…でも俺も、君と一緒に居なければその答えに辿り着けなかった…ありがとうグルーヴ。そしてこれからもよろしくな」
「それはこちらもだ。よろしく頼むぞ…"貴方"」
そしてあの時の様に唇を重ねる私達…
私たちがかけられた魔法…それが他の者にかからないように…その魔法を閉じ込めた結晶が私達の指でいつまでも輝いていた… - 39二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:29:15
長文となんか脱線している気がするけど
自分が書きたい事書けたしヨシ!
他の皆さんの様になりたいなぁ… - 40二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:46:18
どれくらい眠っていたのかはわからない。背中の感触からして、トレーナー室のソファだろうな。
頭のそばにあったスマホで時間を見ると、時刻は19時過ぎ。眠った記憶もソファに座った覚えもないのが始末に悪いが。
「トレーナーさん、起きた?」
少し離れた、ミーティング用の椅子から声がする。担当ウマ娘のナイスネイチャの顔は、ここからよく見えない。
なぜか部屋の電気は消えているし、うっすらとネイチャが座っているのはわかるが、その表情まではわからなかった。
「……ネイチャ? どうしたの、こんな暗い部屋で……」
「あ……待って、電気はつけないで」
近くにあったリモコンで部屋の電気をつけようとしたところで、彼女に静止される。
「今、ちょっと……顔を見れそうにないし、見られたくないんで」
彼女は右手で、口元を隠しているように見えた。いつもより少し小さな声で、ごにょごにょと口ごもる。
「……なんか、変な夢見てさ」
「夢、デスカ?」
「うん、えっと……いやごめん、なんでもない」
妙な夢を見たことは、ぼんやりと覚えている。が、ネイチャには……本人には、こんなことは言うべきではないな、と思って言葉を飲み込んだ。
正直、ウマ娘の担当トレーナーとしてはよくない内容だ。
「トレーナーさん。その夢って、もしかしてですけど……アタシがいたりしました?」
「――え」
そうして彼女は―さっきよりも少し大きな声で、はっきりと、俺に向かって言った。
「電気、つけてくれますか」 - 41二次元好きの匿名さん23/03/20(月) 22:46:29
辻斬りは1レスの自分ルールに則って、いろいろ省略して事後を書いてみたの。
ギチギチで苦しいけど楽しいの。ネタがあったらまた書くの。 - 42123/03/20(月) 23:03:59
あー、おめでとうございます おめでとうございます おめでたすぎてオオメハナダイになりました
本当に自分でいいのかと不安に感じてしまうエアグルーヴの姿と、自分がしたことをちょっと利用してしまうズルさ、そしてそれを包み込み魔法を永遠にしてしまう二人の愛が声にならない温かさを胸に植え付けてくれました
本当にありがとうございました、これで封じられし私の中の一体が消滅しました
- 43123/03/20(月) 23:18:54
あー、ネイチャえっちです ネイチャえっちです ネイチャえっちすぎて村上〇樹になります
暗い部屋の中、ネイチャさんだけがそこで何があったかを知っているというのがとてもいいですね 夢の話を聞けば一転して攻めになるのも、あえて事後だけというのもとても素敵に感じます
本当にありがとうございました、やれやれ、そういって僕の中の一体はまたどこかへと消えていった
- 44二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 00:29:06
扉を開けて、窓に面したベッドを見る。
柔らかな日光が注がれる清潔なそれには、横たわる彼の姿があった。
突然、私──マンハッタンカフェ──のトレーナーさんが倒れたという連絡が入った。
原因は不明。容態は安定しているものの、急に倒れてそれきり目を覚まさなくなってしまったのだそうだ。
当然彼の担当である私がそれを聞いて黙っていられるわけもなく、すぐさま学園を飛び出して彼が運ばれた病室まで来てしまっていた。
「……トレーナーさん」
歩み寄って彼の顔を見る。
まるで眠っているかのよう。
ひょっとすると彼が倒れたなんて話は嘘で、今自分が見ている光景は幻ではないかと思うほど状況にそぐわない顔だった。
存在を確かめたくて、彼の首筋に指を這わせた。
触れた先からトクトクと刺激が伝わる。
「……嘘じゃ、ないんですね」
改めて目の前の現実を認識して、しかし何かができるわけでもなく、私はひとまず傍の椅子に座った。 - 45二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 00:29:20
考え始めてどれぐらい経っただろう。
差し込む日差しの角度が変わって、それでも尚私がするべきことは思いつかない。
とりあえず学園に戻ろうか、それともこのまま彼の様子を見続けようか。
……もしこのまま彼が目を覚まさなかったら、彼のいない競争生活は。
巡る思考はあちこちに走る。
軸の定まらないコンパスのように、思考は不安を搔き立てた。
そんな時、耳元で囁く声が聞こえた。
「──────……」
「えっ……!?」
聞こえたのは「お友だち」の声だった。
いつからここに居たのかは分からない。
ただ、悩み続ける私を見かねて“答え”を持ってきたらしい。
……問題はその“答え”だった。
「キ……キス……するの?」
あの子は確かにそう言った。
彼が、……トレーナーさんが目を覚ますためには誰かが彼に口づけをする必要があるらしい。
「でも……流石にそれは……」
口ごもる私を尻目に、「お友だち」はどこかへ行ってしまった。
残されたのは、相変わらず横たわる彼と、戸惑う私と、無責任な選択肢だった。 - 46二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 00:29:39
「……私は、どうしたいんだろう」
考えてみてまず思ったのは、彼を失いたくないということだった。
理由は様々だ。トレーナーとしての信頼だとか、気の置けない人だからだとか。
ただ、一番大きい理由はもっと個人的で、レースとは少し離れた位置にあったかもしれない。
「……なら、それをするのは……」
失いたくないなら、起きてほしいのなら、するべきことは決まっている。
問題はそれを誰がやるのかということで、それを考えようとした瞬間、思考より先に言葉が出た。
「……私でないと、嫌だ」
言って気づいた。
私は彼を失いたくない。だって、“私”は“彼”が好きだから。
好きだから、目覚めさせるのは私が良い。
「……少し卑怯かもしれません」
だって、彼に確認もしていないのに、私のエゴに付き合わせるような真似をさせようとしているから。
「……でも……失礼します」 - 47二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 00:29:55
そう呟いて口を重ねた。
一秒経った。きっと足りない。
三秒経った。まだ、不安。
何秒経った? ……もう少し。
どれ程そうしていたのかは分からない。
ステイヤーの私が、少し息苦しくなる程度の時間ではあったらしい。
口を離して、終わったことを認識して、それでもまだ彼は目を開けなかった。
ただ、きっと大丈夫だろう。
「お友だち」はきっと嘘をつかない。
だから、彼が目覚める前に準備をしておこう。
そう考えて病室を出た。 - 48二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 00:30:09
───目が覚めると、自分は学園には居なかった。
どうやらどこかの病院らしい。視界には清潔なベッドとその傍にある一つの椅子。
誰か居たのか……? と思った矢先、鼻孔を病院に似つかわしくない香りがくすぐった。
「コーヒー……?」
そう呟くと部屋の奥から担当のマンハッタンカフェが、二つのカップを手に顔を出した。
「あ……トレーナーさん。……おはようございます」
「おはようカフェ。……えっと、今の状況って?」
そう聞くと、彼女はカップの片方を差し出しながら言った。
「話せば長くなります」
「ですから……まずは、お目覚めの一杯を」
「アナタには……しっかり聞いてほしいですから」
そう呟く彼女の頬は、いつか見た赤さに染まっている気がした。 - 4944~4823/03/21(火) 00:31:18
以上です!
長くなってごめんなさい!! - 50123/03/21(火) 00:56:43
あー、文章がおしゃれです おしゃれです おしゃれすぎてオシャグジデンダになりました
マンハッタンカフェならではの少し不思議な雰囲気と特別な長いキス、そして何をしたのかをしっかりと聞かせようというカフェさんが少しだけ恐ろしくも思え、そしていくつもの年頃の少女らしい部分が非常にかわいらしかったです
本当にありがとうございました、これで空気中に漂う私の中の一体が沈没しました
- 51二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 07:47:24
スレ主が辻を見るたびに七変化するのが面白すぎる
- 52二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 08:58:17
- 53二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 08:58:56
ふと気づけば私は広く何も無い…けれども満点の星空に囲まれた空間に立っていた。
「綺麗ね…」
そう私が見惚れていると突如後ろから私を呼ぶ声が聞こえてくる。振り向けば私によく似た、見たことも無いけれど見覚えのある彼女がそこに居た。
(久しぶり!お姉ちゃん!)
「貴女…と言う事は私は…」
(大丈夫お姉ちゃん。此処は所謂精神の世界だから心配しないで。それよりも今日はお姉ちゃんに話があるの…お姉ちゃんのトレーナーさんについて)
「……ッ!もしかして貴女が今回…」
(違うよお姉ちゃん…でもそうとも言えないかな…)
「それはどう言う事?」
彼が目を覚さない事とあの子に何の関係があるのか…私が思いつく可能性を浮かべても繋がらない。
そんな私に彼女は話を続ける。
(私ね、少し前にお姉ちゃんのトレーナーさん…お兄ちゃんって言おうかな、お兄ちゃんとここで話をしたの)
「あの人が貴女と?」
(うん。どうやら此処に入り込んできたみたい。それでらお姉ちゃんの事とか色々話してもらえたの。それでもう帰るからって帰って行ったんだけど…お姉ちゃんの姿を見てもしかしたらって思ったの)
「?」
(多分お兄ちゃん迷子になっちゃったかも…それにまた会いたいって私が強く思ったからそれに引っ張られて…ごめんなさい)
「別に貴女が悪い訳じゃないわ。誰だってまた会いたいって思うのは当然だもの私が貴女にそう思った時の様に」
(嬉しいな…でもこうして私達が会えるのもお兄ちゃんのお陰だもの。お兄ちゃんが目を覚ます方法を私は知っているの。でも…"そっちにはもういない"私じゃ駄目。だからお姉ちゃん…お願い!)
「当然よ。それで私は何をすれば良いの?」
(簡単だよ!今お兄ちゃんはこっちとそっちの狭間にいるの。だからそっち側のお姉ちゃんが呼び戻して離さなければ良いの)
「でもどうやって?」
(恋人が大切な人にだけする事…お姉ちゃんならもう分かるよね?……そろそろ時間だからもう行くね。今度は二人から色んな話を聞きたいな…じゃあね!)
「……ッ!それって…って待って!」
その瞬間世界が光に包まれる。目を開けると彼が眠っている部屋。どうやら私は眠ってしまって夢を見ていたようだ。 - 54二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 09:00:41
「………全く…あの子ったら」
そう言って先程の言葉を思い出す。しかしその答えに行き着くと途端に顔が熱くなる。これは恥ずかしさからだろうか、その恥ずかしさが判断を行動を鈍らせる。しかしそうしているうちにも彼は向こう側へ引っ張られているだろう。このままでは彼が闇夜に消えてしまう。天の川が生と死の境界となって二度と逢えない織姫と彦星になってしまう…そんなのは嫌!
「私は…私はっ!あなたのことが!」
彼がどこへも行かない様に…私の気持ちを込めた腕で彼の顔を抱きしめ、彼への想い…私の全てを…楔を打ち込むかの様に私は彼に口付けをした。
その口付けは長く長く…私と彼が今まで歩んできた道のりを辿る様に続いた。
息が苦しくなり口を離す。呼吸を整えまた別の楔を打つ様に唇を何度も何度も重ねる。
そうしていると突如頭を撫でられる。気付けば彼が目を覚まして私の頭を撫でていた。 - 55二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 09:00:54
「アヤ…ベ…僕は…」
「気が付いた様ね。キスで起きるだなんてまるで御伽話のお姫様かしら」
目を覚ました彼は辺りを見回し自分が1日近く目を覚まさなかった事実を認識する。
「そうか…ごめんねアヤベ…心配かけて」
「……ッ!私は今とても怒っているわ…分かるでしょ?」
「全く…可笑しいわね。一日目を覚さなかっただけなのに…それだけ…なのにッ!」
「アヤベ…」
目を覚ました安堵と同時に自分の抑えていた想いが溢れ出す。まるで天の川が溢れ出たようなそれはもう自分でも抑えきれない。
「私がどれほど心配したと思っているの!?もう二度と会えないと思ってどれほど辛い思いをしたか分かる!?キスで目を覚ますだなんて…そうしなければずっと目を覚さないだなんて…そんなの!御伽話だけで十分よ!」
「あの時私の許しもなく心の中に入り込んで!今度は許しもなく私から去って行くつもり!?ふさけないで!」
「もう…独りは嫌なの!私を独りにしないで…置いていかないで!織姫と彦星になんてなりたく無い!だって私は…私は!あなたの事が大好きなんだから!」
そこまで言って私は泣き続けた。そんな私を彼は抱きしめてずっと泣きながら謝っていた。
気がつけば日も暮れて辺りは星空に包まれていた。
二人とも泣き疲れて寝てしまった様だ。
「ところであの子と会ったのね」
「うん…会った」
やはり彼はあの子と会っていた様だ。話を聞けばあの子に私の歩んできた道のりを語っていたようだ。
…迷子にさえならなければこの話は美談で終わったのだけれども。
「全く…それで迷子になるなんて本当にあなたは…でもありがとう。あの子の事も思っていてくれて…」
「こちらこそありがとうアヤベ…それに迷惑かけてごめんな…」
「良いのよ。今あなたが傍にいる…それだけで十分よ」
「また、あの子に会えるかな?」
「ええ、またきっと会えるわ。でもまだ早いわ」
そう言って微笑むとその意図を察した彼は顔を赤らめながらもそうだねと微笑み返した。
だって…いつか会いに行く時は二人一緒であの子に会いに行くのだもの。
その時あの子には沢山の話を…星の数より多い色々な話をしないといけないでしょ?
だからもう…分かるわよね? - 56二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 09:02:23
こちらの怪文書を一つ
果たしてスレ主はどの様な姿に変化するのだろうか - 57123/03/21(火) 09:20:45
あー、綺麗です 綺麗です 綺麗すぎてキレンジャクになります
文章が夜の星空で飾られているのがとても美しく、『天の川が生と死の境界となって』の部分を読んだ時にはあまりの美しさに体が声を出そうと喉が震えるのを感じました
本当にありがとうございました、これで夜空に浮かんでいる私の中の一体が爆発しました
- 58二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 09:22:40
このレスは削除されています
- 59123/03/21(火) 09:26:32
(そういうシーンがあるんだなぁとキャラに対して興味は深くなったのですが、ここはあくまで私が"トレーナーが意識を失い目を覚ます方法がキスしかなくて、意を決してトレーナーにキスをするウマ娘のSS"を依頼するスレであり、それに応じて書いていただいたたものであるため、申し訳ないのですが消させていただきます)
- 60二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 12:50:22
ある日のトレセン学園…そこには二人のウマ娘が並ぶ様に全力疾走していた。これがレースであるならば観客大興奮の大接戦であっただろう。
惜しむらくは彼女達が目指していたのはゴールではなくトレーナー室であったという事である。
「ちょっとウオッカ!アタシが一番に起こすのよ!」
「いいや俺が起こすんだ!スカーレットには負けねぇ!」
ダイワスカーレットとウオッカ、何故この二人が熾烈なデットヒートを繰り広げているのかというと彼女達のトレーナーが意識不明になってしまった事から始まった。その原因がとある病である事とキスをする事以外には治す手立てが無いと知った二人は安静にしているトレーナー目掛けて一目散に走り出した…というのが此処までの流れである。
「少女漫画で頭真っ白になってるアンタには無理よ!」
「うるせぇ!キスで目を覚まさせる王子様役なんてそんなカッケー役割譲れるかよ!」
「そもそもアンタキスできるの!?」
「ならオメーもやれんのかよ!?」
「やってやるわよ!タキオンさんの紅茶の茶葉賭けてもいいわ!」
「上等だ!こっちだってやってやるよ!ギムレット先輩の眼帯賭けても構わねぇ!」
お互い譲らない、いや譲れない。互いのプライドにかけて…そして大好きな人の為にも負けられない!
(アタシが1番よ!アイツには負けない!)
(俺が1番だ!スカーレットに勝つんだ!)
(トレーナーは…)
(絶対に…)
((譲らない!))
そうしてとうとうトレーナー室の扉を勢いよくこじ開ける。しかし運命の悪戯なのだろうか。二人とも同じタイミングで脚をつまづき、同じ様に転んでしまった。勢いは止められず二人とも同じ様にトレーナーの顔目掛けて—————— - 61二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 12:50:45
「二人とも俺の為にありがとう。…でも廊下は走ったら危険。今後は気をつける様に」
「はい…」
「すみませんでした…」
結果としてはトレーナーは目覚めた。トレーナーにキスをしたのは確かではある。しかし飛び込む形になり誰が先なのかは分からなかったのだ。
それにトレーナーが目覚めた報告をしている間、二人とも廊下を走った事についてエアグルーヴにきっちり絞られていたのだ。二人のトレーナーを大切に思っているからこその行動であった事や自分のトレーナーもそうなる可能性が否定できないと言うことで軽めの説教ではあったのだが。
「でもアタシのキスのお陰で目覚めたのよ!感謝しなさい!」
「いいや違うね!俺の方が先にキ…キスしたから!」
「ハァ!?アタシの方が一番だったのよ!」
「俺がスカーレットより先だった!」
先程のしおらしさは何処へ行ったのだろう。二人ともどちらが先かで再び火花を散らしていた。
「全く二人とも…ちょっとこっちへ来なさい」
「何よトレーナー…きゃっ!?」
「急にどうしたん…うわっ!?」
近寄ってきた二人をトレーナーは抱きしめて二人同時になるように顔を寄せて、3人でキスをするかの様に口付けをした。
「はいこれで二人とも一着。確かに勝負は白黒つけなければいけないけど偶にはこんな結果も悪く無いだろ?」
「にゃ…にゃにゃにゃにゃによアンタ…ッ!」
「——————ッ!——————ッ!」
突然の出来事に放心状態の二人。
トレーナーを巡る一世一代の大勝負。
どうやら本当の一着はトレーナーが掴み取ったようだ。 - 62二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 12:51:29
別に担当が二人いても構わないだろう?
……構わないよね? - 63123/03/21(火) 13:08:49
あー、贅沢です 贅沢です 贅沢すぎてセイタカアワダチソウになります
二人の担当というのも贅沢でいいですね ウオダスでいちゃいちゃしつつもトレーナーの取り合いをしている様子がかわいらしく、最後にはトレーナーに差し切られてふにゃふにゃになってしまっているのもまた大変かわいらしかったです
本当にありがとうございました、これで競い合っていた私の中の二体が同時に蒸発しました
- 64二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 13:12:34
「どうしよう……お兄さまが……」
穏やかな昼下がり、ゴールドシップとマックイーンの元へ今にも泣き出しそうなライスがやってきました。
二人は理由を尋ねましたが、ライスは上手く言葉に表すことができません。
ですからひとまず二人にトレーナー室に来てもらおうということになりました。
トレーナー室に到着すると、お兄さまがソファーに横になって眠っていました。
「お兄さま、ライスが来た時からずっとこうして目を覚まさないの……声をかけたりしてみたんだけど……」
「それは不思議ですわね……ライスさん、やはりここはお医者様に診ていただいた方がよろしいかと……」
ライスを落ち着かせながら、ただならぬものを感じたマックイーンはそう提案をしました。
ところが、じっとお兄さまの様子を眺めていたゴールドシップがはっきりと言いました。
「いや、アタシはそうは思わねぇな」
ライスとマックイーンは驚いて顔を見合わせます。
「ゴールドシップさん……?それはどういうことですの……?」
「ライスのトレーナーの目を覚まさせる方法がわかったってことだぜ」
「なあライス、お前絵本好きだったよな。だったらこの話に聞き覚えがあるはずだ」
いつになく真剣なゴールドシップに二人は固唾を飲んで見守ります。
「茨の生け垣にすっぽり包まれてお姫様が眠り続けるって話あったよな?」
「そんな眠り姫のところへ王子様が現れてキスをすると、たちまち眠り姫は目を覚ます……」
「つまりだ、お兄さまはお前のキスによって目が覚めてハッピーエンドってことなんだよ!」 - 65二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 13:13:44
それを聞いたライスはぽかんと固まってしまい、マックイーンは目眩を覚えて頭を押さえました。
「何を言い出すかと思えば……こんなときにふざけないで下さいませ」
「ふざけてなんかねぇよ!さあライス、愛しのお兄さまの為にやーって、おしまい!」
ゴールドシップとマックイーンが言い合う中、ライスはぐるぐる回る頭で考えていました。
これではまるでおとぎ話のようですが、それでお兄さまの目が覚めるなら──
ライスはゆっくりとお兄さまの側まで歩いていきました。
「あっ……ライスさん……」
マックイーンはこれから起こる事を予感してぴょんとゴールドシップに飛びついて両手で目隠しをしました。
「おわっ!なにすんだよマックちゃん!感動のシーンが見えねぇじゃねぇか!」
「あなたにはデリカシーというものがありませんの!?」
二人が仲良くけんかをしていましたが、ライスは世界から音がなくなったかのような気持ちに包まれていました。
とくんとくんと自分の鼓動だけが大きく聞こえてきます。
これから自分がすることを思うと、手が震えて体中が熱くなってくるのが分かりました。
「お兄さま、ごめんなさい……でもこれで……」
ライスはそっとお兄さまの頬に手を添えて、真心を込めてキスをしました。
すると、
「ん……んんっ……」
お兄さまが小さく声を漏らしました。
そして、ゆっくりと目を開けたのでした。 - 66二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 13:16:37
「お兄さま!……あぁ、よかったぁ……!」
いくら声をかけても反応がなかったお兄さまが目を覚ましてくれたのです。
ライスは思わず溢れてきた涙を止めることができずに泣き出してしまいました。
「ライス……?ゴールドシップに、マックイーンも……?」
お兄さまは辺りを見渡して不思議そうな顔をしています。
「な?アタシの言う通りになったろ?」
「え、ええ……それはそうなのですが、まさかこんなことが……」
ゴールドシップは得意満面に言いました。
「よかったなライス。一件落着ってことでアタシたちは行くからよ、後はよろしくやれよな」
そう言ってゴールドシップはマックイーンの手を引いて歩き出しました。
「もう、そんなに引っ張らないで下さいまし!」
マックイーンは抗議しましたが、思い直してライスの方を見て微笑みました。
「ライスさん、トレーナーさんに大事がなくて何よりでしたわ。それではごきげんよう」
そう言って小さく手を振って二人は嵐のように去っていきました。
ぽつんと残されたライスとお兄さまでしたが、しばらく何も言えずにおりました。
余りに色々なことがあったので気持ちに整理がつかなかったのです。
「心配かけちゃったみたいだね、ライス」
お兄さまはそう言ってはにかみました。
ライスはふるふると首を振ってなんとか答えます。
「ううん、気にしないで……お兄さまが無事でよかったよ……」 - 67二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 13:19:55
「でも、具合が悪いんじゃないんだよね?お兄さま、いつもお昼寝とかしてないからびっくりしちゃった」
「疲れてるなら休んでもらいたいなって思ったんだけど、ずっと目が覚めないから怖くなっちゃって……」
お兄さまはそんなライスの頭に手を伸ばして優しく撫でながら言いました。
「本当にごめんね。いつも通りにライスが来るのをここで待っていたんだけど……」
「急に眠気が襲ってきてね、ほんの少し横になれば平気かなって思ったんだ」
「だけどこんな時間になってしまって、ライスにも迷惑かけちゃったし……」
そうしてお兄さまはふと、何かを思い出すように遠くを眺めました。
「そうだ、ずっと夢を見ていた気がするんだよ。それが何かはぼんやりとしていて思い出せないんだけど……」
「でも、途中でライスが目の前に現れたんだ」
「君が近づいてくるのを迎えに行きたくても、なぜかただ見ていることしかできなくて……それで…」
「あっ……」
お兄さまの話を聞きながら、ライスは先程自分がしたことを思い出しました。
ほっぺがりんごのように真っ赤に染まっていき、目の前がぐるぐる回りだします。
「ち、違うのお兄さま……あれはね、ライス……ライスは……きゅう……」
恥ずかしさでいっぱいになったライスは気絶してしまいました。
お兄さまが慌てて抱きとめます。
「ど、どうしたのライス!?大丈夫!?」
慌ただしい一日が過ぎていきました。
それからはお兄さまがライスを優しく介抱しましたから、ライスはすぐに元気になりました。
目覚めのキスをする王子様になったり、眠りのお姫様になったりとライスにとっては大忙しの日だったのです。
頑張ったねライス
おしまい - 68二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 13:21:44
3でスレ主さんが書けば誰かが後に続くなんて無責任なことを言ってしまったので書かせていただきましたわ
長くなってしまって申し訳ないです
お目汚し失礼致しましたわ - 69123/03/21(火) 13:34:13
あー、おかえりなさい おかえりなさい おかえりすぎてオカマメタニシになります
とにかく全体的にクレヨンで描かれた絵本のような優しく温かい雰囲気に包まれていて、その中でもキスをするその瞬間は透き通るような透明感のある雰囲気になっていてとても素敵でした
本当にありがとうございました、これで本にかかれていた私の中の一体が修正されました
- 70二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 14:36:02
酒飲んでパーマーシナリオ見返してたらうっかり7レス分くらい書いちゃったんですけど投下許されますか?
- 71123/03/21(火) 14:43:36
読むのに時間がかかるかもしれませんが、それでも良ければじゃんじゃんやっちゃっていただけると嬉しいです
- 72パマちん(1)23/03/21(火) 15:40:47
「端的に言えば、意識”は”在るということです」
その言葉は完全な絶望でこそなかったが、さりとて希望足り得るものでもなかった。無機質な白に覆われた部屋、青白いLEDの光が照らしだすトレーナーの顔、微かに呼吸の動きを見出すことはできてもその色は生気を欠いており、どことなく昔よく見た大理石の彫刻を思わせる。
「意識はありますが、それを体に伝達する回路が寸断されている状態です──クラッチを切った状態の車、と言ったところでしょうか」
「それをもう一回繋ぎなおすことってできないかな」
死力を尽くした暮れの決戦を終えた後、年越しを待たずしてトレーナーは倒れた。原因は全くもって不明。或いは──そうは思いたくないけれど──私のために全力で隣を走ってくれていた故の過労かもしれなくて、それでも何もできないことがつらかった。
「確実なことは言い切れず申し訳ございません……ただ、何か刺激を与えるのは悪くないアプローチかもしれません。それに」
「それに……?」
「いつも一番傍に居た貴女なら、共に居るだけできっと目覚めの助けになります」
「……そっか。ちょっと整理ついたかも、ありがとう。やっぱり名医だね。普通のヒトも診れるなんて」
まるで整理のつかない私の言葉を聞いた彼は、いつだって崩れることの無かった鉄面皮に少しだけ申し訳なさそうな困り笑いを浮かべて、『皆様の主治医ですから』と言うのだった。 - 73パマちん(2)23/03/21(火) 15:41:18
────それが1か月前のこと。
「トレーナー、ちょっと痩せた?」
当然、答えはない。答えを期待して30日も繰り返したのだから今更それに落ち込むことはないけれど、それでも、意識があるなら聞いてくれていると信じて今日も言葉をかけ続ける。
「どうでしょう、昨日よりは少し血色が良いようにも見えますが」
「ごめんね、マックイーン。手伝ってもらっちゃって」
「謝るような言葉は要りませんわ。貴女の走りを一番支えてくれている方ですもの──同じメジロのウマ娘として、むしろ恩返しをしたいのは私の方」
私のトレーナーを優しげに見ていた目が私を見据え、瞬間、闘気を迸らせる。
「あの有マ記念を見て心躍らないほうが無理というもの。パーマー、私は万全のあなたと競うのが楽しみで、だから今こうしているのです」
「……ッ!、そうだね、ありがとう。やっぱりトレーナーには早く起きてもらわなくちゃ」
「この声も聞こえているでしょうから──伝わっていますわ、きっと」
「聞こえてるかなー、マックイーンの覇気に当てられて気絶してたりして」
「ちょっとなんですの!?私を格闘家みたいに言わないでくださる!?」
もうちょっと感動的な流れだったでしょう、と文句を言う彼女を尻目に、さてほんとにちゃんと聞こえているだろうかとトレーナーの髪を手で梳き、掻き上げる。
私たちとは違う、小さな耳。これでもちゃんと、私の声を逃さないでいてくれる、耳。愛らしくて悪戯心が沸いて、そろそろ起きないとパーマーさん泣いちゃうぞ、と囁きながら耳朶を指でなぞる。
- 74パマちん(3)23/03/21(火) 15:42:03
ところがそれに反応した声は、彼でなく彼女から発せられていた。
「ゎ、ァ、あぁぁ……」
「えッ何、どうしたのそんな声出して」
「ッパ、パーマー貴女……なんて大胆な……いくら眠っているとはいえそんな……」
先ほどまでの凛とした顔が嘘のように真っ赤に茹で上がり、両手で顔を隠しながらもしっかり指の隙間からこちらを見る目がそこにあった。
「眠ってる殿方に、その、キ、キスだなんて」
「キッッッッッ!?いや誤解!誤解だよ!してないしてないできないよ!」
「え、え、えでも今さっきの動きは明らかにもうソレでしたわ!」
「流石に拡大解釈だよッ!……あっもしかしてドーベルの……いやいやどっちみち誤解だって」
「私だってまだ手も握れたことすらありませんのに……まさかその方面まで逃げを打たれるとは流石にそこまでの考えは」
「逃げてない!──いや逃げてるかも……ああやっぱ違う!」
ターフの上で見せる名優の顔はどこへやら。
破壊的な音を伴って椅子から立ち上がった彼女は真っ赤な顔のまま、左手の小指を一本立てて雄弁にまくしたてる。
「ああ、でも納得は行きますわッ!──刺激、脳への刺激がカギになる可能性をお医者様もおっしゃっておりました。正しくこれ以上ない王道の刺激……ですわね!この際未成年であることには目をつむりますッ──メジロマックイーンの名に懸けて、生涯秘密は守り抜きますわ!安心して存分になされましッ」
「あ、ちょ、ちょっとマックイーン!」
気遣いのつもりなのか、そのまま勢いよく廊下へと出て行ってしまった。
- 75パマちん(4)23/03/21(火) 15:44:02
途端に静けさの戻る病室。静謐で無機質な空間にはトレーナーの変わらず深い寝息と、窓を通して聞こえる微かな雨音だけが僅かにこだましていて──
「……キス、ね」
どうしても、”そこ”に目が行ってしまう。そんな、童話の王子様じゃあるまいし。でも──
「(──トレーナーは、嫌じゃないのかな)」
「(例え言い訳できて、ほんの少しでも正当性があったとして、私がそういうことをしたら、嫌じゃないのかな)」
たぶん、嫌だなんて言うことはない。それくらいは分かる。いつだってこの人は、私が私のやりたいようにと言って後押ししてくれた人だから。どんな理由があったとしてもそれが私の選択なら──きっと許してくれる。
「でもね、トレーナー。私は許してほしいわけじゃないよ。もしそれが許容できなかったらその時はちゃんと言ってほしいんだ。ほら、私絶対怒らないからさ」
ぎゅっと頭のあたりに力が入って、耳が絞られる。
このセリフすら言い訳に過ぎないのは重々承知で、それでも、いつもと違って逃げられない状況ではそうして己を鼓舞していないと、”本当に”逃げ出してしまいそうだった。
「返事聞くのはちょっと怖いけど──いやゴメン、嘘。めっちゃ怖い。けど、もしトレーナーがこのまま一生起きてくれなかったら、声を聞かせてくれなかったらって考えたらさ。そっちの方が本当に怖くて、嫌なんだよね」
枕元の椅子に腰かけて、変わることの無い表情を見下ろしながら必死の言葉を続ける。
ぱた、ぱたと窓を打つ雨の冷たさがそのまま彼を冷やし切ってしまいそうに思えて、また耳に触れた。
怖い。嫌だ。何気なく口にして──ああこれこそまさに自分がずっと抱いていた感情だと漸く気が付いた。30日間押し込め続けたソレが、意識されてはじめて形をとって、心の中を支配していく。
彼を支えたいと思う一心で隠し続けて無視し続けてきた、私のこころ。
無機質な白に覆われた顔に私の影が被さる。ぱた、ぱたと雨は止まない。
「刺激とか、治療とか、そういうのは抜きでさ。私は私の意志でそうしたいって思ってるんだよ。そりゃできれば本当はこういう形じゃなくて、もっとちゃんとしたシチュエーションで、もっとちゃんと色々話してからが一番よかった、けど──」
ぱた、ぱたと白い頬に垂れた雨──違う。涙だ。誰の──私の。
- 76パマちん(5)23/03/21(火) 15:45:39
「──もう、そういうのがどうでもよくなっちゃうくらいさ、私寂しいよ」
ずっと寂しかった。
主治医に無理言って見てもらい、助言に従ってトレーナーと共に過ごし、毎日々々言葉をかけて、時々手伝ってくれたメジロのウマ娘たちの前ではいつも務めて明るく在った。
それでもどこか心が寒かったのは、それが全て”メジロパーマー”の顔だったから。
トレーナーにだけ見せることができていた”私”はずっとひとりだった。
「マックイーンには感謝しなきゃなあ。ねえトレーナー……もう一回私の名前を呼んでよ。なんでもするからさ」
落ちたしずくを指で拭う。少しこけた頬のラインを人差し指で撫でる。そうして何十分を過ごしたのだろう。いつしか窓を叩く音は静まり、カーテンの隙間からは夕刻に染まった光が一筋、白い布団にオレンジ色を引いていた。
もしも──もしも、昔話よろしく眠り姫が王子様のキス一つで目を覚ますのなら。そのあと最終的に私がどう思われるかなんてどうでも……やっぱり良くはない。けど、目覚めないほうがもっとつらい。
彼の頭を包むように両手をついて、境界線を踏み越える。
「私の初めて──それでおあいこって事に、してくれないかな」
縋るように言い訳一つ、笑って、笑って。
天気雨と共に唇を落とした。
- 77パマちん(6)23/03/21(火) 15:47:02
早とちりから暴走してしまったことを潔く認めて謝るため、メジロマックイーンは二時間ぶりに療養室を訪れた。先ほど食べたプリンの甘さで心はすっかり落ち着いていたものの、やはり正対して頭を下げなければどうにも落ち着かない性分である、貴女の分を持ってきましたわと手土産と一緒におずおずと扉を開けたが返事はない。
「……」
「……」
日が落ちた部屋の中、相変わらず彼女のトレーナーは白い寝台に眠り、その胸へ顔をうずめるようにしたメジロパーマーもまた穏やかに寝息を立てていて──ただ、その背には。
「────ッと、これは困りましたわね……まだプリンは余っていたでしょうか」
思わず声を上げそうになった口に手を当てた自分の反射神経を評価したい。
(もちろんプリンも取り落としませんわ!)
「いやいや、これは主治医(せんせい)へご報告が先ですわね」
そう言ってはみるものの、今すぐに主治医を呼び出すことは何となく躊躇われて、逡巡の後部屋を出ることを選んだ。危急の容態と言うわけではなさそうだし、何より今はただ二人の時間へこれ以上踏み込んでしまいたくなくて、後ろ手にドアを閉めた。
「──もしもし、主治医(せんせい)。遅くに申し訳ございませんわ。……はい、そうです。恐らくあの方は状況が好転したように思います。のちほどパーマーから連絡が行くかと思いますので準備だけ。お願いいたします。はい──では」
電話を切った後で、思いのほか自分の顔が赤くなっていたことに気が付く。
「(当然ですわ──あんなに見せつけられたんですもの。レースじゃなくても貴女は先に駆けていってしまうんですのね、私も──いつか)」
そこまで思ってから、もう少し熱がこもりそうになった頭をふるふると左右に振る。今はそれよりも明日以降のスケジュールについて考えなくては。それから、追加のプリンも。
- 78パマちん(6)23/03/21(火) 15:48:42
- 79二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 15:50:49
くぅ疲
うおーパマちんに雨降らせるぞーって書いてたんですけど主治医とかマックちゃん出したくなった結果長くなりました、反省
エミュ甘設定踏み倒しその他ご指摘有ればお知らせください - 80123/03/21(火) 16:21:48
- 81二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 17:22:12
- 82二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 20:19:49
「つまり、このボクからトレーナー君への熱いベーゼが無くてはならぬ…ということだよ!感謝したまえ!」
覇王テイエムオペラオーは眠り姫ならぬ病室のベッドに横たわる己がトレーナーを見つめ、わざわざ高らかに語った。それと言うのもいばら姫病なる不可思議な病に彼が倒れたからだった。医師が退出したのち、なぜ覇王の伴侶たる君が、ああなんという悲劇に見舞われたボク…涙に暮れる姿も美しい…と6時間のオペラを囀るような声で歌い上げ──流れるようにトレーナーに口付けようと、した。
王が村娘に無体を強いた訳ではない。“互いに思い合う相手とのキス”が覚めぬ眠りを解く現在唯一の術なのだ。共にテイエムオペラ朝を築きし我ら、どうして思い合わぬことがあろうか!この覇王が魔に囚われし伴侶をいざ救わん! かくして彼女は歌い、儚く揺れる乙女の眼差しと密かな声の震えが消え去るまで演じ、覇王自ら唇を彼のものに重ねんとした。だが寸前で、体が止まってしまう。
「さぁ目覚めその瞳に──最も美しい者を映したまえ──♪」
しかし口付けられぬ一瞬などなかったかのような優美なステップに制服のスカートが花弁を広げて、そして途方に暮れたように閉じた。舞台の上の王は降りた幕の向こうへ。後に残った少女は椅子に腰掛け耳を垂らし、まだ眠っている彼を伺うしかなく、…もしも彼が自分のキスで目覚めなければ──という筋書きが勝手に彼女の脳裏に書かれていく。倫理と道理が当然だと告げている。彼は王の駆ける物語の演者、楽屋の彼は彼のもの。王の伴侶はただの配役にすぎない。……だが、彼が目覚めなければ…隣に立つ演者もまたいなくなってしまう。それはいけない。歌劇は続けなくてはならないのだから。嗚呼、こんな舞台の裏側をどうオペラに組み込めというのか!
「何も問題はないとも。ボクと君は今やトウィンクルシリーズに輝く二連の太陽なのだからね。この覇王テイエムオペラオーの口付けに何の不満がある?」
傲慢であるはずの台詞でさえ、か細い声では自分自身も騙せない。どころか涙が溜まっていく。もし、互いに思い合っていないのならいっそ想っていないのは自分の方であればいい。それほどまでに彼の想いが欲しい。愛して欲しい。故にこの時ばかりは覇王の役を敢えて演じた。傲岸不遜な王でなければ、少女には愛しい相手の思いを確かめる勇気なぞ湧くわけも無かったからだ。 - 83二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 20:20:10
だが──今日の彼女の演技はあまりにも不恰好だった。いかに高らかに歌おうと、ただの少女が舞台に上がってしまう。歌っては口付ける素振りで止まって、無様なエチュードを繰り返す。
やがて少しばかりの時がすぎた。ちらりと盗み見た寝顔は変わらず安らかだった。
「…隣にいてくれるのは舞台の上だけ、なのかもしれないね」
それは覇王らしからぬ、震える声で成された敗北宣言だった。ふ、とオペラオーは息を吐く。もしかしたら彼は永遠に共にはいてくれないかもしれない、そんな不安を拭うことのできない、覇王の仮面も被れない自分の弱さが疎ましかった。いつか彼と別れる可能性が怖かった。
「…いいとも、認めようじゃないか!何も舞台の外で君が何をしても咎めることはあるまい!君が覇王の隣にいるのは確かなのだからね!」
冷えた涙がこぼれ落ちる。それでも虚勢は高らかに、いつも通り心の底から朗々と。テイエムオペラオーは涙に暮れて立ち止まってはならない。トレーナー君が目覚める目覚めないに芝居が続くか続かないかは関係ない。二人で舞台にあがるのだから。ならば覇王が何を恐れようか、虚飾であっても真実だといつだって一人で誓ってきた。
「力を貸しておくれ、ジョセフィーヌ。一目見たならヨカナーンも恋に落ちてしまうほど美しいボクを映しておくれ。……あぁ!こんなに美しい乙女に口付けられては誰もが恋をしてしまうさ! さぁ愛しいヨカナーン。君の唇にキスさせておくれよ」
恋に狂うサロメのように、彼女は彼の唇をなぞって微笑む。どれほど恐れても、彼が目覚めなくても、覇王が伴侶に口付けない訳がないのだから。
「さぁ行こうか、“覇王”テイエムオペラオー!」
力強い宣誓とは裏腹に、こわばった唇がそっと押し当てられ静かに離れていく。
「…ふ、ふふ」
陶酔とも怯えともつかない笑い声が微かに漏れる。
「……君に口付けてしまったよ、ヨカナーン」
ベッドに腰掛けた少女は震えた声で台詞を言い切った。それ以上何も言えず、どく、どくと騒ぐ心音だけが響いた。
- 84二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 20:20:57
覇王で書かせていただきました。エミュの甘さはお見逃し下さい。お目汚し失礼します
- 85123/03/21(火) 20:31:37
- 86二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 20:41:48
- 87二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 21:14:39
こんにちは、アストンマーチャンです。でも今日のマーちゃんは元気がありません。
なぜならトレーナーさんが目を覚ましてくれないからです。
トレーナーさんは決してお寝坊さんではありません。何やら変な病気さんに罹ってしまったらしく、皆さんで必死に文献さんを読み解いている所なのです。
今マーちゃんに出来る事はトレーナーさんの傍にいて呼びかけるぐらいしか出来ません…それぞれ役割というものがありますが何だか悔しいです…
トレーナーさんはまるで時が止まった様に固まっています。それを見てると何だかマーちゃんの心がハラハラします。
時間が止まる…あの時マーちゃんが波に流されていたら同じ様に時間が止まっていたでしょう。そう思うと震えが止まりません。トレーナーさんのあの時の気持ちが分かる様な気がします。
もしかしたら今トレーナーさんも波の音が聞こえてきているのかも知れません。身体は此処にあっても心が既に波に流されて……いるのかも…しれ…
あれ?どうしてでしょう?マーちゃんの目から涙が止まりません。
マーちゃんがしっかり…しないといけないのに…
トレーナーさんが…目を覚まさないと…思うと…心が流されていると…思うと…
いやだよ…ひっく…まだマーちゃんの事を…全部映し切れてないよ…トレーナーさんが…居ないと…ううっ…みんなに覚えて貰える…マスコットになれないよぉ…うっ…ぐすっ…ううぅぅっ… - 88二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 21:15:08
へなへなと床に座って泣いてしまったその時電話が鳴りました。力無く手に取ると病気さんの治し方が分かったらしいのです。
病気さんの治し方…それは接吻…キスをすれば目が覚めるというらしいのです。それを聞いてフラフラとトレーナーさんの方へ近寄りました。
もしこれで目を覚まさなかったら…トレーナーさんは今度こそ流されてしまうでしょう…そう思うと身体が動きません…
でもマーちゃんの時…必死に探して繋ぎ止めてくれたのはトレーナーさんでした…
あの時の運命を変えてくれた時と同じ様に…今度はマーちゃんの番です。
マーちゃんの想いを唇に込めて…近づきます。
閉じたままだとマーちゃんを映せないですよ。
———だから、起きて下さい…私だけのレンズさん。
トレーナーさんの唇はマーちゃんのと比べると少し硬かったです。でも…マーちゃんの全てを優しく受け止めてくれました。
唇を離すとトレーナーさんが目を覚ましました。マーちゃん、やりました…やってみせました。
おはようございます。アストンマーチャンです。
あまりの寝ぼすけさんだから思わずマーちゃん涙が出てしまいました。
マーちゃんの声が聞こえてきたですか…?さっきまでの話を聞かれてると恥ずかしくてマーちゃん溶けてしまいます…
でも良かったです…本当に…よかったぁ…ぐすっ…
…はい、これからもウルトラスーパーなマスコットになれる様にマーちゃんを映して下さいねレンズさん。
その前に二つお願いがあるのです。
一つは…んっ…マスコットではなくて"貴方"のマーちゃんのこの"熱"も覚えておいて欲しいのです。
そしてもう一つは…マーちゃんも覚えていられる様に同じ様なトレーナーさんの"熱"をマーちゃんに下さい… - 89二次元好きの匿名さん23/03/21(火) 21:16:31
マーちゃんのエミュは難しいのです。
皆さんのエミュが羨ましいのです。 - 90123/03/21(火) 21:25:31
- 91ヒシミラクルを実装しろ友の会23/03/21(火) 23:39:43
「トレーナーさん! トレーナーさん!」
……だめ! 起きてくれない! 溺れた私を助けてくれたのに、このままだと……このままだとトレーナーさんが! 周りには誰も……。助けを呼ぶヒマも、ない……!どうする……どうする私!?
「(……あっ! 人工呼吸!)」
そのときとっさに思い出したのは、確か溺れたときは肺に水が入ってるから、すぐに出さないといけないって。でもそれってつまり……。
「(……いや、そんなこと気にしてる場合じゃない!)」
少なくともそんなことを悠長に考えている場合じゃない。大切なヒトを助けるためなら、恥はいらない! ……それに、こんな形になっちゃったけど……。
初めてはちゃんと、好きなヒト、だから。
息を吸って、口元に近づく。ここまで来たら、もう迷わない。神様、どうか。
──私に奇跡を起こす力を、ください。
「────ッ!! ガハッ!? ミ……ラ、ク……」
止まっていた呼吸が息を吹き返して、目を見開いて私の顔を見ていて。大して水が入ってなかったのが不幸中の幸いだったのかも。でも、ちゃんと、
「っ〜〜! トレーナーさんっ!!!」
「ルぇっ!?」
目を覚ましてくれました。そのことが嬉しくて、つい抱きついちゃいました。
ちゃんと感じられる、あなたの熱。ちゃんと聞こえる、あなたの鼓動。
「よかった……良かった……!」
「…………ありがとう、ミラクル」
そんな私の髪を、優しく撫でてくれました。あなたの手から伝わる、優しい暖かさ。
私はこの暖かさが、好きです。
しばらく体を預けていると、トレーナーさんが頭を撫でつつこう言いました。
「それに、ほんのちょっとだけど、ちゃんと泳げたみたいだったし」
「次はもっと泳げるよな?」
「………………へ?」 - 92123/03/22(水) 00:08:04
- 93二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 00:30:03
スレ主の語彙が見たくてスレ見てる所は正直ある
- 94二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 02:28:02
誰もいない部屋の中、寝台の上に横たわり、じっと動かない人影がひとつ。
ゆっくりと近づいて、その顔を覗き込めば──よく知る、そしてそうであって欲しくないと願った顔。
眠るように目を閉じ、静かに呼吸だけを繰り返す、その人は。
私の、トレーナーさんでした。
『トレーナーさんが倒れた』。そう聞いて居ても立っても居られずに、私は駆けました。
レース本番の末脚さながらに全力で走り、辿り着いた私へ、状況が説明されます。
『原因は不明』。そして『なぜそうすればいいかも不明』。
けれど、『私が口付けをしなければ、二度とトレーナーさんは目覚めない』という事実。
それは、幼い頃からよく聞いた物語のよう。
呪いによって覚めない眠りに落ちた姫君が、騎士や王子による愛のキスで目を覚ます……そんな、よくある物語。
まさか自分が、それも口付けをする側の立場として、その状況に陥るとは夢にも思いませんでした。
そっと、手帳を開きます。
そこにあるのは、二人で過ごしてきた「これまで」と、これからやってくる筈の二人の「これから」。
……口付けの予定は、そこにはありません。まして眠る貴方に、それをする予定なんて。
──それでも。
その予定がなかったとしても、トレーナーさんの為に。
私たちの、未来の為に。
手帳を閉じ、深呼吸をひとつ。
不貞を働くような気がして痛む胸と、逸る気持ちを抑えて。
眠るトレーナーさんの顔へ、私の顔を近づけて。
「Dich liebt' ich immer, dich lieb' ich noch heut'.」
「……Und werde dich lieben in Ewigkeit.」
唇を、そっと重ねました。 - 95二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 02:32:23
ドイツ、キス、眠るひとへ……と来ればこれだろう! ということで一筆
あんまり意を決してない(描写不足)気もするけどそこは大目に見てくだされば - 96二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 06:54:24
スレ主は一体何人いるのかそしてどこまで変化するのか…我々は確かめるしか無い…
だから思いついたら書いて行こう… - 97二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 07:42:49
あー、メルヒェンです メルヒェンです メルヒェンすぎてメルルーサになります
童話のような状況に自分が巻き込まれるという描写が少し古めかしい紙に描かれたような趣深さを感じさせ、積み上げてきた『これまで』と積み上げていく二人だけの『これから』が非常に価値の高いものに感じられました
本当にありがとうございました、これで森の奥深くに住む私の中の一体が討伐されました
- 98二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 08:53:17
- 99二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 12:33:03
良いSSの数々…
- 100ヒシミラクルを実装しろ友の会23/03/22(水) 18:36:24
- 101二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 18:58:47
「トレーナーさ〜ん? いつもセイちゃんにサボるなって言っておいて、自分はぐーすかお休みなのは締まらないんじゃないですか〜?」
「…………」
「……こ〜んな風に、無防備なほっぺたツンツンされちゃいますよ〜?」
「…………」
「……はぁ」
ふにふに、少し固く厚い肌を軽く押し込む。暖簾に腕押しとはこのことか、力の抜けた頰肉は力を込めただけ呆気なく沈み込む。最初は揶揄うネタでも出来たかと思ったけど、次第に飽きと物足りなさ、そして一抹の寂しさが胸中に立ち込め始めた。
トレーナーさんの身に何が起こっているのか、実際のところ私は早々に気付いていた。デスクからソファに移すときに見えたのは、スノーホワイトの様に色の無いトレーナーさんの顔。そこに熱を吹き込む方法も当然知っている。
学園の中で既に何件か起こっていたのを聞いていたからこそ、私はこれほど冷静でいられるわけで。もしセイちゃんが発見者第一号だったら、今頃トレーナーさんの肩を引っ掴んで泣きながら揺すぶっていただろう……なんてことはないと思いますけどね?
「トレーナーさん? このままだとキスされちゃいますよ? いつもはよわよわなセイちゃんですけど、やる時はやるってこと分からされちゃいますよ?」
「…………」
「……教え子と指導者の間でキスなんて以ての外、そんな風に言えるのも今だけなんですよ?」
「…………」
言葉はない、沈黙のみ。いつもは少しアタックしてみてもカウンターされてばかりだけど、今日ばかりは完全に私がリードしている。してしまっている。俎上の鯉、そんな言葉が頭を過った。
……このまま放っておけば、サボり癖を咎められることもないし。キザったらしい言葉を囁かれて、にゃぁぁって悶えることもない。いつもより気楽に過ごせるはずなのに……何時からか、私にとって貴方の存在がこれほど大きくなっていたなんて。
貴方の声が、温もりが、笑顔が。これほど恋しいなんて。
「……じゃ、やっちゃいますね。犬に噛まれたとでも思って適当に流してくださーい」
発した声が震えていたのは、自分でもすぐに分かった。でも、もう戻れない。彼を起こせるのは私だけだから。お説教でも何でも、目が覚めた後に甘んじて受け入れましょう。 - 102二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 18:59:24
「んっ……」
彼の口元に、私が唇を押し当てる。ファーストキスはレモン味なんて言うけれど、実際は少し乾燥した皮膚の、無味乾燥な感触だけがあった。その間に軽く舌を這わせて湿らせる。撫でるように、労わるように。
「んん……」
なんとなく、彼の顔を視界に収め続けるのが恥ずかしくなって。私も彼に倣って両目を閉じ、口元に意識を集中させる。変わらず無抵抗な口内に、私の舌がぬるりと滑り込んで、彼の少し熱いそれに重なった。とんとんと、舌先で軽く突いてみれば、その動きに押されて彼の舌も動く。
「ん……じゅる……」
美味しい物を目にした時や思い浮かべた時に、唾液が分泌されるって話は有名だと思うけれど。今の私はそれに近い状態だったらしく。少し舌を這わせてみただけで、重く湿った音が口内に広がり、反響する。一方的に私の思いを押し付けるだけの行為かもしれないけれど。じゅるり、じゅずずって音が、この状況をいっそう濃密な時間たらしめていた。
「……ぷはぁ」
舌を抜き、顔を離す。互いの間に伝ったのは、一本の銀糸。さながら釣り糸を垂らした瞬間みたいだな、なんて思考が浮かぶ。そうなると、私が釣り人でトレーナーさんは海? いやいや釣り堀がいいところでしょう、なんて。
「……セイちゃんも眠たくなったので、今日の練習はお休みしますね〜」
少しだけ視界が眩む。頭に上手く酸素が回らないのは、無呼吸状態が長かった故の酸欠なのか、それとも。
お気に入りの毛布を取り出すのも億劫になって、そのまま床に寝転がる。ちらっと彼の顔を見て、瞼の裏の眼球が微かに揺れているのが見えた。まあ、このまま寝てしまっても、彼が起きるよりは先に目が覚めるでしょうなんて淡い期待を持って。欠伸を一つ、視界を闇に閉ざす。
……硬い床の感触が、柔らかなソファのクッションと毛布の重みに変わるまで。「体感では」数分も掛からなかった。 - 103二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 18:59:50
>互いの間に伝ったのは、一本の銀糸。
これがやりたかっただけだろシリーズです
- 104123/03/22(水) 19:41:53
あー、フィッシングです フィッシングです フィッシングすぎてフィジーオオタカになります
前半はかわいらしくほっこりとした雰囲気だったためこのまま温かい話になるのだろうと想定していましたが、後半は普段と違い圧倒的に優位だからこその振る舞いがとてつもない色気を持っていて、非常に強いギャップを叩きつけられました
本当にありがとうございました、これで深海に沈んでいた私の中の一体が還元されました
- 105二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 21:24:19
「トレーナーさん…まだ起きませんの?」
あの日から3日…私、メジロマックイーンのトレーナーさんは未だ目を覚ましません。
遡るほど3日前…突如崩れ落ちる様にトレーナーさんは倒れました。すぐに主治医が来てくれまして命に別状はない事は分かりました…しかし一向に目を覚まさないのです。
思えばトレーナーさんは私に…いえメジロに色々尽くしてくれました。
トレーニングの時も常に私の意見も取り入れて最適なメニューを組んでくれました。私がスイーツの制限をしている時も制限下でも問題ない物を作ってくれました。私が繋靭帯炎を発症した時も決して諦めずに私が元通りに…いえ、それ以上に走れる様になったのもトレーナーさんのお陰です。
私だけではありません。メジロの多くの方々に頼まれた事も何一つ言わずに手助けをしてくれました。
「私は…いえメジロは…貴方に頼りすぎてしまったのかもしれませんわ…」
これは貴方に頼りすぎた罰なのでしょうか?でも何故貴方が…その罰を受けるのなら私達なのに…ッ!
そう思っているとトレーナーさんの上着の方から何か落ちる音が聞こえてきました。
「あら?トレーナーさんの上着から何か紙が落ちてきましたわ…何でしょう?」
手に取ってみるとそれは予約日が過ぎたスイーツバイキングのチケット…その日付は倒れた翌日…ちょうど私の誕生日… - 106二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 21:24:44
「ううっ…トレーナー…さん…」
倒れるほど追い込まれていたのに…私の誕生日を覚えていてくれて…私の事を想ってくれて…ッ!
それなのに私は今、何も出来ずにただ見守っているだけ…そんな自分が今は誰よりも憎い…!
「トレーナーさん、早く起きてくださいまし…トレーナーさんのお陰でまだ私はレースを走り続けられますわ。その時にトレーナーさんが迎えてくれなければ一着をとっても意味がないですのよ?」
トレーナーさんは目を閉じたまま答えません。ですが私は語り続けます。
「それにまだ、一緒にスイーツバイキングにも行けてませんわ…あの有名な観光場所にも…一緒にスタジアムで野球を見るって約束もしましたわ…まだ色んな思い出を作っていないのに…貴方は先に私の思い出になってしまうのですか…?」
トレーナーさんは答えません。すると代わりに答えるかの様に風が窓から強く吹き抜けました。そしてその風は私の近くにある机にありました私とトレーナーさんの写真が入った写真立てを倒しました…その時私の張り詰めていた何かが壊れる音がしました…
「……ッ!どうしてですの!?どうして…ねぇ!何で起きないの!?そんなの嫌ですわ!…絶対に嫌!まだ何も思い出も作れていないのに!まだお礼も言えてないのに!私の許しもなく思い出になんてならないで!お願いです!目を覚ましてくださいまし!ねぇおきてください!おねがいおきてぇ!」
メジロの立ち振る舞いなどお構い無しに私は眠っているトレーナーさんに縋る様に泣き叫びました。現実はなんて残酷なのでしょう…それでもトレーナーさんはまだ目を覚ましません。
「"一心同体"って…誓ったのに…トレーナーさんのばかぁ…」
「…ック…イーン…」
突然声が聞こえ私はハッと泣きじゃくった顔を上げました。トレーナーさんは目を開けていません。でも確かに私の名前を呼んだのです。
「そう…ですわ…トレーナーさんも頑張っているのですわ…先に私が諦めてどうするのです…!」 - 107二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 21:25:08
折れそうになった私の心をトレーナーさんはその声で押し留めてくれました。しかし私に出来ることは信じて待つ事のみ…そう思っていたその時です。
「"一心同体"…そうでした…私達はこんな事で分たれるものではありませんわ!」
確かに身体は別々ではあります…しかし私達の心は今も繋がっています!だからこそ伝えるのです。私の想いを…私の声を…だからもう私はもう迷いません!貴方がその目を覚ますまで想いを伝え続けましょう!
———愛する貴方だけに捧げることが出来る唯一の方法で!
「トレーナーさん…起きて下さいまし…大丈夫です、私が傍にずっと居ますから…ずっと支え続けますから…だって私は…貴方の事が大好きだから…!」
そう囁き私は唇を落としました。
「ん…んんっ…」
(トレーナーさん…好き、好きっ、すき、だいすき、だいすき、だいすきっ…)
溢れる想いを口づけで伝え続ける…これ程までにレース以外で自分がステイヤーである事に感謝した事はありません。確かに肺活量の事もありますが何より…
(トレーナーさんの唇…甘い…ずっとこうして居られる…)
好きな人との口づけだからでしょうか…呼吸も忘れてしまう程、その甘さを味わいながら私は想いを伝え続けていました。
「ぷはっ…はぁ…はぁっ…」
しかし生きている者には限界があります。心惜しくも口を離し呼吸を整えていると…
「う…マック…イーン?」
私が望んでいた光景が…トレーナーさんが目を覚ましたのです!
「トレーナーさん!トレーナーさぁん!」
私は抱きつき泣き続けました。溜め込んでいた感情を全て解き放つかの様に…
「ありがとうマックイーン…君のお陰だ…!」
そんな私にトレーナーさんは抱きしめ返し、私が好きなあの温もりで包み込んでくれました。 - 108二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 21:25:40
その後主治医の診断を受けて全く異常がない事が分かり、皆さん目を丸くして驚いていました。
皆さんは驚いていましたが…私は一心同体である事を…心は繋がっている事を証明できた事が何よりも嬉しかったと一人思いました。
「ありがとうマックイーン…そしてごめんな…心配かけたし君の誕生日も…」
「こちらこそごめんなさい…貴方に負担をかけ過ぎてしまいましたわ…」
私の部屋に戻って何故か二人でしんみり謝り続けていました…でもそうしなければ気が済まなかったのも本当です。
「…このままだと互いに謝り続けてキリがないな…これでおあいこにしないか?」
「そうですわね…ふふっ、これで暗い話はお終いですわ!」
お互いに笑っていると思い出したかの様にトレーナーさんが自分の鞄から小包を取り出して渡してきました。
「開けてみて。君と俺との"一心同体"の証だから」
開けてみるとそこにはお揃いの指輪がありました。
「トレーナーさん…私…私…!」
涙は流し切ったと思ったのに不思議です…また涙が溢れ出てきたのですから。
「それと誕生日ケーキは…ごめんな…また美味しいのを探そ…」
「その必要はありませんわ。何故なら…んっ…」
「!!?」
「ぷはっ…どんなスイーツよりも甘くて熱いものを知ってしまったのですから…」
顔を赤くして唖然とするトレーナーさん…嗚呼、その顔が今は何よりも愛おしい…でもそんな貴方がいなくなってしまったかもしれないと思うとまた涙が溢れてきます…だからこそ私は今、覚悟を決めました。
「トレーナーさん…実は私、欲しいものがあるのですわ…」
「誕生日だしね、俺にできるものなら何でも言って欲しい」
「私…今回の一件で貴方と一緒に居られる事の大切さを思い知らされました…そして改めて"一心同体"で共に歩んで行きたいと…改めて決意しましたわ…」
「マックイーン…」
私はトレーナーさんに近寄り抱きしめながら耳元で囁きます。
「だからこそ…"一心同体"だからこそ…」
——————貴方が欲しい - 109二次元好きの匿名さん23/03/22(水) 21:30:17
トレウマ環境トップクラスの【メジロ】カテゴリーの中で禁止級の【ガチのマックイーン】を使ってみた
解釈違いだったらすまない - 110123/03/22(水) 21:45:10
- 111二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 01:10:04
スレ主は生物デッキの使い手だったのか……
- 112二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 07:48:51
スレ主の正体は一体…?
- 113二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 16:48:23
とうとうカードになったスレ主…謎が深まる存在よ…
- 114123/03/23(木) 22:37:48
さてさて30ぐらいまで続いて5回ぐらい辻していただければいいなと思っていたこちらのスレになりますが、気が付けばすでに完走まで折り返し地点をとうに超えた100越えスレに、私も気づけば17回ほど変化していました。
"トレーナーが意識を失い目を覚ます方法がキスしかなくて、意を決してトレーナーにキスをするウマ娘のSS"というだけのお題で、なぜそうなったかの原因も、それに対する向き合い方も、そしてそれらの描写の仕方も、全く異なるものになりました。
短い中にしっかりと要素が詰め込まれたもの、読み終えた後の余韻が強くなる大ボリュームのもの、かわいらしく甘酸っぱいもの、美しく色気のあるもの、こちらに投稿していただいた全てのSSに異なる魅力があり、読んでいて非常に楽しかったです。
読みに来た方も何か感想を言いたいSSがあったら是非言っていただければと思いますし、万が一ファンアートなど描けちゃうタイプの方がいらっしゃいましたら投稿していただけるとついでに私のテンションも上がります。
本当にこちらのスレを立ててよかったと思います。改めて書いていただいた皆様誠にありがとうございました。
さて急になぜこのようにお礼を申し上げたかといいますと純粋に書いていただいた皆様へお礼を言いたかったのもあるのですが、この時間ぐらいにAGE&HOSYUKAしておけば引き続き素敵なSSを読ませていただけないかなぁ&変身させてもらえないかなぁという強欲な下心にございますグヘヘヘヘ - 115二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 23:15:16
- 116二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 23:20:06
- 1172223/03/23(木) 23:54:07
- 118二次元好きの匿名さん23/03/23(木) 23:55:33
もう一度仰ってくださいますか?
…トレーナーさんが倒れて…いえ、お聞きしたいのはその先です。
目を覚ます方法がキスしかないと。
その様なこと、本当に有り得るのですか?
にわかには信じがたい話です。
しかし…私の眼の前にトレーナーさんが横たわっているのは事実。
真意はどうあれ、このまま放っておく訳にもいかないでしょう。
ふむ。キスをした事実があれば宜しいのですね。
ならば…一瞬です。
しかし…それで充分。
私の走りが焼き付いている、貴方であれば。
私の玉条を守る、そう約束した…貴方であれば。
目覚めてください。
そして、全うしてください。
私のトレーナーと言う生き方を。
私の肖像画が…あの屋敷に並ぶまで。
(お嬢はトレーナーを心から信頼してるからこそ、すぐに終わらせると思う私…) - 119二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 00:07:57
(私の走りを目に焼き付けて欲しい、誰よりも速く走りたい、そんな激情家なお嬢が大好きだけどエミュが難しい私…)
- 120二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 00:14:51
- 121二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 00:54:25
「トレーナー…どうして目を覚ましてくれないの…」
そう言って俯くのはファインモーション。
トレーナーが突如倒れたきり目を覚まさないまま1日が終わろうとしていた。横たわるトレーナーのその姿はまるで魂が抜けた抜け殻の様な姿であった。
「このまま目を覚まさないのかな…私まだトレーナーにお礼も想いも伝えてないのに…」
ファインは目に涙を堪えながらトレーナーに語りかける…例えその行為が意味をなさなくともそうせざるを得なかった。
その時ファインの目にある文献が目に入った。自分がが図書館から持ってきた数々の本のうちの一つにそれは書き記されていた。
それはある呪いの類…その身に受ければ忽ち目を覚まさなくなり、やがてはその魂が口から抜けていってしまうという恐ろしいものであった。
非科学的ではあるが今のトレーナーの状態に驚く程合致していた。そしてトレーナーの口元から光が一瞬漏れ出ていた様な気がした。
「そん…な………どうしよう…どうしよう!このままじゃ…トレーナーが…トレーナーが!」
どうすればいいのかも分からずにまるで赤子の様に泣き続けるファイン。もう彼には会えないのか、このまま何も出来ずに見守るしか無いのか、そんな思いが彼女の心を締め付ける。その時であった。
「ううっ…ぅぅぅ………え?何?この光?」
ファインが見上げるとそこには小さい光が飛び回っていた。 - 122二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 00:54:54
「まるで妖精みたい…え…妖精?…まさか!?」
妖精という言葉である事を思い出したファインは最悪の展開を予想する。
彼女のアイルランドにはある妖精の言い伝えがある。
『バンシー』といわれる人の死が近いことを知らせる妖精の言い伝えが。
つまりトレーナーは——————
「嫌!いやぁ!取らないで!私からトレーナーを…大切な人を奪わないでぇ!嫌!嫌ぁぁぁっ!」
彼を抱きしめながら泣き叫ぶファイン。しかし彼女の予想は大きく外れる事になる。
「……え?私を助けてくれるの?トレーナーが助かる方法を知っているの!?」
そう言ってファインの心に語りかける光。
「呪いを解く方法は…キ、キス!?」
思わず素っ頓狂な声を出すファイン。
無理もない。まだまだその手の経験が浅い彼女が大好きな人に対して過程を飛ばしていきなりキスをする事になるのだから。
しかし他に代わりになる人は居ない。そして何よりトレーナーは誰にも譲らない。そう決心したファインは大きく深呼吸をしてトレーナーに向き合った。
「トレーナー…これが私の想い…受け取って…!」
その瞬間ファインとトレーナーの影は一つに重なった。今までの想いを込めて唇を落とすファイン…その口から魂が抜け出さない様に塞ぐ様に…魂が口から逃げ出してもしむかり受け止めて逃さない様に…
口を離して恐る恐るトレーナーを覗き込むファイン。するとどうだろうか、トレーナーが目を覚ましたのである。
「よかった…目を覚ましたんだね!トレーナー!」
妖精であろう光達にお礼を言おうとしたファインだったが気付けばその光はどこかへ消えてしまっていた。
「どうトレーナー?今の私って呪いを口付けで解いたお姫様だったでしょ?」
そう言ってトレーナーを揶揄うかと思ったら
「それにしても貴様〜寝過ぎにも程があるのぞ〜………それに私を泣かせた罪は…ぐすっ……すっごく重たいんだから…!」
「だからお願い…ずっと傍にいるって約束して!」
そんなトレーナーは迷わず約束すると彼女に答えた。
「ありがとうトレーナー……でもこの約束は凄く重い約束…普段の約束とは訳が違うの…」
「…だから…これからもずっと一緒にいるって誓いの証を…私の唇に…」 - 123二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 01:01:10
アイルランドには妖精とか絡めやすいネタ多いよね
今回はこのお題にピッタリそうな奴…ある意味知名度も大きい妖精を絡めたssを - 124二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 07:36:09
自分も後に続きたいな…
そしてスレ主の変身が気になる… - 125123/03/24(金) 14:34:07
あー、華麗です 華麗です 華麗すぎてカレイになると見せかけてカレハスズメダイになります
状況を説明されてもなお堂々とした振る舞いがとても勇ましく一見トレーナーに対して無頓着なように見えて強い思いがあり、態度の裏に全面の信頼があるからこそ口づけが一瞬なのもとても美しかったです
本当にありがとうございました、これで美術館に展示されていた私の中の一体が修繕されました
- 126123/03/24(金) 14:34:32
あー、ロイヤルです ロイヤルです ロイヤルすぎてロイヤルナイフフィッシュになります
ファイン殿下が純粋だからこそ伝承に則った文がとても似合っていて、長く語られた御伽噺のような美しさのあるお話でした 最後の約束の証明となる物の請求もまた、かわいらしく美しいものでした
本当にありがとうございました、これで正体が不明だった私の中の一体が捕獲されました
- 127123/03/24(金) 14:34:53
- 128長くなりましたごめんなさい123/03/24(金) 15:36:40
始まりは、トレーナーさんに聞きたいことがあって連絡したのに、返事が中々帰ってこなかったというそれだけだった。けれど、トレーナーさんはこういう時の返事は早いはずだ。だから、これはおかしいと思って色んなところを探した。
――最初に行くべき場所であるトレーナー室。そこに行かなかったのは、きっと、何かを見つけてしまうのが怖かったからだって、今なら分かる。
誰に聞いても見ていないと言われる。嫌な予感がした。最後に訪れたのは、見ないふりをしていたトレーナー室だった。
「キタサンブラックですっ!トレーナーさん居ますか!返事をしてください!」
ドンドンドン!と扉を叩く
いつものあたしなら、こんなに乱暴に扉を叩かない。でも、何かを認めるのが怖くて、必死に叩いて返事を待った。
………………返ってこない。
勝手に入るのは良くないこと。分かってる。でも入らないといけない。妙に重く感じる扉を何とか開く。
開いた扉から見えた光景。それは、うつ伏せに倒れているトレーナーさんの姿だった。
――そこからは必死だった。怖くても下手に動かしてはいけない。だからたづなさんに相談して……。救急車を呼んで……。
気づいたら病院にあたしは居た。ベッドで横たわるトレーナーさん。近くにいるはずなのに遠い。ううん、近づいていくのが怖かったんだ。
だから、目が覚めるのかをお医者さんにお話を聞いた。そして……。
「このままでは目を覚まさないかもしれません」
その言葉を聞いたとき、目の前が真っ暗になった。指先からスッと冷たくなり、全身から力が奪われて、気がついたら膝から崩れ落ちていた。
どうやら、正体不明の病にかかっていて、今のところ手の施しようがない。そんな風に言っていたような気がする。それから……いや、それ以上のことは思い出したくない。もう答えは出てる。
病室でトレーナーさんが意識を失って寝ている。これだけは紛れもない事実なのだから。 - 129223/03/24(金) 15:37:34
あたしは病室で1人、トレーナーさんのことを見つめていた。
あれから何日も経つけど、トレーナーさんは目を覚まさない。呼吸はしている。でもそれだけだ。お医者さん達が必死になって色々してくれるのに、何も変わってくれない。
手を握ってみる。冷たいし何より握り返してくれない。
顔を見る。まるで眠っているかのようで声をかけたら起きそう。あっ、目の下にクマがある。いつも休んでくださいって言ってるのに……。でも今は休めてるからいいのかな。なんてね……。
涙が出てきた。何でこんなことになっちゃったんだろう?トレーナーさんが何かしたのだろうか?何もしていないのに……。あたしを見つけてくれたのに……。まだ恩を返してないのに……。
「起きて下さいトレーナーさん……!トレーナーさん……!」
握り返してくれない手を、ずっとずっと握りしめることしか、今のあたしには出来なかった。
どのくらい握っていたのだろう。気づけば外は暗くなり始めていて、帰らないといけない時間になっていた。トレーナーさんの様子はあれから何も変わっていない。手も冷たいままだ。
「キスをすれば目を覚ます……。そんなお話もあったっけ?」
ボンヤリとトレーナーさんを見ながら、そんなことを思い浮かべる。変なことを考えてるのは分かってる。する方とされる方の性別が反対だし、何よりそんなのおとぎ話で現実じゃない。でも、この状況がそもそも現実味がない。それなら、そんなおとぎ話に委ねてみるのもいいと思った。それでトレーナーさんの目が覚めるなら、それ以上に良いことってないよね?
握っていた手を離す。
ゆっくりとトレーナーさんに近づく。
唇をジッと見つめる。
まるで時間が止まったかのように静かな部屋。その静けさを消したくて、あたしは動いた。
ゆっくりとトレーナーさんの唇へと近づく。起きて下さい……トレーナーさん……。
「……んっ……」
あたしはキスって、もっと素敵なものだと思ってた。心が満たされる大切なものだって、そう思ってた。でも、全然そんなことない。こんなに悲しくて痛くて苦しくて……。胸が引き裂かれるものだと思ってもみなかった。
トレーナーさんは目を開けない。いつの間にかトレーナーさんの顔に雨が降っていた。雨はポタポタと落ちていて、顔を濡らしている。その様子を、震える瞳から見ることしかできなかった。 - 130323/03/24(金) 15:38:07
どのくらい時間が経っただろう。数秒?数分?分からない。それでも変わることのない景色は、あたしの心を凍えさせるのには充分だった。
唇を離す。トレーナーさんは目を覚まさない。そんなことはわかってた。でも……それでも……もしかしたらって……そう思ってたから……。だからあたしは……それなのに……。
「起きて下さいトレーナーさん……起きてよぉ……」
トレーナーさんの胸に縋り付く。それでも声は聞こえない。どんなに声をかけても返ってこない。返ってこないんだ……。
「キタ……サン……?」
返ってこない……。そのはずなのに……。
「どう……したんだ……?」
聞き覚えがある声が返ってきたから……。
「あれ……こえ……でにくい……?」
その方向を向いたら……。
「それに……ここって……びょう……いん……?」
顔に……少しだけど……赤みが戻った……トレーナーさんが……トレーナーさんが……。
「おれ……なんで……ここに……?」
「トレーナー……さん……。トレーナーさぁん!!」
「よくわからないけど……しんぱいさせて……ごめんな……」
そこからのことはよく覚えていない。多分お医者さんが来て、トレーナーさんを調べて、きっと異常がなかったんだと思う。
だけど1つだけ覚えてることがある。弱々しいけれど
確かに暖かさがあるトレーナーさんの手が、あたしの頭を撫でてくれた。そのことだけは、絶対に忘れない。 - 131423/03/24(金) 15:38:42
色んな検査が終わって、いよいよ退院する日がやってきた。原因はやっぱり分からなくて、何がどうしてなったのかも不明のままだった。思うところは沢山あるけど、今はトレーナーさんが無事なことを喜ばなきゃね。
退院祝いのお花を持って、病室前に立つ。
コンコンコン……とゆっくりと扉を叩く。
「キタサンブラックです……。入ってもいいですか……?」
「ああ、大丈夫だよ。どうぞ」
静かな声で返事が返ってきた。ゆっくりと扉を開いてお邪魔する。
そこには、少しだけ痩せているけど元気そうなトレーナーさんが、ベッドで座っていた。
「退院おめでとうございます、トレーナーさん。これ退院祝いのお花です」
「なんか申し訳ないな……」
ゆっくりとお花を渡すと、それを大切に受け取ってくれた。
「気にしないで下さいっ。トレーナーさんが元気になったお祝いなんですから」
「本当にありがとうなキタサン」
安心した様子のトレーナーさんだけど、その姿に一番安心してるのはあたしも同じだ。本当に良かった……。そう思いながら近くのイスに座った。
「でも、不思議だよな……。何で倒れたかも分からないなんて……」
「そうですね……。またあんなことがって思うと……あたし……」
あの時のことを思い出して、全身が凍える感じがした。次に何かあったとき、あたしはどうなるのかな?それが怖くて仕方なかった。
「多分だけど大丈夫だと思うよ」
「どうしてそう思うんですか?」
何で起きることが出来たかも分からないのに、そんなことが言えるトレーナーさんが不思議でならない。少しムッとしながらトレーナーさんに聞き返す。 - 132523/03/24(金) 15:39:11
「起きる前にさ、唇に暖かい何かが当たるのを感じたんだ」
「えっ?」
唇?暖かい?えっと……確かあの時、あたし何してたっけ?色々ありすぎて記憶の片隅に置いていたことを何とか手繰り寄せようとする。
唇……唇……あっ……。
「それから意識がハッキリしてきたんだよなぁ……」
「へぇ~……そう……ですか……」
そんな風に話しているトレーナーさんを横目に、あたしは正直穏やかじゃない。とんでもないことを思い出してしまったからだ。
えっ?本当にキスで目が覚めたの?嘘?なんで?どうして?バクバクしている胸をなんとか抑える。トレーナーさんの顔が見れない。
思い出したら恥ずかしくなってきた。何であんなことしたんだろう?でも、そのおかげで起きたならいいんじゃない?良くないよ!キスだよキス!必死だったから出来たけどもう一回は無理だよ!
頭の中がグルグル回りだした。もう駄目だ、次になにか言われたら、あたしが不味い気がする。
「だから、もう一回それをすればいいんじゃないかな!」
何かがあたしの中でキレた気がする。
「トレーナーさんの……」
「どうしたんだキタサン?」
「トレーナーさんのバカっ!」
「えっ!?」
それから病室で少しの間、あたしはトレーナーさんと口を聞かないようにした。でも、トレーナーさんが必死に謝ってるから、仕方なくスイーツバイキングと演歌のコンサートに行くことで許した。
何で怒ってるのか分からないトレーナーさんのことを考えると、少しだけ申し訳ない気持ちがなくはない。けど、あたしにだって乙女心はあるんだもん。
暖かいって言ってくれた何かを、自分で分かってくれるなら許してあげます。でも、もし気づかれたらどうなるのかな?あたしはどうなりたいのかな?あたしの中の答えは見つからない。それでも……いつかは見つけたいな……。
隣で萎縮しているトレーナーさんを見ながら、気づかれないように少しだけ笑ってみた。 - 13312823/03/24(金) 15:41:40
素晴らしい作品の後に書くのは忍びないですが、素晴らしいお題だったので参加させて下さい。
もっと短くまとめたかったのに長くなってしまい本当に申し訳ないです……。 - 134123/03/24(金) 17:55:00
あー、わっしょいです わっしょいです わっしょいすぎてワシノハガイになります
キタちゃんがいるのに空間が静けさに包まれているというのが悲しく、彼女がきっと幸せなものと思っていたであろうキスの描写がとても悲痛で、見たかったものを見ているにもかかわらず胸が苦しくなりました
本当にありがとうございました、これで筒の中に入っていた私の中の一体も打ち上げられました
- 135二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 20:41:22
- 136震える123/03/24(金) 20:51:00
(わざわざ学名(和名?)検索してただけなんて言えない)
(なんなら調べてたサイトがメンテナンス入ってちょっと困ってるなんて言えないし変身にかかる時間が感想の1.5~3倍かかってることもあるなんて言えない)
- 137二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 21:46:16
- 138二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:16:38
あ……あんたは通りすがりの神絵師ッ!?実在したとは…
- 139二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:28:14
まさかトレーナーと担当ウマ娘、両方が同時にこの病にかかってしまったとはね……
唯一治しうる存在がお互いに欠けてしまっては──。
いや、方法は……ある。
子羊くんは俺たちと何度も言葉を交わし、集積された歴代のトレーナーたちの知識と経験を獲得した。
そしてあの子は……俺との縁を感じる。
ダーレーアラビアンからあの子へ。歴代のトレーナーから子羊くんへ。
紡いだ歴史が二筋の河となっているならば……上流で繋ぐことで、彼を目覚めさせられるかもしれない。
女神を名乗っておきながら藁にもすがるような手段で情けないけどね。 ……君を失う訳にはいかない。
はは、君の寝顔はどこかトレーナーに似ている。
……それとも、ただ記録と情報でしか知らない"彼女"のトレーナーに、俺が勝手に君の姿を当て嵌めているだけかな。
彼にとって俺は……ダーレーアラビアンは過去の存在だろうに。
いいんだ。俺は彼女ではなく……彼女を源流とする系譜の集積体に過ぎない。
だがそれ故に、ダーレーアラビアンのトレーナーでない彼を救いうるのだから。
「────トレーナー」
俺が"ダーレーアラビアン"でないことを祈って。 - 140二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:28:39
やあ子羊くん!お目覚めのところすまないが、君の愛バが大ピンチだ!
……慌てないで。必ず助かる。なんせ君が助けるんだからな!
状況と詳しいことは隣のベッドでゴドルフィンに聞いてくれ!
……俺は君を信じて外で待っているからな!
…………。
言うなバイアリー。俺は泣いてなんかないさ。
"ダーレーアラビアン"が寂しがっているだけさ── - 141二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:29:16
良いお題だったので参加するぜ
何故かしんみりしてしまったぞ! - 142123/03/24(金) 23:42:18
あーっ貴方は風のうわさに聞きし辻神絵師様 本当にありがとうございます ありがとうございます ありがたすぎてアリノオヤリになります
天使ンオーの恥じらう顔とちっちゃなお手々、悪魔ンオーのお目目ともちもちとしたほっぺ、そしてそれらをよそにトレーナーさんを覗き込むバクシンオーの美人な顔立ちと、画面全体にかわいい顔がいっぱいになっていて心が満たされました
本当にありがとうございました、これで今まで消えていった私達が良い転生を迎えました
- 143二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 23:51:22
あー、太陽です 太陽です 太陽すぎてタイガーグルーパーになります
太陽たる彼女を模した存在だからこそその選択を選ぶことができ、残された後静かに涙を流しているのが普段と対照的で、とても美しく感じました
本当にありがとうございました、これで宇宙空間を飛ぶ私の中の一体が炭化しました
- 144二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 06:42:59
ひょっとしてスレ主はデシたんのように尊死と転生を繰り返している……?
- 145二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 07:06:53
- 146二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 11:36:23
あー、漫才です 漫才です 漫才すぎてマントヒヒになります
どうして漫才を始めてしまったのですか(困惑) オグリんがキスの時に少し躊躇いがあるのを見て、入手が大変だったのかななどと思いをはせました
本当にありがとうございました、これで水槽の中の私の中の一体が調理されました
- 147二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 20:57:46
おばか…どうして私に相談しなかったのよ…
こんなにボロボロになるまで…それで倒れて目を覚まさないなんて…
今の私はへっぽこよ…あなたが擦り減っていく事に気付かずに一流を目指していた…
あなたを犠牲にして得る一流に価値なんて無いわ…
だから早く起きなさいよ…あなたが居なければ私は一流でもへっぽこでも無いただ何も無いウマ娘…あなたが居なければ私は一流にもへっぽこにもなれないのよ…
どうして目を開けないのよ…?まさかこのキングを勝手に置いて行くんじゃ無いわよね?
ひっぐ………ぐすっ……そんなの嫌よ!
まだ何も伝えられてないのに…そんな…こと…ぐすっ…
でも…あなたは目を覚まさない…これが私への報いなの…?
もし…二度と目を覚まさないなら…二度とこの想いを口で伝えられないなら…あなたが冷たくなるその時までずっとこの唇で伝え続けるわ……
んっ…その時が来るまで何度も何度も伝えるんだから…聞こえてないなんて許さないわよ…おばか…
……?今身体が動いて?……ト、トレーナー!?
も、もう!起きてるなら早く言いなさいよおばか!
へ?私がキスし続けていて喋れなかった?
おばか!おばか!おばかぁ!他に伝える方法はあったでしょこのへっぽ…
……いえ、今は私の方がへっぽこだわ…あなたの事に気づけなかった上にここまで追い詰めてしまったのだもの…こんな事で一流だなんて…んうっ!?
ち、ちょっと!?急に何するのよ!確かに私も同じ事をしたけれど…
…これでおあいこ?それに私の事を考えずに自分勝手で無理をして私を悲しませた自分の方がへっぽこ?
おばか…それじゃお互いへっぽこになるじゃない…
でもここからが本当の始まりなのかもしれないわね…
…もしこれからもこのキングのトレーナーで居てくれるなら…私は一流のウマ娘に…本当の一流に必ずなってみせるわ!
…私と一緒に一流を目指したい…あなたはそう言ってくれるのね…
ありがとう…あなたに会えて本当に良かった…
だからここからが私達のスタートライン!一流のウマ娘になるキングと一流のトレーナーになるあなた…二人に出来ない事なんて何も無いんだから!
……あなたにこのキングから約束があるの
今の私達は共にへっぽこ…だからさっきの互いのキスは"へっぽこのキス"よ…
私達は必ず一流になる…なってみせる…
だから初めての"一流のキス"は…貴方じゃ無いと許さないんだから… - 148123/03/26(日) 00:07:17
あー、一流です 一流です 一流すぎてイチリンバイモになります
一人だけでは一流になれず相手がいるからこそ支えあって一流になれるという二人のこの上ない愛と信頼関係が美しく、ずっと先の未来も一緒にいようというキングの願いもまた素敵でした
本当にありがとうございました、これで謀反を企てていた私の中の一体が捕縛されました
- 149二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 08:08:14
良いスレだ…
自分も書いて続くぞ… - 150二次元好きの匿名さん23/03/26(日) 13:49:48
よっと…それっ!
……この手品でも目を覚まさないか…
しかし不思議だね…目を開いているのに目覚めてないなんて…
今朝急にトレーナーさんが倒れて意識不明になったと聞いて来てみたら目を開けたまま意識がないって聞いて…最初は私にも出来ない手品かと思っちゃったよ…
目が空いているならと思って得意な手品を色々やってみたけど目を覚まさない…意識が無いから当然か。
それでも心に響けばとは思ったんだけどね…
でも…見ているのに反応が無いのは中々堪えるね…
それが君なら尚更つらい…!
本当にこのままなの?まるで魔法にかけられた様にそのままなの?
……魔法か。そういえば絵本の御伽話では魔法をかけられたお姫様が王子様のキスで目を覚ますって聞いたな…
もしも…もし私のキスで目を覚ましたら…
でも…もしキスをしても目を覚まさなかったら…
こわい…でも…それでも私は…!
トレーナーさん…目を…覚まして…んんっ…
………あ!トレーナーさん!目を覚ましたんだね!
私だよ!フジキセキだよ!分かる?
…良かった…急に倒れて目を開けたまま意識がないって聞いた時はどうなる事かと思ったよ…
ふふっ、これも私の"魔法"のお陰かな?
"魔法"が何なのかだって?…そうだね、じゃあ教えてあげる!
それよりもまず…こうやって抱きしめさせて…
トレーナーさんが…このまま目を覚まさなかったらと思うと私…とても怖かったん…だからっ…! - 151123/03/26(日) 17:47:00
あー、そういえば そういえば そういえば(略)相性が良すぎてソウシハギになります
目があいている状態で意識を失っている相手に手品を見せるという描写がとても素敵で、トレーナーさんが目覚めた後はいつものようなふるまいを見せようとするもやはり安堵で年相応の少女になってしまうのがとても愛らしく素敵でした
本当にありがとうございました、これで皆さんの右手の中に握られていたはずの私の中の一体が消失しました
- 152123/03/26(日) 22:37:38
(サンタさんを待つ時みたいなワクワクした気持ちで寝る前に保守をしていくスレ主)
- 153二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 00:19:25
うまいことまとまれば禁断のパマちん二度撃ちしたいところ……IP規制潜り抜ければあるいは……
- 154二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 01:16:31
とある病院の一室で横たわっている人物の顔を見て憂鬱げな表情をするのはシンボリクリスエス。
この病室に来る様になって1週間が経過した。
普段レースにストイックな彼女がここまで足を運ぶのは普段の彼女を知っているものからすれば驚くであろう。
それも当然、横たわったいる人物は彼女のトレーナーなのだから。
「まだ——目を覚まさないのか——トレーナー…」
彼女はトレーナーの献身によって見事日本のレース界にその強さをもって革命を起こすことを成し遂げた。そんな矢先であった…トレーナーが突如倒れたのは。
倒れた原因は不明、検査の結果身体にも脳にも異常は無かった。だがトレーナーはまだ目を覚まさない。
それはまるでゼンマイが切れた人形の様に———
「私は——トレーナーのお陰で使命を——果たす事ができた…」
「だが——ここで終わりでは無い——私は——使命を果たしたその先も——果てまで走るつもりだ…」
「だがトレーナーは——私が使命を果たしたら——そこで終わりなのか?——物語の人物の様に——使命を果たしたら——お別れなのか?——そのまま消えてしまうのか?」
淡々とだが声を震わせながらトレーナーに語りかけるクリスエス。物言わぬトレーナーの静寂は肯定かそれとも否定かそれすらも分からない。
「このままお別れ——それは駄目だ——そんなのは——嫌だ——嫌だ嫌だ嫌だ!」
「どうしてなんだ——どうして!——私のトレーナーなんだ!」
今まで溜め込んでいた感情が爆発してしまったクリスエス。しかしその感情に応える声は無い。その事がより彼女の感情の爆発をより強くさせる。
もはやかける言葉も出ず、トレーナーに縋る様に泣いていたクリスエスの所に1人の訪問者が現れる。
それはシンボリルドルフであった。 - 155二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 01:16:58
「沈痛慷慨…それにはまだ早いぞクリスエス」
「ルドルフ…——その意味は——一体…?」
顔を上げるクリスエス。その顔からは涙がとめどなく溢れていた。そんな彼女を見てルドルフは伝える。
「君のトレーナーが倒れた原因が判明してね。昔から学園に伝わる謎の病…現象とでもいうのかな、ウマ娘の願いを…夢を叶える…そうでなくても大事な3年間を支え続けたトレーナーがまるで魂が抜けた様に目を覚まさない…君のトレーナーは今その状態なんだ」
「嘘だ——そんな事——そんな…」
「そう答えを急ぐものじゃないさ、これには解決策が伝わっていてね」
「本当なのか?——ルドルフ」
そう答えるルドルフ。それを聞いたクリスエスは耳をピンと上げ、目を見開いた。
「奇々怪々な事には同じく奇々怪々な事が付き物だね、解決策というのは想いを込めた接吻…つまりはキスで目覚めるというものさ」
「kiss——それが解決法…」
「おっとただのキスだけじゃ駄目なんだ。その者への想いが宿ったキス出なければ目を覚まさないと言われているんだ。どうやらこの事をトレーナーとウマ娘との絆と信頼と…そして愛の試練として伝えられているんだ」
事実は小説よりも奇なり…まるで御伽話のような解決方法に一瞬硬直するクリスエス。そんな彼女を見てルドルフは微笑む。
「少しは気を取り直した様だね、だけど心配しなくてもいい、比翼連理な君達ならきっと乗り越えられる…まぁ私とトレーナー君も負けてはいないけどね」
「それに君がこれからも走ると言った時は嬉しかった… 意気軒昂とはこの事だね。だからまたレース場で君達と会える事を楽しみにしているよ」
そう言って病室を後にするルドルフ。残されたクリスエスは1人、トレーナーの顔を覗き込む。そして今までの思い出を振り返る… - 156二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 01:17:21
「そうだ——私はまだトレーナーと——共に居たい…」
「トレーナーと——共に——歩んで行きたい…!」
「だからトレーナー…——私の想いを——願いを——このkissに…」
目を瞑り唇を落とすクリスエス。その手をトレーナーの顔に添えながら、優しく抱き抱える様に…
「ん…クリスエス?ここは…?」
「…ッ!——トレーナーが——起きた——トレーナーが…——トレーナーが…!」
思わず抱きしめて再び感情を爆発させるクリスエス。
「ごめんね…心配かけて…もう大丈夫だから」
そんな彼女をトレーナーは優しく抱きしめて撫で続けるのであった。
あの日から数週間後…2人は温泉旅館に居た。復帰して報告をした際に理事長から2人の功績を称えられると同時に2人の心身的な負担の回復の為、そして時期的に暫くはレースも無いという事なのでウマ娘用のトレーニング施設付きの旅館での療養という名目で旅行に来ていたのだ。
「あの時はありがとなクリスエス…迷惑をかけて済まなかった…」
「迷惑ではない——私も——トレーナーへの想いを——改めて——認識出来た…」
夕食を頬張りながらあの時のことを振り返る2人。そんな中クリスエスはあの時ルドルフが言った『試練』というのも間違いでは無いと実感していた。
「ルドルフから顛末は聞いたよ…その…キス…ありがとな。自分は眠っていたけど…嬉しかった…」
「そうか…——私も嬉しかった…——だがこれで——目を覚まさせる任務は——完了…いや、まだだ」
「まだ…って、ちょっとクリスエス!?」
トレーナーはいきなりクリスエスに両手を恋人繋ぎの状態で押し倒され唇を落とされる。長く続いた唇が離れ、二人の間に愛情の架け橋が糸を引く。
「まだ——私の想いは——一度や二度のkissで——伝えきっていない…」
「だから二人きりの時に——トレーナーへの想いを——全て伝えたい…」
「…クリスエス…分かった。俺も同じ気持ちだ…それにそう言ってくれて嬉しい。だから俺も想いを…君以上に伝えるつもりだからな」
「ああ…——来てくれ…——トレーナーの——全てを——受け止める…」
これからの二人にとって、それはかけがいの無い温泉旅行になるだろうと互いに思った瞬間であった… - 157二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 01:18:01
- 158二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 06:39:50
無力な己を憎み、呪い続けた。読み暮らした本が、一つでも医学書であったなら。魔導書を読み解き、魔法の一つでも使えたなら。
秋古バ三冠、有マ記念レコードという結果も、歩き疲れ目を覚まさないトレーナーさんには、何の癒しにもなりはしない。
貴方がいないと、全て勝手に一人で盛り上がっただけに、戻って──
原因不明。
告げた白衣の天使が淡々と、静寂を食い散らかしている。泣き腫らし、涙と悲鳴は枯れ、血の味がして。唄を忘れた金糸雀の様に項垂れて。
海外へ翔び立つ日だった。二人で買った新しいノートは、病室の様に真っ白のままで。
消えて、しまいたかった。何処までも、黒く塗り潰す闇に──
「──ヤドリギ、と伝えよと。Guilty resolver──であるとも──……」
いつのまにか、クリスエスさんが側にいました。必死に調べてくれて、誰かが賢者の石となり導いてくれたのでしょう。
錬金術師は卑金属という病を取り去り貴金属としますが、今だけは、それを為すのが英雄であって欲しいです。
トレーナーさんに贈ったヤドリギのブローチ。表すは再生、その花言葉に込めた願いは困難に打ち克つの影に「キスして下さい」──
答えはひとつ。「……少しだけ、二人きりに、させてくれますか」
「──Sorry.気が、利かなかった」
無造作に棚へ入れられたヤドリギのブローチ。トレーナーさんの胸に置き、温もりの残る手を取ります。
私、手にすごい汗をかいていて恥ずかしいのも、恋人繋ぎしちゃってるのも、ばれていませんよね……?
導かれるように、静かに、目を閉じました。
はじめてを、ささげました。
始めてのキスの味はどこまでもビターなのに。
「何でだろう、悲しいのに、幸せです……」
「戦乙女のみが『境界』の先を逝け、アンビバレンスの果てを慄れぬ器に奇跡が宿る」
待ちきれず扉を開ける押しの強さが、心地よかったです。賢者の石を紐解いたのは、ギムレットさん、貴方だったんですね……
「ふふん、あったり前じゃない!……愛は最強の魔法……なんだから……!」
賢者の石を作ってくれたのは、大魔女のスイープさん……英雄には支える賢者がいっぱいで。そのことが嬉しくて。
愛の河をけたたましく迸る感情を抑え、トレーナーさんにひとつだけ、囁きました。
「これからもずっと、貴方と共に歩めることを願います」 - 159二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 11:59:52
流石は英雄…
- 160二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 12:02:18
どうなったかと思ったらまだ続いてて尊き作品もたくさん…
イラスト描く人もいたとは驚きでしゅ - 161123/03/27(月) 18:10:05
あー──Grateです ──Grateです Grateすぎて──Grammistes sexlineatusになりました──。
私達が観測できるたった3年というところに着目し、その先の未来を自分の力と奇跡をもってして掴む様子が美しく、最後に確かめ合ったかけがえのない絆がどうかこれからも続いてほしいと思いました
本当にありがとうございました──。これで──私達の中の一体がerase──されました。
- 162二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 18:11:46
頭の方でも書いたんだけどもう一本いくか
しかしこれ誰が書かれてるんだ…? - 163123/03/27(月) 18:16:39
- 164123/03/27(月) 19:32:20
あー、主人公です 主人公です 主人公過ぎてシュジョウツツジになります
文章が今まで読んだことのない表現に溢れていて、最初は深い絶望の中で白と黒に金の修飾がされていただけだった景色に、英雄を支える仲間たちが現れるにつれ少しづつ彩が戻っていくような展開がとても素敵でした
本当にありがとうございました、これて山に住む邪悪な私の中の一体が成敗されました
- 165123/03/27(月) 19:34:48
今までかいていただいたものですが
>>5~7:サクラバクシンオー(スレ主)
>>22、23:メジロアルダン >>30、31:アグネスタキオン
>>44~48:マンハッタンカフェ >>52~55:アドマイヤベガ
>>60、61:ダイワスカーレット、ウオッカ >>64~67:ライスシャワー
>>72~78:メジロパーマー >>82、83:テイエムオペラオー
>>94:エイシンフラッシュ >>101、102:セイウンスカイ
>>105~108:メジロマックイーン >>118:ダイイチルビー
>>121、122:ファインモーション >>128~132:キタサンブラック
>>139、140:"ダーレーアラビアン" >>145:オグリキャップ
>>154~156:シンボリクリスエス >>158:ゼンノロブロイ
>>137:サクラバクシンオー(イラスト)
ですって いや振り返るとほんと尋常じゃない数かいていただいていてびっくりびっくり ちょっぴり完走すら見えてきていて大変驚いています
- 166モブウマ娘は良いぞ23/03/27(月) 21:02:57
綺羅星の舞台で輝く一等星、私はいつもそれを見つめる五等星で比べれば埋もれる輝きでした。才能(かがやき)の無い星は誰にも見つけて貰えず、何と無く見上げた星空の脇役でしか無い。
────だから、私を見つけてくれて、綺羅星の舞台で輝ける様にしてくれたトレーナーさんは、私にとっての一番星です。太陽がなければ月は輝けないと言うなら、私を照らすトレーナーさんが居なければ私は輝けない。
────そのトレーナーさんが、目を覚さないかもしれない、だなんて。鮮やかな世界が全部黒に溶けて消えてしまうのと何が違うんでしょうか。
ただ、全てが黒に染まってはいませんでした。医師の方が言うには、「私がキスをする」事で目を覚ます……もっと色々と細かい事を言われたけれど要約すればそうなる、信じ難いけど信じるしか無い話。だから私は今、人形の様に病床で眠るトレーナーさんの隣に立っている。医師や看護師の方は気を利かせてか退室していて、二人きり。
「トレーナーさん……」
余りにも病室が静かで、トレーナーさんの寝顔がまるで亡骸に見えてゾッとする。ただ、もしも私がキスをしなければ何れ本当に亡骸になってしまう。
トレーナーさんの事は、嫌いじゃ無い。寧ろ好きで、好きで、仕方が無い。それでも……こんな形でキスをするのは、何と無く嫌だった。
だから、これは輝きの外側に埋もれるキス。本当は良く無いけど、病院の方と共に一時的な疲労で倒れたと言う事にして、キスで起きたと言う事実は誰も知らない事にする。
僅かにも動かないトレーナーさんの顔が目の前にある。この顔がまた動く様にと願って────卑しくトクントクンと高鳴る私の心臓から目を背けて、ほんの一瞬だけ、触れた。 - 167二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:39:45
「目を覚まさないなんて、嘘だもん!」真実の裏側にて。
うう……ターボだって分かるよ……ここはそういう所で……
古くひび割れてるのに、いる人通る人みんなオーラおかしい……たぶん、あいつのツテ。
でも、ターボ構わない!ズルでも、闇医者でも、何でもいい!だから……ターボのわがまま聞いて、テイオーを蘇らせたあのひとを……かえして……ください……おねがい……
きっと、あの娘が見つけてくれる!今のカノープスには超大型新人が入ったんだから!
戦場を選ばず、世界を股にかけ、夢の続き、全世界が追う、異次元を超えた極限の逃亡者……ターボの、最高の弟子!一緒にささっと解決して、今度こそスピカに宣戦布告だー!
……ねえ……ターボがテイオーみたいに強かったら、こんなことにならなかったのかな……?ターボが弱いから?答えてよ……悔しすぎるよ……!
「ししょー!七つの海まで探して見つけてきたぜ!」
見たことのないウマ娘だった。からんころんと、下駄の音がして。あれは、袴?
なんでそんなに、優しいの?どうしてターボに、力を貸してくれるの?
「たぁ坊はかわいいなぁ。その素直さは、充分な理由になる。おれもG1なんかひとっつもない、しがないウマ娘さ」
嘘。そのオーラは会長、いや、それ以上……イクノが教えてくれた陽炎みたいに儚くて、ナタの様に鋭い。数え切れないほど、出逢いと、さよならを、繰り返してきたんだ……
「ダメなら、絞り出してでも次を出す。おれはね、明日にくすくす笑われたくねぇんだ」最後の方法は口吸い……キス!?えぇ!?
……考えたことあるよ……?あいつ変に優しかった。それはおそらく昔、ターボくらいのウマ娘を……その娘への贖罪……?もう、いいんだ、いいんだよ……
「ほら行くよ、空気読む」「ししょー、信じてるからな!」──二人には、広すぎる空間。
「やらいでかああぁ……!」
はじめてなのに、何も嬉しくなくて、恋と言うには、愛と言うには切なくて……
「……おはよう、いや、朝にはまだ早かったですか?」
「ばか!ばかぁ!みなみざかぁ!あんぽんたーん!うわああぁん……!」
「これでネイチャさん達には、バレないで済むかなあ」
「そんな心配いい!今はただターボにくっついてれば、いい……!」
扉の後に、影がもう一つ。大きく頷いたように見えた──
「──しは燃え尽きてもいい、挑戦者に大欅の加護を」 - 168123/03/27(月) 23:59:57
あー、彼女もまた主人公です 主人公です 主人公すぎてシュムシュクワガタになります
最初に5等星という表現がされているのを筆頭に文章全体が少し薄暗い雰囲気に包まれていて、輝かしいスターではない彼女だからこそできる物語であり、どうか彼女という主人公が大切な人と一緒に歩けるようになってほしいと思いました。
本当にありがとうございました、これでスターを追いかけていた私の中の一体も彼女を知ることができました
- 169123/03/28(火) 00:35:01
あー、令和です 令和です 令和過ぎて世界になりました。
空間そのものが少し特殊な場所になっていて、その中でのトレーナーを呼び起こすためのやり取りが素敵でした 不勉強なもので最初は?と思い調べてみたのですが誰かわかってみればなるほど、この場所にふさわしい子でした
本当にありがとうございました、これでレース場を走る私の中の一体が一撃を食らいました
- 170二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 06:50:04
ある程度纏ったら投稿したいな…
- 171二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 07:36:21
わーっとるわーっとる、現ナマちらつかせとるんはルドルフで、寝とるのはトレーナーやなくオグリ、
で魚のキス抱えてて、ドッキリ大成功っちゅうことやろ?随分コッテコテやなー、素敵やなー、おどれらスケートにぶち込んだろか?あーっ?……は?
……ホンマなんか?人の心とか、ないんか……?
半分正解で、半分不正解──顔がみるみる青褪めていく。
寝てるのはオグリじゃない、魚なんか出て来ない、ドッキリなんて以ての外──これが不正解。
トレーナーが目覚めない。キスで目覚める。ルドルフは過剰に責任を感じ、費用を全額負担するという──これが正解。
考えうる限り、最悪のハーフアンドハーフ──その目で見るまで、信じたくなかった。
横たわる家族。茜さす夕焼けは、血の色より朱く──
嫌や、嫌や、嫌やあッ……!チビたちと遊ぶんに手加減せえへんかったから、神様もウチに手加減せえへんのか……?
思考に余裕がなくなっていく。視界が狭くなっていく。
なんや!神様やから偉いんか?ナメんなやッ!!バ鹿にすんのも大概にしいや!!
キスで目覚める?もし……もしやで?目ぇ覚めんかったら……待ってんのは全部虚無か……?
ウチは"勝ちまくれる"ウマ娘なんや!いっとう不甲斐なかったウチに、コイツは同情なんか安い真似せんかった!覚悟をくれたんや!
与えるだけで、奪おうとはひとっつもせんかった!なのにコイツから奪うんか!?負けをくれるんか!?
クールダウンまで、これ程時間がかかった事はない。ここまでのアウェイも、経験がない。
コイツはキスで目覚めるんや……あの時のパンケーキなんて目やない、ごっつ甘いで、なんせ……
身体が動かない。それは信じるとか信じないから、かけ離れていた。
ただこのままでは、家族という船が、黄泉に流れ着いてしまう──
「くそっ」
父ちゃんと約束をしたんや、日本一のウマ娘になるって……──
「ウチは」
コイツをやっぱり、たまらなく愛しているんや……──!
ありったけの想いを閉じ込めて、くちづけた。何の疑いもなく、何度も、何度も……
「夢じゃなくてよかった」
こないな時まで素直か!ムードっちゅうもんがあるやろが!ならこの紙にちゃちゃっとハンコ押さんかい!愛される覚悟を踏みしめえ!
ったく大した奴やで……──ダーリン - 172二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 15:37:47
満天の星空と夕日に照らされた様な金色に輝く草原──ああ、夢を見ているんだ。
「どうせなら、全部夢になってくれれば良いのに」夢の中で夢であって欲しいと願う現実
トレーナーが原因不明の昏睡状態に陥って、もう何日たったろう?
そうだ、病室を訪ねてそのまま眠ってしまったんだ、起きて看病しないと──眠り続けてる
トレーナーの何を?
「神様、お願いですどうかこのまま目が覚めたら全て悪い夢だったで終わらせて下さい」
「お願いします、只の、普通のウマ娘の私にはお祈りする位しか出来ません」
いつの間にか草原に膝をつき蹲りながら泣いていた。
どれ程そうしていたのか、不意に誰かの気配を感じる、暖かで穏やかな、良く知った気配を
「マチカネタンホイザ、顔を上げなさい」
え?フクちゃん先輩?どうしてここに・・・でも、何かが違う、目の前の『何か』が話し掛けてくる
「フクキタルの願掛けとマチカネタンホイザ、貴方の願いを聞き届けましょう」
願いを聞きに。この言葉に思わずその『何か』に縋りつく
「何にも無い、普通の私でも出来る事なら何でもします!」滂沱の涙が頬を伝う
「だから、お願いです、トレーナーを助けて下さい」
「大丈夫、必ず目覚めます、でもこれは貴方にしか出来ない方法です」
「トレーナーさんの目が覚めたら、一番に伝えたい気持ちを込めて口付けを交わしなさい」
一瞬思考が固まる、口付け・・・キスを?!
『何か』が言葉を続ける、「貴方の素直な気持ちを、初めての、特別な口付けで吹き込んであげなさい
そうすればきっと応えてくれますよ」
──さぁ、お往きなさい── - 173続き23/03/28(火) 15:38:40
そこで夢が途切れた、周りを見ればここは病室で、窓の外には夕日に照らされた茜色の雲が見える
どうやらここを訪れて然程時間は経って無い様だ、さっきのは一体、何だったのだろう?
逡巡しているとスマホが鳴動しフクキタルからのメッセージが表示される、『今日もこれから願掛けに行ってきます
トレーナーさんの看病頑張って!!』
願掛け・・・あっ!
さっきの夢を思い出す、あの『何か』は確かに「フクキタルの願掛けとマチカネタンホイザ、貴方の願いを
聞き届けましょう」そう言っていた。
なら、本当に・・・?
普通の私でも出来る、そう言ってくれた、なら、迷う事なんか無い
トレーナー、起きて下さい。私の大切な話を聞いて欲しいんです。 - 174123/03/28(火) 21:07:23
あー、婚活です 婚活です 婚活すぎてコンドルになります
少しずつ起きていることを理解して絶望に飲み込まれそうになり荒れに荒れて、その上で心を落ち着かせて愛し合うという一連の流れがとても素敵でした
本当にありがとうございました、これでお二人が提出された書類を私の中の一体が受理しました
- 175二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 21:13:16
- 176二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 21:58:22
「トレーナー…寝過ぎだっての…それじゃアタシが起きられない事言えないじゃん」
思えばアタシがレースもモデルも両立出来るようにっていつもいつもトレーナーは支えてきてくれた…
でも周りの光を浴びて輝くのはアタシだけ…アンタはいつも陰になっていた…それにアタシの事ばっか優先して…結局アンタも自身の事も両立できてないじゃん…
ねぇ、好きなだけお節介かけておいて、アタシにはお礼も言わせないつもり?
