小学生男子「こいつウオッカ好きとか変態だぜー！！」

1二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:37:24

そう友人に言われてから、一体どれだけの時間が経っただろうか───

あの時自分は「ちげーし！」「かっけーから好きなんだし！！」と頭ごなしに否定したが、ハッキリ言って図星だった。
ある日勝負服で走るウオッカを目にして以来、私は色んな意味で彼女に興奮していた。
色んな意味で。

そんな想いは日に日に募り───

彼女への下心を理由に私は─────

私は──────

いつしかトレーナーになっていた

2二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:38:13

単に未来有望な若者なだけじゃないか

3二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:38:32

「さて…いよいよ私達のトゥインクルシリーズが始まりますね！
　改めまして、私は──」

彼女は私が専属で付いている担当だ。
デビュー前から既に一部から期待されている期待の星で、どうしてこんな変態トレーナーなんかが担当できたのか正直言って謎な位優秀な子だ。
おまけに美しい外見を持ちアイドルとしての側面も申し分無い。
たった一つ問題点があるとしたら彼女は───

「いつか憧れのウオッカ先輩の様な、大記録を打ち立ててみせます！」

ウオッカに憧れているのである。

4二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:38:47

いいだろう続けたまえ

5二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:39:41

もしや彼女の名前…

6二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:40:07

赤そう
欲深そう

7二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:40:12

赤欲ちゃん！？

8二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:40:35

もしや貴様ディザトレか

>>12

9二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:41:10

しまった！レッドディザイアだ！

10二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:42:19

まめちゃんでは？

11二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:44:33

いよいよ彼女のメイクデビューの日が近付いてきた。
まあメイクデビュー位軽く勝てるだろう、と世間も我々も既に肩の力を抜いていた時、ふと大切なことを思い出した。

「勝負服、どんなデザインにしようかな…」

そう、勝負服の発注をまだしていなかったのである。

「やっぱり憧れの先輩リスペクト…という事でウオッカ先輩っぽい革ジャンスタイルの勝負服で…」

「ウオッカっぽい勝負服！！！！！！！！！！！！！！！？？？？？？？」

まずい、それは本当にまずい。
色んな意味で良くない。色んな意味で。
流石に担当のそんな姿を3年以上見続ける勇気はない。断じてない。

「えっ…ダメですか…？
　あー、なら思い切って奇抜なのにしてみます？野菜モチーフとか？」

正直その方が自分目線ではマシである。
いや全く良くないが。

「あっそうだ！例えば軍服っぽいデザインなんかどうです？」

そんなこんなで担当の勝負服のデザイン決めでその日一日は盛り上がったのだった。
ちなみにメイクデビューは負けた。

>>14

12二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:44:34

>>8

もしかしたら深い空かもしれんぞ

13二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:45:10

絶景って友人がいそう

14二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:48:20

>>11

野菜モチーフが出てくるということは担当はポタジェか？

ポタジェとデザイアの間に関係性があるのか知らないけど。

15二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:50:07

いきなり出鼻は挫かれたが、その後の彼女は凄かった。
無事二度目にして未勝利戦は勝ち、更にシンザン記念も勝ち抜いた。
そして遂に桜花賞すらももぎ取って魅せたのである！！

いや本当に凄いな…？
どうしてこんな変態トレーナーなんかが担当出来てしまったのか…

しかし彼女は迷っていた。
なまじっか桜花賞を勝ってしまったばかりに──

「私、オークスとダービーどっちに出れば………」

16二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 22:56:45

彼女としては、やはりウオッカを目標にするのであればダービーに行くべきだろう。
しかし世間はオークスに出てトリプルティアラを手にする事を彼女に期待している。
それだけじゃない、彼女にはティアラ路線でこれからもぶつかるだろうライバル達もいた。
ライバル達もまたティアラの舞台で彼女と相見える事を期待してるのである。

