ここだけダンジョンがある世界の掲示板イベントスレ 第21層

  • 1異界の終焉と解放21/11/20(土) 20:30:18

    本スレ

    ここだけダンジョンがある世界の掲示板 第483層|あにまん掲示板https://bbs.animanch.com/board/173571/前スレhttps://bbs.animanch.com/board/154129/脳内設定スレhttps://bbs.ani…bbs.animanch.com

    このスレは「ここだけダンジョンがある世界の掲示板」の番外編みたいなものです。

    イベントとは名ばかりのSS投稿スレ。

    感想・合いの手などはご自由に書き込んで下さい。

    https://bbs.animanch.com/board/112651/?res=194 を先に読んだ方が分かりやすいです。

  • 2異界の終焉と解放21/11/20(土) 20:32:24

    目が覚める。
    いつもの習慣で胸元のアクセサリーに手をやる。

    「……無い」
    「目が覚めたかよ」

    声のした方を見ると、悪辣な魂を持った悪魔が壁にもたれかかってこちらを見ていた。

    思い出した。
    俺はダンジョン〈強欲の魔剣〉であの悪魔と交戦して負けた後、どこからか現れた大量の肌色に似た腕に身体を掴まれた。
    そして、おそらく死んだのだ。

  • 3異界の終焉と解放21/11/20(土) 20:32:49

    アクセサリーは恩師に貰った物だ。
    死を無かったことにする代わりに壊れるアクセサリー。
    どんな攻撃を受けても持ち主が死なない限り壊れることは無い。
    ダンジョンで拾ったらしい。
    ……自分で持っていてくれたらあの人が死ぬことは無かったのに。

    悪魔に目を向ける。
    信用が置けるわけではないが、俺があの腕に飲み込まれた時に驚いた顔をしてこちらに手を伸ばしていたのは事実だ。

    「状況は?」
    「ここは屋敷みてえだな。
    俺は周りを少し見ただけだが…おそらく異界だと思う」
    「異界」

    話に聞いたことはあったが見たのは初めてだ。
    『異界に入った者は生きて帰っては来られない』
    そんな噂を昔聞いた。

    「証拠は?」
    「そんなもん無い。
    ただ、ダンジョンとも魔界とも、もちろん人間界とも違う世界だということは分かる」

    悪魔の顔をよく見ると青ざめている気がした。

  • 4異界の終焉と解放21/11/20(土) 20:33:15

    「他に情報は?」
    「……お前グロイの平気?」
    「まあ冒険者だしそれなりには」
    「そうか…グロいのが彷徨いてる。
    俺に任せてお前はここで待っていても良い」
    「はあ?」

    何を言ってるんだこいつと思って悪魔の顔を見る。
    悪魔は真剣な顔で俺を見ていた。

    「…俺はお前を信用していない。俺も探索する」
    「そうか…覚悟決めろよ」

    そう言って悪魔は部屋の扉を開いた。

  • 5異界の終焉と解放21/11/20(土) 20:33:40

    探索は最初は何も見つからなかった。
    人間の屋敷にガワだけ似せたような場所だった。
    本は白紙、食べ物は食えやしない紛い物。
    家具も使える物はほとんど無い。
    そうして殆ど収穫もなしに歩いていると、俺たちは被害者にあった。

  • 6異界の終焉と解放21/11/20(土) 20:34:06

    肉塊だった。
    正しくは肉塊を無理やり猫の形にしたような者だった。
    まるで猫のように動いている。
    俺は目を見開いた。

    肉塊には人間の魂が宿っていた。
    人間が生きたまま肉塊にされ、猫の形にされたのだ。

    悲鳴が頭の中で鳴り響く。

    痛い痛い痛い痛い痛い痛いなんで誰か殺して死なせてもう嫌だなんでこんな目に助けてお母さん

    吐いた。
    見ただけで理解した。
    ……俺ではこの者を救えない。
    頭が痛い。
    何も考えられない。

    頬に痛みを感じた。

  • 7異界の終焉と解放21/11/20(土) 20:34:41

    「しっかりしろ」

    悪魔が俺の前に立っていた。
    頬を叩かれたようだ。

    「……悪い」
    「いや、仕方ねえさ。
    悪魔の俺でも最初に見たときはキツかったししょうがねぇ」

    俺は立ち上がる。
    悪魔の差し出してくれた手は取らなかった。

    「……探索を続けよう」
    「休まなくていいのか」
    「ああ。この人の無念を晴らさないと」

    そう言って探索を続ける。
    被害者たちは見つかったが手がかりを得ることは無かった。
    疲労を感じながら、次の部屋に向かおうとした時だった。
    俺を無数の腕が襲った。

    左腕が掴まれる。
    俺は咄嗟に剣で左腕を切り落とした。
    悪魔が俺を掴んで転移する。

  • 8異界の終焉と解放21/11/20(土) 20:35:01

    異界の主が切り落とされた腕を持っていた。
    グチャグチャと腕をこねくり回している。
    やがて腕はうさぎの形の肉塊になった。
    しかし動かない。
    魂が無いからだ。
    異界の主は首を傾げたが、すぐに飽きて肉塊を捨てて移動して行った。

  • 9異界の終焉と解放21/11/20(土) 20:35:28

    転移した先で悪魔が俺の腕の止血をする。

    「ゴホッ……無茶をする」
    「お前に言われたく無い。
    お前、右足動いてないだろ」
    「バレたか」

    止血を終えた悪魔が右足を見せる。
    膝から下が透けていた。

    「アレは人間にしか興味無いようだ。
    いや、人間しか認識出来ねえのかも。
    ゲホッ俺はアレに……異界の主にとって世界に居ない存在だから拒絶されてるようだ。ゴホッ」