「…そんなの嫌、嫌に決まってるじゃん…!」
「まだ…アンタには何も伝えてないんだよ!」
でも今アタシはずるい事をしようとしてる。言葉じゃ無理だからって、アンタの唇に伝えようとしてる…
でももう…止められない…んっ…
「———ここは…アタシがよく歩くランウェイ?どうしてここに?……あれはトレーナー?なんで向こうに歩いて行くの?そっちは暗闇……ッ!」
全て分かった訳じゃ無い、でもアタシは走り出していた。追いついたトレーナーの手を掴む。その手は冷たく反応も返事も無い…その事がアタシの心を締め付ける…
でも考えている場合じゃない!アタシはその手を離さずにランウェイの上を駆け戻る。戻れば戻るほど握っている手に熱が戻ってくる。その事がアタシに勇気と力をくれる。
「こっちが正解かは分からない…でも!アンタが進むのは"そっち"じゃない!」
アタシは光を目指し…遂にその光の中へ———
目覚めると元の部屋に居た。当然トレーナーと唇を重ねたまま。
思わず顔を離すと彼の瞼が開く…それと同時にアタシの目からも涙が流れる。
「…ッ…寝過ぎなんだよぉ…早く起きろよぉ…馬鹿ぁ…!」
今のアタシにはこれが精一杯。でもそれを受け止める様に暖かい手が頭を撫でる。その温もりがアタシにまた勇気をくれた。
「もう、アタシだけじゃない!アンタも一緒にアタシの隣で輝くんだから!アタシはアンタのことが…好きだから!だから絶対に離すもんか!」
アタシ達はこれから歩んでいくんだ…二人だけのランウェイを…アンタと隣でいつまでも… - 177123/03/28(火) 23:22:42
あー、美しいべ 美しいべ 美しすぎてシチーガールになります
あともう少しで手遅れになるという状況で、これ以上は自分すら危険に巻き込まれるかもしれなかったというのに、大切な人を取り戻さんと危険にすら挑むシチーさんは美しいべ……
本当にありがとうございました、これで道を作る仕事をしている私の中の一体がチャペルを用意しました
- 178二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 01:19:57
ババヲナラスクルマでダート1600
- 1791/323/03/29(水) 02:46:42
[静まり切った部屋。呼吸の音は二つ、けれど言葉は一つもなく]
[寝台の傍に立ち尽くす人影が一つと、寝台に横たえられた人影が一つ]
[スーパークリークと、その担当トレーナーである]
トレーナーさん。
落ち込んでいたあなたを元気づけたくて、一生懸命走りました。
お弁当を作って、一緒に食べたりもしました。
立派なトレーナーになれるように、と、大レースも臆せず走りました。
とっても凄いトレーナーさんなんですよー、と、皆さんの前で抱っこしてあげたりもしました。
膝枕だってしましたし、幼い子供にするように沢山甘やかしたりもしました。
私があなたを引っ張ってあげようとした頃もありました。
二人で支え合おうと約束して、今は二人並んで、一緒に沢山の日々を過ごしましたね。
[スーパークリークは、目を伏せ、逡巡する]
[彼女のトレーナーが目を覚ますには、口づけが必要なのだという]
[口づけとは、単なる接触以上の意味を持つ。それを知っているからこその、逡巡だった]
トレーナーさん。
私とあなたの関係は、一体どんなものなのでしょうか。
トレーナーと担当ウマ娘? ……それだけでしょうか。
恋人? 家族? ……いいえ、そんな言葉で表せるものなのでしょうか。
……どんな関係であったとしても。
これからあなたへするコトは、これまであなたにしてあげていないコト。
二人の関係を、否応なく進めてしまうコト。 - 1802/323/03/29(水) 02:47:11
[スーパークリークは、顔を上げる]
[そこには葛藤もなく、ただ決意だけがあった]
けれど、あなたの──トレーナーさんのためなら。
私は、大丈夫。
[スーパークリークは、一歩、一歩、ゆっくりと歩みを進める]
[その先に待つのは、苦楽を共にした彼女のトレーナー]
[名前のつけられない関係の、けれど確かに結ばれた、大切なひと]
そうですね。眠るあなたに、こっそりするなら──
多分、半歩ぶん、くらいでしょうか。
[影が、重なった] - 1813/323/03/29(水) 02:47:37
「トレーナーさ~ん♪ お体の調子はどうですか~?」
『あ、クリーク。うん、何ともないよ』
その後、トレーナーさんは何事も無かったかのように目覚めました。
ケガもせず、後遺症もなく。本当に、何もなかったみたいに。
「それはよかったです~! トレーナーさんが倒れたって聞いて、私、と~っても心配で……」
『ははは、ごめんねクリーク。でもほら、今はすっかり元気だし』
「無事に目を覚ませたから良かったですけど~……もう少し、お体に気を付けてくださいね?」
『うん、勿論。眠ってる間、お世話してくれたって聞いたし……もう、こんなことが無いように気を付けるよ』
トレーナーさん。あなたはきっと、知らないでしょう。
二人並んでいた関係は、こっそり、半歩ぶんだけズレてしまいました。
トレーナーさん。私は知っています。
あなたはきっと、いつか、この半歩ぶんを詰めてくれるってことを。
「……トレーナーさん」
『ん、何? クリーク』
──半歩だけ先で、楽しみに待っていますね。
あ な た
私の大切な、トレーナーさん。 - 182二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 02:50:44
あくまで掲示板であってSS投稿サイトではないので、ルビ振り機能はない……
わかっていても、やっぱり欲しいと思ってしまうこともありますよね!
ということでお目汚しを失礼いたしました - 183二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 03:30:58
「我、平民の虚影を聞く──真逆、か」
絶対王者であるシンボリルドルフに対し、忌憚のない意見を送る者は極僅か。
畏敬を唾棄した。七冠を呪った。誰もが皇帝の顔色を伺い、美辞麗句許り投げかける。部下は数え切れぬ程いれど、仲間は……というやつだ。
それは医者であっても、例外はない。言葉を濁す、逃げの姿勢──飽きる程見てきた、付和雷同の構え。
なれば倒れた君の様態は、現代医療が匙を投げる領域に──青息吐息、気息奄奄、頽堕委靡……浮かぶネガティブな四字熟語を、必死で打ち消す。
それでも業務はやってきて、起居動静で熟せてしまう。この勤勉さが、ルドルフの自嘲を更に加速させてゆく。
「感情が極限を超えると、涙すら出ないのだな」
誰もいない生徒会室が、こんなにも苦しいものだとは……
気付けば縋るように、"娘"の復活劇をなぞっていた。
『これが諦めないって事だ──!トウカイテイオー──!』不屈の上映を"許可"したのは、他ならぬ私。
テイオーは何度も挫け、そこから立ち上がり、絶対となった。
……私の初めての挫折を、いや、"明日"を許可して欲しい。私と同じ視座に立ち志を共にする君を、喪いたくない。
理解者への渇望、解法は九分九厘、聳立つ邪悪。己の掲げる公明正大から、外れようとしている。
構わなかった。君のいない生など、無間地獄──総て私から何も彼も、奪って構わないから……!
「一時間。それだけです」
三顧之礼は叶った。禁書焚書が揃う、万魔殿たる"闇"──導くゼンノロブロイの眼光に、烏獲之力。
例えるなら、"鬼"が宿ったライスシャワーか。もう引き返せないと結論し、得た結果──最愛之徒による接吻。病室へ、走った、疾った──!
このキスのねらいは、君を目覚めさせること、その一点にはない。必要とあらずとも、何度でも繰り返す。君の眼に大きな瞬きがあらわれるまで、やめない。
頼む、君にとっての私が、最愛の徒であってくれ……!『ルナ』はもう、あの時から、ずっと、ずっと──!
目覚めた君を見て──感情が、決壊した。
この一連は、"通常の範疇"で処理されるという。私を畏れる王門伶人に、助けられてしまった。何という皮肉──これからは、十字架を背負って……どうした、ロブロイ?
「か、勘違いしていたら、ごめんなさい!あそこは、児童書コーナーで……ルドルフさんは、何も悪いことしてません!」
南無三宝ッ!? - 184123/03/29(水) 11:41:31
(ゆっくり読みたいので保守の構え)
- 185二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 18:52:12
「……ごめん、アイネス。あたし、そろそろ帰らないと」
「うん、付き合ってくれてありがとね。ライアンちゃん」
そう言ってから、ライアンちゃんは出て行った。トレーナー室にはあたしと、横になったトレーナーだけ。
もう、倒れてからどのくらい経ってるんだろう。
「……トレーナー」
小さく呟いてみる。もちろん、トレーナーからの返事はなかった。
でもこうやって呼びかけないと、あたしのほうがどうにかなっちゃいそうだった。
不安で、心細くて─
「あたしには無理するなとか、体調に気をつけろとか、いろいろ言うのにさ」
なんで倒れちゃったのかはわからないけど、また無理しちゃったのかな。
また呟いて、今度は頭を撫でてみる。やっぱり起きてくれない。
……どうしたら目を覚ましてくれるのかな。たづなさんに聞いてたけど、ほんとなのかな。
こんな形で、したくないんだけどな。
「本当に、あたしがいないとダメなんだから」
トレーナーの前髪を避けるようにして、あたしも前髪を手でかき上げる。
本当はあたしもこんな形でしたくないし、キミも嫌なのかも。
「でも──あたしも、キミがいないとダメなの」
顔を落として、ゆっくりと唇が重なる。
誰にも聞こえてないのに、誰かに呼びかけるように言い訳をして。 - 186二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 20:38:32
アタシはね、自由に何もかも縛られずに走るのが大好きなの。だってそれならありのままの風を感じられるから!
でも今はそれができない…だってトレーナー、キミが目を覚まさないから。
キミが倒れた後に気付いたんだ、キミがアタシに夢を見てくれた様にアタシもキミに夢を見ていたって事を。
一緒にお出かけして、一緒に雨の中を無我夢中で走って、一緒に叱られて…キミに出会う前も楽しかったけど…キミと出会ってからは一人よりキミと一緒に色んな事してた方が何より楽しかったなぁ。
何よりキミが傍にいてくれたから、分かってくれる人がいたから心の底から楽しめたんだよ?
だから起きてトレーナー。
キミが居ないとどんなに楽しい事をしても、底が無いバケツの様に楽しいって気持ちが全部抜けてっちゃうんだよ?
自由気ままになってもどうすれば良いかも分からなくなってるんだよ?
だからお願い…起きて…ッ!
まだアタシはキミに夢を見せ切っていない!アタシもキミから夢を全部見せて貰えてない!なのにキミは勝手に夢から覚めてアタシの届かない所で自由になってしまうの?
答えてよ…ねぇ!答えてよッ!
…なんでこたえてくれないの…なんでよぉ…とれーなーのいじわる… - 187二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 20:39:22
……え?お医者さん?トレーナーが助かる!?本当なの!?
………キスで目を覚ます病気なんて自由奔放な病気もあるんだね…ま、アタシが言えたことじゃないけど。
いざキスするとなると恥ずかしいね…
でもトレーナーが目を覚ましてくれるなら…もう一度夢を見てくれるなら…そしてアタシに夢を見せてくれるなら…
深呼吸してアタシは唇を軽くトレーナーに落とした。
軽く一瞬で、それでもキスだと分かるように。
本当は軽く一瞬のキスなんてしたくない。でもファーストキスはキミの瞳を見つめながらしたい…だから一瞬。でも目を開かなかったら……あっ…
おはよトレーナー。アハハ、キミったら2〜3日も寝てるんだから…本当に…心配したんだからッ…!
もうアタシから離れないで…傍にいて…
……ずっとアタシの傍にいる?……ありがとう。
……実はキミが眠っている間に分かったんだ。キミがアタシに夢を見てくれる様にアタシもキミに夢を見てるって事。
夢?それはね…キミとアタシがずっと傍にいて、一緒に色んなことを楽しいって過ごしていくこと。
でもね…これは夢で終わらせたく無い…現実にしたい…
……ッ!現実にしようだなんて…キミからそう言ってくれるなんて嬉しい…
トレーナー、実はねトレーナーの病ってキスでしか治らなかったんだ…だからアタシが軽くキスをしたってワケ。
でもね…それをファーストキスなんかにしたくなんかない…だからホントのファーストキスを…して?
…アタシ達たけだろうな…ファーストキスで互いを求めて貪る様な深く熱いキスをするのは…
縛られる事が嫌いなアタシだけど…キミとずっと傍に居たいから…
お願い…その唇でアタシを繋ぎ止めて…キミのその想いという名の鎖でアタシの心をキミに縛り付けて…アタシも離れない様に唇と想いでキミを縛り付けるから… - 188123/03/29(水) 20:46:12
あー、今からです 今からです 今からウチは赤ちゃんにされます
キスをする前に今までの思い出と自分達の関係をゆっくりと振り返る様子が優しくも美しく、相手の知らないうちに自分だけ関係を進めたことを敢えて知らせず歩幅で表現するのもまた素敵でした
本当にありがとうございました、これで赤ちゃんになった私の中の一体が成人できました
- 189123/03/29(水) 20:46:25
あー、皇帝です 皇帝です 皇帝過ぎて皇帝ペンギンになります
ルドルフの普段の言葉遣いのようなどこか固く見える文章の中に、年相応の少女としての不安が見えるたのがたいへん愛おしく、何を参考にしたのか最後に見えてほほえましくもある素敵な文章でした
本当にありがとうございました、これで弱肉強食の社会で生きる私の中の一体が焼肉定食になりました
- 190123/03/29(水) 21:12:51
はー、なの♡です なの♡です なの♡すぎて菜の花になります
アイネスフウジンの柔らかい文体から始まる柔らかさとは対照的にどことない薄暗さに包まれていて、キスをすると決めてからようやく小さな明かりが灯るような描写が素敵でした
本当にありがとうございました、これで野原に咲き乱れる私の中の一体が種を大地に落としました
- 191123/03/29(水) 21:26:20
あー、風が呼んでいます 風が呼んでいます 風に呼ばれすぎてカーテンになりました
他の誰よりも、他の何よりも自由を愛していたはずの彼女が、ただ一人が目を覚まさなくなるだけで取り乱しているのが愛おしく、一度初めてを踏まえたからこそ二回目の初めてで自由を捨てることを選び深いものにしたのがとても美しかったです
本当にありがとうございました、これで窓で揺らめいていた私の中の一体がふわりと舞い上がりました
- 192123/03/29(水) 21:36:44
- 193二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 21:48:35
ありがとうスレ主…ありがとう…
- 194二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 23:45:51
こっちは埋めた方が良いのかね
- 195123/03/29(水) 23:56:20
ぶっちゃけ次スレいるぐらい伸びたことないのでわかってんないんですが、やっぱりこういうときって埋めたほうがいいんですかね
埋めついでにスレ建て前にルーター再起動するつもりだったけどど忘れしてて結構後悔してることもこっそりここに書き込んでおきますが - 196二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 23:57:11
正直このやり取りで埋まりそうだしもう埋めちゃって良いかと
- 197123/03/30(木) 00:04:57
そしたら埋めちゃいましょうか
余談なんですがネタ被りで書いてたの没にしたわ……とかなるのが怖くて書いてなかったんですが、次スレでは何度でも見せてって言ったので私もまたなにか書きたいですね - 198二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 00:06:32
乙
埋めようか - 199二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 00:07:25
完走おつ
- 200二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 00:07:35
うめ