正直、その答えを自分が出すことは出来なかった。
こんな形でトレーナーとしての未熟さが出てしまうなんて…
やっぱり自分には重すぎる役目だったのだろうか。

17二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 23:03:58

いよいよ登録期限も差し迫った頃、彼女は物凄く覚悟を決めたような顔つきでトレーナー室に現れた。

「私、オークスに出ます！」

正直言って意外な解答だった、
なんだかんだ彼女は夢を追う為にダービーを選ぶ気がしていたからだ。

「実は…昨日会いに行ったんです」

「誰に…？」

「ウオッカ先輩に」

「ウオッカに！！！！！！！！！！！！！！！？？？？？？？」

まて、落ち着け、ここは興奮する所じゃない。落ち着け。

というかそれなら尚の事解らない。
張本人の話したのならダービーに行くと結論を出しそうな物だが…

18二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 23:05:36

新馬戦→未勝利戦(1着)→シンザン記念(1着)→桜花賞(1着)→オークス
もしやきゅうり……？

>>19

19二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 23:06:27

>>18

化物

20二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 23:11:43

現役時代からガキが大人になる年数経ってるってことは今ウオッカ30代かな！！？？？

>>49

21二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 23:16:27

「先輩は色んな事を教えてくれました
　並走にまで付き合って頂いて…」

「並走…？そんな事までしてくれたのか？」

「ええ、昔着てた勝負服引っ張り出してまで一緒に走ってく…」

「勝負服服を！！！！！！！！！！！！！！？？？？？？？？？引っ張り出して！！！！！！！！！！！！！！！？？？？？？？？？？成長した今！！！！！！！！！！！！！！！！！？？？？？？？？？？？」

やめろ、落ち着け、落ち着け自分。
今は本当にやめろ。本当に落ち着け。

「で、最後に一言だけこう言われたんです
　『“自分”の道を行け』って」

けどだったら──

「私思うんです、自分って、今の自分だけじゃなくて
　色んな物とか、経験とか、支えてくれる人とかの積み重ねで成り立ってるんだって」

その支えてくれる人が本来人前に出しちゃいけない変態なんだが良いのだろうか…？

「何より私気付いたんです
　私の望みはあの人に“なる事”じゃなくて“越える事”なんだって」

そうか、彼女は後を追うことでは無く、己の道を進み、己が為せる事に全力で向き合った上でウオッカを越えたいと、そう望んだのだろう。多分。

22二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 23:22:54

そこからの彼女は凄かった。
府中に建っているウオッカ像に興奮している自分とは裏腹にオークスを勝ち上がり───
まるでそれすらも通過点にするかの如く秋華賞を勝ちトリプルティアラを手にし───
最早奇跡すら置き去りにする様な強さで府中に建っているウオッカ像に興奮している自分とは裏腹にジャパンカップさえ制し───
なんと海外G1さえも───

っていやいや本当に凄すぎないか！？
季節は春。
シニア期一年目ながら彼女はもう既にG1を5つも制していた。
もしかしたら彼女は本当に……

というか、なんでこんな優秀な子を自分が担当できたんだこれ？

23二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 23:34:31

彼女は迷っていた。
次に出るべきは安田記念か宝塚記念かを──
これまでの走りから見て恐らく彼女は奇しくもウオッカと同じ府中を得意としている。
であれば安田記念に出て、その流れで秋には天皇賞も…
しかし大記録を打ち立てると言うのであればグランプリも見逃せない。
勿論両方に出るという選択肢もあったが、流石にこのご時世にそこまでの負担はかけられない。

どうすれば良いか迷っていた時、頭に過ぎったのはやはりウオッカの存在だった。
今回は別に下卑た感じではなく真面目に頭に過ぎった。断じてそういう意図はない。断じて。
ウオッカは彼女に一度素晴しい助言を与え、見事導いてみせた。
であれば────

「ウオッカらしい事を言えば、彼女を導けるのか……？」

24二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 23:40:04

まあそんな事考えた所でウオッカの完全な真似事を自分が出来る訳では無い。
あくまでフィーリング。自分を鼓舞する意図も込めて、ウオッカであればこの時どんな判断をするだろう？といった事を思い浮かべながら彼女と相談した。

そしたら彼女はとても満足してくれた。
自分もとても満足だった。
ようやく彼女にトレーナーらしい事をしてあげられたような気がした。
…妙な違和感から目を逸らしながら───

25二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 23:50:48

そういう訳で彼女と私が出した結論は安田記念の方だった。
残念ながら結果は3着だったが、次なる天皇賞（秋）は見事勝ち取り、いよいよウオッカと並び立つ事も現実味を帯びてきた。

そんなこんなで着実に成果を積み重ねて来たある日、彼女はこんな提案をして来た。

「私、府中G1全制覇に挑んでみたいです！」

府中G1全制覇、それはウオッカがかつて成し遂げた大きな偉業の一つだった。
残りはヴィクトリアマイルと前回逃してしまった安田記念。
もしそれを達成すればウオッカすら越えられなかった皇帝ルドルフの壁すら乗り越えた事にもなる。

勿論私は彼女の言う通り今後のスケジュールを整え、“こんな時ウオッカならなんて言うかな？”なんて思いながら彼女を鼓舞した。
無意識の内に、また我々はウオッカに依存してしまっているような気がした。

26二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 23:52:55

アーモンドアイ？

27二次元好きの匿名さん23/03/24(金) 23:58:57

アー⤴︎モーンドアッ！イーーーー！

28二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 00:00:30

ヴィクトリアマイルは快勝だった。
強敵達を相手に見事圧勝して魅せた。
そしてついにウオッカと並び、ルドルフの壁の前に辿り着いた─────

だが安田記念はそう上手く行かなかった。
結果は2着、昨年よりは順位は上がった物の勝利には手は届かず─────

それでも彼女は諦めていない。
勿論自分も諦めていない。
今年駄目ならまた来年挑めば良いさ、3着、2着と来たんだ、来年は絶対に勝てる。

そう思っていたある日、体に、ほんの少しだけ、妙な違和感があると、彼女は言い出して来た。
別に怪我がある訳では無い、だが念の為に医者に連れて行く事に。
しかしそこで彼女は衝撃的な一言を告げられてしまった。

「本格化が終わり始めています」

29二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 00:05:27

詳しく聞くに、恐らく彼女の本格化の終わりは今年一杯。
年末までは持つが、そこで終わりになる可能性は高い。
それにそれでレースの道が断たれる訳では無い。
本格化が終わってもドリームトロフィーリーグに進めばそこで活躍する先輩は沢山いる。

だがそうなればもうこちらには戻ってこれない。
つまり、安田記念の勝利は────

彼女は十分過ぎる位活躍した。
トリプルティアラに加えてG17勝という最高レベルの域に達していた。
既に彼女に憧れレースの道を目指す子達も山程いた。
言うまでもなく、彼女は歴史に残る伝説の存在になっていた。

それでも、彼女は辛そうだった。

30二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 00:18:43

「まだだ…」

彼女を見つめる内、不意に声が出た。

「まだ“君”の道は終わっていない！！！」

それは誰でもない、自分自身の言葉だった。
確かに一つの夢は断たれたかも知れない。
でもまだ全てが終わった訳ではない。
彼女にしか歩めない道は、まだ残されているんだ。

自分がその時何を言ったかは覚えていない。
けど必死にこの想いを伝え続けていた。
気付けば彼女は涙しながらも、ほんの少しだけ嬉しそうに微笑んでいた。

ようやく、ようやく、
本当に彼女のトレーナーになれた気がした。

31二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 00:21:53

どこかで見たウオッカに憧れて入学してくるアーモンド概念を思い出したぜ！

>>37

32二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 00:23:58

そして彼女は──再び府中を駆け抜けた
天皇賞（秋）を再び勝った。これで2連勝だ。
そして何より、ルドルフの壁を遂に越えた。

しかし彼女は止まらなかった。
トゥインクルシリーズ引退レースとしてジャパンカップにも再度挑み、そして有終の美を飾ってみせた。

“G19勝”────

彼女だけの大記録を成し遂げ、彼女の物語は最高の伝説となったのだ。

33二次元好きの匿名さん23/03/25(土) 00:30:29

それから、一体どれだけの時間が経っただろうか────────

今日も彼女はドリームトロフィーリーグで健気に走っていた。
彼女を慕う後輩も沢山現れた。

そんなある日、自分達の所にちょっとしたプレゼントが届いた。
それは府中のウオッカ像ならぬ、彼女を模った像であった。
大記録を達した記念として、思い入れのある場所に飾って欲しいと。

少し照れ臭そうにしながらも、彼女は喜んで後輩達に自慢しに行った。
色んな事があったけど、彼女の物語は続いて行くんだな、なんて過去を噛み締めながら、私は像を見上げてこう呟いた─────

「いやぁ…………
　やっぱり野菜モチーフじゃなくてウオッカみたいなセクシーな革ジャンスタイルの勝負服の方が良かったなあ！！！！！！！！！」

完