    悪魔が吐血した。
    倒れるように座り込んで、悪魔は口を開いた。

    「一つ、賭けをしないか?」

  • 10異界の終焉と解放21/11/20(土) 20:35:56

    異界の主は歩いていた。
    この世界に来た人間を探していた。

    大抵の人間はこの世界に来た時に肉塊になる。
    腕で掴んだ者を肉塊にする力を異界の主が持っていたからだ。

    だから人間を探すのは新鮮で楽しいことだった。

    人間を見つけた。

    異界の主は腕を伸ばす。
    何かに阻まれたが気にせず割って、人間を掴もうとする。

    異界の主は人間の左腕に持った武器で貫かれた。

    「聖属性付与・剣閃」

  • 11異界の終焉と解放21/11/20(土) 20:36:25

    「まず、俺の左腕をお前に移植します」
    「待て」

    思わず止めた。

    「大丈夫だ。俺と契約する事でお前との親和性を強めて後遺症を少なくするから」
    「そういう問題じゃない」

    腕の痛みで頭が回らない。
    たが、おそらく理由があって提案しているんだろう。
    痛みを無視して考える。

    「……お前の腕をあの化け物は認識出来ない」
    「そう、一応俺がお前の左腕とこの剣に認識阻害をかけるけどな」

    そう言って悪魔が剣を取り出す。

    「この剣は俺の角を使って作っている」
    「なんで?」
    「そうすると剣の使用者に魔人への変身能力を付けることが出来るんだよ。……変身し過ぎると俺の眷属になるけど」
    「使いたくない」
    「キーワード言わない限り変身しないから安心してくれ。
    俺の素材を使っているからアレに気付かれにくい筈だ。
    一撃かましてやれ」

  • 12異界の終焉と解放21/11/20(土) 20:36:54

    聖属性を使ったことで左腕が灰になる。
    異界の主はもがき苦しんでいたが、すぐに立ち直って腕を伸ばしてくる。

    「「作戦通りだ」」

    異界の主が刺されたことで、境界が揺らぐ。
    悪魔が顔を歪めながら空間魔法で異界に穴を開ける。

    「浄化」

    穴から入ってきた堕天使が異界の全てを浄化した。

  • 13異界の終焉と解放21/11/20(土) 20:37:40

    異界の主が消えて、異界は崩壊した。
    被害者たちも浄化されたことで解放されて天に登っていく。
    俺は倒れ込みそうになるが、悪魔に支えられる。

    「おつかれさん」

    堕天使が悪魔と俺を〈強欲の魔剣〉跡地に転移させた。

  • 14異界の終焉と解放21/11/20(土) 20:38:04

    「……魔王陛下に頼まれて荷物を届けに来たらダンジョンが異界に飲み込まれていたのを発見して、外から異界に穴を開けようと頑張っていた俺に何かいうことは?」
    「ありがとなアイン」
    「ありがとうございます……お陰様で助かりました」
    「……どういたしまして」

  • 15異界の終焉と解放21/11/20(土) 20:38:33

    堕天使さんが俺の傷を治してくれた。
    今回は悪魔に助けられてばかりだった。
    巻き込んでしまった彼がいなかったら死んでいただろう。

    「……ありがとうなマルス」
    「どういたしましてカバラ。
    これからもよろしくな」
    「ああ……は?」

    マルスの方を見る。
    マルスはにっこりと笑って言った。

    「契約の期限は書いてないぜ?契約書読んでみ?」

    俺は慌てて契約書を見る。……確かに書いていなかった。
    堕天使さんがため息をついた。

    俺は息を吸い込んで大声で言った。

    「ふっざけんなこのクソ悪魔!」

    そう言った俺は出血多量のせいで気絶した。

  • 16異界の終焉と解放21/11/20(土) 20:39:38

    これで投下は最後になります。
    短い話でしたが少しでも楽しんで貰えたら幸いです。
    お付き合いいただきありがとうございました。
    お疲れ様でした。

  • 17異界の終焉と解放21/11/20(土) 20:40:18

    …思ったよりも短かった。
    質問がある方はどうぞ。

  • 18詩謳う御子21/11/20(土) 20:46:42

    お疲れ様でございました
    とても面白く興味深く読ませていただきました

    変身のキーワードが気になります

  • 19異界の終焉と解放21/11/20(土) 21:04:55

    >>18

    遅くなって申し訳ありません……

    常夜の魔剣

    いつも使っている魔剣

    魔人に変身することが出来る

    魔剣侵食:魔人の一部の力を使える。疲れる

    魔剣融合:身体の一部が魔人になる。しばらく教会通いした方がいい

    魔剣統合:完全に魔人になる。10%の確率で人間に戻れる

  • 20怖いの大好き21/11/20(土) 21:09:23

    楽しく読ませていただきました。

    異界が人の屋敷を模していた事、被害者が愛玩動物の形にされていた事にゾッとしました…。

    異界の主本体はどの様な姿をしていたのでしょうか?

  • 21魔剣使い21/11/20(土) 21:11:57

    >>20

    腕の塊ですね。

    …といっても本体の核がファション感覚で人間の腕を付けている感じです。

  • 22怖いの大好き21/11/20(土) 21:36:32

    >>21

    回答ありがとうございます!え、えぐい…!

オススメ

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています